説明

顆粒接着組成物

【課題】発塵が低減されており、保管および輸送中においても接着組成物を構成する成分の分離がなく、小面積加工材料に対する仮止め特性が優れた仮止め用の顆粒接着組成物、および製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも90〜600秒の熱硬化時間を有するセラック樹脂を主成分とするアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを造粒した顆粒径が500μm〜5000μmであることを特徴とする顆粒接着組成物、および30〜100℃で加熱造粒することを特徴とする顆粒接着組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮止め用の顆粒接着組成物に関し、さらに詳しくは、発塵に伴う環境負荷が低減されており、保管および輸送中においても接着組成物を構成する成分の分離がなく、小面積加工材料に対して安定した優れた仮止め特性を有する顆粒接着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品、光学機器などの部品を切削、研磨加工する際に使用される仮止め用の接着組成物として、丸棒や球形などの部材、あるいは接着表面が凹凸を有する隙間部分を有する部材などのように、その接着部が点や線接点であるような接着面積が小さい小面積加工材料に対する仮止め接着性が優れていることから、液体型や固形型(ブロック状に成形されたもの)接着組成物に代って、接着組成物を構成する個々の成分の粉体を混合分散した粉体接着組成物が使用されつつある。
【0003】
前記の粉体接着組成物として、ある種の粉体接着剤(特許文献1)が提案されている。上記特許文献1に開示の粉体接着剤は、従来の液体型や固形型の仮止め接着剤に比べて、小接着面積加工材料に対して適度の塗布厚みを有する塗布性と仮止め接着性が向上されている。しかしながら、上記の粉体接着剤は、長期間保管、あるいは流通工程中の振動、衝撃などの条件によっては、粉体接着剤を構成する各成分の比重の違いにより、粉体分離する危険性がある。このことは、切削性、接着性などの仮止め特性に悪影響を及ぼす。また、上記接着剤は、取り扱いの際に、粉塵の発生が伴い易く、必要に応じて粉塵対策を講じなければならない場合もある。
【0004】
上述のことから、長期間保管や流通工程において、接着組成物を構成する成分の分離や取り扱い時の粉塵発生のない、仮止め用の接着組成物が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4099167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように仮止め用の粉体接着組成物は、長期間保管、流通工程における振動、衝撃などにより上記接着組成物を構成する粉体成分中の微細粉粒子や比重が重い粉体成分が分離したりすることにより均一に混合分散されていた成分の配合が不均一になり、切削性、接着性、塗布性などに悪影響を及ぼす。また、上記の振動、衝撃などにより粉体成分がさらに粉砕されて微細となり、上記接着組成物の取り扱いの際に粉塵発生が伴い環境負荷が伴う場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、発塵が低減されており、保管および輸送中においても接着組成物を構成する成分の分離がなく、小面積加工材料に対する切削性、接着力、塗布・作業性、および不要となった接着組成物の洗浄除去性(以下、これらの特性を単に「仮止め特性」という場合がある。)が優れた仮止め用の顆粒接着組成物、および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の特定成分であるアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを加熱造粒し、顆粒状にした仮止め用の顆粒接着組成物が、発塵が低減されており、保管や輸送中の振動などの条件が伴っても成分の分離がなく、仮止め特性が優れた接着組成物であることを見出した。
【0009】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも90〜600秒の熱硬化時間を有するセラック樹脂を主成分とするアルカリ可溶性結合剤(A)と、下記の展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、下記の切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを造粒した、顆粒径が500μm〜5000μmであることを特徴とする顆粒接着組成物を提供する。
(B)群:軟化点が50℃〜150℃の固形可塑剤、アルキル基の炭素数が13以上の脂肪酸、およびアルキル基の炭素数が16以上の高級アルコール。
(C)群:無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機酸化物、および架橋高分子。
【0010】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記セラック樹脂が、結合剤(A)総量中に50〜100質量%含有されており、前記結合剤(A)が、軟化点が70℃以上で、かつ酸価が50mgKOH/g以上のロジン類および/またはロジン系樹脂を含有しており、前記固形可塑剤が、フタル酸ジシクロヘキシル、トリフェニルフォスフェート、トリメチロールプロパントリベンゾエイト、およびトルエンスルホンアミドから選ばれる少なくとも1種であり、および前記架橋高分子が、架橋アクリル系樹脂、架橋フェノール系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋尿素系樹脂、および架橋メラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記のアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを、30〜100℃で加熱造粒することを特徴とする顆粒接着組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記の顆粒径を有する個々の顆粒中に、前記成分が均一に混合分散された顆粒接着組成物とすることにより、保管あるいは流通工程においても成分の分離がない優れた仮止め特性を有し、また、発塵に伴う環境負荷を低減できる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の顆粒接着組成物は、前記の90〜600秒の熱硬化時間を有するセラック樹脂を主成分とするアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを各種造粒法により加熱あるいは加圧して造粒し顆粒状にした、各々の個々の顆粒中に均一に分散混合されている顆粒径が500μm〜5000μmである顆粒接着組成物である。
本発明の顆粒とは、円筒、球状、碁石状などのペレット形状、粒状、その他JIS−Z8841の不規則形状の顆粒集合体など、粉を除いた造粒物の形状を意味し、とくに、形状を限定するものではない。なお、本発明におけるセラック樹脂の熱硬化時間は、セラック樹脂のJIS規格K5909−1994による測定値である。
【0014】
上記の顆粒径分布を有する顆粒接着組成物は、顆粒径が上記上限を超えると、小面積加工材料に対する塗布性が低下する。一方、顆粒径が上記下限未満であると、発塵が増加する危険性がある。とくに、100μm以下になると顕著になる傾向がある。
【0015】
前記のアルカリ可溶性結合剤(A)は、90秒〜600秒(170℃にて)の熱硬化時間を有するセラック樹脂を主成分としたアルカリ可溶性樹脂である。上記のセラック樹脂は、単独でも、その他のアルカリ可溶性樹脂と併用して使用することができる。上記のセラック樹脂の熱硬化時間が上記上限を超えると、得られる顆粒接着組成物の顆粒同士が付着して固結現象が発生するという問題がある。一方、熱硬化時間が上記下限未満であると、造粒工程で熱硬化が進行し、得られる顆粒接着組成物の接着性が低下する。
【0016】
上記セラック樹脂のアルカリ可溶性結合剤(A)中の配合量は、好ましくは結合剤(A)総量中の50質量%〜100質量%である。配合量が上記下限未満であると得られる顆粒接着組成物に充分な仮止め特性が得られない。
【0017】
上記のセラック樹脂としては、ラックカイガラ虫が分泌する樹脂状の物質を公知の溶液抽出法、ソーダー法などの方法により精製したもので、その樹脂分はアレウリチン酸、ジャラール酸、ラクシジャラール酸などの樹脂酸とのエステル化合物を主成分とした天然セラック樹脂あるいは合成セラック樹脂であり、例えば、精製セラック樹脂、漂白セラック樹脂、脱色セラック樹脂などが挙げられる。
【0018】
また、上記のセラック樹脂と併用するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、マレイン酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジンエステル、ロジン変性フェノール樹脂などのロジン類あるいはロジン系樹脂;および分子内にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性アクリル系樹脂や、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0019】
上記のセラック樹脂と併用するアルカリ可溶性樹脂の内で、好ましくは軟化点が70℃以上、より好ましくは70℃〜180℃で、かつ酸価が50mgKOH/g以上のロジン類および/またはロジン系樹脂が挙げられる。上記のロジン類とロジン系樹脂は、得られる顆粒接着組成物を溶融塗布する際にセラック樹脂と瞬時に熱溶融相溶し、粘着性を付与し被着体との接着性を向上させる。上記の軟化点が70℃未満の場合には、得られる顆粒接着組成物の顆粒同士が固結し易くなり保存性が低下する。また、上記の酸価が上記下限未満であると、仮止め加工後、不要となった接着組成物のアルカリ洗浄液での洗浄除去性が低下する。なお、上記の軟化点は、JIS K2207の環球法に準拠した測定値である。
【0020】
また、前記の展延性向上剤(B)群は、各成分を加熱あるいは加圧して顆粒状にする造粒と、また、得られる顆粒接着組成物の小面積加工材料に対する展延塗布性を向上させる。上記の展延性向上剤(B)群は、軟化点が50℃〜150℃の固形可塑剤、アルキル基の炭素数が13以上の脂肪酸、およびアルキル基の炭素数が16以上の高級アルコールである。
【0021】
上記の固形可塑剤としては、例えば、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチルなどのフタル酸エステル、トリフェニルフォスフェート、N−シクロヘキシル−P−トルエンスルホン酸アミド、o−またはp−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスリット、トリメチロールプロパントリベンゾエイトなど、好ましくはフタル酸ジシクロヘキシル、トリフェニルフォスフェート、トリメチロールプロパントリベンゾエイト、およびトルエンスルホンアミドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0022】
また、アルキル基の炭素数が13以上の脂肪酸、およびアルキル基の炭素数が16以上の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ステアリルアルコール、べへニルアルコールなどが挙げられる。
【0023】
前記の切削助剤(C)群は、得られる顆粒接着組成物を用いて小面積加工材料などの被着体を仮止め接着し、ダイヤモンドカッターなどにより被着体を切削加工した場合に、ダイヤモンドカッターの刃に接着剤が付着しないようにして、切削加工をスムーズに行えるようにするものである。上記の切削助剤(C)群は、無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機酸化物、および架橋高分子である。
【0024】
上記の切削助剤(C)群としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどの無機物、および架橋高分子として、好ましくは架橋アクリル系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋フェノール系樹脂、架橋尿素系樹脂、架橋メラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
前記のアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群と、切削助剤(C)群とを配合する場合の好ましい配合割合は、B/A=10/100〜50/100(質量比)、C/A=50/100〜200/100(質量比)である。上記のBおよびCの配合量が多過ぎると、得られる顆粒接着組成物の仮止め時の接着力が低下する。一方、上記Bの配合量が少な過ぎると、塗布性や初期接着力が低下する。また、上記Cの配合量が少な過ぎると、切削性や接着力が低下する。
【0026】
本発明の顆粒接着組成物の製造は、所定の形状を有する前記のアルカリ可溶性結合剤(A)と、前記展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、前記切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを公知の混練機で均一に混合分散し、分散後、混合物を公知の造粒法により30℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃に加熱および加圧することで造粒し、顆粒径が500μm〜5000μmの顆粒体として調製する。なお、予備混合を行わないで、直接公知の造粒法により顆粒体を調製することもできる。上記の製造に使用される各々の成分の粒径および形状は、500μm以下の粒径を有する粉末状、粒状、薄板状、その他不定型形状など、とくに限定されるものではないが、好ましくは500μm以下の粉末状のものが使用される。上記の加熱造粒温度が高過ぎると、造粒中にアルカリ可溶性結合剤(A)におけるセラック樹脂の硬化反応が進行する危険性があり、また、所定の形状の造粒物が得にくい。一方造粒温度が低過ぎると、上記の各々の成分が一体となった所定の形状の造粒物が得にくい。
【0027】
上記の製造に使用される粉末状に調製された各々の成分としては、例えば、0.1μm〜200μmの粒径を有するアルカリ可溶性結合剤(A)、0.1μm〜200μmの粒径を有する展延性向上剤(B)群、および0.1μm〜50μmの粒径を有する切削助剤(C)群が挙げられる。また、セラック樹脂と併用する他の前記アルカリ可溶性樹脂も、その粒径が0.1μm〜200μm程度に調整されたものを使用するのが好ましい。
【0028】
前記の造粒法としては、とくに限定されるものではないが、例えば、撹拌転動造粒機、高速撹拌造粒機、バーティカルグラニュレーター、スーパーミキサーハイスピーダーなど撹拌造粒機を用いた混合撹拌造粒法、プリケッティングマシン、圧縮ロールを用いた圧縮造粒法、押出造粒機を用いた押出造粒法など、好ましくは押出造粒法が挙げられる。
【0029】
上記の押出造粒機を用いた押出造粒法としては、例えば、前記の粉末状に調整された粒径を有する各々の成分である、前記数値範囲内のセラック樹脂を主成分とするアルカリ可溶性結合剤(A)と、前記展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、前記切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを、ヘンシェルミキサーなどの公知の粉末混練機に投入し、撹拌羽根500rpm〜1000rpmにて30秒〜60秒程度均一に混合分散して混合物を得る。次に、得られた混合物を用いて、2軸などの多軸または単軸のスクリューを備えた公知の押出造粒機を使用して、そのホッパーより該混合物を投入し、加熱混合部の温度を30℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃に設定し、スクリュー回転数30〜50rpmで運転し、得られるストランド状の造粒物を冷却しながら、所定の寸法にカッターで切断してペレット状の顆粒接着組成物を製造した。
【0030】
上記の製造方法により得られた顆粒接着組成物の粒径範囲の調整方法は、例えば、上記上限の粒径に相当するメッシュを有する篩いを使用して、上記の接着組成物を一次ふるい分けし、次に、上記下限粒径未満の顆粒接着組成物を除去する篩いを使用して、一次ふるい分けされた顆粒接着組成物を、二次ふるい分けして行う。なお、使用する篩いは、JIS Z8801に準拠した標準篩いである。
【0031】
本発明の顆粒接着組成物を使用して仮止め加工する事例としては、例えば、本発明の顆粒接着組成物をトレーに入れ、次に120℃〜200℃に加熱された被着体を上記トレー中の顆粒接着組成物中に接触させ、被着体に該顆粒接着組成物を付着させて、溶融・塗布する。次に、120℃〜200℃に加熱されたカーボン材質からなる仮固定台に上記の接着組成物が塗布された被着体を押し当て、冷却して仮固定接着する。あるいは、120℃〜200℃に加熱したカーボン材質からなる仮固定台に顆粒接着剤を均一にふりかけることにより溶融塗布層を形成し、該溶融塗布層に被着体を押し当てて仮固定接着する。その後、仮固定された被着体をダイヤモンドカッターなどによって一定の寸法に切削および切断加工し、加工後、アルカリ性の洗浄剤によって上記の不要となった顆粒接着組成物を被着体より洗浄除去する。
【0032】
前記の被着体としては、切削および切断加工される材料である、例えば、電子部品などに使用されるフェライト、ネオジムおよび希土類金属などからなる磁性体や、光学部品、医療用部品などに使用されるガラス類、その他として、セラミック、金属などが挙げられる。
【実施例】
【0033】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのはとくに断りのない限り質量基準である。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3)
表1に示すようにアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)と、切削助剤(C)とを配合し、常温雰囲気下にて粉体混合分散機(ヘンシェルミキサー)を使用して均一に混合分散して混合物M1〜M3を調製した。次に、得られた混合物を用い、2軸押出造粒機(ナカタニ機械製、NAS型)を使用し、該造粒機のホッパーより各々の混合物を投入して押出造粒し、得られたストランド状の造粒物を冷却しながら、カッターで切断して直径2mm、長さ2mmのペレット状の顆粒接着組成物K1〜K3を得た。
押出条件:押出造粒機加熱混合部の温度40℃〜100℃、ダイス温度50℃、スクリュー回転数40rpm、生産速度5kg/hr
【0034】
上記のアルカリ可溶性結合剤(A)と、展延性向上剤(B)と、切削助剤(C)は下記のとおりである。
[アルカリ可溶性結合剤(A)]
A1:0.1μm〜200μmの粒径を有する熱硬化時間300秒(170℃)であるセラック樹脂。
A2:0.1μm〜200μmの粒径を有する軟化点130℃(酸価150mgKOH/g)のマレイン酸変性ロジン樹脂。
[展延性向上剤(B)]
B1:0.1μm〜200μmの粒径を有するフタル酸ジシクロヘキシル。
B2:0.1μm〜200μmの粒径を有するステアリン酸。
[切削助剤(C)]
0.1μm〜50μmの粒径を有する硫酸バリウム。
【0035】
(比較例1〜3)
前記実施例で得られた混合物M1〜M3をそのまま、あるいは、該混合物をさらに容器回転型の粉体混合分散機を使用して常温雰囲気下で均一に混合分散したのみで、実施例に記した造粒工程を行わない混合物を比較例の接着組成物W1〜W3とした。
【0036】

【0037】
上記で得られた各々の顆粒接着組成物、および比較例の接着組成物について、発塵、振動時の成分分離、振動後の切削性、振動後の接着力、振動後の塗布・作業性、洗浄除去性に関して、下記の測定方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0038】
(発塵)
接着組成物100gを縦置きされた直径10cm、長さ1mのガラス製円筒の上部から落下させた時の発塵の状態を目視観察する。
○:発塵が殆ど認められない。
×:発塵がかなり認められる。
【0039】
(振動時の成分分離)
100mlのガラス瓶に接着組成物50gを入れ、平面に20回軽く叩いた後、該接着組成物を構成する成分の分離状態を目視観察する。
○:分離が殆ど認められない。
×:分離がかなり認められる。
【0040】
(振動後の切削性)
100mlのガラス瓶に接着組成物50gを入れ、平面に20回軽く叩いた後、該接着組成物を使用し、ダイヤモンドカッターにて切削を行い、その切削性を下記の評価法により評価した。
○:切削加工良好。
△:切削刃に接着組成物がわずかに付着し、やや切削加工性が悪い。
×:切削刃に接着組成物がかなり付着し、切削加工性が悪い。
【0041】
(振動後の接着力)
ステンレス製治具2枚(幅10mm)をホットプレート上で140℃で加熱後、片方の治具の端から10mmの部分に、前記振動時の成分分離の評価に使用した接着組成物を溶融塗布し、もう一方の治具と重ね合わせる。冷却後、25℃下で、引張り剪断試験機にて測定(JISK6850準拠)。
○:接着力が7MPa以上である。
×:接着力が7MPa未満である。
【0042】
(振動後の塗布・作業性)
前記振動時の成分分離の評価に使用した接着組成物を使用し、磁性体の円筒曲面に対する塗布性の状況を下記の評価法で評価した。
○:曲面に対する接着組成物の塗布性が良好である。
×:曲面に対する接着組成物の塗布性が劣る。
【0043】
(洗浄除去性)
150℃に加熱されたガラス基板上に接着組成物を50μmの厚みに溶融塗布(塗布部面積2cm2)し、溶融された接着組成物を常温まで冷却して固化させ試料を作製した。該試料を90℃の2%の水酸化カリウム水溶液の洗浄液に浸漬し、接着組成物の洗浄除去性を下記の基準で評価した。
○:ガラス基板上の接着組成物が、5分間未満で完全に洗浄除去される。
×:ガラス基板上の接着組成物が洗浄除去されるのに、5分間以上を要する。
【0044】

【0045】
上記の評価結果より、本発明の顆粒接着組成物は、仮止め用の接着組成物として、接着組成物を構成する成分の分離がなく、仮止め加工材料の切削性を含め円筒状などの小面積加工材料に対して仮止め特性が優れていることが実証された。さらに、発塵の発生がないために粉塵に伴う環境負荷が低減できる。一方、比較例の接着組成物(粉体)は、振動時の成分分離が認められ、振動後の切削性、接着力、塗布・作業性が劣り、かつ、発塵が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、本発明の顆粒接着組成物は、発塵に伴う環境負荷が低減されており、保管および輸送中においても接着組成物を構成する成分の分離を伴わないために、安定した優れた仮止め特性が得られることから、電子部品、光学機器などの小面積加工材料を切削あるいは研磨加工するための仮止め用接着剤として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90〜600秒の熱硬化時間を有するセラック樹脂を主成分とするアルカリ可溶性結合剤(A)と、下記の展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、下記の切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを造粒した、顆粒径が500μm〜5000μmであることを特徴とする顆粒接着組成物。
(B)群:軟化点が50℃〜150℃の固形可塑剤、アルキル基の炭素数が13以上の脂肪酸、およびアルキル基の炭素数が16以上の高級アルコール。
(C)群:無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機酸化物、および架橋高分子。
【請求項2】
前記セラック樹脂が、結合剤(A)総量中に50〜100質量%含有されている請求項1に記載の顆粒接着組成物。
【請求項3】
前記結合剤(A)が、軟化点が70℃以上で、かつ酸価が50mgKOH/g以上のロジン類および/またはロジン系樹脂を含有する請求項1または2に記載の顆粒接着組成物。
【請求項4】
前記固形可塑剤が、フタル酸ジシクロヘキシル、トリフェニルフォスフェート、トリメチロールプロパントリベンゾエイト、およびトルエンスルホンアミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の顆粒接着組成物。
【請求項5】
前記架橋高分子が、架橋アクリル系樹脂、架橋フェノール系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋尿素系樹脂、および架橋メラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の顆粒接着組成物。
【請求項6】
前記の結合剤(A)と、展延性向上剤(B)群から選ばれる少なくとも1種と、切削助剤(C)群から選ばれる少なくとも1種とを、30〜100℃で加熱造粒することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の顆粒接着組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−222426(P2010−222426A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69382(P2009−69382)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】