説明

顆粒球コロニー刺激因子の誘導体化

本発明は、GCSFまたはGCSF様タンパク質の多糖誘導体である化合物であって、多糖はアニオン性であり、2〜200個の糖ユニットを含む化合物に関する。本発明はまた、該新規化合物を含む医薬組成物、および該新規化合物の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GCSFの新規多糖誘導体、およびこのような誘導体を製造する方法に関する。該誘導体は、GCSFの安定性、薬物動態(pharmacokinetics)及び薬力学(pharmacodynamics)を改善するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF、CSF3)は糖タンパク質である。これは、ホルモン、増殖因子、またはサイトカインとして作用することができ、いくつかの異なる組織によって生成され、骨髄を刺激して、顆粒球および幹細胞を生成する。GCSFは、また好中球前駆体および成熟好中球の生存、増殖、分化、および機能を刺激する。
【0003】
GCSFは、内皮、マクロファージ、およびいくつかの他の免疫細胞によって生成される。天然のヒト糖タンパク質は、2つの形、すなわち分子量19,600グラム/モルの174および180アミノ酸長のタンパク質で存在する。より豊富でより活性な174アミノ酸の形は、組換えDNA(rDNA)技術による医薬品の開発で使用されている。1983年に初めて、マウスGCSFがオーストラリアで認められ、精製され、1986年に、日本および米国のグループによってヒト型がクローン化された。GCSF受容体は、骨髄の前駆細胞上に存在し、GCSFによる刺激に応答して、成熟顆粒球への増殖および分化を開始する。
【0004】
GCSFは白血球の生成を刺激する。腫瘍学および血液学において、組換え型GCSFは、ある種の癌患者において、化学療法を受けた後の好中球減少からの回復を加速して、より高強度の治療計画を可能にするために使用される。化学療法は、骨髄抑制を引き起こし、白血球レベルを許容されないほど低くする恐れがあり、患者は感染しやすく、敗血症にかかりやすくなる。GCSFは、また造血幹細胞移植で使用するため白血球アフェレーシスによる回収の前に血中の造血幹細胞数を増加させるために使用される。
【0005】
大腸菌(E.coli)発現系において合成される組換え型ヒトGCSFは、フィルグラスチムと呼ばれる。フィルグラスチムの構造は、天然糖タンパク質の構造とわずかに異なる。公表された研究の大半は、フィルグラスチムを使用している。フィルグラスチム(Neupogen(登録商標))は、rhGCSF(組換え型ヒトGCSF)の市販されている形である。
【0006】
別の形の組換え型ヒトGCSFであるレノグラスチムは、チャイニーズハムスター卵巣細胞において合成される。レノグラスチムは哺乳類細胞発現系であるので、174−アミノ酸天然ヒトGCSFと区別がつかない。フィルグラスチムとレノグラスチムでは臨床または治療結果の差はまだ特定されておらず、また正式な比較試験は行われていない。
【0007】
GCSFを誘導体化してその薬物動態特性を改善する試みがなされてきた。GCSFのポリエチレングリコールで誘導体化された形であるPEG−フィルグラスチム(Neulasta(登録商標))という製品が市場に出ている。これは、フィルグラスチムより長い半減期を有し、毎日注射する必要性を低減することがわかっている。PEG−フィルグラスチムの設計および開発は、さらにCurr.Pharm Des.、2004年;10(11):1235〜44頁に記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第20070014759号には、未変化のグリコシル連結基を介して結合しているGCSFとPEG部分の複合体が記載されている。複合体は、糖転移酵素の中鎖アミノ酸に対する作用によりグリコシル化ペプチドと非グリコシル化ペプチドの両方から形成される。米国特許第6956027号は、GCSFのN末端をPEGで選択的に修飾するための条件を提供する。
【0009】
他には、GCSFがPEG以外の分子で誘導体化されている。例えば、国際公開第2005/014050号には、ヒドロキシアルキルデンプンに共有結合しているGCSFが記載されている。
【0010】
先行技術を考えると、ヒトおよび動物の治療において使用することができ、最適化された安定性、半減期、および低毒性を有する改善されたGCSF誘導体を提供する必要がある。PSAをGCSFに結合させると、このような特性が与えられることが明らかになり、それによって本発明に到達した。N末端においてアニオン性多糖に結合しているGCSFが記載されたのは今回が初めてである。
【0011】
ポリシアル酸(PSA)は、ある種の菌株によって、また哺乳類のある種の細胞において生成された天然シアル酸非分岐ポリマーである。これらは、限定酸加水分解、またはノイラミニダーゼによる消化、またはポリマーの細菌で誘導された天然の形の分画によって、n=約80以上のシアル酸残基からn=2のシアル酸残基に至るまで様々な重合度で生成される可能性がある。
【0012】
近年では、タンパク質および低分子量薬物分子の薬物動態特性を改変するために、ポリシアル酸の生物学的特性、具体的にはα−2,8結合同種重合ポリシアル酸の生物学的特性が利用されている。ポリシアル酸誘導体化によって、カタラーゼおよびアスパラギナーゼを含めて、いくつかの循環している治療用タンパク質の半減期に劇的な改善が生じ、またこのようなタンパク質を、治療用タンパク質に前曝露した望ましくない(および不可避なこともある)結果として生じる既存の抗体に直面して使用することも可能になる[FernandesおよびGregoriadis、2006年;Jainら、2003年、2004年]。α−2,8結合ポリシアル酸は、本来人体の一部であり、組織のノイラミニダーゼを介して、無毒性の糖であるシアル酸に分解する免疫学的に見えない生分解性ポリマーであって、PEGの魅力的な代替物を提供する。
【0013】
我々は、以前に多糖(具体的には、PSA)をタンパク質などの治療剤に結合させる方法を記載した[米国特許第5846,951号;国際公開第0187922号]。これらの方法の一部は、第一級アミン基において反応するタンパク質反応性アルデヒド部分を生じるポリマーの「非還元性」末端の化学誘導体化に依存する。非還元性シアル酸末端ユニットは、隣接ジオールを含有するので、容易に(かつ選択的に)過ヨウ素酸塩で酸化して、モノ−アルデヒドの形を得ることができる。このモノ−アルデヒドは、タンパク質に対して反応性がはるかに高く、還元的アミノ化および他の化学反応によるタンパク質の結合のための適切な反応性元素を含む。反応は図1および2で示される。
【0014】
図1は、コロミン酸(大腸菌に由来するα−2,8結合ポリシアル酸)を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化して、タンパク質反応性アルデヒドを非還元性末端に形成する反応を示す。
【0015】
図2は、シッフ塩基をシアノ水素化ホウ素ナトリウムで選択的に還元して、タンパク質アミノ基と安定な不可逆的共有結合を形成する反応を示す。
【0016】
上述した通常の複合体化反応中、例えばコロミン酸とアミノ酸の側鎖との反応によって、意図していない副生物が生成されることがある。これらは、ヒトおよび動物において治療上使用するために規制当局から求められる化学的に定められた複合体の製造において十分扱いにくい可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070014759号
【特許文献2】米国特許第6956027号
【特許文献3】国際公開第2005/014050号
【特許文献4】米国特許第5846,951号
【特許文献5】国際公開第0187922号
【特許文献6】国際公開第2006/016168号
【特許文献7】国際公開第92/22331号
【特許文献8】国際公開第2005/016973号
【特許文献9】国際公開第03/055526号(6および7頁、表)
【特許文献10】国際公開第06/00540号
【特許文献11】国際公開第05/016974号
【特許文献12】国際公開第2005/03149号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Curr.Pharm Des.、2004年;10(11):1235〜44頁
【非特許文献2】FernandesおよびGregoriadis、2006年
【非特許文献3】Jainら、2003年
【非特許文献4】Jainら、2004年
【非特許文献5】Wangら、1999年
【非特許文献6】Svennerholm、1957年
【非特許文献7】Gregoriadisら、1993年
【非特許文献8】FernandesおよびGregoriadis、1996年
【非特許文献9】FernandesおよびGregoriadis、1997年
【非特許文献10】Shrinerら、1980年
【非特許文献11】ParkおよびJohnson、1949年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
反応生成物の大部分の物理化学特性は類似しているので、所期の反応生成物(例えば、モノポリシアル化生成物)を意図されたものでない様々な生成物から精製することは簡単ではない。これは、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル浸透クロマトグラフィー(それぞれ電荷およびサイズを基準として分離する)などの技法が不十分な精製プロファイルを生じることを意味する。この問題は、複合体化反応における生成物の複雑さを低減させることによって克服することができる。我々は、タンパク質のN末端の高い反応性を利用することができ、過ヨウ素酸塩で酸化された天然コロミン酸を用いたタンパク質の還元的アミノ化の確立した方法(図1および2)で得られた生成物の複雑さを回避する、多糖のタンパク質への結合のための新規な方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様によれば、GCSFまたはGCSF様タンパク質のN末端多糖誘導体である化合物であって、多糖はアニオン性であり、2〜200個の糖ユニットを含む化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】非還元性シアル酸末端ユニットの活性化の先行技術を示す反応スキームである。
【図2】タンパク質のN末端またはランダム誘導体化を示す反応スキームである。
【図3a】トリプル検出GPC(Viscotek:RI+RALS+粘度計)を使用して、様々なpHにおける24kDaのコロミン酸(CA)の分解を示す図である。
【図3b】400mMのNaClで分画されたCAのGPCクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4】製剤添加剤の存在下、SDS−PAGEによるポリシアル化GCSFの特徴付けを示す図である。
【図5】SE−HPLC(左側)およびSDS−PAGE(右側)によるポリシアル化GCSFのキャラクタリゼーションを示す図である。
【図6】SE−HPLCによるGCSFのキャラクタリゼーションを示す図である。
【図7】未変性PAGEによるポリシアル化42kDa−GCSFのキャラクタリゼーションを示す図である。
【図8】GCSFの固定化金属アフィニティークロマトグラフィーからの結果を示す図である。
【図9】MNFS60細胞におけるポリシアル化GCSFのインビトロ活性を示す図である。
【図10】ポリシアル化GCSF製剤(CA41KDa−GCSF)の安定性のSE−HPLCデータを示す図である。
【図11】GCSFのFACSデータを示す図である(好中球数)。
【図12】GCSF製剤のインビボ有効性を示す図である。
【図13】SE−HPLCによるPEG化GCSFのキャラクタリゼーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、用語GCSFが使用されるとき、GCSF様タンパク質も包含されるよう意図されている。GCSF様タンパク質は、(a)アミノ酸配列がSEQ ID.NO.1と少なくとも50パーセント(50%)は同一であり、かつ(b)バイオアッセイによって測定して、ヒト顆粒球コロニー刺激因子活性が、実施例1に記載のバイオアッセイに従って測定されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(ヒト、rDNA由来)の世界保健機構の国際規格(World Health Organization International Standard)に比べて、少なくとも35パーセント(35%)、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60または70%である、ヒト顆粒球コロニー刺激因子の活性を有する任意の生物学的化合物を意味する。
【0023】
GCSF様タンパク質は、「GCSFホモログ」とも呼ばれることがある。2つの配列がホモログであるかどうかは、パーセント類似性または同一性(これらの用語は当技術分野でよく知られている)を使用してルーチンで算出される。配列は、スイスプロットアクセッション番号P09919のヒトGCSFであるSEQ ID NO.1と比較するべきである。活性GCSFは、この配列の残基30〜207である。GCSFホモログ配列は、SEQ ID NO.1の全体またはその残基30〜207と比較してもよい。ホモログは、活性GCSFと比較されることが好ましい。
【0024】
本発明では、ホモログは、類似性または同一性がアミノ酸レベルで50%以上、より好ましくは60%、70%、80%以上、より好ましくは90%以上、具体的には同一性または類似性がアミノ酸レベルで95%または99%である。いくつかのプログラムが、類似性または同一性を算出するために利用可能である。好ましいプログラムは、www.ncbi.nlm.nih.govで利用可能である、デフォルトパラメータで実行されるBLASTn、BLASTp、およびBLASTxプログラムである。例えば、BLASTnプログラムをデフォルトパラメータ(スコア=100、語長=11、期待値=11、低複雑配列のフィルタリング=オン)で使用して、2つのアミノ酸配列を比較することができる。これらのデフォルトパラメータを使用して、上記の相同性レベルを算出することができる。
【0025】
GCSFは、グリコシル化されていてもよく、またはグリコシル化されていなくてもよい。
【0026】
本発明では、用語GCSFは、ヒトまたは哺乳類の身体から抽出された天然GCSF、およびその合成のもの、具体的には組換え型ヒトGCSF、例えば上述したフィルグラスチムおよびレノグラスチムを包含する。適切なGCSF様活性を有するGCSFの変異体、具体的にはシステイン変異体も包含される。
【0027】
「N末端誘導体」は、GCSFがそのN末端アミン基においてアニオン性多糖で誘導体化されていることを意味する。
【0028】
好ましくは、多糖は、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも5個、最も好ましくは少なくとも10個、例えば少なくとも50個の糖ユニットを有する。
【0029】
アニオン性多糖は、好ましくはポリシアル酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、およびコンドロイチン硫酸から選択される。好ましくは、多糖はポリシアル酸であり、実質的にシアル酸ユニットのみからなる。しかし、多糖は、分子中にシアル酸以外のユニットを有してもよい。例えば、シアル酸ユニットは、他の糖ユニットと交互に現れることがある。しかし、好ましくは、多糖は、実質的にシアル酸ユニットからなる。
【0030】
好ましくは、多糖は末端シアル酸基を有し、上記に詳述するように、より好ましくはα−2−8またはα−2−9結合により互いに結合している少なくとも2個のシアル酸ユニットを含む多糖であるポリシアル酸である。適当なポリシアル酸は、重量平均分子量が2kDa〜200kDaの範囲、好ましくは5〜75kDaの範囲である。最も好ましくは、ポリシアル酸は、細菌源に由来し、例えばE.coli KI、N.meningitidis、Maraxella liquefaciens、もしくはPasteurella aeruginosaの多糖B、またはE.coli K92株由来のK92多糖である。最も好ましくは、E.coli K1由来のコロミン酸である。
【0031】
ポリシアル酸は、塩の形、または遊離酸とすることができる。細菌源からの回収の後に分子量が低減されたように、加水分解された形でもよい。
【0032】
多糖、好ましくはポリシアル酸は、広範な分子量を有する材料、具体的には1.3超、例えば2以上と同量の多分散度を有する材料とすることができる。好ましくは、分子量の多分散度が1.3または1.2未満、より好ましくは1.1未満であり、例えば1.01と低い。
【0033】
典型的には、本発明の化合物は、GCSFのポリシアル酸誘導体であり、80〜180個のシアル酸ユニットを含む。より典型的には、化合物は100〜150個のシアル酸ユニットを含む。化合物は、好ましくは120〜145個、最も好ましくは130〜140個のシアル酸ユニットを含む。
【0034】
本発明の第1の態様に従う化合物は、GCSFまたはGCSF様タンパク質のN末端とアニオン性多糖の間の共有結合複合体とすることができる。多糖とGCSFの間の結合の他の手段としては、静電引力が挙げられる。しかし、共有結合が好ましい。共有結合は、カルボキシル基とアミン基の間のアミド結合とすることができる。GCSFが多糖に共有結合することができる別の結合は、シッフ塩基を介する。アミンに結合させるのに適当な基は、さらに国際公開第2006/016168号に記載されている。
【0035】
多糖は、その還元性または非還元性末端ユニットを介してGCSFに結合していてもよい。1つの多糖鎖は、両方の末端ユニットにおいてGCSFタンパク質に結合していてもよい。これは、1つの多糖鎖が2つのGCSFタンパク質に結合していてもよく、すなわちその還元性および非還元性末端において誘導体化されていてもよいことを意味する。
【0036】
本発明では、多糖は、天然多糖または天然多糖の誘導体、例えば糖残基における1つもしくは複数の活性基の反応によって誘導体化された多糖、または多糖鎖の末端の誘導体化基に共有結合された多糖とすることができる。
【0037】
多糖をタンパク質に結合させるための方法は、当該技術分野でよく知られており、国際公開第92/22331号および国際公開第0187922号(A)により詳細に記載されている。本発明において好ましい方法は、より詳細に後述される。方法は本願の図1および2にも記載されている。
【0038】
多糖は、GCSFまたはGCSF様タンパク質に直接、すなわち図1および2に示すように結合していてもよく、あるいはリンカーを介して結合していてもよい。適当なリンカーは、N−マレイミド、ビニルスルホン、N−ヨードアセトアミド、オルトピリジルまたはN−ヒドロキシスクシンイミド含有試薬に由来する。また、リンカーは、生物学的に安定であり、または生分解性であり、例えばポリペプチドまたは合成オリゴマーを含むことができる。リンカーは、国際公開第2005/016973号にさらに記載される二官能性部分に由来してもよい。適当な二官能性試薬は、例えばビス−NHSである。試薬は、一般式Z−R−Zを有することができ、式中、Zはそれぞれ、官能基であり、同じものでもあってもよく、または異なるものであってもよく、Rは二官能性有機基である。好ましくは、Rは、アルカンジイル、アリーレン、アルカリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキルヘテロアリーレンからなる群から選択され、そのいずれも、カルボニル、エステル、スルフィド、エーテル、アミド、および/またはアミン結合で置換かつ/または介在されていてもよい。C〜Cアルカンジイルが特に好ましい。最も好ましくは、Rは、適当な二官能性試薬の適切な部分に対応する。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、一般式(I)の化合物が提供され、
【0040】
【化1】

【0041】
式中、mは少なくとも1であり;
XBは、GCSFまたはGCSF様タンパク質であるB−XHに由来し、ここでXHはNHまたはSHであり;
Lは、結合、連結基であり、またはポリペプチドもしくは合成オリゴマーを含み;
GlyOは、アニオン性糖ユニットであり;
ただし、連結基が存在する場合それは、一般式−Y−C(O)−R−C(O)−を有するものであり;
ここで、YはNRまたはNR−NRであり、Rは上記に定義した二官能性有機基であり;RはHまたはC1〜6アルキルである。
【0042】
本発明のこの態様では、GCSFは、多糖の非還元性末端に結合している。末端の多糖ユニットはシアル酸ユニットである。多糖の他の糖ユニットは、GlyOで表わされ、同じものでもあってもよく、または異なるものであってもよい。適当な糖ユニットとしては、ヘパリン、ヒアルロン酸、またはコンドロイチン硫酸が挙げられる。
【0043】
GCSFが多糖に直接結合している場合、L基は結合である。しかし、L基は、あるいはN−マレイミド、ビニルスルホン、N−ヨードアセトアミド、オルトピリジル、またはN−ヒドロキシスクシンイミド含有試薬に由来していてもよい。試薬は、上記に定義した一般式Z−R−Zを有することができる。この実施形態では、Lは一般に次の基である。
【0044】
【化2】

【0045】
好ましくは、XHはNHであり、GCSFまたはGCSF様タンパク質のN末端アミンである。あるいは、NHは、リシンアミノ酸側鎖の第一級アミンとすることができる。別の実施形態では、XHはシステインアミノ酸の側鎖のチオール基SHである。
【0046】
本発明の別の態様は、上記に定義した新規化合物および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0047】
医薬組成物は、水性懸濁液の形とすることができる。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して新規化合物を含有する。医薬組成物は、無菌注射水溶液または均質懸濁液の形とすることができる。この懸濁液は、公知の技術に従って適当な分散化剤または湿潤化剤、および懸濁化剤を使用して製剤することができる。
【0048】
医薬組成物は、ヒトまたは動物での使用のために経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、局所、または気管投与することができる。
【0049】
組成物は、さらに製剤添加剤を含むことができる。製剤添加剤は、Wangら(1999年)に記載されるように、GCSFを内的または外的に安定化することができる賦形剤を意味する。賦形剤は、安定化剤、可溶化剤、または金属イオンとすることができる。製剤添加剤の適当な例としては、1つまたは複数のバッファー、安定化剤、界面活性剤、塩、ポリマー、金属イオン、糖、ポリオール、またはアミノ酸が挙げられる。これらは、単独または組み合わせて使用することができる。
【0050】
安定化剤は、一般にタンパク質のアンフォールディングのためのギブズ自由エネルギー変化の増大を招くタンパク質の変性状態の不安定化によって機能する。安定化剤は、好ましくは糖またはポリオール、例えばスクロース、ソルビトール、トレハロース、グリセロール、マンニトール、ラクトース、およびエチレングリコールである。安定化バッファーはリン酸ナトリウムである。
【0051】
可溶化剤は、好ましくは界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤である。適当な例としては、Tween 80、Tween 20、Tween 40、Pluoronic F68、Brij 35、およびTriton X100が挙げられる。
【0052】
金属イオンは好ましくは2価である。適当な金属イオンとしては、Zn2+、Ni2+、Co2+、Sr2+、Cu2+、Ca2+、Mg2+、およびFe2+が挙げられる。
【0053】
製剤添加剤は、PSA、PEG、またはヒドロキシ−β−シクロデキストリンから選択されたポリマーとすることもできる。
【0054】
製剤添加剤として使用するための適当なアミノ酸およびアミノ酸誘導体としては、ヒスチジン、グリシン、他の類似のアミノ酸、およびアスパラギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0055】
本発明の別の態様は、GCSFまたはGCSF様タンパク質のアニオン性多糖誘導体の集団を含む組成物であって、誘導体は2〜200個の糖ユニットを含み、集団は実質的にタンパク質のN末端誘導体のみからなる。
【0056】
「集団」は、組成物中に1つを超える多糖誘導体が存在することを意味する。誘導体は、同じまたは異なる数の糖ユニットを含むことができる。好ましくは、組成物中の多糖の多分散度は1.3未満、より好ましくは1.1未満である。好ましい多糖は、本発明の他の態様について上記に詳述する通りである。
【0057】
その集団では、GCSFは実質的にすべて、N末端アミンのみにおいて誘導体化されている。これは、その集団のタンパク質の85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が、N末端アミンのみにおいてPSAで誘導体化されていることを意味する。
【0058】
N末端の誘導体化の程度は、ペプチドマッピングおよびエドマン分解など当技術分野でよく知られている技法で測定することができる。
【0059】
本発明の別の態様は、治療で使用するための、上述した化合物である。
【0060】
本発明の最後の態様によれば、GCSFまたはGCSF様タンパク質の多糖誘導体を製造する方法であって、2〜200個の糖ユニットを含むアニオン性多糖はGCSFまたはGCSF様タンパク質と化学的に反応する方法が提供される。
【0061】
本発明のこの態様では、多糖はGCSFまたはGCSF様タンパク質の任意の基において反応できることに留意されたい。例えば、多糖は、アミン、アミド、アリール、アルデヒド、ケトン、グアニジノ、ミダゾール、ヒドロキシル、カルボキシル、またはスルフヒドリル基と反応することができる。好ましくは、その基はアミン基、より好ましくは末端アミン基である。アミンは、あるいはリシンアミノ酸などのアミノ酸のアミン側鎖とすることができる。多糖は、GCSFの任意の炭水化物残基、具体的にはペンダントグリコン基においても反応することができる。
【0062】
多糖は、当技術分野で知られている方法でアミノ酸側鎖に結合することができる。例えば、多糖は、インビトロカップリングによってAspまたはGluのC末端である−COOHまたはカルボキシル側鎖に結合することができる。システインアミノ酸のチオール基も、インビトロカップリングによって多糖に結合することができる。これらの方法は、国際公開第03/055526号、具体的には6および7頁の表にさらに記載されている。この参考文献では、インビトロカップリングは、オリゴ糖部分をGlnの側鎖のアミド基に結合させるためにも使用される。オリゴ糖部分をそれぞれArgおよびHis残基のグアニジノ基およびイミダゾール基に結合させるインビトロカップリング方法も記載されている。これらの方法はそれぞれ、本発明のGCSFを誘導体化するために使用することができる。
【0063】
多糖は、GCSFの改変された形と反応することもできる。例えば、GCSFの1つまたは複数の基は、例えば還元または酸化による化学転換を受けていてもよい。例えば酸化条件を使用して、反応性カルボニルがGCSFの末端アミノ基の代わりに生成することがある。
【0064】
本発明の方法で使用するための適当な多糖は、新規化合物について前述した通りである。
【0065】
本発明の化合物は、先行技術において記載される適当な方法のいずれかによって製造することができる。例えば、典型的な方法は、我々の先の特許出願である国際公開第92/22331号に記載されている。
【0066】
典型的には、アニオン性多糖は、GCSFへの誘導体化の前に活性化される。これは、例えば反応性アルデヒド基を有することができ、誘導体化反応は還元条件下で実施することができる。反応性アルデヒド基は、多糖のヒドロキシル基の酸化を制御することによって生成することができる。最も好ましくは、この反応性アルデヒドは、多糖を水溶液中、酸化条件制御下で例えば過ヨウ素酸ナトリウムを使用して反応させる予備ステップで生成される。このステップを実施することができる酵素も使用することができるが、酸化は化学的酸化であることが好ましい。反応性アルデヒド基は、多糖の非還元性末端または還元性末端に存在することができる。次いで、GCSF、典型的にはN末端は、反応性アルデヒド基と反応して、付加物を生成することができ、これは、還元されると、GCSFのN末端誘導体を生成する。
【0067】
多糖の活性化は、好ましくは多糖の主鎖の中鎖開裂が実質的にない、すなわち分子量低下が実質的にない条件下で実施されるべきである。酸化剤は、好適には過ルテニウム酸塩、又は好ましくは過ヨウ素酸塩である。酸化は、1mM〜1Mの範囲の濃度の過ヨウ素酸塩を用い、3〜10の範囲のpH、0℃〜60℃の範囲の温度で、1分〜48時間の範囲の時間、実行され得る。
【0068】
誘導体化反応の適当な還元条件は、水素を触媒と共に、または好ましくは水素化物、具体的にはホウ水素化物(borohydride)を利用することができる。これらは、Amberlite(商標)によって担持されたボロヒドリドなど固定化することができる。好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化アルカリ金属塩が、還元剤として1μM〜0.1Mの範囲の濃度、5.0〜10の範囲のpH、0〜60℃の範囲の温度で、1分〜48時間の範囲の時間使用される。出発材料のペンダントカルボキシル基が還元されないような反応条件が選択される。他の適当な還元剤は、酸性条件下のシアノホウ水素化物(cyanoborohydride)、例えばポリマーによって担持されたシアノホウ水素化物またはアルカリ金属シアノホウ水素化物、L−アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、L−セレクトリド、トリアセトキシボロヒドリドなどである。
【0069】
多糖の他の活性化された誘導体は、我々の先の特許出願である国際公開第06/00540号に記載されるNHSなどのペンダント官能基を有する誘導体を含めて、本発明で有用であり得る。
【0070】
一実施形態では、反応性アルデヒドは多糖の還元性末端に存在し、非還元性末端は、GCSFのペンダント基と反応しないように不動態化されている。
【0071】
コロミン酸の還元性末端の反応性は、タンパク質の標的に対して弱いが、化学的に定められた複合体の製造においては十分に問題なものとなる。
【0072】
多糖の還元性末端において反応性アルデヒドを有する多糖を調製するのに適した化学は、我々の先の出願である国際公開第05/016974号に記載される。方法は、予備の選択的酸化ステップと、続いて還元、次いでさらに酸化して、還元性末端におけるアルデヒドおよび不動態化された非還元性末端を有する化合物を生成するものである。
【0073】
国際公開第2005/016973号には、タンパク質への複合体化に有用であるポリシアル酸誘導体、具体的には遊離スルフヒドリル薬物を有する誘導体が記載される。ポリシアル化合物をヘテロ二官能性試薬と反応させて、スルフヒドリル基への部位特異的な複合体化のためのペンダント官能基を導入する。本発明で使用するアニオン性多糖は、この方式でヘテロ二官能性試薬で誘導体化することもできる。
【0074】
GCSFと反応させる前に、多糖を誘導体化することができる。例えば、多糖を二官能性試薬と反応させることができる。
【0075】
国際公開第2006/016168号にさらに記載されるように、多糖を、好ましくはシアル酸である末端糖上に第一級アミン基、第二級アミン基、およびヒドラジンから選択された基が形成される予備反応ステップにかけ、続いてこれを二官能性試薬と反応させて、反応中間体が形成される反応ステップにかけることができる。次いで、中間体はGCSFまたはGCSF様タンパク質と反応することができる。二官能性試薬は、上記に定義した一般式Z−R−Zを有することができる。
【0076】
ある種の反応条件がGCSFのN末端において選択的誘導体化を促進することがわかった。N末端における選択的反応を促進するためには、誘導体化反応を酸性pHの第1の水溶液中で実施するべきであり、次いで得られた多糖誘導体を第1の水溶液より高いpHの第2の水溶液中で精製すべきである。典型的には、第1の水溶液のpHは7未満であり、好ましくは4.0〜6.0の範囲である。第2の水溶液のpHは、6.5〜9.5、好ましくは6.5〜8.5の範囲である。誘導体化反応の低いpHによって、任意の中鎖部位ではなくタンパク質のN末端において選択的誘導体化が促進される。
【0077】
さらに、ある種の製剤添加剤の使用によって、選択的安定多糖GCSF誘導体の形成が促進されることがわかった。製剤添加剤は、1つまたは複数のバッファー、安定化剤、界面活性剤、塩、ポリマー、金属イオン、糖、ポリオール、またはアミノ酸から選択することができる。これらを反応媒体に添加することができ、あるいは最終生成物の組成物に安定化剤として添加することができる。
【0078】
本発明の一実施形態では、製剤添加剤は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、またはスクロースである。別の実施形態では、製剤添加剤は非イオン性界面活性剤である。製剤添加剤は、あるいはPSA、PEG、またはヒドロキシ−β−シクロデキストリンから選択されたポリマー、例えばTween 20、Tween 80、PEGとすることができる。別の実施形態では、製剤添加剤は2価の金属イオンである。好ましい2価の金属イオンとしては、Zn2+、Ni2+、Co2+、Sr2+、またはFe2+が挙げられる。
【0079】
製剤添加剤はバッファーとすることができる。好ましくは、製剤添加剤は、バッファーである場合、リン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムである。
【0080】
本発明の方法における多糖誘導体の精製は、当技術分野で知られている種々の方法を使用して実施することができる。適当な精製方法の例としては、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、AEX(アニオン交換クロマトグラフィー)、およびMAC(金属アフィニティークロマトグラフィー)が挙げられる。
【0081】
広範な分子量分布を有する集団のポリシアル酸を、多分散度がより低い画分、すなわち異なる平均分子量を有する画分に分別することができる。我々の先の特許出願である国際公開第2005/016794号および国際公開第2005/03149号に記載されるように、アニオン交換クロマトグラフィーで、溶離には適当な塩基性バッファーを使用して、分画を行うことが好ましい。分画方法は、多糖出発材料、およびその誘導体に適している。したがって、技法は、本発明の本質的な工程段階の前または後に適用することができる。好ましくは、GCSFの得られた多糖誘導体の多分散度は1.1未満である。
【0082】
本発明に従うGCSFの誘導体化によって、GCSFの半減期の増大、安定性の改善、免疫原性の低減、ならびに/または溶解性、したがってバイオアベイラビリティおよび薬物動態特性の制御が行われる。新規な方法は、モノポリシアル化GCSF複合体の生成にとって特に価値がある。
【0083】
実施例1〜10および下記の図面を参照して、本発明を説明する。
【実施例】
【0084】
材料
炭酸アンモニウム、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(8KDa)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(純度>98%)、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、および分子量マーカー、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトール、Tween 20およびトリスは、英国のSigma Chemical Laboratoryから入手した。酢酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムは英国のBDHから入手した。使用するコロミン酸である線状α−(2,8)−結合E.coli K1ポリシアル酸(平均22.7kDa、高い多分散度1.34、39kDa、多分散度1.4;11kDa、多分散度1.27)は、アイルランドのCamidaから入手した。他の材料には、2,4ジニトロフェニルヒドラジン(Aldrich Chemical Company,UK)、透析チュービング(3.5KDaおよび10KDaカットオフリミット;Medicell International Limited,UK)、 Sepharose SP HiTrap、PD−10カラム、Q FF[カラム1mlまたは5ml];HitrapブチルHPカラム[1mlまたは5ml];(Pharmacia,UK)、トリスグリシンポリアクリルアミドゲル(4〜20%および16%)、トリスグリシンドデシル硫酸ナトリウム泳動バッファーおよびローディングバッファー(Novex,UK)が含まれた。脱イオン水は、水精製装置Elgastat Option 4(Elga Limited,UK)から得られた。使用する試薬はすべて、分析用グレードであった。タンパク質またはCAのアッセイにおける分光光度定量のために、プレートリーダー(Dynex Technologies,UK)を使用した。マウスは、英国のHarlanから購入し、使用に先立って少なくとも1週間順化させた。GCSFはインドのSIILから得た。
【実施例1】
【0085】
GCSFバイオアッセイ
G−CSF生物活性の定量は、このサイトカインによるM−NFS−60細胞増殖の刺激に基づく。細胞は、参照調製物とG−CSF調製物の両方の段階希釈物と共に48時間インキュベートする。細胞増殖応答は、生細胞染色系−PMS(電子結合試薬)混合物を用いて4時間インキュベートした後、評価される。MTSは、細胞によって、組織培養培地に可溶なホルマザン生成物に生物還元する。ホルマザンの492nmにおける吸光度は、さらに処理することなく、96ウェルのアッセイプレートから直接測定することができる。ホルマザン生成物の量は492nmにおける吸光度の量によって測定して、生細胞の数と正比例する。
【0086】
GCSF(ヒトrDNA由来)88/502、10,000IU/アンプル、含有量100ngのG−CSF(NIBSC,UK)の世界保健機関の国際規格(World Health Organisation International Standard)を参照として使用するべきである。
【実施例2】
【0087】
タンパク質およびコロミン酸の定量
レソルシノール試薬を用いたポリシアル酸(シアル酸として)の定量的評価は、他[Gregoriadisら、1993年;FernandesおよびGregoriadis、1996年、1997年]に記載するレゾルシノール方法[Svennerholm、1957年]によって実施した。タンパク質は、BCA比色法または280nmにおけるUV吸光度によって測定した。
【0088】
2.1 コロミン酸の活性化
新しく調製した0.02Mのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)溶液(8倍モル過剰)を、20℃でCAと混合し、反応混合物を、暗所で15分間磁気撹拌した。次いで、2倍体積のエチレングリコールを反応混合物に添加して、過剰のNaIOを消費し、混合物を20℃でさらに30分間撹拌させた。酸化されたコロミン酸は、4℃で0.01%の炭酸アンモニウムバッファー(pH 7.4)に対して長時間(24h)透析した(分子量3.5KDaカットオフの透析チュービング)。限外濾過(分子量3.5kDaカットオフを超える)を使用して、透析チュービングからのCAO溶液を濃縮した。必要とされた体積への濃縮に続いて、濾液を凍結乾燥し、その後使用するまで−40℃で貯蔵した。あるいは、エタノールを用いて沈殿させること(2回)によって、CAを反応混合物から回収した。
【0089】
2.2 CAおよび誘導体の酸化状態の決定
カルボニル化合物との相互作用時にやや溶けにくい2,4ジニトロフェニル−ヒドラゾンを生じる2,4ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)を用いて、コロミン酸酸化度の定量的評価を実施した。非酸化(CA)/酸化(CAO)を2,4−DNPH試薬(1.0ml)に添加し、溶液を振盪し、次いで結晶性沈殿物が観察されるまで37℃で放置した[Shrinerら、1980年]。CA酸化度(定量的)は、アルカリ性溶液中フェリシアン化物イオンのフェロシアン化鉄(プルシアンブルー(Persian blue))への還元、次いで630nmにおける測定に基づく方法[ParkおよびJohnson、1949年]で測定した。この場合、グルコースを標準物質として使用した。
【0090】
2.3 ゲル浸透クロマトグラフィー
コロミン酸試料(CAおよびCAO)をNaNO(0.2M)、CHCN(10%;5mg/ml)に溶解し、2本を超えるGMPWXLカラムのクロマトグラフィーを屈折率による検出で行った(GPC系:VE1121 GPC溶媒ポンプ、VE3580 RI検出器、およびTrisec 3ソフトウェアによる照合(Viscotek Europe Ltd)。試料(5mg/ml)を0.45μmのナイロン膜で濾過し、移動相として0.2M NaNOおよびCHCN(10%)を用いて0.7cm/分で実行した。
【0091】
結果を図3bならびに表4および5に示す(25頁を参照のこと)。
【0092】
2.4 コロミン酸安定性
PEG化の化学の規則は、これらの分子の生理化学的特性が異なるためポリシアル化それ自体に適用することができない。PSAは、酸に不安定なポリマーであり、およそ中性pHで何週間も安定である(図3a)。図3aの結果は、pH 6.0および7.4において、CAは8日間安定であり、pH 5.0において、ゆっくりとした分解(48時間後、初期MWの92%)、およびpH 4.0において、ゆっくりとした分解(48時間後、初期MWの70%)が見られることを示す。ポリシアル酸は高親水性であり、一方PEGは事実上両親媒性分子である。PEG化に使用される条件を用いてポリシアル化を実施する場合、タンパク質の凝集および沈殿が多くの場合見られる。
【実施例3】
【0093】
製剤添加剤を含むN末端タンパク質−CA複合体の調製
3.1 GCSF−CA複合体の調製(N末端方法)
GCSF(18.8kDa)を溶液(5% ソルビトール、0.025mg/ml ポリソルベート80を含有する、10mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.0)中1.05mg/ml)として供給し、2〜8℃で貯蔵した。必要量のGCSFをエッペンドルフに取り入れ、氷上に配置した。複合体化のために添加するCAの量を、次式に基づいて算出した。
CAの重量={タンパク質の量(g)/(タンパク質のMW)}×(CAのMW)×(モル過剰のCA)
CAの必要量を計量した。CAを10mM NaOAc、5% ソルビトール、pH 5.5(ここでは、最終反応体積の20%体積を使用した)に可溶化し、CAがすべて溶解するまで混合物を穏やかにボルテックスし、次いで濾過して新しいエッペンドルフに入れ、または4000rpmで5分間遠心し、上清を新しいエッペンドルフに移し入れて、あらゆる凝集/沈殿材料を除去した。最終反応混合物中Tween 20の最終濃度を0.5mg/mlにするために、必要体積の10mg/mlのTween 20保存溶液を添加した。必要量のGCSFタンパク質溶液をCA溶液に添加して、10モル過剰(少スケール)および9(大スケール)のCAを得、反応混合物を穏やかな振盪器上で4±1℃に維持することによって穏やかに混合した。最終反応混合物中50mMまたは3.17mg/mlとするために、100mg/mlのNaCNBH溶液を添加し、穏やかに混合し、最終反応混合物のpHを調べ、必要ならpHを、4±1℃で1M NaOH/HClを用いて5.5に調整した。10mM NaOAc、5% ソルビトール、pH 5.5を使用して、反応の体積を、反応混合物中タンパク質濃度が0.67mg/mlになるように最終的に調整した。チューブを封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。反応を適切な方法で止め、MNFS 60細胞、SDS−PAGE(4〜20% トリスグリシンゲルを使用)、SE−HPLC(スーパーロース 6カラム)でのインビトロ活性アッセイのための試料を取り出し、反応混合物のpHを調べた。あらゆる沈殿物を排除するために、SE−HPLC分析および精製の前に反応混合物を13000rpmで5分間遠心し、SE−HPLCのための好ましいバッファーは0.1M リン酸Na(pH 6.9)であった。
最適化
還元的アミノ化は、N末端およびランダム誘導体化のためにGCSFにおいてCA分子量(29〜52kda)の範囲で行った。複合体化反応のためのプロセス変数の範囲を検討した:CAO 10〜20(小スケール)および8〜15(大スケール)モル過剰;試薬=50〜100mM NaCNBH;反応バッファー=10mM NaOAc;pH 5.0〜7.4、製剤添加剤=Tween 206KDa/Peg 8KDa(10M過剰)/Tween 20+PEG 6KDa;温度=4±1℃、時間=l6〜24時間など。
【0094】
最適化反応条件は、次の通りであることがわかった:CAO=10(小スケール)および9(大スケール)モル過剰、試薬=50mM NaCNBH、反応バッファー=10mM NaOAc pH 5.5、添加剤=0.5mg/ml、Tween 20、温度=4±1℃、時間=22時間。
【0095】
3.2. GCSF−CA複合体の精製およびキャラクタリゼーション(N末端方法)
残存する反応混合物試料をAEXバッファーA(20mM 酢酸ナトリウム、50mM 塩化ナトリウム pH 5.0)(1.5mlの反応混合物+9mlのバッファーA)で希釈し、pHを調べ、必要に応じてpH 5.0に調整し、予めAEXバッファーAと平衡に達したAEXカラムにローディングした。ローディング画分を回収し、標識した。カラムをAEXバッファーA(少なくとも5カラム体積)で洗浄し、画分を回収し(各画分1.5カラム体積)、標識した。生成物をAEXバッファーB(50mM リン酸ナトリウム、0.65M 塩化ナトリウム、pH 7.0)で溶離し、画分を回収し(各画分1カラム体積;6カラム)、標識した。連続する2画分に、タンパク質含有量(UV280nm)がない場合、次のステップを実施した。精製中、試料を氷上で維持した。タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した(1mg/mlのGCSFのAbsは約0.872であった)。SDS−PAGEおよびSE−HPLCのために試料を採取した。遊離CAを混合物から除去するために、HICを使用した。必要に応じて、試料を濃縮した。
【0096】
複合体を含有するAEX画分を貯留し、(NHSOを添加して、ローディング溶液中の濃度を2.75Mにした。次いで、この溶液を、予めHICバッファーA(10mM リン酸ナトリウム、2.75M 硫酸アンモニウム、pH 6.5)と平衡に達したHICカラムにローディングした。ローディング画分を回収し(各画分1.5カラム体積)、標識した。カラムをHICバッファーA(少なくとも5カラム体積;速度=0.5ml/分)で洗浄し、(1.5カラム体積)画分を回収し、標識した。生成物をHICバッファーB(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4)(速度=5ml/分)で溶離し、画分を回収し(1カラム体積画分;6カラム体積)、標識した。精製中、試料を氷上で維持した。タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した。精製した複合体を含有するHIC画分を合わせ、溶液の複合体組成物を、5% ソルビトールおよび0.025mg/mlのTween 20の最終組成物が得られるように50%ソルビトール溶液および10mg/mlのTween 20溶液で調整した。次いで、溶液を4±1℃で濃縮し、タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した。さらに、SE−HPLCによって精製を行った(例えば、複合体を遊離タンパク質/凝集体から分離するなどのため)。複合体を滅菌濾過し、活性アッセイ、ならびにSDS−PAGEおよびSE−HPLCによるキャラクタリゼーションのために試料を採取した。必要に応じて、タンパク質アッセイおよびCAアッセイのために一定分量を取り除いた。残りを、その後使用するまで4±1℃で貯蔵し、物理的安定性についてSE−HPLCによって検討した。
【0097】
溶液のGCSFの安定性および誘導体化の程度に影響を及ぼす様々なプロセスの効果を検討した。
【0098】
3.3.1. GCSF−CA複合体の調製(ランダム)
GCSF(18.8kDa)を溶液(5% ソルビトール、0.025mg/ml ポリソルベート80を含有する、10mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.0)中1.05mg/ml)として供給し、2〜8℃で貯蔵した。必要量のGCSFをエッペンドルフに取り入れ、氷上に配置した。複合体化のために添加するCA(例えば、酸化または非酸化CA)の量を、次式に基づいて算出した。
CAの重量={タンパク質の量(g)/タンパク質のMW}×(CAのMW)×(モル過剰のCA)
CAの必要量を計量した。CAを50mM リン酸ナトリウム、5% ソルビトール、pH 7.4(ここでは、最終反応体積の20%体積を使用した)に可溶化した。CAがすべて溶解するまで混合物を穏やかにボルテックスし、次いで濾過して新しいエッペンドルフに入れ、または4000rpmで5分間遠心し、上清を新しいエッペンドルフに移し入れて、あらゆる凝集/沈殿材料を除去した。最終反応混合物中Tween 20の最終濃度を0.5mg/mlにするために、必要体積の10mg/mlのTween 20保存溶液を添加した。必要量のGCSFタンパク質溶液をCA溶液に添加して、11モル過剰(40kDaに対して)のCAを得、反応混合物を穏やかな振盪器上で4±1℃に維持することによって穏やかに混合した。最終反応混合物中50mMまたは3.17mg/mlとするために、100mg/mlのNaCNBH溶液を添加し、穏やかに混合し、最終反応混合物のpHを調べ、必要ならpHを、4±1℃で1M NaOH/HClを用いて7.4に調整した。10mM NaOAc、5% ソルビトール、pH 7.4を使用して、反応の体積を、反応混合物中タンパク質濃度が0.67mg/mlになるように最終的に調整した。チューブを封止し、所望の温度(4±1℃)で22時間撹拌した。反応を適切な方法で止め、MNFS 60細胞、SDS−PAGE(4〜20% トリスグリシンゲルを使用)、SE−HPLCでのインビトロ活性アッセイのための試料を取り出し、反応混合物のpHを調べた。あらゆる沈殿物を排除するために、SE−HPLC分析および精製の前に反応混合物を13000rpmで5分間遠心し、SE−HPLCのための好ましいバッファーは0.1M リン酸Na(pH 6.9)であった。
【0099】
3.3.2. GCSF−CA複合体の精製およびキャラクタリゼーション(ランダム)
HICおよびIECによって、モノシアル化GCSF複合体を他のGCSF複合体から精製した。残存する反応混合物試料をAEXバッファーA(20mM 酢酸ナトリウム、50mM 塩化ナトリウム pH 5.0)(1.5mlの反応混合物+9mlのバッファーA)で希釈し、pHを調べ、必要に応じてpH 5.0に調整し、予めAEXバッファーAと平衡に達したAEXカラムにローディングした。ローディング画分を回収し、標識した。カラムをAEXバッファーA(少なくとも5カラム体積)で洗浄し、画分を回収し(各画分1.5カラム体積)、標識した。生成物をAEXバッファーB(50mM リン酸ナトリウム、0.65M 塩化ナトリウム、pH 7.0)で溶離し、画分を回収し(各画分1カラム体積;6カラム)、標識した。連続する2画分にタンパク質含有量がない場合(UV280nm)、次のステップを実施した。精製中、試料を氷上で維持した。タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した(1mg/mlのGCSFのAbsは約0.872であった)。SDS−PAGEおよびSE−HPLCのために試料を採取した。遊離CAを混合物から除去するために、HICを使用した。必要に応じて、試料を濃縮した。
【0100】
複合体を含有するAEX画分を貯留し、(NHSOを添加して、添加溶液中の濃度を2.75Mにした。次いで、この溶液を、予めHICバッファーA(10mM リン酸ナトリウム、2.75M 硫酸アンモニウム、pH 6.5)と平衡に達したHICカラムにローディングした。ローディング画分を回収し(各画分1.5カラム体積)、標識した。カラムをHICバッファーA(少なくとも5カラム体積;速度=0.5ml/分)で洗浄し、(1.5カラム体積)画分を回収し、標識した。生成物をHICバッファーB(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4)(速度=5ml/分)で溶離し、画分を回収し(1カラム体積画分;6カラム体積)、標識した。精製中、試料を氷上で維持した。タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した。精製した複合体を含有するHIC画分を合わせ、溶液の複合体組成物を、5%ソルビトールおよび0.025mg/mlのTween 20の最終組成物が得られるように50%ソルビトール溶液および10mg/mlのTween 20溶液で調整した。次いで、溶液を4±1℃で濃縮し、タンパク質濃度をUV(280nm)によって分析した。さらに、SE−HPLCによって精製を行った(例えば、複合体を遊離タンパク質/凝集体から分離するなどのため)。複合体を滅菌濾過し、活性アッセイ、ならびにSDS−PAGEおよびSE−HPLCによるキャラクタリゼーションのために試料を採取した。タンパク質アッセイおよびCAアッセイのために一定分量を取り除いた。残りを、その後使用するまで4±1℃で貯蔵し、物理的安定性についてSE−HPLCによって検討した。
【0101】
溶液のGCSFの安定性および誘導体化の程度に影響を及ぼす様々なプロセスの効果を検討した。
【0102】
3.4. GCSFのペグ化(比較):
GCSF(18.8kDa)を溶液(5%ソルビトール、0.025mg/mlポリソルベート80を含有する、10mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.0)中0.5mg/ml)として供給し、2〜8℃で貯蔵した。GCSF溶液を、約1.0mg/mlの溶液となるように濃縮した。必要量のGCSFをエッペンドルフに取り入れ、氷上に配置した。複合体化のために添加するPEGの量を、次式に基づいて算出した。
PEGの重量={タンパク質の量(g)/(タンパク質のMW)}×(PEGのMW)×(モル過剰のPEG)
必要量のPEG20Kを計量した。それを10mM NaOAc、5%ソルビトール、pH5.5(ここでは、最終反応体積の20%体積を使用した)に可溶化し、PEGがすべて溶解するまで混合物を穏やかにボルテックスし、次いで濾過して新しいエッペンドルフに入れ、または4000rpmで5分間遠心し、上清を新しいエッペンドルフに移して、あらゆる凝集/沈殿材料を除去した。最終反応混合物中Tween 20の最終濃度を0.5mg/mlにするために、必要体積の10mg/mlのTween 20保存溶液を添加した。必要量のGCSFタンパク質溶液をPEG溶液に添加して、7.5モル過剰のPEGを得、反応混合物を穏やかな振盪器上で4±1℃に維持することによって穏やかに混合した。最終反応混合物中50mMまたは3.17mg/mlとするために、100mg/mlのNaCNBH溶液を添加し、穏やかに混合し、最終反応混合物のpHを調べ、必要ならpHを、4±1℃で1M NaOH/HCLを用いて5.5に調整した。10mM NaOAc、5%ソルビトール、およびpH 5.5を使用して、反応の体積を、反応混合物中タンパク質濃度が1mg/mlになるように最終的に調整した。チューブを封止し、所望の温度(4±1℃)で24時間撹拌した。反応を適切な方法で止め、MNFS 60細胞、SDS−PAGE(4〜20% トリスグリシンゲルを使用)、SE−HPLC(スーパーロース 6カラム)でのインビトロ活性アッセイのための試料を取り出し、反応混合物のpHを調べた。あらゆる沈殿物を排除するために、SE−HPLC分析および精製の前に反応混合物を13000rpmで5分間遠心し、SE−HPLCのための好ましいバッファーは0.1M リン酸ナトリウム(pH 6.9)であった。結果を図13に示す。
【0103】
3.5. 金属アフィニティークロマトグラフィー
GCSFおよびPSA−GCSF複合体を、金属アフィニティークロマトグラフィーによってPSAおよび反応混合物の副生物から精製した(図8)。この実験用の試料は、75μLの反応バッファー+75μlの溶離液A中50μgのGCSFであった。反応バッファーは、0.5mg/mL Tween 20;5%ソルビトール;10mM NaOAc;pH 5.0であった。溶離液Aは10mM トリス/HCl;pH7.0であった。溶離液Bは20mM AcOH+0.2M NaCl;pH4.0であった。グラジエント:(t/分)=0から12.5(A 100%);t=12.5から25(B 30%);25から40(B 100%)。0.887のピークはバッファーであり、16.142のピークはGCSFである。
【0104】
3.6. GCSF製剤のSE−HPLC
HPLCは、4℃で冷却したJasco AS−2057プラスオートサンプラーおよびJasco UV−975 UV/VIS検出器を装備した液体クロマトグラフ(JASCO)で行った。データは、IBM/PCでEZchrom Eliteソフトウェアによって記録した。SEC試料は、0.1M リン酸Na塩、pH 6.9の定組成の移動相;Tweenの存在下でSuperose 6カラムで分析した(図5)。図6は、GCSFに起因する唯一のピークをRT=76.408に示す。
【0105】
図5の右側に示すSECのピークの表は以下の通りである。
【0106】
【表1】

【0107】
3.7. 未変性、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスタンブロッティング
4〜20% トリスグリシンゲルを使用して、SDS−PAGEを行った。試料を還元性または非還元性バッファーで希釈し、5.0μgのタンパク質を各ウェルに添加した。ゲルをトリスグリシンバッファー系で泳動し、クマシーブルーで染色した。抗PSA抗体を使用して、ウェスタンブロッティングを行った(図4)。図4は、GCSF製剤のSDS−PAGE(部位特異的;N末端)を示す。未変性PAGEを10%トリスグリシンゲルで行った(図7)。
【0108】
3.8. インビトロ活性
GCSF、PSA、およびPEG複合体を含むMNFS 60細胞でインビトロ試験を行った。EC50値を測定し、様々なGCSF製剤について比較した(図9)。
【0109】
3.9. 安定性試験
無菌GCSF複合体を、4℃で20mM リン酸ナトリウム、pH7.4;5%ソルビトール、および0.025mg/ml Tween 20中に6週間貯蔵した。SECカラムを使用して、試料のSE−HPLCを次の条件下で毎週行った:注入量100μl、流量0.250ml/分、泳動バッファー0.1M リン酸ナトリウム、pH6.9(図10)。
【0110】
3.10. GCSF製剤のインビボ有効性
7〜8週齢のB6D2F1雌マウスにおいて、GCSF製剤のインビボ有効性を試験し、5〜15μgのタンパク質用量(同じ活性)をマウスに皮下注射した。動物を4匹の7群に分けた。GCSF製剤を、各群の各マウスに次の方式で投与した;GCSF(5μg)、GCSF(15μg)、GCSF−PSA複合体(5〜15μg)、PBS、GCSF−PEG20(NeulastaR;5μg)。50μlの血液を各マウスから採取し、WBCに特異的な抗体で染色した後FACSによって分析した(図11および12)。
結果
CAの活性化および酸化度の定量
N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基の線状α−2,8−結合ホモポリマーであるコロミン酸(CA)を使用した。室温で20mM 過ヨウ素酸塩を使用して、コロミン酸を15分間酸化にかけた。過ヨウ素酸塩処置後の内部α−2,8結合Neu5Ac残基の完全性をゲル浸透クロマトグラフィーによって分析し、酸化(CAO)材料について得られたクロマトグラフを非酸化(native)CAのクロマトグラフと比較した。酸化および非酸化(native)CAはほぼ同一の溶離プロファイルを示すことが明らかになり、連続的酸化ステップがポリマー鎖の顕著な断片化を起こすという証拠はない。
【0111】
CAの酸化状態の定量測定は、グルコースを標準物質として使用して、アルカリ性溶液中フェリシアン化物イオンのフェロシアン化物(プルシアンブルー)への還元によって行われた[ParkおよびJohnson、1949年]。表2は、酸化させたコロミン酸が、化学量論(>100%)量の還元剤より高い、すなわち還元性末端ヘミケタールおよび導入されたアルデヒド(他端、還元性末端)を合わせた還元力を含む112mol%の見かけのアルデヒド含有量を有することがわかったことを明らかにする。
【0112】
【表2】

【0113】
表2:グルコースを標準物質として使用する二重酸化反応スキームにおける様々なコロミン酸中間体の酸化度(100%、アルデヒド1モル/グルコース1モル;n=3±標準偏差)。
GCSF複合体の調製、精製、およびキャラクタリゼーション
低減したpH(pH 5.5)および4±1℃で反応を実施することによって、N末端選択的方式で顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)のコロミン酸(CA)複合体を調製および精製する手順は、上記に詳述する。これは、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下での複合体化、続いてイオン交換クロマトグラフィー(AEX)を使用して遊離GCSFを除去する精製、続いて疎水的相互作用クロマトグラフィー(HIC)によるCAの除去を含む。N末端のαアミノ基の選択的誘導体化を促進し、また反応中のGCSFの凝集を最小限に抑えるためにも、低いpHを使用した。最終反応バッファーの組成は、10mM NaOAc中5%ソルビトール、0.5mg/ml Tween 20(pH 5.5)であった。
【0114】
GCSF−CA複合体の形成および安定性を、SE−HPLC(GCSFに比べてGCSF−PSAの保持時間の変化;また両方の部分の共溶離);イオン交換クロマトグラフィー(複合体のAECカラムへの結合)、およびポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;高分子量種および未変性pageのバンドのシフト)によって確認した。インビトロ細胞系アッセイで使用する複合体(MNFS−60細胞)は、未変性タンパク質と比較して約40%活性であった。製剤添加剤なしで調製した複合体は、誘導体化が不十分でタンパク質の凝集を招いた。図5は、Tween 20の存在下で調製された、24時間後のGCSF−CA 39kDa反応混合物のSE−HPLCデータを示す。キャラクタリゼーションの条件は、カラム:Superdex 200、バッファー:重炭酸アンモニウム0.15M、pH 7.8であった。GCSF−PEG複合体の形成をSE−HPLCによって確認した(図13)。GCSFおよびPSA−GCSF複合体を、金属アフィニティークロマトグラフィーによってPSAおよび反応混合物の副生物から精製することに成功した(図8)。GCSF複合体は、20mMリン酸ナトリウム(pH 7.4)中に6週間貯蔵した後でも安定であることがわかった(図10)。
【0115】
表3は図5のピーク分析を示す。
【0116】
【表3】

【0117】
表4は使用した様々なパラメータの値を示し、表5はCA画分の分子量および多分散度を示す。
【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
PSA複合体は、インビトロ活性アッセイで活性であることがわかった(図9)。インビボ有効性試験によって、PSA−GCSF複合体は、PEG複合体と同様に良好であり、GCSFよりも大いに優れていることが明らかである(図11および12)。
参考文献
【0121】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GCSFまたはGCSF様タンパク質のN末端多糖誘導体である化合物であって、多糖はアニオン性であり、2〜200個の糖ユニットを含む化合物。
【請求項2】
多糖が、ポリシアル酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、またはコンドロイチン硫酸から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
多糖が、ポリシアル酸であり、好ましくは実質的にシアル酸ユニットのみからなるポリシアル酸である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
GCSFまたはGCSF様タンパク質が、多糖の還元性末端ユニットにおける多糖によって誘導体化される、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(I)の化合物:
【化1】

[式中、mは少なくとも1であり;
XBは、GCSFまたはGCSF様タンパク質であるB−XHに由来し、ここでXHはNHまたはSHであり;
Lは、結合、連結基であり、またはポリペプチドもしくは合成オリゴマーを含み;
GlyOは、アニオン性糖ユニットであり;
ただし、連結基が存在する場合それは、一般式−Y−C(O)−R−C(O)−を有するものであり;
ここで、YはNRまたはNR−NRであり;Rは、アルカンジイル、アリーレン、アルカリーレン、ヘテロアリーレン、およびアルキルヘテロアリーレンからなる群から選択された二官能性有機基であって、そのいずれも、カルボニル、エステル、スルフィド、エーテル、アミド、および/またはアミン結合で置換および/または介在されていてもよく;
はHまたはC1〜6アルキルである]。
【請求項6】
Lが、結合または下記の基である、請求項5に記載の化合物。
【化2】

【請求項7】
XHがNHであり、GCSFまたはGCSF様タンパク質のN末端アミンである、請求項5または6に記載の化合物。
【請求項8】
XHがNHであり、リシンアミノ酸側鎖のアミン基である、請求項5または6に記載の化合物。
【請求項9】
80〜180個のシアル酸ユニットを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
治療で使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
GCSFまたはGCSF様タンパク質の多糖誘導体を製造する方法であって、2〜200個の糖ユニットを含むアニオン性多糖はGCSFまたはGCSF様タンパク質と化学的に反応する方法。
【請求項13】
アニオン性多糖が、GCSFまたはGCSF様タンパク質と反応する反応性アルデヒド基を有し、誘導体化反応が還元性条件下で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応性アルデヒド基が、多糖の非還元性末端に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応性アルデヒドが多糖の還元性末端に存在し、非還元性末端がGCSFまたはGCSF様タンパク質と反応しないように不動態化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
多糖がGCSFまたはGCSF様タンパク質のアミン基と反応する、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
アミンが末端アミン基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アミンがGCSFまたはGCSF様タンパク質のリシンアミノ酸側鎖に由来する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
アニオン性多糖が、予備反応ステップでアミンに変換され、次いでN−マレイミド、ビニルスルホン、N−ヨードアセトアミド、オルトピリジル基、またはN−ヒドロキシスクシンイミドから選択された少なくとも1つの官能基を含む二官能性試薬と反応して反応中間体を形成する反応性アルデヒド基を有し、反応中間体がGCSFまたはGCSF様タンパク質と反応する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
アニオン性多糖または反応中間体が、酸性のpHの第1の水溶液中でGCSFまたはGCSF様タンパク質の末端アミン基と反応し、得られた多糖誘導体が、第1の水溶液より高いpHの第2の水溶液中で精製される、請求項12から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第1の水溶液のpHが4.0〜6.0の範囲であり、第2の水溶液のpHが6.5〜8.5の範囲である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
製剤添加剤の存在下で実施される、請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
製剤添加剤が、1つまたは複数のバッファー、安定化剤、界面活性剤、塩、ポリマー、金属イオン、糖、ポリオール、またはアミノ酸から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
製剤添加剤が、ソルビトール、トレハロース、またはスクロースである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
製剤添加剤が非イオン性界面活性剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
製剤添加剤が、PSA、PEG、またはヒドロキシ−β−シクロデキストリンから選択されたポリマーである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
製剤添加剤が2価の金属イオン、好ましくは Zn2+、Ni2+、Co2+、Sr2+、Ca2+、Mg2+、またはFe2+である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項28】
製剤添加剤がバッファーであり、バッファーがリン酸ナトリウム/酢酸ナトリウムである、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−544677(P2009−544677A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521336(P2009−521336)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002816
【国際公開番号】WO2008/012525
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507042545)リポクセン テクノロジーズ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】