説明

顕微鏡の自動焦点合わせ方法及び装置

【課題】顕微鏡(11)の自動焦点合わせ方法又は装置において、急速でかつ正確な焦点合わせができるようにすることが本発明の課題である。
【解決手段】検出部(4)が対象物上に生成されたマーカー(12)の画像を取得し、 評価ユニット(7a)がマーカー(12)の間隔を測定し、コントロールユニット(7b)が測定されたマーカー間の間隔(d)の関数に基づいて作業面(9)が焦点面(10)に移動するような速度に焦点合わせ機構(6)を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の引用]
本出願は、2012年9月15日に出願された独国特許出願10 2011 082 756.0号のパリ条約に基づく優先権の利益を主張する。該出願の全開示が本願に引用によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、独立請求項の前置部に記載の顕微鏡(特に手術用の顕微鏡)の自動焦点合わせ方法及び自動焦点適合装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
公知の自動焦点適合装置は、対象物上に自動焦点パターンを生成する自動焦点適合ビームパスを生成するために、自動的に焦点を合わせる光学機構(autofocusing optic)を含み、自動焦点適合ビームパスは通常は偏向要素によって対象物にガイドされる。この種類の自動焦点適合装置は、偏向要素によって検出ビームパスが配向される自動焦点適合評価ユニットを更に含む。検出ビームパスは対象物から反射した自動焦点適合ビームパスの放射光を表す。
【0004】
DE41 31 737 C2号は、主対物レンズを有する実体(立体)顕微鏡の自動焦点適合装置を開示する。この自動焦点適合装置によれば、投射光学機構によって投射ビームパスが生成され、続いて、主対物レンズを通過した後に対象物の表面上にラインパターンが生成される。対象物から反射した投射ビームパスの光は、分離出射(coupled out、ないし光分割)されて、光感受性の、空間的に分離した位置にある検出部に配向される。焦点をはずす作業は、位置検出部上のラインパターン(直線状のマーキング)の画像の横方向へのシフトをもたらし、この横方向へのシフトは自動焦点適合評価ユニットを介して記録され、そして、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)の再焦点合わせのクローズドループコントロールシグナルとして使用される。後者は、使用した対物レンズによってインターセプトされた距離に基づいて調節し、光学軸に沿って実体顕微鏡全体を移動させる。
【0005】
DE10 2006 040 636 B3号は、DE 41 31 737 C2号に記載の配置(配設)に基づいて、個々にコントロール可能で調節可能なマイクロミラーを有するマイクロミラーアレイが焦点適合ビームパス及び投射ビームパスの偏向要素として、そして、検出ビームパスの偏向要素として共有される様式で提供される自動焦点適合装置を提供する。マイクロミラーアレイによって、焦点適合パターンを、その位置及び幾何学的配置の両方に関して変更することができ、そして、光の輝度に関しては、マイクロミラーをコントロールする対応アプリケーションによってコントロールされた様式で変更することができる。更に、顕微鏡において対象物に照明を当てるためにいずれかのケースで存在する照明光学機構を、焦点適合ビームパスを生成することに使用することができる。従って、マイクロミラーアレイは、2つの機能を持つことができる。1つ目の機能は対象物上に焦点適合パターンを生成するための焦点適合ビームパスを照明ビームパスから生成し、2つ目の機能は、検出ビームパスを分離出射して、焦点適合評価ユニットにガイドする。この文献は、マイクロミラーアレイにおけるマイクロミラーの適切な調節による2本のスポットビームの生成を記載する。スポットビームはマイクロミラーアレイから進み、顕微鏡の主対物レンズを通過して、それによって焦点が合わさる。2本のスポットビームの交差ポイントが対象物の上方又は下方に位置する場合には、2つのスポットが対象物上に視える。自動的に焦点を合わせるためには、たった1つのスポット(焦点からはずれている場合に見える2つのスポットのマージ)が対象物上で視認可能になるまで、固定された焦点距離の主対物レンズがシフトする。バリオ対物レンズ(vario objective:焦点距離が可変な対物レンズ)を用いた場合には、焦点距離がそれに従って調節される。このタイプの自動焦点適合方法や、記載された自動焦点適合装置を使用する他のタイプの自動焦点適合方法の詳細に関しては、前記特許文献DE10 2006 040 636 B3号が引照される。この引用によって、対応する開示を本出願の構成とすることが明示的に意図される。
【0006】
他の自動焦点適合装置がEP1 241 506 B1から知られている。この文献においては、データ保存(documentation)の目的で手術用顕微鏡に搭載される(ビデオ)カメラが、顕微鏡の正確な焦点位置を調節することに使用される。カメラは画像取得デバイス及びシグナル処理ユニットを含み、後者は、例えば、コントラスト法を使用して適切な焦点合わせを確認する。カメラにおけるインターフェイス及び顕微鏡における更なるインターフェイスによって、カメラによってクローズドループコントロールシグナルが生成されて、顕微鏡のコントロールユニットに焦点合わせのために転送され、該ユニットは、コントロールを、対物レンズの焦点距離を自動的に焦点が合わさるように変更する顕微鏡における対応位置調節ユニットに対して適用する。前記(ビデオ)カメラを除いて、別個筐体の測定モジュールはこのシステムにおいて使用されていない。
【0007】
自動的な焦点合わせは、EP1 255 146 B1号において類似の様式で実行される。該文献では顕微鏡の画像センサの画像内容物における変化を評価することによって2次元のヒストグラムが生成され、該ヒストグラムから特定の運動活動が導出される。焦点適合ユニットは、確認したデータに基づいて、最大の活性領域、すなわち、例えば、手術用の器具で検査される領域に焦点を合わせることができる。
【0008】
DE33 28 821 C2号は、少なくとも2つの交互にスイッチする光源(赤外線ダイオードなど)を有する顕微鏡の自動焦点適合装置を開示しており、各光源は顕微鏡の瞳の近くに互いに隣り合うように配設される。光源(複数)から進むビームは顕微鏡のビームパスに向かって反射する。該光源は、特に、透明帯と反射帯とから構成されたグリッドを示すマークを照射する。このマークは、それ自身にオートコリメーションで画像化される。対象物が顕微鏡の焦点に位置する場合には、対象物に向かって進むビームは、マークの透明帯を通過し、戻り経路においてマークの同一領域を再び進行する。しかしながら、対象物に焦点が合っていない場合には、ビームはマークの透明帯を通過して進み、対象物での反射の際に横方向へのオフセットを経験し、透明帯の上方又は下方に配設された反射帯に到着する(焦点がはずれた時の+、−のサインに依存する)。反射帯が透明帯に対して互いに隣接的に特定の角度で配設される場合にも、焦点はずれのサインを確認することができる。
【0009】
最後に、自動焦点適合装置は「SpeedSpot」とも称され、2つのスポットの形状(ないし斑点状)のマーカー(対象物平面の焦点位置が適切な時には1つのスポットにマージする)を対象物上に生成する2本のレーザービームを用いて作動し、ライカ モデルM720 OH5手術用の顕微鏡から知られている。顧客は、自動焦点合わせのために固定された焦点合わせの速度を選択する。対象物平面を焦点面により近づけることによって、間隔を空けて離れた複数のレーザースポットを1つのスポットにマージさせることで焦点合わせがおきる。最適な焦点面と対象物平面との間に大きなずれがあれば、ユーザは、最適な焦点面に対象物平面をより近づけることが、通常、非常に無駄な時間を要する作業であることに気づくだろう。高倍率では、逆に、固定の焦点合わせ速度が早すぎて、焦点面の領域を通り過ぎてしまうことが生じ得る。高倍率では被写界深度が浅いので、レーザードットのマージの検出は、特にユーザによる場合には、しばしば困難を伴ってのみ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許DE 41 31 737 C2号
【特許文献2】独国特許DE 10 2006 040 636 B3号
【特許文献3】欧州特許EP 1 241 506 B1号(特開2002−311331号)
【特許文献4】欧州特許EP 1 255 146 B1号(特開2002−318344号)
【特許文献5】独国特許DE 33 28 821 C2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下の分析は本願発明者らによってなされたものである。
【0012】
特に、スポット形状(ないし斑点状)のマーカーの使用に基づいて、設定された顕微鏡の倍率とは無関係に単純で正確でそして急速な自動焦点合わせが可能な改善された自動焦点合わせ方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の視点によれば、顕微鏡において自動的に焦点を合わせる方法であって、少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカーが対象物上に生成され;当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡の焦点面から対象物における作業面までの焦点ずれに関する指標を表し;各マーカーが予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面が焦点面に位置し;マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)が作業面を焦点面まで移動させ;焦点合わせ機構が作業面を焦点面まで移動させる速度(v)が、マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて調節されることを特徴とする方法が提供される。
【0014】
また、顕微鏡において自動的に焦点を合わせる自動焦点適合装置であって、少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカーが対象物上に生成され;当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡の焦点面から対象物における作業面までの焦点ずれに関する指標を表し;各マーカーが予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面が焦点面に位置し;マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)が作業面を焦点面まで移動させ;検出部が対象物上に生成されたマーカーの画像を取得して、マーカー間の間隔を評価ユニットが測定し;コントロールユニットが、測定されたマーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、作業面が焦点面まで移動するように焦点合わせ機構の速度を調節することを特徴とする自動焦点適合装置も提供される。
【0015】
本願の特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるための補助であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動的に焦点を合わせる方法における改善であって、特に、スポットの形状(ないし斑点状)マーカーの使用に基づいて、設定された顕微鏡の倍率とは無関係に単純で正確でそして急速な自動焦点合わせが可能であるという有利な効果が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実体(立体)顕微鏡に搭載される本発明に係る一自動焦点適合装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、好ましい一実施形態におけるマーカー間隔と焦点合わせ速度との間の比例的な相関関係を模式的に示す図である。
【図3】図3は、図1の顕微鏡において主ビームパス(光路)が通過する横断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の文脈において生起する目的は、特に、スポットの形状(ないし斑点状)のマーカーの使用に基づいて、設定される顕微鏡の倍率とは無関係に単純で正確でそして急速な自動焦点合わせが可能な改善された自動焦点合わせ方法を提供することである。
【0019】
前記目的は、顕微鏡において自動的に焦点を合わせる方法であって、少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカーが対象物上に生成され;当該マーカー間の相互の間隔が顕微鏡の焦点面から対象物における作業面までの焦点ずれに関する指標を表し;各マーカーが予め定義された間隔dFである場合には前記作業面が焦点面に位置し;マーカー間の間隔の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)が作業面を焦点面まで移動させ;焦点合わせ機構の速度、すなわち、作業面を焦点面まで移動させる速度が、マーカー間の間隔の関数に基づいて調節されることを特徴とする方法によって達成される。
【0020】
本発明の主題は、さらに前記方法を実行する対応する自動焦点適合装置を提供することであり、当該自動焦点適合装置は、対象物上に生成されたマーカーの画像を取得する検出部と、マーカー(間)の間隔を測定する評価ユニットとを含み、更に、測定されたマーカー間隔の関数として焦点合わせ機構の速度を調節するコントロールユニットが備えられる。
【0021】
以下では、マーカーの顕微鏡画像の中でマーカー間隔が測定される場合が考察されているが、その普遍性を限定するものではない。
【0022】
本発明は、2つのマーカーを使用することに限定されない。2つを上回るマーカーも、もちろん使用することができる。その際には、マーカーの間隔が適切に定義される必要がある。本発明によれば、その場合には各2つのマーカーの間隔を焦点合わせ機構の速度を調節することに利用することができる。あるいは、焦点合わせ機構が調節されるときの関数として、各2つのマーカーの間隔(複数)から更なる基準変数(例えば、平均間隔、間隔の合計、又は同様のもの)を生成する又は定義するケースにおいても利用可能であるだろう。
【0023】
本発明の更なる利点及び実施形態は、それぞれの従属請求項、以下の記載、そして添付図面からも明白である。
【0024】
例えば、本出願は、以下の好ましい実施形態を提供する。
(形態1)
顕微鏡において自動的に焦点を合わせる方法であって、少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカーが対象物上に生成され;当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡の焦点面から対象物における作業面までの焦点ずれに関する指標を表し;各マーカーが予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面が焦点面に位置し;マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)が作業面を焦点面まで移動させ;焦点合わせ機構が作業面を焦点面まで移動させる速度(v)が、マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて調節されることを特徴とする方法。
(形態2)
顕微鏡において自動的に焦点を合わせる自動焦点適合装置であって、少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカーが対象物上に生成され;当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡の焦点面から対象物における作業面までの焦点ずれに関する指標を表し;各マーカーが予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面が焦点面に位置し;マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)が作業面を焦点面まで移動させ;検出部が対象物上に生成されたマーカーの画像を取得して、マーカーの間隔を評価ユニットが測定し;コントロールユニットが、測定されたマーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、作業面が焦点面まで移動するように焦点合わせ機構の速度を調節することを特徴とする自動焦点適合装置。
【0025】
上述の実施形態において、好ましくは、焦点合わせ機構の速度(v)は、マーカー間の間隔(d)の多項式関数(特に、2次関数)又は指数関数で表される。
好ましくは、マーカーは、顕微鏡の光路(ビームパス)に入射結合(カップル)されるオートフォーカスビームパスによって生成される。
好ましくは、マーカーは、点光源によって生成されたオートフォーカスビームパスによって生成され、点光源は、顕微鏡のビームパスに配設される。
好ましくは、顕微鏡が対物レンズと下流ズームシステムとを有し、オートフォーカスビームパスの入射結合(インカップリング)、又は、点光源の配設が、対物レンズとズームシステムとの間で行われる。
好ましくは、顕微鏡が対物レンズと下流ズームシステムとを有し、対象物から反射した対応オートフォーカスビームパスを顕微鏡のビームパスの外へ分離出射(アウトカップリング)した後に、対象物に位置したマーカーの画像を検出部によって取得する。
好ましくは、反射したオートフォーカスビームパスの分離出射が、顕微鏡の対物レンズから観た場合に、ズームシステムの背後で実行される。
好ましくは、実体顕微鏡の文脈において、反射したオートフォーカスビームパスの分離出射が、実体顕微鏡の2本の観察ビームパスの内の1本からのみに実行される。
好ましくは、各々異なる波長を有するオートフォーカスビームパスがマーカーの生成に使用される。好ましくは、波長が、可視波長領域から導出される。
好ましくは、顕微鏡の光学軸に沿って進行するターゲットビームパスが使用され、当該ビームパスによって、特にスポットの形状(ないし斑点状)のターゲットマーカーが対象物上に生成される。
好ましくは、ターゲットマーカーが、対象物上に生成される少なくとも2つのマーカーの1つとして使用される。
好ましくは、対象物上に生成される少なくとも2つのマーカーに加えて、ターゲットマーカーが更に使用される。
好ましくは、顕微鏡の倍率(Γ)が決定され、顕微鏡倍率(Γ)の関数に基づいて、焦点合わせ機構の速度(v)が追加的に調節される。
好ましくは、焦点合わせ機構の速度(v)が、d’=d/Γ(当該式において、d=マーカー間の間隔であり、そして、Γ=顕微鏡の倍率、特にズーム倍率である)となるように、修正したマーカー間の間隔(d’)の関数に基づいて調節される。
好ましくは、顕微鏡の倍率が、一定の焦点合わせ機構の速度におけるマーカー間の間隔(d)の変化の割合(rate of change)から確認される。好ましくは、少なくとも1ケの点光源が、対象物上に少なくとも1つのマーカーを生成する関連するオートフォーカスビームパスを生成するために備えられる。
好ましくは、1ケの点光源、及び、2つ以上のビームスプリッターが、対象物に2つ以上のマーカーを生成するために備えられる。
好ましくは、点光源(複数)が、顕微鏡のビームパスに配設される。
好ましくは、顕微鏡が対物レンズと下流ズームシステムとを有する場合において、点光源が、対物レンズとズームシステムとの間に配設される。
好ましくは、顕微鏡が対物レンズと下流ズームシステムとを有する場合において、対象物から反射した対応オートフォーカスビームパスを顕微鏡のビームパスの外へ分離出射した後に、対象物に位置したマーカーの画像を検出部によって取得し、特に、顕微鏡の対物レンズから観た場合のズームシステムの背後に、ビームスプリッターがアウトカップリングのために備えられる。
好ましくは、反射したオートフォーカスビームパス(複数)をアウトカップリングするためのビームスプリッターが、実体顕微鏡の2本の観察ビームパスの内の1本のみに配設される。
【0026】
本発明によれば、対象物上に位置したマーカーの間隔の関数として、焦点合わせ機構が作業面を焦点面へと移動させる速度は、自動的に焦点を合わせるために、調節される。本発明の普遍性を限定するものではないが、説明の簡素化のために、以下の説明では、作業面が焦点面に位置するときの予め定義されるマーカーの間隔dFはゼロに等しいものとする。(すなわち、作業面に対して適切に焦点が合わさり、マーカーが互いにマージするか一致するものとする。)
【0027】
焦点合わせ機構の速度(「焦点合わせ速度」とも称される)は、マーカーの間隔に比例してコントロールされる。言い換えれば、マーカーの間隔が小さいほど、ゆっくりな焦点合わせの速度(焦点合わせ機構の速度)が選択される。逆に、マーカーが互いにより離れていれば、より大きな焦点合わせ機構の速度(焦点合わせ速度)が選択される。更なる説明として、対象物上に正確に2つのマーカーが生成されることが想定されるが、本発明の普遍性を限定するものではない。焦点合わせの際に、2つのマーカーは互いに向かって移動し、焦点面に到着したときにマージする。後に記載する特別なケースにおいて、2つのマーカーが使用され、その内1つはいわゆる光学軸に沿った対応ビームパスによって生成されるターゲットマーカーである。ターゲットマーカーは焦点合わせ操作の間も不動のままであるが、更なる(もう1つの)マーカーは前記ターゲットマーカーに向かって移動する。
【0028】
焦点合わせ機構の速度がマーカー間隔に比例して調節されるので、焦点からの間隔が大きいときには焦点合わせの速度はより大きく、対応する焦点調節についてユーザはもはや時間がかかると思わない。逆に、焦点からの間隔が小さいときには焦点合わせの速度はより低いので、特に、マーカーがすばやく互いに向かって移動する高倍率の顕微鏡では、対応する速度の「絞り(throttling)」(すなわち、減速)が生じる。以下に更に個別に説明されるように、顕微鏡の倍率は更なるパラメータとして焦点合わせの速度のコントロールシステムに組み込むこともできる。
【0029】
焦点合わせ機構の速度と、マーカー間隔との間の比例した相関関係が、多項式関数又は指数関数によって表すことができれば、有利になることが証明されている。2次関数又は指数関数は特に有利である。
【0030】
多項式関数は、以下の公式で表すことができる。

上記式において、vは焦点合わせの速度を示し、dはマーカーの間隔を示す。k〜kは、x番目のオーダーの多項式関数の係数を意味する。実際には、4次の関数で十分であり;2次関数(2次の多項式関数)は有利である。
【0031】
指数関数は以下の形式を有する。

上記式においてk及びkは指数関数の係数である。
【0032】
対象物上にマーカーを生成するために、対応オートフォーカスビームパスは顕微鏡のビームパスにカップル(入射結合)される。対応オートフォーカスビームパスの生成に関しては、1つ以上の点光源を使用することが有利である。「点光源」は、LEDやレーザービームソースなどの点状の光源として理解され、特に、高度に平行性の照射を示す。レーザーダイオードを使用することが特に好ましい。レーザーダイオードの照射は、対象物上のマーカーを生成するための自動焦点適合ビームパスとしての役割を果たすことができる。このためには、自動焦点適合ビームパスは、ビームスプリッターを介して顕微鏡のビームパスにカップルされる。しかしながら、その代わりに、2つ(または2つ以上)の点光源も顕微鏡のビームパスに直接的に配設することができる。この点において、2つの光源が顕微鏡のビームパスの最も外側の端に、特に、対物レンズの観察瞳の外側に配設されれば有利である。
【0033】
現代の顕微鏡、特に手術用の顕微鏡は、顕微鏡の対物レンズの背後に配設されるズームシステムを含む。実体顕微鏡は、各観察チャンネルについて個別のズームシステムを含み、2つのチャンネルを同一の倍率にするという効果を奏する。そのような顕微鏡は、対物レンズとズームシステムとの間のビームスプリッターを介して、又は実体顕微鏡のケースの中のズームシステムを介してオートフォーカスビームパスのインカップリング(入射結合)を実行することに有利である。同様に、点光源が顕微鏡のビームパスに配設される場合には、光源は対物レンズとズームシステム(単数又は複数)との間に配設される。そのような配置の結果として、検出部が(その一部分に関して)ズームシステムの背後に配設される場合には、マーカーの画像は対応して拡大されるが、対象物上のマーカーの直径は設定されたズーム倍率とは無関係に同様のままである。
【0034】
対物レンズとズームシステム(単数又は複数)との間に点光源を配設すること、又は対物レンズとズームシステム(単数又は複数)との間でオートフォーカスビームパスをインカップリングすることの更なる本質的な利点は、2本のオートフォーカスビームパスを活性横断面(「観察瞳」とも称する)の外部でインカップルすることができることである。この構成については、例示の実施形態に関する以下の記載において再び述べる。
【0035】
一般的には、使用されるズームシステムは、無限遠(infinity)に結像する対物レンズの背後に配設された無焦点(アフォーカル)ズームシステムである。そのようなケースにおいて、オートフォーカスビームパスは、顕微鏡の光学軸と並行な顕微鏡のビームパス中に延在する。再度述べるが、観察瞳の外におけるオートフォーカスビームパス(レーザーダイオードが使用される場合にはレーザービームパス)のインカップリング又は生成は有利である。異なるタイプの対物レンズが使用される場合には、マーカーが焦点面においてマージするように、複数のオートフォーカスビームパス(レーザーダイオードが使用される場合にはレーザービームパス)は対応して集束的又は発散的に配設される。原則的には、光学軸に対する相対的なオートフォーカスビームパス(複数)の正確な配置調節(アライメント)は、必要不可欠な重要性のものではないが、ただし、生成されるマーカーは、焦点面において、予め定義されたユニーク又は正確な相互間隔dFを有し、その間隔はゼロに等しくなくても良い。
【0036】
ズームシステムは、通常、ズームファクタ6(zoom factor of 6)(最大対最小のズーム倍率)を有する手術用の顕微鏡検査において使用され、通常使用される対物レンズはマルチフォーカス対物レンズであるか、又はいわゆるバリオ対物レンズ(vario objectives)であり、典型的には20cm〜50cmの焦点距離に調節可能である。
【0037】
顕微鏡対物レンズを通過して進行するオートフォーカスビームパスは、対象物上の対応するマーカーを生成する。対象物から反射したマーカーの放射光線は、本願において簡素化のために「対象物から反射したオートフォーカスビームパス」とも称され、顕微鏡の観察ビームパス(単数又は複数)を通過して延在する。マーカーの画像を対応するビームスプリッターによって顕微鏡の観察ビームパスの外部にカップルすることも有用である。ズームシステムが存在する時には、ズームシステムの背後(対物レンズから見て)でアウトカップリング(分離出射)を実行することは有利である。ビームスプリッターは、検出部(カメラ)へ向かってアウトカップル化されたビームパスをガイドし、検出部(カメラ)の光感受性のセンサ表面においてマーカー画像が生成される。マーカーの間隔を測定することに関しては、モノスコープのマーカー画像の画像処理で全く十分であるので、実体顕微鏡の場合には、実体顕微鏡の2つの観察ビームパスの内の1つのみの外部に対して、反射したオートフォーカスビームパスのアウトカップリングを実行することが有用である。
【0038】
特に、例えば、手術用の顕微鏡の操作者としての医師が手動で自動的に焦点を合わせるときには、異なる波長の対応オートフォーカスビームパスを使用してマーカーを生成し、その波長が可視波長領域にあることが有用である。この様式は、その際にはマーカーの色が「スイッチ」するので、焦点面の通過を検出することも容易になる。従って、焦点を合わせる方向は容易にモニタされる。
【0039】
自動的に焦点を合わせる場合には、逆に、ヒトの眼では見えないマーカー、すなわち、特に赤外線波長領域のマーカーを使用することが有用である。オートフォーカスビームパスをインカップルすること及びアウトカップルすることに使用されるビームスプリッター、そしてマーカー画像を取得する検出部が、使用される焦点適合ビームパスの波長ごとに設定されることについても、もちろん注意しなければならない。
【0040】
上記の実施形態によれば、顕微鏡の光学軸に沿って進行するターゲットビームパスによって対象物上に生成されたターゲットマーカーを使用することができる。そのようなターゲットマーカーの利点は、焦点の集まり先(destination)、すなわち焦点が合さりつつあるときのターゲットマーカーの周辺領域が表示されることである。このことは、隆起及び窪みを有する3次元の対象物構造には有利である。医師又は顕微鏡の他の操作者が、焦点を合わせようとする対象物領域を視認することができるように、視認可能なターゲットマーカーを使用することは、この構成においても有利である。ターゲットマーカーは、上述のように自動的に焦点を合わせるために使用される対象物上に生成した(少なくとも)2つのマーカーに加えて、更に使用することができる。
【0041】
あるいは、ターゲットマーカーは、マーカー間隔の関数に基づいて自動的に焦点を合わせるために使用されるマーカーの1つと置き換えることもできる。このケースでは、1つのマーカーが静止したターゲットマーカーに接近し、焦点面に到着した時に2つのマーカーが互いにマージする。(ただし、これに限定されない。すなわち、本発明の普遍性を限定するものではない。)
【0042】
手動で自動的に焦点を合わせるシステムの使用に関して、異なる波長(例えば、赤及び緑のマーカー)を使用する場合には、視認可能なマーカーを生成する可視焦点適合ビームを使用することは特に有利である。このケースにおいて、顕微鏡の操作者は、焦点を合わせようとしている対象物領域を同時に観察するので、ターゲットマーカーは絶対的に必要ではない。自動的に焦点を合わせるケースにおいて、一方では、視認不可能なマーカーの使用(特に赤外線波長領域のもの)が特に好ましい。このケースの焦点適合マーカーは、顕微鏡操作者による対象物領域の光学的な検査には影響を及ぼさない。しかしながら、顕微鏡の操作者(医師)が、焦点を合わせようとしている対象物領域を検出することができ、そして適用可能な対象物領域を活発に変更することができるように、このケースにおいて視認可能なターゲットマーカーを使用することも有用である。
【0043】
上記のマーカーについてなされた記載は、特に、ターゲットマーカーの生成について、対応するターゲットビームパスのインカップリングと、ターゲットビームパスを生成するための点光源の配置及び使用とに関して、適用することもできる。
【0044】
上述のように、顕微鏡の倍率の関数に基づいて追加的に焦点合わせ機構の速度を調節することも有用である。顕微鏡が高倍率であれば、顕微鏡が低倍率であるときよりも作業面が焦点面に接近する際に、マーカーが互いにアプローチする速度は非常に大きい。しかしながら、作業面と焦点面との間の予め定義された距離に関して、顕微鏡が高倍率であれば顕微鏡が低倍率のときよりもセンサ/検出部上での2つのマーカーポイントの間隔もより大きい。しかしながら、両方のケースにおいて、焦点面と現在の作業面との間の距離が同一であれば、焦点合わせの速度は同一の値を有するべきである。従って、顕微鏡の倍率のパラメータに依存して、追加的に焦点合わせ機構と、マーカー間隔との間を比例した相関関係にすることは有用である。
【0045】
この有利な実施形態に関して、顕微鏡の倍率の値は、焦点適合評価及びコントロールユニットに送信されなければならない。変更可能な顕微鏡の倍率は変更可能なズーム倍率によって主に決定されるので、評価及びコントロールユニットへズーム倍率Γを送信すれば十分である。Γの値は、通常、0.4と2.4との間である。
【0046】
確認されたマーカー間隔を変更することによって顕微鏡の倍率を調節すること(アカウントすること)は有利である。ズーム倍率のみが以下のように考慮されるが、本発明の普遍性を限定するものではない。以下のマーカー間隔の変更(修正)が特に好ましい。

【0047】
高ズーム倍率(Γ=2.4)では、大きい間隔のマーカーdは、対応してd’に減少する。しかしながら、低ズーム倍率(Γ=0.4)では、小さいマーカー間隔dはd’に増加する。焦点合わせの速度に対するズーム倍率の影響は、結果的にマーカー間隔のこの修正によって除去することができる。dを上記の式のd’で置き換えることが必要だけである。
【0048】
自動的に焦点を合わせるための本発明の構成によれば、焦点合わせ機構の速度がコンスタントな場合には、マーカー間隔における変化の割合から顕微鏡の倍率を確認することが可能である。具体的には、焦点合わせ機構の速度がコンスタントな値で設定されたままであれば、焦点面に接近する際に、顕微鏡の倍率が高ければ高いほど、対象物上のマーカーがより大きな速度で対象物上のマーカーが互いに向かって移動するだろう。例えば、このシステムは、焦点合わせ機構の速度がコンスタントである場合には、マーカー間隔における変化の割合に基づいて、既知の顕微鏡の倍率を校正(キャリブレート)することができ、その後の操作の際に、設定された特定の顕微鏡倍率をキャリブレーションカーブから確認することができる。あるいは、現在存在する顕微鏡において、顕微鏡の倍率又はズーム倍率を一般的なルールとして、電気シグナルとして取出す(picked off)又はタップする(tapped)ことができる。
【0049】
本発明は、更に、上述の本発明の方法を実行する自動焦点適合装置に関連する。本発明に係る方法と関連する全ての記載及びその実施形態は、目的ごとに区別した説明が無くても、本発明の自動焦点適合装置と同様の価値を持つ。従って、自動焦点適合装置についての本願の記載及びその実施形態は、本発明に係る方法に必要な装置の要素に限定されるだろう。
【0050】
本発明の自動焦点適合装置は、対象物上に生成されたマーカーの顕微鏡画像を取得する検出部を含み、マーカーの間隔を測定する評価ユニットも備える。測定されたマーカー距離の関数に基づいて、そして、任意的な更なる顕微鏡のパラメータ(特に、顕微鏡の倍率又はズーム倍率など)に基づいて、焦点合わせ機構の速度(すなわち、作業面が焦点面へ移動する速度)がコントロールユニットによって調節される。この構成において、焦点合わせ機構は機能上(ないし作用的に)焦点距離が予め定義された範囲内で可変である対応するマルチフォーカス又はバリオ対物レンズに接続される。代替的に、又は、追加的に、(少なくとも)顕微鏡の対物レンズは焦点を調節するために光学軸に沿ってシフトすることができる。更に、代替的に、又は、追加的に、検査される対象物が載置される顕微鏡ステージは、対象物に焦点を合わせるための光学軸に沿ってシフトすることができる。焦点合わせ機構は、結果的には、記載された構成要素1つ以上において(ないし、対して)作動することができ、「焦点合わせ機構の速度」とは、常に対象物における作業面が焦点面へ移動する速度を意味するものとする。
【0051】
顕微鏡において自動的に焦点を合わせるための自動焦点適合装置の特に適切な構成は、以下のように記載することができる。対象物から離れて面する顕微鏡の対物レンズ側に、対物レンズからの下流にズームシステムが配設され、該ズームシステムの前方に2つの点光源が配設される。対物レンズは無限遠で結像するものと想定される。点光源は、光学軸と平行に進行するオートフォーカスビームパスを生成する。点光源は、特に、観察瞳の外側に配設される。対象物における作業面が焦点面に位置する場合には、焦点適合ビームパスによって対象物上に生成されたマーカーがマージするか一致する。マーカーの画像を顕微鏡の観察ビームパスの外部へカップル化して検出部(カメラ)へ送信するビームスプリッターは、対象物から見てズームシステムの背後に配設される。2本の観察ビームパスを生成するために2つのズームシステムを有する実体顕微鏡の場合には、ビームスプリッターが2つのズームシステムの内の1つの背後にすなわち、2つの観察ビームパスの内の1つに配設されれば十分である。検出部は、機能上(ないし作用的に)評価ユニットに連結される。マーカー画像におけるマーカーの間隔の測定は、この評価ユニットにおいて生じる。焦点合わせ機構の速度に関する対応するコントロールシグナルは、マーカーの間隔と関連する。対応するコントロールユニットは、このシグナルを焦点合わせ機構へ送信する。焦点合わせ機構は、さらに、顕微鏡の焦点合わせに関する対応する顕微鏡の構成要素に接続される。これは以下の構成要素の1つ以上であり得る:マルチフォーカス又はバリオ対物レンズ、対物レンズのz移動機能、及び、顕微鏡のステージのみのz移動機能(「z移動」とは光学軸に沿った移動を意味する)。マルチフォーカス対物レンズが使用される場合には、マルチフォーカス対物レンズを用いて焦点を合わせることに加えて、対物レンズ又は顕微鏡のステージのシフトによって焦点合わせ作用を備えることが、マルチフォーカス対物レンズでカバーすることができる範囲の外に焦点が外れている際に有用になり得る。
【0052】
上記の特徴及び以下に説明される特徴は、示された特定の組み合わせのみではなく、他の組み合わせ又は単体でも、本発明の範囲から逸脱することなく利用可能であることが理解される。
【0053】
本発明は、例示の実施形態に基づいて図面に模式的に表され、図面を参照して以下に詳細に記載される。
【実施例】
【0054】
図1は、顕微鏡11において自動的に焦点を合わせるための自動焦点適合装置の特に好ましい実施形態を模式的に示す。顕微鏡(図1では実体顕微鏡)の最も必要不可欠な構成要素のみが本発明を説明する上で必要な程度に表されている。この実施形態では、実体顕微鏡11は、マルチフォーカス対物レンズ2と、2つのズームチャンネルから成るズームシステム1とを含む。実体顕微鏡の更なる構成要素(双眼鏡チューブなど)は、図1には示されない。簡素化するために、顕微鏡11の焦点合わせはマルチフォーカス対物レンズ2によって専ら実行されることを想定している。従って、対象物に焦点を合わせるための対物レンズ2及び/又は顕微鏡ステージ(図示されない)のシフトは、図1の実施形態においては考慮されていない。
【0055】
自動焦点適合装置は、検出部4、評価ユニット7a、コントロールユニット7b及び焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)6から実質的に構成される。検出部4、評価ユニット7a及びコントロールユニット7bは、1つの共通ユニットに組み合わせられる。焦点合わせ機構6は、マルチフォーカス対物レンズ2をコントロールする。検出部4は、顕微鏡11で検査される対象物上のマーカー12の画像を取得する(CCD)カメラであり得る。マーカー12の間隔dは、評価ユニット7aにおいて測定される。評価ユニット7a及びコントロールユニット7bは、互いに別々に備えることもでき、特に、評価ユニット7aが検出部4の構成要素でもあり得るし、そして/あるいはその代わりに、コントロールユニット7bが焦点合わせ機構6の構成要素でもあり得る。
【0056】
図1は、対象物上のマーカー12の画像を表す3つの画像セグメント又は領域8を示し、各セグメントにおいて作業面9は焦点面10からある間隔を有する。画像セグメント8は、カメラ/検出部4によって取得された画像のセグメントであり得る。最上段の画像セグメント8は、より上段に位置する作業面9に関連し、焦点面10から大きく離れて位置する。中段の画像セグメント8は、焦点面10により近い位置の中段の作業面9に関連し、最下段の画像セグメント8は、焦点面10の非常に近くに位置する作業面9に関連する。画像セグメント8におけるマーカー12の間隔dは、作業面9が焦点面10に近づくにつれて減少する。最下段の画像セグメント8ではマーカー12は互いに接触しており、焦点面10に到着する際にはそれらはマージする(重なり合う)か若しくは一致する。そのときに対応する間隔dFは0である。
【0057】
この実施形態において、2つのオートフォーカスビームパス13及び14は、夫々、各々、点光源5によって生成され、マーカー12の生成に使用される。2つの点光源5(この実施形態ではレーザーダイオード)は、顕微鏡11のビームパスにおける対物レンズ2の観察瞳(pupil)の外部に配設される(この点に関しては、図3の説明も参照)。それらは、顕微鏡11の光学軸17に平行して進行するオートフォーカスビームパス13、14を生成し、焦点面10において対物レンズ2によって焦点が合わさる。
【0058】
可視領域の波長を有するオートフォーカスビームパスが選択される場合には、現在の(作動時の:current)作業面9に位置する対象物上のマーカーは視認可能である。そのような場合には、2つの異なる波長を使用することが有用である。例えば、焦点面10の上部では右側のマーカー12がカラー1を有し、そして、左側のマーカー12がカラー2を有する。焦点面10を通過した後にはカラーが「スイッチする」:すなわち、右側のマーカー12がカラー2を有し、そして、左側のマーカー12がカラー1を有する。焦点が合ったか否かの指標(focusing direction)はそれによって容易に検出することができる。
【0059】
対象物上に位置するマーカー12は、顕微鏡の構成要素及び検出部4の検出部表面に接続される検出部/カメラ構成要素によって画像取得される。対応する画像セグメント8は既に説明したとおり、図1に表される。好ましくはズームシステム1の背後(対物レンズ2から見て)に配設されるビームスプリッター3は、マーカー画像をアウトカップル(分離出射)するために備えられる。マーカー間隔dの評価にはモノスコープのマーカー画像で十分であり、実体顕微鏡11の2つの観察ビームパスの内の1方のみにビームスプリッター3を配設することが適切である。
【0060】
評価ユニット7aは、公知の画像処理方法を使用して、マーカー画像における2つのマーカー12の間隔dを評価する。測定されたマーカー間隔dの関数に基づいて、コントロールユニット7bは、焦点合わせ機構6に対するシグナルを生成する。コントロールユニット7bのシグナルは、焦点合わせ機構6の速度、すなわち、焦点面10に向かうようにシフトする際の作業面9の速度をコントロールする。ここで、マルチフォーカス対物レンズ2における焦点合わせのためのレンズ要素は、マーカー間隔に比例した対応する速度でシフトする。
【0061】
作動時の作業面9と焦点面10との間の間隔dが大きい時には(最上段の画像セグメント8を参照)、高速の焦点合わせ速度がコントロールユニット7bによって選択され、対応するシグナルが焦点合わせ機構6に送信される。マーカー間隔dが減少するにつれて、焦点合わせの速度もより低速になる。間隔dが非常に小さいときには(最下段の画像セグメント8を参照)、焦点面10へのコントロールされたアプローチができるように、焦点合わせ速度が対応して低速にセットされる。この機構によれば、焦点面10を通過してしまうこと(意図していない)が防止できる。vとdとの間の相関関係は、好ましくは2次関数又は指数関数で表される。
【0062】
図2は、速度v(1/分)と変更されたマーカー距離d’(mm)との間の好ましい相関関係を定性的(qualitatively)に示す。値d’は、マーカーの間隔dをズーム倍率Γ(Γ=0.4〜2.4)で除算することによって決定される。図2は、2本の好ましいコントロール曲線15及び16を表し、コントロール曲線15はvとd’との間の指数関数的な相関関係を表し、コントロール曲線16はvとd’との間の多項式的な相関関係、具体的には2次関数的な相関関係を表す。両方のケースにおいて、マーカーの間隔が大きい場合には焦点合わせ速度がおよそ直線状の相関関係で存在し、その一方では、マーカーの間隔が減少するにつれて焦点合わせ速度vがより大幅に減速することが明確に表されている。図2によって表される関数の1つが、コントロールユニット7bにおいてコントロール曲線であることは有利である。この関数は顧客が希望するような適用形態にして搭載することができる。
【0063】
図3は、図1に示した顕微鏡の(メイン)ビームパスの横断面を模式的に示す。横断面は、例えば、対物レンズ2とズームシステム1との間のポイントに位置する(図1参照)。ズームシステム1のチャンネルを両方取り囲む対物レンズ2の横断面が表されている。ズームシステムの瞳(ないし、より正確には2つのズームチャンネルの瞳)は符号20でラベルされる。対物レンズの平面における観察瞳19は、主にズームシステム(ズームチャンネル)の入射瞳によって定義される。観察瞳19と対物レンズの端部との間の領域は、対物レンズの開孔(aperture)18と称される。
【0064】
対物レンズの開孔18の領域内にオートフォーカスビームパス13、14が配設される場合には、2つのオートフォーカスビームパス13、14を観察瞳19の外部においてカップル化することができるという必要不可欠な利点がもたらされる。逆に、オートフォーカスビームパス13、14がズームシステム1の背後(対物レンズ2から見て)においてカップル化される場合には、オートフォーカスビームパス13、14が対象物に照射されるようにするためには、観察瞳19の中に直接配設する必要があるだろう。しかしながら、この構成は、口径食(ビネッティング)をもたらすだろう。
【0065】
特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0066】
本発明の他の形態、特徴及び視点は本発明の全開示において明らかになるだろうし、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が上述の変更に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 ズームシステム
2 対物レンズ
3 ビームスプリッター
4 検出部
5 点光源
6 焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)
7a 評価ユニット
7b コントロールユニット
8 画像セグメント
9 作業面
10 焦点面
11 (実体ないし立体)顕微鏡
12 マーカー
13、14 焦点適合 ビームパス
15 コントロール曲線
16 コントロール曲線
17 光学軸
18 対物レンズの開孔
19 観察瞳
20 ズームシステムの瞳
d マーカーの間隔
dF 焦点面におけるマーカーの間隔
v 焦点合わせ機構の速度
d’ 変更されたマーカー間隔
Γ 顕微鏡(ないしズーム)の倍率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(11)において自動的に焦点を合わせる方法であって、
少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカー(12)が対象物上に生成され;
当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡(11)の焦点面(10)から対象物における作業面(9)までの焦点ずれに関する指標を表し;
各マーカー(12)が予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面(9)が焦点面(10)に位置し;
マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)(6)が作業面(9)を焦点面(10)まで移動させ;
焦点合わせ機構(6)が作業面(9)を焦点面(10)まで移動させる速度(v)が、マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
焦点合わせ機構(6)の速度(v)は、マーカー間の間隔(d)の多項式関数(特に、2次関数)又は指数関数で表されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マーカー(12)は、顕微鏡(11)のビームパスにカップルされるオートフォーカスビームパス(13、14)によって生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
マーカーは、点光源(5)によって生成されたオートフォーカスビームパス(13、14)によって生成され、
点光源(5)は、顕微鏡(11)のビームパスに配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
顕微鏡(11)が対物レンズ(2)と下流ズームシステム(1)とを有し、
オートフォーカスビームパス(13、14)の入射結合、又は、点光源(5)の配設が、対物レンズ(2)とズームシステム(1)との間で行われることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
顕微鏡(11)が対物レンズ(2)と下流ズームシステム(1)とを有する場合において、
対象物から反射した対応オートフォーカスビームパス(13、14)を顕微鏡(11)のビームパスの外へ分離出射した後に、対象物上に位置したマーカー(12)の画像を検出部(4)によって取得することを特徴とする請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
反射したオートフォーカスビームパス(13、14)の分離出射が、顕微鏡(11)の対物レンズ(2)から観た場合に、ズームシステム(1)の背後で実行されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
実体顕微鏡(11)の場合において、
反射したオートフォーカスビームパス(13、14)の分離出射が、実体顕微鏡(11)の2本の観察ビームパスの内の1本のみに実行されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
各々異なる波長を有するオートフォーカスビームパス(13、14)がマーカー(12)の生成に使用されることを特徴とする請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
波長が、可視波長領域のものであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
顕微鏡(11)の光学軸(17)に沿って進行するターゲットビームパスが使用され、
当該ビームパスによって、特にスポットの形状(ないし斑点状)のターゲットマーカー(12)が対象物上に生成されることを特徴とする請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
ターゲットマーカーが、対象物上に生成される少なくとも2つのマーカー(12)の1つとして使用されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
対象物上に生成される少なくとも2つのマーカー(12)に加えて、ターゲットマーカーが更に使用されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
顕微鏡の倍率(Γ)が決定され、
顕微鏡倍率(Γ)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(6)の速度(v)が追加的に調節されることを特徴とする請求項1〜13に記載の方法。
【請求項15】
焦点合わせ機構(6)の速度(v)が、d’=d/Γ(当該式において、d=マーカー間の間隔であり、そして、Γ=顕微鏡の倍率、特にズーム倍率である)となるように、修正したマーカー間の間隔(d’)の関数に基づいて調節されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
顕微鏡の倍率が、一定の焦点合わせ機構の速度におけるマーカー間の間隔(d)の変化の割合から確認されることを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
顕微鏡(11)において自動的に焦点を合わせる自動焦点適合装置であって、
少なくとも2つの、特にスポットの形状(ないし斑点状)のマーカー(12)が対象物上に生成され;
当該マーカー間の間隔(d)が、顕微鏡(11)の焦点面(10)から対象物における作業面(9)までの焦点ずれに関する指標を表し;
各マーカー(12)が予め定義された間隔(dF)で存在する場合には前記作業面(9)が焦点面(10)に位置し;
マーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、焦点合わせ機構(フォーカスドライブ)(6)が作業面(9)を焦点面(10)まで移動させ;
検出部(4)が対象物上に生成されたマーカー(12)の画像を取得して、マーカー(12)間の間隔を評価ユニット(7a)が測定し;
コントロールユニット(7b)が、測定されたマーカー間の間隔(d)の関数に基づいて、作業面(9)が焦点面(10)まで移動するように焦点合わせ機構(6)の速度を調節することを特徴とする自動焦点適合装置。
【請求項18】
少なくとも1本の点光源(5)が、対象物上に少なくとも1つのマーカーを生成する関連するオートフォーカスビームパス(13、14)を生成するために備えられることを特徴とする請求項17に記載の自動焦点適合装置。
【請求項19】
1つの点光源(5)、及び、2つ以上のビームスプリッター(3)が、対象物上に2つ以上のマーカー(12)を生成するために備えられることを特徴とする請求項18に記載の自動焦点適合装置。
【請求項20】
複数の点光源(5)が、顕微鏡(11)のビームパスに配設されることを特徴とする請求項18に記載の自動焦点適合装置。
【請求項21】
顕微鏡(11)が対物レンズ(2)と下流ズームシステム(1)とを有し、
複数の点光源(5)が、対物レンズ(2)とズームシステム(1)との間に配設されることを特徴とする請求項20に記載の自動焦点適合装置。
【請求項22】
顕微鏡(11)が対物レンズ(2)と下流ズームシステム(1)とを有し、
対象物から反射した対応オートフォーカスビームパス(13、14)を顕微鏡(11)のビームパスの外へ分離出射した後に、対象物に位置したマーカー(12)の画像を検出部(4)によって取得し、
特に、顕微鏡(11)の対物レンズ(2)から観た場合のズームシステム(1)の背後に、ビームスプリッター(3)が分離出射のために備えられることを特徴とする請求項17〜21に記載の自動焦点適合装置。
【請求項23】
実体顕微鏡(11)の場合において、
反射したオートフォーカスビームパス(13、14)を分離出射するためのビームスプリッター(3)が、実体顕微鏡(11)の2本の観察ビームパスの内の1本のみに配設されることを特徴とする請求項22に記載の自動焦点適合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−65015(P2013−65015A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202301(P2012−202301)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(500056219)ライカ ミクロジュステムス(シュヴァイツ)アーゲー (42)
【Fターム(参考)】