説明

顕微鏡システム

【課題】複数の異なる観察用の顕微鏡光学系を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムにおいて、各顕微鏡光学系に最適な光量のレーザー光を照射できる顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】レーザー光源1,2,23と、前記レーザー光源からのレーザー光を導入して外部に伝播する複数の光ファイバと、前記レーザー光源からのレーザー光を前記複数の光ファイバに選択的に導入する光路切り替え機構30とを少なくとも有するレーザー光源ユニット10と、前記複数の光ファイバから伝播された各レーザー光を使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系とを単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムであって、前記レーザー光源ユニットは、前記光路切り替え機構に導入するレーザー光の光量を調整する第1光量調整機構AOTFと、前記レーザー光源から前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整する第2光量調整機構ND1、ND2、ND3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる光量のレーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体細胞などを観察する観察方法の中でレーザ光源を用いる観察方法に、共焦点観察、全反射観察(TIRF照明観察)や超解像観察などがあり、多くの現場では、被観察物の種類や観察目的などに応じて、それらの観察方法を使い分けることが望まれる。
【0003】
その一方で、レーザ光源は高価であり、共焦点観察用のレーザ光源と全反射観察用のレーザ光源とをそれぞれ用意すると、コストが嵩む。
【0004】
そこで、開発されたのが、一つのレーザ光源を複数の観察方法(観察用顕微鏡光学系)に共用する顕微鏡システムである(特許文献1など)。
【0005】
この顕微鏡システム(図2参照)の顕微鏡本体には、全反射蛍光観察用の顕微鏡光学系ユニット(特許文献1の符号21等)と、共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット(特許文献1の符号5,6,7,8,13,14,15,16,17)との双方がセットされている。
【0006】
これらのユニットは、それぞれ光ファイバ(特許文献1の符号4,3)を介して共通のレーザ光源(特許文献1の符号1)に連結される。このレーザ光源と二つの光ファイバの入射端との間に、光路切り替え用の可動ミラー(特許文献1の符号27)が挿入される。
【0007】
この可動ミラーの駆動により、レーザ光が全反射蛍光観察用の顕微鏡光学系ユニットに導入される状態と、レーザ光が共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニットに導入される状態との間で、顕微鏡システムを切り替えることができる。
【特許文献1】特開2003−270538号公報 上述したように、1台の顕微鏡に複数の観察用の顕微鏡光学系を取り付けて、一つの標本を異なる顕微鏡光学系で観察する場合には、レーザー光源が高価であることから、1台のレーザー光源ユニット内に、複数の光ファイバー出力部と光路切替部とを設け、複数の光ファイバー出力部に光源からのレーザー光を切り替えて導入し、これを光ファイバを介して各顕微鏡光学系に伝播することで、複数の顕微鏡光学系により1台のレーザー光源ユニットを共有する場合がある。
【0008】
ここで、複数の顕微鏡光学系として共焦点観察用の顕微鏡光学系と超解像観察用の顕微鏡光学系とを使用する際に、超解像観察用の顕微鏡光学系で必要とするレーザー光量は、共焦点観察用の顕微鏡光学系で必要とするレーザー光量よりも10倍程度大きい。
【0009】
そのため、超解像観察用の顕微鏡光学系で使用したレーザー光量のままで、レーザー光源ユニット内の光路切替により光ファイバー出力部を共焦点観察用の顕微鏡光学系に切り替えると、レーザー光量が大きすぎて、例えばAOTFを用いて減光しても、細かい調光ができない。よって、標本に最適なレーザー光量を照射することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、1台のレーザー光源ユニットを共有して使用し、複数の異なる観察用の顕微鏡光学系を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムでは、レーザー光を各顕微鏡光学系に最適な光量に調整して照射することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、1台のレーザー光源ユニットを共有し、異なる光量のレーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムにおいて、各顕微鏡光学系に最適な光量のレーザー光を照射できる顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の請求項1に記載の顕微鏡システムは、レーザー光源と、前記レーザー光源からのレーザー光を導入して外部に伝播する複数の光ファイバと、前記レーザー光源からのレーザー光を前記複数の光ファイバに選択的に導入する光路切り替え機構と、を少なくとも有して構成されるレーザー光源ユニットと、
前記複数の光ファイバから伝播された各レーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系と、を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムであって、
前記レーザー光源ユニットは、前記光路切り替え機構に導入するレーザー光の光量を調整する第1光量調整機構と、前記レーザー光源から前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整する第2光量調整機構とを更に有し、
前記第2光量調整機構は、前記光路切り替え機構による光路切り替えに連動して、前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整可能に構成されている。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の請求項2に記載の顕微鏡システムは、波長が異なるレーザー光をそれぞれ発振する複数のレーザー光源と、前記複数のレーザー光源からの波長が異なる複数のレーザー光を一つのレーザー光に合成する合成光学系と、前記合成されたレーザー光のうち所定波長のレーザー光を選択する波長選択光学系と、波長選択された前記レーザー光を導入して外部に伝播する複数の光ファイバと、波長選択された前記レーザー光を前記複数の光ファイバに選択的に導入する光路切り替え機構と、を少なくとも有して構成されるレーザー光源ユニットと、
前記複数の光ファイバから伝播された各レーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系と、を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムであって、
前記レーザー光源ユニットは、前記光路切り替え機構に導入する波長選択されたレーザー光の光量を調整する第1光量調整機構と、前記レーザー光源から前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整する第2光量調整機構とを更に有し、
前記第2光量調整機構は、前記光路切り替え機構による光路切り替えに連動して、前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整可能に構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる光量のレーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムにおいて、各顕微鏡光学系に最適な光量のレーザー光を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる顕微鏡システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】背景技術に係る顕微鏡システムの概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。図1に、本実施形態の顕微鏡シス
テムの概略構成を示す。
【0017】
図1に示すとおり、顕微鏡システムには、レーザ光源ユニット10と、顕微鏡本体20とが備えられる。顕微鏡本体20には、超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21と共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22とがセットされている。
【0018】
超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21と共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22は、それぞれ光ファイバ15,16を介してレーザ光源ユニット10に接続されている。これらの光ファイバ15,16は、例えば、コア径が3.5μmのシングルモードファイバである。
【0019】
なお、レーザ光源ユニット10、超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21、共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22において、光ファイバ15,16との接続箇所は、光ファイバを着脱可能に支持する光ファイバマウント部になっている。
【0020】
レーザ光源ユニット10には、波長が405nm、488nm、561nmの三つのレーザ光源1,2,23が備えられる。レーザ光源1,2,23の射出光路は合成光学系としての、全反射ミラーM、ダイクロイックミラーDM及びダイクロイックミラーDMを介して共通の光路Lに統合され、合成されたレーザー光のうち所定波長のレーザー光を選択する波長選択光学系を介して、選択されたレーザー光が光路切り替え部30に導入される。
【0021】
ここで、選択されたレーザー光は、第1光量調整機構としてのAOTFを介して光路切り替え部30に導入される。
【0022】
レーザ光源1,2,23の射出光路には、第2光量調整機構としての、制御部により透過光量を段階的に変更可能なNDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3がそれぞれ配置されている。
【0023】
また、レーザ光源1,2,23からNDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3に到るそれぞれの射出光路には、シャッタ3が配置されており、レーザ光源1,2,23を射出したレーザ光を個別に遮断/開放することができる。
【0024】
レーザ光源ユニット10には、光路切り替え部30が搭載されている。光路切り替え部30には、コーナー状に配置された三つの反射面を持つプリズムであるコーナーキューブ17、全反射ミラーM、及び光ファイバ15,16の入射端15in,16inの直前に個別に配置される二つの集光レンズ13が備えられる。
【0025】
コーナーキューブ17は、光路Lを伝搬したレーザ光を三つの反射面で順次反射可能な位置に配置される。そのためには、レーザ光が三つの反射面の稜線に入射するのを避ける必要があるので、このコーナーキューブ17の三つの反射面の中線は、光路Lから若干の距離(以下、3mmとする。)だけずらされる。
【0026】
コーナーキューブ17は、観察法の選択に応じて、光路Lに対し挿脱される。先ず、超解像観察が選択されると、コーナーキューブ17が光路Lに挿入され(図1の実線で示す状態)、光路Lを伝搬したレーザ光は、コーナーキューブ17の三つの反射面で順次反射した後、光路Lと平行かつ光路Lから離れた光路L'を逆方向に伝搬する。その後、レーザ光は、全反射ミラーM及び集光レンズ13を介して一方の光ファイバ15の入射端15inに入射する。
【0027】
一方、共焦点観察が選択されると、コーナーキューブ17が光路Lから離脱され(図1の点線で示す状態)では、光路Lを伝搬したレーザ光は、コーナーキューブ17を介することなく、集光レンズ13を介して他方の光ファイバ16の入射端16inに入射する。
【0028】
なお、二つの集光レンズ13の位置及び姿勢は、コーナーキューブ17の挿入時における入射端15inへのレーザ光の入射効率と、コーナーキューブ17の離脱時における入射端16inへのレーザ光の入射効率とがそれぞれ十分に高くなるよう予め調整されている。
【0029】
このように、光路切り替え部30としてコーナーキューブを使用することにより、光路切替時にコーナーキューブの切替位置がずれても反射光の角度はかわらないため、ファイバへの入射角度も一定に保たれて、ファイバー出力光の再現性もよい。
【0030】
光路切り替え部としては、モーターにより反射ミラーの角度を変更する構成にしてもよい。その他に、光路切り替え部をガルバノスキャナーにすれば、光路を高速に切り替えて、共焦点観察と超解像観察を高速に切り替えることが可能となる。
【0031】
入射端15inに入射したレーザ光は、光ファイバ15の内部を伝搬してその射出端15outから射出し、超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21に点光源を形成する。
【0032】
また、入射端16inに入射したレーザ光は、光ファイバ16の内部を伝搬してその射出端16outから射出し、共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22に点光源を形成する。
【0033】
第2光量調整機構(NDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3)は、前記光路切り替え機構による光路切り替えに連動して、前記第1光量調整機構AOTFに導入するレーザー光の光量を自動的に調整可能に構成されている。ここで、光路切り替えと光量調整は、両方の操作を自動制御する制御部により、連動して実行される。
【0034】
光路切替により、超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21にレーザー光が伝播される場合には、第2光量調整機構(NDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3)の透過光量が大きくなるようにNDフィルタが制御部により調整される。その結果、超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット21へのレーザーの出力光量は100mW程度となり、超解像観察に十分な光量になる。
【0035】
一方、光路切替により、共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22にレーザー光が伝播される場合には、第2光量調整機構(NDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3)の透過光量が1/10に減衰するようにNDフィルタが調整される。その結果、共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット22へのレーザーの出力光量は10mWとなり、共焦点観察に十分な光量になる。
【0036】
更に、各観察時にはAOTFの透過光量を制御することにより、標本に最適な光量となるように調整できる。
【0037】
レーザ光源1,2,23の射出光路に第2光量調整機構としての、透過光量を変更可能なNDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3がそれぞれ配置されていない場合には、超解像観察から共焦点観察に変更するときに、レーザー出力光量を100mWからAOTFを用いて減光することになる。この場合、AOTFは1/1000程度の消光比となり、レーザー出力光の0.1mW以下を微妙にコントロールできない。
【0038】
なお、第2光量調整機構をNDフィルタの変わりにAOMとすることで光路切替と連動して透過光量を高速に切り替えることできる。また、光路切替部と連動して、各レーザ光源1,2,23の出射光量を制御する電圧値を制御部により変更できる構成とすれば、第2光量調整機構(NDフィルタND1,NDフィルタND2,NDフィルタND3)を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・・レーザ光源
2・・・・レーザ光源
23・・・・レーザ光源
10・・・レーザ光源ユニット
15・・・光ファイバ
16・・・光ファイバ
17・・・コーナーキューブ
20・・・顕微鏡本体
21・・・超解像観察用の顕微鏡光学系ユニット
22・・・共焦点観察用の顕微鏡光学系ユニット
30・・・光路切り替え部
M・・・ 全反射ミラー
DM・・ダイクロイックミラー
DM・・ダイクロイックミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源と、前記レーザー光源からのレーザー光を導入して外部に伝播する複数の光ファイバと、前記レーザー光源からのレーザー光を前記複数の光ファイバに選択的に導入する光路切り替え機構と、を少なくとも有して構成されるレーザー光源ユニットと、
前記複数の光ファイバから伝播された各レーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系と、を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムであって、
前記レーザー光源ユニットは、前記光路切り替え機構に導入するレーザー光の光量を調整する第1光量調整機構と、前記レーザー光源から前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整する第2光量調整機構とを更に有し、
前記第2光量調整機構は、前記光路切り替え機構による光路切り替えに連動して、前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整可能に構成されている顕微鏡システム。
【請求項2】
波長が異なるレーザー光をそれぞれ発振する複数のレーザー光源と、前記複数のレーザー光源からの波長が異なる複数のレーザー光を一つのレーザー光に合成する合成光学系と、前記合成されたレーザー光のうち所定波長のレーザー光を選択する波長選択光学系と、波長選択された前記レーザー光を導入して外部に伝播する複数の光ファイバと、波長選択された前記レーザー光を前記複数の光ファイバに選択的に導入する光路切り替え機構と、を少なくとも有して構成されるレーザー光源ユニットと、
前記複数の光ファイバから伝播された各レーザー光をそれぞれ使用する複数の異なる観察用の顕微鏡光学系と、を単一の顕微鏡内に備えた顕微鏡システムであって、
前記レーザー光源ユニットは、前記光路切り替え機構に導入する波長選択されたレーザー光の光量を調整する第1光量調整機構と、前記レーザー光源から前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整する第2光量調整機構とを更に有し、
前記第2光量調整機構は、前記光路切り替え機構による光路切り替えに連動して、前記第1光量調整機構に導入するレーザー光の光量を調整可能に構成されている顕微鏡システム。
【請求項3】
前記第2光量調整機構は、前記複数の各レーザー光源と前記合成光学系との間にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記第2光量調整機構は、NDフィルタまたはAOMであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記第2光量調整機構は、前記レーザー光源の出射光量を制御する電圧調整機構であることを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記複数の異なる観察用の顕微鏡光学系は、共焦点観察用の顕微鏡光学系と超解像観察用の顕微鏡光学系であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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