顕微鏡機器を標準化するための方法およびシステム
顕微鏡システムからの定量的な測定値を標準化するための方法および装置。プロセスはキャリブレーション手順を含み、これにより、顕微鏡システムの光学系を介してキャリブレーションスライドの画像が得られる。キャリブレーションスライドは標準的な応答を生成する。この応答は、特定のシステムに関するマシン固有因子を決定するために使用することができる。このマシン固有因子を、後に参照するために保存することができる。使用の際には、ターゲットサンプルおよび励起光源の画像が取得される。励起光源のサンプルは、強度をサンプリングするように構成されたキャリブレーション機器を用いて得られる。このキャリブレーション機器は、関連する補正因子を有しており、これにより、この機器の性能が、普遍的に標準化されたキャリブレーション機器に対して補償される。上記のマシン固有因子、サンプリングされた強度、およびキャリブレーション機器の補正因子は、他の顕微鏡システムとの比較のために結果を規格化することを目的として、ターゲットサンプルの定量的な測定値を補償するために、使用可能である。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2007年6月15日に出願された米国仮出願第60/944,402号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、顕微鏡法の分野に関し、より詳細には、同一のあるいは異なる顕微鏡システムから得られる定量的な分析結果を標準化することによって、これらの比較を可能とすることに関する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡法のプラットフォームが定量的になるにつれて、これらのプラットフォーム間の標準化を可能とする、シンプルな方法とハードウェアの組み合わせを開発する必要が生じる。たとえば、蛍光顕微鏡法の応用では、現時点において、システムに関する蛍光強度を測定するために有効な製品は存在する(たとえば、蛍光ミクロスフェア、蛍光ターゲット)が、これらは、顕微鏡のプラットフォームの全体的な構造の変化、あるいは、サンプルの変化とは無関係の光源の変化に関連した全体的に効率的な因子を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここに記載されているシステムおよびプロセスは、既存の光学顕微鏡システムに関する規格化因子を提供する。この規格化因子は、定量的な測定結果を標準化および拡縮するために使用することができる。標準化は、異なる機器から得られた定量的な結果の比較を可能とし、各機器から得られた結果は、同一の標準化を受ける。さらに、このことの延長線上として、単一のプラットフォームにおいて時間とともに数回の露光を行うといった実験で、機器効率の規格化因子に寄与する同じハードウェアを、光源強度の変動を測定するために使用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、本発明は、光学システムによって撮像されたターゲットサンプルデータの、定量的な測定値を標準化するためのプロセスに関する。この光学システムは、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有している。この光学システムの各部は、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するべく構成されている。光源の補正因子が励起光源に関して取得される。光源補正因子は、ターゲットサンプルデータに適用され、これにより、光の強度の変動性に関して標準化された、ターゲットサンプルデータが得られる。標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値が決定される。
【0006】
他の態様においては、本発明は、顕微鏡システムにおける励起光源の光をサンプリングするためのキャリブレーション機器に関する。このシステムは、光学経路に沿って配置されたキャリブレーション面を含んでいる。このキャリブレーション面は、励起光源からの光を、顕微鏡システムにおける検出部に向けて、ほぼ均一に散乱させる。一つの態様によると、このシステムは、ダイクロマティックミラーを含み、このミラーは、励起光源からの光を反射し、光学経路に沿い対物レンズを介してターゲットサンプルに向かわせるように、および、ターゲットサンプルからの光における少なくとも一部を透過させて、顕微鏡システムの検出部に向かわせるように配置されている。当該態様では、キャリブレーション面は、キャリブレーション中に、一時的に、ダイクロマティックミラーと対物レンズとの間の光学経路を遮断するように、および、反射された励起光の大部分を散乱させて、ダイクロマティックミラーを介して検出部に向かわせるように、配置されている。
【0007】
他の態様では、本発明は、定量的な標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を光学システムから得るためのプロセスに関する。この光学システムは、励起光源、光学部、検出部、およびデータ保存部を有しており、これらは、ターゲットサンプルデータを得るために、協働するよう構成されている。光学システムの固有因子が光学システムに関して得られる。光学システム固有因子は、ターゲットサンプルデータに適用され、これにより、固有の光学因子に関して標準化された、ターゲットサンプルデータの測定値が得られる。
【0008】
他の態様では、本発明は、顕微鏡システムから標準化測定値を得るためのプロセスに関する。この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有し、これらは、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このプロセスは、光に対する標準的な応答を生成するために、励起光源を用いてキャリブレーションサンプルに光をあてるステップを含む。光学部を介して得られる、光をあてられたキャリブレーションサンプルのキャリブレーションサンプル画像は、検出部によってキャプチャされる。励起光源による光のサンプル部分を検出部に向けるように構成されているキャリブレーション機器が、励起光源によって照らされる。配向されたサンプル部分の励起光源サンプル画像は、検出部によってキャプチャされ、光学経路に沿う変動を補正するためのマシン固有因子が、キャリブレーションサンプル画像および励起光源サンプル画像から決定される。マシン固有因子は、顕微鏡システムの固有の変動に関して、ターゲットサンプル画像を補償するために使用可能である。
【0009】
他の態様では、本発明は、コンピュータによって使用可能な媒体に関する。このコンピュータ可読媒体は、ここに記載した1つ以上のプロセスを実行するプロセッサによって遂行するための、コンピュータ読み取り可能な命令を記録している。
【0010】
他の態様では、本発明は、コンピュータによって読み取り可能な命令のプログラムに関する。この命令は、顕微鏡システムから標準化測定値を得るためのものであり、この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有し、これら各部が、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このシステムにおいて、上記の命令に従い、上述したプロセスが実行される。
【0011】
他の態様では、本発明は、標準化された測定値を提供する顕微鏡システムに関する。このシステムは、励起光源の光に対して標準的な応答を生成するように構成されているキャリブレーションサンプルを、励起光源の光にあてる手段と、光学部を介して得られる、光をあてたキャリブレーションサンプルのキャリブレーションサンプル画像を、検出部を用いてキャプチャするための手段と、励起光源による光のサンプル部分を検出部に向けるように構成されているキャリブレーション機器を、励起光源の光にあてるための手段と、配向されたサンプル部分の励起光源サンプル画像を、検出部を用いてキャプチャするための手段を含んでいる。このシステムは、さらに、キャリブレーションサンプル画像および励起光源サンプル画像から、光学経路に沿う変動を補正するためのマシン固有因子を決定するための手段を含んでいる。このマシン固有因子は、顕微鏡システムの固有の変動に関してターゲットサンプル画像を補償するために、使用可能である。
【0012】
他の多様では、本発明は、顕微鏡システムにおけるターゲットサンプルの強度測定値を補償するためのシステムに関する。このシステムは、ターゲットサンプルを支持するためのステージと、ステージ上に支持されたターゲットサンプルを照らすための励起光源と、光をあてられたターゲットサンプルの画像を検出するための検出部と、キャリブレーション時に、励起光源による光のサンプル部分を検出部に向け直すために、励起光源と検出部との間の光軸に沿って一時的に挿入されるように構成されているキャリブレーション機器と、を含んで構成される。このキャリブレーション機器は、ステージ上のターゲットサンプルを乱すことなく、励起光源を向け直すことができるとよい。このシステムは、さらに、向け直されたサンプル部分から決定される強度補正因子を決定するための、検出部と通信する分析器を含んでいる。この強度補正因子は、光をあてたターゲットサンプルの検出画像を調整することによって励起光源の変動を補償するために、使用可能である。
【0013】
さらに他の態様では、本発明は、蛍光顕微鏡システムにおける、強度の揺らぎを補正するためのプロセスに関する。この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有しており、これらは、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このプロセスは、対物レンズと検出部との間の光学経路内に、キャリブレーション要素を挿入するステップを含んでいる。このキャリブレーション要素は、ダイクロマティックミラーおよびキャリブレーション面を含んでいる。このミラーは、励起光源からの光をキャリブレーション面に向けて反射するとともに、このキャリブレーション面から戻された励起光のサンプル部分を、検出器に向けて透過するように構成されている。励起光源の強度変動は、キャリブレーション面から戻された励起光のサンプル部分から決定される。キャリブレーション要素は、励起光源の選択されたスペクトルをターゲットサンプルに向けて反射するように構成された、フィルターのセットに置き換えられる。光の選択されたスペクトルは、ターゲットサンプルから検出部に向かって送られる。選択された放射光スペクトルがターゲットサンプルから検出され、ターゲットサンプルから検出された放射光スペクトルは、励起光源の決定された強度変動を用いて補正される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】顕微鏡システムの一例を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るキャリブレーション機器を示す概略図である。
【図3】実施形態に係るキャリブレーション機器を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図および底面図である。
【図4】図3に示したキャリブレーション機器の分解斜視図である。
【図5】実施形態に係るキャリブレーション機器によって得られた、励起光源強度の時間的変化を示す図である。
【図6】第1のキャリブレーションスライドの複数のチャネルに関する定量的な結果の時間的変化を示す図である。
【図7】第2のサンプルスライドにおける複数のチャネルに関する定量的な結果の時間的変化を示す図である。
【図8】実施形態に係る定量的な分析結果を標準化するためのプロセスにおけるフローダイヤグラムである。
【図9】図8に示した定量的な分析結果の標準化に使用されている、補正因子を得るためのプロセスにおけるフローダイヤグラムである。
【図10】実施形態に係る、異なる顕微鏡システム(補正をしないもの、および補正をするもの)を使用することによって得られた、比較結果を示す図である。
【図11】実施形態に従って得られた、補正されていないサンプルデータと補正されたサンプルデータとの比較を示す図である。
【図12A】標準化を用いずに、異なる顕微鏡システムを使用して同一のサンプルから得られた典型的な定量的分析結果を示す図である。
【図12B】実施形態に従う、図12Aに示した定量的結果の補正を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記およびその他の目的、特徴、および利点は、本発明の好ましい実施形態の、後述するより具体的な説明によって、明らかになる。これらの実施形態は、添付図面に例示されており、これらの図面では、同一の参照符号は、異なる図面においても同一の部品を指している。これらの図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を例示することに重点を置いている。
【0016】
光学部品および光源を含むシステムから、標準化された定量的な分析結果を得るためのシステムおよびプロセスがここに記載される。とりわけ、これらのシステムおよびプロセスは、ターゲットサンプル(たとえば生体サンプル)の定量的な顕微鏡分析の標準化に関連している。生体サンプルの例としては、細胞、細胞群、組織切片、組織切片のアレイ(たとえばマイクロテッシュアレイ)、および、これらのいずれか1つ以上の組み合わせを挙げられる。生体サンプルについては、1つ以上の染色剤によって処理することができる。場合によっては、これらの染色剤は、免疫組織化学系の染色剤である。場合によっては、この免疫組織化学系の染色剤は、蛍光染色剤である。
【0017】
一般的に、顕微鏡システムは、ターゲットサンプルに光をあてるように構成されている光源、光をあてたターゲットサンプルの拡大画像を作成するように構成されている光学系、および、拡大画像のデジタル画像をキャプチャするように構成されている検出器(たとえばデジタルカメラ)を含んでいる。定量的な結果については、キャプチャされたデジタル画像を操作することによって、得ることが可能である。このような画像操作は、当業者に知られている画像処理技術を含むことが可能である。少なくともいくつかの実施形態では、上記のような1つ以上の画像キャプチャおよび画像操作が、プロセッサを利用することによって実施される。このプロセッサは、あらかじめプログラムされている命令を実行するコンピュータを含むことができる。
【0018】
このシステムは、さらに、光源の標準化サンプルを検出器に向け直すように構成されている、キャリブレーションデバイスを含んでいる。少なくともいくつかの実施形態では、システムプロセッサが、既存の顕微鏡に関する補正因子を決定するように構成されている。この補正因子については、キャリブレーションデバイスを用いて得られた、光源の標準化サンプルに対する測定から、決定され得る。この補正因子を、ターゲットサンプルの検出画像の強度における何らかの変動を補正するために、(たとえばプロセッサによって)使用することができる。いくつかの実施形態では、システムプロセッサは、キャリブレーション因子を得るための命令(たとえばソフトウェア)に従って動作する。代替的あるいは追加的に、このシステムプロセッサは、検出画像を補正するための補正因子を使用するための命令に従って動作する。このようなキャリブレーションは、何らかの定量的な結果から、時間とともに生じ得る同一の顕微鏡システムにおける光源の強度の変動性、及び、異なる顕微鏡システムおよび異なる光源のいずれか又は両方を使用して得られた定量的な結果の間の変動性を除去するために有用である。
【0019】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションデバイスは、光源から検出器に向かう光の散乱部分を制御するために、光源と検出器との間にある光学経路に沿って配置することができる散乱面を含んでいる。検出された散乱光における変動性を、上記のような補正因子を明らかにするために使用することができる。
【0020】
他の実施形態では、システムプロセッサは、既存の顕微鏡の光学部品に関する補正因子を、決定あるいは利用可能とするように構成されている。この補正因子については、顕微鏡の光学部品を使用して標準化サンプルを測定することによって、決定することができる。この補正因子を、ターゲットサンプルの検出画像の強度に影響を与える、既存の顕微鏡の光学的特徴における何らかの変動を補正するために、(たとえばプロセッサによって)使用することができる。
【0021】
顕微鏡システム
【0022】
ここに記載されているシステムおよびプロセスは、光源を組み込んだ、任意の顕微鏡システムに対して、一般的に適用することが可能である。これらのシステムおよびプロセスを使用することができる少なくともいくつかの顕微鏡システムの例は、光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、および、共焦点レーザー走査顕微鏡法を含む。コネティカット州ニューヘブンのHistoRx,Inc.から市販されている、PM−2000TM機器が、典型的な顕微鏡システムである。これらのシステムおよびプロセスは、準定量的あるいは定量的な結果を与えるように設定されているシステムに関して、特に有用である。代表的な用途としては、病理学の分野において使用されているような、免疫組織化学(IHC)の使用を挙げられる(たとえば、M.Cregger et al,「Immunohistochemistry and Quantitative Analysis of Protein Expression」、Arch.Pathol.Lab.Med.,Vol.130、2006年7月、1026〜1030ページを参照)。一般的には、これらの結果は、顕微鏡システムを用いることによって検査されたサンプルの染色強度に基づいている。サンプルについては、生物標本とすることが可能である。染色剤については、一般的な組織染色剤、特異性の染色剤、IHC、FISH、色原体性のもの、蛍光性のもの、などとすることが可能である。
【0023】
Cregger et al.にしたがうと、診断病理学者は、一般的に、2値の(正あるいは負の)エンドポイント、あるいは、3段階あるいは4段階の評価を用いることによって、主観的アプローチにしたがって、IHCを解釈する。コンピュータを活用することによって、病理学に基づくスコアリングに内在する変動性を除去するために役立つコンピュータプログラムを使用して、ターゲットサンプルに関する自動的な分析を得ることが可能である。免疫蛍光法では、蛍光生成物は、抗原の部位に沈殿する。これにより、サンプル内の抗原における、視覚的な位置特定が可能となる。写真によってキャプチャした後、画像分析用のソフトウェアによって、反応生成物を定量化することが可能となる。さらに、抗原を、特定の細胞部位(たとえば、核部位、オルガネラ部位、細胞質の部位、膜性の部位)、あるいは細胞外の部位(たとえば、「Camp et al,Nature Medicine 8(11)1323−1327,2002」を参照)に配置することが可能である。IHCを分析するための、非常に多くのコンピュータベースのプログラムが設計されている。たとえば、イリノイ州ロンバードにおけるBacus Laboratories,Inc.から入手可能なBLISSおよびIHCscore、カリフォルニア州サンファン・カピストラーノにおけるClarient,Inc.のACIS、および、コネティカット州ニューヘブンにおけるHistoRx,Inc.のAQUA(登録商標)解析などがある。
【0024】
一般的に、蛍光IHCに関して、タンパク質バイオマーカーによって染色された同一のターゲット組織サンプル(特定の抗体および2次的な蛍光検出試薬)から、複数のデジタル画像(たとえば、TIFF、JPEG、GIF、ビットマップ、PNG)が得られる。最適化された場合、蛍光染色剤は、吸収度に基づいて発色する染色剤によって得られるものよりも、幅の広いダイナミックレンジを与える。各デジタル画像を、2次的な蛍光信号の個別の1つを通過させるように構成された異なる光学フィルターを用いることによって、得ることもできる。したがって、2次的な蛍光信号のそれぞれに関して、少なくとも1つの個別のデジタル信号が得られる。定量的な分析のために、キャプチャされたデジタル画像が操作され(たとえば、画像処理用のソフトウェアが使用される)、組織サンプルにおける個別のスコアが得られる。
【0025】
さらに具体的に、上述のシステムおよびプロセスを、図1に例示されたシステムに関連して説明する。
【0026】
図1を参照すると、例示した反射光蛍光顕微鏡システム100は、励起源102、対物レンズ104、サンプル支持ステージ106、フィルターブロック108’および観察ヘッド110を含んでいる。サンプル支持ステージ106は、光軸に沿って、対物レンズ104の焦点面内にテスト用のサンプルを支持するように構成されている。フィルターブロック108’も、対物レンズ104と観察ヘッド110との間における光軸に沿って配置されている。フィルターブロック108’は、光軸に沿って配置されている2つの対抗するポート、および、光軸から外れた位置に配置されている第3のポートを有する、3ポートデバイスである。図示されているように、この第3のポートを、2つの対抗するポートを結合する線に対して直交させることもできる。
【0027】
励起源102からの光は、フィルターブロック108’の直交ポートに向けられている。このフィルターブロック108’は、励起源102からの光の一部を、対物レンズ104に向け直す。この対物レンズ104は、好ましくは、比較的に高い開口数を有し、これにより、対物レンズ104は、励起光の大部分をキャプチャすることができる。この対物レンズ104は、励起光をステージ上に配置されているテスト用のサンプルに向ける、集光レンズとして機能する。いくつかの実施形態では、単一のノーズピース(図示せず)内に、複数の対物レンズ104(たとえば、4X、10X、20X、40X、60X)が含まれている。このノーズピースを操作して、複数の対物レンズ104のいずれか1つを選択的に光軸上に配置することによって、テスト用のサンプルの倍率を調整することが可能である。
【0028】
テスト用のサンプルからの光(放射)は、対物レンズ104を介して、光学経路に沿って進み、フィルターブロック108’の対抗しているポートの第1のポートに進入する。サンプルの光の少なくとも一部は、光学経路に沿って進み続けて、フィルターブロック108’の対抗しているポートの第2のポートから、観察ヘッド110に向かって抜け出る。以下により詳細に示すように、フィルターブロック108’は、選択的に、自身を通過する光をフィルタリングする。蛍光顕微鏡検査法では、様々な蛍光(たとえば、赤、緑、青)放射を選択的に観察するために、フィルタリングを利用することができる。図示されているように、顕微鏡システム100は、複数のフィルターブロック108’,108’’,108’’’(まとめて108とする)を含むことが可能である。各フィルターブロック108は、選択された放射波長を、観察ヘッド110に向けて通過させるように調整されている。それぞれのフィルターブロック108を、カルーセルすなわちタレット115内に格納することもできる。これにより、テスト用のサンプルを乱すことなく、それぞれのフィルターブロック108を迅速に選択することが可能となる。いくつかの実施形態では、それぞれのフィルターブロック108は、回転軸の周りに、タレット115内において放射状に配置されている。タレット115は、その回転軸を光軸に対して平行にした状態で配置されており、これにより、1つのフィルターブロック108’が、光軸上に配置される。タレット115を回転することによって、選択的に、1つのフィルターブロック108’が光軸からずらされて、別のフィルターブロック108’’,108’’’の1つが光軸上に配置される。
【0029】
観察ヘッド110は、フィルターブロック108からの光の少なくとも一部を、電荷結合素子(CCD)カメラ112などの画像収集デバイスに向ける。いくつかの実施形態では、テスト用のサンプルを手動で観察することを可能とするために、観察ヘッド110が、追加的に、1つ以上の接眼レンズ(図示せず)を含む。このような接眼レンズを、テストの前およびテスト中において、ステージ106の配置を調節するため、およびステージ106上でのサンプル107の配置を調整するために、使用することが可能である。いくつかの実施形態では、励起源102に対するサンプル107の露光時間を制御するために、第1のシャッター117が設けられている。第2のシャッター114は、CCDカメラ112などの撮像デバイスの露光時間を制御するために設けられている。図示されているように、シャッター114を、テスト用のサンプルと観察ヘッド110との間の光学経路に沿って配置された、独立の部品とすることが可能である。独立のシャッター114に代えて、あるいはシャッター114に加えて、シャッターを、CCDカメラ112内に一体化することも可能である。
【0030】
顕微鏡システム100は、さらに、コントローラ116を含んでいる。このコントローラ116については、画像取得プロセスの全体を制御するために使用することが可能である。好ましくは、コントローラ116は、顕微鏡システム100の自動制御を可能とするために、顕微鏡システム100の1つ以上の構成部品と接続している。この実施形態では、コントローラ116は、1つ以上の励起源102、対物レンズ104の軸変換器119(焦点調整)、CCDカメラ112、シャッター114、タレット115、およびステージ位置コントローラ118と接続している。コントローラ116は、プログラムコードの制御の下で動作する、少なくとも1つのマイクロプロセッサすなわちコンピュータ116を含むことができる。
【0031】
動作の際には、コントローラ116は、ステージ106の位置をあわせるために、ステージ位置コントローラ118に対して信号を送信することができる。これにより、テスト用のサンプルの選択された範囲すなわちスポット109が、光軸に一致するように配される。コントローラ116は、さらに、軸変換器119に対して信号を送信することが可能である。この軸変換器119は、ステージ106に対して、光軸に沿って対物レンズ104の位置を合わせるとともに、その位置を修正するように構成されている。モーター付のノーズピースを含む実施形態に関しては、コントローラ116は、ノーズピースに対して第2の信号を送信することが可能である。これにより、ノーズピースが、焦点調整の前に、複数の対物レンズ104の選択された1つを、光軸に一致するように回転させる。コントローラ116は、さらに、タレット115に対して信号を送信することが可能である。これにより、タレットの回転が制御され、複数のフィルターブロック118の1つが選択される。これを受けて、タレット118が回転し、フィルターブロック118の選択された1つが、光軸に一致するように配置される。次に、コントローラ116は、励起源102に対して信号を送信する。これにより、少なくとも一時的に、この励起源102が駆動され、テスト用のサンプルに光をあてる。シャッター114は、通常は閉じており、テスト用のサンプルとCCDカメラ112との間の光学経路を遮断している。顕微鏡によっては、機器を初期化する際に、光源102が駆動されるものもある。蛍光顕微鏡を用いる場合、いずれかのテストサンプルを測定する前に、高強度のランプが、励起源102の強度を安定化することを可能とするための、ウォームアップ時間を必要とする。
【0032】
このような蛍光システムに関し、光源102は、動作中に点灯したままでいてもよい。このような用途では、光源102とテストサンプルとの間に設けられている第1のシャッター117は、サンプルを観察してサンプルの画像を取得する準備が整うまでの間、サンプルに対する照射を遮断するために使用される。テストサンプルの露光を上記のように制限することによって、サンプルの色褪せを回避することが可能となる。CCDカメラ112には、場合により、第2のシャッター114が設けられている。コントローラ116からのトリガー信号を受信すると、第1のシャッター117は、所定の露光時間だけ開放された後、再び閉じられる。コントローラからの第2のトリガー信号は、CCDカメラ112に設けられている第2のシャッター114に送られる。このような信号制御による露光によって、テスト用のサンプルからの制御されたサンプルの放射が、CCDカメラ112に到達することが可能となる。したがって、第1のシャッター117は、少なくとも第2のシャッター114によって制御される露光の全持続期間においては、開放されている。いくつかの実施形態では、2つのシャッター114、117の動作を、共通の信号によって制御することができる。あるいは、これらのシャッターを、同期して動作するように構成することもできる。コントローラ116の制御に基づいて、CCDカメラ112は、テスト用のサンプルからの光の電子画像をキャプチャする。この画像を、コントローラ116に、あるいは分析用の外部のシステムに転送することも可能である。
【0033】
選択的に、2つのシャッター114,117を独立に制御することによって、各シャッターのタイミングを、異なる効果を生むように変更することが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、第1のシャッター117は、テストサンプルを露光するために所定の期間だけ開放され、その後に閉じられる。これについては、光源102からの光に対して発光性のテストサンプルを露光させるために、実施することができる。第1のシャッター117が閉じられた後、第2のシャッター114を動作させることによって、光源の光による干渉のない状態で、サンプルの発光をサンプリングすることが可能となる。
【0034】
一実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、一体化された定量的IHC分析システム(たとえば、コネティカット州ニューヘブンのHistoRx,Inc.から市販されている、AQUA(登録商標)解析PM−2000TMシステム)の一部である。AQUAは、HistoRx,Inc.の登録商標である。このIHC分析システムは、光を通さない筐体内に組み立てられている、以下に示す部品から構成されている。蛍光顕微鏡(たとえば、ペンシルバニア州センターバレーのOlympus America,Inc.から市販されている、オリンパスBX51落射蛍光顕微鏡)。この顕微鏡は、様々な対物レンズ(たとえば、4X、10X、20X、40X、60X)からの選択を制御するための、モーター付のノーズピース、および様々なフィルターキューブ選択(たとえば、DAPIにおける、Cy2、Cy3、Cy5およびCy7、あるいはこれらと等価の波長)からの選択を制御するための、モーター付のフィルタータレットを備えている。このシステムは、さらに、モーター付のステージ(たとえば、Prior Scientific、部品番号H101A)を含む。ステージを駆動するPCIカードは、マサチューセッツ州ロックランドのPrior Scientific,Inc.から市販されている、モーター付のステージ(Prior Scientific、部品番号H252)である。コントロールカードは、コンピュータコントローラ内のPCE拡張スロットを占有する。焦点制御は、統合ソフトウェアによって促進される。このシステムは、さらに、光源(たとえば、カナダ、オンタリオ州のEXFO Life Sciences&Industrial Divisionから市販されている、X−CITE120システム。この光源は、水銀/金属ハロゲン化物ランプを備えている)、画像キャプチャのための単色のデジタルカメラ(たとえば、カリフォルニア州ゴレタのOPTRONICSから市販されている、QUANTIFIREカメラ)、およびコンピュータコントローラを含む。この実施形態では、コンピュータは、WINDOWS XP(登録商標)、あるいはより高度のオペレーティングシステム環境を実行する、パーソナルコンピュータである。
【0035】
機器の標準化
【0036】
特定のシステムを用いることによって得られた定量的な結果を標準化するためには、励起源の強度の変動性およびデバイスの変動性(すなわち、光学経路に沿った変動性)を明らかにするように、システムの固有因子を決定すればよい。これを得るために、たとえばインライン・ランプ強度測定ツールを用いて、励起光源の強度の測定値を得るようにしてもよい。また、標準的なサンプル(またはキャリブレーションサンプル)、すなわちキャリブレーション顕微鏡スライドの測定値については、特定のシステムを用いることによって得ることが可能であり、これにより、1つ以上の光学経路因子が規定される。このようなキャリブレーションスライドを使用することは、蛍光ベースのIHC用途に関して、特に有用である。この用途では、キャリブレーションスライドのサンプル蛍光範囲が、それぞれのバンド幅内において放射を放っている。蛍光放射によって、1つ以上の個々の波長のそれぞれにおいて、光学経路の特性を評価することができる。これらの測定値については、同時に得ることも、また、個別に得ることも可能である。
【0037】
光源強度の測定
【0038】
一般的に、光源強度の直接の測定を提供するプロセスあるいは機器が、システムに最も都合よく組み込まれている。光源サンプリング機器は、光源強度のサンプルをキャプチャする。いくつかの実施形態では、光源強度のサンプリングされた部分が、検出器(たとえばカメラ)に向かうものもある。光源強度の測定は、システムの光学部分とは無関係に実施されることが可能である。
【0039】
より一般的には、サンプリング用のプロセスあるいは機器は、光源検出器の飽和閾値よりも低く、かつ、ノイズレベルよりも高い強度レベルにおいて、光源のサンプルにアクセスする。たとえば、電子センサーによって、露光時間(例えば10ミリ秒)以内に、光源の強度をサンプリングすることが可能である。代替的あるいは追加的に、得られたサンプルが既存の検出デバイスにおける感度範囲内に含まれることを確保するために、光源を弱めることも可能である。
【0040】
光源強度のサンプリングを、インライン・ラジオメーターを用いることによって実施することもできる。これにより、光源強度の測定可能な電圧の典型例が得られる。このような測定電圧を、システムによって自動的に処理することも可能である。たとえば、この電圧を、さらなる処理のためにプロセッサに送信することが可能である。いくつかの実施形態では、電圧レベルが、電圧のデジタル表現に変換される。このような変換を、アナログからデジタルへの変換を用いて実施することも可能である。これにより、サンプリングされた電圧をデジタル処理することが可能となる。このデジタル処理を、プロセッサにおいて実行される1つ以上のソフトウェア、およびデジタル信号処理に適したハードウェアによって実施することも可能である。
【0041】
サンプリングされた光源強度を、光源から直接的にあるいは間接的に得ることができる。いくつかの実施形態では、サンプリングされた光源強度が、少なくとも、サンプリング結果に対して単独で影響を与え得るシステムの他の部品(光学系(たとえば対物レンズ)など)とは無関係に得られる。代替的あるいは追加的に、サンプリングされた光源強度が、光源自体において測定される。これにより、顕微鏡からのいずれの影響も回避することが可能となる。
【0042】
キャリブレーションキューブ
【0043】
いくつかの実施形態では、光源の強度を測定するために光のサンプルを得る目的で、特別なキャリブレーション機器を使用することもできる。好ましくは、このキャリブレーション機器によれば、ターゲットサンプルの画像とほぼ同時に、相対的な光源強度の測定値を得ることが可能である。少なくともいくつかの実施形態では、これは、相対的な光源強度の測定値を得るために光学経路へ特別なキャリブレーション機器を導入し、継いで、サンプル画像を得るために光学経路から外すよう切り換えることによって実施される。たとえば、顕微鏡システムが、回転可能なタレット115内にあらかじめ載置されている複数のフィルターキューブを使用する蛍光システムである場合には、このキャリブレーション機器を、フィルターキューブの1つ(すなわち、キャリブレーションキューブ)として、タレット115内に含むことができる。これにより、測定の過程において、キャリブレーションキューブを、他のフィルターキューブと自動的に交換することが可能となる。
【0044】
一般的に、フィルターキューブは、キューブ状のフレームの上面、底面および前面に、開口部を有している。前面の開口部(すなわちポート)は、光源からの光がキューブに進入することを可能とする。その後、光は、進入光の軸に対して45度となるように配された内部の反射面によって、反射される。この傾斜した反射面(すなわち鏡)は、サンプリング光の反射部分を、キューブの底面の開口部(すなわちポート)に向け直す。動作中においては、この配向された光を、ターゲット(組織サンプルなど)を照らすために用いることが可能である。向き直された光は、顕微鏡システム内に設けられている対物光学系を含み得る、光学経路に沿って進む。照明光の少なくともいくらかの部分は、サンプルによって反射され得る。少なくともいくつかの用途に関しては、蛍光性による誘導光をサンプルから放射することも可能である。どちらの場合においても、サンプルからの光(反射光および/または放射光)の少なくとも一部は、同一の光学経路に沿って戻り、底面のポートからキューブに進入する。キャリブレーションキューブに進入する光の少なくとも一部は、傾斜した鏡の傾斜した反射面を通過して光学経路に沿って進み、キューブの上面の開口部(すなわちポート)から抜け出て、撮像デバイスに向かう。
【0045】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションキューブは、底面の開口部を遮断するために光散乱面が貼付された、改良されたフィルターキューブである。動作中においては、キューブに進入する光は、内部の傾斜した反射面によって反射され、光散乱面に向かう。この反射光は、光散乱面に到達する。光散乱面からの散乱光の少なくとも一部は、戻されて内部反射面を通過し、キューブの上面の開口部から抜け出て、撮像デバイスに向かう。同じ光散乱面を有する同じキャリブレーションキューブを、同じ光源からの光を異なる時間においてサンプリングするため、あるいは、異なる光源からの光をサンプリングするために、使用することができる。この様式では、キャリブレーションキューブは、標準化された表面(一般的なサンプルではない)からの散乱光の強度をサンプリングするための手段を提供する。これは、撮像デバイスによってキャプチャされ、標準化された光強度の測定値の決定に使用可能である。好ましくは、このようなサンプリングについては、1つ以上のターゲットスライドおよび対物レンズを再配置することなく、実施することが可能である。
【0046】
キャリブレーションキューブは、ランプの強度を測定するためのインライン・アクセスツールとして機能する。強度測定ツールは、プロセッサ116(図1)と共同して、ランプ強度の逸脱を追跡することを可能とするだけでなく、定量的な結果を規格化する直接的な手段を実現する。このようなランプ強度の逸脱を明らかにすることによって、組織サンプルにおけるバイオマーカーの発現に対する、正確な測定が促進される。たとえば、同一構成で標準化されたキャリブレーションキューブを備えた、いくつかの顕微鏡システムによって得られたキャプチャ画像からのデータを収集することによって、除去しなければランプ強度の変動性の原因となるはずのあらゆる影響を、効率的に除去することが可能である。したがって、収集された画像から得られた定量的な分析結果(AQUAスコアなど)を比較することによって、システムの差ではなく、ターゲットサンプルの差を信頼性をもって表示することが可能となる。キャリブレーションキューブを用いて得られた光源のキャリブレーションデータについては、収集し、蓄積し、さらに様々なシステムソフトウェア・アプリケーション(たとえば、システムの初期化および設定プログラム、画像取得プログラムなど)によって操作することが可能である。これにより、ユーザ干渉を最小化すること、および、時間およびコストをごく小さくすることが可能となる。
【0047】
一実施形態では、図2を参照すると、キャリブレーション機器すなわちキューブ130は、筐体132を含み、この筐体132は、第1のポート134aと、これに対向しているとともに、これと共通の光軸に沿って一直線上に並んでいる、第2のポート134bとを含む。この筐体132は、さらに、当該光軸上にはない側面ポート134cを含む。図示されているように、この側面ポート134cは、前記光学経路に対して直交している。筐体132は、さらに、内部反射面136を含んでおり、この反射面は、光軸に対してゼロではない角度θを形成している。光は、励起源102から、側面ポート134cを介して進入する。反射面136は傾斜しており、これにより、進入した励起光の一部が、光軸に沿って、第2のポート134bを通過する方向に向け直される。キャリブレーションキューブ130は、さらに、光散乱面138を含み、この光散乱面138は、第2のポート134bに関連して配置され、同一の光軸に沿って反対の方向に向けて、励起光を散乱する(すなわち戻す)ようになっている。散乱された励起光の少なくとも一部は、反射面を通過して、第1のポート134aから筐体132を抜け出る。この散乱光については、第1のポート134aと一直線上にあるCCDカメラ112によって、検出することが可能である。
【0048】
別の実施形態では、キャリブレーション機器を、鏡面化された表面を有しないように形成することもできる。たとえば、図2に示したキューブ130とほぼ同じ構造において、内部反射面136を、光散乱面と交換することが可能である。この光散乱面については、側面ポート134cを通過した光源102からの光に対する方向修正を促進するように、キューブ内で傾斜させることが可能である。
【0049】
光散乱面138は、ほぼ一様であり、微小に反射する表面(たとえば艶消し面)である表面を有している。この表面は、視野の全体にわたって一定の反射率/蛍光性を与えており、これにより、サンプリングされた光源からの光の、均一性が測定される。少なくともいくつかの実施形態では、光散乱面138は、実質的に均一に光を散乱する。光散乱面138を形成している材料は、高温および高い光強度に対して、劣化および変動することなく耐えることができなければならない。この材料は、好ましくは、剛体あるいは少なくとも半剛体であり、黄ばみ、劣化あるいは光褪色しにくいものである。さらに、この材料は、再生可能であって、比較的に安価である必要がある。いくつかの実施形態では、これらの条件を満たす特定の金属、セラミックあるいはプラスチック材料を使用することが可能である。セラミック材料(たとえば、金色および白色のセラミックターゲット)は、オハイオ州ウィルミントンのAvian Technologies,Inc.から市販されている。このような材料を、キャリブレーション・キューブフィルター148(図3)のために、使用することも可能である。代替的あるいは追加的に、このような材料を、標準的なキャリブレーションスライドのために使用することも可能である。別の実施形態では、1枚の薄いフィルターペーパーを使用することも可能である。
【0050】
蛍光顕微鏡の用途では、CCDカメラ112によって検出される放射光は、励起光よりも実質的に低強度である。CCDカメラ112の飽和を回避するために、励起源自体を検出したときに、1つ以上のフィルターが、励起源とカメラ112との間に含まれて、これにより、十分に低いレベルにまで光が減衰される。いくつかの実施形態では、1つ以上の減光(すなわち灰色の)フィルターが、励起源102とCCDカメラ112との間の光学経路に沿って設けられている。たとえば、第1の減光フィルター138aが、側面ポート134cに設けられており、これにより、筐体132に進入する励起光を減衰する。第2の減光フィルター138bは、第1のポート134aに設けられており、これにより、CCDカメラ112に戻される散乱光を減衰する。各フィルター138a,138bの減衰値については、これらの効果の組み合わせによって、励起源102からの散乱光によってCCDカメラ112が飽和しないことを確保してさえいれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
実施例:図3に示したキャリブレーションキューブ130の実施形態において、キューブ130が、正規のOLYMPUSフィルター筐体(すなわちホルダー)140(OLYMPUS部品番号U−M610、U−MF2、BXフィルター・ホルダーキューブ)から構成されている。この筐体140は、放射および励起開口部144a,144bに減光フィルター142a,142bを備えているとともに、50/50ダイクロイックミラー146を備えている。いくつかの実施形態では、個別のフィルターフレーム145a,145b(図4)を用いることによって、開口部144a,144bのすぐ近くに、フィルター142a,142bが保持されている。
【0052】
筐体140の底部には、光散乱面138(図2),148(図3、図4)が設けられており、これは、ポート144c(図3)上に取り付けられていて、サンプル開口部144cを完全に遮断するように配置されている。このキャリブレーションキューブの分解斜視図が、図4に示されている。
【0053】
実施例:一例として、キャリブレーションキューブ130は、25mmの2つの減光フィルター(たとえば、ヴァーモント州ロッキンガムのChroma Technology Corp.から市販されている、Chroma cat.no.2200a)を含む。キューブ130は、さらに、ダクロックミラー、50/50ビームスプリッター(たとえばChroma cat.no.21000)を含む。これは、フィルターホルダー(キューブ)140(たとえばChroma cat.no.91018)の内部に収納されている。散乱面は、フィルターペーパー148(たとえば、ペンシルバニア州ウェストチェスターのVWRから市販されている、VWR cat#28306−153)を含むことができる。使用されるフィルターペーパーの特定のブランドは重要ではないが、異なる顕微鏡システムの全てのキャリブレーションキューブ130において、同一のフィルターが使用されることが好ましく、これにより、結果の均一性が確保される。後述するように、これは重要ではないとしても、異なるフィルターペーパー148を使用することによって、キャリブレーションキューブ130に関して、相対的な測定を実施することが可能である。これは、共通の(すなわち標準化された)キャリブレーションキューブと比較される。このような比較を、補正プロセスにおいて明らかにされるオフセットを決定するために、使用することができる。
【0054】
他の例では、キャリブレーションキューブ130は、顕微鏡フィルターホルダー(たとえば、ヴァーモント州ロッキンガムのChroma Technology Corpから市販されている、OLYMPUS部品番号U−M610、U−MF2、BXフィルター・ホルダーキューブ、cat#91018)を含む。この顕微鏡システムに適合する、他の市販されているフィルターキューブを使用することも可能である。特定の実施例では、減光フィルターが、ND1.0部品番号UVND1.0、ND1.0減光フィルター(透過率10%、25mm)、および、ND2.0部品番号UVND2.0、ND2.0減光フィルター(透過率1%、25mm)である。これらは、Chroma Technology Corpから市販されている。50/50ビームスプリッター/ダイクロイックは、Chroma部品番号21000、50/50ビームスプリッター(38×26mm)である。キューブの底面には、WHATMANフィルターペーパー(グレード1、Cat No.1001−125、ペンシルバニア州ウェストチェスターのVWR)が貼り付けられている。好ましくは、これらのフィルター材料は、適切な量の光をCCDカメラ112に向けて戻すように散乱する。これにより、合理的な露光時間内に、カメラ112によって画像を取得することが可能である。たとえば、露光時間を、約3ミリ秒〜200ミリ秒の間から選択することも可能である。適用可能なカメラの性能にとって、上記の範囲外の他の露光時間が適切である場合には、その時間を選択することも可能である。
【0055】
CCDカメラ112において受光された散乱光は、好ましくは、より明るくなる(あるいはより暗くなる)可能性のある他のキューブアセンブリにおける変動を考慮して選択された露光時間において、カメラの飽和レベルを下回っている。200ミリ秒よりも長い露光時間において、散乱材料が、使用可能信号(カメラの飽和限界を下回っている)を出力することも、望ましいとはいえないが、受け入れられる。
【0056】
システムの標準化に使用するために、特別に設計されたキャリブレーション・フィルターキューブ130を、顕微鏡システム100(図1)のタレット内に導入することが可能である。このキャリブレーションキューブ130は、インライン・ランプ強度測定ツールとして機能し、このツールは、入射する励起光源の強度に対して直接的に比例する散乱光をサンプリングすることによって励起光の強度を測定するための、手段を提供する。したがって、サンプリングされた散乱光を、使用中における励起源の光強度の変動を追跡するために、使用することができる。このような強度の変動は、励起源における長期的な影響(エージングなど)から生じる可能性があり、この場合、エージングの通常のプロセスにおいて、励起源の強度がゆっくりと減衰する可能性がある。変動は、また、他の効果に起因する可能性のある、短期的な影響からも生じる可能性があり、他の効果としては、たとえば、とりわけ、大気温度の変動、デバイスの加熱によるデバイスの温度の変動、および励起電圧および電流を挙げられる。
【0057】
光源における光強度のサンプルが得られる画像取得の際には、励起減光フィルター142aを介して進む光は、減衰され、ビームスプリッター146を通過して、キャリブレーション材料148(たとえば白色紙のターゲット)によって反射される。次に、反射された(すなわち散乱された)光は、放射減光フィルター142bにおいてさらに減衰され、その後、カメラ112(図4)によってキャプチャされる。減光フィルター142a,142bは、励起光が大きく減衰してキャリブレーション材料148に作用する強度が減少するように、構成されている。放射フィルター142aは、より多くの光を通過させることによって、デジタルカメラ112によって観察される強度の減少に寄与している。
【0058】
キャリブレーションキューブの標準化(CC)
【0059】
個々のキャリブレーションキューブは、材料の差異に起因する固有の変動を有している可能性がある。この差異は、機器から得られた定量的な結果を規格化するために、明らかにされることが好ましい。製造時においては、普遍的で標準的なキューブを特定することが可能である。その後、製造された全てのキューブは、新しいキューブのそれぞれを用いて一定の光源をサンプリングすることによって、普遍的で標準的なキューブと比較され、何らかの本質的な差異が明らかにされる。これは、すなわち、キューブ補正あるいはキューブキャリブレーション因子(CC)を適用することによる。このキューブキャリブレーション因子は、好ましくは、新しいキャリブレーションキューブごとに、初めに決定される。場合によっては、その後、システムのメンテナンスのために、キューブキャリブレーション因子を周期的に決定することも可能である。さらに、この因子を、キューブの材料特性の変化(すなわち、エージングによる変化)が生じた可能性のあるときに、決定するようにしてもよい。
【0060】
実施例:多数の類似したキャリブレーションキューブを特徴づけるために、同一の励起源およびカメラ配置を用いることによって、1群の5つのキューブ(J1〜J5)のそれぞれに関して、結果が得られた。キューブの特定の1つ(すなわちJ5)は、グループのための基準キューブとして設計された。このキューブについては、普遍的で標準的なキューブであると考えることが可能である。この基準キューブJ5は、テストされる他のキューブとともに、顕微鏡システム100(図1)のタレット115に対して同時に導入された。各キューブJ1〜J5に関して、キャリブレーションキューブ130を介して得られる、光源によるサンプリング光の画像が、デジタルカメラ112によって取得された。このように取得された光強度の測定値が、テストされた異なるキャリブレーションキューブ間において比較された。各テストキューブに関して測定された強度における、基準キューブJ5を用いて測定された強度に対する比率が決定され、キューブキャリブレーション因子(CC)が示された。本例の実験では、個別のキューブJ1〜J5のそれぞれに関して、16個の測定値が収集された。各キューブJ1〜J5に関して得られた強度における、基準キューブJ5の強度に対する比率が決定された。表1は、5つのキューブに関して決定された、基準キューブ(J5)と比較したCC値を示している。キューブJ1〜J5の構造が類似していたため、強度の比率は、全て、1に近くなっている。
【0061】
[表1]キューブキャリブレーション因子(CC値)
キャリブレーションキューブ番号 CC
CC2 0.894
J1 0.929
J2 0.989
J3 0.907
J4 0.883
J5(基準キューブ) 1.000
【0062】
一時的な影響を決定するために、2日間にわたって、同一の機器を用いて、各キューブに関して光強度の測定値が測定された。両日とも、各キューブを介して、10個の測定値のうちの最小値が取り出された(キャプチャされた画像における画素強度の合計)。その結果が、平均の合計強度として、グラフによって、0〜120,000のスケールにおいて図5に示されている。この結果は、全てのキューブJ1〜J5を用いた測定において、光源強度の揺らぎが認められたことを示している。全てのキューブ間における補正係数R2の値は、比較的に高いこと(たとえば、>0.95)が好ましい。このテスト結果は、実際の試料画像の取得の際に、光源の強度が揺らぐ可能性があることを示唆している。これらの揺らぎは、ランプが点灯されるたびに、短期間に生じる可能性がある。また、この揺らぎは、ランプが点灯した状態のままでいて、長時間にわたってゆっくりとした変動が生じているときにも、生じる可能性がある。
【0063】
光源の標準化(LS)
光源の標準化LSを決定するための手順の一例では、照らされているキャリブレーション面のキャプチャされた画像の画素強度が、合計に組み込まれる。画素のために使用される特定の強度スケール値ならびに画像内の画素の数に応じて、異なる範囲を特定することが可能である。AQUA(登録商標)システムを使用して得られる一例のLS値は、約20,000〜120,000におよぶ。LS因子および選択された強度値から、比率を形成することが可能である。次に、このような比率を、ターゲットサンプルデータを補償するために使用することができ、これにより、光源の変動が本質的に除去される。一例の実施形態では、選択された値(100,000)と、AQUA(登録商標)システムの範囲内に含まれているLS因子とを用いて、比率が形成される。
【0064】
デバイスの光学経路(OP)の測定
一般的に、光学経路の補正手順は、既知の反射性、蛍光性を示すキャリブレーションサンプル(たとえば、キャリブレーションスライド)を利用する。これは、特定のデバイスあるいはシステムにおける光学経路の性能に対する、直接的な測定に利用可能である。キャリブレーションサンプルを、既存の顕微鏡システムの光学経路の固有の性能に関して、補正因子を得るために使用可能である。異なる顕微鏡システムを同様に補正する場合には、異なるシステムから得られるターゲットサンプルの結果を、異なる顕微鏡システム間において、信頼性をもって比較することが可能である。
【0065】
非常に大まかにいえば、キャリブレーションサンプルは、以下の特徴を有している。
・システムにおいて通常どおりに分析されたサンプルのいくつかの特徴点を示す(すなわち、蛍光システムに関しては、これらの特徴点は、励起/放射の波長を含むことができる)。
・光学的な性質(たとえば反射性)を有する、均一な材料(再生可能で、入手可能で、かつ安価なもの)を用いて構成されている。
・少なくとも蛍光性の用途に関しては、上記した均一な材料を不透明なもの(すなわち、セラミックなど)とすることが可能である。
・明視野の透過的な用途に関しては、上記した均一な材料は、必要であれば、検出器にとって受光可能なレベルにまで、光源を減衰させる。
・色褪せを最小化する(蛍光システムに関して)。
【0066】
所定の顕微鏡システムにおける光学経路の間の変動は、同一のシステムに関して徐々に大幅に変化することは、あまりない。したがって、通常の動作においては、光学経路の補正手順を再実施する明白な必要性はない。少なくともいくつかの実施形態では、光学経路の補正因子は、製造時において決定される。この光学経路の補正因子を、顕微鏡システムに対するアフターサービス(たとえば清掃)の後に、再決定することも可能である。
【0067】
コントロール又はキャリブレーションスライド
【0068】
標準化された機器キャリブレーションサンプル(コントロールスライドすなわちキャリブレーションスライド)は、キャリブレートされる特定のシステムにおいてデータを取得するために使用され、これにより、特定の顕微鏡システムおよび光学的配置の、光スループット効率の近似値が求められる。
たとえば、コントロールスライドを、青色あるいは緑色の蛍光基準スライドを提供する蛍光基準スライドセットXF900(ヴァーモント州ブラトルバラのOmega Optical Inc.から市販されている)とすることが可能である。設定された露光時間(たとえば、約3ミリ秒〜1000ミリ秒、すなわち、CCDカメラ112の電流範囲)内に各チャネルにおける十分な信号(すなわち波長)を取得することができる限り、他の均一なサンプル材料を使用することもできる。また、この材料は、標準的な回数の実行を経た後に、最小の色褪せを示すことが好ましい。サンプル材料は、各機器を標準化するために使用することができるように、再生可能である必要があるとともに、顕微鏡のステージに適合するようなサイズでなければならない。この材料は、好ましくは、鏡面反射の小さい環境において、顕微鏡システムにおいて使用されている各フィルターキューブを介して取得される、適切な波長帯のスペクトル成分を有する光信号を、放射あるいは反射する。他の実施例は、着色されたプラスチック、紙、およびセラミックからなる他の反射材料、金属表面、あるいは、様々なインクおよび染料によって被覆された表面を含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。
【0069】
実施例:キャリブレーションスライドが、顕微鏡システム100のステージ上に載置された。この顕微鏡システム100のフィルタータレット115(図1)内には、あらかじめ標準化されたキャリブレーションキューブ130(図2)が、前もって取り付けられている。2つの異なる機器コントロールスライドがテストされた。サンプル1は、スペクトル近似FITC/GFP(緑色励起)を有する一方、サンプル2は、スペクトル近似DAPI/Indo/Fura(青色励起)を有する。キャリブレーションスライド1に光があてられ、3つの異なるフィルターキューブ108(図1)のそれぞれ(各チャネルおよびキャリブレーションキューブに関するもの)を介して、このサンプルの蛍光性放射からなる画像が得られた。約30時間にわたって、900回を超える反復が実施された。定量的な結果について、各チャネルに関して、反復ごとに、強度のスコア(「導出されたAQUA(登録商標)スコア」)が算出された。これは、ビット深度(すなわち、0〜255)を乗じた露光時間で乗じた平均強度である。サンプル1を使用した場合のFITCチャネルを介した光強度は、過度に明るく、これは、この材料は、このチャネルにおいて取得する場合には、光の揺らぎを規格化するためには理想的ではないということを示している。別の結果として、サンプル2に関する以下に示す結果を参照されたい。これらの結果は、スライド1に関する反復に対するAQUA解析スコアとして、グラフ化された(図6)。このスコアは、各Cy3、Cy5チャネルにおいて得られたキャリブレーションスライド強度スコアに関するもの、およびこれらとは別の、キャリブレーションキューブに関するものである。基本的に、Cy3、Cy5およびキャリブレーションキューブ・チャネルにおいて、機器コントロールサンプル1を使用することによって、同一の光強度パターンが得られ、これは、この機器コントロールスライド材料の色褪せに起因する変動性は、生じそうもないことを示している。むしろ、変動は、システム100に固有の、真の光強度の変動性を示している。定量的な測定において、少なくともサンプルの最初の半分を通して、わずかな長期的減少が観察可能である。これと重複して、両方の方向において、比較的に短期的な変動もある。興味深いことに、異なるチャネルのそれぞれに関して独立に得られた測定値において、同様の傾向が観察されている。これは、変動が、少なくとも部分的に、励起源の強度における揺らぎに起因していることを示唆している。
【0070】
Cy3、Cy5チャネルおよびFITCチャネルを介した、第2のキャリブレーションスライド(スペクトル近似DAPI/Indo/Fura(青色励起))の画像、および、キャリブレーションキューブの画像を取得することによって、光源の変動性が、さらに追跡された(約20時間にわたって、約450回の反復がなされた)。一例の実施形態では、上述した「導出されたAQUAスコア」のような定量的な結果が、各反復に関して決定された。これらの結果は、スライド2に関する反復に対するAQUA解析スコア(図7)として、グラフ化された。基本的に、Cy3、Cy5チャネルおよびキャリブレーションキューブ・チャネルにおいて、機器コントロールサンプル2を使用することによって、同一の光強度パターンが得られた。これは、この機器コントロールスライド材料の色褪せに起因する変動性は、生じそうもないことを示している。むしろ、変動は、システム100に固有の、真の光強度の変動性を示している。サンプル2を用いたときの、FITCチャネルを介して見られる上記の光の揺らぎパターンは、標準的であり、さらに、このチャネルにおいて画像が取得される場合における標準化のために、使用されることが可能である。多くの反復において、FITCチャネルにおけるマイナスの傾斜として、このスライド材料のわずかな色褪せが見られる。このような色褪せが、通常の動作条件の下で取得される画像に悪影響を与えるとは考えられない。理想的には、この機器コントロールスライドは、約10%の色褪せが生じたあとに、交換される。たとえば、サンプル1に関する231回の実行後、および、サンプル2を利用した約20回の実行後である。
【0071】
機器の光学経路の標準化(OP)
【0072】
デジタルカメラ112における信号の測定値は、励起源102(図1)から顕微鏡システム100を介して進んできた光から得られ、この測定値は、このシステム100および測定されるサンプル107の固有の特性によって、変更される。機器100の光学経路は、励起光源から顕微鏡に伸びるライトパイプ、フィルターキューブ108、および使用される対物レンズ104および蛍光チャネルのそれぞれに関連する、光学系を備えることができる。デバイス100から得られる結果を標準化するために、上記の光学経路内の変動を補正するマシン固有因子(OP)を、各デバイス100に関して設定することができる。
【0073】
特定のシステムに関するマシン固有因子を算出するために、複数の画像(たとえば、16個の画像)が、標準的な機器コントロールスライド107から得られた。標準化される各システムに関して、機器コントロールスライド107は、同一の材料によって、同一の構造に構成されていた(したがって、顕微鏡システム100の影響がなければ、同じ結果が生じると推定される)。特定の光フィルターキューブ108を用いた単一の視野でのカメラ撮影の後、すぐに、フィルタータレット115が変更され、キャリブレーションキューブ130(図2)が配置された。キャリブレーションキューブ130は、対物レンズあるいはテスト用のサンプル(すなわちコントロールスライド107)のいずれも乱すことなく、単独で撮像された。各チャネルに関する露光時間は、固定されていた。各チャネルにおいて観察された信号強度に対するキャリブレーションキューブの強度の比率は、各フィルターに関する顕微鏡システムの光学経路の効率に関する、マシン固有因子を与えた。この値は、上記の特定の構造においては、システムにとって適切なものである。この構造は、倍率、光フィルター、および光学系などの構成によって、決定される。
【0074】
システムのマシン固有因子については、その基準を特定の値とすることによって、拡縮することも可能である。マシン固有因子が、色褪せていない機器コントロールスライドを用いて得られたデータを使用することによって、決定された。これらのデータは、異なる日における独立した実験において、複数回の実行(たとえば、5回の実行)から、飽和を回避するように露光時間を選択して得られたものである。各実行に関して、固有の値が算出された。実行された固有の値の間における%CVは、極端に低く、このため、固有の値を算出するためには、1回の実行でも効果的であった。
【0075】
実施例:表2は、5つの機器に関して得られた、マシン固有因子を示しており、これらは、3つのチャネル(FITC、Cy3およびCy5)に関して、フィルターを介して得られた。
【0076】
[表2]マシン固有因子(OP値)
機器 FITC−OP Cy3−OP Cy5−OP
1 1.15 1.14 1.09
2 1.61 1.49 1.86
3 1.46 1.38 1.18
4 1.00 1.00 1.00
5 1.38 1.07 1.32
【0077】
マシン固有因子は、さらに、固有の値/経験値として拡縮された。このとき、経験値は、この特定のシステムにおいて記録された最も低い平均値であった。固有の値は、2つの異なる青色の機器コントロールスライドを用いることによって決定され、どのスライドを用いたかに関わらず、再生可能であることが確認された。平均値および変動の百分率(%CV)の値が算出された。好ましくは、この%CVは、約20%未満であり、さらに好ましくは、この%CVは、約5%未満である。
【0078】
標準化
【0079】
上述した標準化因子(CC、LS、OP)は、個々の顕微鏡システムのそれぞれにおいて収集された定量的なデータを、理想的なシステムのものに変換するために使用された。1つ以上のシステムに適用される場合、これらから得られたデータは規格化され、このため、個々の顕微鏡および光源の揺らぎの、結果に対するいずれの影響も、軽減された。
【0080】
図8を参照すると、定量的な分析結果を標準化するためのプロセスのフローダイヤグラムは、予備的な初期化手順300を含み、そのあとに、テストサンプル手順200が続く。初期化手順300の一部として、ステップ210において、機器がセットアップされる。機器のセットアップは、適切な励起源102、フィルターキューブ108(図1)、およびキャリブレーションキューブ130(図2)によって顕微鏡システム100(図1)を構成するステップ、コントローラ116(図1)が適切なプログラム制御を含むことを確保するステップ、および顕微鏡システム100およびCCDカメラ112にとって必要とされ得る任意の初期化ルーチンを実行するステップを含んでいる。機器の設定が完了した後では、CCDカメラ112は、コントローラ116の制御に基づいて顕微鏡システム100を使用することによって、テスト用のサンプル画像を得ることができる。セットアップの後、ステップ220において、キャリブレーションキューブ130に関する補正因子(CC)、および顕微鏡システム100に関するマシン固有因子(OP)が得られる。上述したように、マシン固有因子(OP)については、顕微鏡システムの、製造時やアフターサービス/修理の際に、決定することが可能であり、さらに後で使用するために保存することもできる。したがって、マシン固有因子OPを得るステップは、あらかじめ保存されている値を調べるステップを含むことが可能である。後でテストサンプルの画像を分析する際に使用するために、1つ以上の上記因子(CC、OP)を、コントローラ116すなわち画像分析器によって保存することも可能である。
【0081】
テスト手順200の一部として、ステップ230において、システム100によってテスト用のサンプルが撮像される。このステップにおいて、光源の補正因子(LS)が得られる。より詳細にいえば、実際のテストサンプル107が、顕微鏡のステージ106上に載置され、ターゲットスポット109が、対物レンズ104(図1)を含む光軸上に配されるように、サンプル107の位置が決められる。この初期の位置合わせについては、観察ヘッド110(図1)によって手動で実行することも、またコントローラ116を使用することによって自動的に実行することも可能である。あるいは、手動での方向調整と、その後のコントローラ116による調整とを組み合わせることによっても可能である。ターゲットスポット109の規則的なアレイを含むテストサンプルに関しては、テストサンプル107は、好ましくは、(たとえば、1つのターゲットスポット109に対して)いったん位置合わせをされた後、サンプル107の追加的なターゲットスポット109をテストするために、あらかじめプログラムされたステージ106のオフセット調整を用いることによって、位置を修正される。
【0082】
ターゲットスポット109が光軸上に配されると、システム100は、CCDカメラ112(図1)を用いて、ターゲットスポット109のサンプル画像を取得する。一例の蛍光性IHCシステムに関しては、選択された波長帯(すなわち対象のチャネル)に関して、フィルターブロック108(図1)の個別の1つ(そのチャネルに対応したもの)を用いることによって、サンプル画像が得られる。キャリブレーションキューブ130(図2)は、タレット115(図1)を回転することによって選択される。さらに、励起源の強度を決定するために、キャリブレーションキューブ130を用いることによって、励起源の基準画像が得られる。必要に応じて、異なるチャネルを介して追加的なサンプル画像を得るために、追加的なフィルターブロック108を使用することも可能である。1つ以上のチャネル画像が、励起源の基準画像に関連しているのであれば(たとえば、ほぼ同時に取得されるのであれば)、チャネルおよび励起源のサンプルを得るための特定の順序を、変更することも可能である。このような関係については、複数の画像の合成画像を形成することによって、あるいは、さもなければ、それらの関係を反映するように画像をラベリングすることによって、実現することが可能である。
【0083】
ステップ240において後で分析および補正するために、サンプルおよび基準画像を、カメラ112からコントローラ116あるいは別体の画像分析器に送信することも可能である。画像分析は、異なるチャネルのそれぞれに関してAQUAスコアを算出するステップを含むことが可能である。補正すなわち標準化された結果を得るために、ステップ250において、1つ以上の補正因子(CC、OP、LS)が適用される。ステップ260において、テストサンプル107の特定のターゲットスポット109に関する、標準化出力データが提供される。同一のテストサンプル107の追加的なターゲットスポット109のために、テストサンプル手順200を繰り返すことも可能である。さらに、1つ以上の追加的なテストサンプル107のために、ステップ220において得られた同一の補正因子を用いて、テストサンプル手順200を繰り返すことも可能である。
【0084】
より詳細にいえば、定量的な分析結果を標準化するために使用される補正因子を得るための、初期化手順300の典型的なフローダイヤグラムが、図9に示されている。ステップ310および320において、カメラ112(図1)および顕微鏡が、それぞれ初期化される。これらのステップについては、連続的に実施しても、並行して実施してもよい。カメラ112および顕微鏡システム100の供給者は、一般的に、これらの初期化ステップ310、320を、初期化手順の形式で規定している。1つ以上の初期化手順を、自動化することも可能であるし、また、電源投入時のサイクル(power on cycle)の一部とすることも可能である。
【0085】
次に、ステップ330において、顕微鏡のステージ106(図1)が初期化され、これにより、テスト中において、テストサンプルを適切に配置することが可能となる。いくつかの実施形態では、ステップ350において、ターゲットサンプルを含むキャリブレーションスライドが、顕微鏡のステージ106上に載置される。キャリブレーションスライドは、光学経路の特性評価の際に既知の応答を得られるように、選択される。これは、顕微鏡システムのアフターサービスの際あるいはその製造時に、実行されている可能性がある。ステップ360において、キャリブレーションスライドの画像が得られ、ステップ370において、光学経路の補正因子すなわちマシン固有因子(OP)が決定される。異なる顕微鏡システム間における光学経路の変動性を除去する目的で、後の通常動作の際に使用するために、マシン固有因子を保存しておくことも可能である。機械加工による固有因子を決定するステップは、キャリブレーション源の強度を決定するために、キャリブレーションキューブ130(図2)を使用することによって、励起源のサンプル画像を取得するステップを含む。励起源のサンプルについては、キャリブレーションスライドの画像を得るステップとほぼ同時に得ることが好ましく、これにより、サンプル間における強度変動の可能性が最小化される。
【0086】
次に、ステップ380において、キャリブレーションキューブの補正因子(CC)がアクセスされる。この値については、システムに保存しておくことも可能であるし、あるいは、この予備的な初期化プロセス300において手動で入力するようにしてもよい。この値については、キャリブレーションキューブ130から得られた結果と、普遍的に標準的なキャリブレーションキューブを用いて得られた結果とを比較して、これらの結果の比率を作成することによって、得ることも可能である。光学経路の補正因子と同様に、キャリブレーションキューブの補正因子の決定についても、通常の使用中において繰り返す必要はない。上述したように、キャリブレーションキューブは、好ましくは、その性能における長期的な任意の変動性を減少あるいは除去するように、構築されている。したがって、キャリブレーションキューブの補正因子の最初の決定を、その製造時に得ることも可能である(工場は、「金製」スタンダード・キャリブレーションキューブを保持し、これは、補正因子を得るための、製造されたキャリブレーションキューブとの比較に使用される)。得られた補正因子を、キャリブレーションキューブ自体にマークすることも可能であり、この補正因子を、サンプリングされた画像の補正において後で使用するために、プロセッサに付与することも可能である。これらが得られた後、ステップ390において、マシン固有因子(OP)およびキャリブレーションキューブ補正因子(CC)は、画像分析用のソフトウェアに出力される(たとえば、あらかじめ保存された値を有しているメモリ位置から読み出される)。このステップは、これらの因子(OP、CC)を、保存して実際のテストサンプルの画像の標準化において後で使用するために、コントローラ116あるいは別体の画像分析器に転送するステップを含むことも可能である。同一のキャリブレーションスライドの異なるチャネルに関して、ステップ360および380を繰り返すこと、および、これらのステップを、ステップ390において、画像分析用のソフトウェアに対して別々に出力することも可能である。このように、マシン固有因子(OP)は、決定され、チャネルごとに保持され、さらに、適切なマシン固有因子を使用してテストサンプルをチャネルごとに後で分析するために、別々に保存される。いくつかの実施形態では、同一のチャネルに関して、ステップ360、380および390を繰り返すことも可能である。これにより、マシン固有因子を統計的に測定することが可能となる。したがって、各チャネルに関する複数の結果を得て、これらを、平均的な結果(後の使用のために保存される)を作成するために使用することが可能である。
【0087】
以下の(式1)に示す数式は、各システム100に関して得られた結果を標準化するために使用された。キャリブレーションキューブ補正因子(CC)およびマシン固有因子(OP)は、各システムに関して決定され、テスト結果の操作において後で使用するために保存された。次に、特定の標本(すなわちテスト用のサンプル)に関して、標準的な定量的結果(標本の定量的な生のスコア)が得られた。補正プロセスにおいて、生の定量的なスコアは、様々な補正因子によって操作され、これにより、異なるシステム間での比較に適した、規格化された定量的な結果が産出される。
[式1]
標本の定量的なスコア(規格化済)
=〔標本の定量的なスコア(生)〕*〔CC〕*〔OP〕*〔100,000/LS〕
【0088】
上記式1は、2つの定数(キャリブレーションキューブおよび顕微鏡システムに固有のもの;CCおよびOP)を使用した直接的な乗法標準化スキームを提供した。これらの因子の双方は、上述のように拡縮され、これにより、データは、理想的なシステムに標準化された。したがって、「金製スタンダード」に近いキャリブレーションキューブは、1.0に近いCCをもたらす。同様に、標準的な基準の光学経路に近づく光学経路も、1.0に近づく。光源の揺らぎ因子(LS)の場合、経験的に導出された値(100,000)は、この因子に関する理想的な強度値を規定するために使用された。次に、この100,000という値は、各測定において得られた特定のLS値によって、導出された。表3は、5つの異なる機器に関して得られた、結果として生じた標準化補正因子を示している。
【0089】
[表3]5つの機器に関する標準化因子
機器 補正:〔CC〕*〔OP〕*〔100,000〕
1 97446
2 116702
3 172794
4 88300
5 132000
【0090】
ここに記載した補正因子(CC、OP、LS)を用いることによって、5つの異なる機器を用いて得られた定量的なデータが、全て、機器1に関連づけられた。この相関結果は、図10においてグラフによって示されている。この図からわかるように、補正の前では、各機器の機器1に対する相関関係は、実質的に機器1とは異なる、重なることのないカーブをもたらしている。しかしながら、補正因子を適用した後では、5つの全ての機器に関する機器1に対する補正された相関カーブは、実質的に重なっている。これは、機器1に対しての(および相互の)、高度の相関関係をはっきりと示している。
【0091】
実施例:使用にあたって、テストサンプルは、単一の顕微鏡スライド上に、組織サンプルのマトリクスを含む組織マイクロアレイ(TMA)を含むことができる。たとえば、乳ガン組織のサンプルを含む36スポット組織マイクロアレイ、BT474、MCF7、T47D細胞株コントロールサンプルが、染色された。この染色プロトコルは、キシレン中の脱パラフィン、エタノール量の一連の減少による純水への再水和、およびTris EDTAにおける抗原回復を含んだ。内因性のペルオキシダーゼ阻害、およびバックグラウンドスナイパーによる阻害の後、HER2(CB11)およびサイトケラチン(Rabbit、Dako)一次抗体が塗布され、1時間後に洗い流された。次に、Dako Envision抗マウスおよびInvitrogen alexa555GARが塗布された。広範囲にわたる洗浄の後、cy5チラミドが塗布された。次に、TBS/Tween20内においてスライドが洗浄された。最後に、Dapiを含むマウント媒体が塗布され、スライドが乾かされた。
【0092】
HER2に関する蛍光染色強度、および、得られたAQUAスコアが、組織マイクロアレイの組織スポットごとに、機器1および2を使用することによって収集された。これらは、表3に記載されている。
【0093】
スコアは、以下の式2および式3を用いて標準化された。
[式2]
定量的スコア(規格化済)
=〔定量的スコア(生 機器1)/LS(機器1)〕*97,446
[式3]
定量的スコア(規格化済)
=〔定量的スコア(生 機器2)/LS(機器2)〕*116,702
【0094】
36スポット組織マイクロアレイの各サンプルに関するAQUAスコアが、2つの異なる機器を使用することによって取得された。36スポット組織マイクロアレイから2つの機器において取得された生のAQUAスコアが、図11Aに示され、規格化されたAQUAスコアが、図11Bに示されている。これらは、散布図のフォーマットでグラフ化されている。これらの結果は、生のスコアを用いた場合、2つの機器間において、回帰直線の傾斜の補正係数が2.6:1となることを示している。本発明の標準化方法を用いることによって、2つの機器間における回帰直線の傾斜の補正係数が、0.98:1となった。このことは、標準化によって、スコアの分布が影響されていないことを示している。
【0095】
標準化の前と後との序列関係を説明するために、非パラメトリックSpearman’s−rho統計分析が使用された。この分析は、2つの機器から得られたAQUAスコアデータのセットを用いて実行された。序列は、AQUAスコアごとに、最も小さいオリジナル値(=ランク1)から最も高いオリジナル値までに、割りあてられる。標準化されたデータセット、および標準化されていない(生の)データセットに関して、補正係数およびP値が算出された。データの序列は、標準化によって影響を受けていなかった(表4)。
【0096】
[表4]Spearman Rho分析
規格化データ 生データ
Rho: 0.72 0.721
P値: <0.0001 <0.0001
【0097】
実施例:上述の実施例において説明したものと同一の36スポット染色組織マイクロアレイが取得され、5つの異なる機器においてスコアをとられた。
【0098】
その結果によって明らかになったことであるが、5つの異なる機器において取得された、組織マイクロアレイ組織スポットごとの、生のAQUAスコアおよび標準化されたAQUAスコアの変動の百分率(%CV)は、本発明の方法による標準化によれば、著しく改善された%CVが得られることを示している。
【0099】
表5および表6は、5つの機器において実行され、単一のスライドによって生成された、回帰直線の傾斜の補正係数を編集したものである。生のAQUAスコアに基づく相関関係が、表5に示され、標準化AQUAスコアに基づくものは、表6に示されている。この比較は、複数の有効な画像から生成された数値によって実施された。
【0100】
[表5]生データ
生データ 機器1 機器2 機器3 機器4 機器5
機器1 N/A 0.44x 2.55x 1.68x 2.51x
機器2 0.44x N/A 0.17x 3.85x 5.76x
機器3 2.55x 0.17x N/A 0.66c 0.98x
機器4 1.68x 3.85x 0.66x N/A 1.50x
機器5 2.51x 5.76x 0.98x 1.50x N/A
【0101】
[表6]規格化データ
規格化データ 機器1 機器2 機器3 機器4 機器5
機器1 N/A 0.88x 0.95x 1.09x 0.89x
機器2 0.88x N/A 0.92x 1.24x 1.00x
機器3 0.95x 0.92x N/A 1.14x 0.93x
機器4 1.09x 1.24x 1.14x N/A 1.23x
機器5 0.89x 1.00x 0.93x 1.23x N/A
【0102】
5つの機器において取得された、組織マイクロアレイ組織スポットごとの、生のAQUA(登録商標)スコアおよび標準化AQUAスコアの変動の百分率(%CV)は、本発明の方法による標準化によれは、著しく改善された%CVが得られることを示している。
【0103】
36個の組織マイクロアレイスポットのうちの26個の有効なスポットに対するHER2染色に関する、平均AQUAスコアが、図12Aおよび図12Bに示されている。36個のサンプルにわたる傾向あるいは比較は、各機器において類似している。一方、個々のサンプルごとのスコアの分散は、各機器において、約60%の平均CVを有している。同じ5つの機器のそれぞれにおいて得られた平均スコアの比較においては、既に標準化された図12Bの方が、より高い一貫性を有している(平均CVは、約20%である)。
【0104】
標準化の前後における平均値間の大幅な相違に関しての、機器が同一であるとする帰無仮説を用いた分散分析(ANOVA)テストは、著しいp値(<0.05)を生み出した。したがって、複数の機器において収集された周辺平均スコアは、互いに異なっていることを示す帰無仮説は、否定される。標準化の後における0.05<のp値は、複数の機器において収集された複数の周辺平均スコアは、このときには、それほど大きく相違していないことを示している。
【0105】
一実施形態は、主として、蛍光顕微鏡に関連しているが、本発明は、一般的に、光学顕微鏡に対して幅広く適用可能である。様々な実施形態の技術は、キャリブレーション機器を用いた、任意の光源の強度変動に対する補正、普遍的に標準的なキャリブレーション機器に対するオフセットを用いた、キャリブレーション機器の変動に対する補正、そして、特定の光学顕微鏡システムにおける光学経路の効果に対する規格化に適用される。したがって、本発明の様々な実施形態を、インコヒーレント光源、偏光光源、およびコヒーレント光源を用いた、いろいろな光学顕微鏡(焦点レーザー走査顕微鏡システムなど)に対して、一般的に適用することが可能である。
【0106】
典型的な蛍光顕微鏡システムのためのシステム要件は、表7に記載されている。
【0107】
【表7】
【0108】
当業者にとっては当然のことではあるが、様々な補正因子(CC、LS、OP)を得るための、1つ以上のステップについては、プロセッサ(コンピュータなど)を利用することによって、自動的に、あるいは、少なくとも半自動的に、実施することができる。代替的あるいは追加的に、標準化されたターゲット画像データを決定するため、それらからの定量的な測定値を決定するために使用される、1つ以上のステップを、たとえばプロセッサを利用することによって、自動化することも可能である。たとえば、このようなプロセッサを、あらかじめプログラムされている命令を実行するコンピュータによって実践することも可能である。このように自動化は、病理学に基づくスコアリングに内在する変動性を除去するために役立つ。
【0109】
以上、本発明が、その好ましい実施形態を参照することによって、特定的に示され、かつ説明されてきたが、説明したのは、1つの動作上の特徴点であることは明らかである。本明細書では、特定の実施形態が詳細に開示されてきた。しかしながら、この開示は、例示の目的のためだけに、一例として示されたに過ぎないのであって、特許請求の範囲を限定する意図を有するものではない。とりわけ、発明者は、特許請求の範囲に包含されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対する様々な置換形態、代替形態、および改良形態を形成することが可能である、と考えている。たとえば、フィルターの材料の選択、測定および分析ステップの順序づけ、および、利用されているフィルター、ステージおよび励起源の配置は、本明細書に記載されている実施形態の知識を有する当業者にとって、当然なし得る事項となると考えられる。
【優先権】
【0001】
本出願は、2007年6月15日に出願された米国仮出願第60/944,402号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、顕微鏡法の分野に関し、より詳細には、同一のあるいは異なる顕微鏡システムから得られる定量的な分析結果を標準化することによって、これらの比較を可能とすることに関する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡法のプラットフォームが定量的になるにつれて、これらのプラットフォーム間の標準化を可能とする、シンプルな方法とハードウェアの組み合わせを開発する必要が生じる。たとえば、蛍光顕微鏡法の応用では、現時点において、システムに関する蛍光強度を測定するために有効な製品は存在する(たとえば、蛍光ミクロスフェア、蛍光ターゲット)が、これらは、顕微鏡のプラットフォームの全体的な構造の変化、あるいは、サンプルの変化とは無関係の光源の変化に関連した全体的に効率的な因子を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここに記載されているシステムおよびプロセスは、既存の光学顕微鏡システムに関する規格化因子を提供する。この規格化因子は、定量的な測定結果を標準化および拡縮するために使用することができる。標準化は、異なる機器から得られた定量的な結果の比較を可能とし、各機器から得られた結果は、同一の標準化を受ける。さらに、このことの延長線上として、単一のプラットフォームにおいて時間とともに数回の露光を行うといった実験で、機器効率の規格化因子に寄与する同じハードウェアを、光源強度の変動を測定するために使用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、本発明は、光学システムによって撮像されたターゲットサンプルデータの、定量的な測定値を標準化するためのプロセスに関する。この光学システムは、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有している。この光学システムの各部は、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するべく構成されている。光源の補正因子が励起光源に関して取得される。光源補正因子は、ターゲットサンプルデータに適用され、これにより、光の強度の変動性に関して標準化された、ターゲットサンプルデータが得られる。標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値が決定される。
【0006】
他の態様においては、本発明は、顕微鏡システムにおける励起光源の光をサンプリングするためのキャリブレーション機器に関する。このシステムは、光学経路に沿って配置されたキャリブレーション面を含んでいる。このキャリブレーション面は、励起光源からの光を、顕微鏡システムにおける検出部に向けて、ほぼ均一に散乱させる。一つの態様によると、このシステムは、ダイクロマティックミラーを含み、このミラーは、励起光源からの光を反射し、光学経路に沿い対物レンズを介してターゲットサンプルに向かわせるように、および、ターゲットサンプルからの光における少なくとも一部を透過させて、顕微鏡システムの検出部に向かわせるように配置されている。当該態様では、キャリブレーション面は、キャリブレーション中に、一時的に、ダイクロマティックミラーと対物レンズとの間の光学経路を遮断するように、および、反射された励起光の大部分を散乱させて、ダイクロマティックミラーを介して検出部に向かわせるように、配置されている。
【0007】
他の態様では、本発明は、定量的な標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を光学システムから得るためのプロセスに関する。この光学システムは、励起光源、光学部、検出部、およびデータ保存部を有しており、これらは、ターゲットサンプルデータを得るために、協働するよう構成されている。光学システムの固有因子が光学システムに関して得られる。光学システム固有因子は、ターゲットサンプルデータに適用され、これにより、固有の光学因子に関して標準化された、ターゲットサンプルデータの測定値が得られる。
【0008】
他の態様では、本発明は、顕微鏡システムから標準化測定値を得るためのプロセスに関する。この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有し、これらは、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このプロセスは、光に対する標準的な応答を生成するために、励起光源を用いてキャリブレーションサンプルに光をあてるステップを含む。光学部を介して得られる、光をあてられたキャリブレーションサンプルのキャリブレーションサンプル画像は、検出部によってキャプチャされる。励起光源による光のサンプル部分を検出部に向けるように構成されているキャリブレーション機器が、励起光源によって照らされる。配向されたサンプル部分の励起光源サンプル画像は、検出部によってキャプチャされ、光学経路に沿う変動を補正するためのマシン固有因子が、キャリブレーションサンプル画像および励起光源サンプル画像から決定される。マシン固有因子は、顕微鏡システムの固有の変動に関して、ターゲットサンプル画像を補償するために使用可能である。
【0009】
他の態様では、本発明は、コンピュータによって使用可能な媒体に関する。このコンピュータ可読媒体は、ここに記載した1つ以上のプロセスを実行するプロセッサによって遂行するための、コンピュータ読み取り可能な命令を記録している。
【0010】
他の態様では、本発明は、コンピュータによって読み取り可能な命令のプログラムに関する。この命令は、顕微鏡システムから標準化測定値を得るためのものであり、この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有し、これら各部が、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このシステムにおいて、上記の命令に従い、上述したプロセスが実行される。
【0011】
他の態様では、本発明は、標準化された測定値を提供する顕微鏡システムに関する。このシステムは、励起光源の光に対して標準的な応答を生成するように構成されているキャリブレーションサンプルを、励起光源の光にあてる手段と、光学部を介して得られる、光をあてたキャリブレーションサンプルのキャリブレーションサンプル画像を、検出部を用いてキャプチャするための手段と、励起光源による光のサンプル部分を検出部に向けるように構成されているキャリブレーション機器を、励起光源の光にあてるための手段と、配向されたサンプル部分の励起光源サンプル画像を、検出部を用いてキャプチャするための手段を含んでいる。このシステムは、さらに、キャリブレーションサンプル画像および励起光源サンプル画像から、光学経路に沿う変動を補正するためのマシン固有因子を決定するための手段を含んでいる。このマシン固有因子は、顕微鏡システムの固有の変動に関してターゲットサンプル画像を補償するために、使用可能である。
【0012】
他の多様では、本発明は、顕微鏡システムにおけるターゲットサンプルの強度測定値を補償するためのシステムに関する。このシステムは、ターゲットサンプルを支持するためのステージと、ステージ上に支持されたターゲットサンプルを照らすための励起光源と、光をあてられたターゲットサンプルの画像を検出するための検出部と、キャリブレーション時に、励起光源による光のサンプル部分を検出部に向け直すために、励起光源と検出部との間の光軸に沿って一時的に挿入されるように構成されているキャリブレーション機器と、を含んで構成される。このキャリブレーション機器は、ステージ上のターゲットサンプルを乱すことなく、励起光源を向け直すことができるとよい。このシステムは、さらに、向け直されたサンプル部分から決定される強度補正因子を決定するための、検出部と通信する分析器を含んでいる。この強度補正因子は、光をあてたターゲットサンプルの検出画像を調整することによって励起光源の変動を補償するために、使用可能である。
【0013】
さらに他の態様では、本発明は、蛍光顕微鏡システムにおける、強度の揺らぎを補正するためのプロセスに関する。この顕微鏡システムは、励起光源、光学部、および検出部を有しており、これらは、ターゲットサンプル画像を得るために、協働するよう構成されている。このプロセスは、対物レンズと検出部との間の光学経路内に、キャリブレーション要素を挿入するステップを含んでいる。このキャリブレーション要素は、ダイクロマティックミラーおよびキャリブレーション面を含んでいる。このミラーは、励起光源からの光をキャリブレーション面に向けて反射するとともに、このキャリブレーション面から戻された励起光のサンプル部分を、検出器に向けて透過するように構成されている。励起光源の強度変動は、キャリブレーション面から戻された励起光のサンプル部分から決定される。キャリブレーション要素は、励起光源の選択されたスペクトルをターゲットサンプルに向けて反射するように構成された、フィルターのセットに置き換えられる。光の選択されたスペクトルは、ターゲットサンプルから検出部に向かって送られる。選択された放射光スペクトルがターゲットサンプルから検出され、ターゲットサンプルから検出された放射光スペクトルは、励起光源の決定された強度変動を用いて補正される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】顕微鏡システムの一例を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るキャリブレーション機器を示す概略図である。
【図3】実施形態に係るキャリブレーション機器を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図および底面図である。
【図4】図3に示したキャリブレーション機器の分解斜視図である。
【図5】実施形態に係るキャリブレーション機器によって得られた、励起光源強度の時間的変化を示す図である。
【図6】第1のキャリブレーションスライドの複数のチャネルに関する定量的な結果の時間的変化を示す図である。
【図7】第2のサンプルスライドにおける複数のチャネルに関する定量的な結果の時間的変化を示す図である。
【図8】実施形態に係る定量的な分析結果を標準化するためのプロセスにおけるフローダイヤグラムである。
【図9】図8に示した定量的な分析結果の標準化に使用されている、補正因子を得るためのプロセスにおけるフローダイヤグラムである。
【図10】実施形態に係る、異なる顕微鏡システム(補正をしないもの、および補正をするもの)を使用することによって得られた、比較結果を示す図である。
【図11】実施形態に従って得られた、補正されていないサンプルデータと補正されたサンプルデータとの比較を示す図である。
【図12A】標準化を用いずに、異なる顕微鏡システムを使用して同一のサンプルから得られた典型的な定量的分析結果を示す図である。
【図12B】実施形態に従う、図12Aに示した定量的結果の補正を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記およびその他の目的、特徴、および利点は、本発明の好ましい実施形態の、後述するより具体的な説明によって、明らかになる。これらの実施形態は、添付図面に例示されており、これらの図面では、同一の参照符号は、異なる図面においても同一の部品を指している。これらの図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を例示することに重点を置いている。
【0016】
光学部品および光源を含むシステムから、標準化された定量的な分析結果を得るためのシステムおよびプロセスがここに記載される。とりわけ、これらのシステムおよびプロセスは、ターゲットサンプル(たとえば生体サンプル)の定量的な顕微鏡分析の標準化に関連している。生体サンプルの例としては、細胞、細胞群、組織切片、組織切片のアレイ(たとえばマイクロテッシュアレイ)、および、これらのいずれか1つ以上の組み合わせを挙げられる。生体サンプルについては、1つ以上の染色剤によって処理することができる。場合によっては、これらの染色剤は、免疫組織化学系の染色剤である。場合によっては、この免疫組織化学系の染色剤は、蛍光染色剤である。
【0017】
一般的に、顕微鏡システムは、ターゲットサンプルに光をあてるように構成されている光源、光をあてたターゲットサンプルの拡大画像を作成するように構成されている光学系、および、拡大画像のデジタル画像をキャプチャするように構成されている検出器(たとえばデジタルカメラ)を含んでいる。定量的な結果については、キャプチャされたデジタル画像を操作することによって、得ることが可能である。このような画像操作は、当業者に知られている画像処理技術を含むことが可能である。少なくともいくつかの実施形態では、上記のような1つ以上の画像キャプチャおよび画像操作が、プロセッサを利用することによって実施される。このプロセッサは、あらかじめプログラムされている命令を実行するコンピュータを含むことができる。
【0018】
このシステムは、さらに、光源の標準化サンプルを検出器に向け直すように構成されている、キャリブレーションデバイスを含んでいる。少なくともいくつかの実施形態では、システムプロセッサが、既存の顕微鏡に関する補正因子を決定するように構成されている。この補正因子については、キャリブレーションデバイスを用いて得られた、光源の標準化サンプルに対する測定から、決定され得る。この補正因子を、ターゲットサンプルの検出画像の強度における何らかの変動を補正するために、(たとえばプロセッサによって)使用することができる。いくつかの実施形態では、システムプロセッサは、キャリブレーション因子を得るための命令(たとえばソフトウェア)に従って動作する。代替的あるいは追加的に、このシステムプロセッサは、検出画像を補正するための補正因子を使用するための命令に従って動作する。このようなキャリブレーションは、何らかの定量的な結果から、時間とともに生じ得る同一の顕微鏡システムにおける光源の強度の変動性、及び、異なる顕微鏡システムおよび異なる光源のいずれか又は両方を使用して得られた定量的な結果の間の変動性を除去するために有用である。
【0019】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションデバイスは、光源から検出器に向かう光の散乱部分を制御するために、光源と検出器との間にある光学経路に沿って配置することができる散乱面を含んでいる。検出された散乱光における変動性を、上記のような補正因子を明らかにするために使用することができる。
【0020】
他の実施形態では、システムプロセッサは、既存の顕微鏡の光学部品に関する補正因子を、決定あるいは利用可能とするように構成されている。この補正因子については、顕微鏡の光学部品を使用して標準化サンプルを測定することによって、決定することができる。この補正因子を、ターゲットサンプルの検出画像の強度に影響を与える、既存の顕微鏡の光学的特徴における何らかの変動を補正するために、(たとえばプロセッサによって)使用することができる。
【0021】
顕微鏡システム
【0022】
ここに記載されているシステムおよびプロセスは、光源を組み込んだ、任意の顕微鏡システムに対して、一般的に適用することが可能である。これらのシステムおよびプロセスを使用することができる少なくともいくつかの顕微鏡システムの例は、光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、および、共焦点レーザー走査顕微鏡法を含む。コネティカット州ニューヘブンのHistoRx,Inc.から市販されている、PM−2000TM機器が、典型的な顕微鏡システムである。これらのシステムおよびプロセスは、準定量的あるいは定量的な結果を与えるように設定されているシステムに関して、特に有用である。代表的な用途としては、病理学の分野において使用されているような、免疫組織化学(IHC)の使用を挙げられる(たとえば、M.Cregger et al,「Immunohistochemistry and Quantitative Analysis of Protein Expression」、Arch.Pathol.Lab.Med.,Vol.130、2006年7月、1026〜1030ページを参照)。一般的には、これらの結果は、顕微鏡システムを用いることによって検査されたサンプルの染色強度に基づいている。サンプルについては、生物標本とすることが可能である。染色剤については、一般的な組織染色剤、特異性の染色剤、IHC、FISH、色原体性のもの、蛍光性のもの、などとすることが可能である。
【0023】
Cregger et al.にしたがうと、診断病理学者は、一般的に、2値の(正あるいは負の)エンドポイント、あるいは、3段階あるいは4段階の評価を用いることによって、主観的アプローチにしたがって、IHCを解釈する。コンピュータを活用することによって、病理学に基づくスコアリングに内在する変動性を除去するために役立つコンピュータプログラムを使用して、ターゲットサンプルに関する自動的な分析を得ることが可能である。免疫蛍光法では、蛍光生成物は、抗原の部位に沈殿する。これにより、サンプル内の抗原における、視覚的な位置特定が可能となる。写真によってキャプチャした後、画像分析用のソフトウェアによって、反応生成物を定量化することが可能となる。さらに、抗原を、特定の細胞部位(たとえば、核部位、オルガネラ部位、細胞質の部位、膜性の部位)、あるいは細胞外の部位(たとえば、「Camp et al,Nature Medicine 8(11)1323−1327,2002」を参照)に配置することが可能である。IHCを分析するための、非常に多くのコンピュータベースのプログラムが設計されている。たとえば、イリノイ州ロンバードにおけるBacus Laboratories,Inc.から入手可能なBLISSおよびIHCscore、カリフォルニア州サンファン・カピストラーノにおけるClarient,Inc.のACIS、および、コネティカット州ニューヘブンにおけるHistoRx,Inc.のAQUA(登録商標)解析などがある。
【0024】
一般的に、蛍光IHCに関して、タンパク質バイオマーカーによって染色された同一のターゲット組織サンプル(特定の抗体および2次的な蛍光検出試薬)から、複数のデジタル画像(たとえば、TIFF、JPEG、GIF、ビットマップ、PNG)が得られる。最適化された場合、蛍光染色剤は、吸収度に基づいて発色する染色剤によって得られるものよりも、幅の広いダイナミックレンジを与える。各デジタル画像を、2次的な蛍光信号の個別の1つを通過させるように構成された異なる光学フィルターを用いることによって、得ることもできる。したがって、2次的な蛍光信号のそれぞれに関して、少なくとも1つの個別のデジタル信号が得られる。定量的な分析のために、キャプチャされたデジタル画像が操作され(たとえば、画像処理用のソフトウェアが使用される)、組織サンプルにおける個別のスコアが得られる。
【0025】
さらに具体的に、上述のシステムおよびプロセスを、図1に例示されたシステムに関連して説明する。
【0026】
図1を参照すると、例示した反射光蛍光顕微鏡システム100は、励起源102、対物レンズ104、サンプル支持ステージ106、フィルターブロック108’および観察ヘッド110を含んでいる。サンプル支持ステージ106は、光軸に沿って、対物レンズ104の焦点面内にテスト用のサンプルを支持するように構成されている。フィルターブロック108’も、対物レンズ104と観察ヘッド110との間における光軸に沿って配置されている。フィルターブロック108’は、光軸に沿って配置されている2つの対抗するポート、および、光軸から外れた位置に配置されている第3のポートを有する、3ポートデバイスである。図示されているように、この第3のポートを、2つの対抗するポートを結合する線に対して直交させることもできる。
【0027】
励起源102からの光は、フィルターブロック108’の直交ポートに向けられている。このフィルターブロック108’は、励起源102からの光の一部を、対物レンズ104に向け直す。この対物レンズ104は、好ましくは、比較的に高い開口数を有し、これにより、対物レンズ104は、励起光の大部分をキャプチャすることができる。この対物レンズ104は、励起光をステージ上に配置されているテスト用のサンプルに向ける、集光レンズとして機能する。いくつかの実施形態では、単一のノーズピース(図示せず)内に、複数の対物レンズ104(たとえば、4X、10X、20X、40X、60X)が含まれている。このノーズピースを操作して、複数の対物レンズ104のいずれか1つを選択的に光軸上に配置することによって、テスト用のサンプルの倍率を調整することが可能である。
【0028】
テスト用のサンプルからの光(放射)は、対物レンズ104を介して、光学経路に沿って進み、フィルターブロック108’の対抗しているポートの第1のポートに進入する。サンプルの光の少なくとも一部は、光学経路に沿って進み続けて、フィルターブロック108’の対抗しているポートの第2のポートから、観察ヘッド110に向かって抜け出る。以下により詳細に示すように、フィルターブロック108’は、選択的に、自身を通過する光をフィルタリングする。蛍光顕微鏡検査法では、様々な蛍光(たとえば、赤、緑、青)放射を選択的に観察するために、フィルタリングを利用することができる。図示されているように、顕微鏡システム100は、複数のフィルターブロック108’,108’’,108’’’(まとめて108とする)を含むことが可能である。各フィルターブロック108は、選択された放射波長を、観察ヘッド110に向けて通過させるように調整されている。それぞれのフィルターブロック108を、カルーセルすなわちタレット115内に格納することもできる。これにより、テスト用のサンプルを乱すことなく、それぞれのフィルターブロック108を迅速に選択することが可能となる。いくつかの実施形態では、それぞれのフィルターブロック108は、回転軸の周りに、タレット115内において放射状に配置されている。タレット115は、その回転軸を光軸に対して平行にした状態で配置されており、これにより、1つのフィルターブロック108’が、光軸上に配置される。タレット115を回転することによって、選択的に、1つのフィルターブロック108’が光軸からずらされて、別のフィルターブロック108’’,108’’’の1つが光軸上に配置される。
【0029】
観察ヘッド110は、フィルターブロック108からの光の少なくとも一部を、電荷結合素子(CCD)カメラ112などの画像収集デバイスに向ける。いくつかの実施形態では、テスト用のサンプルを手動で観察することを可能とするために、観察ヘッド110が、追加的に、1つ以上の接眼レンズ(図示せず)を含む。このような接眼レンズを、テストの前およびテスト中において、ステージ106の配置を調節するため、およびステージ106上でのサンプル107の配置を調整するために、使用することが可能である。いくつかの実施形態では、励起源102に対するサンプル107の露光時間を制御するために、第1のシャッター117が設けられている。第2のシャッター114は、CCDカメラ112などの撮像デバイスの露光時間を制御するために設けられている。図示されているように、シャッター114を、テスト用のサンプルと観察ヘッド110との間の光学経路に沿って配置された、独立の部品とすることが可能である。独立のシャッター114に代えて、あるいはシャッター114に加えて、シャッターを、CCDカメラ112内に一体化することも可能である。
【0030】
顕微鏡システム100は、さらに、コントローラ116を含んでいる。このコントローラ116については、画像取得プロセスの全体を制御するために使用することが可能である。好ましくは、コントローラ116は、顕微鏡システム100の自動制御を可能とするために、顕微鏡システム100の1つ以上の構成部品と接続している。この実施形態では、コントローラ116は、1つ以上の励起源102、対物レンズ104の軸変換器119(焦点調整)、CCDカメラ112、シャッター114、タレット115、およびステージ位置コントローラ118と接続している。コントローラ116は、プログラムコードの制御の下で動作する、少なくとも1つのマイクロプロセッサすなわちコンピュータ116を含むことができる。
【0031】
動作の際には、コントローラ116は、ステージ106の位置をあわせるために、ステージ位置コントローラ118に対して信号を送信することができる。これにより、テスト用のサンプルの選択された範囲すなわちスポット109が、光軸に一致するように配される。コントローラ116は、さらに、軸変換器119に対して信号を送信することが可能である。この軸変換器119は、ステージ106に対して、光軸に沿って対物レンズ104の位置を合わせるとともに、その位置を修正するように構成されている。モーター付のノーズピースを含む実施形態に関しては、コントローラ116は、ノーズピースに対して第2の信号を送信することが可能である。これにより、ノーズピースが、焦点調整の前に、複数の対物レンズ104の選択された1つを、光軸に一致するように回転させる。コントローラ116は、さらに、タレット115に対して信号を送信することが可能である。これにより、タレットの回転が制御され、複数のフィルターブロック118の1つが選択される。これを受けて、タレット118が回転し、フィルターブロック118の選択された1つが、光軸に一致するように配置される。次に、コントローラ116は、励起源102に対して信号を送信する。これにより、少なくとも一時的に、この励起源102が駆動され、テスト用のサンプルに光をあてる。シャッター114は、通常は閉じており、テスト用のサンプルとCCDカメラ112との間の光学経路を遮断している。顕微鏡によっては、機器を初期化する際に、光源102が駆動されるものもある。蛍光顕微鏡を用いる場合、いずれかのテストサンプルを測定する前に、高強度のランプが、励起源102の強度を安定化することを可能とするための、ウォームアップ時間を必要とする。
【0032】
このような蛍光システムに関し、光源102は、動作中に点灯したままでいてもよい。このような用途では、光源102とテストサンプルとの間に設けられている第1のシャッター117は、サンプルを観察してサンプルの画像を取得する準備が整うまでの間、サンプルに対する照射を遮断するために使用される。テストサンプルの露光を上記のように制限することによって、サンプルの色褪せを回避することが可能となる。CCDカメラ112には、場合により、第2のシャッター114が設けられている。コントローラ116からのトリガー信号を受信すると、第1のシャッター117は、所定の露光時間だけ開放された後、再び閉じられる。コントローラからの第2のトリガー信号は、CCDカメラ112に設けられている第2のシャッター114に送られる。このような信号制御による露光によって、テスト用のサンプルからの制御されたサンプルの放射が、CCDカメラ112に到達することが可能となる。したがって、第1のシャッター117は、少なくとも第2のシャッター114によって制御される露光の全持続期間においては、開放されている。いくつかの実施形態では、2つのシャッター114、117の動作を、共通の信号によって制御することができる。あるいは、これらのシャッターを、同期して動作するように構成することもできる。コントローラ116の制御に基づいて、CCDカメラ112は、テスト用のサンプルからの光の電子画像をキャプチャする。この画像を、コントローラ116に、あるいは分析用の外部のシステムに転送することも可能である。
【0033】
選択的に、2つのシャッター114,117を独立に制御することによって、各シャッターのタイミングを、異なる効果を生むように変更することが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、第1のシャッター117は、テストサンプルを露光するために所定の期間だけ開放され、その後に閉じられる。これについては、光源102からの光に対して発光性のテストサンプルを露光させるために、実施することができる。第1のシャッター117が閉じられた後、第2のシャッター114を動作させることによって、光源の光による干渉のない状態で、サンプルの発光をサンプリングすることが可能となる。
【0034】
一実施形態では、蛍光顕微鏡システムは、一体化された定量的IHC分析システム(たとえば、コネティカット州ニューヘブンのHistoRx,Inc.から市販されている、AQUA(登録商標)解析PM−2000TMシステム)の一部である。AQUAは、HistoRx,Inc.の登録商標である。このIHC分析システムは、光を通さない筐体内に組み立てられている、以下に示す部品から構成されている。蛍光顕微鏡(たとえば、ペンシルバニア州センターバレーのOlympus America,Inc.から市販されている、オリンパスBX51落射蛍光顕微鏡)。この顕微鏡は、様々な対物レンズ(たとえば、4X、10X、20X、40X、60X)からの選択を制御するための、モーター付のノーズピース、および様々なフィルターキューブ選択(たとえば、DAPIにおける、Cy2、Cy3、Cy5およびCy7、あるいはこれらと等価の波長)からの選択を制御するための、モーター付のフィルタータレットを備えている。このシステムは、さらに、モーター付のステージ(たとえば、Prior Scientific、部品番号H101A)を含む。ステージを駆動するPCIカードは、マサチューセッツ州ロックランドのPrior Scientific,Inc.から市販されている、モーター付のステージ(Prior Scientific、部品番号H252)である。コントロールカードは、コンピュータコントローラ内のPCE拡張スロットを占有する。焦点制御は、統合ソフトウェアによって促進される。このシステムは、さらに、光源(たとえば、カナダ、オンタリオ州のEXFO Life Sciences&Industrial Divisionから市販されている、X−CITE120システム。この光源は、水銀/金属ハロゲン化物ランプを備えている)、画像キャプチャのための単色のデジタルカメラ(たとえば、カリフォルニア州ゴレタのOPTRONICSから市販されている、QUANTIFIREカメラ)、およびコンピュータコントローラを含む。この実施形態では、コンピュータは、WINDOWS XP(登録商標)、あるいはより高度のオペレーティングシステム環境を実行する、パーソナルコンピュータである。
【0035】
機器の標準化
【0036】
特定のシステムを用いることによって得られた定量的な結果を標準化するためには、励起源の強度の変動性およびデバイスの変動性(すなわち、光学経路に沿った変動性)を明らかにするように、システムの固有因子を決定すればよい。これを得るために、たとえばインライン・ランプ強度測定ツールを用いて、励起光源の強度の測定値を得るようにしてもよい。また、標準的なサンプル(またはキャリブレーションサンプル)、すなわちキャリブレーション顕微鏡スライドの測定値については、特定のシステムを用いることによって得ることが可能であり、これにより、1つ以上の光学経路因子が規定される。このようなキャリブレーションスライドを使用することは、蛍光ベースのIHC用途に関して、特に有用である。この用途では、キャリブレーションスライドのサンプル蛍光範囲が、それぞれのバンド幅内において放射を放っている。蛍光放射によって、1つ以上の個々の波長のそれぞれにおいて、光学経路の特性を評価することができる。これらの測定値については、同時に得ることも、また、個別に得ることも可能である。
【0037】
光源強度の測定
【0038】
一般的に、光源強度の直接の測定を提供するプロセスあるいは機器が、システムに最も都合よく組み込まれている。光源サンプリング機器は、光源強度のサンプルをキャプチャする。いくつかの実施形態では、光源強度のサンプリングされた部分が、検出器(たとえばカメラ)に向かうものもある。光源強度の測定は、システムの光学部分とは無関係に実施されることが可能である。
【0039】
より一般的には、サンプリング用のプロセスあるいは機器は、光源検出器の飽和閾値よりも低く、かつ、ノイズレベルよりも高い強度レベルにおいて、光源のサンプルにアクセスする。たとえば、電子センサーによって、露光時間(例えば10ミリ秒)以内に、光源の強度をサンプリングすることが可能である。代替的あるいは追加的に、得られたサンプルが既存の検出デバイスにおける感度範囲内に含まれることを確保するために、光源を弱めることも可能である。
【0040】
光源強度のサンプリングを、インライン・ラジオメーターを用いることによって実施することもできる。これにより、光源強度の測定可能な電圧の典型例が得られる。このような測定電圧を、システムによって自動的に処理することも可能である。たとえば、この電圧を、さらなる処理のためにプロセッサに送信することが可能である。いくつかの実施形態では、電圧レベルが、電圧のデジタル表現に変換される。このような変換を、アナログからデジタルへの変換を用いて実施することも可能である。これにより、サンプリングされた電圧をデジタル処理することが可能となる。このデジタル処理を、プロセッサにおいて実行される1つ以上のソフトウェア、およびデジタル信号処理に適したハードウェアによって実施することも可能である。
【0041】
サンプリングされた光源強度を、光源から直接的にあるいは間接的に得ることができる。いくつかの実施形態では、サンプリングされた光源強度が、少なくとも、サンプリング結果に対して単独で影響を与え得るシステムの他の部品(光学系(たとえば対物レンズ)など)とは無関係に得られる。代替的あるいは追加的に、サンプリングされた光源強度が、光源自体において測定される。これにより、顕微鏡からのいずれの影響も回避することが可能となる。
【0042】
キャリブレーションキューブ
【0043】
いくつかの実施形態では、光源の強度を測定するために光のサンプルを得る目的で、特別なキャリブレーション機器を使用することもできる。好ましくは、このキャリブレーション機器によれば、ターゲットサンプルの画像とほぼ同時に、相対的な光源強度の測定値を得ることが可能である。少なくともいくつかの実施形態では、これは、相対的な光源強度の測定値を得るために光学経路へ特別なキャリブレーション機器を導入し、継いで、サンプル画像を得るために光学経路から外すよう切り換えることによって実施される。たとえば、顕微鏡システムが、回転可能なタレット115内にあらかじめ載置されている複数のフィルターキューブを使用する蛍光システムである場合には、このキャリブレーション機器を、フィルターキューブの1つ(すなわち、キャリブレーションキューブ)として、タレット115内に含むことができる。これにより、測定の過程において、キャリブレーションキューブを、他のフィルターキューブと自動的に交換することが可能となる。
【0044】
一般的に、フィルターキューブは、キューブ状のフレームの上面、底面および前面に、開口部を有している。前面の開口部(すなわちポート)は、光源からの光がキューブに進入することを可能とする。その後、光は、進入光の軸に対して45度となるように配された内部の反射面によって、反射される。この傾斜した反射面(すなわち鏡)は、サンプリング光の反射部分を、キューブの底面の開口部(すなわちポート)に向け直す。動作中においては、この配向された光を、ターゲット(組織サンプルなど)を照らすために用いることが可能である。向き直された光は、顕微鏡システム内に設けられている対物光学系を含み得る、光学経路に沿って進む。照明光の少なくともいくらかの部分は、サンプルによって反射され得る。少なくともいくつかの用途に関しては、蛍光性による誘導光をサンプルから放射することも可能である。どちらの場合においても、サンプルからの光(反射光および/または放射光)の少なくとも一部は、同一の光学経路に沿って戻り、底面のポートからキューブに進入する。キャリブレーションキューブに進入する光の少なくとも一部は、傾斜した鏡の傾斜した反射面を通過して光学経路に沿って進み、キューブの上面の開口部(すなわちポート)から抜け出て、撮像デバイスに向かう。
【0045】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションキューブは、底面の開口部を遮断するために光散乱面が貼付された、改良されたフィルターキューブである。動作中においては、キューブに進入する光は、内部の傾斜した反射面によって反射され、光散乱面に向かう。この反射光は、光散乱面に到達する。光散乱面からの散乱光の少なくとも一部は、戻されて内部反射面を通過し、キューブの上面の開口部から抜け出て、撮像デバイスに向かう。同じ光散乱面を有する同じキャリブレーションキューブを、同じ光源からの光を異なる時間においてサンプリングするため、あるいは、異なる光源からの光をサンプリングするために、使用することができる。この様式では、キャリブレーションキューブは、標準化された表面(一般的なサンプルではない)からの散乱光の強度をサンプリングするための手段を提供する。これは、撮像デバイスによってキャプチャされ、標準化された光強度の測定値の決定に使用可能である。好ましくは、このようなサンプリングについては、1つ以上のターゲットスライドおよび対物レンズを再配置することなく、実施することが可能である。
【0046】
キャリブレーションキューブは、ランプの強度を測定するためのインライン・アクセスツールとして機能する。強度測定ツールは、プロセッサ116(図1)と共同して、ランプ強度の逸脱を追跡することを可能とするだけでなく、定量的な結果を規格化する直接的な手段を実現する。このようなランプ強度の逸脱を明らかにすることによって、組織サンプルにおけるバイオマーカーの発現に対する、正確な測定が促進される。たとえば、同一構成で標準化されたキャリブレーションキューブを備えた、いくつかの顕微鏡システムによって得られたキャプチャ画像からのデータを収集することによって、除去しなければランプ強度の変動性の原因となるはずのあらゆる影響を、効率的に除去することが可能である。したがって、収集された画像から得られた定量的な分析結果(AQUAスコアなど)を比較することによって、システムの差ではなく、ターゲットサンプルの差を信頼性をもって表示することが可能となる。キャリブレーションキューブを用いて得られた光源のキャリブレーションデータについては、収集し、蓄積し、さらに様々なシステムソフトウェア・アプリケーション(たとえば、システムの初期化および設定プログラム、画像取得プログラムなど)によって操作することが可能である。これにより、ユーザ干渉を最小化すること、および、時間およびコストをごく小さくすることが可能となる。
【0047】
一実施形態では、図2を参照すると、キャリブレーション機器すなわちキューブ130は、筐体132を含み、この筐体132は、第1のポート134aと、これに対向しているとともに、これと共通の光軸に沿って一直線上に並んでいる、第2のポート134bとを含む。この筐体132は、さらに、当該光軸上にはない側面ポート134cを含む。図示されているように、この側面ポート134cは、前記光学経路に対して直交している。筐体132は、さらに、内部反射面136を含んでおり、この反射面は、光軸に対してゼロではない角度θを形成している。光は、励起源102から、側面ポート134cを介して進入する。反射面136は傾斜しており、これにより、進入した励起光の一部が、光軸に沿って、第2のポート134bを通過する方向に向け直される。キャリブレーションキューブ130は、さらに、光散乱面138を含み、この光散乱面138は、第2のポート134bに関連して配置され、同一の光軸に沿って反対の方向に向けて、励起光を散乱する(すなわち戻す)ようになっている。散乱された励起光の少なくとも一部は、反射面を通過して、第1のポート134aから筐体132を抜け出る。この散乱光については、第1のポート134aと一直線上にあるCCDカメラ112によって、検出することが可能である。
【0048】
別の実施形態では、キャリブレーション機器を、鏡面化された表面を有しないように形成することもできる。たとえば、図2に示したキューブ130とほぼ同じ構造において、内部反射面136を、光散乱面と交換することが可能である。この光散乱面については、側面ポート134cを通過した光源102からの光に対する方向修正を促進するように、キューブ内で傾斜させることが可能である。
【0049】
光散乱面138は、ほぼ一様であり、微小に反射する表面(たとえば艶消し面)である表面を有している。この表面は、視野の全体にわたって一定の反射率/蛍光性を与えており、これにより、サンプリングされた光源からの光の、均一性が測定される。少なくともいくつかの実施形態では、光散乱面138は、実質的に均一に光を散乱する。光散乱面138を形成している材料は、高温および高い光強度に対して、劣化および変動することなく耐えることができなければならない。この材料は、好ましくは、剛体あるいは少なくとも半剛体であり、黄ばみ、劣化あるいは光褪色しにくいものである。さらに、この材料は、再生可能であって、比較的に安価である必要がある。いくつかの実施形態では、これらの条件を満たす特定の金属、セラミックあるいはプラスチック材料を使用することが可能である。セラミック材料(たとえば、金色および白色のセラミックターゲット)は、オハイオ州ウィルミントンのAvian Technologies,Inc.から市販されている。このような材料を、キャリブレーション・キューブフィルター148(図3)のために、使用することも可能である。代替的あるいは追加的に、このような材料を、標準的なキャリブレーションスライドのために使用することも可能である。別の実施形態では、1枚の薄いフィルターペーパーを使用することも可能である。
【0050】
蛍光顕微鏡の用途では、CCDカメラ112によって検出される放射光は、励起光よりも実質的に低強度である。CCDカメラ112の飽和を回避するために、励起源自体を検出したときに、1つ以上のフィルターが、励起源とカメラ112との間に含まれて、これにより、十分に低いレベルにまで光が減衰される。いくつかの実施形態では、1つ以上の減光(すなわち灰色の)フィルターが、励起源102とCCDカメラ112との間の光学経路に沿って設けられている。たとえば、第1の減光フィルター138aが、側面ポート134cに設けられており、これにより、筐体132に進入する励起光を減衰する。第2の減光フィルター138bは、第1のポート134aに設けられており、これにより、CCDカメラ112に戻される散乱光を減衰する。各フィルター138a,138bの減衰値については、これらの効果の組み合わせによって、励起源102からの散乱光によってCCDカメラ112が飽和しないことを確保してさえいれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
実施例:図3に示したキャリブレーションキューブ130の実施形態において、キューブ130が、正規のOLYMPUSフィルター筐体(すなわちホルダー)140(OLYMPUS部品番号U−M610、U−MF2、BXフィルター・ホルダーキューブ)から構成されている。この筐体140は、放射および励起開口部144a,144bに減光フィルター142a,142bを備えているとともに、50/50ダイクロイックミラー146を備えている。いくつかの実施形態では、個別のフィルターフレーム145a,145b(図4)を用いることによって、開口部144a,144bのすぐ近くに、フィルター142a,142bが保持されている。
【0052】
筐体140の底部には、光散乱面138(図2),148(図3、図4)が設けられており、これは、ポート144c(図3)上に取り付けられていて、サンプル開口部144cを完全に遮断するように配置されている。このキャリブレーションキューブの分解斜視図が、図4に示されている。
【0053】
実施例:一例として、キャリブレーションキューブ130は、25mmの2つの減光フィルター(たとえば、ヴァーモント州ロッキンガムのChroma Technology Corp.から市販されている、Chroma cat.no.2200a)を含む。キューブ130は、さらに、ダクロックミラー、50/50ビームスプリッター(たとえばChroma cat.no.21000)を含む。これは、フィルターホルダー(キューブ)140(たとえばChroma cat.no.91018)の内部に収納されている。散乱面は、フィルターペーパー148(たとえば、ペンシルバニア州ウェストチェスターのVWRから市販されている、VWR cat#28306−153)を含むことができる。使用されるフィルターペーパーの特定のブランドは重要ではないが、異なる顕微鏡システムの全てのキャリブレーションキューブ130において、同一のフィルターが使用されることが好ましく、これにより、結果の均一性が確保される。後述するように、これは重要ではないとしても、異なるフィルターペーパー148を使用することによって、キャリブレーションキューブ130に関して、相対的な測定を実施することが可能である。これは、共通の(すなわち標準化された)キャリブレーションキューブと比較される。このような比較を、補正プロセスにおいて明らかにされるオフセットを決定するために、使用することができる。
【0054】
他の例では、キャリブレーションキューブ130は、顕微鏡フィルターホルダー(たとえば、ヴァーモント州ロッキンガムのChroma Technology Corpから市販されている、OLYMPUS部品番号U−M610、U−MF2、BXフィルター・ホルダーキューブ、cat#91018)を含む。この顕微鏡システムに適合する、他の市販されているフィルターキューブを使用することも可能である。特定の実施例では、減光フィルターが、ND1.0部品番号UVND1.0、ND1.0減光フィルター(透過率10%、25mm)、および、ND2.0部品番号UVND2.0、ND2.0減光フィルター(透過率1%、25mm)である。これらは、Chroma Technology Corpから市販されている。50/50ビームスプリッター/ダイクロイックは、Chroma部品番号21000、50/50ビームスプリッター(38×26mm)である。キューブの底面には、WHATMANフィルターペーパー(グレード1、Cat No.1001−125、ペンシルバニア州ウェストチェスターのVWR)が貼り付けられている。好ましくは、これらのフィルター材料は、適切な量の光をCCDカメラ112に向けて戻すように散乱する。これにより、合理的な露光時間内に、カメラ112によって画像を取得することが可能である。たとえば、露光時間を、約3ミリ秒〜200ミリ秒の間から選択することも可能である。適用可能なカメラの性能にとって、上記の範囲外の他の露光時間が適切である場合には、その時間を選択することも可能である。
【0055】
CCDカメラ112において受光された散乱光は、好ましくは、より明るくなる(あるいはより暗くなる)可能性のある他のキューブアセンブリにおける変動を考慮して選択された露光時間において、カメラの飽和レベルを下回っている。200ミリ秒よりも長い露光時間において、散乱材料が、使用可能信号(カメラの飽和限界を下回っている)を出力することも、望ましいとはいえないが、受け入れられる。
【0056】
システムの標準化に使用するために、特別に設計されたキャリブレーション・フィルターキューブ130を、顕微鏡システム100(図1)のタレット内に導入することが可能である。このキャリブレーションキューブ130は、インライン・ランプ強度測定ツールとして機能し、このツールは、入射する励起光源の強度に対して直接的に比例する散乱光をサンプリングすることによって励起光の強度を測定するための、手段を提供する。したがって、サンプリングされた散乱光を、使用中における励起源の光強度の変動を追跡するために、使用することができる。このような強度の変動は、励起源における長期的な影響(エージングなど)から生じる可能性があり、この場合、エージングの通常のプロセスにおいて、励起源の強度がゆっくりと減衰する可能性がある。変動は、また、他の効果に起因する可能性のある、短期的な影響からも生じる可能性があり、他の効果としては、たとえば、とりわけ、大気温度の変動、デバイスの加熱によるデバイスの温度の変動、および励起電圧および電流を挙げられる。
【0057】
光源における光強度のサンプルが得られる画像取得の際には、励起減光フィルター142aを介して進む光は、減衰され、ビームスプリッター146を通過して、キャリブレーション材料148(たとえば白色紙のターゲット)によって反射される。次に、反射された(すなわち散乱された)光は、放射減光フィルター142bにおいてさらに減衰され、その後、カメラ112(図4)によってキャプチャされる。減光フィルター142a,142bは、励起光が大きく減衰してキャリブレーション材料148に作用する強度が減少するように、構成されている。放射フィルター142aは、より多くの光を通過させることによって、デジタルカメラ112によって観察される強度の減少に寄与している。
【0058】
キャリブレーションキューブの標準化(CC)
【0059】
個々のキャリブレーションキューブは、材料の差異に起因する固有の変動を有している可能性がある。この差異は、機器から得られた定量的な結果を規格化するために、明らかにされることが好ましい。製造時においては、普遍的で標準的なキューブを特定することが可能である。その後、製造された全てのキューブは、新しいキューブのそれぞれを用いて一定の光源をサンプリングすることによって、普遍的で標準的なキューブと比較され、何らかの本質的な差異が明らかにされる。これは、すなわち、キューブ補正あるいはキューブキャリブレーション因子(CC)を適用することによる。このキューブキャリブレーション因子は、好ましくは、新しいキャリブレーションキューブごとに、初めに決定される。場合によっては、その後、システムのメンテナンスのために、キューブキャリブレーション因子を周期的に決定することも可能である。さらに、この因子を、キューブの材料特性の変化(すなわち、エージングによる変化)が生じた可能性のあるときに、決定するようにしてもよい。
【0060】
実施例:多数の類似したキャリブレーションキューブを特徴づけるために、同一の励起源およびカメラ配置を用いることによって、1群の5つのキューブ(J1〜J5)のそれぞれに関して、結果が得られた。キューブの特定の1つ(すなわちJ5)は、グループのための基準キューブとして設計された。このキューブについては、普遍的で標準的なキューブであると考えることが可能である。この基準キューブJ5は、テストされる他のキューブとともに、顕微鏡システム100(図1)のタレット115に対して同時に導入された。各キューブJ1〜J5に関して、キャリブレーションキューブ130を介して得られる、光源によるサンプリング光の画像が、デジタルカメラ112によって取得された。このように取得された光強度の測定値が、テストされた異なるキャリブレーションキューブ間において比較された。各テストキューブに関して測定された強度における、基準キューブJ5を用いて測定された強度に対する比率が決定され、キューブキャリブレーション因子(CC)が示された。本例の実験では、個別のキューブJ1〜J5のそれぞれに関して、16個の測定値が収集された。各キューブJ1〜J5に関して得られた強度における、基準キューブJ5の強度に対する比率が決定された。表1は、5つのキューブに関して決定された、基準キューブ(J5)と比較したCC値を示している。キューブJ1〜J5の構造が類似していたため、強度の比率は、全て、1に近くなっている。
【0061】
[表1]キューブキャリブレーション因子(CC値)
キャリブレーションキューブ番号 CC
CC2 0.894
J1 0.929
J2 0.989
J3 0.907
J4 0.883
J5(基準キューブ) 1.000
【0062】
一時的な影響を決定するために、2日間にわたって、同一の機器を用いて、各キューブに関して光強度の測定値が測定された。両日とも、各キューブを介して、10個の測定値のうちの最小値が取り出された(キャプチャされた画像における画素強度の合計)。その結果が、平均の合計強度として、グラフによって、0〜120,000のスケールにおいて図5に示されている。この結果は、全てのキューブJ1〜J5を用いた測定において、光源強度の揺らぎが認められたことを示している。全てのキューブ間における補正係数R2の値は、比較的に高いこと(たとえば、>0.95)が好ましい。このテスト結果は、実際の試料画像の取得の際に、光源の強度が揺らぐ可能性があることを示唆している。これらの揺らぎは、ランプが点灯されるたびに、短期間に生じる可能性がある。また、この揺らぎは、ランプが点灯した状態のままでいて、長時間にわたってゆっくりとした変動が生じているときにも、生じる可能性がある。
【0063】
光源の標準化(LS)
光源の標準化LSを決定するための手順の一例では、照らされているキャリブレーション面のキャプチャされた画像の画素強度が、合計に組み込まれる。画素のために使用される特定の強度スケール値ならびに画像内の画素の数に応じて、異なる範囲を特定することが可能である。AQUA(登録商標)システムを使用して得られる一例のLS値は、約20,000〜120,000におよぶ。LS因子および選択された強度値から、比率を形成することが可能である。次に、このような比率を、ターゲットサンプルデータを補償するために使用することができ、これにより、光源の変動が本質的に除去される。一例の実施形態では、選択された値(100,000)と、AQUA(登録商標)システムの範囲内に含まれているLS因子とを用いて、比率が形成される。
【0064】
デバイスの光学経路(OP)の測定
一般的に、光学経路の補正手順は、既知の反射性、蛍光性を示すキャリブレーションサンプル(たとえば、キャリブレーションスライド)を利用する。これは、特定のデバイスあるいはシステムにおける光学経路の性能に対する、直接的な測定に利用可能である。キャリブレーションサンプルを、既存の顕微鏡システムの光学経路の固有の性能に関して、補正因子を得るために使用可能である。異なる顕微鏡システムを同様に補正する場合には、異なるシステムから得られるターゲットサンプルの結果を、異なる顕微鏡システム間において、信頼性をもって比較することが可能である。
【0065】
非常に大まかにいえば、キャリブレーションサンプルは、以下の特徴を有している。
・システムにおいて通常どおりに分析されたサンプルのいくつかの特徴点を示す(すなわち、蛍光システムに関しては、これらの特徴点は、励起/放射の波長を含むことができる)。
・光学的な性質(たとえば反射性)を有する、均一な材料(再生可能で、入手可能で、かつ安価なもの)を用いて構成されている。
・少なくとも蛍光性の用途に関しては、上記した均一な材料を不透明なもの(すなわち、セラミックなど)とすることが可能である。
・明視野の透過的な用途に関しては、上記した均一な材料は、必要であれば、検出器にとって受光可能なレベルにまで、光源を減衰させる。
・色褪せを最小化する(蛍光システムに関して)。
【0066】
所定の顕微鏡システムにおける光学経路の間の変動は、同一のシステムに関して徐々に大幅に変化することは、あまりない。したがって、通常の動作においては、光学経路の補正手順を再実施する明白な必要性はない。少なくともいくつかの実施形態では、光学経路の補正因子は、製造時において決定される。この光学経路の補正因子を、顕微鏡システムに対するアフターサービス(たとえば清掃)の後に、再決定することも可能である。
【0067】
コントロール又はキャリブレーションスライド
【0068】
標準化された機器キャリブレーションサンプル(コントロールスライドすなわちキャリブレーションスライド)は、キャリブレートされる特定のシステムにおいてデータを取得するために使用され、これにより、特定の顕微鏡システムおよび光学的配置の、光スループット効率の近似値が求められる。
たとえば、コントロールスライドを、青色あるいは緑色の蛍光基準スライドを提供する蛍光基準スライドセットXF900(ヴァーモント州ブラトルバラのOmega Optical Inc.から市販されている)とすることが可能である。設定された露光時間(たとえば、約3ミリ秒〜1000ミリ秒、すなわち、CCDカメラ112の電流範囲)内に各チャネルにおける十分な信号(すなわち波長)を取得することができる限り、他の均一なサンプル材料を使用することもできる。また、この材料は、標準的な回数の実行を経た後に、最小の色褪せを示すことが好ましい。サンプル材料は、各機器を標準化するために使用することができるように、再生可能である必要があるとともに、顕微鏡のステージに適合するようなサイズでなければならない。この材料は、好ましくは、鏡面反射の小さい環境において、顕微鏡システムにおいて使用されている各フィルターキューブを介して取得される、適切な波長帯のスペクトル成分を有する光信号を、放射あるいは反射する。他の実施例は、着色されたプラスチック、紙、およびセラミックからなる他の反射材料、金属表面、あるいは、様々なインクおよび染料によって被覆された表面を含んでいる(ただし、これらに限定されるわけではない)。
【0069】
実施例:キャリブレーションスライドが、顕微鏡システム100のステージ上に載置された。この顕微鏡システム100のフィルタータレット115(図1)内には、あらかじめ標準化されたキャリブレーションキューブ130(図2)が、前もって取り付けられている。2つの異なる機器コントロールスライドがテストされた。サンプル1は、スペクトル近似FITC/GFP(緑色励起)を有する一方、サンプル2は、スペクトル近似DAPI/Indo/Fura(青色励起)を有する。キャリブレーションスライド1に光があてられ、3つの異なるフィルターキューブ108(図1)のそれぞれ(各チャネルおよびキャリブレーションキューブに関するもの)を介して、このサンプルの蛍光性放射からなる画像が得られた。約30時間にわたって、900回を超える反復が実施された。定量的な結果について、各チャネルに関して、反復ごとに、強度のスコア(「導出されたAQUA(登録商標)スコア」)が算出された。これは、ビット深度(すなわち、0〜255)を乗じた露光時間で乗じた平均強度である。サンプル1を使用した場合のFITCチャネルを介した光強度は、過度に明るく、これは、この材料は、このチャネルにおいて取得する場合には、光の揺らぎを規格化するためには理想的ではないということを示している。別の結果として、サンプル2に関する以下に示す結果を参照されたい。これらの結果は、スライド1に関する反復に対するAQUA解析スコアとして、グラフ化された(図6)。このスコアは、各Cy3、Cy5チャネルにおいて得られたキャリブレーションスライド強度スコアに関するもの、およびこれらとは別の、キャリブレーションキューブに関するものである。基本的に、Cy3、Cy5およびキャリブレーションキューブ・チャネルにおいて、機器コントロールサンプル1を使用することによって、同一の光強度パターンが得られ、これは、この機器コントロールスライド材料の色褪せに起因する変動性は、生じそうもないことを示している。むしろ、変動は、システム100に固有の、真の光強度の変動性を示している。定量的な測定において、少なくともサンプルの最初の半分を通して、わずかな長期的減少が観察可能である。これと重複して、両方の方向において、比較的に短期的な変動もある。興味深いことに、異なるチャネルのそれぞれに関して独立に得られた測定値において、同様の傾向が観察されている。これは、変動が、少なくとも部分的に、励起源の強度における揺らぎに起因していることを示唆している。
【0070】
Cy3、Cy5チャネルおよびFITCチャネルを介した、第2のキャリブレーションスライド(スペクトル近似DAPI/Indo/Fura(青色励起))の画像、および、キャリブレーションキューブの画像を取得することによって、光源の変動性が、さらに追跡された(約20時間にわたって、約450回の反復がなされた)。一例の実施形態では、上述した「導出されたAQUAスコア」のような定量的な結果が、各反復に関して決定された。これらの結果は、スライド2に関する反復に対するAQUA解析スコア(図7)として、グラフ化された。基本的に、Cy3、Cy5チャネルおよびキャリブレーションキューブ・チャネルにおいて、機器コントロールサンプル2を使用することによって、同一の光強度パターンが得られた。これは、この機器コントロールスライド材料の色褪せに起因する変動性は、生じそうもないことを示している。むしろ、変動は、システム100に固有の、真の光強度の変動性を示している。サンプル2を用いたときの、FITCチャネルを介して見られる上記の光の揺らぎパターンは、標準的であり、さらに、このチャネルにおいて画像が取得される場合における標準化のために、使用されることが可能である。多くの反復において、FITCチャネルにおけるマイナスの傾斜として、このスライド材料のわずかな色褪せが見られる。このような色褪せが、通常の動作条件の下で取得される画像に悪影響を与えるとは考えられない。理想的には、この機器コントロールスライドは、約10%の色褪せが生じたあとに、交換される。たとえば、サンプル1に関する231回の実行後、および、サンプル2を利用した約20回の実行後である。
【0071】
機器の光学経路の標準化(OP)
【0072】
デジタルカメラ112における信号の測定値は、励起源102(図1)から顕微鏡システム100を介して進んできた光から得られ、この測定値は、このシステム100および測定されるサンプル107の固有の特性によって、変更される。機器100の光学経路は、励起光源から顕微鏡に伸びるライトパイプ、フィルターキューブ108、および使用される対物レンズ104および蛍光チャネルのそれぞれに関連する、光学系を備えることができる。デバイス100から得られる結果を標準化するために、上記の光学経路内の変動を補正するマシン固有因子(OP)を、各デバイス100に関して設定することができる。
【0073】
特定のシステムに関するマシン固有因子を算出するために、複数の画像(たとえば、16個の画像)が、標準的な機器コントロールスライド107から得られた。標準化される各システムに関して、機器コントロールスライド107は、同一の材料によって、同一の構造に構成されていた(したがって、顕微鏡システム100の影響がなければ、同じ結果が生じると推定される)。特定の光フィルターキューブ108を用いた単一の視野でのカメラ撮影の後、すぐに、フィルタータレット115が変更され、キャリブレーションキューブ130(図2)が配置された。キャリブレーションキューブ130は、対物レンズあるいはテスト用のサンプル(すなわちコントロールスライド107)のいずれも乱すことなく、単独で撮像された。各チャネルに関する露光時間は、固定されていた。各チャネルにおいて観察された信号強度に対するキャリブレーションキューブの強度の比率は、各フィルターに関する顕微鏡システムの光学経路の効率に関する、マシン固有因子を与えた。この値は、上記の特定の構造においては、システムにとって適切なものである。この構造は、倍率、光フィルター、および光学系などの構成によって、決定される。
【0074】
システムのマシン固有因子については、その基準を特定の値とすることによって、拡縮することも可能である。マシン固有因子が、色褪せていない機器コントロールスライドを用いて得られたデータを使用することによって、決定された。これらのデータは、異なる日における独立した実験において、複数回の実行(たとえば、5回の実行)から、飽和を回避するように露光時間を選択して得られたものである。各実行に関して、固有の値が算出された。実行された固有の値の間における%CVは、極端に低く、このため、固有の値を算出するためには、1回の実行でも効果的であった。
【0075】
実施例:表2は、5つの機器に関して得られた、マシン固有因子を示しており、これらは、3つのチャネル(FITC、Cy3およびCy5)に関して、フィルターを介して得られた。
【0076】
[表2]マシン固有因子(OP値)
機器 FITC−OP Cy3−OP Cy5−OP
1 1.15 1.14 1.09
2 1.61 1.49 1.86
3 1.46 1.38 1.18
4 1.00 1.00 1.00
5 1.38 1.07 1.32
【0077】
マシン固有因子は、さらに、固有の値/経験値として拡縮された。このとき、経験値は、この特定のシステムにおいて記録された最も低い平均値であった。固有の値は、2つの異なる青色の機器コントロールスライドを用いることによって決定され、どのスライドを用いたかに関わらず、再生可能であることが確認された。平均値および変動の百分率(%CV)の値が算出された。好ましくは、この%CVは、約20%未満であり、さらに好ましくは、この%CVは、約5%未満である。
【0078】
標準化
【0079】
上述した標準化因子(CC、LS、OP)は、個々の顕微鏡システムのそれぞれにおいて収集された定量的なデータを、理想的なシステムのものに変換するために使用された。1つ以上のシステムに適用される場合、これらから得られたデータは規格化され、このため、個々の顕微鏡および光源の揺らぎの、結果に対するいずれの影響も、軽減された。
【0080】
図8を参照すると、定量的な分析結果を標準化するためのプロセスのフローダイヤグラムは、予備的な初期化手順300を含み、そのあとに、テストサンプル手順200が続く。初期化手順300の一部として、ステップ210において、機器がセットアップされる。機器のセットアップは、適切な励起源102、フィルターキューブ108(図1)、およびキャリブレーションキューブ130(図2)によって顕微鏡システム100(図1)を構成するステップ、コントローラ116(図1)が適切なプログラム制御を含むことを確保するステップ、および顕微鏡システム100およびCCDカメラ112にとって必要とされ得る任意の初期化ルーチンを実行するステップを含んでいる。機器の設定が完了した後では、CCDカメラ112は、コントローラ116の制御に基づいて顕微鏡システム100を使用することによって、テスト用のサンプル画像を得ることができる。セットアップの後、ステップ220において、キャリブレーションキューブ130に関する補正因子(CC)、および顕微鏡システム100に関するマシン固有因子(OP)が得られる。上述したように、マシン固有因子(OP)については、顕微鏡システムの、製造時やアフターサービス/修理の際に、決定することが可能であり、さらに後で使用するために保存することもできる。したがって、マシン固有因子OPを得るステップは、あらかじめ保存されている値を調べるステップを含むことが可能である。後でテストサンプルの画像を分析する際に使用するために、1つ以上の上記因子(CC、OP)を、コントローラ116すなわち画像分析器によって保存することも可能である。
【0081】
テスト手順200の一部として、ステップ230において、システム100によってテスト用のサンプルが撮像される。このステップにおいて、光源の補正因子(LS)が得られる。より詳細にいえば、実際のテストサンプル107が、顕微鏡のステージ106上に載置され、ターゲットスポット109が、対物レンズ104(図1)を含む光軸上に配されるように、サンプル107の位置が決められる。この初期の位置合わせについては、観察ヘッド110(図1)によって手動で実行することも、またコントローラ116を使用することによって自動的に実行することも可能である。あるいは、手動での方向調整と、その後のコントローラ116による調整とを組み合わせることによっても可能である。ターゲットスポット109の規則的なアレイを含むテストサンプルに関しては、テストサンプル107は、好ましくは、(たとえば、1つのターゲットスポット109に対して)いったん位置合わせをされた後、サンプル107の追加的なターゲットスポット109をテストするために、あらかじめプログラムされたステージ106のオフセット調整を用いることによって、位置を修正される。
【0082】
ターゲットスポット109が光軸上に配されると、システム100は、CCDカメラ112(図1)を用いて、ターゲットスポット109のサンプル画像を取得する。一例の蛍光性IHCシステムに関しては、選択された波長帯(すなわち対象のチャネル)に関して、フィルターブロック108(図1)の個別の1つ(そのチャネルに対応したもの)を用いることによって、サンプル画像が得られる。キャリブレーションキューブ130(図2)は、タレット115(図1)を回転することによって選択される。さらに、励起源の強度を決定するために、キャリブレーションキューブ130を用いることによって、励起源の基準画像が得られる。必要に応じて、異なるチャネルを介して追加的なサンプル画像を得るために、追加的なフィルターブロック108を使用することも可能である。1つ以上のチャネル画像が、励起源の基準画像に関連しているのであれば(たとえば、ほぼ同時に取得されるのであれば)、チャネルおよび励起源のサンプルを得るための特定の順序を、変更することも可能である。このような関係については、複数の画像の合成画像を形成することによって、あるいは、さもなければ、それらの関係を反映するように画像をラベリングすることによって、実現することが可能である。
【0083】
ステップ240において後で分析および補正するために、サンプルおよび基準画像を、カメラ112からコントローラ116あるいは別体の画像分析器に送信することも可能である。画像分析は、異なるチャネルのそれぞれに関してAQUAスコアを算出するステップを含むことが可能である。補正すなわち標準化された結果を得るために、ステップ250において、1つ以上の補正因子(CC、OP、LS)が適用される。ステップ260において、テストサンプル107の特定のターゲットスポット109に関する、標準化出力データが提供される。同一のテストサンプル107の追加的なターゲットスポット109のために、テストサンプル手順200を繰り返すことも可能である。さらに、1つ以上の追加的なテストサンプル107のために、ステップ220において得られた同一の補正因子を用いて、テストサンプル手順200を繰り返すことも可能である。
【0084】
より詳細にいえば、定量的な分析結果を標準化するために使用される補正因子を得るための、初期化手順300の典型的なフローダイヤグラムが、図9に示されている。ステップ310および320において、カメラ112(図1)および顕微鏡が、それぞれ初期化される。これらのステップについては、連続的に実施しても、並行して実施してもよい。カメラ112および顕微鏡システム100の供給者は、一般的に、これらの初期化ステップ310、320を、初期化手順の形式で規定している。1つ以上の初期化手順を、自動化することも可能であるし、また、電源投入時のサイクル(power on cycle)の一部とすることも可能である。
【0085】
次に、ステップ330において、顕微鏡のステージ106(図1)が初期化され、これにより、テスト中において、テストサンプルを適切に配置することが可能となる。いくつかの実施形態では、ステップ350において、ターゲットサンプルを含むキャリブレーションスライドが、顕微鏡のステージ106上に載置される。キャリブレーションスライドは、光学経路の特性評価の際に既知の応答を得られるように、選択される。これは、顕微鏡システムのアフターサービスの際あるいはその製造時に、実行されている可能性がある。ステップ360において、キャリブレーションスライドの画像が得られ、ステップ370において、光学経路の補正因子すなわちマシン固有因子(OP)が決定される。異なる顕微鏡システム間における光学経路の変動性を除去する目的で、後の通常動作の際に使用するために、マシン固有因子を保存しておくことも可能である。機械加工による固有因子を決定するステップは、キャリブレーション源の強度を決定するために、キャリブレーションキューブ130(図2)を使用することによって、励起源のサンプル画像を取得するステップを含む。励起源のサンプルについては、キャリブレーションスライドの画像を得るステップとほぼ同時に得ることが好ましく、これにより、サンプル間における強度変動の可能性が最小化される。
【0086】
次に、ステップ380において、キャリブレーションキューブの補正因子(CC)がアクセスされる。この値については、システムに保存しておくことも可能であるし、あるいは、この予備的な初期化プロセス300において手動で入力するようにしてもよい。この値については、キャリブレーションキューブ130から得られた結果と、普遍的に標準的なキャリブレーションキューブを用いて得られた結果とを比較して、これらの結果の比率を作成することによって、得ることも可能である。光学経路の補正因子と同様に、キャリブレーションキューブの補正因子の決定についても、通常の使用中において繰り返す必要はない。上述したように、キャリブレーションキューブは、好ましくは、その性能における長期的な任意の変動性を減少あるいは除去するように、構築されている。したがって、キャリブレーションキューブの補正因子の最初の決定を、その製造時に得ることも可能である(工場は、「金製」スタンダード・キャリブレーションキューブを保持し、これは、補正因子を得るための、製造されたキャリブレーションキューブとの比較に使用される)。得られた補正因子を、キャリブレーションキューブ自体にマークすることも可能であり、この補正因子を、サンプリングされた画像の補正において後で使用するために、プロセッサに付与することも可能である。これらが得られた後、ステップ390において、マシン固有因子(OP)およびキャリブレーションキューブ補正因子(CC)は、画像分析用のソフトウェアに出力される(たとえば、あらかじめ保存された値を有しているメモリ位置から読み出される)。このステップは、これらの因子(OP、CC)を、保存して実際のテストサンプルの画像の標準化において後で使用するために、コントローラ116あるいは別体の画像分析器に転送するステップを含むことも可能である。同一のキャリブレーションスライドの異なるチャネルに関して、ステップ360および380を繰り返すこと、および、これらのステップを、ステップ390において、画像分析用のソフトウェアに対して別々に出力することも可能である。このように、マシン固有因子(OP)は、決定され、チャネルごとに保持され、さらに、適切なマシン固有因子を使用してテストサンプルをチャネルごとに後で分析するために、別々に保存される。いくつかの実施形態では、同一のチャネルに関して、ステップ360、380および390を繰り返すことも可能である。これにより、マシン固有因子を統計的に測定することが可能となる。したがって、各チャネルに関する複数の結果を得て、これらを、平均的な結果(後の使用のために保存される)を作成するために使用することが可能である。
【0087】
以下の(式1)に示す数式は、各システム100に関して得られた結果を標準化するために使用された。キャリブレーションキューブ補正因子(CC)およびマシン固有因子(OP)は、各システムに関して決定され、テスト結果の操作において後で使用するために保存された。次に、特定の標本(すなわちテスト用のサンプル)に関して、標準的な定量的結果(標本の定量的な生のスコア)が得られた。補正プロセスにおいて、生の定量的なスコアは、様々な補正因子によって操作され、これにより、異なるシステム間での比較に適した、規格化された定量的な結果が産出される。
[式1]
標本の定量的なスコア(規格化済)
=〔標本の定量的なスコア(生)〕*〔CC〕*〔OP〕*〔100,000/LS〕
【0088】
上記式1は、2つの定数(キャリブレーションキューブおよび顕微鏡システムに固有のもの;CCおよびOP)を使用した直接的な乗法標準化スキームを提供した。これらの因子の双方は、上述のように拡縮され、これにより、データは、理想的なシステムに標準化された。したがって、「金製スタンダード」に近いキャリブレーションキューブは、1.0に近いCCをもたらす。同様に、標準的な基準の光学経路に近づく光学経路も、1.0に近づく。光源の揺らぎ因子(LS)の場合、経験的に導出された値(100,000)は、この因子に関する理想的な強度値を規定するために使用された。次に、この100,000という値は、各測定において得られた特定のLS値によって、導出された。表3は、5つの異なる機器に関して得られた、結果として生じた標準化補正因子を示している。
【0089】
[表3]5つの機器に関する標準化因子
機器 補正:〔CC〕*〔OP〕*〔100,000〕
1 97446
2 116702
3 172794
4 88300
5 132000
【0090】
ここに記載した補正因子(CC、OP、LS)を用いることによって、5つの異なる機器を用いて得られた定量的なデータが、全て、機器1に関連づけられた。この相関結果は、図10においてグラフによって示されている。この図からわかるように、補正の前では、各機器の機器1に対する相関関係は、実質的に機器1とは異なる、重なることのないカーブをもたらしている。しかしながら、補正因子を適用した後では、5つの全ての機器に関する機器1に対する補正された相関カーブは、実質的に重なっている。これは、機器1に対しての(および相互の)、高度の相関関係をはっきりと示している。
【0091】
実施例:使用にあたって、テストサンプルは、単一の顕微鏡スライド上に、組織サンプルのマトリクスを含む組織マイクロアレイ(TMA)を含むことができる。たとえば、乳ガン組織のサンプルを含む36スポット組織マイクロアレイ、BT474、MCF7、T47D細胞株コントロールサンプルが、染色された。この染色プロトコルは、キシレン中の脱パラフィン、エタノール量の一連の減少による純水への再水和、およびTris EDTAにおける抗原回復を含んだ。内因性のペルオキシダーゼ阻害、およびバックグラウンドスナイパーによる阻害の後、HER2(CB11)およびサイトケラチン(Rabbit、Dako)一次抗体が塗布され、1時間後に洗い流された。次に、Dako Envision抗マウスおよびInvitrogen alexa555GARが塗布された。広範囲にわたる洗浄の後、cy5チラミドが塗布された。次に、TBS/Tween20内においてスライドが洗浄された。最後に、Dapiを含むマウント媒体が塗布され、スライドが乾かされた。
【0092】
HER2に関する蛍光染色強度、および、得られたAQUAスコアが、組織マイクロアレイの組織スポットごとに、機器1および2を使用することによって収集された。これらは、表3に記載されている。
【0093】
スコアは、以下の式2および式3を用いて標準化された。
[式2]
定量的スコア(規格化済)
=〔定量的スコア(生 機器1)/LS(機器1)〕*97,446
[式3]
定量的スコア(規格化済)
=〔定量的スコア(生 機器2)/LS(機器2)〕*116,702
【0094】
36スポット組織マイクロアレイの各サンプルに関するAQUAスコアが、2つの異なる機器を使用することによって取得された。36スポット組織マイクロアレイから2つの機器において取得された生のAQUAスコアが、図11Aに示され、規格化されたAQUAスコアが、図11Bに示されている。これらは、散布図のフォーマットでグラフ化されている。これらの結果は、生のスコアを用いた場合、2つの機器間において、回帰直線の傾斜の補正係数が2.6:1となることを示している。本発明の標準化方法を用いることによって、2つの機器間における回帰直線の傾斜の補正係数が、0.98:1となった。このことは、標準化によって、スコアの分布が影響されていないことを示している。
【0095】
標準化の前と後との序列関係を説明するために、非パラメトリックSpearman’s−rho統計分析が使用された。この分析は、2つの機器から得られたAQUAスコアデータのセットを用いて実行された。序列は、AQUAスコアごとに、最も小さいオリジナル値(=ランク1)から最も高いオリジナル値までに、割りあてられる。標準化されたデータセット、および標準化されていない(生の)データセットに関して、補正係数およびP値が算出された。データの序列は、標準化によって影響を受けていなかった(表4)。
【0096】
[表4]Spearman Rho分析
規格化データ 生データ
Rho: 0.72 0.721
P値: <0.0001 <0.0001
【0097】
実施例:上述の実施例において説明したものと同一の36スポット染色組織マイクロアレイが取得され、5つの異なる機器においてスコアをとられた。
【0098】
その結果によって明らかになったことであるが、5つの異なる機器において取得された、組織マイクロアレイ組織スポットごとの、生のAQUAスコアおよび標準化されたAQUAスコアの変動の百分率(%CV)は、本発明の方法による標準化によれば、著しく改善された%CVが得られることを示している。
【0099】
表5および表6は、5つの機器において実行され、単一のスライドによって生成された、回帰直線の傾斜の補正係数を編集したものである。生のAQUAスコアに基づく相関関係が、表5に示され、標準化AQUAスコアに基づくものは、表6に示されている。この比較は、複数の有効な画像から生成された数値によって実施された。
【0100】
[表5]生データ
生データ 機器1 機器2 機器3 機器4 機器5
機器1 N/A 0.44x 2.55x 1.68x 2.51x
機器2 0.44x N/A 0.17x 3.85x 5.76x
機器3 2.55x 0.17x N/A 0.66c 0.98x
機器4 1.68x 3.85x 0.66x N/A 1.50x
機器5 2.51x 5.76x 0.98x 1.50x N/A
【0101】
[表6]規格化データ
規格化データ 機器1 機器2 機器3 機器4 機器5
機器1 N/A 0.88x 0.95x 1.09x 0.89x
機器2 0.88x N/A 0.92x 1.24x 1.00x
機器3 0.95x 0.92x N/A 1.14x 0.93x
機器4 1.09x 1.24x 1.14x N/A 1.23x
機器5 0.89x 1.00x 0.93x 1.23x N/A
【0102】
5つの機器において取得された、組織マイクロアレイ組織スポットごとの、生のAQUA(登録商標)スコアおよび標準化AQUAスコアの変動の百分率(%CV)は、本発明の方法による標準化によれは、著しく改善された%CVが得られることを示している。
【0103】
36個の組織マイクロアレイスポットのうちの26個の有効なスポットに対するHER2染色に関する、平均AQUAスコアが、図12Aおよび図12Bに示されている。36個のサンプルにわたる傾向あるいは比較は、各機器において類似している。一方、個々のサンプルごとのスコアの分散は、各機器において、約60%の平均CVを有している。同じ5つの機器のそれぞれにおいて得られた平均スコアの比較においては、既に標準化された図12Bの方が、より高い一貫性を有している(平均CVは、約20%である)。
【0104】
標準化の前後における平均値間の大幅な相違に関しての、機器が同一であるとする帰無仮説を用いた分散分析(ANOVA)テストは、著しいp値(<0.05)を生み出した。したがって、複数の機器において収集された周辺平均スコアは、互いに異なっていることを示す帰無仮説は、否定される。標準化の後における0.05<のp値は、複数の機器において収集された複数の周辺平均スコアは、このときには、それほど大きく相違していないことを示している。
【0105】
一実施形態は、主として、蛍光顕微鏡に関連しているが、本発明は、一般的に、光学顕微鏡に対して幅広く適用可能である。様々な実施形態の技術は、キャリブレーション機器を用いた、任意の光源の強度変動に対する補正、普遍的に標準的なキャリブレーション機器に対するオフセットを用いた、キャリブレーション機器の変動に対する補正、そして、特定の光学顕微鏡システムにおける光学経路の効果に対する規格化に適用される。したがって、本発明の様々な実施形態を、インコヒーレント光源、偏光光源、およびコヒーレント光源を用いた、いろいろな光学顕微鏡(焦点レーザー走査顕微鏡システムなど)に対して、一般的に適用することが可能である。
【0106】
典型的な蛍光顕微鏡システムのためのシステム要件は、表7に記載されている。
【0107】
【表7】
【0108】
当業者にとっては当然のことではあるが、様々な補正因子(CC、LS、OP)を得るための、1つ以上のステップについては、プロセッサ(コンピュータなど)を利用することによって、自動的に、あるいは、少なくとも半自動的に、実施することができる。代替的あるいは追加的に、標準化されたターゲット画像データを決定するため、それらからの定量的な測定値を決定するために使用される、1つ以上のステップを、たとえばプロセッサを利用することによって、自動化することも可能である。たとえば、このようなプロセッサを、あらかじめプログラムされている命令を実行するコンピュータによって実践することも可能である。このように自動化は、病理学に基づくスコアリングに内在する変動性を除去するために役立つ。
【0109】
以上、本発明が、その好ましい実施形態を参照することによって、特定的に示され、かつ説明されてきたが、説明したのは、1つの動作上の特徴点であることは明らかである。本明細書では、特定の実施形態が詳細に開示されてきた。しかしながら、この開示は、例示の目的のためだけに、一例として示されたに過ぎないのであって、特許請求の範囲を限定する意図を有するものではない。とりわけ、発明者は、特許請求の範囲に包含されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対する様々な置換形態、代替形態、および改良形態を形成することが可能である、と考えている。たとえば、フィルターの材料の選択、測定および分析ステップの順序づけ、および、利用されているフィルター、ステージおよび励起源の配置は、本明細書に記載されている実施形態の知識を有する当業者にとって、当然なし得る事項となると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されたターゲットサンプルデータの定量的な測定値を標準化する方法であって、
a.前記励起光源に関する光源補正因子を取得し、
b.該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記光学システムが顕微鏡である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顕微鏡が、インコヒーレント光源を使用する光学顕微鏡、偏光光源を使用する光学顕微鏡、蛍光光源を使用する光学顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡システムなどのコヒーレント光源を使用する顕微鏡、およびこれらの組み合わせ、の中から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットサンプルが生体サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生体サンプルが、1つの細胞、複数の細胞、組織切片、組織切片のアレイ、およびこれらの組み合わせ、の中から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体サンプルが、1以上の染色剤によって処理される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記染色剤が免疫組織化学系の染色剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記染色剤が蛍光性である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ターゲットサンプルデータが強度測定から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記光源補正因子を取得する際に、前記ターゲットサンプルの画像とほぼ同時に、相対的な光強度測定値を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光源補正因子が、前記光学システムに導入されているキャリブレーション機器を利用することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
キャリブレーション機器の補正因子を決定し、この因子を前記ターゲットサンプルデータに適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリブレーション機器の補正因子が、前記光学システムのデータ保存部に保存される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
d.光学システム固有因子を取得し、
e.前記標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するより前に、前記光学システム固有因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、前記ターゲットサンプルデータを前記光学システムの固有因子に関して標準化する、
ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記光学システム固有因子を取得する際に、
d−1.標準化された応答を生成するように構成されたキャリブレーションターゲットサンプルを前記励起光源によって照らし、
d−2.該キャリブレーションターゲットサンプルに光をあてて測定されたターゲットサンプルデータを取得し、
d−3.前記光学部の相対的な能力を示す前記光学システム固有因子を決定する、
ことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ターゲットサンプルデータを得るために協働する、励起光源、光学部、検出部、およびデータ保存部を有した光学システムから、定量的な標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を得るための方法であって、
a.光学システム固有因子を取得し、
b.該光学システム固有因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、固有の光学因子に関して標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む方法。
【請求項17】
d.光源補正因子を取得し、
e.該光源補正因子を請求項16記載のターゲットサンプルの測定値に適用し、これにより、光強度の変動に関してさらに標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を得る、
ことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
顕微鏡システムの励起光源の光をサンプリングするためのキャリブレーション機器であって、
光学経路に沿って配置され、前記励起光源からの光を前記顕微鏡システムの検出部に向けてほぼ均一に散乱させるキャリブレーション面を含んで構成される、キャリブレーション機器。
【請求項19】
前記励起光源からの光を、光学経路に沿って対物レンズを通しターゲットサンプルに向けて反射するとともに、前記ターゲットサンプルからの光の少なくとも一部を、前記顕微鏡システムの検出部に向けて透過させるように配置された、ダイクロマティックミラーをさらに含み、
前記キャリブレーション面が、キャリブレーション中に、前記ダイクロマティックミラーと前記対物レンズとの間の光学経路を一時的に遮断し、反射した前記励起光の大部分が、前記ダイクロマティックミラーを通して前記検出部に向け散乱される、
請求項18に記載のキャリブレーション機器。
【請求項20】
前記キャリブレーション面が不透明である、請求項18または19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項21】
前記不透明のキャリブレーション面がフィルターペーパーを備える、請求項20に記載のキャリブレーション機器。
【請求項22】
前記不透明のキャリブレーション面が剛体表面をもつ、請求項20に記載のキャリブレーション機器。
【請求項23】
前記剛体表面がセラミック表面である、請求項22に記載のキャリブレーション機器。
【請求項24】
前記励起光源からの光および前記ターゲットサンプルからの光の少なくとも一方を減衰させるように配置された、少なくとも1つの無色のフィルターをさらに含む、請求項18または19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項25】
前記ダイクロマティックミラーと、無色のフィルターおよびキャリブレーション素子を、互いに固定された関係となるように保持するよう構成された筐体をさらに含む、請求項19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項26】
前記筐体が、交換可能なフィルター選択メカニズム内に配置可能である、請求項25に記載のキャリブレーション機器。
【請求項27】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されるターゲットサンプルデータの定量的な測定値を標準化するための方法をプロセッサに実行させる命令を記録したコンピュータ可読媒体であって、
前記命令が、
前記励起光源の光に対して標準的な応答を生成するように構成されているキャリブレーションサンプルを、前記励起光源により照らし、
a.前記励起光源に関する光源補正因子を取得し、
b.該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されるターゲットサンプルデータの標準化された定量的な測定値を得るための顕微鏡システムであって、
前記励起光源に関する光源補正因子を得る手段と、
該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを得るための手段と、
該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するための手段と、
を含んで構成される顕微鏡システム。
【請求項29】
ターゲットサンプルデータの標準化された定量的な測定値を得るためのシステムであって、
ターゲットサンプルを支持するためのステージと、
前記ターゲットサンプルを照らすための励起光源と、
前記ターゲットサンプルの画像を検出するための検出部と、
キャリブレーション中に、前記ステージ上のターゲットサンプルを乱すことなく、前記励起光源による光のサンプル部分を前記検出部に向け直すために、前記励起光源と前記検出部との間の光軸中に一時的に挿入されるように構成されているキャリブレーション機器と、
前記検出部と通信し、光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用して、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを得るとともに、この標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するように構成されている分析器と、
を含んで構成されるシステム。
【請求項30】
顕微鏡システムにおけるターゲットサンプルの強度測定値を補償するためのシステムであって、
請求項1に記載のステップを実行するプロセッサを備える、システム。
【請求項1】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されたターゲットサンプルデータの定量的な測定値を標準化する方法であって、
a.前記励起光源に関する光源補正因子を取得し、
b.該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記光学システムが顕微鏡である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顕微鏡が、インコヒーレント光源を使用する光学顕微鏡、偏光光源を使用する光学顕微鏡、蛍光光源を使用する光学顕微鏡、共焦点レーザー走査顕微鏡システムなどのコヒーレント光源を使用する顕微鏡、およびこれらの組み合わせ、の中から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットサンプルが生体サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生体サンプルが、1つの細胞、複数の細胞、組織切片、組織切片のアレイ、およびこれらの組み合わせ、の中から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体サンプルが、1以上の染色剤によって処理される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記染色剤が免疫組織化学系の染色剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記染色剤が蛍光性である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ターゲットサンプルデータが強度測定から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記光源補正因子を取得する際に、前記ターゲットサンプルの画像とほぼ同時に、相対的な光強度測定値を収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光源補正因子が、前記光学システムに導入されているキャリブレーション機器を利用することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
キャリブレーション機器の補正因子を決定し、この因子を前記ターゲットサンプルデータに適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリブレーション機器の補正因子が、前記光学システムのデータ保存部に保存される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
d.光学システム固有因子を取得し、
e.前記標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するより前に、前記光学システム固有因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、前記ターゲットサンプルデータを前記光学システムの固有因子に関して標準化する、
ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記光学システム固有因子を取得する際に、
d−1.標準化された応答を生成するように構成されたキャリブレーションターゲットサンプルを前記励起光源によって照らし、
d−2.該キャリブレーションターゲットサンプルに光をあてて測定されたターゲットサンプルデータを取得し、
d−3.前記光学部の相対的な能力を示す前記光学システム固有因子を決定する、
ことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ターゲットサンプルデータを得るために協働する、励起光源、光学部、検出部、およびデータ保存部を有した光学システムから、定量的な標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を得るための方法であって、
a.光学システム固有因子を取得し、
b.該光学システム固有因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、固有の光学因子に関して標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む方法。
【請求項17】
d.光源補正因子を取得し、
e.該光源補正因子を請求項16記載のターゲットサンプルの測定値に適用し、これにより、光強度の変動に関してさらに標準化されたターゲットサンプルデータの測定値を得る、
ことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
顕微鏡システムの励起光源の光をサンプリングするためのキャリブレーション機器であって、
光学経路に沿って配置され、前記励起光源からの光を前記顕微鏡システムの検出部に向けてほぼ均一に散乱させるキャリブレーション面を含んで構成される、キャリブレーション機器。
【請求項19】
前記励起光源からの光を、光学経路に沿って対物レンズを通しターゲットサンプルに向けて反射するとともに、前記ターゲットサンプルからの光の少なくとも一部を、前記顕微鏡システムの検出部に向けて透過させるように配置された、ダイクロマティックミラーをさらに含み、
前記キャリブレーション面が、キャリブレーション中に、前記ダイクロマティックミラーと前記対物レンズとの間の光学経路を一時的に遮断し、反射した前記励起光の大部分が、前記ダイクロマティックミラーを通して前記検出部に向け散乱される、
請求項18に記載のキャリブレーション機器。
【請求項20】
前記キャリブレーション面が不透明である、請求項18または19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項21】
前記不透明のキャリブレーション面がフィルターペーパーを備える、請求項20に記載のキャリブレーション機器。
【請求項22】
前記不透明のキャリブレーション面が剛体表面をもつ、請求項20に記載のキャリブレーション機器。
【請求項23】
前記剛体表面がセラミック表面である、請求項22に記載のキャリブレーション機器。
【請求項24】
前記励起光源からの光および前記ターゲットサンプルからの光の少なくとも一方を減衰させるように配置された、少なくとも1つの無色のフィルターをさらに含む、請求項18または19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項25】
前記ダイクロマティックミラーと、無色のフィルターおよびキャリブレーション素子を、互いに固定された関係となるように保持するよう構成された筐体をさらに含む、請求項19に記載のキャリブレーション機器。
【請求項26】
前記筐体が、交換可能なフィルター選択メカニズム内に配置可能である、請求項25に記載のキャリブレーション機器。
【請求項27】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されるターゲットサンプルデータの定量的な測定値を標準化するための方法をプロセッサに実行させる命令を記録したコンピュータ可読媒体であって、
前記命令が、
前記励起光源の光に対して標準的な応答を生成するように構成されているキャリブレーションサンプルを、前記励起光源により照らし、
a.前記励起光源に関する光源補正因子を取得し、
b.該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを取得し、
c.該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定する、
ことを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
ターゲットサンプルの画像を得るために協働する、励起光源、光学部、画像キャプチャ部、およびデータ保存部を有した光学システムにより獲得されるターゲットサンプルデータの標準化された定量的な測定値を得るための顕微鏡システムであって、
前記励起光源に関する光源補正因子を得る手段と、
該光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用し、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを得るための手段と、
該標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するための手段と、
を含んで構成される顕微鏡システム。
【請求項29】
ターゲットサンプルデータの標準化された定量的な測定値を得るためのシステムであって、
ターゲットサンプルを支持するためのステージと、
前記ターゲットサンプルを照らすための励起光源と、
前記ターゲットサンプルの画像を検出するための検出部と、
キャリブレーション中に、前記ステージ上のターゲットサンプルを乱すことなく、前記励起光源による光のサンプル部分を前記検出部に向け直すために、前記励起光源と前記検出部との間の光軸中に一時的に挿入されるように構成されているキャリブレーション機器と、
前記検出部と通信し、光源補正因子を前記ターゲットサンプルデータに適用して、これにより、光強度の変動性に関して標準化されたターゲットサンプルデータを得るとともに、この標準化ターゲットサンプルデータの定量的な測定値を決定するように構成されている分析器と、
を含んで構成されるシステム。
【請求項30】
顕微鏡システムにおけるターゲットサンプルの強度測定値を補償するためのシステムであって、
請求項1に記載のステップを実行するプロセッサを備える、システム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図7】
【公表番号】特表2010−530083(P2010−530083A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512196(P2010−512196)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/007399
【国際公開番号】WO2008/156669
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509316408)ヒストロックス,インコーポレイテッド. (3)
【氏名又は名称原語表記】HISTORX,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/007399
【国際公開番号】WO2008/156669
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509316408)ヒストロックス,インコーポレイテッド. (3)
【氏名又は名称原語表記】HISTORX,INC.
【Fターム(参考)】
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