説明

顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法及び顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子

【課題】本発明は、嵩密度が大きく、かつ水に膨潤しやすい顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】嵩密度が0.1〜0.3g/cmのカルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程、前記カルボキシル基含有重合体粒子を、連続的に移動するベルト上に、厚みが5〜30mmとなるように載せ、加湿槽内を通過させることで、前記カルボキシル基含有重合体粒子を含水率が3〜15質量%となるように吸湿させることにより、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程、及び、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を乾燥した後、粉砕する工程を有する顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法およびそれにより得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子に関する。さらに詳しくは、化粧品等の増粘剤として好適に使用しうる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法およびそれにより得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品等の増粘剤、パップ剤等の保湿剤、乳化剤や懸濁物等の懸濁安定剤等に用いられるカルボキシル基含有重合体としては、架橋型カルボキシル基含有重合体やアルキル変性カルボキシル基含有重合体等が知られており、架橋型カルボキシル基含有重合体としては、例えば、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸とポリアリルエーテルとの共重合体(特許文献1参照)、α,β−不飽和カルボン酸とヘキサアリルトリメチレントリスルホンとの共重合体(特許文献2参照)、α,β−不飽和カルボン酸とグリシジルメタクリレート等との共重合体(特許文献3参照)、α,β−不飽和カルボン酸とペンタエリスリトールアリルエーテルとの共重合体(特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)、α,β−不飽和カルボン酸と(メタ)アクリル酸エステルとペンタエリスリトールアリルエーテルとの共重合体(特許文献7および特許文献8参照)等が知られている。
【0003】
アルキル変性カルボキシル基含有重合体としては、例えば、ポリアクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体等が知られており、具体的には例えば、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が10〜30)とを反応させた共重合体(特許文献9参照)、オレフィン系不飽和カルボン酸単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が8〜30)とを反応させた共重合体(特許文献10参照)等が知られている。
【0004】
架橋型カルボキシル基含有重合体、アルキル変性カルボキシル基含有重合体等からなるカルボキシル基含有重合体粒子を前記の用途に使用するためには、まずカルボキシル基含有重合体粒子の均一な水分散液を調製し、その後アルカリで中和して0.1〜1質量%程度の中和粘稠液とする必要がある。しかしながら、前記カルボキシル基含有重合体粒子は、通常、微粉末であるため水に分散させる際に塊状物(ママコ)を生じやすい。いったんママコが生成すると、その表面にゲル状の層が形成されるため、その内部に水が浸透する速度が遅くなり、均一な水分散液を得ることが困難となるという欠点がある。
【0005】
したがって、カルボキシル基含有重合体粒子の水分散液を調製する場合には、ママコの生成を防ぐために、カルボキシル基含有重合体粒子の粉末を水中に高速撹拌下で徐々に添加するという生産効率が悪い操作を必要とし、場合によってはママコの生成を防止するために特殊な溶解装置を必要とする。
【0006】
また、前記カルボキシル基含有重合体粒子は、微粉末でかつ帯電しやすいため粉立ちが激しい。したがって、前記カルボキシル基含有重合体粒子は取り扱いが難しいばかりでなく、作業環境上好ましくないという欠点がある。さらにカルボキシル基含有重合体粒子の微粉末は嵩密度が小さく輸送コストの増加や保管場所を多く必要とする等の問題があった。
【0007】
そのため、顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子が待ち望まれている。
【0008】
通常、粉体の顆粒化には造粒機が用いられる。造粒機は造粒方法から混合造粒、強制造粒、熱利用造粒に大別される。
【0009】
混合造粒用の造粒機としては、流動層造粒機や転動造粒機といったものが挙げられ、気流や撹拌翼、転動などにより粉体を流動させ、バインダーとなる液体を粉体へ均一に噴霧し顆粒体を製造する。これら混合造粒用造粒機をカルボキシル基含有重合体粒子に応用しようとした場合、カルボキシル基含有重合体粒子は非常に粒径が細かく、嵩密度が小さいため気流や撹拌翼、転動により流動させることが困難である。またバインダーとして使用する液体は、カルボキシル基含有重合体粒子が主に化粧品に使用されることと環境に配慮する観点から水が好ましいが、カルボキシル基含有重合体粒子を流動させながら水を噴霧するとカルボキシル基含有重合体粒子が粘着性を帯び造粒機の内壁やバインダーを噴霧するノズルに付着したり、カルボキシル基含有重合体粒子同士がくっついて大きな塊を形成したりする。
【0010】
強制造粒用の造粒機としては、圧縮成形造粒機、押し出し造粒機といったものが挙げられる。カルボキシル基含有重合体粒子を強制造粒を利用して顆粒化した例としては、微粉末を圧縮成形装置にて圧縮し、粉砕する方法(特許文献11参照)などがある。しかしながらこの方法は、圧縮成形装置の圧力により、カルボキシル基含有重合体粒子が過度に圧縮され、得られる顆粒状カルボキシル基含有水重合体粒子の水への膨潤性が悪化する等の問題を有している。
【0011】
熱利用造粒用の造粒機としては、スプレードライヤーが挙げられる。しかしながらこれはカルボキシル基含有重合体粒子をスプレー可能な粘度まで水または有機溶媒等で希釈する必要があり経済的でない上に、得られる顆粒が多孔質でないために水への溶解性が悪くなる等の問題を有している。
【0012】
一方、上記の造粒機を使わない顆粒化方法として、例えば高分子凝集剤の微粉末と水蒸気の湯気とを接触させて造粒する方法(特許文献12参照)、水溶性高分子微粉末を有機溶剤に分散させた後、水を添加し造粒する方法(特許文献13参照)、微粉状の水溶性高分子物質に滑剤と水とを同時的かつ連続的に供給し、ゲル体に造粒した後、粉砕する方法(特許文献14参照)などが知られている。しかしながらカルボキシル基含有重合体粒子は、(1)水蒸気の湯気が結露した水がカルボキシル基含有重合体粒子と接触すると、カルボキシル基含有重合体粒子が水に膨潤し最終的に得られる顆粒が無孔質となることから水への溶解性が悪くなること、また粉体を落下させて水蒸気の湯気と接触させる方法では、カルボキシル基含有重合体粒子は流動性が悪く均一に落下させることが困難であるとともに、粉体を落下させる際に大量の粉塵が発生するおそれがあること、(2)有機溶剤に分散させた後に水を添加したときに含水したゲルが塊状化するといった問題が生じること、(3)使用用途によっては不要な滑剤を含んでおり、かつゲル体を経て造粒されることから、得られる顆粒が多孔質でないために水への溶解性が悪くなること、等の問題を有しているため、これらの方法を適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2923629号明細書
【特許文献2】米国特許第2958679号明細書
【特許文献3】特開昭58−84819号公報
【特許文献4】米国特許第5342911号明細書
【特許文献5】米国特許第5663253号明細書
【特許文献6】米国特許第4996274号明細書
【特許文献7】特公平5−39966号公報
【特許文献8】特公昭60−12361号公報
【特許文献9】特開昭51−6190号公報
【特許文献10】米国特許第5004598号明細書
【特許文献11】国際公開第03/016382号パンフレット
【特許文献12】特開昭52−2877号公報
【特許文献13】特開昭52−136262号公報
【特許文献14】特開平3−143605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、嵩密度が大きく、かつ水に膨潤しやすい顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、所定の嵩密度を有するカルボキシル基含有重合体粒子を、特定の厚みでベルト上に載せて吸湿させることにより凝集体となし、引き続きこれを乾燥し、粉砕することにより、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子が得られることを見出し完成された。すなわち、本発明は、
項1.嵩密度が0.1〜0.3g/cmのカルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程、前記カルボキシル基含有重合体粒子を、連続的に移動するベルト上に、厚みが5〜30mmとなるように載せ、加湿槽内を通過させることで、前記カルボキシル基含有重合体粒子を含水率が3〜15質量%となるように吸湿させることにより、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程、及び、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を乾燥した後、粉砕する工程を有する顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
項2.カルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程において、α,β−不飽和カルボン酸類と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることにより、架橋型カルボキシル基含有重合体粒子を作製する項1記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
項3.カルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程において、α,β−不飽和カルボン酸類と、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることにより、アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子を作製することを特徴とする項1記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
項4.カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程において、加湿槽内の温度を50〜100℃、加湿槽内の相対湿度70〜100%の雰囲気下で保持し、加湿槽内を2〜15分間で通過させる項1、2または3記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
項5.項1、2、3または4記載の製造方法により得られる、
1)中位粒子径が、250〜700μm
2)106μm以下の粒子の割合が、30質量%以下
3)嵩密度が、0.35g/cm以上、
の特性を有する顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子、に関する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法は、嵩密度が0.1〜0.3g/cmのカルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程を有する。
前記カルボキシル基含有重合体粒子としては、架橋型カルボキシル基含有重合体粒子、アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子を用いることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる架橋型カルボキシル基含有重合体粒子は、α,β−不飽和カルボン酸類と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることによって製造することができる。
【0019】
前記架橋型カルボキシル基含有重合体粒子を作製する場合のα,β−不飽和カルボン酸類としては、特に限定されず例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸ベヘニル等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明では、アクリル酸およびメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。
【0020】
前記架橋型カルボキシル基含有重合体粒子を作製する場合、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量は後述する不活性溶媒の100容量部に対して6〜25容量部であることが好ましく、8〜22容量部であることがより好ましく、13〜20容量部であることがさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が6容量部未満の場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液の透明性が悪化するおそれがある。また、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が25容量部を超える場合、反応が進行するにつれ、架橋型カルボキシル基含有重合体粒子が析出し、均一に攪拌することが困難となり、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液表面のなめらかさが悪化するおそれがある。
なお、本発明において、中和粘稠液の中和とは、当該液のpHが6.5〜7.5であることを意味する。
【0021】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されず例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール等のポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類;前記ポリオールの2置換以上のアリルエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。中でも、少量で高い増粘性を有する中和粘稠液を得られ、乳化物、懸濁物等に高い懸濁安定性を付与することができることから、ペンタエリスリトールアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースが好ましい。
【0022】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100重量部に対して、0.01〜2重量部であることが好ましく、0.3〜1.5重量部であることがより好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.01重量部未満の場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液の粘度が低下するおそれがある。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が2重量部を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液中に不溶性のゲルが生成しやすくなるおそれがある。
【0023】
本発明で用いられるアルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子は、α,β−不飽和カルボン酸類と、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることによって製造することができる。
【0024】
前記アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子を作製する場合のα,β−不飽和カルボン酸類としては、特に限定されず例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子を作製する場合、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量は後述する不活性溶媒の100容量部に対して6〜25容量部であることが好ましく、8〜22容量部であることがより好ましく、13〜20容量部であることがさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が6容量部未満の場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液の透明性が悪化するおそれがある。また、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が25容量部を超える場合、反応が進行するにつれ、アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子が析出し、均一に攪拌することが困難となり、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液表面のなめらかさが悪化するおそれがある。
【0026】
本発明に用いられる、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が10〜30である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステルおよび(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらの中でも、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の中和粘稠液および電解質存在下における当該液の粘度特性や質感が優れていることから、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。なお、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0027】
本発明におけるアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が、α,β−不飽和カルボン酸類100重量部に対して0.5重量部未満である場合には、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の中和粘稠液の電解質存在下における透過率が不十分になるおそれがあり、一方、20重量部を超える場合には、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の水への溶解性を損なうおそれがある。
【0028】
前記ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。
【0029】
ラジカル重合開始剤の使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100重量部に対して、0.01〜0.45重量部であることが好ましく、0.01〜0.35重量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01重量部未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。また、ラジカル重合開始剤の使用量が0.45重量部を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液の表面なめらかさが悪化するおそれがある。
【0030】
本発明において不活性溶媒とは、α,β−不飽和カルボン酸類、および、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物またはアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを溶解するが、得られるカルボキシル基含有重合体粒子を溶解しない溶媒をいう。
【0031】
前記不活性溶媒としては例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、品質が安定しており入手が容易である観点から、エチレンジクロライドおよびノルマルヘキサンが好ましい。
【0032】
α,β−不飽和カルボン酸類とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させる際、または、α,β−不飽和カルボン酸類とアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを重合させる際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0033】
反応温度は、反応溶液の粘度上昇を抑制し、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液の表面なめらかさを向上させる観点から、50〜90℃、好ましくは55〜75℃であることが望ましい。
【0034】
反応時間は、反応温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、2〜10時間である。
【0035】
反応終了後、反応溶液を80〜130℃に加熱し、不活性溶媒を揮散除去することにより白色微粉末のカルボキシル基含有重合体粒子を得ることができる。加熱温度は、80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子から調製される中和粘稠液表面のなめらかさが悪化するおそれがある。
【0036】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル記含有重合体粒子の製造方法において、作製されるカルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度は0.1〜0.3g/cmである。
前記カルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度が0.1g/cm未満である場合、凝集が促進されすぎるため乾燥後の粉砕が困難になるほか、水へ分散したときに溶解するまでの時間が長くなる等の欠点を有する。また、前記カルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度が0.3g/cmを超える場合、ベルト上で吸湿したカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体において、上部と下部とで含水率のバラツキが生じ、均質な顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子が得られなくなる。前記嵩密度は0.12〜0.28g/cmが好ましい。
【0037】
本発明において、カルボキシル基含有重合体粒子の「嵩密度」とは、カルボキシル基含有重合体粒子の重量と、該重量のカルボキシル基含有重合体粒子の容積との比をいう。より具体的には、カルボキシル基含有重合体粒子10gを50ml容の空メスシリンダー上部5cmの高さから20秒間以内で投入した後、カルボキシル基含有重合体粒子の占める容積(cm)を測定し、カルボキシル基含有重合体粒子の重量10gを、カルボキシル基含有重合体粒子の占める容積(cm)で除することにより算出した値をいう。
【0038】
前記嵩密度が0.1〜0.3g/cmのカルボキシル基含有重合体粒子は、例えば、前記重合の際に、不活性溶媒の種類、不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度等を、下記の傾向を参照して制御することで調整することができる。
・比誘電率の低い不活性溶媒を使用すると、嵩密度が小さくなる傾向がある。
・比誘電率の高い不活性溶媒を使用すると、嵩密度が大きくなる傾向がある。
・不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度を低く設定すると、嵩密度が大きくなる傾向がある。
・不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度を高く設定すると、嵩密度が小さくなる傾向がある。
【0039】
本発明では、前記カルボキシル基含有重合体粒子を、連続的に移動するベルト上に、厚みが5〜30mmとなるように載せ、加湿槽内を通過させることで、前記カルボキシル基含有重合体粒子を含水率が3〜15質量%となるように吸湿させることにより、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程を行う。
【0040】
前記カルボキシル基含有重合体粒子を顆粒化装置等のベルト上に載せる際、その厚みは、5〜30mmであり、10〜25mmであることが好ましい。
前記厚みが5mm未満の場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体が前記ベルトから剥離しにくくなり、生産性が悪くなる。また、厚みが30mmを超える場合、ベルト上で吸湿したカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体において、上部と下部とで含水率のバラツキが生じ、均質な顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子が得られなくなる。
【0041】
前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程において、加湿槽内の温度は50〜100℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。
前記加湿槽内の温度が50℃未満の場合、カルボキシル基含有重合体粒子を凝集させるために長時間を要することがある。また、加湿槽内の温度が100℃を超える場合、その温度を保持するのに大量のエネルギーを要し経済的でない。
【0042】
前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程において、加湿槽内の相対湿度は70%〜100%であることが好ましく、75%〜100%であることがより好ましい。
前記加湿槽内の相対湿度が70%未満の場合、カルボキシル基含有重合体粒子を凝集させるために長時間を要することがある。また、加湿槽内の相対湿度が100%を超える場合、結露した水が発生し、その水によりカルボキシル基含有重合体粒子が膨潤し、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の水への溶解性が低くなることがある。
【0043】
前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程において、加湿槽内を通過させる時間は2〜15分間であることが好ましく、3〜12分間であることがより好ましい。通過時間が2分間未満の場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体の凝集強度が弱くなり、後述の粉砕工程後に微粉量が増加することがある。また、通過時間が15分間を超える場合、得られるカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体の凝集強度が強くなり、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の溶解性が低下することがある。
【0044】
カルボキシル基含有重合体粒子を吸湿させ、凝集体となす際の含水率は、3〜15質量%であり、4〜10質量%が好ましい。含水率が3質量%未満の場合、カルボキシル基含有重合体粒子を凝集させる作用が小さく十分な凝集が得られない。一方、カルボキシル基含有重合体粒子の含水率が15質量%を超える場合、凝集が促進されすぎるため乾燥後の粉砕が困難になったり、水へ分散したときに溶解するまでの時間が長くなったり、後述の乾燥後のカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体の含水率を15質量%に調整するのに煩雑になる等の欠点を有する。
【0045】
本明細書おいて含水率とは、カルボキシル基含有重合体粒子を乾燥し、乾燥により減少した重量と乾燥前の重量の比をいう。より具体的には、カルボキシル基含有重合体粒子2gを105℃で3時間加熱乾燥した前後の重量比を次式により算出して求める。
【0046】
含水率(質量%)=(2−X)/2 × 100
(式中、Xは加熱乾燥後の重量(g))
【0047】
上記のようにして、カルボキシル基含有重合体粒子を含水率が3〜15質量%となるように吸湿させると、粒子同士が水をバインダーとして結合し、凝集体を形成する。
【0048】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法では、得られたカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を乾燥した後、粉砕する工程を行う。
この凝集体を乾燥し、粉砕することにより、本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得ることができる。
【0049】
前記乾燥に用いられる乾燥装置は特に限定されないが、例えば、送風乾燥機、溝型乾燥機、減圧乾燥機等が挙げられる。
乾燥温度としては80〜130℃、好ましくは90〜120℃であることが望ましい。
乾燥温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがある。また、乾燥温度が130℃を超える場合、得られる顆粒状のカルボキシル基含有重合体粒子の水への溶解性が低くなるおそれがある。
また、乾燥後のカルボキシル基含有重合体粒子の凝集体の含水率は、次工程である粉砕工程の流動性を確保する観点、得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を長期保存した際に塊状化を防ぐ観点から、15質量%以下にすることが好ましい。
【0050】
粉砕に用いられる粉砕装置としては、特に限定されず、例えば、ピンミル型粉砕機、ハンマーミル型粉砕機、ジェットミル型粉砕機等の一般に使用されている粉砕機を使用することができる。
【0051】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法を用いることで、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得ることができるが、さらに所望の目開きの篩を用いて分級し粗粉を取り除くことによって、所望の中位粒子径となすこともできる。
【0052】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法を行う際に使用される顆粒化装置の一例を図1に示す。
図1に示すように、顆粒化装置1は、主に加湿槽2と冷却槽3とからなり、冷却槽3には、送風発生機4が接続されている。また、加湿槽2と冷却槽3とを連続して移動できるように、ベルト5が設けられている。なお、加湿槽2の内部には、複数のスチーム噴出しノズル6が設置されており、ベルト5に載置された加湿対象物に直接蒸気を吹き付けることが可能な構成となっている。
本発明では、まず、嵩密度が所定の範囲内のカルボキシル基含有重合体粒子を、ベルト5の加湿槽通過前の部分(5’)に、所定の厚みで載せる。
次いで、所定の温度、相対湿度に設定された加湿槽2を通過させ、含水率を所定の範囲内とした後、冷却槽3を通過させことにより冷却する。
冷却後、得られた凝集物を粉砕機、乾燥機を用いて粉砕、乾燥した後、分級することにより、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子が得られる。
【0053】
本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子は、好ましくは以下のような特性を有している。
1)中位粒子径が、250〜700μm
2)106μm以下の粒子の割合が、30質量%以下
3)嵩密度が、0.35g/cm以上
【0054】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の中位粒子径は、250〜700μmであることが好ましく、より好ましくは250〜600μmである。中位粒子径が250μm未満の場合、得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を使用する際に粉塵が立ちやすく、前記顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を水に対して投入した際にママコが生じやすくなるおそれがある。また、中位粒子径が700μmを超える場合、得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を水に対して投入した際、前記重合体粒子が膨潤するまでに時間がかかるおそれがある。
【0055】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子は、106μm以下の粒子の割合が30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
前記106μm以下の粒子の割合が30質量%を超える場合、取り扱い時に発塵が生じ作業性が悪くなるおそれがある。
本明細書において106μm以下の粒子の割合とは、後述の方法により測定した値である。
【0056】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度は、0.35g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.35〜0.6g/cmである。嵩密度が0.35g/cm未満の場合、微紛が多く作業性が悪くなり、製品梱包の容積効率も低下する。
【発明の効果】
【0057】
本発明の製造方法によれば、微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子と比べママコが発生しにくく、水への溶解性に優れ、粉立ちが少なく作業性に優れた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を簡便に得ることができる。
また本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を水に溶解させた後、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のアルカリで中和することにより、短時間で表面のなめらかさ、増粘性および透明性に優れた中和粘稠液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法を行う際に使用される顆粒化装置の一例を模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0060】
[評価方法]
(1)含水率
カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体または顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子2gを、105℃で3時間加熱乾燥した前後の質量比を次式により算出して求める。ただし、式中のXは加熱乾燥後の質量(g)を表す。
含水率(質量%)=(2−X)/2×100
【0061】
(2)中位粒子径
本明細書において中位粒子径とは、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を篩で分級したときに各篩上に残っている前記粒子の質量を順次積算して得られた積算質量が、前記粒子の全質量の50質量%に達したときの篩目開きに相当する粒子径をいう。より具体的には、JIS−Z8801−1982に規定された7つの標準篩(目開き:850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μm)および受け皿を用意し、目開きの小さい篩から目開きの大きい篩を順次積層する。一番目開きの大きい篩に顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子100gを入れ、ロータップ式篩振動機を用いて10分間振動させる。各篩上に残った前記粒子を秤量し、順次積層して得られた積算質量が前記粒子の全質量の50質量%に達したときの篩の目開きに相当する粒子径を、次式により算出して求められた粒子径を中位粒子径とする。
中位粒子径(μm)=[(50−A)/(C−A)]×(D−B)+B
なお、式中、Aは、目開きの大きい篩から順次篩上に残った顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の質量を積算し、積算質量が全質量の50質量%未満であり、かつ50質量%に最も近い篩までの積算値(g)である。Cは、目開きの大きい篩から順次篩上に残った前記粒子の質量を積算し、積算質量が前記粒子の全質量の50質量%以上であり、かつ50質量%に最も近い篩までの積算値(g)である。Dは、Aの積算値を求めた時の篩の目開き(μm)である。Bは、Cの積算値を求めた時の篩の目開き(μm)である。
【0062】
(3)106μm以下の粒子の割合
前記(2)中位粒子径の測定において、受け皿に残った顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の質量を、測定に用いた前記粒子の総質量で除して百分率に換算して求める。
【0063】
(4)嵩密度
カルボキシル基含有重合体粒子または顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子10gを、50cm容の空メスシリンダーの上部5cmの高さから20秒間以内で投入し、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の占める容積(cm)を測定する。前記粒子の質量10gを、前記容積(cm)で除することにより算出して求める。
【0064】
(5)溶解性
顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を、JIS−Z8801−1982に規定された2つの標準篩(目開き:850μm、106μm)および受け皿を用いて分級し、目開きが106μmの篩の上に残った顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を測定に用いる。
1L容のプラスチック製ビーカーに蒸留水495gを入れ、超高速マルチ攪拌システム(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ロボミックス、型番:Aタイプ、攪拌部:T.K.ホモミクサーMII 2.5型)を用いて回転数:13500r/minの攪拌状態とする。前記攪拌状態の蒸留水に、前記粒子径を調整した顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子5gを素早く添加し、2分間攪拌する。その後、攪拌を止め、得られたスラリーの一部を遠心分離機(株式会社シンキー社製、商品名:コンディショニングミキサー、型番:MX−201)を用いて、2000r/minで30秒間遠心分離し、アルミカップ(アズワン株式会社製、型番:No.6)に遠心分離後のスラリーから1.5gを測りとる。次に、着色剤として1質量%の青色1号水溶液1滴を前記スラリーに加え、24時間静置させ自然乾燥させる。乾燥後、目視により粒子形状と判定できる粒子個数を数え、以下の基準により評価した。
○:50個以下
△:51〜60個
×:61個を超える
【0065】
(6)発塵度
顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を、JIS−Z8801−1982に規定された2つの標準篩(目開き:850μm、106μm)および受け皿を用いて分級し、目開きが106μmの篩の上に残った顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を測定に用いる。
前記粒子径を調整した顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子10gを、ガラス製サンプル容器(NICHIDEN−REKA社製、型番:SV−50A)に入れてフタをし、20cmの幅で上下に往復10回手で振る。目視により、容器内側面に付着した状態を以下の基準により評価した。
A:付着度が0%以上、20%以下
B:付着度が20%を超え、40%以下
C:付着度が40%を超え、60%以下
D:付着度が60%を超え、80%以下
E:付着度が80%を超え、100%以下
【0066】
[製造例1]
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた200L容の反応容器に、ノルマルヘキサン60kg(89.6L)、アクリル酸18kg(17.16L)、ペンタエリスリトールアリルエーテル99.2g、および、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル61.2gを仕込んだ。
引き続き、均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料、および、溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器系内を窒素雰囲気下とした。次いで、窒素雰囲気下、60〜62℃に保持して4時間重合反応させた。
重合反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに110℃、10mmHgの条件で8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体粒子16.4kgを得た。
得られたカルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度は0.14g/cm、中位粒子径は10〜30μmであった。
【0067】
[製造例2]
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた200L容の反応容器に、n−ヘプタン43.5kg、酢酸エチル14.4kg、および、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)14.4gを仕込んだ。
引き続き、均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料、および、溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器系内を窒素雰囲気下とした。
次いで、前記溶液の温度を73〜75℃に保ちながら、窒素雰囲気下、単量体溶液(アクリル酸25kg、n−ヘプタン21.8kg、酢酸エチル7.2kg、および、ペンタエリスリトールアリルエーテル144gの混合溶液)を0.3kg/hrの速度で連続的に滴下し、滴下終了後73〜75℃で4時間重合反応させた。
重合反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、溶剤を留去し、さらに110℃、10mmHgの条件で8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体粒子22.8kgを得た。
得られたカルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度は0.23g/cm、中位粒子径は10〜30μmであった。
【0068】
[製造例3]
撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた200L容の反応容器に、n−ヘプタン49.0kg、酢酸エチル7.2kg、および、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)14.4gを仕込んだ。
引き続き、均一に撹拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料、および、溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器系内を窒素雰囲気下とした。
次いで、前記溶液の温度を73〜75℃に保ちながら、窒素雰囲気下、単量体溶液(アクリル酸24kg、n−ヘプタン24.5kg、酢酸エチル3.6kg、および、ペンタエリスリトールアリルエーテル144gの混合溶液)を0.3kg/hrの速度で連続的に滴下し、滴下終了後73〜75℃で4時間重合反応させた。
重合反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、溶剤を留去し、さらに110℃、10mmHgの条件で8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体粒子22.4kgを得た。
得られたカルボキシル基含有重合体粒子の嵩密度は0.35g/cm、中位粒子径は10〜30μmであった。
【0069】
[実施例1]
製造例1の方法により得られたカルボキシル基含有重合体粒子を、図1に示す顆粒化装置のベルト上に、ベルト幅方向に400mm、厚み15mmで連続して載せた。
次いで、ベルト上のカルボキシル基含有重合体粒子を、温度85〜95℃、相対湿度100%(スチーム流量:60kg/hr)に調整した加湿槽内(2m)に、5分間で通過させ、カルボキシル基含有重合体粒子の凝集物を得た。得られたカルボキシル基含有重合体粒子の凝集物の含水率は、5.2質量%であった。
引き続き、得られたカルボキシル基含有重合体粒子の凝集物を、40〜50℃に調整された冷却槽を、5分間で通過させて冷却した。冷却後、得られた凝集物を、粉砕機(サンドビック社製)を用いて粉砕し、5〜15mmの粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、110℃、10mmHgの条件で8時間減圧乾燥させた。乾燥物を、粉砕機(槇野産業株式会社製、型番:マキノ式DD−2型、3.7kw)を用いて粉砕して、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得た後、目開きが850μmおよび106μmの篩(JIS−Z8801−1982に規定された標準篩)、ならびに受け皿を用いて分級し、106μmを超え850μm以下に粒度を調整した顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得た。
得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子について、上述した各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2〜5]
実施例1において、表1に記載のそれぞれの条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得た。
得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子について、上述した各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1〜4]
実施例1において、表1に記載のそれぞれの条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得た。
得られた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子について、上述した各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法によれば、微粉末状のカルボキシル基含有重合体粒子と比べママコが発生しにくく、水への膨潤性に優れ、粉立ちが少なく作業性に優れた顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を得ることができる。また本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子を水に膨潤させた後、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のアルカリで中和することにより、短時間で表面のなめらかさ、増粘性および透明性に優れた中和粘稠液を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 顆粒化装置
2 加湿槽
3 冷却槽
4 送風発生機
5 ベルト
6 スチーム噴出しノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度が0.1〜0.3g/cmのカルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程、
前記カルボキシル基含有重合体粒子を、連続的に移動するベルト上に、厚みが5〜30mmとなるように載せ、加湿槽内を通過させることで、前記カルボキシル基含有重合体粒子を含水率が3〜15質量%となるように吸湿させることにより、前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程、及び、
前記カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を乾燥した後、粉砕する工程を有する
ことを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
カルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程において、α,β−不飽和カルボン酸類と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることにより、架橋型カルボキシル基含有重合体粒子を作製することを特徴とする請求項1記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
【請求項3】
カルボキシル基含有重合体粒子を作製する工程において、α,β−不飽和カルボン酸類と、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることにより、アルキル変性カルボキシル基含有重合体粒子を作製することを特徴とする請求項1記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
カルボキシル基含有重合体粒子の凝集体を作製する工程において、加湿槽内の温度を50〜100℃、加湿槽内の相対湿度70〜100%の雰囲気下で保持し、加湿槽内を2〜15分間で通過させることを特徴とする請求項1、2または3記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子であって、
1)中位粒子径が、250〜700μm
2)106μm以下の粒子の割合が、30質量%以下
3)嵩密度が、0.35g/cm以上
の特性を有することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195780(P2011−195780A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66772(P2010−66772)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】