説明

顔料分散剤、塗料組成物および印刷インキ組成物

【目的】 塗料等の顔料の分散性を向上させるアミノ基含有化合物からなる分散剤を提供する。
【構成】 アミノ基とマイケル付加反応し得る官能基を末端に有しラクトン化合物(2)の開環により生成するユニットを必須成分として含有するポリエステル化合物(1)および、ポリアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有化合物からなる顔料分散剤ならびにこれを用いた塗料組成物、印刷インキ組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は塗料、インキ製造の際に顔料の分散性を向上させるアミノ基含有化合物からなる顔料分散剤、アミノ基含有化合物を用いた塗料組成物および印刷インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】塗料、インキの製造において顔料の分散性を向上させ、塗料等の貯蔵安定性、分散時間の短縮、色分かれの防止、塗膜の光沢をあげる目的で、種々の分散剤が使用されている。この様な目的のために使用される分散剤は、顔料に吸着する部分と、塗料あるいはインキ用のビヒクルに相溶性のよいポリエステルあるいはアクリル等のポリマー鎖を有する場合が一般的である。また、顔料吸着基としては種々の官能基が用いられているが、顔料吸着基としてアミノ基を有する分散剤が多く報告されている。例えば、特開昭53−103988号公報には、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等の低分子アミノ化合物が、また特開昭61−174939号公報には、高分子量のアミン化合物であるポリエチレンイミンを用いた顔料分散剤が報告されている。これらの顔料分散剤の分子構造は、ポリエステル鎖をアミド結合によりポリアミン類に結合している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アミド結合を有する化合物は非常に凝集力が高く、顔料分散剤として用いる場合には、多くの塗料用の溶剤に対して溶解性が低いという問題が認められる。また、アミド基を構成する窒素の塩基性が極めて低くなるため、顔料に対してアミド結合の窒素は吸着性を示さない。したがって、顔料表面に有効な立体反発層を形成し分散安定性を向上させる目的でポリアミン類に多量のポリエステル鎖をグラフトさせると、吸着基量が減少してしまい、逆に分散性が低下してしまうという問題がある。さらに、ポリエステル鎖をポリアミンに反応させグラフトする場合、適度な反応速度を得るためには、反応温度として少なくとも100℃〜150℃の温度が必要である。このような反応温度でアミン類を含有する反応組成物を加熱すると、多くの場合反応生成物の着色が避けられず、淡色系の塗料、特に白色では、塗膜が淡黄色に着色するという問題点を有していた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、顔料分散剤の吸着基の上記の様な問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、片末端にアミノ基とマイケル付加し得る官能基を有し、ポリエステル類とポリアミンから誘導される特定のアミノ基含有化合物が、広い範囲の樹脂に対して相溶性が良好で、かつ広範な範囲の顔料に対してきわめて良好な分散性能を有し、顔料分散剤としてきわめて有効であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち本発明は、アミノ基とマイケル付加反応し得る官能基を末端に有し一般式(2)で示されるラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットを必須成分として含有する一般式(1)で示されるポリエステル化合物および、ポリアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有化合物からなる顔料分散剤を提供するものである。
【0006】
【化3】


【0007】また、アミノ基含有化合物のアミン価が、10〜500mgKOH/gの範囲である前記顔料分散剤を提供するものである。また、一般式(1)で示されるポリエステル化合物の平均分子量が100〜10,000の範囲、または、ポリアミン化合物の平均分子量が100〜100,000の範囲である前記顔料分散剤を提供するものである。また、アミノ基含有化合物の遊離のアミノ基を4級アンモニウム塩化した4級アンモニウム塩化アミノ基含有化合物からなる顔料分散剤、ポリアミン化合物がポリエチレンイミン、ポリアリルアミンまたはポリビニルアミンである前記顔料分散剤を提供するものである。さらに、ラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットがε−カプロラクトンによるもの、メチルカプロラクトンによるもの、あるいはメチルカプロラクトンおよびε−カプロラクトンの共重合によるものである前記顔料分散剤を提供するものである。さらに、マイケル付加し得る官能基が(メタ)アクリロイル基である前記顔料分散剤を提供するものである。加えて、一般式(1)で示されるポリエステル化合物が一般式(3)で表されるアクリル酸エステルである前記顔料分散剤を提供するものである。
【0008】
【化4】


【0009】さらに、前記顔料分散剤に微細な固体を分散させてなる分散液、前記顔料分散剤を含む塗料組成物、または印刷インキ組成物を分散液を提供するものである。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0010】本発明におけるポリエステル化合物とポリアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有化合物は、きわめて有効な顔料分散剤となる。本発明の顔料分散剤では、原料のポリエステル化合物の官能基Xはポリアミン化合物のアミノ基に付加反応するが、反応したアミノ基はアミンとして作用するため、顔料吸着能は損なわれない。また、アミド基が形成されないため、溶剤への溶解性および塗料との相溶性も損なわれない。
【0011】本発明の顔料分散剤を製造するには、先ず第一の工程として上記一般式(2)で表されるラクトン化合物を開環重合させて、ポリエステル鎖を有するユニットを含有し、更にアミノ基とアミノ基と付加反応し得る官能基(X)を末端に有するポリエステル化合物(1)を合成する。
【0012】本発明で使用されるポリエステル鎖を有しアミノ基と付加反応し得る官能基を末端に有するポリエステル化合物(1)は様々な方法で合成できるが、ポリエステル鎖の片末端にのみアミノ基と付加反応し得る官能基が存在することが望ましい。このようなアミノ基と付加反応し得る官能基としては、様々な官能基があるが、(メタ)アクリロイル基が合成上および反応性の面で好都合である。片末端にのみ(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルは、■ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートへのラクトン化合物の付加反応、または■(メタ)アクリル酸エステルとラクトン化合物とのエステル交換反応を利用した挿入反応、あるいは■片末端にカルボキシル基を有するポリエステルとグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの付加反応などにより合成することができる。以下にこれらの反応方法について記載する。
【0013】■ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートへのラクトン化合物の付加反応:ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、一般式(4)で示されるヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどを使用することができる。
【0014】
【化5】


【0015】ラクトン化合物としてはε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、4−メチルカプロラクトン、2−メチルカプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン等一般式(2)で表されるラクトン類を使用することができる。これらは単独であるいは混合して用いてよい。この中でも、側鎖を有するラクトン化合物はポリエステル鎖の結晶性を崩し、得られるアミノ基含有化合物の樹脂への相溶性、溶剤への溶解性が優れており、ミルベースの粘度低減、低温での塗料安定性に優れる。
【0016】反応はこれらのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ラクトン類をコンデンサー、攪拌機、空気導入管の接続した反応器に仕込み、加熱することにより起こる。加熱温度は50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。50℃未満では反応がきわめて遅く、また150℃を越えるとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの重合が起こり目的の化合物を与えない。
【0017】反応触媒としてはテトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどのチタン系触媒、塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイドなどのスズ系触媒、p−トルエンスルホン酸などの酸類を用いることが出来る。触媒の使用量は0.1〜3,000ppm、好ましくは1〜100ppmである。触媒量が3,000ppmを越えると樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える。
【0018】反応はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの重合を防ぐため、重合禁止剤の存在下で行うことが望ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フエノチアジン等の既知の重合禁止剤を利用することが出来る。また、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類の重合を防ぐため、微量の酸素存在下で反応を行うことが望ましい。
【0019】■(メタ)アクリル酸エステルとラクトン化合物とのエステル交換反応を利用した挿入反応:(メタ)アクリル酸エステルとラクトン化合物とのエステル交換反応を利用した挿入反応には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの一般式(5)で示される(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。
【0020】
【化6】


【0021】ラクトン化合物としては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、4−メチルカプロラクトン、2−メチルカプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン等一般式(2)で表されるラクトン類を使用することができる。これらは単独であるいは混合して用いてよい。この中でも、側鎖を有するラクトン化合物は、ポリエステル鎖の結晶性を崩し、得られるアミノ基含有化合物の樹脂への相溶性、溶剤への溶解性が優れており、ミルベースの粘度低減、低温での塗料安定性に優れる。側鎖を有していないラクトン類のみを使用した場合に常温で液体化できない場合でも、側鎖を有するラクトン類を共重合させると液体化することができる。
【0022】反応はこれらの(メタ)アクリル酸エステル、ラクトン類を脱水管、コンデンサーの接続した反応器に仕込み、加熱することにより起こる。反応温度は50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。50℃未満では反応がきわめて遅く、また150℃を越えると(メタ)アクリル酸エステルの重合が起こり目的の化合物を与えない。
【0023】反応触媒としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどのチタン系触媒、塩化第一スズ、オクチル酸スズ、モノブチルスズオキサイドなどのスズ系触媒、p−トルエンスルホン酸などの酸系触媒を用いることが出来るが、特にp−トルエンスルホン酸が望ましい。触媒の使用量は0.1ppm〜1%、好ましくは1〜1,000ppmである。触媒量が1%を越えると、樹脂の着色が激しくなり製品の安定性に悪影響を与える。
【0024】反応は(メタ)アクリル酸エステルの重合を防ぐため、重合禁止剤の存在下で行うことが望ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フエノチアジン等の既知の重合禁止剤を利用することが出来る。また(メタ)アクリル酸エステルの重合を防ぐため、微量の酸素存在下で反応を行うことが望ましい。
【0025】■片末端にカルボキシル基を有するポリエステルとグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの付加反応:片末端にカルボキシル基を有するポリエステルは、モノカルボン酸へのラクトン類の付加反応あるいはヒドロキシカルボン酸類へのラクトン類への付加反応により合成できる。
【0026】モノカルボン酸にラクトン化合物を付加させる反応では、開始剤としてのモノカルボン酸とラクトン化合物のモル比から予定される分子量より高分子量のカルボン酸変性ポリラクトン化合物が生成したり、あるいはラクトン化合物の高分子量ホモポリマーとモノカルボン酸が残存する場合があるのに対して、ヒドロキシカルボン酸を開始剤として用いた場合には、設計通りの分子量を有するポリラクトン化合物が容易に得られる。
【0027】ここで使用することの出来るモノカルボン酸としては、脂肪族、芳香族の各種カルボン酸が使用でき、たとえば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、アビエチン酸、フエニル酢酸、メトキシ酢酸等があげられる。これらは、単独であるいは混合して用いてよい。
【0028】ラクトン化合物としては4−メチルカプロラクトン、2−メチルカプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン等一般式(2)で表されるラクトン類を使用することができる。これらは、単独であるいは混合して用いてよい。この中でも、側鎖を有するラクトン類は、ポリエステル鎖の結晶性を崩し、得られるアミノ基含有化合物の樹脂への相溶性、溶剤への溶解性が優れており、ミルベースの粘度低減、低温での塗料安定性に優れる。
【0029】また、使用することの出来るヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族、芳香族、および不飽和のヒドロキシカルボン酸を使用することができ、例としてはリシノレイン酸、リシノール酸、12ーヒドロキシステアリン酸、ひまし油脂肪酸、水添ひまし油脂肪酸、δ−ヒドロキシ吉草酸、ε−ヒドロキシカプロン酸、P−ヒドロキシエチルオキシカルボン酸、2ーヒドロキシナフタレン−3−カルボン酸、2ーヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ヒドロキシピバリン酸、11−オキシヘキサデカン酸、2−オキシドデカン酸、サリチル酸等が使用できる。これらは、単独であるいは混合して用いてよい。
【0030】またラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットを必須成分として含有するカルボキシル基末端ポリエステル化合物は、通常のポリエステルの様にジカルボン酸またはその無水物、ジオール成分、ラクトン化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物等の原料から合成することも可能である。
【0031】前記ジカルボン酸あるいはその酸無水物としては、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン2酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、メチルテトラヒドロフタル酸あるいはその無水物などの既知の成分が利用できる。
【0032】また前記ジオール成分としては、脂肪族の分岐、直鎖構造、あるいは脂環式、芳香族の各種アルコールを用いることが出来、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジベンジルアルコールなどを用いることが出来る。また、α−オレフィンのモノエポキサイド、カジューラE(バーサチック酸グリシジルエーテルのモノエポキサイド;油化シェルエポキシ(株)製)等のモノエポキサイドも使用することが出来る。
【0033】カルボキシル基末端ポリエステルの合成は、脱水管、コンデンサーの接続した反応器にポリエステルの原料を仕込み、窒素気流下で重合することにより合成する。反応には、トルエン、キシレンの様な適当な脱水溶媒を使用することもできる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0034】カルボキシル基末端ポリエステル化合物の合成温度は120〜220℃、好ましくは160〜210℃の範囲で行う。反応温度が120℃未満では反応速度がきわめて遅く、210℃を越えるとラクトン類の付加反応以外の副反応、たとえばラクトン重合体のラクトンモノマーへの分解、環状のラクトンダイマーの生成等が起こりやすく、目標の分子量のカルボキシル基末端ポリラクトン類が合成しにくい。また、製造した共重合体の着色が起こり易い。
【0035】使用することが出来るエステル化触媒としてはオクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド等の有機スズ化合物、酸化第一スズ、塩化第一スズ等のスズ化合物、テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート等が使用できる。触媒の使用量は0.1〜3,000ppm、好ましくは1〜100ppmである。触媒量が3,000ppmを越えると、樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える。逆に、触媒の使用量が1ppm未満になるとラクトン類の開環重合速度がきわめて遅くなるので好ましくない。また、空気存在下で反応すると着色する傾向があるので、窒素気流下等の不活性雰囲気下で反応させることが望ましい。
【0036】次に得られたカルボキシル基末端ポリエステルをエポキシ基含有(メタ)アクリレートと反応させる。エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、一般式(6)のものが使用できるが、工業的に生産されており入手可能なものとしてグリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が望ましい。
【0037】
【化7】


【0038】反応はこれらのエポキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基末端ポリエステルを脱水管、コンデンサーの接続した反応器に仕込み、加熱させることにより起こる。反応温度は50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。50℃未満では反応がきわめて遅く、また150℃を越えるとエポキシ基含有(メタ)アクリレートの重合が起こり目的の化合物を与えない。
【0039】反応触媒としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン系触媒、トリフェニルホスイン、テトラフェニルホスホニウム等のハロゲンイオン塩、エチルトリフェニルホスホニウムのハロゲンイオン塩等のリン系触媒を用いることが出来る。触媒の使用量は0.1〜3,000ppm、好ましくは1〜500ppmである。触媒量が3,000ppmを越えると、樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える。
【0040】反応はエポキシ基含有(メタ)アクリレートの重合を防ぐため、重合禁止剤の存在下で行うことが望ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フエノチアジン等の既知の重合禁止剤を利用することが出来る。また、エポキシ基含有(メタ)アクリレート類の重合を防ぐため、微量の酸素存在下で反応を行うことが望ましい。
【0041】これらの手法以外に、ヒドロキシル基を1個有する一官能のポリエステルを合成し、ついで2官能イソシアネートと反応させてプレポリマーを合成後、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと反応させて分散剤の原料とすることも可能である。但しこの場合には、不純物として2モルのヒドロキシル基を1個有する一官能のポリエステルと1モルのジイソシアネートの反応したポリエステルが混入しやすい。また、未反応のイソシアネートが残存した場合には、次工程のポリアミン類と反応させる際に、架橋反応が起き、ゲル物が生成する可能性が有る。
【0042】このようにして合成される一般式(1)で示されるポリエステル化合物の平均分子量は100〜20,000の範囲であることが望ましい。さらに好ましくは500〜10,000の範囲である。ポリエステルの分子量が100未満では、得られるアミノ基含有化合物が顔料の周りに十分な立体反発層を形成することができず、また分子量が20,000を越えると得られるアミノ基含有化合物の分子量が大きくなりすぎ、塗料、インキ用ビヒクルとの相溶性が低下し、また顔料分散性も低下する。
【0043】次に、第2工程として前記で得られるエステル化合物とポリアミン化合物を反応させてアミノ基含有化合物からなる顔料分散剤を合成する。本発明に使用されるポリアミン化合物は、その分子量が100〜100,000が望ましい。分子量が100未満では顔料の吸着部分の分子量が低すぎて、ポリアミン化合物を使用した効果がなく、また分子量が100,000を越えると、顔料分散剤全体の分子量が大きくなりすぎ、逆に顔料同志の会合を招いたり、分散性の低下をまねく可能性がある。また、顔料分散剤の溶融時の粘度も高く、合成が困難である。またポリアミン化合物として、塗料用樹脂との相溶性の改善や溶剤溶解性の改良のため、α−オレフィンのモノエポキサイド、カジューラE等のモノエポキサイドとポリアミンとの反応物や、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、などのアクリルモノマーで変性したポリアミンを用いることも可能である。具体的にはポリアミン類として、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどが好適に用いうる。
【0044】マイケル付加し得る官能基を片末端に有するポリエステル化合物とポリアミン化合物の反応比率は、マイケル付加し得る官能基とアミノ基のモル比が1:1から1:99の範囲が望ましく、さらに好ましくは2:3から1:65の範囲が望ましい。反応はポリアミン化合物とマイケル付加し得る官能基を片末端に有するポリエステル化合物を脱水管、コンデンサーの接続した反応器に仕込み反応させることで得られる。反応は、室温においても若干の発熱を伴いながら速やかに、かつほぼ定量的に進行する。従って、反応温度は10℃〜130℃で、好ましくは20℃〜100℃である。10℃より低温では、反応が緩慢で工業的に妥当な反応速度を得ることが出来ない。また、130℃を越えると、マイケル付加し得る官能基同士の反応や反応生成物の着色等の問題を生じ易い。
【0045】反応には、付加反応に関与しない溶剤を用いることも可能である。このような塗料溶剤と溶剤として、キシレン、トルエン、ソルベッソ等の芳香族溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル類等をもちいうる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0046】このようにして合成される分散剤に含有されるポリエステル部分の平均分子量は100〜5,000であることが望ましい。ポリエステルの分子量が100未満では、顔料の周りに十分な立体反発層を形成することができず、また、分子量が5,000を越えると分散剤全体の分子量が大きくなりすぎ、塗料、インキ用ビヒクルとの相溶性が低下し、また顔料分散性も低下する。
【0047】このようにして合成された顔料分散剤において、分散剤中のポリエステル鎖のアミノ基と反対側の末端がヒドロキシル基で終了している場合には、塗料化後の焼付け工程に於て、メラミン樹脂あるいはイソシアネートと反応することにより、本発明の顔料分散剤は、塗膜の一部として強固に組み込まれる。このため塗膜中の顔料分散剤のブリードあるいは結晶化が起こらず、またこの顔料分散剤によって捕捉される顔料は、塗膜中でブリード、あるいは顔料の再凝集が起こりにくい。
【0048】また、適当な分子量のラクトン化合物含有ポリエステルを反応中間体としてのポリエステル化合物として使用することにより、アルコール、セロソルブ類のような比較的極性の高い溶剤を使用した顔料分散にも適用することが可能である。
【0049】上記した本発明の顔料分散剤は、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、等の無機顔料、フタロシアニン類、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合多環系顔料(スレン系、インジゴ系、ペリレン系、ペリノン系、フタロン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系顔料)等について優れた顔料分散性を有し、また製造したミルベースは流動性、保存安定性が良好である。
【0050】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」はいずれも重量部を示す。
【0051】(製造例1:中間体1(PCL FA10)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計および空気導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルアクリレート116部、ε−カプロラクトン1140部、モノブチルスズオキサイド0.012部、メチルハイドロキノン1.3部を加え、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0052】(製造例2:中間体2(PCL FA15)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および空気導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルアクリレート116部、ε−カプロラクトン1710部、モノブチルスズオキサイド0.018部、メチルハイドロキノン1.8部を加え、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0053】(製造例3:中間体3(PCL FA20)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および空気導入管を取り付けた3リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルアクリレート116部、ε−カプロラクトン2280部、モノブチルスズオキサイド0.025部、メチルハイドロキノン2.5部を加え、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0054】(製造例4:中間体4(PCL FM15)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および空気導入管を取り付けた3リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルメタクリレート130部、ε−カプロラクトン1710部、モノブチルスズオキサイド0.020部、メチルハイドロキノン2.0部を加え、残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0055】(製造例5:中間体5(PCL FA2000−30)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および空気導入管を取り付けた3リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルアクリレート116部、ε−カプロラクトン1400部、4−メチルカプロラクトン600部、モノブチルスズオキサイド0.021部、メチルハイドロキノン2.1部を加え、残存するε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトンの合計が1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0056】(製造例6:中間体6(PCL FA2000−20)の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および空気導入管を取り付けた3リットルのガラス製反応フラスコの中にヒドロキシエチルアクリレート116部、ε−カプロラクトン1600部、4−メチルカプロラクトン400部、モノブチルスズオキサイド0.021部、メチルハイドロキノン2.1部を加え、残存するε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトンの合計が1%以下になるまで100℃で10時間反応させた。
【0057】(製造例7:中間体7の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた3リットルのガラス製反応フラスコの中にカプロン酸116部、ε−カプロラクトン1400部、12−ヒドロキシステアリン酸600部、テトラブチルチタネート0.05部を加え、190℃で14時間反応させた。生成物は粘調な液体で、酸価28mgKOH/gであった。次に、上記のポリエステルを80℃まで冷却し、触媒としてトリフェニルホスフィン1部を添加、溶解し、ついでグリシジルメタクリレート142部を滴下し、酸価1mgKOH/gになるまで反応させた。
【0058】(実施例1:分散剤1の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体1を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し、反応を終了した。反応生成物はアミン価102mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで130であった。
【0059】(実施例2:分散剤2の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体1を950部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)50部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価55mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで120であった。
【0060】(実施例3:分散剤3の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体2を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価105mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで130であった。
【0061】(実施例4:分散剤4の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体2を950部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)50部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価54mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで120であった。
【0062】(実施例5:分散剤5の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体3を950部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)50部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価55mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで190であった。
【0063】(実施例6:分散剤6の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体2を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP018」(日本触媒(株)製;分子量1,800)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価104mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで200であった。
【0064】(実施例7:分散剤7の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体2を950部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP018」(日本触媒(株)製;分子量1800)50部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価55mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで180であった。
【0065】(実施例8:分散剤8の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体4を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP018」(日本触媒(株)製;分子量1800)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりメタクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価100mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで150であった。
【0066】(実施例9:分散剤9の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体5を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価102mgKOH/gの粘調な液体で、溶融時の色相はAPHAで120であった。
【0067】(実施例10:分散剤10の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体6を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP018」(日本触媒(株)製;分子量1,800)100部を加え反応させた。プロトンNMRによりアクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価104mgKOH/gの粘調な液体で、溶融時の色相はAPHAで180であった。
【0068】(実施例11:分散剤11の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体7を900部をとり、60℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10000)100部を加え反応させた。プロトンNMRにより、アクリル基が消失したことを確認し反応を終了した。反応生成物はアミン価99mgKOH/gのワックスで、溶融時の色相はAPHAで250であった。
【0069】(実施例12:分散剤12の合成)攪拌器、ジムロート冷却器、温度計、および窒素導入管を取り付けた2リットルのガラス製反応フラスコの中に中間体4を950部をとり、キシレン200部を加えて溶解し、40℃に加熱した。ついで、攪拌しながらポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)50部を加え反応させ、プロトンNMRにより、アクリル基が消失したことを確認し、反応を終了した。反応生成物にTHF200gを加えて十分攪拌溶解した。次に、ジメチル硫酸90部を加えよく混合後、60℃に加温し、2時間攪拌した。次いで反応に用いた溶剤を80℃、減圧下で除去し、固形の生成物を得た。
【0070】(比較例1:分散剤13の合成)コンデンサー、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた2リットル反応機にカプロン酸116部、カプロラクトンモノマー2,000部、テトラブチルチタネート2部を仕込み、窒素気流下、185℃で18時間反応させた。得られた中間体のポリカプロラクトンの酸価が26KOHmg/gであった。コンデンサー、脱水管、窒素導入管、攪拌機、温度計を備えた2リットル反応機に上記の中間体を1,000部仕込み、ついでポリエチレンイミン「SP200」(日本触媒(株)製;分子量10,000)を100部、脱水溶剤としてトルエン600ccを仕込み、150℃で反応させた。脱水された水の量が14ccとなったところで反応を停止した。生成物(トルエン溶液)の一部の溶媒除去後のアミン価は、70mgKOH/gであった。溶融時の色相はAPHAで500であった。また、IRスペクトルからアミド基の吸収が1650,1550cm-1に観測され、ポリエステル鎖がポリエチレンイミンにアミド結合を介してグラフトしていることが確認された。
【0071】(実施例13:流動性試験1)酸化チタン(石原産業製 タイペークCR95:C.I−Pigment White 6)75部、分散剤1を1部、キシレン7部,ブチルセロソルブアセテート7部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0072】(実施例14:流動性試験2)カーボンブラック(三菱化成(株)製 MA−100:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤1を4部、キシレン38部,ブチルセロソルブアセテート38部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0073】(実施例15:流動性試験3)フタロシアニンブルー(大日精化工業製 クロモファインブルー4920:C.I−Pigment Blue15:3)25部、分散剤1を10部、キシレン32.5部,ブチルセロソルブアセテート32.5部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0074】(実施例16:流動性試験4)酸化チタン(石原産業製 タイペークCR95:C.I−Pigment White 6)75部、分散剤2を1部、キシレン7部,ブチルセロソルブアセテート7部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0075】(実施例17:流動性試験5)カーボンブラック(三菱化成 MA−100:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤2を4部、キシレン23部,ブチルセロソルブアセテート23部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0076】(実施例18:流動性試験6)フタロシアニンブルー(大日精化工業製 クロモファインブルー4920:C.I−Pigment Blue15:3)25部、分散剤2を10部、キシレン32.5部,ブチルセロソルブアセテート32.5部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0077】(実施例19:流動性試験7)酸化チタン(石原産業製 タイペークCR95:C.I−Pigment White 6)75部、分散剤3を1部、キシレン7部,ブチルセロソルブアセテート7部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0078】(実施例20:流動性試験8)カーボンブラック(三菱化成 MA−100:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤3を4部、キシレン23部,ブチルセロソルブアセテート23部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0079】(実施例21:流動性試験9)フタロシアニンブルー(大日精化工業製 クロモファインブルー4920:C.I−Pigment Blue15:3)25部、分散剤3を10部、キシレン32.5部,ブチルセロソルブアセテート32.5部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0080】(実施例22:流動性試験10)フタロシアニングリーン(大日精化工業製 クロモファイングリーン5310:C.I−Pigment Green7)25部、分散剤7を10部、キシレン65部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0081】(実施例23:流動性試験11)ベンツイミダゾロンイエロー(大日精化工業製 クロモファインイエロー2080:C.I−Pigment Yellow154)45部、分散剤8を5部、キシレン50部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0082】(実施例24:流動性試験12)黄色酸化鉄(チタン工業製 マピコエローLLXLO:C.I−Pigment Yellow42)60部、分散剤9を2部、キシレン38部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0083】(実施例25:流動性試験13)べんがら(C.I−Pigment Red 101)70部、分散剤10を2部、キシレン14部,ブチルセロソルブアセテート14部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0084】(実施例26:流動性試験14)キナクリドン(大日精化工業製 クロモファインレッド6820:C.I−Pigment Violet19)40部、分散剤2を2部、MIBK29部,ブチルセロソルブアセテート29部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0085】(実施例27:流動性試験15)ブリリアントカーミン6B(大日本インキ化学工業製 シムラーブリリアントカーミン6B 236:C.I−Pigment Red 57:1)45部、分散剤2を2.5部、キシレン52.75部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0086】(実施例28:流動性試験16)ジスアゾイエロー(大日精化工業製 セイカファストイエロー2300:C.I−Pigment Yellow12)40部、分散剤4を2部、キシレン5部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0087】(実施例29:流動性試験17)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤5を10部、キシレン70部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0088】(実施例30:流動性試験18)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤6を10部、キシレン70部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0089】(実施例31:流動性試験19)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤9を10部、キシレン70部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0090】(実施例32:流動性試験20)ジケトピロロピロール(チバガイギー DPP Red BO:C.I−Pigment Red 254)45部、分散剤3を3部、キシレン52部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0091】(実施例33:流動性試験21)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤7を10部、キシレン70部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0092】(実施例34:流動性試験22)ブリリアントカーミン6B(大日本インキ化学工業(株)製シムラ−ブリリアントカーミン6B 236:CI−Pigment Red 57:1)45部、分散剤12を2.0部、キシレン53.25部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは良好な流動性を示し、1週間経過後も流動性を示した。
【0093】(比較例2:流動性試験23)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、分散剤12を10部、キシレン70部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストは分散直後、流動性を示したが、1週間後にはペーストゼリー状となり流動性が失われていた。
【0094】(比較例3:流動性試験24)カーボンブラック(デグッサ FW−200:C.I−Pigment Black 7)20部、アルキッド樹脂(大日本インキ社製:ベッコゾールEZ−3530−80、溶媒:キシレン,NV80%)12.5部、キシレン67.5部、ガラスビーズ100部を分散機(レッドデビル社製)で60分間分散させた。分散ペーストはゲル状で全く流動性を示さなかった。
【0095】(実施例35〜36,比較例4:塗膜評価試験)実施例15、実施例31、比較例2で製造した顔料ペーストを、表−1に示した配合組成で塗料化し、塗料作成直後および低温放置(0℃,3日間)後塗膜を作製し(焼付け条件:135℃、30分)、表面光沢度の測定(60℃)を行った。その結果を表−2に示す。
【0096】
【表1】


【0097】
【発明の効果】以上の様に、ポリアミン化合物とポリエステル化合物をマイケル付加反応を利用して付加することにより合成された本発明の顔料分散剤は、アミド基によりグラフトされた分散剤より優れた顔料分散性を有しており、各種の塗料、インキに応用可能である。さらに、実施例36から明らかなように、側鎖を有するラクトン類から製造された顔料分散剤は、カプロラクトンの様に結晶性が高くなく、低温でも塗料中で析出せず、これを使用したペイント低温放置後もグロスの低下が起こらず、塗料調製にきわめて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アミノ基とマイケル付加反応し得る官能基を末端に有し一般式(2)で示されるラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットを必須成分として含有する一般式(1)で示されるポリエステル化合物および、ポリアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有化合物からなる顔料分散剤。
【化1】


【請求項2】 アミノ基含有化合物のアミン価が、10〜500mgKOH/gの範囲である請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項3】 一般式(1)で示されるポリエステル化合物の平均分子量が100〜20,000の範囲である請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項4】 ポリアミン化合物の分子量が100〜100,000の範囲である請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項5】 ポリアミン化合物がポリエチレンイミンである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項6】 請求項1記載のアミノ基含有化合物の遊離のアミノ基を4級アンモニウム塩化した4級アンモニウム塩化アミノ基含有化合物からなる顔料分散剤。
【請求項7】 ポリアミン化合物がポリアリルアミンである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項8】 ポリアミン化合物がポリビニルアミンである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項9】 ラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットがε−カプロラクトンによるものである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項10】 ラクトン化合物の開環により生成するポリエステル鎖を有するユニットがメチルカプロラクトンによるもの、あるいはメチルカプロラクトンおよびε−カプロラクトンの共重合によるものである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項11】 マイケル付加し得る官能基が(メタ)アクリロイル基である請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項12】 一般式(1)で示されるポリエステル化合物が一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルである請求項1記載の顔料分散剤。
【化2】


【請求項13】 請求項2に記載の顔料分散剤に微細な固体を分散させてなる分散液。
【請求項14】 請求項1に記載の顔料分散剤を含む塗料組成物。
【請求項15】 請求項1に記載の顔料分散剤を含む印刷インキ組成物。

【公開番号】特開平8−143813
【公開日】平成8年(1996)6月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−311303
【出願日】平成6年(1994)11月22日
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)