説明

顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部及び該人形頭部を有する人形

【課題】過度の負荷なく顔部及び後頭部を着脱可能な人形頭部を提供すること。
【解決手段】顔部3と後頭部4が着脱可能に接合する人形頭部1であって、前記顔部3及び後頭部4のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部7と、その他方の内部に形成された嵌合凹部6と、前記顔部3及び後頭部4のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリット5と、を有し、前記嵌合凸部7及び嵌合凹部6のいずれか一方は、前記スリット5を挟んだ両側に分割して形成され、前記嵌合凸部7と嵌合凹部6が嵌合することによって、前記顔部3と後頭部4が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部に関する。より詳細には、本発明は、顔部と後頭部を、それぞれ個別に、過度の負荷なく容易に着脱可能な人形頭部に関する。さらに本発明は、該人形頭部を有する人形に関する。
【背景技術】
【0002】
人形の特定の部位を着脱可能とし、該部位を複数用意して交換することによって、人形自体をカスタマイズして楽しむことができる人形が存在する。特に、人形の髪型や表情を担う頭部は、その印象を大きく変えるため、カスタマイズの需要が高い部位である。
【0003】
このような需要に対し、例えば、特許文献1は、人形頭の改造を容易に行うことができる人形玩具として、人体の顔面に当たる部分を含む顔部と頭髪が植毛される頭髪部とに二分割されていると共に、該顔部の上端部と該頭髪部の下端部とが互いに嵌合する形状に形成されており、前記頭髪部の下端部と前記顔部の上端部との嵌合面並びにその近傍に常温可塑性を有する合成樹脂系粘着材が充填されて該頭髪部が該顔部に対して着脱可能に粘着されている人形頭を開示する。また、特許文献2は、後半頭部前面へ、顔面を異にする複数の前半頭部の一つを、磁石(磁性体)によって着脱自在に吸着させた顔面可変玩具を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47784
【特許文献2】特開2005−110889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部では、顔部(前半頭部)と後頭部(頭髪部、後半頭部)との接合を安定させ、顔部と後頭部の着脱の繰り返しに耐え得る耐久性を提供するために、粘着材や磁石(磁性体)のような特別な材料が必要であった。また、人形の顔や髪型は、汚れや傷等に非常に敏感で繊細な部位であるため、着脱の際に顔部や後頭部に触れる回数が多いことや、顔部や後頭部に過度の負荷がかかることは不都合であった。さらに、従来の顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と人形胴体を有する人形においては、該人形頭部を人形胴体に対して三次元方向に自由に安定して可動させることも困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、粘着材や磁石のような特別な材料を用いることなく、過度の負荷なく顔部及び後頭部を繰り返し着脱可能な人形頭部を発明するに至った。さらに、そのような人形頭部と人形胴体を有する人形であって該人形頭部が人形胴体に対して三次元方向に自由に安定して可動する人形を発明するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部と、その他方の内部に形成された嵌合凹部と、前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリットと、を有し、前記嵌合凸部及び嵌合凹部のいずれか一方は、前記スリットを挟んだ両側に分割して形成され、前記嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部が提供される。該人形頭部においては、接着材等の特別な材料や、ネジ止め等の特別な加工を施すことなく、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記嵌合凸部が前記後頭部の内部に形成され、前記スリットが前記顔部の内部に形成され、前記嵌合凹部が、前記スリットの内部に形成されることを特徴とする、前記の人形頭部が提供される。該人形頭部においては、前記嵌合凹部が前記スリットの内部に形成されるため、これらの嵌合凹部及びスリットの成形が容易である。
【0009】
本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの内部に形成され、一端が開口したスリットと、前記スリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部が提供される。該人形頭部においては、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凸部が破損した場合、嵌合凸部のみを独立して交換することが可能である。
【0010】
本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、前記顔部及び後頭部の内部にそれぞれ形成された嵌合凸部と、一端が開口したスリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凸部と、前記嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部が提供される。該人形頭部においては、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凹部が破損した場合、嵌合凹部のみを独立して交換することが可能である。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記顔部及び/又は後頭部がその内部に内部部材を有することを特徴とする、前記の人形頭部が提供される。該人形頭部においては、顔部と後頭部が着脱可能に接合しているため、その内部に内部部材(例えば、義眼、義歯等)を設けることが容易であり、また、これらを着脱可能とすること、位置の微調整を行うこと等が可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記顔部がその内部に、義眼と、前記義眼が載置される義眼載置部と、垂直方向に延びる垂直部と、当該垂直部の上端の両側から水平方向に延びる水平部を有し、顔部正面から見てT字状に形成され、前記義眼を上から押さえる義眼押さえ部材と、前記垂直部を固定する固定部と、を有し、前記義眼載置部に載置された義眼が、前記義眼押さえ部材の水平部により上から押さえられることを特徴とする、前記の人形頭部が提供される。該人形頭部においては、人形頭部の内部のような狭い空間においても、左右の義眼それぞれを視線調整可能に固定することができる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記後頭部の外縁が、人の毛髪の生え際の線を模して形成される、前記の人形頭部が提供される。該人形頭部においては、後頭部の外縁が、人の毛髪の生え際の線を模して形成されるため、従来美観上の問題の回避が困難であった、襟足の露出する髪型を有する人形頭部を提供することができる。また、顔部と後頭部との接合がより強固になり、さらには、顔部と後頭部の接合面が広いため、前記顔部の内部に内部構造を設ける場合や、この内部構造を着脱可能とし、調整する場合にも作業が行いやすい。
【0014】
本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、前記人形頭部は、前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部と、その他方の内部に形成された嵌合凹部と、前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリットと、を有し、前記嵌合凸部及び嵌合凹部のいずれか一方は、前記スリットを挟んだ両側に分割して形成され、前記嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、顔部及び後頭部への過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となる。また、受部が、膨出部を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体と人形頭部との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部を自在に可動させることができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、前記人形頭部は、嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの内部に形成され、一端が開口したスリットと、前記スリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に、膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、顔部及び後頭部への過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凸部が破損した場合、嵌合凸部のみを独立して交換することが可能である。また、受部が、膨出部を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体と人形頭部との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部を自在に可動させることができる。
【0016】
本発明の一態様によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、前記人形頭部は、前記顔部及び後頭部の内部にそれぞれ形成された嵌合凸部と、一端が開口したスリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凸部と、前記嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に、膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリットにより与えられる可撓性によって、顔部及び後頭部への過度の負荷なく顔部及び後頭部が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凹部が破損した場合、嵌合凹部のみを独立して交換することが可能である。また、受部が、膨出部を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体と人形頭部との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部を自在に可動させることができる。
【0017】
さらに本発明の一態様によれば、前記受部の少なくとも一部が、前記膨出部の赤道面を超えるよう形成されることを特徴とする、前記の人形が提供される。該人形においては、受部が膨出部を抱持することにより、人形胴体に対して人形頭部が安定して固定される。また、顔部又は後頭部のいずれかと人形胴体との固定、着脱及び可動もより容易に安定して行うことができる。
【0018】
さらに本発明の一態様によれば、前記顔部又は後頭部と、前記人形胴体とを連結する連結部材を有する、前記の人形が提供される。該人形においては、顔部又は後頭部と人形胴体との連結によって、人形頭部の人形胴体に対する固定がより安定したものとなる。また、顔部又は後頭部のいずれか一方(例えば、顔部)を人形胴体と連結させた状態で、他方(例えば、後頭部)を着脱することができるため、顔部又は後頭部のうち所望の側を、より容易に着脱可能な人形が提供される。
【0019】
さらに本発明の一態様によれば、前記後頭部に毛髪様材料が付着し、前記後頭部が前記毛髪様材料と同系色に着色された、前記の人形頭部が提供される。
【0020】
さらに本発明の一態様によれば、前記連結部材が弾性部材である、前記の人形頭部が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、その顔部及び後頭部が過度の負荷なく(すなわち、破損及び汚損の恐れなく)着脱可能で、特に顔と髪型のカスタマイズに非常に適した人形頭部が提供される。また、顔部と後頭部とは、人形胴体がなくとも、相互に接合して安定して固定されて人形頭部を形成するため、人形頭部(顔部と後頭部)のみの展示も容易である。さらには、本発明によれば、磁性体や接着剤等の特別な材料を用いることなく、顔部及び後頭部を着脱可能な人形頭部が提供されるため、生産上の利点も有する。また、本発明によれば、顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部が人形胴体に対して三次元方向に自由に安定して可動する人形が提供されるため、人形の顔を自由な方向に向け、自然なポーズをとらせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る人形頭部及び人形胴体上半身の一部省略側面断面図である。
【図2】実施形態1に係る人形頭部における顔部と後頭部との接合を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係る人形頭部の顔部の真上からの図(a)及び真下からの平面図(b)である。
【図4】実施形態1に係る人形頭部の顔部における義眼及び義歯等の固定を示す正面からの部分断面図(a)及び側面断面図(b)である。
【図5】実施形態1に係る人形頭部の後頭部の内部を示す斜視図である。
【図6】実施形態1に係る人形頭部における様々な髪型の後頭部の例を示す斜視図である。
【図7】実施形態1に係る人形頭部の、人形胴体に対する可動を示す側面断面図(a〜c)及び正面部分断面図(d〜f)である。
【図8】実施形態1において、顔部を人形胴体と連結させた人形の上半身の正面図(a)、側面図(b)及び背面図(c)である。
【図9】実施形態1において、人形胴体の胸部を取り外し可能とした態様を示す、側面図(a)及び側面断面図(b)である。
【図10】実施形態1において、顔部を人形胴体と連結させた状態での後頭部の着脱(a)及び後頭部を人形胴体と連結させた状態での顔部の着脱(b)を示す、側面部分断面図である。
【図11】実施形態2に係る人形頭部における後頭部と嵌合凸部を示す斜視図である。
【図12】実施形態3に係る人形頭部の顔部及び後頭部並びに嵌合凹部を示す斜視図である。
【図13】実施形態4に係る人形頭部における顔部と後頭部を示す斜視図である。
【図14】実施形態5に係る人形頭部における顔部と後頭部を示す斜視図である。
【図15】実施形態6に係る人形頭部における後頭部を示す斜視図である。
【図16A】実施形態7に係る人形頭部における顔部を示す斜視図である。
【図16B】実施形態7に係る人形頭部の他の態様における顔部を示す分解斜視図である。
【図17】実施形態8に係る人形頭部における顔部側連結具及び顔部並びに後頭部側連結具及び後頭部を示す斜視図である。
【図18】実施形態9に係る人形頭部における顔部と、複数の後頭部を示す斜視図である。
【図19】実施形態10に係る人形頭部における顔部と後頭部を示す斜視図である。
【図20】実施形態10に係る人形頭部の、人形胴体に対する可動を示す側面図(a)及び側面断面図(b)〜(d)である。
【図21】参考例に係る人形頭部の顔部及び後頭部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、図に開示する実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、本発明は何等これに限定して解釈されるものではない。本明細書の記載に基づいて当業者であれば可能な設計変更は本発明の範囲内である。
【0024】
図1は、本発明の実施形態1に係る人形頭部及び人形胴体上半身の一部省略側面断面図である。図2は、本発明の実施形態1に係る人形頭部における顔部と後頭部との接合を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態1に係る人形頭部の顔部の真上からの図(a)及び真下からの平面図(b)である。図4は、本発明の実施形態1に係る人形頭部における義眼固定部材を示す正面からの部分断面図(a)及び側面断面図(b)である。図5は、本発明の実施形態1に係る人形頭部の後頭部の内部を示す斜視図である。図6は、本発明の実施形態1に係る人形頭部における様々な髪型の後頭部の例を示す斜視図である。図7は、本発明の実施形態1に係る人形頭部の、人形胴体に対する可動を示す側面断面図(a〜c)及び正面部分断面図(d〜f)である。図8は、本発明の実施形態1において、顔部を人形胴体と連結させた人形の上半身の正面図(a)、側面図(b)及び背面図(c)である。図9は、本発明の実施形態1において、人形胴体の胸部を取り外し可能とした態様を示す、側面図(a)及び側面断面図(b)である。図10は、本発明の実施形態1において、顔部を人形胴体と連結させた状態での後頭部の着脱(a)及び後頭部を人形胴体と連結させた状態での顔部の着脱(b)を示す、側面部分断面図である。
【0025】
図1に示す人形は、人形頭部1と人形胴体2とを有している。人形頭部1は、顔部3と後頭部4から構成される。図2に示すように、顔部3の内部には一端が開口したスリット5が形成され、その内側に嵌合凹部6が形成される。また、後頭部4には嵌合凸部7が形成される。嵌合凹部6と嵌合凸部7が嵌合して、顔部3と後頭部4が接合面8を介して接合し、受部9を有する人形頭部1を形成する。
【0026】
図1〜4に示すように、顔部3の内部は顔面10に対して垂直方向に設けられた顔部内板11によって上顔部12と下顔部13とに分割され、この顔部内板11に、スリット5が設けられている。顔部3の内部には、義眼14及び義歯等15(義歯15a、義歯押さえ部材15b、舌15c)に代表される内部部材を取り付けることが可能である。義眼押さえ部材16は、垂直方向に延びる垂直部16aと、当該垂直部16aの上端の両側から水平方向に延びる水平部16bを有する。顔部3の内部には、義眼14が載置される義眼載置部17と、垂直部16aを固定する固定部18が設けられ、義眼載置部17に載置された義眼14が、義眼押さえ部材16の水平部16bにより上から押さえられて固定され、義眼14が眼孔19から覗く。垂直部16aは、義歯等15に設けられた孔を貫通して義歯等15も固定し、義歯等15が口孔20から覗く。
【0027】
図5に示すように、後頭部4の後頭部外縁21は、人形頭部1の表面に顔部3と後頭部4との接合面8として線状に現れる。後頭部外縁21は人の毛髪の生え際を模した線を描いて人形頭部1を垂直下方に伸び、受部9に突き当たる。また、図6に示すように、後頭部4には毛髪様材料22を付着して様々な髪型を創ることができる。
【0028】
図7及び8に示すように、人形頭部1の受部9が、人形胴体2の上部に位置する首部23の上端に設けられた膨出部24を、回転自在に受けるよう形成されることにより、人形頭部1が人形胴体2に対して自由に可動するよう固定される。図9に示すように、人形胴体2において、胸部30を胸部前側30aと胸部後側30bとに分割し、胸部嵌合凹部31と胸部嵌合凸部32とを介して接合するよう形成してもよい。また、図10に示すように、顔部3に設けられた顔部側連結具25又は後頭部4に設けられた後頭部側連結具26のいずれかと、人形胴体2に設けられた胴体側連結具27とを、連結部材28で連結することで、人形頭部1と人形胴体2とを連結することができる。
【0029】
実施形態1の人形頭部1においては、スリット5の可撓性を利用して、嵌合凹部6と嵌合凸部7とが嵌合することにより、顔部3と後頭部4とが接合して人形頭部1を構成する。
【0030】
まず、図2に示すように、人形頭部1において顔部3と後頭部4とが接合する際の、嵌合凹部6と嵌合凸部7との嵌合について説明する。本発明においては、一端が開口したスリット5を挟んだ両側に分割して嵌合凹部6又は嵌合凸部7を設けることで、スリットの開口幅が若干変化することにより生じる可撓性を、顔部3と後頭部4との接合に利用することができる。そのため、顔部3と後頭部4とが過度の負荷なく、それぞれ容易に着脱可能となり、また、繰り返しの着脱にも耐え得る。スリット5を挟んだ両側に分割して嵌合凹部6が設けられる場合、スリット5の内部に嵌合凹部6を形成することができるため、成形が容易である。
【0031】
スリット5及びこれを挟んだ両側に分割して形成される嵌合凹部6又は嵌合凸部7は、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、アクリル(PMMA)、ナイロン、ABS、エポキシ、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、セルロース系プラスチック(アセテート)、生分解性プラスチック、エラストマー、シリコーン、各種ゴム、各種木材等、可撓性を有する任意の材料を用いて成形することができる。スリット5を挟まずに形成される嵌合凹部6又は嵌合凸部7は、可撓性を有していなくてもよく、任意の材料を用いて成形することができる。嵌合凹部6又は嵌合凸部7は、表面にエンボス加工等の滑り止めがあってもよい。
【0032】
嵌合凹部6及び嵌合凸部7の形状は、これらが容易に顔部3と後頭部4とを着脱可能に接合する限り制限されないが、成型、着脱の容易性、繰り返しの着脱に対する耐久性等の観点からは、嵌合凸部7は曲面を有する球状又は楕円球状に形成し、嵌合凹部6は該球状又は楕円球状に対応する孔として形成することが好ましい。
【0033】
嵌合凸部7及び嵌合凹部6の寸法は、人形頭部1内に収まる限り特に制限されないが、顔部3と後頭部4との接合が安定する範囲で小さく形成すれば、人形頭部1内に内部部材を固定するための空間を設けるという観点から、また、複数の嵌合凸部7及び嵌合凹部6を設けるという観点から、好都合である。例えば、約6.5cmの人形頭部1(例えば全長約58cmの人形)において、直径3〜18mm程度、好ましくは例えば直径8〜12mm程度の球体を嵌合凸部7とすることが可能である。
【0034】
なお、実施形態1に示すように、スリット5が、顔部内板11のような内板に形成され、このスリット5の内側に嵌合凹部6が形成されていると、型抜成形等を容易に行うことができるばかりでなく、多少顔部3又は後頭部4が動いても、内板11上に長く形成されたスリット5に沿って嵌合凸部7が動くため、簡単に外れにくく(遊びがある)、落下等で顔部3または後頭部4が傷つくこと防止することが可能である。後述の内部部材(義眼14等)の人形頭部1内への設置も行いやすく、その落下も防ぐことができる。特に、図2に示すように、顔部3と後頭部4とが嵌合凹部6と嵌合凸部7との嵌合によって接合する際、顔部内板11のスリット5と直交するように板状部材が後頭部4に形成され、この板状部材に連続して嵌合凸部7が設けられていると、顔部内板11と後頭部4の板状部材との交差によって、顏部3と後頭部4のずれ(特に横方向のずれ)が発生しにくいという利点もある。
【0035】
また、図1及び2から明らかなように、顔部3と後頭部4との接合面8は、人形頭部1と人形胴体2とが接触する受部9を通る面となるよう形成され、後頭部外縁21が、人の毛髪の生え際の線を模して形成されている。これにより、以下に詳述する通り複数の利点を有する人形頭部1が得られる。
【0036】
まず、顔部3及び後頭部4との接合面8を広くとることが可能になり、顔部3の内部に内部部材を着脱する場合等でも、繊細な作業が非常に行いやすいという利点が得られる。
【0037】
また、例えば特許文献1に図示されるような従来の人形頭部では、額と後頭部の中心近辺(頭部上方)を通る直線で頭髪部(後頭部)と顔部とが分割されており、襟足の露出する髪型を人形に施そうとする場合に美観上の問題が生じていた。そこで、仮に美観上の問題を克服しようとして上記分割線を首側に近く下げた線とすると、人形胴体(首部)に対する頭部の固定に強度上の問題が生じることになる(顔を上向きにあげた際に、負荷の最もかかる襟足部分が、細く連続して形成されることになり、破損しやすくなる)。一方、実施形態1の人形頭部1においては、あらかじめ顔部3と後頭部4の分割線が、人形頭部1と人形胴体2とが接触する受部9を通るため、例えば人形頭部1を人形胴体2に対して上向きにあげた場合(図7(c)に示す状態)であっても、負荷が顔部3と後頭部4とその接合面8を介して分散し、人形頭部1が破損する恐れがない。
【0038】
さらに、後頭部外縁21が、人の毛髪の生え際の線を模して形成されている(特にもみあげの部分のV字形状等が形成されている)ことにより、顔部3と後頭部4との接合に方向性が生じ、顔部3と後頭部4とを所望の方向で安定して繰り返し着脱することが可能となる。
【0039】
次に、図3〜6に示す、顔部3及び後頭部4について、それぞれ詳述する。本発明の人形頭部1は、顔部3及び後頭部4がそれぞれ独立に着脱可能であるから、これらをそれぞれ複数用意して需要者の好みに応じて自由に組み合わせることができる。例えば、人を模した人形頭部1であれば、顔部3として、喜怒哀楽様々な表情を有する顔部3、多様な化粧を施した顔部3、日焼けした顔色を有する顔部3、変身前後の顔部3、異なる人物の顔部3等を用意することができ、後頭部4として、図6に例示するような様々な髪型及び帽子やヘルメット等の頭部を修飾する造型物を有する後頭部4等を用意することができる。
【0040】
顔部3及び後頭部4は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、アクリル(PMMA)、ナイロン、ABS、エポキシ、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、セルロース系プラスチック(アセテート)、生分解性プラスチック、エラストマー、シリコーン、各種ゴム、各種木材等、任意の材料を用いて、接合面8を介して顔部3と後頭部4とが接合した際に人形頭部1を形成するよう成形される。顔部3と後頭部4は、好ましくは、その内部の一部または全部が内部に空間を有するよう形成される。顔部3と後頭部4とは、同一材料で成形する必要はなく、また、部分的に異なる素材で成形してもよい。上述のスリット5、嵌合凹部6又は嵌合凸部7と、顔部3又は後頭部4とを、それぞれ同一材料で成形しても異なる材料で成形してもよく、一体成形することも別々に成形して当業者によく知られた手法を用いて結合することも可能である。
【0041】
図3及び図4に示すように、顔部3は、内部の一部が空間を有するよう形成され、内部に、義眼14及び義歯等15(義歯15a、義歯押さえ部材15b、舌15c)に代表される内部部材を取り付けることが可能である。例えば磁石や粘着剤を用いて顔部と後頭部とを着脱可能に接合しようとする場合、内部部材を取付けるための空間を人形頭部の内部に広く確保することは困難であった。なお、本明細書中、「義歯等」とは、人形の口周辺部に固定することを意図した構造の一部又は全部を指し、義歯のほか、義歯押さえ部材、義歯を伴っても伴わなくてもよい上顎部及び下顎部並びに舌等も含まれる。また、本明細書中、「内部部材」とは、人形頭部の内部に固定される部材であれば特に限定されず、所望の人形によって適宜選択することができ、義眼及び義歯等のほか、例えばロボットやモンスター等の顔部の場合、発光・発声する電子部品、義眼や顎等を可動させるためのモーター等の機械部品等であってもよい。
【0042】
内部部材の顔部3の内部への固定方法は特に制限されず、着脱可能であっても着脱不可能であってもよい。例えば、接着材による接着、粘着材による粘着、ネジ止め、内部部材を着脱可能に固定するための固定部を顏部3の内部に設ける等、種々の手法を用いることができる。実施形態1においては、図4に示すように、顔部内板11上に、義眼14の下部を固定するよう義眼載置部17が設けられている。また、顔部正面からみてT字状に形成された義眼押さえ部材16は、垂直方向に延びる垂直部16aと、当該垂直部16aの上端の両側から水平方向に延びる水平部16bを有し、顔部3の内部には、垂直部16aを固定する固定部18が設けられている。垂直部16aが固定部18に固定されると同時に、義眼載置部17に載置された義眼14が、水平部16bにより上から押さえられて、それぞれの義眼14が個別に着脱可能及び視線調整可能に、顔部3の内部に固定される。また、実施形態1においては、義眼押さえ部材16が義歯等15の固定も兼ねており、義歯等15に設けた孔を垂直部16aが貫通して、義歯等15もまた着脱可能に顔部3の内部に固定される。このようにして、例えば小さい人形頭部1内の限られた空間内であっても、義眼14及び義歯等15を着脱可能及び調整可能に顔部3の内部に固定することができる。垂直部16aと水平部16bとは着脱可能であってもよく、必要に応じていずれか一方のみを用いてもよい(例えば、義歯等15を、垂直部16aを用いて固定する場合等)。顔部3の内部に義眼押さえ部材16を固定する方法は特に制限されず、所望の位置に固定部18を設けることが出来るが、図2〜4に示すように、顔部3のスリット5の内側に固定部18を設ければ、スリット5の可撓性を義眼押さえ部材16の固定にも利用することができ、義眼の着脱を行うことができるため都合がよい。他の内部部材を顔部3の内部に固定する際にも、同様にスリット5の可撓性を利用することができる。
【0043】
図5等に示す後頭部4に様々な髪型を施した例を図6に示す。人形頭部1が人を模した外観を有する場合には、後頭部外縁21を、ちょうど人の毛髪の生え際を模した線を描いて形成することができる。これにより、例えば、結い上げる日本髪、ツインテイル、刈り上げ、ベリーショート、ショートボブ等、人形頭部1を後方側から見て生え際が露出する髪型を再現しようとする場合であっても美観上の問題が生じず、また、首部23を広く露出することもできる。このように様々な髪型が施せる人形頭部1は、カット用マネキンとしての利用にも好適であり、この場合、後頭部4のみを交換し、顔部3を繰り返し利用することが可能である。
【0044】
後頭部4には、造型による髪型表現の他、必要に応じ、当業者に公知の手法を用いて毛髪様材料22を付着することができる。例えば、予め連結状の束とした、すだれ形状の毛髪様繊維を貼り付ける手法や、直接、特殊ミシンで垂直に毛髪様繊維を植え込む手法、布材のファーを面で貼り付ける等の方法を用いることができる。ここで、後頭部4の表面全てに万遍なく微細に毛髪様材料22を付着させることは非常に困難であり、一般に、実際の人体の毛穴よりもはるかに少ない数の孔や溝に、まとめて毛髪様材料22の束が設置されるため、人形の後頭部4は表面が部分的に露出するという美観上の問題が生じる。この問題に対処する方法として、後頭部表面が露出しても目立たないよう、毛髪様材料22と同系色に後頭部4の表面を着色する場合がある。本発明の人形頭部1において、後頭部外縁21は人の毛髪の生え際を模した線を描いて形成することが可能であるため、このように後頭部4を着色する場合にも、部分的な塗り分けの手間を省くことができ、都合がよい。また、後頭部4自体を所望の毛髪の色に合わせた単一の色に予め成形することも可能であり、都合がよい。
【0045】
次に、図7および図8に示す、人形頭部1の人形胴体2への固定を説明する。人形頭部1の人形胴体2への固定は、膨出部24と、これを回転自在に受けるよう形成された受部9により行われる。人形頭部1は、顔部3と後頭部4とが膨出部24を抱持するように接合して、受部9を有する人形頭部1として人形胴体2の首部23に固定される。ここで、スリット5が受部9と連続して形成されていると(図2等も参照)、スリット5が後述の実施形態5及び10に記載の首側スリット29の役割も兼ね、その可撓性を膨出部24の抱持にも利用することができる。後述の図10に示すように、後頭部4と人形胴体2とを連結部材28で連結した状態で顔部3を着脱する際の、連結部材28や後頭部側連結具26等を通すための通路として、又は顔部3と人形胴体2とを連結部材28で連結した状態で後頭部4を着脱する際の、連結部材28や顔部側連結具25等を通すための通路として、スリット5を利用することも出来る。また、人形頭部1の顎、耳後方、襟足等のフォルムが、膨出部24の最も膨出した赤道面を超えるよう形成されるため、人体と同様のフォルムを不自然な凹凸が生じることなく模すことができ、美観にも優れる。
【0046】
例えば特許文献2に図示されるように、従来の着脱可能な頭部を有する人形頭部において、人形頭部の後半頭部(後頭部)に固定孔を設け、人形胴体上端に設けた円筒状の凹凸を有する固定片を差し込む構造を採用するものがあった。しかし、この構造では、固定片に設けた凹凸に沿って人形頭部が可動するために人形頭部が水平方向にしか動かず、上下(前後)、左右又は斜め方向に人形頭部を可動(揺動)させた場合には首と人形頭部との間に隙間が生じてしまう、多様な姿勢に対応できない、首部から人形頭部が簡単に外れてしまう等の問題があった。一方、本発明の人形頭部1は、首部23に対して上下方向(図7a、c)、左右方向(図7f)及び斜め方向(図7d)のいずれにも自在に可動し、美観を損なわずに多様な姿勢をとることが可能である。
【0047】
膨出部24及び受部9の形状は、人形頭部1が首部23の上部で自由に可動するよう固定される限り制限されない。首部23の上部を膨出部24とした態様においては、人形頭部1を可動させた場合に膨出部24の一部が露出するため、膨出部24と首部23とを一体化して形成することが美観上好ましい。人形胴体2の、首部23より下側の構造は特に制限されず、例えば、首部23を、人形胴体2と分割して形成し、首部23自体を人形胴体2に対して可動するよう形成することもできる。また、図9に示すように、人形胴体2において、首部23と独立して設けた胸部30を胸部前側30aと胸部後側30bとに分割し、胸部嵌合凹部31と胸部嵌合凸部32との嵌合によって胸部前側30aと胸部後側30bとが接合するよう形成することで、胸部30を交換可能及び可動可能とすることもできる。
【0048】
図10は、人形頭部1を有する人形胴体2において、顔部3を人形胴体2と連結させた状態での後頭部4の着脱(a)及び後頭部4を人形胴体2と連結させた状態での顔部3の着脱(b)を示す。図10に示すように、膨出部24の最も膨出した赤道面を超えるように受部9が形成されることで、受部9が膨出部24を抱持し、人形頭部1が安定して人形胴体2に固定される。図10においては連結部材28を用いているが、連結部材28がなくとも、膨出部24の最も膨出した赤道面を超えるように受部9が形成されることで、顔部3のみと人形胴体2との固定、着脱及び可動を容易に安定して行うことができる。例えば、顔部3と後頭部4のうち、後頭部4側の受部9の面積を増やす等、受部9、膨出部24、顔部3及び後頭部4の構成によっては、後頭部4のみと人形胴体2との固定、着脱、可動を容易に安定して行うことが可能な形態とすることもできる。
【0049】
上述の通り、膨出部24と回転受部9とで、人形頭部1は人形胴体2に安定して固定されるが、この固定をさらに安定させる目的、また、顔部3又は後頭部4のどちらか一方のみを、より容易に着脱可能とする目的で、連結具25〜27(顔部側連結具25、後頭部部側連結具26及び胴体側連結具27)及び連結部材28を利用することができる。すなわち、顔部3に設けた顔部側連結具25又は後頭部4に設けた後頭部側連結具26と、人形胴体2に設けた胴体連結具27とを、連結部材28で連結することで、人形頭部1と人形胴体2とのより安定した固定を提供可能である。
【0050】
連結部材28として用いる部材は特に制限されないが、好ましくは弾性部材であり、簡便にはゴムや引きバネ等を用いることができる。連結部材として弾性部材を用いることで、弾性部材の伸びを利用して顏部3又は後頭部4の着脱が容易となり、また、弾性部材の反発力を利用して人形頭部1と人形胴体2とが付勢しながら密着するため、不自然な隙間が生じることを防ぐことができ、美観上好ましい。また、付勢により発生する摩擦力によって人形頭部1の人形胴体2に対する姿勢の固定も容易に行うことができる。
【0051】
連結具25〜27は、人形頭部1又は人形胴体2の内部形状、材質、連結部材28の材質等に応じて、適切な形状、材質、大きさのものを、適切な位置に取り付けることができる。例えば、形状としては、フック状、リング状、T字状等が挙げられ、これらを個別に作成して固定してもよいし(ネジ止め、孔や溝を設けてフックを引っ掛ける等の手法)、顔部3、後頭部4又は人形胴体2の一部が連結具25、26又は27の形状となるよう形成してもよい。また取り付ける位置としては、例えば、顔部側連結具25及び後頭部部側連結具26を、顔部3及び後頭部4の内部の、嵌合凸部7に取り付けてもよいし、その他の取り付け位置を設けてもよい。例えば、スリット5の可撓性を利用して取り付け位置を設けてよい。人形胴体2においては、首部23に胴体側連結具27を設けてもよいし、人形胴体2の内部に胴体側連結具27を取り付けてもよい。このような場合、首部23をその内部が空間を有するよう形成し、連結部材28が首部23を貫通することが可能である。
【0052】
連結具25〜27は、人形頭部1と人形胴体2に、それぞれ少なくとも1つ設ければ、これらを連結部材28で連結することが可能であるが、人形頭部1側に、顔部側連結具25と後頭部側連結具26の2つの連結具を設け、いずれかを選択して胴体側連結具27と連結することにより、顔部3又は後頭部4の選択的な着脱が容易になる。また、顔部3と後頭部4のうち、着脱を意図しない側が転落して傷つく心配もない。
【0053】
例えば、顔部側連結具25と胴体側連結具27とを連結部材28で連結した場合、人形胴体2と連結しない後頭部4を一工程で容易に着脱することができるため、髪型を頻繁に変える場合や、顔部3の内部部材の着脱、調整時等に好都合である。また、顔部3にメイクを施す際に、後頭部4の毛髪様材料22が邪魔にならないよう後頭部4を外し、顏部3のみを人形胴体2に安定して固定したままメイクを施すこともできる。
【0054】
一方、後頭部側連結具26と胴体側連結具27とを連結部材28で連結した場合、人形胴体2と連結しない顔部3を一工程で容易に着脱することができるため、顔を頻繁に変えたい場合等に好都合である。また、後頭部4の髪型を整える際、顏部3の汚損等を回避するため顔部3を外し、後頭部4のみ人形胴体2に安定して固定したまま髪型を整えることができる。これにより人形全体に対する髪型のバランスを確認しつつ作業を行うことができ、また、毛髪様材料22の絡まりを避けることもでき、作業効率も向上する。
【0055】
以上の実施形態によれば、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合する人形頭部1であって、前記顔部3及び後頭部4のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部7と、その他方の内部に形成された嵌合凹部6と、前記顔部3及び後頭部4のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリット5と、を有し、前記嵌合凸部7及び嵌合凹部6のいずれか一方は、前記スリット5を挟んだ両側に分割して形成され、前記嵌合凸部7と嵌合凹部6が嵌合することによって、前記顔部3と後頭部4が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部1が提供される。該人形頭部1においては、接着材等の特別な材料や、ネジ止め等の特別な加工を施すことなく、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となる。
【0056】
また、前記の人形頭部1において、嵌合凸部7が後頭部4の内部に形成され、スリット5が顔部3の内部に形成され、嵌合凹部6が、スリット5の内部に形成されることを特徴とする、人形頭部1も提供される。該人形頭部1においては、嵌合凹部6がスリット5の内部に形成されるため、これらの嵌合凹部6及びスリット5の成形が容易である。
【0057】
また、前記の人形頭部1において、前記顔部3及び/又は後頭部4がその内部に内部部材を有することを特徴とする、前記の人形頭部1も提供される。該人形頭部1においては、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合しているため、その内部に内部部材(例えば、義眼14、義歯等15)を設けることが容易であり、また、これらを着脱可能とすること、位置の微調整を行うこと等が可能となる。
【0058】
また、前記の人形頭部1において、顔部3がその内部に、義眼14と、義眼14が載置される義眼載置部17と、垂直方向に延びる垂直部16aと当該垂直部16aの上端の両側から水平方向に延びる水平部16bを有し顔部3正面から見てT字状に形成され、義眼14を上から押さえる義眼押さえ部材16と、前記垂直部16aを固定する固定部18と、を有し、義眼載置部17に載置された義眼14が、義眼押さえ部材16の水平部16bにより上から押さえられることを特徴とする、人形頭部1も提供される。該人形頭部1においては、人形頭部1の内部のような狭い空間においても、左右の義眼14それぞれを視線調整可能に固定することができる。
【0059】
また、前記の人形頭部1において、後頭部外縁21が、人の毛髪の生え際の線を模して形成される、人形頭部1も提供される。該人形頭部1においては、後頭部外縁21が、人の毛髪の生え際の線を模して形成されるため、従来美観上の問題の回避が困難であった、襟足の露出する髪型を有する人形頭部1を提供することができる。また、顔部3と後頭部4との接合がより強固になり、さらには、顔部3と後頭部4の接合面8が広いため、前記顔部3の内部に内部構造を設ける場合や、この内部構造を着脱可能とし、調整する場合にも作業が行いやすい。
【0060】
また、以上の実施形態によれば、前記の人形頭部1と人形胴体2とを有する人形であって、人形頭部1及び人形胴体2のいずれか一方に、膨出部24が形成され、その他方に、膨出部24を回転自在に受ける受部9が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、顔部3及び後頭部4への過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となる。また、受部9が、膨出部24を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体2と人形頭部1との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部1を自在に可動させることができる。
【0061】
また、以上の実施形態によれば、受部9の少なくとも一部が、膨出部24の赤道面を超えるよう形成されることを特徴とする、前記の人形も提供される。該人形においては、受部9が膨出部24を抱持することにより、人形胴体2に対して人形頭部1が安定して固定される。また、顔部3又は後頭部4のいずれかと人形胴体2との固定、着脱及び可動もより容易に安定して行うことができる。
【0062】
また、以上の実施形態によれば、前記顔部3又は後頭部4と、前記人形胴体2とを連結する連結部材28を有する、前記の人形も提供される。該人形においては、顔部3又は後頭部4と人形胴体2との連結によって、人形頭部1の人形胴体2に対する固定がより安定したものとなる。また、顔部3又は後頭部4のいずれか一方(例えば、顔部3)を人形胴体2と連結させた状態で、他方(例えば、後頭部4)を着脱することができるため、顔部3又は後頭部4のうち所望の側を、より容易に着脱可能な人形が提供される。
【0063】
以下に、本発明の他の実施態様について説明する。
【0064】
図11は、実施形態2に係る人形頭部1における後頭部4と嵌合凸部7を示す斜視図である。実施形態2における顔部3は、実施形態1や後述の実施形態7のように、スリット5及びスリット5の内側に形成された嵌合凹部6を有する顔部3である。実施形態2に係る人形頭部1においては、顔部3と後頭部4とは独立して嵌合凸部7を用意する。顔部3及び後頭部4の内部には、それぞれ、その一端が開口したスリット5が形成され、該スリット5の内部に嵌合凹部6がそれぞれ形成される。嵌合凸部7は、これらの嵌合凹部6のそれぞれに対応するよう形成され、それぞれのスリット5が嵌合凸部7を挟み込むように、嵌合凸部7とそれぞれの嵌合凹部6とが嵌合することによって、顔部3と後頭部4とが着脱可能に接合して人形頭部1を形成する。このように、顔部3と後頭部4とは独立した嵌合凸部7を用いれば、嵌合凸部7が破損した場合にも、嵌合凸部7のみを交換すればよく、都合がよい。また、単一の嵌合凸部7を用いて、顔部3と後頭部4とを選択的に着脱、固定可能となる。
【0065】
嵌合凸部7の形状は、上記の嵌合が可能である形状であればよく、例えば図11に示すような球状とすれば、成型が容易であり、また、嵌合凸部7に連結部材等を介した力がかかる場合であっても嵌合凸部7が回転するため破損しにくい。また、顔部3と後頭部4のそれぞれの嵌合凹部6に対応する隆起線や溝線等の構造を設けた嵌合凸部7とすることで、より嵌合の強度を高め、一定方向への嵌合を行うこともできる。なお、実施形態1の手法に準じて、実施形態2の人形頭部1を、実施形態1の人形胴体2に固定し、実施形態2の人形を得ることができる。
【0066】
以上の実施形態によれば、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合する人形頭部1であって、嵌合凸部7と、顔部3及び後頭部4のそれぞれの内部に形成され、一端が開口したスリット5と、スリット5の内側に形成された嵌合凹部6と、を有し、嵌合凸部7と、顔部3及び後頭部4のそれぞれの嵌合凹部6とが嵌合することによって、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部1が提供される。該人形頭部1においては、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凸部7が破損した場合、嵌合凸部7のみを独立して交換することが可能である。
【0067】
また、以上の実施形態によれば、前記の人形頭部1と人形胴体2とを有する人形であって、人形頭部1及び人形胴体2のいずれか一方に、膨出部24が形成され、その他方に、膨出部24を回転自在に受ける受部9が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、顔部3及び後頭部4への過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凸部7が破損した場合、嵌合凸部7のみを独立して交換することが可能である。また、受部9が、膨出部24を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体2と人形頭部1との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部1を自在に可動させることができる。
【0068】
図12は、実施形態3に係る人形頭部1における顔部3及び後頭部4並びに嵌合凹部6を示す斜視図である。実施形態3に係る人形頭部1においては、顔部3と後頭部4とは独立して嵌合凹部6を用意する。嵌合凹部6は、一端が開口したスリット5の内側に形成される。顔部3及び後頭部4の内部には、それぞれ、嵌合凸部7が形成される。これらの嵌合凸部7のそれぞれに対応するようなそれぞれの嵌合凹部6は連続して形成され、それぞれのスリット5が嵌合凸部7を挟み込むように、それぞれの嵌合凸部7とそれぞれの嵌合凹部6とが嵌合することによって、顔部3と後頭部4とが着脱可能に接合して人形頭部1を形成する。このように、顔部3と後頭部4とは独立した嵌合凹部6を用いれば、嵌合凹部6が破損した場合にも、嵌合凹部6のみを交換すればよく、都合がよい。また、顔部3及び後頭部4を硬度の高い材料で成形する場合等にも都合がよい。なお、場合によっては図12に示した後頭部側連結具26を、顔部側連結具25として用いることもできる。
【0069】
嵌合凸部7及び嵌合凹部6の形状は、上記の嵌合が可能である形状であればよく、例えば図12に示すような球状と該球を受ける外殻状とすれば、成形が容易であり、また、嵌合凹部6に連結部材等を介した力がかかる場合であっても嵌合凹部6が揺動可能なため破損しにくい。なお、実施形態1の手法に準じて、実施形態3の人形頭部1を、実施形態1の人形胴体2に固定し、実施形態3の人形を得ることができる。
【0070】
以上の実施形態によれば、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合する人形頭部1であって、顔部3及び後頭部4の内部にそれぞれ形成された嵌合凸部7と、一端が開口したスリット5の内側に形成された嵌合凹部6と、を有し、顔部3及び後頭部4のそれぞれの嵌合凸部7と、嵌合凹部6とが嵌合することによって、顔部3と後頭部4が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部1が提供される。該人形頭部1においては、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凹部6が破損した場合、嵌合凹部6のみを独立して交換することが可能である。
【0071】
また、以上の実施形態によれば、前記の人形頭部1と人形胴体2とを有する人形であって、人形頭部1及び人形胴体2のいずれか一方に、膨出部24が形成され、その他方に、膨出部24を回転自在に受ける受部9が形成されることを特徴とする、人形が提供される。該人形においては、一端が開口したスリット5により与えられる可撓性によって、顔部3及び後頭部4への過度の負荷なく顔部3及び後頭部4が繰り返し着脱可能となり、また、嵌合凹部6が破損した場合、嵌合凹部6のみを独立して交換することが可能である。また、受部9が、膨出部24を回転自在に受けるよう形成されることにより、人形胴体2と人形頭部1との間に不自然な隙間等を生じることなく、上下左右任意の角度に人形頭部1を自在に可動させることができる。
【0072】
図13は、実施形態4に係る人形頭部1における顔部3と後頭部4を示す斜視図である。実施形態4においては、顔部3の内部にスリット5が形成され、スリット5を挟んだ両側に分割して嵌合凸部7が形成され、後頭部4の内部に嵌合凹部6が形成される。スリット5の可撓性を利用して、嵌合凹部6と嵌合凸部7とが嵌合すると、顔部3と後頭部4とが接合面8で接合し、人形頭部1を構成する。また、顔部側連結具25は、スリット5と交差するような独立したフックとして設けられており、顔部3への取り付けや破損時の交換も容易である。なお、実施形態4の顔部3を、実施形態2、3または5の後頭部4と組み合わせることも可能である。また、実施形態4の変形例として、後頭部4の内側にスリット5を有する嵌合凸部7を設け、顔部3の内側に嵌合凹部6を設けてもよい。さらに、実施形態1の手法に準じて、実施形態4の人形頭部1を、実施形態1の人形胴体2に固定し、実施形態4の人形を得ることができる。
【0073】
図14は、実施形態5に係る人形頭部1における顔部3と後頭部4を示す斜視図である。実施形態5においては、顔部3の内部に嵌合凸部7が形成され、後頭部4の内部にスリット5が形成され、スリット5を挟んだ両側に分割して嵌合凹部6が形成される。後頭部4のスリット5の可撓性を利用して、嵌合凹部6と嵌合凸部7とが嵌合すると、顔部3と後頭部4とが接合面8で接合し、人形頭部1を構成する。このように、スリット5が後頭部4の内部に設けられている場合、特に顔部3の破損を防ぎたい場合、顔部3を硬度の高い材料で成形する場合等に都合がよい。
【0074】
図14に示すように、顔部3は、好ましくは、首側スリット29を有する。首側スリット29を設けることにより、首側スリット29の可撓性を利用して、人形頭部1を人形胴体2に安定して固定することができる。また、後頭部4と人形胴体2とを連結部材28で連結する際に、連結部材28や後頭部側連結具26等を通すための通路として、又は顔部3と人形胴体2とを連結部材28で連結する際に、連結部材28や顔部側連結具25等を通すための通路として、首側スリット29を利用することも出来る。なお、顔部3にスリット5を有する実施形態においては、スリット5がこの首側スリット29の役割の一部又は全部を兼ねる。なお、実施形態1の手法に準じて、実施形態5の人形頭部1を、実施形態1の人形胴体2に固定し、実施形態5の人形を得ることができる。
【0075】
図15は、実施形態6に係る人形頭部1における後頭部4を示す斜視図である。実施形態5は実施形態1の変形例であり、後頭部4に設けられた嵌合凸部7が、後頭部4に対して横方向にスライドして着脱可能であり、例えば、嵌合凸部7に後頭部側連結具26を設けて下方向の力がかかる場合であっても、安定して後頭部4に固定される。このように、嵌合凹部6及び嵌合凸部7は、顔部3及び後頭部4とは別々に成形して結合してもよい。実施形態6においては、嵌合凸部7が破損した場合にも、嵌合凸部7のみを交換すればよい。また、単一の嵌合凸部7を用いて、顔部3と後頭部4とを選択的に着脱、固定可能となる。
【0076】
図16Aは、実施形態7に係る人形頭部1における顔部3を示す斜視図である。図16Bは、実施形態7に係る人形頭部1の他の態様における顔部3を示す分解斜視図である。実施形態7は実施形態1の変形例であり、顔部3の内部に設けられたスリット5及びスリット5の内部に形成された嵌合凹部6が、顏部3の内部に設置された棒状部材の先にある。また、顔部3の内部には内板はなく、義眼載置部17は、眼孔19に近接して形成されている。実施形態7からも明らかなように、顔部3又は後頭部4と、これらの内部に形成されるスリット5、嵌合凹部6又は嵌合凸部7とは、一体成形される必要はなく、それぞれを個別に成形し、接着やネジ止めによって顔部3や後頭部4の内部に固定することができる。従って、顔部3又は後頭部4を適切な材料(ソフトビニル等の比較的柔らかい材料でも硬い材料でもよい)で成形し、スリット5、嵌合凹部6又は嵌合凸部7を、嵌合に適した硬度を有する材料で成形し、これらを組み合わせることも可能である。また、実施形態7は、人形頭部1の内部空間をより広く確保することが可能であり、使用する材料の量が少なく、例えば中空成形によるマネキン頭部のような、比較的大きく軽さを要する人形頭部1の製造の際に特に好ましい。
【0077】
なお、図16Bにおいては、顔部3に設けられた嵌合凹部6(およびスリット5)が、顔部3から着脱可能なよう形成されているため、嵌合凹部6が破損した場合にも、嵌合凹部6のみを交換すればよい。また、図16Bに示すように、着脱可能な嵌合凹部6は、顔部側連結具25や、義眼押さえ部材16を固定可能なよう形成することも可能である。さらに、嵌合凹部6は、顔部3に対し、回転可能であっても角度維持可能であってもよい。図16Bに示した実施形態に準じて、他の実施形態においても、嵌合凹部6又は嵌合凸部7を、顔部3又は後頭部4に対して着脱可能なように形成することができる。
【0078】
図17は、実施形態8に係る人形頭部1の顔部3における顔部側連結具25及び後頭部4における後頭部側連結具26を示す斜視図である。実施形態8は、実施形態1の変形例である。図17に示すように、人形頭部1の内部において、連結具を取り付ける部位は適宜選択することが可能であり、例えば、顔部3の内部のスリット5と交差する溝を設けて、そこに取り外し可能な芯部材をはめ、これにS字フックをかけて顔部側連結具25としてもよいし、後頭部4の内部の棒状部材の先にリング状部材を設け、これにS字フックをかけて後頭部側連結具26としてもよい。
【0079】
図18は、実施形態9に係る人形頭部1における顔部3と、複数の後頭部4を示す斜視図である。図18に示すように、後頭部4を複数に分割して形成することもでき、また、これに伴って、嵌合凹部6及び嵌合凸部7をそれぞれ複数設けることができる。複数に分割して成形された後頭部4は、それぞれ形状、素材、毛髪様材料等が異なっていてもよい。例えば、ヘルメットや髪飾り等の頭部修飾物を、複数設けられた嵌合凹部6及び嵌合凸部7を利用して着脱可能に固定することもできる。なお、実施形態1の手法に準じて、実施形態9の人形頭部1を、実施形態1の人形胴体2に固定し、実施形態9の人形を得ることができる。
【0080】
図19は、実施形態10に係る人形頭部1における顔部3と後頭部4を示す斜視図であり、図20は、実施形態10に係る人形頭部1の、人形胴体2に対する可動を示す側面図(a)及び側面断面図(b)〜(d)である。図19及び20に示すように、人形頭部1と人形胴体2が接触する部分において、人形頭部1に膨出部24を形成し、人形胴体2に、前記膨出部24を回転(揺動)自在に受けるように受部9を形成してもよい。このような構成においても、図20に示すように、人形頭部1の人形胴体2に対する自由な可動は確保される。図19に示される顔部3は首側スリット29を有し、首側スリット29の可撓性も、人形頭部1の人形胴体2への固定に用いることができる。また、後頭部4と人形胴体2とを連結部材28で連結する際に、連結部材28や後頭部側連結具26等を通すための通路として、又は顔部3と人形胴体2とを連結部材28で連結する際に、連結部材28や顔頭部側連結具25等を通すための通路として、首側スリット29を利用することも出来る。なお、図19に示される顔部3の空洞は、義歯等15を入れるため、連結部材28を通すため、顔部3を型抜き成型する際に抜きやすくするため、等の目的で設けられている。
【0081】
図21は、参考例に係る人形頭部1の顔部3及び後頭部4を示す斜視図である。参考例は、実施形態1の人形頭部1において、嵌合凸部7及び嵌合凹部6のない構成である。参考例に示す人形頭部1では、頭部3と後頭部4との相互の固定は嵌合によってではなく、顔部3と後頭部4の外縁の形状(例えばヒトの毛髪の生え際の線を模した形状)の一致により行われるため、実施形態1の人形頭部と比較して強度が弱い。参考例の人形頭部1を実施形態1の人形胴体2に固定した人形においては、人形頭部1側の連結具と胴体側連結具27とが連結部材28(好ましくは弾性部材)により連結する。ここで、人形頭部1の内部における連結具の位置及び形状は適宜選択することが可能である。例えば、図21に示すように、顔部3の内部のスリット5と交差する溝を設け、該溝に取り外し可能な芯部材をはめ、この芯部材にS字フックをかけて顔部側連結具25としてもよいし、後頭部4の内部に設けたリング状部材にS字フックをかけて後頭部側連結具26としてもよい。後頭部側連結具26と胴体側連結具27とが連結部材28により連結している場合(連結部材28はスリット5を通る)、後頭部4を人形胴体2と連結させたまま、一端が開口しているスリット5を利用して顔部3を着脱可能である。また、人形頭部1を人形胴体2に対して回転自在とすることができる。例えば非常に小さい人形など、嵌合凸部7及び嵌合凹部6を人形頭部1の内部に形成することが困難で、人形胴体2に人形頭部1を固定することが前提とされている場合には、本発明の記載を参照して参考例の構成を採用することも可能である。
【0082】
なお、図に示した実施形態においては人間を模した人形を代表例として用いて説明したが、本発明に係る人形は、老若男女の別なく多様な形態の人形が含まれるのみならず、例えば動物の人形、擬人的に顔を付設した乗り物等の人形であってもよい。また、本発明の人形頭部は、その顔部及び後頭部が着脱可能であるから、人間以外の顔等に変身させた人形とすることも可能である。人形の寸法も需要者の好みに応じて適宜選択することが可能である。また、本発明の一態様によれば、美観に非常に優れる人形頭部及び人形が提供されるため、例えば本発明の人形頭部及び人形を、ディスプレイ用マネキン、ヘアカット練習用マネキン、メイク練習用マネキン等として使用することもできる。さらに、本発明の人形頭部及び人形の一部又は全体を、木材、磁器や石粉粘土による創作人形の内骨格又はアンドロイドやロボット等の内部構造として使用することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 人形頭部
2 人形胴体
3 顔部
4 後頭部
5 スリット
6 嵌合凹部
7 嵌合凸部
8 接合面
9 受部
10 顔面
11 顔部内板
12 上顔部
13 下顔部
14 義眼
15 義歯等
15a 義歯
15b 義歯押さえ部材
15c 舌
16 義眼押さえ部材
16a 垂直部
16b 水平部
17 義眼載置部
18 固定部
19 眼孔
20 口孔
21 後頭部外縁
22 毛髪様材料
23 首部
24 膨出部
25 顔部側連結具
26 後頭部側連結具
27 胴体側連結具
28 連結部材
29 首側スリット
30 胸部
30a 胸部前側
30b 胸部後側
31 胸部嵌合凹部
32 胸部嵌合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、
前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部と、
その他方の内部に形成された嵌合凹部と、
前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリットと、を有し、
前記嵌合凸部及び嵌合凹部のいずれか一方は、前記スリットを挟んだ両側に分割して形成され、
前記嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部。
【請求項2】
前記嵌合凸部が前記後頭部の内部に形成され、
前記スリットが前記顔部の内部に形成され、
前記嵌合凹部が、前記スリットの内部に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の人形頭部。
【請求項3】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、
嵌合凸部と、
前記顔部及び後頭部のそれぞれの内部に形成され、一端が開口したスリットと、
前記スリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、
前記嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部。
【請求項4】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部であって、
前記顔部及び後頭部の内部にそれぞれ形成された嵌合凸部と、
一端が開口したスリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、
前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凸部と、前記嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合することを特徴とする、人形頭部。
【請求項5】
前記顔部及び/又は後頭部がその内部に内部部材を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の人形頭部。
【請求項6】
前記顔部がその内部に、
義眼と、
前記義眼が載置される義眼載置部と、
垂直方向に延びる垂直部と、当該垂直部の上端の両側から水平方向に延びる水平部を有し、顔部正面から見てT字状に形成され、前記義眼を上から押さえる義眼押さえ部材と、
前記垂直部を固定する固定部と、を有し、
前記義眼載置部に載置された義眼が、前記義眼押さえ部材の水平部により上から押さえられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の人形頭部。
【請求項7】
前記後頭部の外縁が、人の毛髪の生え際の線を模して形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の人形頭部。
【請求項8】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、
前記人形頭部は、
前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成された嵌合凸部と、その他方の内部に形成された嵌合凹部と、前記顔部及び後頭部のいずれか一方の内部に形成され、一端が開口したスリットと、を有し、前記嵌合凸部及び嵌合凹部のいずれか一方は、前記スリットを挟んだ両側に分割して形成され、前記嵌合凸部と嵌合凹部が嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、
前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に、膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形。
【請求項9】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、
前記人形頭部は、
嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの内部に形成され、一端が開口したスリットと、前記スリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記嵌合凸部と、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、
前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に、膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形。
【請求項10】
顔部と後頭部が着脱可能に接合する人形頭部と、人形胴体とを有する人形であって、
前記人形頭部は、
前記顔部及び後頭部の内部にそれぞれ形成された嵌合凸部と、一端が開口したスリットの内側に形成された嵌合凹部と、を有し、前記顔部及び後頭部のそれぞれの嵌合凸部と、前記嵌合凹部とが嵌合することによって、前記顔部と後頭部が着脱可能に接合し、
前記人形頭部及び人形胴体のいずれか一方に、膨出部が形成され、その他方に、前記膨出部を回転自在に受ける受部が形成されることを特徴とする、人形。
【請求項11】
前記受部の少なくとも一部が、前記膨出部の赤道面を超えるよう形成されることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の人形。
【請求項12】
前記顔部又は後頭部と、前記人形胴体とを連結する連結部材を有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−183946(P2010−183946A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28244(P2009−28244)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(509039781)
【Fターム(参考)】