説明

顆粒状のシリコンを搬送するための方法

【課題】シリコン顆粒の搬送のための新規なシステム及び方法を提供する。
【解決手段】顆粒状のシリコンを搬送装置の水平方向及び/又は垂直方向の運動により搬送するための方法において、前記搬送装置を外部に対して完全に密閉してあり、前記顆粒の前進運動は、前記搬送装置に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を磁場により励起して、前記搬送装置を揺動運動させることにより行われ、前記電磁場を外部から、密閉された前記搬送装置に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉された搬送通路内でシリコン顆粒を搬送するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層式反応器内で多結晶のシリコン顆粒を製造する場合には、連続工程によって、シリコン材料を規則的な間隔で若しくは連続的に反応器内に調量供給して、生長した顆粒を別の箇所で反応器から取り出すことが必要である。
【0003】
製造に際して多くの場合に、簡単な開閉用の器具、例えばスライダーを使用している。この場合に高純度のシリコンの汚染を避けるために、シリコン材料から成るスライダーが用いられる。この場合に欠点が、スライダーの高い摩耗にあり、このような摩耗はシリコン顆粒の研削作用に起因している。このような理由から、器具は短いサイクルで交換されねばならない。
【0004】
スライダーのさらなる欠点は、スライダーがロックする傾向にあることである。このような場合には、各装置は、器具内のロックを取り除くために停止されねばならない。さらに、簡単な開閉制御によっては、供給調量及び排出量の大まかな制御しか行われない。
【0005】
一般的に、ばら荷の搬送のためには、開閉形若しくは閉鎖形の搬送通路を用いており、搬送通路は直接に連結部を有していて、電気式若しくは空気力式のバイブレーションモータによって作動されるようになっている。
【0006】
シリコン単結晶の製造の場合に、溶融るつぼに高純度のシリコン材料を供給並びに補充することは、純度維持の理由から真空雰囲気下で行われねばならない。
【0007】
米国特許第5462010号明細書により、溶融るつぼに粒状のポリシリコンを連続的に搬送するための装置が開示されている。該装置は、複雑な供給システムによって形成されており、供給システムは、大容量の漏斗状タンク、サブホッパー、振動駆動部上に設けられたメインホッパーから成っている。該装置全体は共有の1つの真空チャンバー内に収納されている。該装置における欠点は、外部から制御される振動駆動部にあり、このような振動駆動部によっては、電気的な通路及び制御のための必要な貫通開口部に起因してシステム内の密閉損失が発生している。シリコン材料を移動させるために必要とされる高い周波数によって、高い研削作用も見込まれる。この場合に高純度のシリコン顆粒は種々の多くの部材(測定センサー等)と接触するので、該材料による汚染の増大も見込まれる。
【0008】
米国特許第6609870号明細書により、空気力式の装置を用いて粒状若しくは顆粒状のシリコンを搬送するための装置が開示されている。この場合に該装置は、真空下にある閉じられたシステム内に収納されている。該システムの目的は、流過する空気によって顆粒からダスト粒子を除去することでもある。しかしながら、該システムにおける欠点は、該システムが開放形のシステムであることにあり、このような開放形のシステム内に搬送媒体として送り込まれる高純度のガスは、搬送中にダストによって汚染されてしまうことになる。
【0009】
流動層式反応器内でポリシリコン顆粒を製造する場合には、供給通路及び排出通路を有する反応器は、閉鎖形のシステムとして形成されていて、一般的に10バールまでの正圧の設定圧力で作動するようになっている。このような理由から、振動式通路に直接に接続される電気式若しくは空気力式のバイブレーションモータを備える公知の振動式搬送通路は、用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5462010号明細書
【特許文献2】米国特許第6609870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、シリコン顆粒の搬送のための新規なシステム及び方法を提供し、該システム又は装置を外部との直接的な接続部なしに圧力室内に設置することができるようにし、かつ顆粒及び機械的な構成部分に対する摩耗を避けるために、顆粒に対して大きな振動運動を作用させないようにすることである。さらに、必要なアクセスを容易にするために、システムを整備しやすく反応器の外側に取り付けることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
顆粒状のシリコンを搬送装置の水平方向及び/又は垂直方向の運動により搬送するための方法において、本発明によれば、搬送装置を外部に対して完全に密閉してあり、シリコン顆粒の前進運動は、搬送装置に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を磁場により励起して、搬送装置を振動させることにより行われ、この場合に電磁場を、圧力室の外側に配置されたコイルによって、密閉された搬送装置に印加するようになっている。
【0013】
バイブレーションモータ若しくは振動モータによって励起される搬送通路に対して、本発明に係る、密閉された搬送通路(密閉形の搬送通路)を用いる方法における振動運動は、外部の交番磁界により作動される永久磁石の揺動運動若しくは振動運動によって形成される。このような構成により、搬送装置は完全にケーシング内に収容されて外部に対して完全に密閉されていて、電気的な導線若しくは圧縮空気管路のための貫通案内部を必要としないようになっている。
【0014】
本発明に係る方法の実施のための搬送装置は、外部に対して少なくとも2つの接続手段を有し、有利には入口及び出口として搬送通路の各側にそれぞれ1つの接続手段を有している。接続手段としての接続部は、有利には、搬送装置を管路、反応器、若しくは顆粒の貯留のための容器に圧密に接続するために、接続管片若しくはフランジ結合部として形成されている。このような構成により、搬送装置は、例えば認証される圧力機器として、ポリシリコンの製造のための流動層装置内に用いることができる。
【0015】
搬送装置は、構成部分の設計構造に応じて真空内でも、高められた圧力下でも作動させることができる。有利には、本発明に係る方法は0.1〜100バールで、特に有利には1〜10バールで実施される。
【0016】
搬送通路をケーシング内に完全に密閉することにより、搬送装置は、設定圧力が高くかつ、又は純度要求が高い装置内でも用いることができる。
【0017】
搬送装置の内部の搬送通路は、もちろん、圧力負荷を受ける構成部分ではないので、したがって、各搬送物品にとって適した材料で形成することができる。このような構成により、ケーシング、内側に位置する通路、補償器及び磁石のための材料として、特に長い耐用年数を可能にしかつ搬送すべき製造物を汚染しない、若しくはわずかしか汚染しない材料が選ばれる。このような構成により、メンテナンス費用は極めてわずかである。
【0018】
密閉された搬送通路のケーシングは、有利には金属製の管路から成っており、該管路は、入口及び出口にフランジ結合部を有し、かつ該管路に溶接結合された接続管片を有している。
【0019】
密閉された装置内における搬送通路は、ケーシングに可動に取り付けられている。搬送通路は、有利には、入口及び出口に開口部を有する閉じられた管によって形成された管路であり、該管路は、少なくとも1つの箇所で外側のハウジングにフレキシブルに結合(保持)されている。このようなフレキシブルな保持装置は、例えばばね、ゴムバンド、可動の保持バンド、若しくはその他のフレキシブルな装置によって形成されていてよいものである。
【0020】
製造物純度の理由から、入口接続片及び出口接続片はプラスチックライナーを備えている。プラスチック製管の1つの端部に強い永久磁石を取り付けてある。永久磁石は、磁石によるプラスチック製管内の内室の汚染を避けるために、例えばプラスチック製管に設けられた独立の室内に収容されている。特に有利な実施の形態では、シリンダー状の強い永久磁石を、搬送管に一体成形されたプラスチック容器内に配置してある。
【0021】
磁石の収容のための室内における運動の自由度は、一方では永久磁石に対して該永久磁石が揺動運動して搬送通路を振動させるような遊び空間が形成され、かつ他方では該永久磁石の回転運動を許さないように、規定されている。
【0022】
永久磁石の揺動運動は、外部のコイルから永久磁石に作用させられる交番磁界によって形成される。
【0023】
磁石の軸線は、コイル軸線(磁場の軸線)に対して垂直に配置される。永久磁石を、永続的な揺動運動による摩耗に対して保護するために、永久磁石は有利には被覆され、若しくは特殊鋼から成る周壁部材内に収容されて、該周壁部材に溶接結合されている。
【0024】
永久磁石のための材料として、技術的に利用可能なすべての磁石を用いることができる。有利には磁石は、希土類を含み、特に有利にはサマリウムコバルト磁石を含む。磁石の正確な組成及び磁力は、本発明にとって重要なことではない。永久磁石は原理的には任意の形状を有していてよく、しかしながら有利にはシリンダー状の形状を有している。
【0025】
有利には、1.3:1の寸法比(高さと直径との比)を有する磁石が用いられる。永久磁石を収容する磁石ハウジングは、該磁石ハウジング内で永久磁石が自由に揺動運動でき、ひいてはパルスを搬送管に正確に伝達できるように、十分な中空室を有している。磁石ハウジングの中空室(磁石室)と磁石直径との比は、有利には1.2:1であり、磁石室の高さと磁石高さとの比は、有利には1.2:1である。
【0026】
使用される永久磁石は、有利には搬送通路の長手方向若しくは軸線に対して垂直に組み込まれる。交番磁界の印加に際して、永久磁石は磁界内で中心位置を基準として往復運動しようとし、該往復運動によって回転運動しつつパルスを磁石ハウジングの壁に、ひいては磁石ハウジングと結合された搬送通路に伝達する。
【0027】
搬送装置を通るシリコン顆粒の流過量は、例えば周波数変調器を用いて、コイルの交番磁界の周波数及び振幅(コイル電流)を変調することにより、アナログ値として調節される。この場合に周波数は、各搬送装置内の搬送通路の固有振動数に調和される。適切な磁石材料、中空室直径の寸法、内側の搬送通路の傾斜並びに永久磁石の大きさの選択によって、種々の使用例のための作業領域を規定することができる。
【0028】
磁石の作動のために、単相の磁界を用いる。この場合に可変の周波数は、有利には0.1〜1000Hzであり、特に有利には5〜100Hzである。周波数は、構成条件に応じて共鳴振動に調和される。調和のために、例えば周波数変調器を用いることができる。揺動運動の振動数は、励起磁界の周波数に依存している。
【0029】
搬送通路内における必要な流過量を調節するために、電圧振幅は無段階に調節される。このような調節は、有利には0.1〜100Aの範囲で、特に有利には0.1〜5Aの範囲で行われる。磁界強度は、用いられるコイル巻数によって規定され、かつ必要な搬送量に対して設定される電流の強さによって変化させられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る方法の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明に係る方法の第2の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に、本発明に係る方法の実施の形態を示してある。搬送通路(2)は、ハウジング(1)の中に収容されて、圧力に対して密にされている。ハウジングの内側に位置する搬送通路(2)のフレキシブルな結合のために、搬送通路はフレキシブルな補償器(3)を用いて入口フランジ及び出口フランジに結合されている。搬送通路自体は、複数の保持ばね(7)を介してハウジング(1)内に同じくフレキシブルに結合されている。内側に位置する搬送通路(2)の一方の端部に、永久磁石(4)のためのハウジング(5)を取り付けてある。永久磁石は、外側で印加される交番磁界(6)によって作動させられるようになっている。内側に位置する搬送通路(2)の運動によって、供給開口部(8)から投入されたシリコン顆粒は、製造物出口(9)のための開口部まで前進運動させられる。
【0032】
上記の搬送装置には、複数の入口及び出口を、例えば複数の貯留容器のために、若しくは搬送路からの少量の顆粒のサンプルとしての取り出しのために設けることができる。
【0033】
本発明に係る方法の特別な実施の形態として、密閉形の搬送装置を用いており、該搬送装置においては製造物サンプルの取り出しのための追加的な装置が可能である(図2)。この場合には2つの出口接続管片(9,10)を前後に配置してある。第1の出口(9)内の弁の閉鎖によって、搬送物品はせき止められて、上記出口をふさぐことになる。搬送通路の上述の揺れ動きによって、搬送物品はさらに第2の出口(10)へ搬送され、該出口から搬送物品はサンプル流として流出する。該サンプル取り出しの終了は、上記第1の出口の弁の再開放によって行われる。
【0034】
本発明に係る上記方法は、他のほぼすべての固形粒子の搬送にも用いられるものである。特に有利には、本発明に係る方法は、高純度のシリコンの搬送のために、例えば太陽電池の製造のためのソーラーグレードのシリコン、若しくは電子産業用の単結晶若しくは多結晶のシリコン結晶を製造するための高純度のシリコンの搬送のために用いられる。
【0035】
次の実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
実施例:
本発明に係る方法は、図1に示す搬送通路を用いて実施される。特殊鋼から成るハウジング(1)は、120mmの直径及び1000mmの長さを有している。搬送管(2)は、直径50mm及び長さ700mmのプラスチック管から成っている。永久磁石のためのプラスチック製のハウジングは、50mmの直径及び100mmの長さを有している。入口フランジ及び出口フランジと搬送管との間にプラスチック製のフレキシブルな補償器(3)を取り付けてある。保持ばね(7)は、金属やプラスチックから成っている。外部の励起磁界のためにコイル(6)をシリンダーに巻き付けて、永久磁石(4)の高さ(部位)で外側管に位置決めしてある。永久磁石として、サマリウムコバルト磁石を用いてあり、該磁石は、30mmの外径及び40mmの長さを有していて、特殊鋼製外套管内に収容されている。搬送通路の揺動運動の振動数は、0.1〜70Hzで変化させられる。この場合に、搬送物品の搬送を、0〜100kg/時に無段階に調節することができる。搬送物品は、20μm〜1000μmの粒子サイズ分布並びに300μm〜500μmの平均の粒子サイズ及び高純度のシリコン顆粒(エレクトロニック及びソーラーの用途のための高純度のシリコン)である。シリコン顆粒が本発明に係る装置を通過した後に、シリコン顆粒及び装置には汚れは付着していなかった。
【符号の説明】
【0037】
1 ハウジング、 2 搬送通路、 3 補償器、 4 永久磁石、 5 ハウジング、 6 交番磁界、 7 保持ばね、 8 供給開口部、 9,10 出口接続管片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒状のシリコンを搬送装置の水平方向及び/又は垂直方向の運動により搬送するための方法において、前記搬送装置を外部に対して完全に密閉してあり、前記顆粒の前進運動は、前記搬送装置に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を磁場により作動して、前記搬送装置を揺動運動させることにより行われ、前記磁場を外部から、密閉された前記搬送装置に印加することを特徴とする、顆粒状のシリコンを搬送するための方法。
【請求項2】
前記方法を真空下で若しくは高められた圧力下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記永久磁石は、安定化のために金属製のスリーブによって密閉されている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記搬送装置を通るシリコン顆粒の流過量を、コイルの交番磁界の周波数及び振幅(コイル電流)の変調により、アナログ値として調節する請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記変調を周波数変調器によって行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記磁石の励起のために、0.1〜1000Hzの周波数の単相の磁界を用いる請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記搬送通路内における必要な流過量を調節するために、電圧振幅を0.1〜100Aの範囲で無段階に調節する請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記搬送装置に複数の入口及び出口を設ける請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記搬送装置によって顆粒状のシリコンを流動層式反応器内に調量しかつ/又は該流動層式反応器から取り出す請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記搬送装置によって、顆粒状のシリコンを単結晶若しくは多結晶のシリコン結晶の製造のための結晶成長装置内に供給する請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ソーラーグレードのシリコン及び/又は高純度のシリコンを搬送する請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32100(P2011−32100A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173519(P2010−173519)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】