説明

顔料分散組成物の製造方法及びそれにより得られる顔料分散組成物

【課題】粒径がナノメートルサイズにまで微細化され、しかも粒径がそろったビルドアップ顔料微粒子を含有し、該顔料微粒子の効率的かつ再現性の高い調色に好適に対応することができる分散組成物の製造方法及びそれにより得られる顔料分散組成物を提供する。また本発明は、多様な色彩において鮮やかさと輝きを有し、しかもその色みが長期にわたって維持される、化粧料等の着色材料として好適に用いうる顔料分散組成物及びその品質を維持した大量生産にも対応しうる製造方法を提供する。
【解決手段】有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる金属置換反応工程と、前記有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散させる分散工程とを有することを特徴とする顔料分散組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散組成物の製造方法及びそれにより得られる顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顔料粒子の微細化技術が検討されている。一般的な粒子形成の手法としてブレイクダウン法(粉砕法)が挙げられるが粒子の微細化には適さない。この方法では、粒子の微細化に多大な時間とエネルギーを要し生産効率が低い。また用いうる物質も限定されてしまう。これに対し、気相中または液相中で粒子を成長させることが試みられている。例えばマイクロ化学プロセスにおいて有機顔料を溶解した液体のpHを変化させてその粒子を析出させる方法が開示されている(特許文献1、2参照)。また、マイクロ化学プロセスにより水素フタロシアニン顔料の粒子および銅フタロシアニン顔料の粒子を得る手法が開示されているが(特許文献3参照)、アシッドペースト法による方法であり、顔料がスルホン化され、酸性度が高くなることから好ましくない。有機顔料微粒子を生成させ、バッチにおいて重合反応を行い、顔料をカプセル化して安定化させる手法が開示されているが(特許文献4参照)、一度酸で凝集させた後、再分散を行い、未再分散物(粗大粒子)をろ過する工程が必要であるため、生産する上では満足の行くものではなかった。そのほか、マイクロ化学プロセスを用いて顔料微粒子を生成させ、バッチにおいて重合反応を行い重合性化合物を固定化する手法が開示されている(特許文献5参照)。
【0003】
ところで、顔料系の色材の色相を調整する方法として、2種類以上の顔料を混合する方法が開示されているが(特許文献6参照)、技巧的な調色操作を必要とするため、調色者の経験により個人差が生じ、色相に差異が出てしまう。より簡便で再現性が確保できる手法が望まれている。また、2種類以上の金属フタロシアニン顔料の粒子を同時に生成することが開示されているが(特許文献7参照)、気相法やアシッドペースト法により混晶を形成してしまう。かかる方法で調整した混晶の色相は顔料主成分の色相にほぼ支配されるため、この手法を色相の調整に利用することは難しい。
【0004】
化粧用色材を用いた化粧料の開発についてみると、例えば金属の安定性や彩度の高い色材に着目し微粒子金属コロイドゾルを用いたものがある(特許文献8参照)。これは金属コロイドのプラズモン発色を利用するものであり、金属種や顔料種が著しく限定され、多様な色相のものを提供することはできない。またブロンズ化現象を引き起こすものもあり(特許文献9参照)、色変わりを生じるため細心の注意が必要となる。
【0005】
一般的に、無機顔料は安定性に優れるものの彩度が低く鮮やかな発色を得ることが難しい。一方、有機顔料は鮮やかな発色を示すが経時での色調の安定性や保存安定性が不足する。これに対し顔料(フタロシアニンブルー)の化粧料への使用を試みたものがある(特許文献10参照)。ここでは、特定の界面活性剤とガラス転移温度100℃以下のポリマーとが用いられているが、顔料の着色力が低下し鮮やかな発色とはしにくい。また、マイクロミキサーを用いた調合物の製造方法が開示されているが(特許文献11参照)、ここで具体的に製造されているものは、手と爪のクリーム、コールド製剤、日焼止め乳液、保湿クリーム等であり、顔料微粒子を含有する着色組成物ではない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−307154号公報
【特許文献2】特開2006−342304号公報
【特許文献3】特開2006−341232号公報
【特許文献4】特開2004−43776号公報
【特許文献5】特開2007−39643号公報
【特許文献6】特開2003−342490号公報
【特許文献7】特開平2−84661号公報
【特許文献8】特開2006−89389号公報
【特許文献9】特開2006−299051号公報
【特許文献10】特開2000−191473号公報
【特許文献11】特表2002−538947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜5のように液相法を応用した顔料粒子の調製方法が開示されているが、いずれも効率的かつ再現性の高い調色に十分に対応しうるものとはいえない。
本発明は、粒径がナノメートルサイズにまで微細化され、しかも粒径がそろったビルドアップ顔料微粒子を含有し、該顔料微粒子の効率的かつ再現性の高い調色に好適に対応することができる分散組成物の製造方法及びそれにより得られる顔料分散組成物の提供を目的とする。また本発明は、多様な色彩において鮮やかさと輝きを有し、しかもその色みが長期にわたって維持される、化粧料等の着色材料として好適に用いうる顔料分散組成物及びその品質を維持した大量生産にも対応しうる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は下記の手段によって達成された。
(1)有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる金属置換反応工程と、前記有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散させる分散工程とを有することを特徴とする顔料分散組成物の製造方法。
(2)前記金属置換反応工程において、前記金属塩類を2種以上用い、その少なくとも2種の金属塩類の金属原子を互いに異ならせ、組成物中に複数の種類のビルドアップ顔料微粒子を含有させることを特徴とする(1)に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(3)前記分散工程において、前記有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散させ、これと同時もしくは逐次に前記有機金属錯体顔料前駆体の微粒子を析出させ、組成物中に複数の種類のビルドアップ有機顔料微粒子を含有させることを特徴とする(1)又は(2)に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(4)前記金属置換反応工程及び分散工程を経て、水素フタロシアニン顔料の微粒子及び/又は金属フタロシアニン顔料の微粒子の1種以上を含有する分散組成物を調製することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(5)前記金属置換反応工程において前記有機金属錯体顔料前駆体から有機金属錯体顔料を生成させた後、100ミリ秒以内に前記分散工程において前記有機金属錯体顔料を含む液体と貧溶媒とを混合することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(6)前記ビルドアップ有機顔料微粒子の平均粒子サイズを80nm以下とし、かつ、体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)を1.80以下とすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(7)前記ビルドアップ有機顔料微粒子に水溶性重合性化合物の重合体を固定化し水分散性重合体粒子とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(8)前記ビルドアップ顔料微粒子に被架橋性化合物を架橋固定化し水分散性重合体粒子とすることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(9)前記金属塩類溶液に、金属塩類溶液100質量部中に0.5〜100質量部の水性媒体を含有させることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(10)前記金属置換反応工程及び/又は前記分散工程を分散剤の存在下で行うことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(11)前記金属置換反応工程及び/又は分散工程を層流と乱流の過渡状態で行うことを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(12)前記金属置換反応工程及び/又は分散工程を層流で行うことを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(13)前記有機金属錯体顔料を含有する液体に貧溶媒を接触させて、前記液体のpHを変化させることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(14)前記有機金属錯体顔料前駆体及び/又は前記有機金属錯体顔料とこれとは別の顔料とを含有する混合液体を貧溶媒と接触させて、前記混合液体のpHを変化させることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(15)前記金属置換反応工程及び/又は前記分散工程をマイクロリアクターのマイクロチャンネル中で行うことを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
(16)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法で製造された顔料分散組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、粒径がナノメートルサイズにまで微細化され、しかも粒径がそろったビルドアップ有機顔料微粒子を含有する有機顔料分散組成物を調製する際に、煩雑な工程や技能・技量に頼ることなく、しかも再現性良く前記有機顔料微粒子を調色することができるという優れた作用効果を奏する。また、本発明の製造方法によれば、上記の顔料微粒子を含有する分散組成物を効率的に調製することができ、その品質を維持した大量生産にも対応しうる。さらにまた、本発明の顔料分散組成物は、多様な色彩において鮮やかさと輝きを有し、しかもその色みを長期にわたって維持することができ、化粧料等の着色材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0011】
本発明の製造方法によれば、金属置換反応により得られた特定のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する顔料分散組成物を製造することができる。本発明において「ビルドアップ法」とは、溶媒に溶解(分子分散)した顔料または顔料前駆体から化学的反応(溶解度の変化も含む)を経て顔料微粒子を形成する方法をいう。このビルドアップ法によれば、ブレイクダウン法で形成することが難しい、ナノメートルサイズの有機顔料微粒子を効率良く形成することができる。そして本発明においては、上記ビルドアップ法で形成した顔料微粒子を「ビルドアップ有機顔料微粒子」と定義する。
【0012】
本発明の製造方法によれば、有機金属錯体顔料前駆体から生成させた有機顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を含有する顔料分散組成物を得ることができ、(a)有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる金属置換反応工程と、(b)上記前駆体から生成させた有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散する工程とを有する。上記金属置換反応工程(a)と分散工程(b)とは同時に又は逐次に行ってもよい。金属置換反応工程(a)においては、マイクロチャネル中で行うことが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法において、ビルドアップ有機顔料微粒子の分散工程(b)においては、金属置換反応により生成させた有機顔料を含有する液体と後述する貧溶媒とを混合し、その分散状態を変化させることができる。
本発明において、貧溶媒とは顔料微粒子を析出させる溶媒を表す。貧溶媒として水、もしくは水に相分離しない程度の有機溶媒を溶解させた水性媒体が挙げられる。貧溶媒に含有することが可能な有機溶媒の好ましいものを上げれば、メタノールまたはエタノール等の低級アルコール系溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ系溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能系溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸系溶媒が挙げられる。
【0014】
好ましい有機溶媒は、塩基性の場合はアミド系溶媒または含イオウ化合物系溶媒であり、酸性の場合はカルボン酸系溶媒またはスルホン酸系溶媒であるが、更に好ましくは塩基性の場合は含イオウ化合物系溶媒であり、酸性の場合はスルホン酸系溶媒である。特に好ましくは、塩基性の場合はジメチルスルホキシド(DMSO)、酸性の場合はメタンスルホン酸である。水性媒体中の有機溶媒の濃度は20質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは10質量%以下である。
本発明の分散工程(b)において液中に分散剤を共存させてもよく、この分散剤の種類や貧溶媒の種類、ないし上記有機顔料を含有する液体と貧溶媒とが出会うまでの時間等を調節することにより微粒子の成長を進ませたり抑えたりすることができ、これにより微粒子の大きさを制御することができる。
【0015】
このとき工程間の滞留時間(反応時間)を調節して分散状態を制御することが好ましい。このように分散工程(b)において滞留時間(反応時間)を調節することにより、例えば特開2007−100072号公報で開示されているような粒径を調えるための超音波等による別途の分散工程を省略することができ、工程短縮・コスト低減が計れる。そのため、上記置換反応と貧溶媒との接触混合による分散とを連続して行うことがより好ましい。この滞留時間(反応時間)は、例えば後述する図4に示した六方マイクロリアクターでいうと、流体合流点201で複数の液体が接触し有機顔料が生成し、その後分散のための貧溶媒と接触するまでの時間に相当し、好ましくは1秒以下、より好ましくは100ミリ秒以下であり、滞留時間を短く調整することにより、結晶形態サイズにおける長い辺の長さを短くすることができ、さらに好ましくは10ミリ秒以下の滞留時間とすることにより、結晶形態サイズの長い辺の長さと短い辺の長さとの比(アスペクト比)の大きな針状晶結晶ではなく、アスペクト比の小さな球状結晶にすることができる。
【0016】
金属置換反応工程(a)および分散工程(b)における反応温度は、溶媒が凝固あるいは気化しない範囲内であることが好ましく、具体的には−20〜90℃であることが好ましく、0〜70℃であることがより好ましく、15〜50℃であることが特に好ましい。金属置換反応工程(a)および分散工程(b)における流路内での流体の速度(流速)は0.1mL〜300L/hrが好ましく、0.2mL〜30L/hrがより好ましく、0.5mL〜15L/hrが更に好ましく、1.0mL〜6L/hrが特に好ましい。金属置換反応工程(a)において、有機金属錯体顔料前駆体を液中に溶解した液体として供給するとき、その濃度は、生成する顔料溶液の顔料に換算したときの濃度が0.5〜20質量%となるようにすることが好ましく、1.0〜10質量%となるようにすることがより好ましい。上記分散工程(b)で用いられる貧溶媒としては、「水性媒体」を用いることが好ましい。分散工程(b)で用いられる貧溶媒の量は、金属置換反応工程で得られた有機顔料微粒子を含有する液体100質量部に対して、水0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、1〜500質量部の範囲であることがより好ましく、10〜200質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0017】
金属置換反応工程(a)において「金属塩類溶液」は貧溶媒を含有してもよい。金属塩類を溶解した液体に貧溶媒を含有させることにより、一層効果的に有機金属錯体顔料前駆体溶液の金属置換反応と、金属置換反応により得られた有機顔料を含有する液体と貧溶媒との接触混合とを同時に又は逐次に行うことができる。
「金属塩類溶液」に貧溶媒を導入することによって、上記金属置換反応を行うと同時もしくは逐次に貧溶媒(好ましくは水性媒体)を接触させることができ有機金属錯体顔料前駆体溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、所望の分散状態とした分散組成物とすることができる。
このとき、例えば有機金属錯体顔料前駆体として水素フタロシアニンを用いれば、金属置換反応による金属フタロシアニン顔料ないしその微粒子の生成とpH変換での共沈による水素フタロシアニン顔料微粒子との析出を同時もしくは逐次に行うことができ水素フタロシアニン顔料の微粒子および1種類以上の金属フタロシアニン顔料の微粒子を含有する分散組成物とすることができる。
【0018】
金属塩類溶液に貧溶媒(好ましくは水性媒体)を含有させるとき、その添加量は、好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.01〜1000質量部、より好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.1〜500質量部、さらに好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.5〜100質量部である。
【0019】
本発明の製造方法において、2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を分散組成物中に含有させる別の実施態様として、前記金属置換反応工程(a)において、互いに異なる金属をそれぞれ有する2種以上の金属塩類を反応させることが挙げられる。本発明の製造方法に用いられる好ましい金属塩類の種類およびこれを2種以上用いるときの組合せについては後述する。
【0020】
本発明の製造方法において、2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を分散組成物中に含有させる別の実施態様として、有機金属錯体顔料前駆体溶液と顔料溶液との混合液を用い、金属置換反応工程(a)と顔料分散工程(b)とを同時及び/又は逐次的に行うことが挙げられる。すなわち、(a)金属錯体前駆体と1種以上の金属塩類による金属置換反応工程と、(b−1)(a)で得られた液と貧溶媒とから所望の分散状態とした分散組成物とする顔料分散工程により生成する1種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子と、(b−2)1種類以上の顔料溶液と貧溶媒とから顔料溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、所望の分散状態とした分散組成物とする顔料分散工程により生成する1種類以上の顔料のビルドアップ顔料微粒子とを含有する分散液とすることができる。
【0021】
上記有機金属錯体顔料前駆体溶液と顔料溶液との混合液を用い、金属置換反応工程(a)と顔料分散工程(b)とを同時及び/又は逐次的に行う実施態様おいて生成する顔料の好ましい組み合わせは銅フタロシアニン顔料、鉛フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料中から1種類以上の顔料と、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料の中から、1種類以上の顔料との組合わせが好ましく、銅フタロシアニンとキナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料の中から、1種類以上の顔料との組合わせがより好ましい。
【0022】
本発明の製造方法によれば、上記各実施態様のように2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を1つの分散系で同時又は逐次に調製し、所望の色相の分散組成物とすることができるため、多様でありながら再現性の高い調色が可能となる。
【0023】
上記の有機金属錯体顔料前駆体からビルドアップ有機顔料微粒子を生成させる実施態様において、有機金属錯体顔料前駆体ないしそこから生成させた有機金属錯体顔料を含む液体と貧溶媒とを接触混合させる際、前記液体の水素イオン指数(pH)を変化させ、ビルドアップ有機顔料微粒子を形成することが好ましい。水素イオン指数(pH)の変化は、pH16.0〜5.0の範囲内でpHを低下させることが好ましく、pH16.0〜10.0の範囲内でpHを低下させることがより好ましい。変化の幅は有機金属錯体顔料前駆体及び/又は有機金属錯体顔料を含む液体の水素イオン指数(pH)の値によるが、ビルドアップ有機顔料微粒子の析出をうながすのに十分な幅でよい。
【0024】
本発明において有機金属錯体顔料とは、特に断らない限り、中心金属と有機配位子とを有する有機金属錯体顔料を意味し、その有機配位子の種類によって、例えば金属フタロシアニン顔料、アゾ金属錯体顔料、またはアゾメチン金属錯体顔料に大別される。具体例をC.I.ナンバーで示せば、P.B.15、P.B.75、P.B.79、P.G.7、もしくはP.G.36などの金属フタロシアニン顔料、P.G.8、P.G.10、もしくはP.Y.150などのアゾ金属錯体顔料、またはP.Y.65、P.Y.117、P.Y.129、P.Y.153、P.Y.177、P.Y.179、P.O.65、P.O.68、もしくはP.R.257などのアゾメチン金属錯体顔料が挙げられる。なかでも金属錯体顔料としては金属フタロシアニン顔料が代表的である。
以下、金属フタロシアニン顔料について詳しく説明する部分もあるが、それにより本発明が限定して解釈されるものではない。
【0025】
前記有機金属錯体の中心金属として、II〜IV価の典型金属、遷移金属、または内遷移金属が挙げられる。これらを具体的に示せば、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、タリウム(Tl)、もしくは鉛(Pb)の典型金属、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、もしくは水銀(Hg)の遷移金属、またはセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツリウム(Np)、もしくはアメリシウム(Am)のランタニド系・アクチニド系の内遷移金属などが挙げられる。なかでも遷移金属が好ましく、二価の遷移金属であることがより好ましく、銅(II)、鉛(II)、又は亜鉛(II)であることが特に好ましい。
【0026】
前記有機配位子(例えば、金属フタロシアニンであればそのフタロシアニン基)は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキルもしくはシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、または塩素もしくは臭素のハロゲン原子が好ましく、無置換またはハロゲン原子を置換基として有することがより好ましく、無置換であることが特に好ましい。尚、本発明において、金属フタロシアニンとは、フタロシアニン骨格を有するもののほか、フタロシアニン骨格のベンゼン環にさらにベンゼン環が縮合した構造(例えばナフタロシアニン)を有するものを含む意味で用いる。
【0027】
本発明において有機金属錯体顔料前駆体とは金属置換反応により有機金属錯体顔料となる化合物と定義される。ただし、有機金属錯体顔料前駆体自体が微粒子化したときに着色剤として有用な顔料として機能するものであってもよく、そのような化合物として例えば水素フタロシアニン(PB―16)が挙げられる。有機金属錯体顔料前駆体として、フタロシアニンアルカリ金属塩又は水素フタロシアニンを用いることができ、より好ましくは置換もしくは無置換のフタロシアニンアルカリ金属塩又は置換もしくは無置換の水素フタロシアニンであり、特に好ましくは置換もしくは無置換のフタロシアニンアルカリ金属塩である。前記置換もしくは無置換フタロシアニンアルカリ金属塩としては、通常ジアルカリ金属塩を形成しており、使用するアルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、もしくはセシウム(Cs)が挙げられ、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、もしくはセシウム(Cs)が好ましく、ナトリウム(Na)、カリウム(K)がより好ましい。
【0028】
前記金属塩類とは、金属錯体の中心金属としたときに顔料を生成する金属の塩であり、その金属は前記金属錯体の中心金属として説明した金属が挙げられ、その好ましい範囲も同様である。塩を形成する対アニオンとしては、ハロゲンアニオン、ClO−、BF−、カルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン)、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン)、リン酸イオン等が挙げられる。なかでもハロゲンアニオンもしくはアセチルアセトナートアニオンのように金属に余り強くない錯体を形成する配位子を構成するものが好ましく、塩素イオンもしくは臭素イオンのハロゲンイオン、またはアセチルアセトナートアニオンがより好ましく、極性溶媒への溶解性がとりわけ良い金属塩を形成する臭素イオンであることが特に好ましい。また、金属塩類の溶解性を上げる目的で、その液体中にトリアルキルホスフィン(例えば、トリブチルホスフィン)、トリアルキルホスファイト(例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト)等を添加することも好ましい。
【0029】
具体的には金属塩類として、臭化銅(II)、臭化鉛(II)、臭化亜鉛(II)を用いることが好ましい。複数の種類のビルドアップ顔料微粒子を分散組成物中に含有させるために、金属塩類を2種以上組み合わせて用いて2種類以上の顔料微粒子をえるとき、臭化銅(II)、臭化鉛(II)、臭化亜鉛(II)から選ばれた2種類以上の組合せであることが好ましく、臭化銅(II)と臭化鉛(II)との組合せ、臭化銅(II)と臭化亜鉛(II)との組合せ、臭化銅(II)と臭化鉛(II)と臭化亜鉛(II)との組合せがより好ましい。なお、3種以上の金属塩類を用いるとき3種目の金属塩類の金属原子は、他の2種の金属原子と同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
上記有機金属錯体前駆体を溶解するための溶媒は、極性溶媒(分子内に大きな分極構造をもつ溶媒)が好ましく、具体的にはジメチルスルホキシド、スルホラン、もしくは3−スルホレンのような含イオウ系極性有機溶媒、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、もしくは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのようなアミド系有機溶媒を主体とした溶媒が好ましい。溶媒が極性有機溶媒であるとき、溶媒全体の50%(体積比)以上が極性有機溶媒であることが好ましく、本発明の効果を妨げなければ、他の有機溶媒や水との混合溶媒として用いてもよく、ジメチルスルホキシドの単独もしくは混合溶媒、またはスルホランの単独もしくは混合溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)の単独もしくは混合溶媒がより好ましい。
【0031】
極性溶媒と混合する場合、他の有機溶媒としては、非プロトン溶媒(aprotic solvent)が挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、アセトンもしくはメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、またはテトラメチル尿素等の尿素系溶媒が挙げられ、ポリエーテル系溶媒が好ましい。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0032】
極性溶媒において、水酸基のようなプロトン供与しやすい基を有する溶媒(例えば水やアルコール)は、フタロシアニンアルカリ金属塩の溶解に用いる場合でいうと、一般的にはフタロシアニンアルカリ金属塩と反応し、水素フタロシアニンを与えるので混合溶媒として好ましくないが、液体中に過剰のアルカリを含む場合は、平衡がフタロシアニンアルカリ金属塩の方に大きくずれるため、多少(20%(質量比)以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい)のプロトン供与溶媒が存在しても構わない。
【0033】
極性溶媒の量は、高純度の有機金属錯体顔料微粒子を得るために、有機金属錯体顔料前駆体を十分に溶解できる量であればよく、その量(混合溶媒の場合はその総量)は有機金属錯体顔料前駆体に対して、重量比で5〜200倍程度であることが好ましく、10〜100倍程度であることがより好ましい。
【0034】
有機金属錯体顔料前駆体を溶解した液体の調製方法に特に制限はないが、例えば、(i)所望の配位子を有するアルカリ金属塩(例えばフタロシアニンアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはジナトリウムフタロシアニンが挙げられる。)を極性溶媒(例えば、DMSOが挙げられる。)に溶解してもよく、(ii)所望の配位子となる化合物(例えば水素フタロシアニンが挙げられる。)とアルカリ化合物(例えば、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。)とを別に極性溶媒(例えば、DMSO)に溶解してもよい。
【0035】
金属塩類を溶解する溶媒は、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジグライム、トリグライム、およびアセトンであればよく、混合溶媒でもよい。特に好ましくはDMSOである。金属塩類を溶解する溶媒の量は、金属塩類を十分に溶解できる量であればよく、その量(混合溶媒である場合はその総量)は金属塩類に対して、質量比で5〜200倍程度であることが好ましく、10〜100倍程度であることがより好ましい。
【0036】
本発明の製造方法においては分散剤の存在下で、上記金属置換反応工程(a)及び/又は上記分散工程(b)を行うことができる。このとき、有機金属錯体前駆体溶液、金属塩類溶液、及び貧溶媒のいずれか一つ以上に分散剤を添加することが好ましく、それにより粒径分布が狭くサイズの小さな顔料微粒子を得ることができる。分散剤は(1)析出した有機微粒子表面に素早く吸着して、微細な粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである(なお、金属置換反応工程(a)における分散剤の働きは凝集を制御可能な添加剤であるため、特に晶癖制御剤ということもある)。使用可能な分散剤は、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の低分子または高分子分散剤である。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。
顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0037】
分散剤を添加する好ましい態様は、例えば、アルカリ金属塩等の有機金属錯体顔料前駆体溶液中に分散剤を添加する及び/又は金属塩溶液中に分散剤を添加する態様であり、好ましくは、アニオン性分散剤及び/又は高分子分散剤を有機金属錯体顔料前駆体溶液中及び/又は金属塩溶液中に添加し、貧溶媒に分散剤を添加しない態様であり、より好ましくはアニオン性分散剤及び/又は高分子分散剤を金属塩溶液中に添加する様態である。こうすることにより、吸湿しやすい分散剤をアルカリ金属塩等の有機金属錯体顔料前駆体溶液中に添加しないことにより、該溶液の経時安定性が保たれるため好ましい。
【0038】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−メチルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−メチルタウリン塩もしくはポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が好ましい。また塩を形成するカチオンはアルカリ金属カチオンが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0041】
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。
【0043】
高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の製造方法により得られる分散組成物には、上述した金属置換反応工程(a)及び分散工程(b)を経て作製した以外に、液相法により形成したビルドアップ有機顔料微粒子が含まれていてもよく、再沈法や共沈法により形成したものが含まれていてもよい。
本発明において液相法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した液体を貧溶媒(水性媒体など)とを混合し、有機顔料を析出させる方法をいう。本発明において再沈法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した液体を貧溶媒(水性媒体など)とを接触させ顔料を析出形成する方法をいう。本発明において共沈法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した液体を貧溶媒(水性媒体など)と接触させ顔料を析出形成する方法において、有機顔料析出時に分散剤を共存させる微粒子形成方法をいう。共沈法において分散剤を共存させる態様は特に限定されないが、上記の顔料溶液及び貧溶媒のいずれかもしくは両方に分散剤を含有させておくことが好ましく、これにより微粒子析出時の分散安定性を効果的に向上させることができる。なお、このとき用いられる分散剤としては先に述べたものを用いることができる。微粒子析出をこれらの方法で形成した顔料微粒子は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。
【0045】
ここで本発明の製造方法において再沈法ないし共沈法で作製した顔料微粒子を混合する好ましい実施態様についていうと、前記分散工程において再沈法ないし共沈法が行われるようにしてもよく、再沈法ないし共沈法で得た顔料分散組成物を別途混合するようにしてもよい。前記分散工程において再沈法ないし共沈法を行う実施態様については、例えば先に述べたように有機金属錯体顔料前駆体を含む液体及び/又は該前駆体から生成させた有機金属錯体顔料を含む液体及び/又は顔料溶液を貧溶媒と混合して有機金属錯体顔料前駆体の微粒子及び/又は有機金属錯体顔料の微粒子及び/又は顔料の微粒子を生成させることが挙げられる。また、このとき該微粒子をナノメートルサイズで得ることが好ましい。
【0046】
上記再沈法ないし共沈法において顔料溶液と貧溶媒とを混合する態様として、バッチ方式についていうと、(i)顔料溶液に貧溶媒を注ぐ態様、(ii)貧溶媒に顔料溶液を注ぐ態様、(iii)顔料溶液と貧溶媒とを同時に供給して混合する態様などが挙げられる。このとき、フラスコやタンク内を攪拌し混合を促進することが好ましい。
上記とは異なり、顔料溶液と貧溶媒とを流路(チャンネル)中に流通させて接触混合させる方法、すなわち連続フロー法で行うことが好ましい。その際、両者は流路中に層流とし流入し、互いに接触させ、層流界面で接触させることが好ましい。
【0047】
本発明においては、前記金属置換反応工程(a)及び/又は前記分散工程(b)においてマイクロリアクターを用いることが好ましく、層流を形成しうる流路を有するものを用いることがより好ましく、その流路がマイクロ反応場を形成しうる等価直径のものであることが特に好ましい。具体的にマイクロリアクターの流路の等価直径を1〜1000μmにすることが好ましく、更に50〜1000μmにすることがより好ましい。
【0048】
等価直径(equivalent diameter)とは相当(直)径、とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意断面形状の配管(流路)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて:deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管では:deq=4a/4a=a、一辺aの正三角形管では:deq=a/√3、流路(チャンネル)高さhの平行平板間の流れでは:deq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0049】
流れが層流になるか乱流になるかは流れの様子を示す無次元数であるレイノルズ数(Reynolds number)が、ある臨界値以下であるか否かによって決まる。レイノルズ数が小さいほど層流を形成しやすい。管内の流れのレイノルズ数Reは次式で表される。
Re=D<υx>ρ/μ
Dは管の等価直径、<υ>は断面平均速度、ρは流体の密度、μは流体の粘度を表す。この式からわかるように等価直径が小さいほどレイノルズ数は小さくなるので、μmサイズの等価直径の場合は安定な層流を形成しやすくなる。また、密度や粘度の液物性もレイノルズ数に影響し、密度が小さく、粘度が大きいほどレイノルズ数は小さくなるので層流を形成しやすいことがわかる。
【0050】
流れが変化する臨界値のレイノルズ数を臨界レイノルズ数(critical Reynolds number)と呼ぶ。臨界レイノルズ数は必ずしも一定とはいえないが、凡そ次の値が基準となる(荻野文丸総編集、「化学工学ハンドブック」、p37、2004年、朝倉書店参照)。
Re<2300 層流
Re>4000 乱流
4000≧Re≧2300 過渡状態
【0051】
本発明の製造方法における前記金属置換反応工程及び/又は分散工程において非層流下で接触させて顔料微粒子を形成してもよい。ここで「非層流」とは規則的または不規則な変動を含む流れのことで、例えばカルマン渦やテーラー渦等で代表される層流渦の領域から乱流領域までを含む流れをいう。
上述のように非層流は規則的または不規則な変動を含む流れである。これについて詳しくいうと、マイクロ流路中に第1の粘性流体(例えば水)を流し、その中心軸上にそのマイクロ流路よりも細い管を挿入して別の第2の粘性流体(例えば着色水)を注入すると、流速が十分に遅ければ、着色水は変動を含まない1本の線状の流れとなって流路軸に平行に安定的に流れる。すなわち層流となる。そして、徐々に流速を上げていくと不安定で変動を含む流れへと移行していき、ついには、その変動を起因とした乱れの中で第2の粘性流体が第1の粘性流体と混合していく。すなわち連続的に層流から乱流へと移行する。このとき層流域であるか乱流域であるかに関わらず、上記の流れの変動の形態として規則的なものと不規則なものとがあり、非層流というとき、これらの両者を含む。
【0052】
例えば、規則的な変動を含む流れとしては、カルマン渦及びテーラー渦が挙げられる。一方、不規則な変動を含む流れとしては、無秩序に大小の様々な渦の発生と消滅が繰り返されるような、いわゆる乱流状態の流れが挙がられる。なお、非層流については、(1)化学工学便覧改訂六版,化学工学会編,丸善株式会社、(2)理化学辞典第5版,岩波書店、(3)M.Engler et al.,“Effective Mixing by the Use of Convective Micro Mixers”,Conference Proceedings,2005 Spring National Meeting,AIChE,128dなどを参考にすることができ、例えば特開2006−342304号公報に記載の態様により行ってもよい。
【0053】
本発明の製造方法において、ビルドアップ有機顔料微粒子は、有機金属錯体顔料前駆体と金属塩類との金属置換反応による金属置換法による場合、上記層流過程での金属置換法、過渡状態での金属置換法、または非層流状態での金属置換法により形成したものが好ましく、過渡状態または層流過程での金属置換法により形成したものであることがより好ましい。あるいは、共沈法による場合、上記層流過程での共沈法、過渡状態での共沈法、または非層流状態での共沈法により形成したものが好ましく、過渡状態または層流過程での共沈法により形成したものであることがより好ましい。これらの方法で微粒子析出させ形成した顔料微粒子は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に一層優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。
【0054】
本発明の製造方法においては、ビルドアップ有機顔料微粒子の形成に中心衝突型合流流路を有するマイクロリアクター装置を用いることが好ましい。図1は中心衝突型マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示した分解斜視図である。本実施態様の立体型マイクロリアクター装置100は、主として、それぞれが円柱状の形状をした供給ブロック11、合流ブロック12、及び反応ブロック13により構成される。そして、マイクロリアクター装置100を組み立てるには、円柱状をしたこれらのブロック11、12、13を、この順番で互いの側面同士を合わせて円柱状になるようにし、例えばこの状態で各ブロックをボルト・ナット等により一体的に締結する。
【0055】
供給ブロック11の合流ブロック12に対向する側面14には、2本の環状溝15、16が同芯状に穿設されており、マイクロリアクター装置100を組み立てた状態において、2本の環状溝15及び16は液体Bと液体Aとがそれぞれ流れるリング状流路を形成する。そして、供給ブロック11の合流ブロック12に対向しない反対側の側面24から外側環状溝16と内側環状溝15に達する貫通孔18、17がそれぞれ形成される。かかる2本の貫通孔18、17のうち、外側の環状溝16に連通する貫通穴18には、液体Aを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結され、内側環状溝15に連通する貫通孔17には、液体Bを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結される。図1中、外側環状溝16に液体Aを流し、内側環状溝15に液体Bを流すように示したが、逆にしてもよい。
【0056】
合流ブロック12の反応ブロック13に対向する側面19の中心には円形状の合流部20が形成され、この合流部20から放射状に4本の長尺放射状溝21と4本の短尺放射状溝22が交互に穿設される。これら合流穴20や放射状溝21,22はマイクロリアクター装置100を組み立てた状態において、合流領域20となる円形状空間と液体A,Bが流れる放射状流路とを形成する。また、8本の放射状溝21,22のうち、長尺放射状溝21の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴25が形成され、これらの貫通穴25は供給ブロック11に形成されている前述の外側環状溝16に連通される。同様に、短尺放射状溝22の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴26が形成され、これらの貫通穴26は供給ブロック11に形成されている内側環状溝15に連通される。
【0057】
また、反応ブロック13の中心には、反応ブロック13の厚み方向に合流部20に連通する1本の貫通孔23が形成され、この貫通孔23がマイクロ流路からなる液体混合空間となる。
これにより、液体Aは供給ブロック11の貫通孔18から外側環状溝16を経て合流ブロック12の貫通孔25を通り、長尺放射溝21の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部20に至る。一方、液体Bは供給ブロック11の貫通孔17から内側環状溝15を経て合流ブロック12の貫通孔26を通り短尺放射溝22の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部20に至る。合流部20において液体Aの分割流と液体Bの分割流とがそれぞれの運動エネルギーを有して合流した後、90°流れ方向を変えてマイクロ流路23に流入する。
【0058】
また、図2に示したようなY字型流路を有する反応装置を用いることも好ましい。図2はその反応装置(200)の説明図であり、図3は図2のIII−III線の断面図である。本態様の装置においては、例えば2種類の液が供給口111及び供給口112にそれぞれ供給される。各流路の長さ方向に直交する断面の形は使用される微細加工技術により異なるが、台形または矩形に近い形が好ましい。導入口111及び導入口112からポンプなどにより注入された液体は導入流路113a(流路幅X)及び導入流路113b(流路幅Y)をそれぞれ経由して流体合流点113dにて接触し、安定な層流を形成して、合流後の混合領域となる反応流路113c(流路幅Z、流路長さF、流路深さH)を流れる。そして例えば層流として混合領域113c(始点113d、終点114)を流れる間に、層流状態であれば、層流間の界面における分子拡散により互いが混合し反応が行われる。このとき、拡散の極めて遅い物質であれば、層流間での拡散混合が起きず、排出口114に達した後に初めて混合する場合もある。注入される2つの液体がフラスコ中でも容易に混合するような組み合わせのとき、混合領域の流路長Fを長く取れば排出口で液の流れを均一な流れにしうる。一方、このような組み合わせでも流路長Fを短くすれば排出口まで層流を保つこともできる。
【0059】
また、図4に示したような六方型流路を有する反応装置(6方マイクロリアクター装置)を用いることもより好ましい。図4はその反応装置(300)を模式的に示した平面図である。本態様の装置においては、例えばコネクター接続部210およびチューブフェルール固定部211で固定されたチューブから、2種類の流体αと流体βが導入流路202、203にそれぞれ供給され、流体合流点201で混合し反応が行われる。本実施態様の装置によれば、たとえ拡散の極めて遅い物質であったとしても、流体αを流体βが挟み込むように流れるため、流体αと流体βとの界面の面積を増大させることができ、分子拡散によって両液が迅速に混合される。また、流体αの流量に対して、流体βの流量を増やすことにより、さらに両液の界面の面積を増大させることができ、分子拡散によって両液を一層迅速に混合しうる点で好ましい。流体αおよび流体βが混合された後の流体γが、流体合流点201から排出流路204を経て、流出され、捕集される。本実施態様の装置を用いて、例えば流体αとして有機顔料を溶解した液体を供給し、液体βとして貧溶媒を供給する。これにより、両者を混合してビルドアップ顔料微粒子を生成させた分散液を流体γとして捕集することができ、さらに析出したビルドアップ有機顔料が流路(チャンネル)壁での析出を抑制する上で好ましい。ここで用いるマイクロリアクターとしては、6方コネクター(東京理化器械社製)を用いることができるが、流路の本数に依存せず、流体αを少なくとも2本の流体βで挟む構造を有していればどのようなマイクロリアクターを用いてもよい。
【0060】
その他、円筒管型流路を有する反応装置、2液の流れが層流のまま出口まで到達する場合、それらを分離できるように改良を加えた装置などを用いることができる(例えば特開2005−307154号公報の段落0049〜0052及び図1〜図4参照)。また、2液の接触角度や接触流路の数を適宜に調節した平面型マイクロリアクターや立体型マイクロリアクターを用いることも好ましい(例えば特開20006−342304号公報の段落0053〜0056並びに図1〜図3参照)。
【0061】
本発明において顔料は色相もしくは構造において限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、及びシアン顔料のいずれであってもよい。有機顔料としては例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、インダンスレン化合物顔料、キノフタロン化合物顔料、キノキサリンジオン化合物顔料、金属錯体アゾ化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ナフトールAS化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物のマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料が挙げられる。
【0062】
更に詳しくは、例えば、 C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、 C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、 C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777) 、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、 C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、 C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094) 等のジスアゾ系顔料、 C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264 、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料である。
【0063】
なかでもキナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料が好ましく、キナクリドン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料がより好ましい。
【0064】
本発明の顔料分散組成物の製造方法において用いられるビルドアップ有機顔料微粒子は、単一の顔料またはその前駆体から形成されたものであっても、2種類以上の顔料またはその前駆体から形成されたものであってもよく、また顔料の固溶体であってもよい。更には顔料微粒子形成後に、複数の種類の微粒子が混合された混合物であってもよい。
色相の異なる2種類以上の顔料を用いることで所望の色調に調節(色相調整)できることから、色相調整に際し、本発明の製造方法により得られる顔料分散組成物にビルドアップ有機顔料微粒子を2種類以上含有させることが好ましい。とくに本発明の製造方法を利用した色相調整においては、ビルドアップ有機顔料微粒子として2種類以上のフタロシアニン化合物顔料の微粒子を含有させることが好ましく、なかでも2種類以上の水素フタロシアニン顔料及び/又は金属フタロシアニン顔料が好ましく、更には水素フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、鉛フタロシアニン顔料から選ばれた2種類以上の組合せであることがさらに好ましい。
【0065】
顔料分散組成物に複数の顔料種のビルドアップ顔料微粒子を含有させるとき、その種類の数は特に限定されないが、2〜10種であることが好ましく、2〜3種であることがより好ましい。顔料分散組成物に含有している各種の微粒子の含有率は顔料の色強度に支配され、特に限定されないが、全微粒子に対する質量%が大きい主顔料微粒子の割合が50%以上であることが好ましく、70〜99.9%であることがより好ましい。
【0066】
2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する顔料分散組成物を調製する好ましい実施態様として、下記<i>〜<iii>の実施態様が挙げられる。
<i>マイクロリアクター装置により及び/又は撹拌液中で2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ生成させ、このビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ含有する2種類以上の顔料組成物をマイクロリアクターで混合する実施態様。
<ii><i>で生成させた2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ含有する2種類以上の顔料組成物同士を、マイクロリアクターを用いずに混合する実施態様。
<iii>マイクロリアクター装置により及び/又は撹拌液中で2種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子を一つの槽内で生成させ、別途の混合工程を要さずに前記2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する分散物を調製する実施態様。
上記の実施態様における製造方法によれば、マイクロリアクター装置により及び/又は撹拌液中で生成させた2種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する分散物を効率良く調製することができ、複雑な工程や技巧的で個人差のある操作を要さずに分散物を所望の色相とする、再現性の高い調色を実現できるため好ましい。中でも、2種類以上のフタロシアニン化合物を含有する顔料組成物を生成させる際にマイクロリアクター装置を用いて行うことが好ましい。
【0067】
再沈法ないしは共沈法における顔料溶液は顔料を良溶媒に溶解したものであるが、このとき顔料を均一に溶解させたものであることが好ましく、その方法は特に限定されず、添加剤を用いずに溶剤に溶解しても、アルカリ性もしくは酸性の良溶媒を用いて溶解しても、良溶媒とは別にアルカリ性もしくは酸性の添加剤等を添加して溶解してもよい。酸性で溶解するかアルカリ性で溶解するかは、顔料がどちらの条件でより均一に高濃度で溶解するかで選択することができる。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性を、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性を用いることができる。
例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物、水素フタロシアニン顔料はアルカリ性で、金属フタロシアニン化合物顔料は酸性でより均一に溶解することができる。
【0068】
再沈法ないしは共沈法において有機顔料を溶解した液体における有機顔料の濃度は特に限定されないが、ビルドアップ顔料微粒子として分散液中に生成させるのに十分な量であることが好ましく、0.5〜20質量%であることが好ましく、1.0〜10質量%実際的であり、より好ましいる。換言すると、本発明において良溶媒とは、必要により酸や塩基等の添加剤とともに、有機顔料を十分量溶解しうる溶媒と定義され、上述した濃度範囲で有機顔料を溶解しうる溶媒であることが好ましい。
【0069】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基が挙げられ、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシド(NaOCH、KOC)などの有機塩基が挙げられ、好ましくは無機塩基である。
【0070】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、特に好ましくは3.0〜20モル当量である。有機塩基の場合は好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0071】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸が挙げられ、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられるが、好ましくは無機酸でありより好ましくは硫酸である。
【0072】
使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、特に好ましくは30〜200モル当量である。
【0073】
良溶媒は例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール化合物溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル化合物溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル化合物溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド化合物溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ化合物溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸化合物溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸化合物溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
好ましい良溶媒は、アルカリ性の場合はアミド化合物溶媒または含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はカルボン酸化合物溶媒、イオウ化合物溶媒またはスルホン酸化合物溶媒であるが、更に好ましくはアルカリ性の場合は含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はスルホン酸化合物溶媒である。特に好ましくは、アルカリ性の場合はジメチルスルホキシド(DMSO)、酸性の場合はメタンスルホン酸である。
【0074】
本発明の製造方法における分散工程又は再沈法・共沈法に用いることができる貧溶媒とは、前記良溶媒と相溶し、かつ顔料溶液に溶解された有機顔料が難溶である溶媒をいう。この貧溶媒としては、用いられる有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
本発明においては貧溶媒として水性媒体を用いることが好ましい。本発明において、「水性媒体」とは水単独または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒をいう。水溶性有機溶媒は、例えば、顔料や分散剤を均一に溶解するために水のみでは不十分な場合、流路中を流通するのに必要な粘性を得るのに水のみでは不十分な場合、層流の形成に必要な場合、などに用いることが好ましく、多くの場合、水溶性有機溶媒の添加により均一に顔料などを溶解させることができる。
【0075】
水溶性有機溶媒は例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール化合物溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル化合物溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル化合物溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド化合物溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ化合物溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸化合物溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸化合物溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
好ましい水溶性有機溶媒は、アルカリ性の場合はアミド化合物溶媒または含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はカルボン酸化合物溶媒、イオウ化合物溶媒またはスルホン酸化合物溶媒であるが、更に好ましくはアルカリ性の場合は含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はスルホン酸化合物溶媒である。特に好ましくは、アルカリ性の場合はジメチルスルホキシド(DMSO)、酸性の場合はメタンスルホン酸である。
【0076】
水性媒体を水と水溶性有機溶媒との混合溶媒とするとき、その混合比は均一溶解に適した比率であればよく、特に限定はない。好ましくはアルカリ性の場合には水/有機溶媒=0.05〜10(質量比)である。酸性の場合で無機酸を用いる場合は、有機溶媒を使わず、例えば硫酸単独で用いることが好ましい。有機酸を用いるときは有機酸自身が有機溶媒であり、粘性と溶解性を調整するために複数の酸を混合したり、水を添加したりする。好ましくは水/有機溶剤(有機酸)=0.005〜0.1(質量比)である。
【0077】
流路を用いて顔料溶液と貧溶媒とを接触混合させる場合、均一に溶解した液体を流路に投入することが好ましい。懸濁液を投入すると粒子サイズが大きくなったり、粒子分布が広い顔料微粒子になったりし、流路を閉塞する場合がある。「均一に溶解」とは、可視光線下で観測した場合にほとんど濁りが観測されない状態をさし、その液体は1μm以下のミクロフィルターを通して得られる液体、換言すれば1μmのフィルターを通過しない物を含まない液体をいう。
【0078】
本発明においては、顔料溶液と貧溶媒とを接触混合させる際、顔料溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、ビルドアップ有機顔料微粒子を形成することが好ましい。その方法は例えばマイクロリアクター装置を用いて、一方の流路に酸性もしくはアルカリ性の顔料溶液を導入し、もう一方の流路に貧溶媒を導入し、両液をマイクロ反応場で接触させることにより顔料溶液のpHを酸性もしくはアルカリ性から中性pH7の方向に変化させることが好ましい。
【0079】
水素イオン指数(pH)とは、水素イオン濃度(モル濃度)の逆数の常用対数であり、水素指数と呼ばれることもある。水素イオン濃度とは、液体中の水素イオン(H)の濃度であり、1Lの液体中に存在する水素イオンのモル数を意味する。水素イオン濃度は非常に広い範囲で変化するので通常は水素イオン指数(pH)を用いて表す。例えば、純粋な水は1気圧、25℃では10−7モルの水素イオンを含むから、そのpHは7で中性である。pH<7の水溶液は酸性、pH>7の水溶液はアルカリ性である。pHの値を測定する方法としては、電位差測定法および比色測定法がある。
【0080】
上記ビルドアップ有機顔料微粒子形成時の水素イオン指数(pH)の変化は、アルカリ性水性媒体に溶解した顔料から顔料微粒子を形成する場合は、変化はpH16.0〜5.0の範囲内でpHを低下させることが好ましく、pH16.0〜10.0の範囲内でpHを低下させることがより好ましい。酸性水性媒体に溶解した顔料から顔料微粒子を製造する場合は、変化はpH1.5〜9.0の範囲内でpHを上昇させることが好ましく、pH1.5〜4.0の範囲内でpHを上昇させることが好ましい。変化の幅は顔料溶液の水素イオン指数(pH)の値によるが、顔料の析出をうながすのに十分な幅でよい。
【0081】
反応温度は、溶媒が凝固、あるいは気化しない範囲内であることが望ましいが、好ましくは、−20〜90℃、より好ましくは0〜50℃である。特に好ましくは5〜15℃である。
【0082】
流路内での流体の速度(流速)は0.1mL〜300L/hrが好ましく、0.2mL〜100L/hrがより好ましく、0.5mL〜50L/hrが更に好ましく、1.0mL〜30L/hrが特に好ましい。
【0083】
本発明において、共沈法によりビルドアップ有機顔料微粒子を得る際、先に述べたように分散剤を用いるが、分散剤を顔料溶液及び/又は貧溶媒に含有させておき顔料析出時に液中で共存させることができる。この分散剤としては、先に述べたものを好ましく用いることができる。
【0084】
本発明の製造方法においては、有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、貧溶媒、顔料溶液の少なくとも一つ以上に重合性化合物を含有させてもよく、その際、前記金属置換反応工程(a)及び/又は分散工程(b)において重合性化合物を共存させることが好ましく、該顔料を微粒子化した後、又はそれと同時に重合を行うことにより、その顔料微粒子に重合性化合物を固定化させた重合体粒子とすることが好ましい。なかでも有機金属錯体顔料前駆体溶液に重合性化合物を含有させておくことが好ましい。なお、その際に、有機金属錯体顔料前駆体溶液に有機顔料を溶解し、含有していてもよい。
【0085】
[1]重合性化合物としては、水溶性および非水溶性重合性化合物のいずれも用いることができ、顔料と共に分散可能なものであれば特に限定はないが、エチレン性不飽和単量体が好ましい。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、γ−ヒドロキシアクリル酸プロピル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジエチレングリコールメタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリル酸エチル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸メチル等、およびその誘導体)、ビニル芳香族単量体(例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、p−ノニルスチレン、p−デシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等、およびその誘導体)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等、およびその誘導体)、N−ビニルアミド類(例えばN−ビニルピロリドン)、(メタ)アクリル酸アミド類、アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換マレイミド類、ビニルエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ジビニルエーテル等、およびその誘導体)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等、およびその誘導体)フタル酸ジアリル、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニリデン、等が使用できる。
【0086】
[2]さらに、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する水溶性単量体も用いられ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、p−ビニル安息香酸などのカルボキシル基を有する単量体、もしくはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。さらには、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシメチルメタクリロイルホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリロイルホスフェート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリロイルホスフェートも具体例として挙げられる。これらは単独で用いても、互いに併用して用いてもよい。
【0087】
[3]重合性化合物のうち、その分子に親疎水性の機能を分離して持たせたものは重合性界面活性剤、反応性界面活性剤、あるいは反応性乳化剤とよばれ、重合性化合物として好ましく、ビニル基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和基とスルホン酸基またはその塩などのイオン解離可能な基やアルキレンオキシ基などの親水性基を有しているものが挙げられる。これらは一般に乳化重合に用いられ、分子内にラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ以上有するアニオン性、またはノニオン性の界面活性剤である。
【0088】
[4]重合性界面活性剤は、単独で用いても、異なるものを併用しても、または重合性界面活性剤以外の重合性化合物と共に用いてもよい。好ましい重合性界面活性剤としては、例えば、花王(株)社、三洋化成(株)社、第一工業製薬(株)社、旭電化工業(株)社、日本乳化剤(株)社、日本油脂(株)社等より市販されているものが挙げられ、「微粒子・粉体の最先端技術、第1章3反応乳化剤を用いる微粒子設計、pp23−31」、2000年(株)シーエムシーに記載されたものなどが挙げられる。重合性界面活性剤の具体例を以下に記載するが、これらに限定されるものではない。
【0089】
【化1】

【0090】
【化2】

【0091】
重合性化合物の重合方法は、顔料分散液中で重合できる方法であれば特に限定されないが、重合開始剤を用いてラジカルを発生させて重合させる方法が好ましい。重合を開始するきっかけは種々あるが、熱、光、超音波、マイクロ波等を用いることが好ましい。
【0092】
重合開始剤としては、重合性化合物を重合させうるものであれば特に限定しないが、水溶性、または油溶性のアゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤、過硫酸塩に代表される無機系塩類、過酸化物が好ましくは用いられる。中でも水溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤、無機系塩類がより好ましく、無機系塩類、高分子アゾ重合開始剤が更に好ましく、高分子アゾ重合開始剤が特に好ましい。具体的には、無機系塩類としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化物としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)等を、油溶性アゾ重合開始剤としては、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2‘−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル); V−70(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);V−65(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート);V−601(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);V−59(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、1,1‘−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル);V−40(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド];VF−096(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、1.[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド;V−30(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド);VAm−110(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾ(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド);VAm−111(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)等を、水溶性アゾ重合開始剤としては、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩;VA−044(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩・二水和物;VA−046B(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;V−50(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物;VA−057(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩;VA−060(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン];VA−061(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕),2,2‘−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩;VA−067(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド};VA−080(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド];VA−086(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2‘−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノプロパン]二塩酸塩等を、高分子アゾ重合開始剤としては、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤;VPS−0501(ポリシロキサンユニット分子量約5,000)、VPS−1001(ポリシロキサンユニット分子量約10,000)(いずれも和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤;VPE−0201(ポリエチレングリコールユニット分子量約2,000)、VPE−0401(ポリエチレングリコールユニット分子量約4,000)、VPE−0601(ポリエチレングリコールユニット分子量約6,000)(いずれも和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)等を挙げることができる。例えば、和光純薬工業(株)社のホームページ(www.wako−chem.co.jp)には、各種水溶性アゾ重合開始剤、油溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤が10時間半減期温度とその構造式と共に記載され入手可能である。重合開始剤の添加量は特に限定されないが、全モノマー成分に対して0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは2〜10質量%である。
【0093】
本発明の製造方法においては、有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、顔料溶液、及び/又は貧溶媒に上記重合開始剤を含有させておくことが好ましく、この重合開始剤として高分子アゾ重合開始剤を用いることが好ましい。高分子アゾ重合開始剤は、重合性化合物との共重合で容易にブロックポリマーを与えるユニークな重合開始剤である。その構造は高分子セグメント(例えば、ポリジメチルシロキサンユニット、ポリエチレングリコールユニット)とアゾ基が繰り返し結合したものであり、1分子中に数個のラジカル発生点が存在しているため、重合させた際に非常にブロック化効率の高いポリマーの合成が可能になる。本発明において、高分子アゾ重合開始剤は、重合開始機能を持つと共に、重合性化合物との共重合においてその高分子セグメントとのブロック共重合体が微粒子構造の内部、表面、あるいはその両方に形成されるものであることが好ましい。少なくとも1つ以上の重合性化合物を組み合わせることで、形成される微粒子の表面の親疎水性を容易に制御可能となることから、分散安定性に優れたビルドアップ有機顔料微粒子、及び分散液を与えることができる。
【0094】
分散液中に重合性化合物と共重合するモノマーとを共存させて共重合させてもよい。共重合モノマーを含有させる時期は特に限定されない。共重合モノマーは、微粒子析出や分散液の安定化を妨げなければ特に限定されず、例えば、先に挙げた重合性化合物等が挙げられる。
【0095】
重合性化合物を重合させる時期や方法は特に限定されないが、例えば、以下のような2つの過程を例に挙げて示すと、重合反応を、過程(1)の途中もしくはその後に行っても、過程(2)の途中もしくはその後に行っても、その両方で行ってもよい。
(1) 顔料を溶解した液体と貧溶媒とを混合する過程。
(2) 混合後の分散液を濃縮、精製する過程。
【0096】
同様に重合開始剤についても、その添加時期や方法は特に限定されないが、例えば、以下のような4つの態様によって説明すると、そのいずれによっても、または組み合わせて行ってもよい。
(1) 顔料を溶解した液体に添加する。
(2) 貧溶媒に添加する。
(3) 顔料を溶解した液体と貧溶媒とを混合した後に添加する。
(4) 混合後の分散液を濃縮、精製した後に添加する。
【0097】
分散剤や他の重合性化合物などを併用する場合、その態様は特に限定されないが、例えば、それらを有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、貧溶媒、顔料溶液の少なくとも一つ以上に分散剤を含有させてもよく、混合後の分散液に添加してもよい。また微粒子析出を妨げなければ、必要に応じて貧溶媒以外の液体を混合させてもよく、3液以上を同時にまたは逐次に混合させてもよい。
【0098】
重合の程度(分子量)を調整するために、各種の連鎖移動剤(例えば、カテコール類、アルコール類、チオール類、メルカプタン類)を用いてもよい。
重合反応温度は、重合開始剤の種類に応じて選択でき、40℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50℃〜90℃、特に好ましくは50℃〜80℃で行うことができる。
重合反応時間は、用いる重合性化合物とその濃度、重合開始剤の反応温度にもよるが、1〜12時間で行うことができる。
【0099】
本実施態様によれば顔料を微粒子として析出させ、そのまま重合性化合物の重合反応を行い、微粒子上に重合性皮膜を形成し固定することができ、微粒子を粉砕する工程や、製造した微粒子を分離し、工程設備を切り替える必要がない。このことは、フローで連続生産法を導入することに他ならず、品質安定化、工程安定化、時間やエネルギー、さらには移送などの物理的なロスを大幅に減じるメリットがある。
【0100】
重合性化合物及び/又は分散剤の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0101】
本発明においては、被架橋官能基を有する化合物(本発明においてはこの化合物を「被架橋性化合物」という。)を顔料分散組成物を調製する顔料分散液に含有させてもよい。この被架橋性化合物は、被架橋官能基が分散能を有した化合物であってもよく、重合性官能基を有する化合物であってもよく、また複数個の同一あるいは異種の官能基を含有した化合物であっても良い。また架橋剤を顔料分散液に含有させてもよい。さらには、被架橋官能基と架橋剤の機能を一つの化合物で有していてもよい(本発明においてはこのような化合物を含めて「被架橋性化合物」という。)。
【0102】
架橋剤は架橋性官能基を有した化合物であり、被架橋性官能基と反応して架橋構造を形成することができる化合物を示す。分子量に限定はなく、高分子ポリマーであってもよい。架橋反応をおこさせる観点から、架橋反応前は架橋剤の架橋性官能基をブロックしたものが好ましい。より好ましくは、ケチミン、ブロックイソシアネート、ブロックカルボン酸である。
【0103】
被架橋官能基が分散能を有した化合物の場合、架橋反応で顔料微粒子の分散が不十分になるため、不足分量分散剤を添加しておいてもよい。被架橋官能基を有する化合物(架橋性化合物)とは、より具体的には、架橋反応時に、架橋剤の架橋性官能基から、直接反応を受けられる官能基を分子内に有している化合物を意味する。塗料、接着剤、シーラント、電子材料、光学材料、刷板、印刷、繊維、ゴム、プラスチック、医療歯科用材料などの分野で一般的に使用されている架橋反応機構を用いることができる。架橋形態としては、共有結合、疎水性相互作用、イオン結合、水素結合、配位結合などが挙げられるが、顔料含有粒子を着色液の着色剤として使用する場合は使用環境での保存性から共有結合または配位結合による架橋を行うのがより好ましい。架橋反応における被架橋性官能基と架橋剤の架橋性基の組合せとして、各々いずれかの官能基を有した化合物であればよくて、本発明の目的を達成できる範囲において限定されるものではない。
【0104】
被架橋性官能基/架橋性基(あるいは架橋性基/被架橋性官能基)としてより具体的には、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/イソシアネート基、カルボキシル基/オキサゾリン基、カルボキシル基/アジリジン基、カルボキシル基/アミノ基(アミン基)、カルボキシル基/カルボジイミド基、ヒドロキシ基(水酸基)/金属アルコキシド基(金属=Si,Zr,Al,Ti)、ヒドロキシ基(水酸基)/ジアゾ基、ヒドロキシ基(水酸基)/アルデヒド基、ヒドロキシ基(水酸基)/ビニル基、ヒドロキシ基(水酸基)/イソシアネート基、ヒドロキシ基(水酸基)/カルボジイミド基、ヒドロキシ基(水酸基)/メラミン基、ヒドロキシ基(水酸基)/エポキシ基、ヒドロキシ基(水酸基)/酸クロライド基、スルホン基/4級アンモニウム塩基、スルホン基/金属ハロゲン化物基、スルホン基/有機酸金属塩基、アミノ基/イソシアネート基、アミノ基/イソチオシアネート基、アミノ基/エポキシ基、アミノ基/スクシンイミド基、アミノ基/スルホニルクロライド基、アルデヒド基/ヒドラジン化合物、ケトン基/ヒドラジン化合物、イソシアネート基/アルコール基、イソシアネート基/カルボン酸基、イソシアネート基/オキサゾリン環基、エポキシ基/フェノール基、シラノール基/シラノール基、シラノール基/チタネート基、メルカプト基/イソシアネート基、メルカプト基/フルフラノール基、メルカプト基/エポキシ基、メルカプト基/オレフィン基、メルカプト基/マレイミド基、メルカプト基/メルカプト基、酸無水物構造/アミノ基などが挙げられる。
【0105】
これらの1種または2以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の添加量は、顔料に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0106】
前記被架橋性化合物及び/又は架橋剤を使用する実施様態として、これらを良溶媒又は貧溶媒等に溶解しておくことができ、あるいは後述する有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、又は貧溶媒に含有しておくことができる。架橋反応時に架橋反応が可能な活性が存続すれば架橋剤の添加時期に制限はない。たとえば、金属置換反応工程(a)、分散工程(b)であってもよく、また金属交換反応工程(a)の前後、分散工程(b)の前後であってもよく、金属交換反応と分散までの途中に添加してもよい。架橋反応の時期としては顔料の微粒子が生成した後であれば、いつでもよい。また、架橋反応後、架橋剤を添加したことによる粒子間架橋により生成した粗大な粒子を除くために遠心処理や濾過などを行うことができる。
【0107】
分散液中に共重合するか否かにかかわらず種々の無機、または有機の機能性添加剤を共存させてもよい。機能性添加剤を含有させる時期は特に限定されないが、例えば、顔料溶液および貧溶媒の少なくとも一方に添加しておく場合が好ましく挙げられる。機能性添加剤は、微粒子析出や分散液の安定化を妨げなければ特に限定されないが、例えば、金属封鎖剤、殺菌剤、防カビ剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、水溶性樹脂、pH調整剤、尿素などが挙げられる。
【0108】
微粒子の計測法において、数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、および各種の平均径(長さ平均、面積平均、重量平均、個数平均、体積平均など)があり、本発明においては特に断らない限り、体積平均粒径(Mv)を用いる。
本発明の分散組成物において、ビルドアップ有機顔料微粒子の粒径サイズは体積平均粒径(Mv)で80nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、1nm〜25nmであることが特に好ましい。なお、顔料が微細化されると顔料の吸収波長が低波長側にシフトすることがある(Y. Komai, H. Kasai, H. Hirakoso, Y. Hakuta, H. Katagi, S. Okada, H. Oikawa, T. Adschiri, H. Inomata, K. Arai, H. Nakanishi, Jpn. J. Appl. Phys, 38, L81−L83(1999)。本発明の分散組成物におけるビルドアップ有機顔料微粒子においても、顔料が本来もつ色相と比較して、微細化にともない低波長シフトさせることができ、この特性を活かして特有の色相を発現させるないしは色相調整に用いることができる。
【0109】
微粒子の粒子サイズが揃っていること、すなわち単分散微粒子系は、含まれる粒子の大きさが揃っていることを意味するが、粒子物性についてみると化学組成や結晶構造にも粒子間の変動がないことを示唆し、粒子の性能に影響を与えうる。特に粒子サイズがナノメートルの超微粒子においてはその粒子の特性を支配する因子となることがある。
【0110】
体積平均粒径Mvを個数平均粒径Mnで除した値(Mv/Mn)を単分散性の指標として表すことがあり、この値が小さく1に近いほど単分散であることを示す。本発明においてビルドアップ有機顔料微粒子は、粒径が小さいだけではなく、その大きさをコントロールし、そのサイズを揃えたものであることが好ましい。本発明においては、Mv/Mnが1.80以下であることが好ましく、1.60以下であることが特に好ましい。なお、本発明において体積平均粒径Mv及び個数平均粒径Mnは、特に断らない限り動的光散乱法によって測定した値である。
【0111】
本発明の分散組成物における顔料微粒子の好ましい含有量(質量%)は、組成物全量に対して、0.001〜80質量%であることが好ましく、0.01〜60質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0112】
本発明の顔料分散組成物において、ビルドアップ有機顔料微粒子は安定性が高いことが好ましい。本発明においてビルドアップ有機顔料微粒子の安定性は、空気中70℃で150時間の加熱保存処理をしたときの体積平均粒径(Mv)の変化率が6.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、4.0%以下であることが特に好ましい。
【0113】
本発明の顔料分散組成物に用いられる溶媒は、ビルドアップ有機顔料微粒子形成時に用いた前述の有機溶媒、分散剤、界面活性剤、重合性化合物、添加剤、または水、およびこれらを組み合わせたものを含有していてもよい。また、必要に応じて、所望の化粧料用途に適した水溶性有機溶媒やその他の成分をさらに添加してもよい。溶媒成分としては、例えば、特開2002−194263の段落0034〜0062、特開2003−26972の段落0013〜0021に記載のようなものを用いることができる。
【0114】
混合させる流体は互いに混じり合う流体同士でもよく、混じり合わない流体同士でも構わない。混じり合う流体同士とは、同じもしくは比較的性質の近い有機溶媒を用いた液体同士、あるいはメタノールなどの極性の高い有機溶媒を用いた液体と水などであり、混じり合わない流体同士とは、ヘキサンなどの低極性の溶媒を用いた液体とメタノールなどの高極性の溶媒を用いた液体があげられる。
【0115】
空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムなどの気体を用いる場合、それらは反応流体に溶解させるか、あるいは流路内に気体として導入する方法を取ることができ、気体として導入する方法が好ましい。
【0116】
本発明の顔料分散組成物は、この顔料微粒子を色材として、化粧料組成物、インクジェットインク組成物、カラーフィルターインク組成物、トナー組成物、文具用組成物、自動車用塗料等塗料組成物、スクリーン印刷用等インキ組成物、プラスチックやガラス等の表面塗工液として用いることができ、なかでも化粧料組成物として用いることが好ましい。化粧料組成物は、鮮やかさのある有色の化粧料として好適に用いることができ、例えば、ファンデーション、アイシャドー、口紅、グロス、マスカラ、アイライナー、美爪化粧料、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート、染毛化粧料、クリーム、乳液等の化粧料として用いることができ、なかでも光輝性美爪化粧料及び光輝性染毛化粧料として用いることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリル板及びガラスの表面塗工液として塗布性が良く、良好な着色性を示す。
【0117】
本発明の顔料分散組成物を化粧料組成物とするとき、その好ましい化粧料用溶剤としては水溶性の有機溶媒が挙げられる。このような有機溶媒として、アルコール化合物(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘキサデカノール等)、多価アルコール化合物(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル化合物(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン化合物(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド化合物(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環化合物(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド化合物(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン化合物(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩化合物(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0118】
上記の化粧料用溶剤として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
一般式(1) A−B
式中、Aは親水性置換基を含む基を表し、Bは疎水性基を表す。
Aで表される親水性置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、2−ケト−1−ピロリジニル基等が挙げられる。中でもヒドロキシ基が好ましい。
Bは疎水性基を表し、炭素原子数3〜10の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数4〜8の脂肪族基であることがより好ましい。
【0119】
一般式(1)で表される化合物は一般的な界面活性剤と類似の構造を有しているが、界面活性剤のような強力な界面活性作用を有さないことが好ましい。一般的な界面活性剤は水溶液中で、低濃度でミセルを形成する。上記一般式(1)で表される化合物は、このようなミセル形成能力を有していないことが好ましい。これは強い界面活性作用を有する場合、分子間の相互作用が強いため、1%を超え濃度が上昇すると、化粧料の粘度を著しく増加させてしまうことがあるためである。
上記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましい例としては多価アルコールエーテル誘導体及び炭素原子数4〜8の脂肪族1,2−ジオールが挙げられ、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、或いは1,2−ペンタンジオールから選ばれる化合物であることがより好ましい。更に好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテル或いは1,2−ヘキサンジオールである。
【0120】
化粧料用溶剤の量は特に限定されないが化粧料全量に対し通常1〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%とすることがより好ましく、8〜30質量%とすることが特に好ましい。そして、上記一般式(1)で表される化合物を化粧料用溶剤全量の5〜50質量%以上とすることが好ましい。
【0121】
本発明の顔料分散組成物を化粧料とするとき、必要に応じて固体、半固体、液状の油剤、水、水溶性高分子、多価アルコール、溶剤、界面活性剤、粉体、樹脂、有機変性粘土鉱物、高分子、紫外線吸収剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、香料、酸化防止剤、美肌用成分、生理活性成分粉末、顔料、染料、パール剤、ラメ剤、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等の成分を含有させることができる。
【0122】
また、本発明の製造方法により作製されたビルドアップ有機顔料微粒子からなる水分散性重合体粒子と水溶性高分子物質とを含有させることが好ましい。水溶性高分子物質としては、先に述べた高分子分散剤が挙げられる。
水分散性重合体粒子としては、先に述べた重合体粒子のうち、顔料と共に水に分散可能な重合性化合物を重合固定化した粒子であれば特に限定はなく、先に重合性化合物の説明[2]〜[4]に述べた単独あるいは2種以上の重合性化合物を、先に述べた重合開始剤・重合方法を用いて、単独あるいは共重合して得られた水分散性重合体粒子であることが好ましい。
なお、水分散性重合体粒子は、先に述べたように、重合の程度(分子量)を、連鎖移動剤を用いて調整してもよいし、重合反応温度、重合時間により調整してもよい。
水溶性高分子物質および水分散性の重合性化合物の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0123】
本発明の顔料分散組成物を化粧料とするとき、特に光輝性美爪化粧料とすることが好ましい。光輝性美爪化粧料としては、水(精製水、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水等)、前記ビルドアップ有機顔料微粒子を含む着色剤、及び水溶性液体媒体のいずれか又はその複数のものを含むことが好ましい。さらに添加物を加えてもよい。また美爪化粧料を塗布後さらに重ね塗りして、あるいはトップコート等を後から塗布して用いるものとしてもよい。本発明によれば美爪化粧料をコーティングした爪には、つやがあり、光沢感、光輝感、及び金属感のあるものとしうる。それにより爪に輝きをもたせ、多彩な配色にして爪を鮮やかで華やかに装うことができる。
【0124】
着色剤として前記ビルドアップ有機顔料微粒子を含有するが、さらに水に溶解もしくは分散する染料などの他の着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、前記ビルドアップ有機顔料微粒子を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。その使用量は所望の濃度、色相などにより適宜決定することができる。着色剤は、美爪化粧料全量に対して、0.001〜80質量%であることが好ましく、0.01〜60質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0125】
水溶性液体媒体とは、水および水以外の極性溶剤を意味する。水以外の極性溶剤としては、例えば水溶性有機溶剤が挙げられる。具体的には、アルコール化合物、多価アルコール化合物、ポリアルキレングリコール化合物、グリセロール化合物、グリコールの低級アルキルエーテルが挙げられる。
【0126】
上記水溶性液体媒体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。上記水溶性有機溶剤の含有量は、美爪化粧料全量に対して1〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、8〜30質量%であることが特に好ましい。
【0127】
本発明の顔料分散組成物を化粧料とするとき、特に光輝性染毛化粧料(ただし有機顔料誘導体含有染毛化粧料を除く。)とすることが好ましい。光輝性染毛化粧料としては、水(精製水、蒸留水、純水、超純水、イオン交換水等)、前記ビルドアップ有機顔料微粒子を含む着色剤、分散剤、粘性調整剤及び水溶性液体媒体のいずれかもしくはその複数を含むことが好ましい。さらに添加物を加えてもよい。本発明によれば染毛化粧料をコーティングした毛には、つやがあり、光沢感、光輝感、及び金属感のあるものとしうる。それにより毛に輝きを与え、美しく色鮮やかなヘアカラーリングを楽しむことができる。
【0128】
上記有機顔料誘導体とは下記一般式(I)で表わされる化合物をいう。
Pig−L−R Mn ・・・ 一般式(I)
Pigは有機顔料残基を表す。
Lは連結基を表し、具体的には例えば、単結合、−SO−、−SONH−、−SONHSO−、−CONH−、−CONHCO−、−COO−、−NHSO−、−NHSONH−、−NHCO−、−NHCONH−などが挙げられる。
mは1〜4までの整数を表す。
Rはカチオン性基を表し、炭素原子数1〜4までのトリアルキルアンモニウム基、炭素原子数1〜4までのN−アルキルイミダゾリウム基が挙げられる。
Mは対イオンを表し、特に限定は無く、無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン化物陰イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、アリ−ルスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキルスルホン酸イオン(例えばメタンスルホン酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなどが挙げられる。
nは分子の電荷を中和するのに必要な0以上の整数を表し、カチオン性基の電荷および対イオンの電荷の関係で定まり、1〜3であることが実際的である。
一般式(I)で表わされる化合物について、具体的には、特開2007−084510号明細書の段落0018〜0022に記載の化合物が挙げられる。
【0129】
着色剤としては、前記ビルドアップ有機顔料微粒子が用いられるが、水に溶解もしくは分散するものであれば染料などの他の着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、前記ビルドアップ有機顔料微粒子を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。その使用量は所望の濃度、色相などにより適宜決定することができる。着色剤は、染毛化粧料全量に対して、0.001〜80質量%であることが好ましく、0.01〜60質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0130】
粘性調整剤は、染毛化粧料の粘度を調整するためのものであり、水に可溶ないし分散性の物質が効果的である。また、水に不溶であっても、流動パラフィン、シリコーンオイルのように染毛後に串通りを改善するものもある。
【0131】
上記粘性調整剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。上記粘性調整剤は、染毛化粧料中に通常0.05〜20質量%含有させることが好ましく、0.1〜10質量%含有させることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲で含有させることが特に好ましい。本発明においては、この剪断減粘性付与剤などを染毛化粧料に添加し、粘度が、温度25℃において、コーンプレート型回転粘度計(1°34’R24コーン)(株式会社トキメック社製、商品名:RE−100形粘度計)による回転速度1rpmの条件下で10〜6000mPa・s、より好ましくは、50〜5000mPa・s、100〜600mPa・sの範囲となるように調整することが特に好ましい。
【0132】
水溶性液体媒体として、染毛化粧料においては、水以外の極性溶剤として例えば水溶性有機溶剤を用いることが好ましく、具体的には、多価アルコール化合物、ポリアルキレングリコール化合物、グリセロール化合物、グリコールの低級アルキルエーテルを用いることが好ましい。
【0133】
上記水溶性液体媒体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。上記水溶性有機溶剤の含有量は、染毛化粧料全量に対して通常1〜40質量%とすることが好ましく、5〜35質量%とすることがより好ましく、8〜30質量%とすることが特に好ましい。
【0134】
光輝性染毛化粧料には、必要に応じて、ビルドアップ有機顔料微粒子の形成時に使用した各種添加剤(例えば、分散剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤など)を含有していてもよい。
【0135】
分散剤は、着色剤における顔料の分散性の間に使用することが好ましく、分散剤の含有量は、染毛化粧料全量に対して通常10質量%以下であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
界面活性剤は、染毛化粧料の表面張力の調整、添加剤の分散助剤として含有させることができ、ビルドアップ有機顔料微粒子形成で述べたものを使用することができる。
界面活性剤の含有量は、染毛化粧料の全量に対して通常5質量%以下であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0137】
以下の実施例及び比較例において粒径分布は特に断らない限り日機装(株)社製のマイクロトラックUPA150(商品名)で測定した。粘度はアントンパール(Anton Parr)社製AMVn(商品名)落球式キャピラリー粘度計(Automated Microviscometer)を用いて測定した。なお、特に断らない限り%とは質量%とを意味し、部とは質量部を意味する。
【0138】
(実施例1・比較例1)
(実施例1−1)
【0139】
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)2.05g(3.98mmol)を、ジメチルスルホキシド96.25g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)1.84g(9.56mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩1.70g(3.99mmol)、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)1.00gと共に超音波照射しながら溶解した後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.40g(3.60mmol)、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)1.03gを室温下で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A1液)。A1液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr1.01g(4.48mmol)を室温下攪拌してDMSO99.0gに溶かした。黄黒色の溶液であった(B1液)。
これらを150μmの金属焼結フィルターを通すことでごみ等の不純物を除いた。
マイクロリアクター装置として、以下の分割数(流路本数)等を有する図1のマイクロリアクター装置を2台(装置A及びB)を連結して使用した。
(i)供給流路本数(n)…2種類の反応液それぞれについて3本に分割
(ii)供給流路21、22の幅(W)…各400μm
(iii)供給流路21、22の深さ(H)…各400μm
(iv)合流領域20の直径(D)…800μm
(v)マイクロ流路23の直径(R)…800μm
(vi)合流領域23において各供給流路21、23とマイクロ流路23との中心軸同士の交差角度…90°
(vii)装置の材質…ステンレススチール(SUS304)
(viii)流路加工法…マイクロ放電加工で行い、供給ブロック11、合流ブロック12、反応ブロック13の3つのパーツの封止方法はOリングと鏡面研磨による金属面シールで行った。
このとき、装置Aで金属置換反応するようにし、装置Bで顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料微粒子を生成させてから、これを含有する液体が分散工程で下記C1液と接触するまでの時間が約5msとなるように設定した。
【0140】
マイクロリアクター装置Aの二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A1液とB1液を各々入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。マイクロリアクター装置Aのコネクターの出口には長さ3cm、内径0.5mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続し、マイクロリアクター装置Aから、マイクロリアクター装置Bの一方の入り口にコネクターで接続した。マイクロリアクター装置Bのもう一方の入り口にコネクターを接続しステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋ぎ、蒸留水(C1液)が供給されるようにした。
【0141】
A1液、B1液、C1液の流量を各々、40mL/分、40mL/分、120mL/minで送液し、装置Bのコネクター出口より、ピグメントブルー15の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。
超音波を10分照射後(30W,発振周波数45KHzの超音波洗浄器使用)、顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv53.9nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.47および顔料濃度0.41質量%であった。このときのpHは7.6であった。
【0142】
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は6.5質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−1とした。
【0143】
(比較例1−1)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料濃度は8質量%であり、これを、ブレイクダウン有機顔料微粒子を含有する水分散液試料A−1cとした。
【0144】
(比較例1−2)
フタロシアニンブルー(PB15、東京化成工業(株)社製)8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料濃度は8質量%であり、これを、ブレイクダウン有機顔料微粒子を含有する水分散液試料A−2cとした。
【0145】
(比較例1−3)
フタロシアニン亜鉛(ZnPc)(東京化成工業(株)社製)8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料濃度は8質量%であり、これを、ブレイクダウン有機顔料微粒子を含有する水分散液試料A−3cとした。
【0146】
(比較例1−4)
フタロシアニン鉛(PbPc)(東京化成工業(株)社製)8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料濃度は8質量%であり、これを、ブレイクダウン有機顔料微粒子を含有する水分散液試料A−4cとした。
【0147】
水分散液試料の顔料微粒子の粒子サイズ(体積平均粒径Mv)及びその分布(体積平均粒径Mvと数平均粒径Mnとの比Mv/Mn)をまとめて下記表Aに記載した。
[表A]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 試料 Mv Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
PB15 A−1 19.5nm 1.5
PB16 A−1c 103.4nm 2.2
PB15 A−2c 98.8nm 2.0
ZnPc A−3c 120.8nm 2.4
PbPc A−4c 118.3nm 2.5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0148】
本発明の製造方法により得たビルドアップ顔料微粒子を含有する分散組成物(試料A−1)は、ブレイクダウン法により得た顔料微粒子に対し(試料A−1c〜A−4c)、顔料微粒子の粒径が極めて小さく、しかも単分散で粒径分布ピークがシャープであり、鮮やかな色味で、化粧料を始め様々な用途で優れた性能を示しうるものであることが分かる。
【0149】
(実施例1−2)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)1.00g(1.94mmol)を、ジメチルスルホキシド98.56g、t−ブトキシカリウム(東京化成工業(株)社製)0.44g(3.89mmol)を窒素雰囲気下、室温で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A2液)。A2液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr 0.50g(2.24mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)をDMSO98.67gに室温下で撹拌溶解したところ、黄黒色の金属塩類溶液であった(B2液)。
これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、図1のマイクロリアクター装置を2台(装置A及び装置B)使用した。このとき、装置Aで金属置換反応するようにし、装置Bで顔料微粒子を分散させるようにした。このとき、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料を生成させてから、これを含有する液体が分散工程で下記蒸留水と接触するまでの時間が約17msとなるように設定した。
【0150】
マイクロリアクター装置Aの二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A2液とB2液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。マイクロリアクター装置Aの出口には長さ0.7mm、等価直径2mmを有するSUS316製コネクターの一方を接続し、マイクロリアクター装置Bの二つある入り口の一方に接続し、もう一方の入口は、長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ1本をコネクターで接続し、蒸留水を入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。マイクロリアクター装置Bの出口に長さ4cm、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0151】
A2液、B2液、貧溶媒(蒸留水:C2液)の流量を各々、40mL/分、40mL/分、120mL/minで送液し、装置Bのコネクター出口より、銅フタロシアニン(ピグメントブルー15)の顔料分散液(A2−1液)が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv56.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.52であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
【0152】
次に、上記A2−1液の調製で、 DMSO 0.83gをN−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)に置換えた以外、同一条件で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A2n液)。上記B2液の調製で、 N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)をDMSO 0.83gに置換えた以外、同一条件で撹拌溶解し、黄黒色の溶液であった(B2n液)。A2液とB2液の代わりに、各々A2n液とB2n液に変え、A2−1液と同条件で送液したところ、顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv55.2nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.51であった(A2−2液)。
さらに、貧溶媒(蒸留水:C2液)を、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩2.49g(5.88mmol)を水300gに溶解し、水溶液とした(C2n液)。B2液とC2液の代わりに、各々上述のB2n液とC2n液に変えた以外は、A2−1液と同条件で送液したところ、顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv56.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.53であった(A2−3液)。
A2−1液、A2−2液、A2−3液の結果から、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩が金属塩類溶液(A2n液)、有機金属錯体顔料前駆体溶液(B2n液)、貧溶媒(C2n液)いずれに入れても、目的とする顔料微粒子の分散液が得られることがわかる。
【0153】
得られた顔料分散液(A2−1液)100gに付き、10質量%のポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)水溶液1.00g、0.1%オルフィンE1010(商品名)(日信化学工業(株)社製)水溶液100gを添加後、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。これを、ビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−2とした。顔料分散液の顔料濃度は8.0質量%であった。このときのpHは7.6であった。
【0154】
(実施例1−3)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)1.00g(1.94mmol)を、ジメチルスルホキシド108.6g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.80g(9.56mmol)、メタノール(和光純薬(株)社製)1.82gを窒素雰囲気下、室温で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A3液)。A3液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr 0.50g(2.24mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)をDMSO98.67gに室温下で撹拌溶解したところ、黄黒色の溶液であった(B3液)。
これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。このときマイクロリアクター装置として、下記流路の寸法を有する図4の6方マイクロリアクター装置を用いた。このとき、6方マイクロリアクター装置で金属置換反応するようにし、ビーカーの液中で顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料を生成させてから、これを含有する液体が分散工程で下記蒸留水と接触するまでの時間が約0.9msとなるように設定した。
(i)導入流路202、203の幅(W)…各500μm
(ii)排出口204の幅(W)…500μm
【0155】
図4に示したマイクロリアクター装置の5つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ5本をコネクターで接続し、出口の隣から交互にB3液A3液の順に充填したシリンジを繋ぎ(すなわちB3液を矢印βの方向に供給し、A3液を矢印αの方向に供給するように繋ぎ)、5台のポンプにセットした。マイクロリアクター装置の出口(矢印γの位置)にコネクターは接続しなかった。
【0156】
A3液及びB3液の流量を各々、10mL/分、40mL/分でマイクロリアクター装置に送液し、コネクター出口より、銅フタロシアニン(CuPc)の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後、ビーカーに入った超高速万能ホモジナイザー ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)であらかじめシャフト(NS−20AG/NS−20TP[商品名])の回転数を8000rpmで撹拌しておいた280mLの蒸留水中に、マイクロリアクター装置を2分間浸漬して、A3液とB3液の混合溶液を蒸留水に吐出させ、ピグメントブルー15の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径はMv34.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.66であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−2の調製と同様に精製濃縮を行い、これを、ビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−3とした。顔料分散液の顔料濃度は6.2質量%であった。
【0157】
(実施例1−4)
試料A−3の調製に用いた装置と同じ装置を用いた。このとき、6方マイクロリアクター装置で金属置換反応するようにし、ビーカーの液中で顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料微粒子を生成させてから、この顔料微粒子を含有する液体が分散工程で下記蒸留水と接触するまでの時間が約3.1msとなるように設定した。送液条件の内、A3液、B3液の流量を各々、20mL/分、60mL/分に変更した以外、同条件で行った。マイクロリアクター装置をビーカーの蒸留水中に浸漬していたのを、ビーカー中の蒸留水面から垂直に2cm上方からA3液とB3液の混合液体を蒸留水に30秒間空中噴霧し、ピグメントブルー15の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv22.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.62であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−2の調製と同様に精製濃縮を行い、これを、ビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−4とした。顔料分散液の顔料濃度5.5質量%であった。この分散液は濃緑青色であった。
なお、B3液中のN−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)の代わりにDMSO0.83gに置換え、さらに、水分散液試料A−4の顔料分散液中のN−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩濃度が等しくなるように、ビーカーの蒸留水280mL中に2.90g(6.86mmol)を添加して、水分散液試料A−4と同一条件で分散を行ったところ、得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv21.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.63であり、分散剤を添加する時期によって有機顔料微粒子の粒径及び単分散性に大きな差異は認められなかった。
【0158】
(実施例1−5)
試料A−4の調製で得られた顔料分散液を3Lの3口フラスコに移し、顔料分散液100gに付き、10質量%のポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)水溶液1.00gを添加し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
次に、200gの顔料分散液に、0.1%オルフィンE1010(商品名)(日信化学工業(株)社製)水溶液100gを添加後、限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は7.0質量%であり、これを、高分子分散剤が吸着固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−5とした。顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv30.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.49であった。この結果より、上記ビルドアップ有機顔料微粒子は、その分散液を加熱濃縮しても粒径及び単分散性において大きく悪化することはないことが分かる。
【0159】
(実施例1−6)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)1.00g(1.94mmol)を、ジメチルスルホキシド107.8g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.80g(9.56mmol)、メタノール(和光純薬(株)社製)1.82gを窒素雰囲気下、撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.20g(1.80mmol)、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)0.51gを室温下で撹拌溶解した(A6液)ものを用いた。A6液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr 0.50g(2.24mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.50gをDMSO98.67gに室温下で撹拌溶解したもの(B6液)を用いた。B6液は黄黒色の溶液であった。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。水分散液試料A−4の調製で、A3液、B3液を、各々A6液、B6液に置換えた以外、同一条件で10回送液行い、その際に得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv27.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.59であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
【0160】
次に、この顔料分散液を限外濾過装置Masterflex I/P Easy−Load pump(商品名、Cole Pamer社製、EW−77601−10/EW−07592−20)にI/P 82チューブ(商品名、Cole Pamer社製)を接続し、マイクロ−ザUF ラボモジュール(旭化成社製、SIP−1013[商品名](分画分子量6000))で、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮し、最後に限外濾過装置ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により濃縮した。顔料濃度は7.1質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−6とした。顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv29.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.43であった。
【0161】
(実施例1−7)
水分散液試料A−4の調製で、B4液の DMSO 0.20gをディスモジュールI(被架橋性化合物)(商品名、住化バイエルウレンタン(株)社製、イソホロンジイソシアネート:NCO含有量=37.5質量%)0.20gに置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv31.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.46であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、顔料分散液1000gに付き10質量%ポリビニルアルコール(架橋剤)(重合度5000)(第一工業(株)社製)水溶液0.50g、ジブチルチンジラウレート(触媒)(東京化成社製)0.01gを添加し、超高速万能ホモジナイザー ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)でシャフト(NS−20AG/NS−20TP[商品名])の回転数を24000rpmで30分間撹拌後、この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、被架橋性化合物が架橋剤により固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−7とした。顔料分散液の顔料濃度は6.5質量%であった。
【0162】
水分散液試料A−2〜A−7の顔料微粒子の粒子サイズ(体積平均粒径Mv)及びその分布(体積平均粒径Mvと数平均粒径Mnとの比Mv/Mn)をまとめて下記表Bに記載した。
[表B]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 試料 Mv Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
PB15 A−2 48.2nm 1.48
PB15 A−3 49.3nm 1.48
PB15 A−4 22.5nm 1.62
PB15 A−5 30.5nm 1.49
PB15 A−6 29.5nm 1.43
PB15 A−7 31.8nm 1.46
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0163】
(実施例1−8)
水分散液試料A−6の調製で、CuBr 0.50g(2.24mmol)をZnBr 0.50g(2.24mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv48.2nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.53であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−8とした。顔料分散液の顔料濃度は5.2質量%であった。
【0164】
(実施例1−9)
水分散液試料A−6の調製で、CuBrの半量にあたる0.25g(1.12mmol)をZnBr 0.25g(1.12mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv47.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.73であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−9とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.2質量%であった。
【0165】
(実施例1−10)
水分散液試料A−6の調製で、CuBr 0.50g(2.24mmol)をPbBr 0.60g(2.06mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv42.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.55であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−10とした。顔料分散液の顔料濃度は5.8質量%であった。
【0166】
(実施例1−11)
水分散液試料A−6の調製で、CuBrの半量にあたる0.25g(1.12mmol)をPbBr 0.30g(1.03mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv48.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.79であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−11とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.3質量%であった。
【0167】
(実施例1−12)
水分散液試料A−2の調製で、A2液、B2液の代わりに、水分散液試料A−6の調製に使用したA6液とB6液を用いた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv39.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.58であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−12とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.1質量%であった。
【0168】
(実施例1−13)
水分散液試料A−4の調製で、B4液の代わりに、水分散液試料A−3の調製に使用したB3液中のDMSO 30.0gを超純水30.00gに置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。ここでは超音波分散は行わなかった。さらに、水分散液試料A−5の調製と同一条件でこの液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv28.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.56であった。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−5の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−13とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.8質量%であった。
【0169】
(実施例1−14)
水分散液試料A−12の調製で、使用したA6液中のフタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)0.50g(0.97mmol)を、ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名))0.35g(0.97mmol)に置換え、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.66g(7.89mmol)に換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv36.2nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.61であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−14とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.2質量%であった。
【0170】
(実施例1−15)
水分散液試料A−12の調製で、使用したA6液中のフタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)0.50g(0.97mmol)を、ピグメントイエロー128(PY128、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP)(商品名)1.19g(0.97mmol)に置換え、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.50g(4.93mmol)に換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv34.3nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.53であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−15とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.9質量%であった。
【0171】
(実施例1−16)
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHORRED BT−CF(商品名))6.00gを、8M水酸化カリウム水溶液(和光純薬(株)社製)6.3mL、ジメチルスルホキシド78.40g、アクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)4.80g、N−ビニルピロリドン((和光純薬(株)社製)1.20g、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.30g、高分子アゾ開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)3.00gと共に室温で溶解した(A16液)。A16液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
水分散液試料A−2で、使用した図1のマイクロリアクター装置を3台(装置A、装置B及び装置P)使用した。水分散液試料A−2の装置において、マイクロリアクター装置Aの入口からA2液を導入する代わりに、A16液と水分散液試料A−12で使用したA6液とを装置Pで事前に混合し、マイクロリアクター装置Aの入口へ導入する方法に変更し、A16液とA6液の送液重量流量比が1:6、混合後の送液流量を毎分40mLに変更した以外、同一条件で顔料分散液を得た。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv29.7nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.72であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−6の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−16とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.3質量%であった。
【0172】
水分散液試料A−8〜A−16の顔料微粒子の粒子サイズ(体積平均粒径Mv)及びその分布(体積平均粒径Mvと数平均粒径Mnとの比Mv/Mn)をまとめて下記表Cに記載した。
[表C]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 試料 Mv Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ZnPc A−8 48.2nm 1.53
ZnPc/PB15 A−9 47.5nm 1.73
PbPc A−10 42.8nm 1.55
PbPc/PB15 A−11 48.5nm 1.79
PB15/PB16 A−12 39.4nm 1.58
PB15/PB16 A−13 28.5nm 1.56
PB15/PR254 A−14 36.2nm 1.61
PB15/PY128 A−15 34.3nm 1.53
PB15/PR254 A−16 29.7nm 1.72
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0173】
(実施例1−17)
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHORRED BT−CF(商品名))6.00gを、8M水酸化カリウム水溶液(和光純薬(株)社製)6.3mL、ジメチルスルホキシド78.40g、アクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)4.80g、N−ビニルピロリドン((和光純薬(株)社製)1.20g、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.30g、高分子アゾ開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)3.00gと共に室温で溶解した(A1e液)。A1e液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
蒸留水をB1e液とした。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。
マイクロリアクター装置として、以下の分割数(流路本数)等を有する図1のマイクロリアクター装置を使用した。
(i)供給流路本数(n)…2種類の反応液それぞれについて3本に分割
(ii)供給流路21、22の幅(W)…各400μm
(iii)供給流路21、22の深さ(H)…各400μm
(iv)合流領域20の直径(D)…800μm
(v)マイクロ流路23の直径(R)…800μm
(vi)合流領域23において各供給流路21、23とマイクロ流路23との中心軸同士の交差角度…90°
(vii)装置の材質…ステンレススチール(SUS304)
(viii)流路加工法…マイクロ放電加工で行い、供給ブロック11、合流ブロック12、反応ブロック13の3つのパーツの封止方法はOリングと鏡面研磨による金属面シールで行った。
二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A1e液とB1e液を各々入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。コネクターの出口には長さ3m、等価直径2mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0174】
A1e液とB1e液の流量を各々、10mL/分、60mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントレッド254の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。採取した顔料分散液の顔料微粒子の体積平均粒径Mv31.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.57および顔料濃度0.86質量%であった。
【0175】
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。加熱後の顔料分散液の体積平均粒径Mv31.9nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.47であった。このとき顔料分散液のpHは6.2であった。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置Masterflex I/P Easy−Load pump(商品名、Cole Pamer社製、EW−77601−10/EW−07592−20)にI/P 82チューブ(商品名、Cole Pamer社製)を接続し、マイクロ−ザUF ラボモジュール(旭化成社製、SIP−1013[商品名](分画分子量6000))で、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮し、最後に限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーUHP−76K(商品名))にウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製した。精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は10.23質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−1eとした。
【0176】
ビーカーに水分散液試料A−6(PB15)50.0gと水分散液試料A−1e(PR254)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−17とした。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv36.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.63であった。顔料分散液の顔料の合計濃度は8.6質量%であった。
【0177】
(実施例1−18)
ピグメントイエロー128(PY128、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP)(商品名)162.00gを、ジメチルスルホキシド2702.7g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)127.07g、アクアロンKH−10(重合性化合物)(商品名)(第一工業製薬(株)社製)129.60g、N−ビニルピロリドン((和光純薬(株)社製)32.40g、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)8.10g、高分子アゾ開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)81.00gと共に室温で溶解した(A2e液)。A2e液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
蒸留水をB2e液とした。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、試料A−1eの調製に用いた図1のマイクロリアクター装置を使用した。
【0178】
A2e液とB2e液の流量を各々、30mL/分、150mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントイエロー128の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から1.5分後から、捕集をおこない15L採取した。採取した顔料分散液の顔料微粒子の体積平均粒径Mv18.6nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.40および顔料濃度1.08質量%であった。
【0179】
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。加熱後の顔料分散液の体積平均粒径Mv22.0nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.42であった。このとき顔料分散液のpHは6.6であった。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置Masterflex I/P Easy−Load pump(商品名、Cole Pamer社製、EW−77601−10/EW−07592−20)にI/P 82チューブ(商品名、Cole Pamer社製)を接続し、マイクロ−ザUF ラボモジュール(旭化成社製、SIP−1013[商品名](分画分子量6000))で、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮し、最後に限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製した。精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は6.6質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−2eとした。
【0180】
ビーカーに水分散液試料A−6(PB15)50.0gと水分散液試料A−2e(PY128)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−18とした。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv30.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.75であった。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.8質量%であった。
【0181】
(実施例1−19)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)2.05gを、ジメチルスルホキシド96.25g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)1.84g、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩1.70g、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.40gと共に超音波照射しながら溶解した後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.40g、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)1.03gを室温下で撹拌溶解した(A3e液)。A3e液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。1.2質量%のアクアロンKH−10(重合性化合物)(商品名)(第一工業製薬(株)社製)水溶液をB3e液とした。
【0182】
これらを150μmの金属焼結フィルターを通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、試料A−1の調製に用いた図1のマイクロリアクター装置の内、下記の条件に換えたものを使用した。
(i)供給流路21、22の幅(W)…各150μm
(ii)供給流路21、22の深さ(H)…各150μm
(iii)合流領域20の直径(D)…300μm
(iv)マイクロ流路23の直径(R)…300μm
【0183】
A3e液とB3e液の流量を各々、8mL/分、32mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントブルー16の分散液を得た。
ピグメントブルー16の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。採取した顔料分散液の顔料微粒子の体積平均粒径Mv13.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.63および顔料濃度0.41質量%であった。
【0184】
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。加熱後の顔料分散体の体積平均粒径Mv17.5nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.48であった。このとき顔料分散液のpHは6.3であった。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーUHP−76K(商品名))にウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製した。精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は5.3質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−3eとした。この水分散液試料を凍結乾燥させ、得られた結晶のX線粉末回折測定を行ったところ、水素フタロシアニンはα型の準安定型であった。
【0185】
ビーカーに水分散液試料A−6(PB15)50.0gと水分散液試料A−3e(PB16)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−19とした。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv28.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.71であった。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.2質量%であった。
【0186】
(実施例1−20)
ビーカーに水分散液試料A−6(PB15)50.0gと水分散液試料A−8(ZnPc)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−20とした。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv49.3nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.68であった。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.1質量%であった。
【0187】
(実施例1−21)
マイクロリアクター装置として図2の流路幅Zが150μmのマイクロリアクター装置を使用した。マイクロリアクター装置の二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、水分散液試料A−6(PB15)と水分散液試料A−8(ZnPc)を各々入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。マイクロリアクター装置のコネクターの出口には長さ3cm、内径0.5mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。各々毎分10mLで送液し、出てきた液を水分散試料A−21とした。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv46.2nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)1.48であった。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.1質量%であった。
【0188】
水分散液試料A−17〜A−21の顔料微粒子の粒子サイズ(体積平均粒径Mv)及びその分布(体積平均粒径Mvと数平均粒径Mnとの比Mv/Mn)をまとめて下記表Dに記載した。
[表D]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 試料 Mv Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
PB15+PR254 A−17 36.8nm 1.63
PB15+PY128 A−18 30.4nm 1.75
PB15+PB16 A−19 28.4nm 1.71
ZnPc+PB15 A−20 49.3nm 1.68
ZnPc+PB15 A−21 46.2nm 1.48
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0189】
(比較例1−5)
ビーカーに水分散液試料A−2c(PB15)50.0gと水分散液試料A−3c(ZnPc)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−5cとした。顔料の合計濃度は8質量%である。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv120.4nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.5であった。
【0190】
(比較例1−6)
ビーカーに水分散液試料A−2c(PB15)50.0gと水分散液試料A−4c(PbPc)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−6cとした。顔料の合計濃度は8質量%である。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv118.8nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.9であった。
【0191】
(比較例1−7)
ビーカーに水分散液試料A−2c(PB15)50.0gと水分散液試料A−1c(PB16)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−7cとした。顔料の合計濃度は8質量%である。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv111.2nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.6であった。
【0192】
(比較例1−8)
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHORRED BT−CF(商品名))8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料の合計濃度は8質量%であり、これを水分散液試料A−4eとした。顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv105.7nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.3であった。
ビーカーに水分散液試料A−2c(PB15)50.0gと水分散液試料A−4e(PR254)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−8cとした。顔料の合計濃度は8質量%である。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv99.6nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.3であった。
【0193】
(比較例1−9)
ピグメントイエロー128(PY128、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP(商品名))8.00g、分散剤としては界面活性剤のアクアロンKH−10(商品名)(第一工業製薬(株)社製)2.0g、グリセリン(和光純薬(株)社製)10.00g、純水80.0gを混合し、氷冷下、超音波分散機Vibra−Cell VC750(商品名、SONICS & MATERIALS,INC.,社製)で超音波を5時間照射した。顔料の合計濃度は8質量%であり、これを水分散液試料A−5eとした。顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv110.6nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.2であった。
ビーカーに水分散液試料A−2c(PB15)50.0gと水分散液試料A−5e(PY128)50.0gと量り取り、メカニカルスターラーで300rpm、30分間撹拌し、水分散試料A−9cとした。顔料の合計濃度は8質量%である。得られた顔料分散液の微粒子の体積平均粒径Mv102.1nm、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)2.7であった。
【0194】
(比較例1−10〜1−14)
図2のマイクロリアクターを用いて実施例1−14の2種の水分散試料を用いた混合調製法で、比較例1−5〜比較例1−9で用いた2種の水分散液試料をそれぞれ用いる以外同条件で各混合分散液の調製を行った。
その結果、いずれの混合分散液の調製においても送液中に詰りが生じた。
【0195】
水分散液試料A−5c〜A−9cの顔料微粒子の粒子サイズ(体積平均粒径Mv)及びその分布(体積平均粒径Mvと数平均粒径Mnとの比Mv/Mn)をまとめて下記表Eに記載した。
[表E]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
顔料 試料 Mv Mv/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
PB15+ZnPc A−5c 120.4nm 2.5
PB15+PbPc A−6c 118.8nm 2.9
PB15+PB16 A−7c 111.2nm 2.6
PB15+PR254 A−8c 99.6nm 2.3
PB15+PY128 A−9c 102.1nm 2.7
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0196】
本発明の製造方法により得られたビルドアップ顔料微粒子を含有する分散組成物(試料A2〜A21)は、ブレイクダウン法により得たもの(試料A−5c〜A−9c)に対し、顔料微粒子の粒径が極めて小さく、しかも単分散で粒径分布ピークがシャープであり、鮮やかな色味で、化粧料や塗工料を始め各種の着色料として優れた性能を示すものであることが分かる。また、2種以上の顔料(水素フタロシアニン顔料及び/又は金属フタロシアニン顔料、金属フタロシアニン顔料及び/又は金属フタロシアニン顔料以外の顔料)を混合して調色するとき、比較例の試料A−5c〜A−9cにおいてはいずれも白みがかった色みになってしまう。さらに、混合状態による色相の変化も見極めがたい。これに対して、本発明の製造方法によりマイクロチャネル中で調色した試料A−12〜A−16、A−21は深みの感じられる透明感があり、さらに鮮やかな色みになった。またビーカー中で混合して調色した試料A−17〜20は時間をかけて撹拌を行うことにより、試料A−12〜A−16、A−21と同様な深みを感じられる透明感のある色みになった。試料A−21において、時間をかけずともマイクロチャンネル中で2種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子分散液を瞬時に調色可能であることがわかる。また本発明によれば、精製濃縮時の洗浄液中に分散剤が移行する量を低く抑えることができ(実施例1−12〜1−16参照)、環境負荷及びコストを低減することができる。この結果から、本発明によれば、鮮明で輝きのある色調を維持しながら混合による色相調色を再現性良く行うことができ、かつその調色操作が簡便であるため、所望の色相の化粧料、塗工料を効率良く調製することが可能である。
【0197】
(実施例2・比較例2)
上記試料A−1,A−1c,A−2cをそれぞれイオン交換水と混合し組成物を調製して、光輝性爪化粧料試料B−1及び比較のための光輝性爪化粧料試料B−1c及びB−2cとし、それぞれの試料につき以下のようにして評価を行った。各試料の成分組成と併せて結果を表1に示した(表中の数値は試料中の各成分の含有率(質量%)を示す。)。
【0198】
「評価(1):光沢感」
美爪料化粧料試料をパネラー10名の爪にそれぞれ塗布し、塗布10分後の爪に、各自が光沢があると感じるか否かを判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、光沢があると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、光沢があると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、光沢があると感じた。
×:パネラー3名未満が、光沢があると感じた。
【0199】
「評価(2):耐水性」
美爪料化粧料試料をパネラー10名の爪にそれぞれ塗布した後、流水で3分間流した。その後、乾燥させ、その爪に各自が光沢があると感じるか否かを判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、光沢があると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、光沢があると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、光沢があると感じた。
×:パネラー3名未満が、光沢があると感じた。
【0200】
「評価(3):安定性」
試料をそれぞれ20mLのスクリュー管に8分目まで充填し、50℃で1週間放置後の各試料の状態変化を目視観察し評価した。さらに上記放置後の各試料を爪に塗布し、爪の光沢感を目視観察し評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:試料液の中味は沈殿がなくほぼ均一であった。試料を塗布した爪については光沢あった。
○:試料液の中に若干の沈殿が認められたが、振とうによりほぼ均一となった。試料を塗布した爪については光沢があった。
△:試料液の中に沈殿が生じ、攪拌してある程度沈殿物を混合できた。試料を塗布した爪については光沢がなかった。
×:試料液の中に沈殿が生じ、沈殿物の再攪拌はできず、爪に塗布することさえもできなかった。
【0201】
「評価(4):化粧持続性」
試料をそれぞれパネラー10名の爪に筆にて塗布し、1日間連用後の光沢感を各自が判定した。このとき、まず筆でベースコートを塗布したのち、常温にて5分間乾燥後、その上に各試料を筆で塗布した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、光沢を維持していると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、光沢を維持していると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、光沢を維持していると感じた。
×:パネラー3名未満が、光沢を維持していると感じた。
【0202】
【表1】

【0203】
表1の結果3から明らかなように、本発明の製造方法により得た顔料分散組成物より調製した光輝性爪化粧料(試料B−1)は、比較のための試料B−1c,B−2cに比べて、青の色相において光沢感があり輝きのあるものであり、美しく爪を装い、しかも長期間保管したときにも良好な性能を維持し、さらに着色後の色変わりの心配なくその鮮やかで輝きのある発色を維持しうることが分かる。
【0204】
(実施例3・比較例3)
上記試料A−1〜A−7、A−2cをそれぞれイオン交換水と混合し組成物を調製して、光輝性爪化粧料試料B−1〜B−7、並びに比較のための光輝性爪化粧料試料B−2cとし、それぞれの試料につき実施例2・比較例2と同様の評価を行った。各試料の成分組成と併せて結果を表2に示した(表中の数値は試料中の各成分の含有率(質量%)を示す。)。
【0205】
【表2】

【0206】
表2の結果から明らかなように、本発明の製造方法により得た顔料分散組成物より調製した光輝性爪化粧料(試料B−1〜B−7)は、比較のための試料B−2cに比べて、安定性、耐水性が大幅に向上しており、長期間保管したときにも良好な性能を維持していることが分かる。本発明においては特に、試料B−5〜B−7の結果から、加熱処理、高分子分散剤の添加、及び/又は重合性化合物の重合固定化の作用、及び/又は架橋による固定化により、さらに安定性を高めることができることが分かる。試料B−5では加熱することにより意外にも上記安定性が向上することが分かる。
また、色相が経時的に変化することは美観に影響を与えるため好ましくなく、比較のための試料B−2cに対し、安定性に優れる本発明の顔料分散組成物より調製した光輝性爪化粧料(試料B−1〜B−7)は、爪を美しく装う用途において特に望ましいことが分かる。
さらに、本発明の顔料分散組成物より調製した光輝性爪化粧料(試料B−1〜B−7)は、比較のための試料B−2cに対し、青の色相において光沢感があり輝きを有し、しかも着色後の色変わりが抑えられ、その鮮やかで輝きのある発色を長時間維持しうることが分かる。
【0207】
(実施例4・比較例4)
上記試料A−8〜A−21,A−5c〜A−9cをそれぞれイオン交換水と混合し組成物を調製して、光輝性爪化粧料試料B−8〜B−21、比較のための光輝性爪化粧料試料B−5c〜9cとし、実施例2・比較例2と同様の評価を行った。さらに下記の色変わり性の評価(5)を加えて行い、各試料の成分組成と併せて結果を表3に示した(表中の数値は試料中の各成分の含有率(質量%)を示す。)。
【0208】
「評価(5):色変わり性」
美爪料化粧料試料をパネラー10名の爪にそれぞれ塗布し、塗布4日後、各自が爪に色変わり性があると感じるか否かを判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、色変わりがないと感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、色変わりがないと感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、色変わりがないと感じた。
×:パネラー3名未満が、色変わりがないと感じた。
【0209】
【表3】

【0210】
表3の結果から明らかなように、本発明の製造方法により得た顔料分散組成物より調製した光輝性爪化粧料(試料B−8〜B−21)は、比較のための試料B−5c〜B−9cに比べて、青の色相において光沢感があり輝きを有し、しかも安定性、耐水性が大幅に高まり、4日間という長い期間にわたって色変わりがあまりないことが分かる。
【0211】
(実施例5・比較例5)
上記試料A−1,A−1c、A−2cをそれぞれイオン交換水と混合し、順次、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩、水酸化アンモニウム、ポリメタクリル酸ブチル(Tg20℃)、ヘキサデカノール、プロピレングリコール、流動パラフィンを添加し、組成物を調製して、光輝性染毛化粧料試料C−1、比較のための光輝性染毛化粧料試料C−1c,C−2cとし、以下のようにして評価を行った。各試料の成分組成と併せて結果を表4に示した。
【0212】
「評価(1):光輝感(つや)」
染毛化粧料試料を毛にそれぞれ塗布し、10分間乾燥した後、光輝感(つや)の有無をパネラー10名各自が判定した。下表(目視による光輝感の判定表)に示す基準で点数をつけてもらい、10人のつけた点数の平均値で下表(評価点区分表)のように区別して評価した。
【0213】
[目視による光輝感の判定表]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
点数 光輝感の印象
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5 強い光輝感がある。
4 光輝感がある。
3 少し光輝感がある。
2 あまり光輝感を感じない。
1 まったく光輝感がない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0214】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[評価点区分表]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
評価 印象点の平均
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎ 平均4.5〜5.0
○ 平均3.5〜4.4
● 平均2.5〜3.4
△ 平均1.5〜2.4
× 平均1.5未満
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0215】
「評価(2):耐水性」
染毛化粧料試料をそれぞれ毛に塗布し、流水で3分間流した。その後、乾燥させ、毛の光輝感の有無をパネラー10人各自が判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、光輝感があると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、光輝感があると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、光輝感があると感じた。
×:パネラー3名未満が、光輝感があると感じた。
【0216】
「評価(3):安定性」
染毛化粧料試料をそれぞれ20mLのスクリュー管に8分目まで充填し、50℃で1週間放置後の各試料の状態変化を目視観察し評価した。上記放置後の試料を毛に塗布し、毛の光輝感の有無を前表(判定表)の評価基準を用いて評価した。
【0217】
【表4】

【0218】
表4の結果から、本発明の製造方法により得た顔料分散組成物より調製した染毛化粧料(試料C−1)は、比較のための試料C−1c及びC−2cに比べて、色鮮やかで輝きがあり、しかも耐水性及び安定性が極めて高く、染毛化粧料として優れることが分かる。
【0219】
(実施例6・比較例6)
上記試料A−1〜A−7、A−2cを用い、実施例5・比較例5と同様にして染毛化粧料試料C−1〜C−7、及びC−2cをそれぞれ調製し、各試料の評価を行った。各試料の成分組成と併せて結果を表5に示した。
【0220】
「評価(4):化粧持続性」
試料をそれぞれパネラー10名の毛髪に塗布し染毛し、1日間連用後の光沢感を各自が判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、光沢を維持していると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、光沢を維持していると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、光沢を維持していると感じた。
×:パネラー3名未満が、光沢を維持していると感じた。
【0221】
【表5】

【0222】
表5の結果から明らかなように、本発明の製造方法により得た顔料分散組成より調製した染毛化粧料(試料C−1〜C−7)は、比較試料C−2cに比べて、青の色相において、光輝感(つや)が向上しており、使用頻度を考える上で、特に重要である安定性が長期間に渡り、保存良好な性能を維持していることがわかる。また、色相の変化は染毛化粧料としたときに美観に大きな影響を与えるため抑えることが好ましく、比較のための試料C−2cに対し、安定性に優れる本発明の顔料分散組成物より調製した染毛化粧料(試料C−1〜C−7)が望ましいことが分かる。本発明においては特に、試料C−5〜C−7の結果から分かるように、加熱処理、高分子分散剤の添加、及び/又は重合性化合物を重合し固定化した作用、及び/又は架橋による固定化により、さらに上記安定性を高めることができることが分かる。なお、試料C−5では加熱することにより意外にも上記安定性が向上することが分かる。
【0223】
(実施例7・比較例7)
上記試料A−8〜A−21、A−5c〜A−9cを用い、実施例5・比較例5と同様にして染毛化粧料試料C−8〜C21、C−5c〜C−9cをそれぞれ調製し、各試料の評価を行った。さらに効果を明確化する目的で、以下の評価を加えた。結果を表6に示した(表中の数値は試料中の各成分の含有率(質量%)を示す。)。
【0224】
「評価(5):色変わり性」
青色の染毛化粧料試料をそれぞれ毛に塗布し、乾燥させ、色変わり感の有無を10人のパネラー各自が判定した。その評価は以下のとおりとした。このとき毛に塗布した直後のものと、3日間静置した後のものとをそれぞれ評価した。なお、各試料の成分組成は表6のとおりとした。
その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、色変わりがないと感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、色変わりがないと感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、色変わりがないと感じた。
×:パネラー3名未満が、色変わりがないと感じた。
【0225】
【表6】

【0226】
表6の結果から明らかなように、本発明の製造方法により得た顔料分散組成物から調製した染毛化粧料(試料C−8〜C−21)は、比較試料C−5c〜C−9cに対して、光輝感(つや)があり、使用頻度を考える上で、特に重要である安定性、耐水性が高く良好な性能を長期間維持していることがわかる。さらに、染毛したときの色相の変化は美観に大きく影響を与えるため抑えることが好ましく、比較のための試料C−5c〜C−9cに対し、色変わり性に優れる本発明の顔料分散組成物より調製した染毛化粧料(試料C−8〜C−21)が望ましいことが分かる。各個人の色の嗜好性に応じて試料C−8〜C−21を選択することができ、実用上特に重要なこととして本発明によれば満足な色相を長期間維持しうることが分かる。なお、本発明の試料C−9、C−20、C−21と比較試料C−5cを比較すると、意外にも混合方式によらず光輝感(つや)が一層増大することが分かる。本発明の試料C−29の様なマイクロリアクターによる直前混合を用いた方法を複数回繰返しても、色相に変化なく製造ができ、再現性が向上する。
【0227】
上記の結果から、本発明によれば、ビルドアップ有機顔料微粒子を色材とすることにより、化粧料組成物が分散安定性を有するばかりでなく、長期間保管しても、良好な光輝感・光沢感を維持しうることが分かる。中でも化粧料組成物、特に美爪料化粧料組成物においては美しく爪を装い、しかも長期間保管したときにも良好な性能を維持し、さらに着色後の色変わりの心配なくその鮮やかで輝きのある発色を維持しうることが分かる。さらに染毛化粧料組成物においては、髪をカラフルに装い、長期間保管したときにも良好な性能を維持し、染毛後の色変わりの心配なくその輝きのある発色を維持しうることが分かる。
【0228】
(実施例8・比較例8)
上記で調製した分散液試料A−6、A−1c、A−2c、A1e〜A5e、イオン交換水、及びジュリマーET410(商品名、日本純薬社製、Tg40℃)を用い、下表7の成分組成でプラスチック塗工用塗料D−1〜D−13(実施例)、D−1c〜D−4c(比較例)を調製した。
【0229】
塗工用塗料D−1〜D−4(実施例)、塗工用塗料D−8〜D−13(実施例)と塗工用塗料D1c〜D4c(比較例)は、比較例1−5と同様にビーカー内で顔料分散液試料の混合を行った。ただし、塗工用塗料D−8〜D−10(実施例)については、A液、B液をおのおの混合した。塗工用塗料D−5〜D−7(実施例)については、実施例1−21と同様にして図2に示したマイクロリアクターを用い、顔料分散液試料の混合を行った。なお、塗工用塗料D1c〜D4c(比較例)についてはマイクロリアクターの流路が閉塞してしまった。
【0230】
膜厚3mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムをUV露光機(1.5W高圧水銀灯、USIO社製)で30分間露光した後、ディップコーターで各塗工液試料をそれぞれ、浸漬後、引上げ速度毎分10cmで塗布し、35℃で水平になるように3時間放置し、下記の項目及び基準に基づき着色性を評価した。ただし、塗工用塗料D−8〜D−10(実施例)については、B液、A液の順に塗布を繰返して、同様に評価した。
【0231】
[着色具合]
コーティング膜の着色具合を、試料を水平面から60度の方角から見た時の着色具合で評価した。評価は下記のとおりとした。
濃厚:深みが有る色で、鮮やかな発色をしている。
散乱:白みがかった色になる角度があり、鮮やかさが欠如している。
【0232】
[鮮映感]
着色フィルムを水平面から20度、60度の方角から見た時の濃度変化の小さく見えるほうを鮮映感があるものとして、鮮映感の有無をパネラー10人各自が判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、比較試料よりも本発明試料の方が、鮮映感があると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、鮮映感があると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、鮮映感があると感じた。
×:パネラー3名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、鮮映感があると感じた。
【0233】
[透明感]
2ポイント〜30ポイントの白字が印字された黒塗りシートの上に、100μmの厚みにコーティングした着色フィルムを置き、上方から白字を透かして、どちらの試料の文字が小さいポイントまで読めるかを比較して、透明感の有無をパネラー10名各人が判定した。その評価は以下のとおりとした。
◎:パネラー8名以上が、比較試料よりも本発明試料の方が、透明感があると感じた。
○:パネラー5名以上8名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、透明感があると感じた。
△:パネラー3名以上5名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、透明感があると感じた。
×:パネラー3名未満が、比較試料よりも本発明試料の方が、透明感があると感じた。
【0234】
[密着性]
カッターで試料表面に2mm間隔で縦と横、各々6本の切込みを入れて25個の碁盤目を作製し、その上からセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付けた後、そのテープを剥がした時の基材に残っている着色コーティング膜を碁盤目の数の残存率で評価した。その評価は以下のとおりとした。
◎:80%以上が残存した。
○:50%以上が残存した。
△:10%以上が残存した。
×:全面剥離した。
【0235】
[定着性]
着色コーティング試料表面に上からセロテープ(登録商標)(ニチバン製)及びメンディングテープ(3M)を空気が中に入らないように貼り付けた後、そのテープを剥がした。剥がしたテープへの色移りで評価した。
◎:セロテープ(登録商標)及びメンディングテープ、共に色移りが認められなかった。
○:メンディングテープに色移りが認められなかったが、セロテープ(登録商標)に僅かな色移りが認められた。
△:セロテープ(登録商標)及びメンディングテープ、共に僅かな色移りが認められた。
×:セロテープ(登録商標)またはメンディングテープにテープ全面に着色があり、色移りが認められた。
【0236】
光沢感、耐水性、及び安定性については実施例2・比較例2と同様にして行った。ただし、被塗物は爪ではなく、上記PETフィルムを用いた。
【0237】
【表7】

【0238】
比較例の塗工液試料D1c〜D4cの塗膜はいずれも白みがかっており、すべての評価項目において劣る結果であった。これに対し実施例の塗工液試料D−1〜D−13は、比較例よりも、塗膜表面に光沢があるばかりでなく、透明感があり、鮮やかな色みを呈していた。また、耐水性、安定性、密着性、定着性といった、塗工料としての特性にも優れるものであった。
実施例の塗工用塗料試料D−5〜D−7はマイクロリアクターにより、調色時間が短縮でき環境にやさしい。また、実施例の塗工用塗料D−8〜D−10の様な複層塗布により、色相に幅が広がる意匠性に優れるものであった。
【0239】
(実施例9・比較例9)
上記実施例8・比較例8の途工用塗料の成分組成を下表8のように変えた以外同様にして、ガラス塗工用塗料E−1〜E−13(実施例)、E−1c〜E−4c(比較例)を調製した。
塗工用塗料E−1〜E−4(実施例)、塗工用塗料E−8〜E−13(実施例)と塗工用塗料E1c〜E4c(比較例)は、比較例1−5と同様にビーカー内で顔料分散液試料の混合を行った。ただし、塗工用塗料E−8〜E−10(実施例)については、A液、B液の成分組成でおのおの混合した。
塗工用塗料E−5〜E−7(実施例)については、実施例1−21と同様にして図2に示したマイクロリアクターを用い、顔料分散液試料の混合を行った。
なお、塗工用塗料E1c〜E4c(比較例)についてはマイクロリアクターの流路が閉塞してしまった。
【0240】
膜厚3mmのガラス板をUV露光機(1.5W高圧水銀灯、USIO社製)で30分間露光した後、このガラス板にディップコーターで各塗工液試料をそれぞれ塗布し、下記の項目及び基準に基づき着色性を評価した。
ただし、塗工用塗料E−8〜E−10(実施例)については、B液、A液の順に塗布を繰返して、同様に評価した。
【0241】
[耐擦性]
表面を消しゴムで擦って、削れたカスの着色を目視により評価判定した。その評価判定基準は次のとおりである。
◎:消しゴムに色移りが認められなかった。
○:消しゴムに僅かな色移りが認められた。
△:消しゴムに色移りが認められたが、ガラス面に着色が残った。
×:ガラス面に着色部が残らなかった。
【0242】
表8に記載のその他の項目は実施例8・比較例8と同様にして行った。
【0243】
【表8】

【0244】
比較例の塗工液試料E1c〜E4cの塗膜はいずれも白みがかっており、すべての評価項目において劣る結果であった。これに対し実施例の塗工液試料E−1〜E−13は、塗膜表面に光沢があるばかりでなく、透明感があり、鮮やかな色みを呈していった。また、耐擦性といった、塗工料としての特性にも優れるものであった。
実施例の塗工用塗料試料E−5〜E−7はマイクロリアクターにより、調色時間が短縮でき環境にやさしい。また、実施例の塗工用塗料E−8〜E−10の様な複層塗布により、色相に幅が広がる意匠性に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】中心衝突型マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】Y字型流路を有する反応装置の一実施態様を模式的に示す平面図である
【図3】図2のIII−III線の断面図である
【図4】六方マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0246】
100、200、300 反応装置(マイクロリアクター)
11 供給ブロック
12 合流ブロック
13 反応ブロック
16 外側環状溝
15 内側環状溝
17、18 供給ブロックの貫通孔
20 合流部(合流領域)
21 長尺放射状溝
22 短尺放射状溝
23 反応ブロックの貫通孔(マイクロ流路からなる液体混合空間)
25、26 合流ブロックの貫通孔
111、112 導入口
113 流路
113a、113b 導入流路
113c 反応流路(マイクロ流路からなる液体混合空間)
113d 流体合流点
114 排出口
201 流体合流点
202、203 導入流路
204 排出流路
210 コネクター接続部
211 チューブフェルール固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる金属置換反応工程と、前記有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散させる分散工程とを有することを特徴とする顔料分散組成物の製造方法。
【請求項2】
前記金属置換反応工程において、前記金属塩類を2種以上用い、その少なくとも2種の金属塩類の金属原子を互いに異ならせ、組成物中に複数の種類のビルドアップ顔料微粒子を含有させることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項3】
前記分散工程において、前記有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散させ、これと同時もしくは逐次に前記有機金属錯体顔料前駆体の微粒子を析出させ、組成物中に複数の種類のビルドアップ有機顔料微粒子を含有させることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項4】
前記金属置換反応工程及び分散工程を経て、水素フタロシアニン顔料の微粒子及び/又は金属フタロシアニン顔料の微粒子の1種以上を含有する分散組成物を調製することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項5】
前記金属置換反応工程において前記有機金属錯体顔料前駆体から有機金属錯体顔料を生成させた後、100ミリ秒以内に前記分散工程において前記有機金属錯体顔料を含む液体と貧溶媒とを混合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ビルドアップ有機顔料微粒子の平均粒子サイズを80nm以下とし、かつ、体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)を1.80以下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ビルドアップ有機顔料微粒子に水溶性重合性化合物の重合体を固定化し水分散性重合体粒子とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ビルドアップ顔料微粒子に被架橋性化合物を架橋固定化し水分散性重合体粒子とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項9】
前記金属塩類溶液に、金属塩類溶液100質量部中に0.5〜100質量部の水性媒体を含有させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項10】
前記金属置換反応工程及び/又は前記分散工程を分散剤の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項11】
前記金属置換反応工程及び/又は分散工程を層流と乱流の過渡状態で行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項12】
前記金属置換反応工程及び/又は分散工程を層流で行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項13】
前記有機金属錯体顔料を含有する液体に貧溶媒を接触させて、前記液体のpHを変化させることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項14】
前記有機金属錯体顔料前駆体及び/又は前記有機金属錯体顔料とこれとは別の顔料とを含有する混合液体を貧溶媒と接触させて、前記混合液体のpHを変化させることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項15】
前記金属置換反応工程及び/又は前記分散工程をマイクロリアクターのマイクロチャンネル中で行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の顔料分散組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法で製造された顔料分散組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231415(P2008−231415A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39408(P2008−39408)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】