顧客移動経路情報収集装置
【課題】ショッピングカートの使用率を向上させて、顧客の移動経路情報を効率よく収集する。
【解決手段】ショッピングカートに設けられその走行状態を検出する走行状態検出手段7、8と、走行状態検出手段7、8で検出した走行状態に基づいてショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段10と、移動経路情報形成手段10で形成した移動経路情報をショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段10、32と、ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段16と、商品の精算を行う精算装置に設けられ、ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で精算を行う特典情報反映手段32と、を備えている。
【解決手段】ショッピングカートに設けられその走行状態を検出する走行状態検出手段7、8と、走行状態検出手段7、8で検出した走行状態に基づいてショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段10と、移動経路情報形成手段10で形成した移動経路情報をショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段10、32と、ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段16と、商品の精算を行う精算装置に設けられ、ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で精算を行う特典情報反映手段32と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショッピングカートを利用して顧客の移動経路情報を収集する際に、ショッピングカートの使用率を向上させ移動経路情報を効率よく収集するようにした顧客移動経路情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店内で購買者が何を購入したかだけでなく、具体的にどの売り場で、どのような経路で、どの程度の時間をかけて商品を選んだか等も自動的に取得し、商品の購入における消費者の行動をマーケティングに役立てる方法が取られている。これに伴って、適切なタイミングで店内情報や商品情報を提供する販売促進方法についての研究も行われている
しかしながら、一般に買い物量の少ない顧客は、買い物かごを使用し、ショッピングカートを利用しないことが多い。多数のデータを収集すると共に、可能な限りの販売促進を行うためには、ショッピングカートを利用してもらう必要がある。
【0003】
そのためには、例えば、特許文献1記載の発明のように、ショッピングカートにクーポン券発行機、操作手段、表示部、音声出力装置、顧客番号入力手段、受発信装置を設け、データ収集を行うと共に、収集したデータをホストコンピュータに伝送してデータ処理を行い、販売促進の資料とし、且つ、必要なデータを受信して広告情報等を情報提供することで、顧客の購買意欲を高めるようにしたもの等は、ショッピングカートの利用を促す方法として有効である。
【特許文献1】特開2001−34850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、ショッピングカートにクーポン券発行機を設けて、顧客のショッピングカートを利用しようという意識の向上を図る方法にあっては、クーポン券の発行の操作やクーポン券の提示等は顧客が行う必要がある。このため、機械操作が嫌いな人や面倒と感じる人等は、クーポン券の使用により特典を得ることができたとしても、特典を得るためにショッピングカートを利用しようという気にはならない可能性がある。また、クーポン券は印刷して用いるため、クーポン券を印刷してはみたものの利用しなかった場合等にはこれはゴミとなり、店内にゴミとして散らかされる要因となる。また、クーポン券を利用したとしても、精算が終了しクーポン券の利用状況等の集計を行った後には、ゴミとなってしまい、資源の無駄である。
【0005】
また、クーポン券を利用した場合、レジにて精算する際に、レジ打ち係が入力操作を行うため、その入力方法が、バーコード形式や価格入力形式の何れの場合であっても、レジ打ち係の負担が増加することになり、また、人為的ミスが生じる可能性もある。
そこで、この発明は上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、利用者等の操作負担の増加を伴うことなく、ショッピングカートの使用率を向上させ、効率よく情報収集を行うことの可能な顧客移動経路情報収集装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明は、顧客の移動経路情報を収集する顧客移動経路情報収集装置であって、前記顧客が使用するショッピングカートに設けられ、その走行状態を検出する走行状態検出手段と、当該走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいて前記ショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段と、当該移動経路情報形成手段で形成した移動経路情報を前記ショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段と、前記ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段と、商品の精算を行う精算装置に設けられ、前記ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、前記ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で前記精算を行う特典情報反映手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいてショッピングカートの移動経路情報が形成されこの移動経路情報が収集される。このとき、ショッピングカートに設けられた特典情報提示手段を参照することによって、ショッピングカートの利用者は、どのような特典が提供されるかを認識することができ、このショッピングカートの利用者が商品の精算を行うときには、特典情報反映手段により、ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格での精算が行われる。したがって、利用者は特典を受けるための操作を何ら行う必要はなく、また、精算を行うレジ打ち係等の負担を伴うことなく、ショッピングカート利用者に対して特典情報に応じた特典を与えることができる。また、ショッピングカート利用者用の特典は、ショッピングカート利用者が精算を行うときにショッピングカート利用者に対して与えられるから、顧客に対し、ショッピングカート利用者用の特典を受けるために、ショッピングカートを利用しようという意識を持たせることができ、結果的にショッピングカートの使用率を向上させることができ、顧客の移動経路情報を効率良く収集することができる。
【0008】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記ショッピングカート利用者用の特典は、前記ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されることを特徴としている。
上記構成によれば、ショッピングカート利用者用の特典は、ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されているから、顧客に対しショッピングカートを利用しようという意識をより強くもたせることができ、ショッピングカートの使用率を向上させることができる。
【0009】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記特典情報提示手段は、前記移動経路情報形成手段で形成したショッピングカートの移動経路情報に基づいて前記ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に関する特典情報を提示することを特徴としている。
上記構成によれば、ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に対する特典情報が提示されるから、ショッピングカート利用者は、特典情報に対応する商品をその場で目視することができ、効率よく、効果的に特典情報を提示することができる。
【0010】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記ショッピングカートの利用者が予め登録された会員かどうかを認証する認証手段と、前記ショッピングカートを利用した会員の購買状況を収集しこれを会員毎に蓄積する購買履歴収集手段と、前記認証手段で会員であることが認証されたとき、当該会員の購買履歴情報を、前記購買履歴収集手段から獲得する購買履歴情報獲得手段と、当該購買履歴情報獲得手段で獲得した前記会員の購買履歴情報に基づいて前記会員個別の特典情報を生成する個別特典情報生成手段と、を備え、前記特典情報提示手段は、前記個別特典情報生成手段で生成した前記会員個別の特典情報を提示することを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、認証手段により、ショッピングカートの利用者が会員であるかどうかが認証され、会員の場合には、ショッピングカートを利用した会員の購買状況が会員毎に収集されて蓄積されると共に、会員であると認証されたときには、これまでの購買状況に基づいて、この会員固有の特典情報が生成されこれが提示される。したがって、例えば、購買頻度がある程度高い商品ほど割引率を高くしたり、或いは、これまでの累積購買金額等に応じて割引率を設定したりする等、会員個々のこれまでの購買状況に応じた会員個別の特典情報を提示することにより、顧客に対し、ショッピングカートを利用しようという意識をより持たせることができる。
【0012】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記認証手段は、前記ショッピングカートのカート置場に設けられていることを特徴としている。
上記構成によれば、認証手段は、ショッピングカートのカート置場に設けられているから、ショッピングカートの利用者が、ショッピングカートを利用する際にカート置場の認証手段で認証操作を行って認証を行うことにより、ショッピングカート毎に認証手段を設ける必要はなく、その分、経費削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すシステム構成図であって、スーパーマーケット、デパートの食品売り場等のショッピングカートを利用して買い物をする店舗1内の出入口2の近傍に複数、例えば10台のショッピングカート3を所定の方向に向けて縦列配置するカート置場4A,4Bが配設されている。
【0014】
このカート置場4A,4Bのそれぞれは、図2に示すように、ショッピングカート3を所定の方向に向けて案内するガイドバー5を有する。このガイドバー5は、ショッピングカート3の幅と略等しい間隔を保って平行に配設されたサイドバー部5a,5bと、これらサイドバー部5a,5bの一端間を結ぶエンドバー部5cと、床面に植立されて例えばサイドバー部5a,5bを支持する支柱部5dとで構成されている。そして、複数のショッピングカート3を縦列配置した状態で、エンドバー部5cでショッピングカート3の前端を規制し、サイドバー部5a,5bでショッピングカート3の左右側部を案内することにより、ショッピングカート3を一定方向に向けて縦列配置している。
【0015】
そして、ショッピングカート3にその移動経路を計測して移動経路情報を形成するコントロールユニット6が配設されていると共に、ショッピングカート3の固定車輪3aにその回転速度に応じた車輪速用パルスとこの車輪速用パルスに対して90°位相が異なる回転方向検出用パルスを発生して回転方向を検出可能なインクリメント型のロータリエンコーダ7が配設されている。
【0016】
このコントロールユニット6は、図3に示すように、ショッピングカート3のヨーレートを検出する圧電式ジャイロ8を含んで、ショッピングカート3の角速度ωを出力するセンサユニット9と、このセンサユニット9から出力されるショッピングカート3の角速度ωを記憶すると共に、ロータリエンコーダ7から入力される車輪速用パルス及び回転方向検出用のパルスに基づいてショッピングカート3の前後の走行情報D及び停止時間Tstを算出してこれを記憶し、さらに外部の機器との無線通信制御を行う例えばCPUで構成される演算処理装置10と、この演算処理装置10で行う演算処理に必要なプログラムを格納していると共に、角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、初期位置情報、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置情報取得時刻、ジャイロリセット時刻でなる移動経路情報、特典情報、及び会員情報を格納するメモリ11と、演算処理装置10によって制御される外部装置との間で無線通信を行う通信制御部12と、この通信制御部12に接続された無線通信アンテナ13と、無線通信アンテナ13を介して移動経路を補正する位置情報を受信するための位置情報受信部14と、商品選択情報や、ショッピングカート3の利用者への特典情報を表示するための液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等で構成される表示装置16と、センサユニット9、演算処理装置10、通信制御部12、位置情報受信部14及び表示装置16に電力を供給するバッテリ15と、を備えている。
【0017】
また、カート置場4A,4Bには、磁気カード或いはICカードのカード情報を読み込むためのカードリーダ17a及びショッピングカート3がカート置場4A、4Bから引き出されたかどうかを判断するためカートスイッチ17bを備えた初期情報送信装置17が設けられている。この初期情報送信装置17は、図4に示すように、カードリーダ17aで読み取ったカード情報をパーソナルコンピュータ40に送信し、その応答として会員用の特典情報或いは非会員用の特典情報を入力すると共に、カートスイッチ17bが作動したとき前記特典情報と、会員かどうかを表す情報であって会員の場合には会員番号を含む会員情報と、カート置場4A,4Bの絶対位置情報及びショッピングカート3の縦列方向を表す方位情報からなる初期位置情報とを、初期情報として該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に無線送信する例えばCPUで構成される演算処理装置17cと、後述のパーソナルコンピュータ40と通信を行う外部通信制御部17dと、前記初期情報を、無線通信アンテナ17eを介して送信するための初期情報送信部17fとを備えている。
【0018】
一方、図1及び図5に示すように、店舗1内に配設された移動経路に沿う商品陳列棚21の上部に、商品区分に応じた商品購買範囲内に通信範囲が規制された例えば半円形の指向性を有する現在位置情報を送信する無線LANのアクセスポイント、RFIDタグ等で構成される位置情報送信部22が設置され、この位置情報送信部22から例えば数メートル〜十数メートル程度の通信範囲内に位置するショッピングカート3に配設されたコントロールユニット6に対して現在位置情報を送信するように構成されている。
【0019】
さらに、店舗1内の精算所31に商品の精算を行うPOS(Point Of Sales)システム32が配設されている。このPOSシステム32は、図6に示すように、各ショッピングカート3のコントロールユニット6から移動経路情報、このショッピングカート3の利用者の会員情報を取得する移動経路データ通信部33と、この移動経路データ通信部33に接続された無線通信アンテナ34と、商品情報を入力するバーコードリーダやテンキー等で構成される商品情報入力部35と、精算情報を表示する液晶ディスプレイ、ELパネル、プラズマディスプレイ等の表示部36と、移動経路データ通信部33を制御して移動経路情報及び会員情報を取得すると共に、商品情報入力部35から入力される購入商品情報及び精算金額情報と会員情報に基づいて特定されるこの利用者に対する特典情報とに基づいて精算を行うデータ取得処理を実行する例えばCPUで構成される演算処理装置37と、この演算処理装置37の演算処理に使用するプログラムや特典情報に応じた商品価格情報を格納していると共に、精算情報、精算終了時刻、移動経路情報を一時記憶するメモリ38と、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)39を介して外部のデータ解析を行う複数のパーソナルコンピュータ40と通信を行う外部通信制御部41とを備えている。
【0020】
各パーソナルコンピュータ40は、例えばローカルエリアネットワーク42を介して1つ又は複数のデータベース43に接続されており、POSシステム32から取得した移動経路情報及び精算情報、精算終了時刻をデータベース43に格納すると共に、格納した移動経路情報及び精算情報、精算終了時刻を解析するデータ解析処理を行う。また、初期情報送信装置17からカードリーダ17aで読み取ったカード情報を入力したとき、データベース43に格納されている登録会員情報に基づいて、有効な会員であるかどうかを判断し、有効な会員であるときには、予め設定されて所定の記憶領域に格納されている会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力し、非会員であるときには、非会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力する。
【0021】
この初期情報送信装置17で実行する初期情報送信処理は、図7に示すように、まず、ステップS1でカードリーダ17aからカード情報を読み込んだかどうかを判断し、カード情報を読み込んだならばステップS2に移行し、このカード情報を、通信制御部17dを介してパーソナルコンピュータ40に出力して認証依頼を行い、ステップS3で、その応答として、認証結果に応じた、会員用の特典情報又は非会員用の特典情報を獲得する。
【0022】
次いで、ステップS4に移行し、カートスイッチ17bが作動したかどうかを判断し、カートスイッチ17bが作動したとき、後述のステップS10に移行する。
一方、前記ステップS1で、カードリーダ17aでカード情報が入力されない場合にはステップS6に移行し、カートスイッチ17bが作動したかどうかを判断する。カートスイッチ17bが作動しないときにはステップS1に戻り、カートスイッチ17bが作動したときには、ステップS7に移行する。
【0023】
このステップS7では、非会員であることをパーソナルコンピュータ40に通知し、その応答として、ステップS8で、非会員用の特典情報を獲得した後、ステップS10に移行する。
このステップS10では、パーソナルコンピュータ40から受信した会員用の特典情報或いは、非会員に対する特典情報と、会員であるかどうかを表す情報であって、会員で有る場合にはこの会員を特定可能な会員番号等の識別情報を含む会員情報と、カート置場4A,4Bの絶対位置情報及びショッピングカート3の縦列方向を表す方位情報からなる初期位置情報とを、初期情報として該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に、初期情報送信部17f及び無線通信アンテナ17eを介して送信する。そして処理を終了する。
【0024】
また、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6の演算処理装置10では、図8に示す移動経路情報収集処理を実行する。
この移動経路情報収集処理は、ショッピングカート3をカート置場4A又は4Bから離脱させることにより、コントロールユニット6のバッテリ15への外部電源の供給が遮断されたときに実行開始され、まず、ステップS11で、メモリ11に記憶されている角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、初期位置情報、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置取得時刻、リセット時刻、総移動距離L、滞在時間でなる移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されているか否かを判定する。これら移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されていないときにはステップS12に移行して移動経路情報と、会員情報及び特典情報を消去してからステップS13に移行し、移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されているときには直接ステップS13に移行する。
【0025】
このステップS13では、移動開始時刻をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶すると共に、ロータリエンコーダ7から出力される車輪速用パルスを計数するカウンタをリセットし、さらに圧電式ジャイロ8をリセットする。
次いで、ステップS14に移行して、カート置場4A,4Bに配設された初期情報送信装置17から送信されるショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及びカート置場4A,4Bでのショッピングカート3の現在の方位情報θ0で構成される初期位置情報と、このショッピングカート3の利用者に対する特典情報及び会員情報とを、初期情報として取得し、取得した初期位置情報をメモリ11の移動経路情報記憶領域に格納すると共に、特典情報及び会員情報をメモリ11の特典情報記憶領域に格納する。
【0026】
次いで、ステップS15に移行して、図9に示す移動経路情報形成処理を起動し、次いでステップS16に移行して、商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22が存在するか否かを判定し、位置情報送信部22が存在しない場合には後述するステップS37に移行し、位置情報送信部22が存在する場合には、ステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているか否かを判定する。現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているときには、既に位置情報送信部22の通信範囲内に入っている状態を継続しているものと判断して後述するステップS25にジャンプし、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているときには位置情報送信部22の通信範囲に初めて到達したものと判断してステップS18に移行する。
【0027】
このステップS18では、位置情報送信部22から現在位置情報を受信したか否かを判定し、現在位置情報を受信していないときには後述のステップS32にジャンプし、現在位置情報を受信したときにはステップS19に移行して、現在位置情報及び現在位置情報取得時刻をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶してからステップS20に移行する。
【0028】
このステップS20では、圧電式ジャイロ8をリセットしてドリフト分を除去し、次いでステップS21に移行して、ジャイロリセット時刻TR(n)をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶し、次いでステップS22に移行して、現在のジャイロリセット時刻TR(n)及び前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)に基づいてジャイロドリフト成分を推定し、推定したジャイロドリフト成分に応じて前回の圧電式ジャイロ8のリセット時刻TR(n-1)以降に記憶した各角速度ωを補正する角速度補正処理を行い、次いでステップS23に移行して、図10に示す通過位置情報算出処理を実行してからステップS24に移行する。
【0029】
このステップS24では、位置情報送信部22の位置情報到達領域に対応する商品購入領域に進入した回数NEをインクリメントし(NE=NE+1)、次いで、ステップS24aに移行して、現在位置取得フラグFPを“1”にセットする。
次いでステップS25に移行し、商品購入領域進入回数NEが予め設定した顧客が商品選択に迷いを生じていると判断する基準値NES以上であるか否かを判定し、NE≧NESであるときには、該当する商品購入領域に来る回数が多く、商品の選択に迷いを生じている商品選択迷い状態であるものと判断してステップS26に移行する。
【0030】
このステップS26では、現在の商品購入領域におけるお買い得商品情報、お勧め商品情報、スポンサーメーカ商品情報(利益率が高い商品情報)や、この利用者に対して与えられている特典の対象となる特典対象商品等の商品名及び商品価格を含む1つ又は複数の商品選択補助情報を選択し、次いでステップS27に移行して、選択した商品選択補助情報を表示装置16に出力し、これを表示してから後述するステップS32に移行する。
【0031】
また、前記ステップS25の判定結果が、商品購入領域進入回数NEが設定値NES未満であるときには、ステップS29に移行する。
このステップS29では、現在時刻TNからステップS19で記憶した現在位置情報取得時刻TAを減算して領域滞在時刻TP(=TN−TA)を算出し、次いでステップS30に移行して、算出した領域滞在時刻TPが予め設定した客が商品選択に迷いを生じていると判断する基準値TPS以上であるか否かを判定し、TP≧TPSであるときには顧客が商品の選択に迷いを生じている商品選択迷い状態であるものと判断して前記ステップS26に移行し、TP<TPSであるときには商品選択迷い状態ではないものと判断してステップS31に移行する。
【0032】
このステップS31では、前記ステップS23で算出した位置情報に基づいて同一商品購入領域内での往復移動回数が、顧客が商品選択に迷いを生じている商品選択迷い状態を判断する基準値以上であるか否かを判定し、往復移動回数が基準値以上であるときには商品選択迷い状態であるものと判断して前記ステップS26に移行し、往復移動回数が基準値未満であるときには商品選択迷い状態ではないものと判断してステップS32に移行する。ここで、往復移動回数は、例えば領域に進入した方向に対して、累積角度が180度を何回超えたか等を計数することにより行う。
【0033】
前記ステップS32では、POSシステム32の移動経路データ通信部33から移動経路情報取得要求を受信したか否かを判定し、移動経路情報取得要求を受信していないときには、前記ステップS16に戻り、移動経路情報取得要求を受信したときには、ステップS33に移行して、車輪速用パルスを計数するカウンタのカウントNに車輪速用パルスが得られてから次の車輪速用パルスが得られるまでの間のショッピングカート3の走行距離ΔLを乗算して総移動距離Lを算出してからステップS34に移行する。
【0034】
このステップS34では、現在時刻から前記ステップS13で記憶した移動開始時刻を減算して店舗内滞在時間を算出し、次いでステップS35に移行して、メモリ11に記憶されている通過位置情報、停止時間Tst、総移動距離L、店舗内滞在時間で構成される移動経路情報と、会員であるか非会員であるかを表すと共に会員である場合には会員番号等を含む会員情報とを通信制御部12に供給して無線通信アンテナ13から送信する。
【0035】
次いでステップS36に移行して、メモリ11に格納されている初期位置情報、角速度ω、通過位置情報、現在時刻、ジャイロリセット時刻、総移動距離L及び店舗内滞在時間、また、会員情報を消去してから図8の移動経路情報収集処理を終了する。
一方、前記ステップS16の判定の結果、位置情報送信部22が存在しない場合には、ステップS37に移行して、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているか否かを判定し、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているときには位置情報送信部22が存在しない状態を継続しているものと判断してそのまま前記ステップS32に移行し、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているときには、位置情報送信部22の通信範囲から離脱したものと判断し、ステップS38に移行して位置取得フラグFPを“0”にリセットすると共に、リセット時刻TR(n)を前回リセット時刻TR(n-1)として設定してから前記ステップS32に移行する。
【0036】
また、ステップS15で起動される移動経路情報形成処理は、図9に示すように、前記ステップS15で起動されると、まず、ステップS41で、車輪速用パルスが入力されたか否かを判定し、車輪速用パルスが入力されていないときにはこれが入力されるまで待機し、車輪速用パルスが入力されたときにはステップS42に移行して、現在時刻Tnを読込んでからステップS43に移行して、車輪速用パルスを計数するソフトウェアカウンタのカウント値NをインクリメントしてからステップS44に移行する。
【0037】
このステップS44では、車輪速用パルス及び方向検出用パルスの組合せと前回の組合せとに基づいてショッピングカート3が前進しているか後退しているかを判定し、前進しているときにはステップS45に移行して、走行情報Dを、前進を表す“1”に設定してからステップS47に移行し、後退しているときにはステップS46に移行して走行情報Dを、後退を表す“0”に設定してからステップS47に移行する。
【0038】
ステップS47では、圧電式ジャイロ8で検出した角速度ωを読込み、次いでステップS48に移行して、現在時刻T(n)から前回の現在時刻T(n-1)を減算することにより、パルス間時間ΔT(=T(n)−T(n-1))を算出し、次いでステップS49に移行して、パルス間時間ΔTが予め設定したショッピングカート3が停止していると判断できる最少停止時間Tmin以上であるか否かを判定し、ΔT≧Tminであるときには停止状態であると判断してステップS50に移行して、パルス間時間ΔTを停止時間Tstとして設定してからステップS52に移行し、ΔT<Tminであるときには停止状態ではないと判断してステップS51に移行して、停止時間Tstを“0”に設定してからステップS52に移行する。
【0039】
ステップS52では、角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstをメモリ11に形成した移動経路情報記憶領域に記憶し、次いでステップS53に移行して、図10に示す通過位置情報を算出する通過位置情報算出処理を実行してからステップS54に移行して、算出した通過位置情報と売り場レイアウトとのマッチング処理を行って売り場の位置座標を表す売り場位置情報を算出し、これをメモリ11の売り場位置情報記憶領域に記憶する。
【0040】
次いで、ステップS55に移行し、メモリ11に記憶している、会員用の特典情報或いは、非会員用の特典情報に基づいて、売り場位置情報で特定されるショッピングカート3の現在位置近傍の商品に対する特典や、会員向け或いは非会員向けの特典を表示装置16に表示する。そして、前記ステップS41に戻る。
図8のステップS23及び図9のステップS53で実行する通過位置情報算出処理は、図10に示すように、まず、ステップS61で、角速度ωを積分してショッピングカート3の回転角度θnを算出する。ここで、ステップS23では、角速度ωとして補正後角速度ω′を積分する。
【0041】
次いで、ステップS62に移行して、初期位置情報取得時の方位情報θ0を含む累積回転角度θaに順次回転角度θnを加算することにより、ショッピングカート3の累積回転角度θaを算出し、次いでステップS63に移行して、ショッピングカート3が前進状態であるか後退状態であるかを走行情報Dが“1”であるか否かによって判断し、前進状態であるときにはステップS64に移行して、車輪速用パルスが得られてから次の車輪速用パルスが得られるまでの間のショッピングカート3の走行距離ΔLを正値+ΔLとして設定してからステップS66に移行し、後退状態であるときにはステップS65に移行して、走行距離ΔLを負値−ΔLとして設定してからステップS66に移行する。
【0042】
ステップS66では、ステップS64又はS65で設定される走行距離ΔLと累積回転角度θaとに基づいて下記(1)式及び(2)式の演算を行うことにより、車輪速用パルスが入力された時点の位置座標X′,Y′を算出する。
X′=X+ΔL・cosθa …………(1)
Y′=Y+ΔL・sinθa …………(2)
次いで、ステップS67に移行して、算出した位置座標X′,Y′を通過位置情報としてメモリ11の通過位置情報記憶領域に累積回転角度θaと共に記憶する。
【0043】
また、POSシステム32の演算処理装置37で実行するデータ取得処理は、図11に示すように、まず、ステップS71で、ショッピングカート3のコントロールユニット6の通信制御部12との間で通信が可能となったか否かを判定し、通信制御部12との間の通信ができない状態では通信が可能となるまで待機し、通信が可能となったときにはステップS72に移行する。
【0044】
このステップS72では、通信制御部12に対して移動経路情報及び会員情報の送信を要求する移動経路情報及び会員情報取得要求を送信し、次いでステップS73に移行して、通信制御部12から移動経路情報及び会員情報を受信したか否かを判定し、移動経路情報及び会員情報を受信していないときにはこれを受信するまで待機し、移動経路情報及び会員情報を受信したときにはステップS74に移行して、移動経路情報及び会員情報をメモリ38に一時記憶してからステップS75に移行する。
【0045】
このステップS75では、通知された会員情報に基づいて会員であるか否かを判断し、会員である場合には、ステップS76に移行し、予め設定され所定の記憶領域に格納されているカート利用会員用の価格情報に基づいて、商品情報入力部35から入力される購入商品情報に対して精算処理を行う。一方、非会員である場合には、ステップS77に移行し、予め設定され所定の記憶領域に格納されているカート利用非会員用の価格情報に基づいて精算処理を行う。
【0046】
そして、ステップS78に移行して、移動経路情報と精算情報と会員情報とを利用者情報として、外部通信制御部41に出力して、パーソナルコンピュータ40に送信してから前記ステップS71に戻る。
また、特典情報を前記コントロールユニット6に送信するための、パーソナルコンピュータ40で実行する特典情報送信処理は、図12に示すように、まず、ステップS81で、初期情報送信装置17の通信制御部17dから、カード情報を入力したかどうかを判断し、会員情報を入力したときには、ステップS82に移行し、認証処理を行って、登録会員のカード情報が格納されているデータベース43を参照し、カード情報で特定される利用者が会員であるかどうかを判断する。そして、会員である場合には、ステップS83からステップS84に移行して、所定の記憶領域に格納されている会員用の特典を表す会員用の特典情報を初期情報送信装置17に送信する。一方、ステップS82で会員でないと判断されたときには、ステップS83から後述のステップS87に移行する。
【0047】
そして、前記ステップS81で、カード情報が入力されないときには、ステップS86に移行し、非会員であることが通知されたかどうかを判断し、非会員通知がない場合には、ステップS81に戻り、非会員通知が行われたときにはステップS86からステップS87に移行する。
このステップS87では、所定の記憶領域に格納されている非会員用の特典を表す非会員用の特典情報を、初期情報送信装置17に送信する。
【0048】
ここで、前記会員用の特典情報及び非会員用の特典情報は、ショッピングカート3の利用者が、ショッピングカート3を利用しない人よりも高い特典を得ることができるように設定され、つまり、ショッピングカート3を利用しようという顧客の意識を増加させるように設定されている。また、会員用の特典情報は、会員が、非会員よりも高い特典を得ることができるように設定され、つまり、非会員に対して、会員になろうという意識を増加させるように設定され、ショッピングカート3を利用した場合、及びショッピングカートを利用しない場合について、それぞれ予め登録された登録会員か、或いは非会員かに応じて設定される。
【0049】
表1は、登録会員か非会員か、また、ショッピングカート3の利用者か非利用者かによって受けられる特典の一例を示したものである。表1において“○”はそのサービスを受けることが可能であることを表し、“×”はそのサービスを受けることが不可であることを表す。
【0050】
【表1】
【0051】
利用者に与えられる特典としては、例えば、会員向け一般サービス、カート利用者割引、非広告掲載情報の取得、カート利用者割引(会員割引率)、会員カート利用者限定割引、会員限定の非広告掲載情報取得、等がある。
【0052】
次に、パーソナルコンピュータ40で実行するデータ解析処理は、図13に示すように、先ず、ステップS91で、POSシステム32の外部通信制御部41から移動経路情報、精算情報、会員情報からなる利用者情報を受信したか否かを判定し、これらを受信していないときには利用者情報を受信するまで待機し、利用者情報を受信したときにはステップS92に移行する。そして、会員情報を参照して会員かどうかを判断し、このショッピングカート3の利用者が会員であるときには、ステップS93に移行し、データベース43の、通知された会員情報の会員番号等で特定される会員固有の、移動経路情報及び精算情報の格納領域に、通知された移動経路情報及び精算情報を格納する。そして、ステップS95に移行する。
【0053】
一方、ステップS92で、会員情報として非会員であることが通知されているときには、ステップS94に移行し、非会員用の、移動経路情報及び精算情報の格納領域に、通知された移動経路情報及び精算情報を格納する。そして、ステップS95に移行する。
このステップS95では、移動経路情報、時間情報、精算情報や、会員であるか非会員であるか、また、会員情報等に基づいてマーケティングデータを生成するマーケティングデータ生成処理を行ってから処理を終了する。
【0054】
このマーケティングデータ生成処理としては、停止時間Tstが“0”以外に設定されている位置座標X′,Y′と累積回転角度θaを抽出し、位置座標X′,Y′を売り場レイアウトとのマッチングをとることにより、どのエリアでショッピングカート3がどの方向を向いて停止していたかを検出することができる。
また、店舗内滞在時間から顧客毎の店舗内滞在時間を収集することができると共に、位置情報送信部22との通信時間を表す領域滞在時間TPに基づいて該当する商品購入領域のエリア別滞在時間を集計することができる。
【0055】
さらに、停止時間Tstと購入商品とを組み合わせることにより、商品を購入するために要した選択時間を算出することができる。
さらに、特典情報を提供したことによる顧客の購買意欲の変化状況等を予測することができる。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
【0056】
今、カート置場4A及び4Bに複数のショッピングカート3が縦列状態で配置されているものとする。このとき、カート置場4A及び4Bに配置された各ショッピングカート3に設けられたコントロールユニット6のメモリ11に記憶されている角速度ω、各種時刻情報、通過位置情報、総移動距離L、領域滞在時間、店舗滞在時間、特典情報等の各種記憶情報が全て消去されているものとする。
【0057】
この状態で、顧客が出入口2から店舗内に入場して、例えばカート置場4Aのカードリーダ17aで会員カードの入力操作を行った後、ショッピングカート3を引出し、カートスイッチ17bが作動し、例えば、カート置場4Aに設けられた充電装置15aによるバッテリ15への充電状態が解消されると、初期情報送信装置17では、図7に示す初期情報送信処理において、図7のステップS1からステップS2に移行し、カードリーダ17aで読み取ったカード情報を、通信処理部17dを介してパーソナルコンピュータ40に出力し認証依頼を行う。
【0058】
これを受けて、パーソナルコンピュータ40では、図12に示す特典情報送信処理を実行し、カード情報を入力したことから、ステップS81からステップS82に移行してカード情報に対して認証処理を行い、この会員が登録会員であるときには、ステップS83からステップS84に移行して、予め設定された会員用の特典情報を読み出し、この特典情報を初期情報送信装置17に送信する。
【0059】
このため、初期情報送信装置17では、受信した会員用の特典情報と、ショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及び絶対方位情報θ0で構成される初期位置情報とを初期情報として対応するショッピングカート3に送信する。
一方、ショッピングカート3の利用者が会員でない場合には、顧客は会員カードの入力操作を行うことなく、ショッピングカート3を引き出すから、初期情報送信装置17では、図7のステップS1からステップS6を経てステップS7に移行し、会員カードの入力操作が行われなかったことから、ショッピングカート3の利用客は、非会員であると判断し、会員情報として非会員であることをパーソナルコンピュータ40に通知する。このため、パーソナルコンピュータ40では、図12のステップS81からステップS86を経てステップS87に移行し、所定の記憶領域に格納されている非会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力する。
【0060】
このため、初期情報送信装置17では、ステップS8からステップS10に移行し、通知された非会員用の特典情報と初期位置情報とを初期情報として該当するショッピングカート3のコントールユニット6に送信する。コントロールユニット6では、初期情報を受信し、これをメモリ11に記憶し、以後、非会員用の特典情報に基づいて特典情報の表示や特典の反映等を行う。なお、ここでは、以後、会員用の特典情報に基づいて処理を行う場合について説明する。
【0061】
一方、顧客が引き出したショッピングカート3のコントロールユニット6では、充電装置15aによるバッテリ15への充電状態が解消されたことから、コントロールユニット6で、図8に示す移動経路情報収集処理が実行される。
このため、先ず、メモリ11に記憶されている角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置取得時刻、リセット時刻、領域滞在時間、総移動距離L、店舗滞在時間でなる移動経路情報及び会員情報や特典情報が消去されているか否かを判定し(ステップS11)、移動経路情報や会員情報、特典情報が消去されていないときにはこれら移動経路情報や会員情報、特典情報を消去する(ステップS12)。
【0062】
このため、前回ショッピングカート3をカート置場4Aから引き出して移動を開始したが、途中で買い物を止めたときには、それまでの移動経路情報や会員情報、特典情報がメモリ11に記憶されたままとなるが、移動経路情報取得処理が開始されたときに、これら情報が消去されるので、前回の移動経路情報が累積されることを確実に防止することができる。
【0063】
そして、ショッピングカート3の移動開始時刻がメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶されると共に、車輪速用パルスを計数するカウンタをリセットしてカウント値Nを“0”に設定し、さらに圧電式ジャイロ8をリセットする(ステップS13)。
次いで、カート置場4Aの出口側に配設された初期情報送信装置17からショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及び絶対方位情報θ0で構成される初期位置情報と、特典情報及び会員情報とを取得し、これをメモリ11の移動経路情報記憶領域及び特典情報記憶領域にそれぞれ記憶する(ステップS14)。
【0064】
次いで、図9に示す移動経路情報形成処理を起動する(ステップS15)。
この状態で、ショッピングカート3をサイドバー部5a,5bに沿って後退させてカート置場4Aから完全に引き出して所望の売り場に向かうと、先ず、ショッピングカート3を後退させることにより、車輪3aが逆転してロータリエンコーダ7から車輪速用パルス及び方向検出用パルスが出力されて、これらがコントロールユニット6に入力される。
【0065】
このため、図9の移動経路情報形成処理で、車輪速用パルスが入力されたときに、現在時刻Tnを読込み(ステップS42)、次いでソフトウェアカウンタのカウント値Nをインクリメントし(ステップS43)、次いで車輪速用パルスと方向検出用パルスとの組合せと前回の組合せとに基づいて後退であることが検出され、これによって走行情報Dが後退を表す“0”に設定され(ステップS46)、次いで圧電式ジャイロ8から角速度ωを読込み(ステップS47)、次いで現在時刻T(n)から前回の時刻T(n-1)を減算してパルス間時間ΔT(=T(n)−T(n-1))を算出する(ステップS48)。
【0066】
この場合、ショッピングカート3が後退を継続しているので、パルス間時間ΔTが最少停止時間Tmin未満となることにより、停止時間Tstが“0”に設定される(ステップS51)。そして、角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstをメモリ11に形成された移動経路情報記憶領域に記憶する。
この移動経路情報形成処理によって、ショッピングカート3が移動してエンコーダ7から車輪速用パルスが入力される毎に角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstが順次移動経路情報記憶領域に記憶されると共に、図10の通過位置情報算出処理を実行して累積回転角度θaと位置座標X′及びY′とが算出される。
【0067】
すなわち、角速度ωを積分して回転角度θnを算出し(ステップS61)、算出した回転角度θnを累積回転角度θaに加算することにより、新たな累積回転角度θaを算出し(ステップS62)、さらに走行情報Dが前進を表す“1”(又は後退を表す“0”)であるときには走行距離ΔLが+ΔL(又は−ΔL)に設定され(ステップS64(又はステップS65))、前回の位置座標X,Yと走行距離ΔL及び累積回転角度θaとに基づいて前述した(1)式及び(2)式の演算を行うことにより、現在の位置座標X′及びY′を算出し(ステップS66)、位置座標X′及びY′を通過位置情報としてメモリ11に累積回転角度θaと共に記憶する(ステップS67)。
【0068】
そして、算出した通過位置情報と実際の売り場レイアウトの位置座標とのマッチングを行って、売り場位置座標を算出する(ステップS54)。
このように、移動経路情報形成処理及び通過位置情報算出処理によって、車輪速用パルスが入力される毎に、通過位置情報、売り場座標情報、累積回転角θa、停止時間Tstが算出され、これらがメモリ11の移動経路情報記憶領域に時間順次に記憶される。
【0069】
そして、この売り場位置座標と、メモリ11に格納されている会員用の特典情報とから、このショッピングカート3の現在位置、すなわち、顧客の現在位置近傍の商品に関する特典情報が特定され、これが、ショッピングカート3の表示装置16に表示される(ステップS55)。
このため、ショッピングカート3の利用者は、表示装置16を参照することによって、どの商品が買い得か、或いは、非会員に比較して、又は、ショッピングカート3を利用しない場合に比較してどの程度の特典を得ることができるか等を認識することができ、ショッピングカート3を利用したことの、メリットを実感することができる。また、特典情報を情報提供するときには、現在位置近傍の商品に関する特典情報を表示し、利用者が実際の該当する商品を実際に見たり、手に取ったりすることの可能な商品に関する情報等、利用者の現在位置に応じた特典情報を提供しているから、的確なタイミング且つ的確な特典情報を提供することができ、利用者の購買意欲を効果的に増加させることができる。
【0070】
その後、ショッピングカート3が商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22の通信可能領域に達すると、図8の移動経路情報収集処理で、ステップS16からステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているので、ステップS18に移行し、位置情報送信部22から現在位置座標XP,YP及び方位情報θPを取得する。このとき、位置情報送信部22は、その通信範囲が位置情報送信部22の近傍の通路について通信範囲に到達したときの現在位置座標XP1,YP1及びXP2,YP2と通路での方位情報θP1及びθP2とで構成される現在位置情報を通信可能となったショッピングカート3のコントロールユニット6に送信する。
【0071】
このため、コントロールユニット6では、図8の移動経路情報収集処理で、位置情報送信部22から現在位置情報を取得するまで待機し、現在位置情報を取得すると、現在位置情報とその取得時刻とを現在位置情報記憶領域に記憶する(ステップS19)。
次いで、圧電式ジャイロ8をリセットし(ステップS20)、ジャイロリセット時刻をリセット時刻記憶領域に記憶する(ステップS21)。
【0072】
そして、ジャイロリセット時刻TR(n)と前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)に基づいてジャイロリセット間隔を算出し、このジャイロリセット間隔とジャイロのスペックとからドリフト成分を推測し、このドリフト分に基づいて前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)から車輪速用パルスが入力された毎にメモリ11に記憶された各角速度ωを補正する(ステップS22)。
【0073】
そして、補正が終了した各角速度ωの夫々について、図10の通過位置情報算出処理を実行することにより、各角速度ωを積分してショッピングカート3の回転角度θnを算出し(ステップS61)、初期情報の方位情報θ0に順次回転角度θnを加算することにより、ショッピングカート3の累積回転角度θaを個別に算出し(ステップS62)、走行情報Dに基づいて前進か後退を判断することにより、走行距離ΔLの符号を設定してから前記(1)式及び(2)式の演算を行って車輪速用パルスが入力された時点の位置座標X′及びY′を算出し(ステップS66)、算出した位置座標X′,Y′、累積回転角度θa及び停止時間Tstを移動経路補正情報としてメモリ11に記憶する。
【0074】
このように、位置情報送信部22から現在位置情報を受信することにより、圧電式ジャイロ8のドリフト成分を推定して角速度ωを補正するので、現在位置情報を受信することにより、正確な通過位置情報を算出することができる。
そして、該当する購買領域進入回数NEをインクリメントし、現在位置取得フラグFPを“1”にセットする(ステップS24a)。このとき、最初に購買領域に進入したので、購買領域進入回数NEが“1”となり、基準値NESより小さく、領域滞在時間TPも基準値TPS未満となり、購買領域内でのショッピングカート3の往復移動もないので、商品選択迷い状態と判断されることなく、ステップS32に移行する。このとき、精算所にショッピングカート3が移動されておらず、移動経路情報取得要求を受信していないので、図8の処理において、ステップS16に戻る。
【0075】
この間に、ショッピングカート3を位置情報送信部22の通信範囲内で移動させたときには、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているので、再度現在位置座標を取得することはなく、この間図9の移動経路情報形成処理及び図10の通過位置情報算出処理が実行されることにより、ショッピングカート3の移動経路情報が順次移動経路記憶領域に記憶される。
【0076】
このようにして、ショッピングカート3の移動に伴って、通過位置情報、売り場位置情報、停止時間Tst等が収集されて、これらが移動経路情報記憶領域に順次記憶される。
ここで、図10の通過位置情報算出処理の具体例を説明すると、先ず、初期位置送信装置17の絶対位置座標X0,Y0を初期位置として記憶すると共に、方位情報θ0を累積回転角度θaとして累積回転角度記憶領域に記憶する。これによって、ショッピングカート3の初期位置が移動経路記憶領域に記憶される。このとき、カート置場4Aのサイドバー部5a,5bの方向がXY直交座標系のY軸方向であるものとし、方位情報θ0が90°であるものとする。
【0077】
そして、ショッピングカート3をカート置場4Aから引き出すために後退させたときに、車輪速用パルスが入力されたときの圧電ジャイロ8で検出した角速度ωは、ショッピングカート3がサイドバー部5a,5bで案内されて真っ直ぐ後退するので、検出した角速度ωは“0”となっており、これを積分した回転角度θnも0°となる。
このため、累積回転角度θaが初期状態の方位情報θ0=90°に設定されているので、累積角度θaに回転角度θn=0°を加算した新たな累積回転角度θaは90°を維持する。
【0078】
一方、ショッピングカート3が後退しているので、走行距離ΔLとして負値−ΔLが設定され、前記(1)式及び(2)式に従って位置座標X1′,Y1′を算出すると、cosθa=0,sinθa=1であることから、X1′=X0,Y1′=Y0−ΔLとなり、算出された位置座標X1′,Y1′が移動経路記憶領域に記憶される。このため、現在推定位置座標X1′及びY1′は図14に示すように初期位置座標X0及びY0からY軸方向に負方向に走行距離ΔLだけ移動する。
【0079】
その後、ショッピングカート3の後退が継続されるので、現在推定位置座標Xj′及びYj′(j=2,3……)が順次走行距離ΔLだけY軸方向に負方向に移動する。
その後、ショッピングカート3を時計方向に回転させると、これに応じて圧電式ジャイロ8からショッピングカート3の角速度ωが検出され、これを積分することにより、負値の回転角度θnが算出され、累積回転角度θaが90°より減少する。
【0080】
このため、前記(1)式及び(2)式に従って算出される位置座標Xj′,Yj′が図14に示すように、ショッピングカート3の回転に応じて移動し、その後、ショッピングカート3をX軸方向として前進させると、累積回転角度θaが0°となると共に、走行距離ΔLが正値となって、前記(1)式及び(2)式に従って算出される位置座標Xj′,Yj′がX軸方向に移動する。
【0081】
その後、カート置場4Aの近傍の商品陳列棚21に向かうため、ショッピングカート3を反時計方向に回転させながら前進すると、これに応じてショッピングカート3の移動経路に応じた位置座標Xj′,Yj′が算出され、これが移動経路解析情報記憶領域に順次記憶される。
このようにして、ショッピングカート3の移動に伴って累積回転角度θaが更新されると共に、現在推定位置座標Xj′,Yj′が順次算出されて移動経路記憶領域に順次記憶されるが、圧電式ジャイロ8では検出誤差が累積されるため、これを補正するために、ショッピングカート3が商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22の近傍位置に達して、この位置情報送信部22との無線通信が可能となると、図8の移動経路情報収集処理において、ステップS16からステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているので、ステップS18に移行し、位置情報送信部22から現在位置座標XP,YP及び方位情報θPを取得する。このとき、位置情報送信部22では、その通信範囲が近傍の通路について通信範囲に到達したときの現在位置座標XP1,YP1及びXP2,YP2と各通路での方位情報θP1及びθP2とで構成される現在位置情報を通信可能となったショッピングカート3のコントロールユニット6に送信する。このため、コントロールユニット6では、それまでの移動経路から位置情報送信部22にどの方向から接近したかを判断することができ、その接近方向に応じた現在位置座標XPi,YPi及び方位情報θPi(i=1,2)を決定し、現在位置座標XPi,YPiを移動経路記憶領域に記憶すると共に、方位情報θPiを累積回転角度θaとして累積回転角度記憶領域に記憶する。
【0082】
この間に、顧客がショッピングカート3を、商品選択を迷うことなく移動させながら買い物を行っている場合には、1つの購買領域での領域滞在時間TPが基準値TPS未満であると共に、購買領域に立ち寄る購買領域進入回数NEも多くて2回程度であって基準値NES未満であり、購買領域でのショッピングカート3の往復移動回数も少ないので、商品選択補助情報が表示装置16に表示されることはなく、表示装置16には購買領域に対応する一般的な情報が表示される。
【0083】
しかしながら、或る購買領域で商品の選択に迷いを生じると、その場で、種々の商品を視認するか又は手にとって吟味することにより、領域滞在時間TPが長くなるか、購買領域内でのショッピングカート3の往復移動回数が多くなるか、さらには他の購買領域に移動した後も何度か購買領域に戻る動作を行う商品選択迷い状態となる。
このため、図15に示すように、購買領域3への立ち寄り回数が多くなると、購買領域進入回数NEが増加し、これが基準値NES以上となると、図8の移動経路情報収集処理において、ステップS25からステップS26に移行して、位置情報送信部22に対応する売り場情報に基づいてお買い得商品情報、お勧め商品情報、スポンサーメーカ商品情報(利益率が高い商品など)、また、会員用の特典情報で指定された、所定の特典を受けることの可能な特典対象商品情報等の商品選択補助情報を選択し、選択した商品選択補助情報を表示装置16に出力して、これらを表示する。
【0084】
このため、ショッピングカート3の利用者は、表示装置16に表示された商品選択補助情報に基づいて商品の選択が可能となり、商品購入判断を素早く行うことが可能となる。このとき、商品選択補助情報として顧客が商品選択を迷っている商品の価格、機能等の比較情報を表示装置16に表示することにより、売り場の係員を呼ぶことなく商品選択をより迅速に行うことができる。
【0085】
また、商品選択迷い状態となって、図16に示すように、同一購買領域3の領域滞在時間TPが長くなって基準値TPS以上となったときには、図8の処理において、ステップS30からステップS26に移行して、上記と同様に商品選択補助情報を表示装置16に表示することができ、さらに、商品選択迷い状態となって、図17に示すように、同一購買領域3内でショッピングカート3の往復移動回数が所定値以上となった場合には、図8の処理において、ステップS31からステップS26に移行して、上記と同様に商品選択補助情報を表示装置16に表示することができる。
【0086】
このようにして、各購買領域で商品選択迷い状態となる毎に、表示装置16に商品選択補助情報が表示されるので、顧客の買い物に要する時間を短縮することができると共に、店舗にとっても混雑を緩和することができる。
その後、買い物を終了して、ショッピングカート3を精算所に移動させると、POSシステム32に設けた移動経路データ通信部33との通信が可能となって、この移動経路データ通信部33から移動経路情報取得要求を受信したときには図8の移動経路情報収集処理においてステップS32からステップS33に移行して、ソフトウェアカウンタのカウント値Nに走行距離ΔLを乗算して総移動距離Lを算出し、次いで現在時刻から移動開始時刻を減算して店舗滞在時間を算出し、移動経路記憶領域に記憶されている通過位置情報、売り場位置情報、停止時間Tst、総移動距離L及び店舗滞在時間でなる移動経路情報と会員情報と、を移動経路データ通信部33に送信し、この送信が完了すると、移動経路記憶領域及び時刻記憶領域の記憶データを消去すると共に、ソフトウェアカウンタのカウント値Nを“0”にクリアし、さらに、会員情報及び特典情報を削除してから、移動経路情報取得処理を終了する。
【0087】
POSシステム32では、移動経路データ通信部33でショッピングカート3からの移動経路情報及び会員情報を取得すると、その移動経路情報をメモリに一時記憶する。そして、会員情報として会員であることが通知されているから図11のステップS75からステップS76に移行して、所定の記憶領域に格納されている、ショッピングカート3を利用した会員用の価格情報を利用し、商品情報入力部35から入力された購入商品情報に基づいて所定の精算処理を行って精算情報を算出する。
【0088】
そして、この精算情報と移動経路情報と会員情報とを利用者情報として、パーソナルコンピュータ40に送信する。
パーソナルコンピュータ40では、POSシステム32から精算情報、移動経路情報及び会員情報からなる利用者情報を受信すると、図13に示すデータ解析処理を実行する。このデータ解析処理では、利用者情報を受信したか否かを判定し(ステップS91)、利用者情報を受信したときにはステップS92に移行し、この場合、会員情報として会員であることが通知されているから、ステップS93に移行して、データベース43のこの会員情報の会員番号で特定される、この会員専用の移動経路情報及び精算情報の記憶領域に、受信した移動経路情報及び精算情報を格納する。
【0089】
そして、データベース43に格納された移動経路情報と精算情報とに基づいてマーケティングデータ生成処理を行う(ステップS95)。
このマーケティングデータ生成処理としては、停止時間Tstが“0”以外に設定されている位置座標X′,Y′と累積回転角度θaを抽出し、位置座標X′,Y′を売り場レイアウトとのマッチングをとることにより、どのエリアでショッピングカート3がどの方向を向いて停止していたかを検出することができ、これと精算情報とから停止位置で商品を購入したか否かを判断することができる。
【0090】
また、移動開始時刻から精算終了時の時刻とから算出される店舗内滞在時間に基づいて顧客毎の店舗内滞在時間を収集することができると共に、領域滞在時間も収集することができる。
さらに、停止時間Tstと精算情報に含まれる購入商品とを組み合わせることにより、商品を購入するために要した時間を算出することができる。
【0091】
さらにまた、データベースに格納されたショッピングカート3の利用した顧客毎の移動経路情報に基づいて、顧客の動線を判断して、買い物に効率の良い売り場配置の設定や顧客混雑の分散などの顧客動向を考慮したレイアウト設定を行うことができる。
このように、上記実施形態によると、ショッピングカート3にインクリメント型のロータリエンコーダ7と圧電式ジャイロ8とを設けることにより、ショッピングカート3の移動経路を、移動経路通りに正確に検出することができるという効果が得られる。このとき、顧客に移動経路を検出するための機器を所持させる必要がなく、顧客に煩わしさを与えることなく移動経路の検出を行うことができる。
【0092】
しかも、圧電式ジャイロ8で発生する累積誤差については、商品陳列棚21に配設された位置情報送信部22との間で通信を行うことにより、現在位置座標及び方位を補正することができ、この時点で圧電式ジャイロ8をリセットするので、累積誤差の影響を抑制することができる。
そして、顧客の移動経路を連続的に検出することができるので、同一購入領域内での往復移動回数を検出することができ、顧客が同一購入領域内で商品選択迷い状態となっていることを正確に検出することができ、この商品選択迷い状態を検出したときに、商品選択補助情報を表示装置16に表示して、顧客に商品の選択の助けになる商品選択補助情報を的確に提供することができる。
【0093】
また、買い物品の料金精算を行う精算所にショッピングカート3のコントロールユニット6で収集した移動経路情報を取得する移動経路情報取得手段を設けたので、顧客が買い物を始めてから料金精算するまでの移動経路情報を確実に取得することができ、精算所に設けたPOSシステムの精算情報と移動経路情報とを併せてデータベースに格納することにより、顧客の移動経路と購入品との関係を正確に把握することができ、顧客動向を正確に解析することができ、この解析結果を利用して顧客に効率良く買い物できる売り場レイアウトを設定することができる。
【0094】
さらに、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6では移動経路情報の収集のみを行い、移動経路の解析は他の処理装置(パーソナルコンピュータ40)を使用して行うので、演算処理装置10の演算負荷を軽減することができると共に、安価なCPUを適用することができる。
また、上述のように、POSシステム32では、精算を行う際に、ショッピングカート3から受信した会員情報、つまり、このショッピングカート3を利用した顧客に対して情報提供した、会員用の特典情報を反映した会員用価格情報に基づいて精算を行うから、商品情報入力部35により購入商品の商品情報を入力する入力操作員、いわゆるレジ打ち係が、会員用の特典情報を反映させるべきか、或いは非会員用の特典情報を反映させるべきか等を考慮する必要はない。したがって、レジ打ち係が、特典情報を考慮して例えば割引価格の入力操作等を行う必要はないから、レジ打ち係の負荷が増加することはなく、また、レジ打ち係の入力ミス等の発生も防止することができる。また、顧客は、特典を受けるための操作を何ら行う必要はなく、また、レジ打ち係も特典を反映させるための操作を行う必要はないから、顧客は、ショッピングカート3を利用するだけで、提供されるべき特典を漏れなく受けることができる。
【0095】
また、ショッピングカート3の利用者に対し、特典情報を提供し、これを反映させる際に、顧客は、特典を受けるにあたって顧客は何ら操作を伴うことなく特典を得ることができるから、例えば、クーポン券を用いる場合等のように、クーポン券の出し忘れや、クーポン券の提示が面倒なため、クーポン券を利用しない等といったことが生じることを回避することができ、単に商品購入を行うだけで、提供されている特典を漏れなく受けることができる。
【0096】
そして、このように、顧客は、何ら操作を行うことなく、単に商品購入を行うだけで、特典を得ることができ、この特典は、ショッピングカート3を利用しない場合に比較してより高特典となるように設定されているから、顧客のショッピングカート3を利用しようという意欲を向上させることができ、すなわちショッピングカート3の利用率を向上させることができる。なお、さらに、ショッピングカート3の利用を促すため、ショッピングカート3のカート置場4A、4Bや、図示しない買い物かご置場に、ショッピングカート3の利用者には利用者限定の特典がある旨の表示を行ったり、ショッピングカート3を利用すると共に、会員となればさらにお得な特典を得ることができる旨の表示等を行ったりするようにしてもよい。
【0097】
そして、このようにショッピングカート3の利用率を向上させることができるから、より多くの顧客についての移動経路情報及び精算情報を獲得することができる。したがって、より多くの顧客の移動経路情報や精算情報を獲得しこれに基づいてマーケティングデータを生成しこれに基づいてマーケティングを行うことによって、より有効なマーケティングを行うことができる。
【0098】
また、上述のように、特典情報を提供する方法としてショッピングカート3に設けた表意装置で行うようにしている。したがって、クーポン券等印刷物によって特典情報を提供する場合には、不要なごみの排出につながるが、クーポン券を用いずに表示装置6への表示により情報提示を行うから、不要なごみが排出することを回避することができる。
なお、上記実施形態においては、ショッピングカート3の固定車輪3aにインクリメント型のロータリエンコーダ7を設けて、車輪3aの前進及び後退を把握するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3の前進及び後退を、前後方向加速度センサを設けることにより検出するようにしてもよい。この場合には、ロータリエンコーダ7に代えて車輪3aの回転に応じて車輪速パルスを出力する車輪速センサを設けることができ、さらには、車輪3aの角速度をジャイロで検出して、その角速度を積分することにより、車輪3aの走行方向を検出することもでき、要はショッピングカート3の移動方向と移動距離とを測定可能なセンサを設けるようにすればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、走行距離ΔL及び累積回転角度θaに基づいて位置座標X′,Y′を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3の走行速度Vを検出することができる場合には、位置座標X′,Y′は下記(3)式及び(4)式に従って算出することができ、この他任意の推定航法(デッドレコニング)を適用することができる。
【0100】
X′=X+V・Δt・cosθa …………(3)
Y′=Y+V・Δt・sinθa …………(4)
ここで、Δtはサンプリング周期である。
【0101】
さらに、上記実施形態では、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6でデータ解析処理を行って、位置座標X′,Y′及び累積回転角度θa、売り場位置情報を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3に配設したコントロールユニット6の演算処理装置10で位置情報送信部22から現在位置情報を取得する毎に、現在時刻及び前回のジャイロリセット時刻と記憶した各角速度ω及び走行情報Dとを位置情報送信部22を介してパーソナルコンピュータ40に送信して、パーソナルコンピュータ40で現在までの圧電式ジャイロ8のドリフト分を算出し、このドリフト分に基づいてそれまでに収集した角速度ωを補正し、補正後の角速度ωと累積回転角度θaとに基づいて前記(1)式及び(2)式の演算を行って位置情報を算出し、これを移動経路情報としてコントローラ6の演算処理装置10に送信するようにしてもよい。
【0102】
さらにまた、上記実施形態では、商品陳列棚21の上部に位置情報送信部22を配設した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、建物の壁面や天井或いは床面等の構造物に配設することができる。また、位置情報送信部22としてはブルーツースや無線LANのような近距離無線通信手段を、通信範囲を商品区分に合わせて制限して適用することができる。
【0103】
なおさらに、圧電式ジャイロ8の累積誤差を補正するには、位置情報送信部22を適用する場合に限らず、床面にランドマークを形成して、このランドマークを撮像装置で撮像することにより、現在位置情報を取得するようにしてもよく、この場合には、撮像装置で撮像した床面画像から光学式マウスと同様の処理を行うことにより、移動方向と移動速度を算出することができるので、上述した(3)及び(4)式によって位置座標X′,Y′を算出することができる。
【0104】
また、上記実施形態では、角速度を検出する手段として圧電式ジャイロを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の構成のジャイロを適用することができ、要はショッピングカート3の角速度(ヨーレート)を検出することができればよく、ジャイロ以外の角速度センサも適用することができる。
さらに、上記実施形態では、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6に商品選択補助情報を記憶しておく場合について説明したが、これに限定されるものではなく、位置情報送信部22から商品選択補助情報をコントロールユニット6に送信するようにしてもよく、さらには、カート置場4A及び4Bにプログラム更新装置を設け、例えば深夜等の営業時間外に図18に示すプログラム更新処理を実行するようにしてもよい。
【0105】
このプログラム更新処理は、先ず、ステップS101で、アップデートする更新プログラムが存在するか否かを判定し、更新プログラムが存在しない場合には、そのまま処理を終了し、更新プログラムが存在する場合には、ステップS102に移行して、通信可能なショッピングカート3が存在するか否かを判定し、通信可能なショッピングカート3が存在しない場合にはそのまま処理を終了し、通信可能なショッピングカート3が存在する場合には、ステップS103に移行する。
【0106】
このステップS103では、該当するショッピングカート3の例えばMACアドレス等のID情報を取得し、次いでステップS104に移行して、取得したID情報に基づいて管理テーブルを参照して、該当するショッピングカート3が今回の更新プログラムのアップデートを完了しているか否かを判定し、アップデートが完了していないときにはステップS105に移行して、該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に対して更新プログラムを送信してアップデートを行い、次いでステップS106に移行して、管理テーブル該当するID情報位置にアップデートの完了を記録してからステップS107に移行して、他の通信可能なID情報のショッピングカート3が存在するか否かを判定し、存在する場合には前記ステップS103に戻り、存在しない場合には処理を終了する。
【0107】
一方、前記ステップS104の判定結果が、更新プログラムのアップデートが完了しているときには直接ステップS107に移行する。このように、プログラム更新装置を設けることにより、商品選択補助情報の更新を、人手をかけることなく自動的に行うことができる利点がある。
また、上記実施の形態においては、利用者の移動経路情報を収集すると共に、特典情報を提供する場合について説明したが、特典情報の提供のみを行うようにしてもよく、この場合には、利用者は、ショピングカート3を利用して商品購入を行うだけで、特典情報で提示される特典を受けることができる。
【0108】
また、上記実施の形態においては、カードリーダ17aを用いて利用者が会員かどうかを認証する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、バーコードリーダを設け、会員コード読み取り式にしても良いし、指紋或いは声紋認証を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、表示装置16で情報表示を行うことにより、特典情報を提供する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、表示装置16と共にスピーカを設け、表示だけでなくスピーカによっても特典情報を提供するようにしてもよく、スピーカのみを設けるようにしてもよい。要は、ショッピングカート3の利用者に対して特典情報を提示することができればどのような方法であってもよい。
【0109】
また、上記実施の形態においては、ショッピングカート3の利用者に対し、会員か非会員に応じて、前記表1に示すように各種の特典を提供する場合について説明したが、これに限るものではなく、単にショッピングカート3の利用者か、利用者でないかに応じて特典内容を変更し、ショッピングカート3の利用者については会員及び非会員に関わらず、会員用の特典を提供するようにしてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、会員かどうかを認証する際に、その会員情報から会員個人を特定することができ、また、会員毎にその履歴をデータベース43に保有しているから、会員であるときには、会員毎に、その過去の購入履歴に応じて異なる特典を提供してもよい。例えば、ある商品を所定回数以上購入しているならば、この商品に対してさらに高特典となるように設定してもよく、また、例えば誕生日月や、電話番号の数字が特定の数字の人、或いは、会員登録期間が5年、10年等規定年数に達した人等に対して特別の特典を付与するようにしてもよい。
【0111】
この場合には、例えば、会員であることが認証されたときこの会員の購買履歴情報をデータベース43から獲得する購買履歴情報獲得手段と、この獲得した購買履歴情報に基づいてこの会員固有の特典情報を生成する個別特典情報生成手段とをパーソナルコンピュータ40に設け、これを、初期情報送信装置17を介してコントロールユニット6に送信すると共に、その特典情報を反映した会員固有の価格情報を生成し、これをPOSシステム32のメモリ38に格納する。そして、移動経路データ通信部33において、移動経路情報と共に、会員情報を含む会員情報を受信したとき、この会員情報に含まれる会員番号に基づいてこの会員に対応する価格情報を抽出し、この会員固有の価格情報に基づいて精算を行うようにすればよい。要は、会員が精算を行う場合には、この会員に対して設定した会員固有の特典情報に対応する価格情報に基づいて精算を行うようにすればよい。
【0112】
また、上記実施の形態においては、利用者が迷っているときにのみ、お買い得商品情報等を情報提供するようにしているが、ショピングカート3の利用者の現在位置及びその移動経路に沿って、利用者近傍の商品に対する特典情報と共にお買い得情報等、全ての顧客に対して提供されているサービス情報も表示するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、カート置場4A、4Bのそれぞれに認証装置としてのカードリーダ17aを設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、ショッピングカート3毎に認証装置としてのカードリーダ17aを設けてもよい。このように、ショッピングカート3毎に認証装置を設けることによって、ショッピングカート3がどの場所においてあっても、認証を行うことができる。
【0113】
また、上記実施の形態においては、特典情報の提示手段としてショピングカート3に、表示装置16を設けた場合について説明したが、さらに、例えば、商品陳列棚21等、利用者の移動可能経路の近傍に、スピーカや表示装置等の固定の特典情報提示装置を配置し、この特典情報提示装置からも特典情報の提供を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、カードリーダ17aで認証を行ったかどうかに関わらず、ショッピングカート3を利用できる場合について説明したが、例えば、硬貨を投入したときロックが外れてショッピングカートが利用可能となり、ショッピングカートを返却したとき硬貨が返却されるように構成されているシステムの場合には、硬貨の代わりに認証装置を設け、正しく認証ができたときにロックが外れてショッピングカートの利用が可能となるように構成してもよい。この場合には、認証装置を備えた会員用カート置場と、硬貨投入により利用可能となる硬貨投入機構を備えた非会員用カート置場とを設ければよく、或いは、認証装置及び硬貨投入機構を備えたカート置場を設けてもよい。
【0114】
ここで、上記実施の形態において、エンコーダ7及び圧電式ジャイロ8が走行状態検出手段に対応し、図8のステップS14、S19〜S23の処理と、図9及び図10の処理と、メモリ11とが移動経路情報形成手段に対応し、図8のステップS35の処理と、図11のステップS78で移動経路情報を送信する処理と図13で移動経路情報をデータベースに格納する処理とが移動経路情報収集手段に対応し、表示装置16が特典情報提示手段に対応し、図11のステップS75〜S77の処理が特典情報反映手段に対応している。
【0115】
また、カードリーダ17a及び図12のステップS81、S82の処理が認証手段に対応し、図11のステップS78で精算情報を送信する処理と図13のステップS92及びS93の処理とが購買履歴収集手段に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】カート置場を示す平面図である。
【図3】ショッピングカートに配設したコントロールユニットの一例を示すブロック図である。
【図4】カート置場に配設した初期情報送信装置の一例を示すブロック図である。
【図5】商品陳列棚の位置情報送信部とショッピングカートとの位置関係を示す説明図である。
【図6】POSシステムの一例を示すブロック図である。
【図7】初期情報送信装置で実行する初期情報送信処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】コントロールユニットで実行する移動経路情報収集処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】コントロールユニットで実行する移動経路情報形成処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】コントロールユニットで実行する通過位置情報算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】POSシステムで実行するデータ取得処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】パーソナルコンピュータで実行する特典情報送信処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】パーソナルコンピュータで実行するデータ解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】ショッピングカートの移動経路を示す説明図である。
【図15】購買領域への複数進入する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図16】購買領域に滞在する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図17】購買領域内で複数回往復移動する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図18】プログラム更新装置で実行するプログラム更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
1…店舗、2…出入口、3…ショッピングカート、3a…固定車輪、4A,4B…カート置場、5…ガイドバー、6…コントロールユニット、7…エンコーダ、8…圧電式ジャイロ、9…センサユニット、10…演算処理装置、11…メモリ、12…通信制御部、13…無線通信アンテナ、14…位置情報受信部、15…バッテリ、16…表示装置、17…初期情報送信装置、17a…カードリーダ、17b…カートスイッチ、21…商品陳列棚、22…位置情報送信部、31…精算所、32…POSシステム、33…移動経路データ通信部、34…アンテナ、35…商品情報入力部、36…表示部、37…演算処理装置、38…メモリ、40…パーソナルコンピュータ、43…データベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショッピングカートを利用して顧客の移動経路情報を収集する際に、ショッピングカートの使用率を向上させ移動経路情報を効率よく収集するようにした顧客移動経路情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店内で購買者が何を購入したかだけでなく、具体的にどの売り場で、どのような経路で、どの程度の時間をかけて商品を選んだか等も自動的に取得し、商品の購入における消費者の行動をマーケティングに役立てる方法が取られている。これに伴って、適切なタイミングで店内情報や商品情報を提供する販売促進方法についての研究も行われている
しかしながら、一般に買い物量の少ない顧客は、買い物かごを使用し、ショッピングカートを利用しないことが多い。多数のデータを収集すると共に、可能な限りの販売促進を行うためには、ショッピングカートを利用してもらう必要がある。
【0003】
そのためには、例えば、特許文献1記載の発明のように、ショッピングカートにクーポン券発行機、操作手段、表示部、音声出力装置、顧客番号入力手段、受発信装置を設け、データ収集を行うと共に、収集したデータをホストコンピュータに伝送してデータ処理を行い、販売促進の資料とし、且つ、必要なデータを受信して広告情報等を情報提供することで、顧客の購買意欲を高めるようにしたもの等は、ショッピングカートの利用を促す方法として有効である。
【特許文献1】特開2001−34850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、ショッピングカートにクーポン券発行機を設けて、顧客のショッピングカートを利用しようという意識の向上を図る方法にあっては、クーポン券の発行の操作やクーポン券の提示等は顧客が行う必要がある。このため、機械操作が嫌いな人や面倒と感じる人等は、クーポン券の使用により特典を得ることができたとしても、特典を得るためにショッピングカートを利用しようという気にはならない可能性がある。また、クーポン券は印刷して用いるため、クーポン券を印刷してはみたものの利用しなかった場合等にはこれはゴミとなり、店内にゴミとして散らかされる要因となる。また、クーポン券を利用したとしても、精算が終了しクーポン券の利用状況等の集計を行った後には、ゴミとなってしまい、資源の無駄である。
【0005】
また、クーポン券を利用した場合、レジにて精算する際に、レジ打ち係が入力操作を行うため、その入力方法が、バーコード形式や価格入力形式の何れの場合であっても、レジ打ち係の負担が増加することになり、また、人為的ミスが生じる可能性もある。
そこで、この発明は上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、利用者等の操作負担の増加を伴うことなく、ショッピングカートの使用率を向上させ、効率よく情報収集を行うことの可能な顧客移動経路情報収集装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明は、顧客の移動経路情報を収集する顧客移動経路情報収集装置であって、前記顧客が使用するショッピングカートに設けられ、その走行状態を検出する走行状態検出手段と、当該走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいて前記ショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段と、当該移動経路情報形成手段で形成した移動経路情報を前記ショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段と、前記ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段と、商品の精算を行う精算装置に設けられ、前記ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、前記ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で前記精算を行う特典情報反映手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいてショッピングカートの移動経路情報が形成されこの移動経路情報が収集される。このとき、ショッピングカートに設けられた特典情報提示手段を参照することによって、ショッピングカートの利用者は、どのような特典が提供されるかを認識することができ、このショッピングカートの利用者が商品の精算を行うときには、特典情報反映手段により、ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格での精算が行われる。したがって、利用者は特典を受けるための操作を何ら行う必要はなく、また、精算を行うレジ打ち係等の負担を伴うことなく、ショッピングカート利用者に対して特典情報に応じた特典を与えることができる。また、ショッピングカート利用者用の特典は、ショッピングカート利用者が精算を行うときにショッピングカート利用者に対して与えられるから、顧客に対し、ショッピングカート利用者用の特典を受けるために、ショッピングカートを利用しようという意識を持たせることができ、結果的にショッピングカートの使用率を向上させることができ、顧客の移動経路情報を効率良く収集することができる。
【0008】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記ショッピングカート利用者用の特典は、前記ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されることを特徴としている。
上記構成によれば、ショッピングカート利用者用の特典は、ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されているから、顧客に対しショッピングカートを利用しようという意識をより強くもたせることができ、ショッピングカートの使用率を向上させることができる。
【0009】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記特典情報提示手段は、前記移動経路情報形成手段で形成したショッピングカートの移動経路情報に基づいて前記ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に関する特典情報を提示することを特徴としている。
上記構成によれば、ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に対する特典情報が提示されるから、ショッピングカート利用者は、特典情報に対応する商品をその場で目視することができ、効率よく、効果的に特典情報を提示することができる。
【0010】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記ショッピングカートの利用者が予め登録された会員かどうかを認証する認証手段と、前記ショッピングカートを利用した会員の購買状況を収集しこれを会員毎に蓄積する購買履歴収集手段と、前記認証手段で会員であることが認証されたとき、当該会員の購買履歴情報を、前記購買履歴収集手段から獲得する購買履歴情報獲得手段と、当該購買履歴情報獲得手段で獲得した前記会員の購買履歴情報に基づいて前記会員個別の特典情報を生成する個別特典情報生成手段と、を備え、前記特典情報提示手段は、前記個別特典情報生成手段で生成した前記会員個別の特典情報を提示することを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、認証手段により、ショッピングカートの利用者が会員であるかどうかが認証され、会員の場合には、ショッピングカートを利用した会員の購買状況が会員毎に収集されて蓄積されると共に、会員であると認証されたときには、これまでの購買状況に基づいて、この会員固有の特典情報が生成されこれが提示される。したがって、例えば、購買頻度がある程度高い商品ほど割引率を高くしたり、或いは、これまでの累積購買金額等に応じて割引率を設定したりする等、会員個々のこれまでの購買状況に応じた会員個別の特典情報を提示することにより、顧客に対し、ショッピングカートを利用しようという意識をより持たせることができる。
【0012】
また、上記した顧客移動経路情報収集装置において、前記認証手段は、前記ショッピングカートのカート置場に設けられていることを特徴としている。
上記構成によれば、認証手段は、ショッピングカートのカート置場に設けられているから、ショッピングカートの利用者が、ショッピングカートを利用する際にカート置場の認証手段で認証操作を行って認証を行うことにより、ショッピングカート毎に認証手段を設ける必要はなく、その分、経費削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すシステム構成図であって、スーパーマーケット、デパートの食品売り場等のショッピングカートを利用して買い物をする店舗1内の出入口2の近傍に複数、例えば10台のショッピングカート3を所定の方向に向けて縦列配置するカート置場4A,4Bが配設されている。
【0014】
このカート置場4A,4Bのそれぞれは、図2に示すように、ショッピングカート3を所定の方向に向けて案内するガイドバー5を有する。このガイドバー5は、ショッピングカート3の幅と略等しい間隔を保って平行に配設されたサイドバー部5a,5bと、これらサイドバー部5a,5bの一端間を結ぶエンドバー部5cと、床面に植立されて例えばサイドバー部5a,5bを支持する支柱部5dとで構成されている。そして、複数のショッピングカート3を縦列配置した状態で、エンドバー部5cでショッピングカート3の前端を規制し、サイドバー部5a,5bでショッピングカート3の左右側部を案内することにより、ショッピングカート3を一定方向に向けて縦列配置している。
【0015】
そして、ショッピングカート3にその移動経路を計測して移動経路情報を形成するコントロールユニット6が配設されていると共に、ショッピングカート3の固定車輪3aにその回転速度に応じた車輪速用パルスとこの車輪速用パルスに対して90°位相が異なる回転方向検出用パルスを発生して回転方向を検出可能なインクリメント型のロータリエンコーダ7が配設されている。
【0016】
このコントロールユニット6は、図3に示すように、ショッピングカート3のヨーレートを検出する圧電式ジャイロ8を含んで、ショッピングカート3の角速度ωを出力するセンサユニット9と、このセンサユニット9から出力されるショッピングカート3の角速度ωを記憶すると共に、ロータリエンコーダ7から入力される車輪速用パルス及び回転方向検出用のパルスに基づいてショッピングカート3の前後の走行情報D及び停止時間Tstを算出してこれを記憶し、さらに外部の機器との無線通信制御を行う例えばCPUで構成される演算処理装置10と、この演算処理装置10で行う演算処理に必要なプログラムを格納していると共に、角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、初期位置情報、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置情報取得時刻、ジャイロリセット時刻でなる移動経路情報、特典情報、及び会員情報を格納するメモリ11と、演算処理装置10によって制御される外部装置との間で無線通信を行う通信制御部12と、この通信制御部12に接続された無線通信アンテナ13と、無線通信アンテナ13を介して移動経路を補正する位置情報を受信するための位置情報受信部14と、商品選択情報や、ショッピングカート3の利用者への特典情報を表示するための液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等で構成される表示装置16と、センサユニット9、演算処理装置10、通信制御部12、位置情報受信部14及び表示装置16に電力を供給するバッテリ15と、を備えている。
【0017】
また、カート置場4A,4Bには、磁気カード或いはICカードのカード情報を読み込むためのカードリーダ17a及びショッピングカート3がカート置場4A、4Bから引き出されたかどうかを判断するためカートスイッチ17bを備えた初期情報送信装置17が設けられている。この初期情報送信装置17は、図4に示すように、カードリーダ17aで読み取ったカード情報をパーソナルコンピュータ40に送信し、その応答として会員用の特典情報或いは非会員用の特典情報を入力すると共に、カートスイッチ17bが作動したとき前記特典情報と、会員かどうかを表す情報であって会員の場合には会員番号を含む会員情報と、カート置場4A,4Bの絶対位置情報及びショッピングカート3の縦列方向を表す方位情報からなる初期位置情報とを、初期情報として該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に無線送信する例えばCPUで構成される演算処理装置17cと、後述のパーソナルコンピュータ40と通信を行う外部通信制御部17dと、前記初期情報を、無線通信アンテナ17eを介して送信するための初期情報送信部17fとを備えている。
【0018】
一方、図1及び図5に示すように、店舗1内に配設された移動経路に沿う商品陳列棚21の上部に、商品区分に応じた商品購買範囲内に通信範囲が規制された例えば半円形の指向性を有する現在位置情報を送信する無線LANのアクセスポイント、RFIDタグ等で構成される位置情報送信部22が設置され、この位置情報送信部22から例えば数メートル〜十数メートル程度の通信範囲内に位置するショッピングカート3に配設されたコントロールユニット6に対して現在位置情報を送信するように構成されている。
【0019】
さらに、店舗1内の精算所31に商品の精算を行うPOS(Point Of Sales)システム32が配設されている。このPOSシステム32は、図6に示すように、各ショッピングカート3のコントロールユニット6から移動経路情報、このショッピングカート3の利用者の会員情報を取得する移動経路データ通信部33と、この移動経路データ通信部33に接続された無線通信アンテナ34と、商品情報を入力するバーコードリーダやテンキー等で構成される商品情報入力部35と、精算情報を表示する液晶ディスプレイ、ELパネル、プラズマディスプレイ等の表示部36と、移動経路データ通信部33を制御して移動経路情報及び会員情報を取得すると共に、商品情報入力部35から入力される購入商品情報及び精算金額情報と会員情報に基づいて特定されるこの利用者に対する特典情報とに基づいて精算を行うデータ取得処理を実行する例えばCPUで構成される演算処理装置37と、この演算処理装置37の演算処理に使用するプログラムや特典情報に応じた商品価格情報を格納していると共に、精算情報、精算終了時刻、移動経路情報を一時記憶するメモリ38と、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)39を介して外部のデータ解析を行う複数のパーソナルコンピュータ40と通信を行う外部通信制御部41とを備えている。
【0020】
各パーソナルコンピュータ40は、例えばローカルエリアネットワーク42を介して1つ又は複数のデータベース43に接続されており、POSシステム32から取得した移動経路情報及び精算情報、精算終了時刻をデータベース43に格納すると共に、格納した移動経路情報及び精算情報、精算終了時刻を解析するデータ解析処理を行う。また、初期情報送信装置17からカードリーダ17aで読み取ったカード情報を入力したとき、データベース43に格納されている登録会員情報に基づいて、有効な会員であるかどうかを判断し、有効な会員であるときには、予め設定されて所定の記憶領域に格納されている会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力し、非会員であるときには、非会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力する。
【0021】
この初期情報送信装置17で実行する初期情報送信処理は、図7に示すように、まず、ステップS1でカードリーダ17aからカード情報を読み込んだかどうかを判断し、カード情報を読み込んだならばステップS2に移行し、このカード情報を、通信制御部17dを介してパーソナルコンピュータ40に出力して認証依頼を行い、ステップS3で、その応答として、認証結果に応じた、会員用の特典情報又は非会員用の特典情報を獲得する。
【0022】
次いで、ステップS4に移行し、カートスイッチ17bが作動したかどうかを判断し、カートスイッチ17bが作動したとき、後述のステップS10に移行する。
一方、前記ステップS1で、カードリーダ17aでカード情報が入力されない場合にはステップS6に移行し、カートスイッチ17bが作動したかどうかを判断する。カートスイッチ17bが作動しないときにはステップS1に戻り、カートスイッチ17bが作動したときには、ステップS7に移行する。
【0023】
このステップS7では、非会員であることをパーソナルコンピュータ40に通知し、その応答として、ステップS8で、非会員用の特典情報を獲得した後、ステップS10に移行する。
このステップS10では、パーソナルコンピュータ40から受信した会員用の特典情報或いは、非会員に対する特典情報と、会員であるかどうかを表す情報であって、会員で有る場合にはこの会員を特定可能な会員番号等の識別情報を含む会員情報と、カート置場4A,4Bの絶対位置情報及びショッピングカート3の縦列方向を表す方位情報からなる初期位置情報とを、初期情報として該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に、初期情報送信部17f及び無線通信アンテナ17eを介して送信する。そして処理を終了する。
【0024】
また、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6の演算処理装置10では、図8に示す移動経路情報収集処理を実行する。
この移動経路情報収集処理は、ショッピングカート3をカート置場4A又は4Bから離脱させることにより、コントロールユニット6のバッテリ15への外部電源の供給が遮断されたときに実行開始され、まず、ステップS11で、メモリ11に記憶されている角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、初期位置情報、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置取得時刻、リセット時刻、総移動距離L、滞在時間でなる移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されているか否かを判定する。これら移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されていないときにはステップS12に移行して移動経路情報と、会員情報及び特典情報を消去してからステップS13に移行し、移動経路情報と、会員情報及び特典情報とが消去されているときには直接ステップS13に移行する。
【0025】
このステップS13では、移動開始時刻をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶すると共に、ロータリエンコーダ7から出力される車輪速用パルスを計数するカウンタをリセットし、さらに圧電式ジャイロ8をリセットする。
次いで、ステップS14に移行して、カート置場4A,4Bに配設された初期情報送信装置17から送信されるショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及びカート置場4A,4Bでのショッピングカート3の現在の方位情報θ0で構成される初期位置情報と、このショッピングカート3の利用者に対する特典情報及び会員情報とを、初期情報として取得し、取得した初期位置情報をメモリ11の移動経路情報記憶領域に格納すると共に、特典情報及び会員情報をメモリ11の特典情報記憶領域に格納する。
【0026】
次いで、ステップS15に移行して、図9に示す移動経路情報形成処理を起動し、次いでステップS16に移行して、商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22が存在するか否かを判定し、位置情報送信部22が存在しない場合には後述するステップS37に移行し、位置情報送信部22が存在する場合には、ステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているか否かを判定する。現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているときには、既に位置情報送信部22の通信範囲内に入っている状態を継続しているものと判断して後述するステップS25にジャンプし、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているときには位置情報送信部22の通信範囲に初めて到達したものと判断してステップS18に移行する。
【0027】
このステップS18では、位置情報送信部22から現在位置情報を受信したか否かを判定し、現在位置情報を受信していないときには後述のステップS32にジャンプし、現在位置情報を受信したときにはステップS19に移行して、現在位置情報及び現在位置情報取得時刻をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶してからステップS20に移行する。
【0028】
このステップS20では、圧電式ジャイロ8をリセットしてドリフト分を除去し、次いでステップS21に移行して、ジャイロリセット時刻TR(n)をメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶し、次いでステップS22に移行して、現在のジャイロリセット時刻TR(n)及び前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)に基づいてジャイロドリフト成分を推定し、推定したジャイロドリフト成分に応じて前回の圧電式ジャイロ8のリセット時刻TR(n-1)以降に記憶した各角速度ωを補正する角速度補正処理を行い、次いでステップS23に移行して、図10に示す通過位置情報算出処理を実行してからステップS24に移行する。
【0029】
このステップS24では、位置情報送信部22の位置情報到達領域に対応する商品購入領域に進入した回数NEをインクリメントし(NE=NE+1)、次いで、ステップS24aに移行して、現在位置取得フラグFPを“1”にセットする。
次いでステップS25に移行し、商品購入領域進入回数NEが予め設定した顧客が商品選択に迷いを生じていると判断する基準値NES以上であるか否かを判定し、NE≧NESであるときには、該当する商品購入領域に来る回数が多く、商品の選択に迷いを生じている商品選択迷い状態であるものと判断してステップS26に移行する。
【0030】
このステップS26では、現在の商品購入領域におけるお買い得商品情報、お勧め商品情報、スポンサーメーカ商品情報(利益率が高い商品情報)や、この利用者に対して与えられている特典の対象となる特典対象商品等の商品名及び商品価格を含む1つ又は複数の商品選択補助情報を選択し、次いでステップS27に移行して、選択した商品選択補助情報を表示装置16に出力し、これを表示してから後述するステップS32に移行する。
【0031】
また、前記ステップS25の判定結果が、商品購入領域進入回数NEが設定値NES未満であるときには、ステップS29に移行する。
このステップS29では、現在時刻TNからステップS19で記憶した現在位置情報取得時刻TAを減算して領域滞在時刻TP(=TN−TA)を算出し、次いでステップS30に移行して、算出した領域滞在時刻TPが予め設定した客が商品選択に迷いを生じていると判断する基準値TPS以上であるか否かを判定し、TP≧TPSであるときには顧客が商品の選択に迷いを生じている商品選択迷い状態であるものと判断して前記ステップS26に移行し、TP<TPSであるときには商品選択迷い状態ではないものと判断してステップS31に移行する。
【0032】
このステップS31では、前記ステップS23で算出した位置情報に基づいて同一商品購入領域内での往復移動回数が、顧客が商品選択に迷いを生じている商品選択迷い状態を判断する基準値以上であるか否かを判定し、往復移動回数が基準値以上であるときには商品選択迷い状態であるものと判断して前記ステップS26に移行し、往復移動回数が基準値未満であるときには商品選択迷い状態ではないものと判断してステップS32に移行する。ここで、往復移動回数は、例えば領域に進入した方向に対して、累積角度が180度を何回超えたか等を計数することにより行う。
【0033】
前記ステップS32では、POSシステム32の移動経路データ通信部33から移動経路情報取得要求を受信したか否かを判定し、移動経路情報取得要求を受信していないときには、前記ステップS16に戻り、移動経路情報取得要求を受信したときには、ステップS33に移行して、車輪速用パルスを計数するカウンタのカウントNに車輪速用パルスが得られてから次の車輪速用パルスが得られるまでの間のショッピングカート3の走行距離ΔLを乗算して総移動距離Lを算出してからステップS34に移行する。
【0034】
このステップS34では、現在時刻から前記ステップS13で記憶した移動開始時刻を減算して店舗内滞在時間を算出し、次いでステップS35に移行して、メモリ11に記憶されている通過位置情報、停止時間Tst、総移動距離L、店舗内滞在時間で構成される移動経路情報と、会員であるか非会員であるかを表すと共に会員である場合には会員番号等を含む会員情報とを通信制御部12に供給して無線通信アンテナ13から送信する。
【0035】
次いでステップS36に移行して、メモリ11に格納されている初期位置情報、角速度ω、通過位置情報、現在時刻、ジャイロリセット時刻、総移動距離L及び店舗内滞在時間、また、会員情報を消去してから図8の移動経路情報収集処理を終了する。
一方、前記ステップS16の判定の結果、位置情報送信部22が存在しない場合には、ステップS37に移行して、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているか否かを判定し、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているときには位置情報送信部22が存在しない状態を継続しているものと判断してそのまま前記ステップS32に移行し、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているときには、位置情報送信部22の通信範囲から離脱したものと判断し、ステップS38に移行して位置取得フラグFPを“0”にリセットすると共に、リセット時刻TR(n)を前回リセット時刻TR(n-1)として設定してから前記ステップS32に移行する。
【0036】
また、ステップS15で起動される移動経路情報形成処理は、図9に示すように、前記ステップS15で起動されると、まず、ステップS41で、車輪速用パルスが入力されたか否かを判定し、車輪速用パルスが入力されていないときにはこれが入力されるまで待機し、車輪速用パルスが入力されたときにはステップS42に移行して、現在時刻Tnを読込んでからステップS43に移行して、車輪速用パルスを計数するソフトウェアカウンタのカウント値NをインクリメントしてからステップS44に移行する。
【0037】
このステップS44では、車輪速用パルス及び方向検出用パルスの組合せと前回の組合せとに基づいてショッピングカート3が前進しているか後退しているかを判定し、前進しているときにはステップS45に移行して、走行情報Dを、前進を表す“1”に設定してからステップS47に移行し、後退しているときにはステップS46に移行して走行情報Dを、後退を表す“0”に設定してからステップS47に移行する。
【0038】
ステップS47では、圧電式ジャイロ8で検出した角速度ωを読込み、次いでステップS48に移行して、現在時刻T(n)から前回の現在時刻T(n-1)を減算することにより、パルス間時間ΔT(=T(n)−T(n-1))を算出し、次いでステップS49に移行して、パルス間時間ΔTが予め設定したショッピングカート3が停止していると判断できる最少停止時間Tmin以上であるか否かを判定し、ΔT≧Tminであるときには停止状態であると判断してステップS50に移行して、パルス間時間ΔTを停止時間Tstとして設定してからステップS52に移行し、ΔT<Tminであるときには停止状態ではないと判断してステップS51に移行して、停止時間Tstを“0”に設定してからステップS52に移行する。
【0039】
ステップS52では、角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstをメモリ11に形成した移動経路情報記憶領域に記憶し、次いでステップS53に移行して、図10に示す通過位置情報を算出する通過位置情報算出処理を実行してからステップS54に移行して、算出した通過位置情報と売り場レイアウトとのマッチング処理を行って売り場の位置座標を表す売り場位置情報を算出し、これをメモリ11の売り場位置情報記憶領域に記憶する。
【0040】
次いで、ステップS55に移行し、メモリ11に記憶している、会員用の特典情報或いは、非会員用の特典情報に基づいて、売り場位置情報で特定されるショッピングカート3の現在位置近傍の商品に対する特典や、会員向け或いは非会員向けの特典を表示装置16に表示する。そして、前記ステップS41に戻る。
図8のステップS23及び図9のステップS53で実行する通過位置情報算出処理は、図10に示すように、まず、ステップS61で、角速度ωを積分してショッピングカート3の回転角度θnを算出する。ここで、ステップS23では、角速度ωとして補正後角速度ω′を積分する。
【0041】
次いで、ステップS62に移行して、初期位置情報取得時の方位情報θ0を含む累積回転角度θaに順次回転角度θnを加算することにより、ショッピングカート3の累積回転角度θaを算出し、次いでステップS63に移行して、ショッピングカート3が前進状態であるか後退状態であるかを走行情報Dが“1”であるか否かによって判断し、前進状態であるときにはステップS64に移行して、車輪速用パルスが得られてから次の車輪速用パルスが得られるまでの間のショッピングカート3の走行距離ΔLを正値+ΔLとして設定してからステップS66に移行し、後退状態であるときにはステップS65に移行して、走行距離ΔLを負値−ΔLとして設定してからステップS66に移行する。
【0042】
ステップS66では、ステップS64又はS65で設定される走行距離ΔLと累積回転角度θaとに基づいて下記(1)式及び(2)式の演算を行うことにより、車輪速用パルスが入力された時点の位置座標X′,Y′を算出する。
X′=X+ΔL・cosθa …………(1)
Y′=Y+ΔL・sinθa …………(2)
次いで、ステップS67に移行して、算出した位置座標X′,Y′を通過位置情報としてメモリ11の通過位置情報記憶領域に累積回転角度θaと共に記憶する。
【0043】
また、POSシステム32の演算処理装置37で実行するデータ取得処理は、図11に示すように、まず、ステップS71で、ショッピングカート3のコントロールユニット6の通信制御部12との間で通信が可能となったか否かを判定し、通信制御部12との間の通信ができない状態では通信が可能となるまで待機し、通信が可能となったときにはステップS72に移行する。
【0044】
このステップS72では、通信制御部12に対して移動経路情報及び会員情報の送信を要求する移動経路情報及び会員情報取得要求を送信し、次いでステップS73に移行して、通信制御部12から移動経路情報及び会員情報を受信したか否かを判定し、移動経路情報及び会員情報を受信していないときにはこれを受信するまで待機し、移動経路情報及び会員情報を受信したときにはステップS74に移行して、移動経路情報及び会員情報をメモリ38に一時記憶してからステップS75に移行する。
【0045】
このステップS75では、通知された会員情報に基づいて会員であるか否かを判断し、会員である場合には、ステップS76に移行し、予め設定され所定の記憶領域に格納されているカート利用会員用の価格情報に基づいて、商品情報入力部35から入力される購入商品情報に対して精算処理を行う。一方、非会員である場合には、ステップS77に移行し、予め設定され所定の記憶領域に格納されているカート利用非会員用の価格情報に基づいて精算処理を行う。
【0046】
そして、ステップS78に移行して、移動経路情報と精算情報と会員情報とを利用者情報として、外部通信制御部41に出力して、パーソナルコンピュータ40に送信してから前記ステップS71に戻る。
また、特典情報を前記コントロールユニット6に送信するための、パーソナルコンピュータ40で実行する特典情報送信処理は、図12に示すように、まず、ステップS81で、初期情報送信装置17の通信制御部17dから、カード情報を入力したかどうかを判断し、会員情報を入力したときには、ステップS82に移行し、認証処理を行って、登録会員のカード情報が格納されているデータベース43を参照し、カード情報で特定される利用者が会員であるかどうかを判断する。そして、会員である場合には、ステップS83からステップS84に移行して、所定の記憶領域に格納されている会員用の特典を表す会員用の特典情報を初期情報送信装置17に送信する。一方、ステップS82で会員でないと判断されたときには、ステップS83から後述のステップS87に移行する。
【0047】
そして、前記ステップS81で、カード情報が入力されないときには、ステップS86に移行し、非会員であることが通知されたかどうかを判断し、非会員通知がない場合には、ステップS81に戻り、非会員通知が行われたときにはステップS86からステップS87に移行する。
このステップS87では、所定の記憶領域に格納されている非会員用の特典を表す非会員用の特典情報を、初期情報送信装置17に送信する。
【0048】
ここで、前記会員用の特典情報及び非会員用の特典情報は、ショッピングカート3の利用者が、ショッピングカート3を利用しない人よりも高い特典を得ることができるように設定され、つまり、ショッピングカート3を利用しようという顧客の意識を増加させるように設定されている。また、会員用の特典情報は、会員が、非会員よりも高い特典を得ることができるように設定され、つまり、非会員に対して、会員になろうという意識を増加させるように設定され、ショッピングカート3を利用した場合、及びショッピングカートを利用しない場合について、それぞれ予め登録された登録会員か、或いは非会員かに応じて設定される。
【0049】
表1は、登録会員か非会員か、また、ショッピングカート3の利用者か非利用者かによって受けられる特典の一例を示したものである。表1において“○”はそのサービスを受けることが可能であることを表し、“×”はそのサービスを受けることが不可であることを表す。
【0050】
【表1】
【0051】
利用者に与えられる特典としては、例えば、会員向け一般サービス、カート利用者割引、非広告掲載情報の取得、カート利用者割引(会員割引率)、会員カート利用者限定割引、会員限定の非広告掲載情報取得、等がある。
【0052】
次に、パーソナルコンピュータ40で実行するデータ解析処理は、図13に示すように、先ず、ステップS91で、POSシステム32の外部通信制御部41から移動経路情報、精算情報、会員情報からなる利用者情報を受信したか否かを判定し、これらを受信していないときには利用者情報を受信するまで待機し、利用者情報を受信したときにはステップS92に移行する。そして、会員情報を参照して会員かどうかを判断し、このショッピングカート3の利用者が会員であるときには、ステップS93に移行し、データベース43の、通知された会員情報の会員番号等で特定される会員固有の、移動経路情報及び精算情報の格納領域に、通知された移動経路情報及び精算情報を格納する。そして、ステップS95に移行する。
【0053】
一方、ステップS92で、会員情報として非会員であることが通知されているときには、ステップS94に移行し、非会員用の、移動経路情報及び精算情報の格納領域に、通知された移動経路情報及び精算情報を格納する。そして、ステップS95に移行する。
このステップS95では、移動経路情報、時間情報、精算情報や、会員であるか非会員であるか、また、会員情報等に基づいてマーケティングデータを生成するマーケティングデータ生成処理を行ってから処理を終了する。
【0054】
このマーケティングデータ生成処理としては、停止時間Tstが“0”以外に設定されている位置座標X′,Y′と累積回転角度θaを抽出し、位置座標X′,Y′を売り場レイアウトとのマッチングをとることにより、どのエリアでショッピングカート3がどの方向を向いて停止していたかを検出することができる。
また、店舗内滞在時間から顧客毎の店舗内滞在時間を収集することができると共に、位置情報送信部22との通信時間を表す領域滞在時間TPに基づいて該当する商品購入領域のエリア別滞在時間を集計することができる。
【0055】
さらに、停止時間Tstと購入商品とを組み合わせることにより、商品を購入するために要した選択時間を算出することができる。
さらに、特典情報を提供したことによる顧客の購買意欲の変化状況等を予測することができる。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
【0056】
今、カート置場4A及び4Bに複数のショッピングカート3が縦列状態で配置されているものとする。このとき、カート置場4A及び4Bに配置された各ショッピングカート3に設けられたコントロールユニット6のメモリ11に記憶されている角速度ω、各種時刻情報、通過位置情報、総移動距離L、領域滞在時間、店舗滞在時間、特典情報等の各種記憶情報が全て消去されているものとする。
【0057】
この状態で、顧客が出入口2から店舗内に入場して、例えばカート置場4Aのカードリーダ17aで会員カードの入力操作を行った後、ショッピングカート3を引出し、カートスイッチ17bが作動し、例えば、カート置場4Aに設けられた充電装置15aによるバッテリ15への充電状態が解消されると、初期情報送信装置17では、図7に示す初期情報送信処理において、図7のステップS1からステップS2に移行し、カードリーダ17aで読み取ったカード情報を、通信処理部17dを介してパーソナルコンピュータ40に出力し認証依頼を行う。
【0058】
これを受けて、パーソナルコンピュータ40では、図12に示す特典情報送信処理を実行し、カード情報を入力したことから、ステップS81からステップS82に移行してカード情報に対して認証処理を行い、この会員が登録会員であるときには、ステップS83からステップS84に移行して、予め設定された会員用の特典情報を読み出し、この特典情報を初期情報送信装置17に送信する。
【0059】
このため、初期情報送信装置17では、受信した会員用の特典情報と、ショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及び絶対方位情報θ0で構成される初期位置情報とを初期情報として対応するショッピングカート3に送信する。
一方、ショッピングカート3の利用者が会員でない場合には、顧客は会員カードの入力操作を行うことなく、ショッピングカート3を引き出すから、初期情報送信装置17では、図7のステップS1からステップS6を経てステップS7に移行し、会員カードの入力操作が行われなかったことから、ショッピングカート3の利用客は、非会員であると判断し、会員情報として非会員であることをパーソナルコンピュータ40に通知する。このため、パーソナルコンピュータ40では、図12のステップS81からステップS86を経てステップS87に移行し、所定の記憶領域に格納されている非会員用の特典情報を初期情報送信装置17に出力する。
【0060】
このため、初期情報送信装置17では、ステップS8からステップS10に移行し、通知された非会員用の特典情報と初期位置情報とを初期情報として該当するショッピングカート3のコントールユニット6に送信する。コントロールユニット6では、初期情報を受信し、これをメモリ11に記憶し、以後、非会員用の特典情報に基づいて特典情報の表示や特典の反映等を行う。なお、ここでは、以後、会員用の特典情報に基づいて処理を行う場合について説明する。
【0061】
一方、顧客が引き出したショッピングカート3のコントロールユニット6では、充電装置15aによるバッテリ15への充電状態が解消されたことから、コントロールユニット6で、図8に示す移動経路情報収集処理が実行される。
このため、先ず、メモリ11に記憶されている角速度ω、走行情報D、停止時間Tst、現在位置情報、移動開始時刻、現在位置取得時刻、リセット時刻、領域滞在時間、総移動距離L、店舗滞在時間でなる移動経路情報及び会員情報や特典情報が消去されているか否かを判定し(ステップS11)、移動経路情報や会員情報、特典情報が消去されていないときにはこれら移動経路情報や会員情報、特典情報を消去する(ステップS12)。
【0062】
このため、前回ショッピングカート3をカート置場4Aから引き出して移動を開始したが、途中で買い物を止めたときには、それまでの移動経路情報や会員情報、特典情報がメモリ11に記憶されたままとなるが、移動経路情報取得処理が開始されたときに、これら情報が消去されるので、前回の移動経路情報が累積されることを確実に防止することができる。
【0063】
そして、ショッピングカート3の移動開始時刻がメモリ11の移動経路情報記憶領域に記憶されると共に、車輪速用パルスを計数するカウンタをリセットしてカウント値Nを“0”に設定し、さらに圧電式ジャイロ8をリセットする(ステップS13)。
次いで、カート置場4Aの出口側に配設された初期情報送信装置17からショッピングカート3の絶対位置座標X0,Y0及び絶対方位情報θ0で構成される初期位置情報と、特典情報及び会員情報とを取得し、これをメモリ11の移動経路情報記憶領域及び特典情報記憶領域にそれぞれ記憶する(ステップS14)。
【0064】
次いで、図9に示す移動経路情報形成処理を起動する(ステップS15)。
この状態で、ショッピングカート3をサイドバー部5a,5bに沿って後退させてカート置場4Aから完全に引き出して所望の売り場に向かうと、先ず、ショッピングカート3を後退させることにより、車輪3aが逆転してロータリエンコーダ7から車輪速用パルス及び方向検出用パルスが出力されて、これらがコントロールユニット6に入力される。
【0065】
このため、図9の移動経路情報形成処理で、車輪速用パルスが入力されたときに、現在時刻Tnを読込み(ステップS42)、次いでソフトウェアカウンタのカウント値Nをインクリメントし(ステップS43)、次いで車輪速用パルスと方向検出用パルスとの組合せと前回の組合せとに基づいて後退であることが検出され、これによって走行情報Dが後退を表す“0”に設定され(ステップS46)、次いで圧電式ジャイロ8から角速度ωを読込み(ステップS47)、次いで現在時刻T(n)から前回の時刻T(n-1)を減算してパルス間時間ΔT(=T(n)−T(n-1))を算出する(ステップS48)。
【0066】
この場合、ショッピングカート3が後退を継続しているので、パルス間時間ΔTが最少停止時間Tmin未満となることにより、停止時間Tstが“0”に設定される(ステップS51)。そして、角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstをメモリ11に形成された移動経路情報記憶領域に記憶する。
この移動経路情報形成処理によって、ショッピングカート3が移動してエンコーダ7から車輪速用パルスが入力される毎に角速度ω、走行情報D及び停止時間Tstが順次移動経路情報記憶領域に記憶されると共に、図10の通過位置情報算出処理を実行して累積回転角度θaと位置座標X′及びY′とが算出される。
【0067】
すなわち、角速度ωを積分して回転角度θnを算出し(ステップS61)、算出した回転角度θnを累積回転角度θaに加算することにより、新たな累積回転角度θaを算出し(ステップS62)、さらに走行情報Dが前進を表す“1”(又は後退を表す“0”)であるときには走行距離ΔLが+ΔL(又は−ΔL)に設定され(ステップS64(又はステップS65))、前回の位置座標X,Yと走行距離ΔL及び累積回転角度θaとに基づいて前述した(1)式及び(2)式の演算を行うことにより、現在の位置座標X′及びY′を算出し(ステップS66)、位置座標X′及びY′を通過位置情報としてメモリ11に累積回転角度θaと共に記憶する(ステップS67)。
【0068】
そして、算出した通過位置情報と実際の売り場レイアウトの位置座標とのマッチングを行って、売り場位置座標を算出する(ステップS54)。
このように、移動経路情報形成処理及び通過位置情報算出処理によって、車輪速用パルスが入力される毎に、通過位置情報、売り場座標情報、累積回転角θa、停止時間Tstが算出され、これらがメモリ11の移動経路情報記憶領域に時間順次に記憶される。
【0069】
そして、この売り場位置座標と、メモリ11に格納されている会員用の特典情報とから、このショッピングカート3の現在位置、すなわち、顧客の現在位置近傍の商品に関する特典情報が特定され、これが、ショッピングカート3の表示装置16に表示される(ステップS55)。
このため、ショッピングカート3の利用者は、表示装置16を参照することによって、どの商品が買い得か、或いは、非会員に比較して、又は、ショッピングカート3を利用しない場合に比較してどの程度の特典を得ることができるか等を認識することができ、ショッピングカート3を利用したことの、メリットを実感することができる。また、特典情報を情報提供するときには、現在位置近傍の商品に関する特典情報を表示し、利用者が実際の該当する商品を実際に見たり、手に取ったりすることの可能な商品に関する情報等、利用者の現在位置に応じた特典情報を提供しているから、的確なタイミング且つ的確な特典情報を提供することができ、利用者の購買意欲を効果的に増加させることができる。
【0070】
その後、ショッピングカート3が商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22の通信可能領域に達すると、図8の移動経路情報収集処理で、ステップS16からステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているので、ステップS18に移行し、位置情報送信部22から現在位置座標XP,YP及び方位情報θPを取得する。このとき、位置情報送信部22は、その通信範囲が位置情報送信部22の近傍の通路について通信範囲に到達したときの現在位置座標XP1,YP1及びXP2,YP2と通路での方位情報θP1及びθP2とで構成される現在位置情報を通信可能となったショッピングカート3のコントロールユニット6に送信する。
【0071】
このため、コントロールユニット6では、図8の移動経路情報収集処理で、位置情報送信部22から現在位置情報を取得するまで待機し、現在位置情報を取得すると、現在位置情報とその取得時刻とを現在位置情報記憶領域に記憶する(ステップS19)。
次いで、圧電式ジャイロ8をリセットし(ステップS20)、ジャイロリセット時刻をリセット時刻記憶領域に記憶する(ステップS21)。
【0072】
そして、ジャイロリセット時刻TR(n)と前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)に基づいてジャイロリセット間隔を算出し、このジャイロリセット間隔とジャイロのスペックとからドリフト成分を推測し、このドリフト分に基づいて前回のジャイロリセット時刻TR(n-1)から車輪速用パルスが入力された毎にメモリ11に記憶された各角速度ωを補正する(ステップS22)。
【0073】
そして、補正が終了した各角速度ωの夫々について、図10の通過位置情報算出処理を実行することにより、各角速度ωを積分してショッピングカート3の回転角度θnを算出し(ステップS61)、初期情報の方位情報θ0に順次回転角度θnを加算することにより、ショッピングカート3の累積回転角度θaを個別に算出し(ステップS62)、走行情報Dに基づいて前進か後退を判断することにより、走行距離ΔLの符号を設定してから前記(1)式及び(2)式の演算を行って車輪速用パルスが入力された時点の位置座標X′及びY′を算出し(ステップS66)、算出した位置座標X′,Y′、累積回転角度θa及び停止時間Tstを移動経路補正情報としてメモリ11に記憶する。
【0074】
このように、位置情報送信部22から現在位置情報を受信することにより、圧電式ジャイロ8のドリフト成分を推定して角速度ωを補正するので、現在位置情報を受信することにより、正確な通過位置情報を算出することができる。
そして、該当する購買領域進入回数NEをインクリメントし、現在位置取得フラグFPを“1”にセットする(ステップS24a)。このとき、最初に購買領域に進入したので、購買領域進入回数NEが“1”となり、基準値NESより小さく、領域滞在時間TPも基準値TPS未満となり、購買領域内でのショッピングカート3の往復移動もないので、商品選択迷い状態と判断されることなく、ステップS32に移行する。このとき、精算所にショッピングカート3が移動されておらず、移動経路情報取得要求を受信していないので、図8の処理において、ステップS16に戻る。
【0075】
この間に、ショッピングカート3を位置情報送信部22の通信範囲内で移動させたときには、現在位置取得フラグFPが“1”にセットされているので、再度現在位置座標を取得することはなく、この間図9の移動経路情報形成処理及び図10の通過位置情報算出処理が実行されることにより、ショッピングカート3の移動経路情報が順次移動経路記憶領域に記憶される。
【0076】
このようにして、ショッピングカート3の移動に伴って、通過位置情報、売り場位置情報、停止時間Tst等が収集されて、これらが移動経路情報記憶領域に順次記憶される。
ここで、図10の通過位置情報算出処理の具体例を説明すると、先ず、初期位置送信装置17の絶対位置座標X0,Y0を初期位置として記憶すると共に、方位情報θ0を累積回転角度θaとして累積回転角度記憶領域に記憶する。これによって、ショッピングカート3の初期位置が移動経路記憶領域に記憶される。このとき、カート置場4Aのサイドバー部5a,5bの方向がXY直交座標系のY軸方向であるものとし、方位情報θ0が90°であるものとする。
【0077】
そして、ショッピングカート3をカート置場4Aから引き出すために後退させたときに、車輪速用パルスが入力されたときの圧電ジャイロ8で検出した角速度ωは、ショッピングカート3がサイドバー部5a,5bで案内されて真っ直ぐ後退するので、検出した角速度ωは“0”となっており、これを積分した回転角度θnも0°となる。
このため、累積回転角度θaが初期状態の方位情報θ0=90°に設定されているので、累積角度θaに回転角度θn=0°を加算した新たな累積回転角度θaは90°を維持する。
【0078】
一方、ショッピングカート3が後退しているので、走行距離ΔLとして負値−ΔLが設定され、前記(1)式及び(2)式に従って位置座標X1′,Y1′を算出すると、cosθa=0,sinθa=1であることから、X1′=X0,Y1′=Y0−ΔLとなり、算出された位置座標X1′,Y1′が移動経路記憶領域に記憶される。このため、現在推定位置座標X1′及びY1′は図14に示すように初期位置座標X0及びY0からY軸方向に負方向に走行距離ΔLだけ移動する。
【0079】
その後、ショッピングカート3の後退が継続されるので、現在推定位置座標Xj′及びYj′(j=2,3……)が順次走行距離ΔLだけY軸方向に負方向に移動する。
その後、ショッピングカート3を時計方向に回転させると、これに応じて圧電式ジャイロ8からショッピングカート3の角速度ωが検出され、これを積分することにより、負値の回転角度θnが算出され、累積回転角度θaが90°より減少する。
【0080】
このため、前記(1)式及び(2)式に従って算出される位置座標Xj′,Yj′が図14に示すように、ショッピングカート3の回転に応じて移動し、その後、ショッピングカート3をX軸方向として前進させると、累積回転角度θaが0°となると共に、走行距離ΔLが正値となって、前記(1)式及び(2)式に従って算出される位置座標Xj′,Yj′がX軸方向に移動する。
【0081】
その後、カート置場4Aの近傍の商品陳列棚21に向かうため、ショッピングカート3を反時計方向に回転させながら前進すると、これに応じてショッピングカート3の移動経路に応じた位置座標Xj′,Yj′が算出され、これが移動経路解析情報記憶領域に順次記憶される。
このようにして、ショッピングカート3の移動に伴って累積回転角度θaが更新されると共に、現在推定位置座標Xj′,Yj′が順次算出されて移動経路記憶領域に順次記憶されるが、圧電式ジャイロ8では検出誤差が累積されるため、これを補正するために、ショッピングカート3が商品陳列棚21の上部に配設された位置情報送信部22の近傍位置に達して、この位置情報送信部22との無線通信が可能となると、図8の移動経路情報収集処理において、ステップS16からステップS17に移行して、現在位置取得フラグFPが“0”にリセットされているので、ステップS18に移行し、位置情報送信部22から現在位置座標XP,YP及び方位情報θPを取得する。このとき、位置情報送信部22では、その通信範囲が近傍の通路について通信範囲に到達したときの現在位置座標XP1,YP1及びXP2,YP2と各通路での方位情報θP1及びθP2とで構成される現在位置情報を通信可能となったショッピングカート3のコントロールユニット6に送信する。このため、コントロールユニット6では、それまでの移動経路から位置情報送信部22にどの方向から接近したかを判断することができ、その接近方向に応じた現在位置座標XPi,YPi及び方位情報θPi(i=1,2)を決定し、現在位置座標XPi,YPiを移動経路記憶領域に記憶すると共に、方位情報θPiを累積回転角度θaとして累積回転角度記憶領域に記憶する。
【0082】
この間に、顧客がショッピングカート3を、商品選択を迷うことなく移動させながら買い物を行っている場合には、1つの購買領域での領域滞在時間TPが基準値TPS未満であると共に、購買領域に立ち寄る購買領域進入回数NEも多くて2回程度であって基準値NES未満であり、購買領域でのショッピングカート3の往復移動回数も少ないので、商品選択補助情報が表示装置16に表示されることはなく、表示装置16には購買領域に対応する一般的な情報が表示される。
【0083】
しかしながら、或る購買領域で商品の選択に迷いを生じると、その場で、種々の商品を視認するか又は手にとって吟味することにより、領域滞在時間TPが長くなるか、購買領域内でのショッピングカート3の往復移動回数が多くなるか、さらには他の購買領域に移動した後も何度か購買領域に戻る動作を行う商品選択迷い状態となる。
このため、図15に示すように、購買領域3への立ち寄り回数が多くなると、購買領域進入回数NEが増加し、これが基準値NES以上となると、図8の移動経路情報収集処理において、ステップS25からステップS26に移行して、位置情報送信部22に対応する売り場情報に基づいてお買い得商品情報、お勧め商品情報、スポンサーメーカ商品情報(利益率が高い商品など)、また、会員用の特典情報で指定された、所定の特典を受けることの可能な特典対象商品情報等の商品選択補助情報を選択し、選択した商品選択補助情報を表示装置16に出力して、これらを表示する。
【0084】
このため、ショッピングカート3の利用者は、表示装置16に表示された商品選択補助情報に基づいて商品の選択が可能となり、商品購入判断を素早く行うことが可能となる。このとき、商品選択補助情報として顧客が商品選択を迷っている商品の価格、機能等の比較情報を表示装置16に表示することにより、売り場の係員を呼ぶことなく商品選択をより迅速に行うことができる。
【0085】
また、商品選択迷い状態となって、図16に示すように、同一購買領域3の領域滞在時間TPが長くなって基準値TPS以上となったときには、図8の処理において、ステップS30からステップS26に移行して、上記と同様に商品選択補助情報を表示装置16に表示することができ、さらに、商品選択迷い状態となって、図17に示すように、同一購買領域3内でショッピングカート3の往復移動回数が所定値以上となった場合には、図8の処理において、ステップS31からステップS26に移行して、上記と同様に商品選択補助情報を表示装置16に表示することができる。
【0086】
このようにして、各購買領域で商品選択迷い状態となる毎に、表示装置16に商品選択補助情報が表示されるので、顧客の買い物に要する時間を短縮することができると共に、店舗にとっても混雑を緩和することができる。
その後、買い物を終了して、ショッピングカート3を精算所に移動させると、POSシステム32に設けた移動経路データ通信部33との通信が可能となって、この移動経路データ通信部33から移動経路情報取得要求を受信したときには図8の移動経路情報収集処理においてステップS32からステップS33に移行して、ソフトウェアカウンタのカウント値Nに走行距離ΔLを乗算して総移動距離Lを算出し、次いで現在時刻から移動開始時刻を減算して店舗滞在時間を算出し、移動経路記憶領域に記憶されている通過位置情報、売り場位置情報、停止時間Tst、総移動距離L及び店舗滞在時間でなる移動経路情報と会員情報と、を移動経路データ通信部33に送信し、この送信が完了すると、移動経路記憶領域及び時刻記憶領域の記憶データを消去すると共に、ソフトウェアカウンタのカウント値Nを“0”にクリアし、さらに、会員情報及び特典情報を削除してから、移動経路情報取得処理を終了する。
【0087】
POSシステム32では、移動経路データ通信部33でショッピングカート3からの移動経路情報及び会員情報を取得すると、その移動経路情報をメモリに一時記憶する。そして、会員情報として会員であることが通知されているから図11のステップS75からステップS76に移行して、所定の記憶領域に格納されている、ショッピングカート3を利用した会員用の価格情報を利用し、商品情報入力部35から入力された購入商品情報に基づいて所定の精算処理を行って精算情報を算出する。
【0088】
そして、この精算情報と移動経路情報と会員情報とを利用者情報として、パーソナルコンピュータ40に送信する。
パーソナルコンピュータ40では、POSシステム32から精算情報、移動経路情報及び会員情報からなる利用者情報を受信すると、図13に示すデータ解析処理を実行する。このデータ解析処理では、利用者情報を受信したか否かを判定し(ステップS91)、利用者情報を受信したときにはステップS92に移行し、この場合、会員情報として会員であることが通知されているから、ステップS93に移行して、データベース43のこの会員情報の会員番号で特定される、この会員専用の移動経路情報及び精算情報の記憶領域に、受信した移動経路情報及び精算情報を格納する。
【0089】
そして、データベース43に格納された移動経路情報と精算情報とに基づいてマーケティングデータ生成処理を行う(ステップS95)。
このマーケティングデータ生成処理としては、停止時間Tstが“0”以外に設定されている位置座標X′,Y′と累積回転角度θaを抽出し、位置座標X′,Y′を売り場レイアウトとのマッチングをとることにより、どのエリアでショッピングカート3がどの方向を向いて停止していたかを検出することができ、これと精算情報とから停止位置で商品を購入したか否かを判断することができる。
【0090】
また、移動開始時刻から精算終了時の時刻とから算出される店舗内滞在時間に基づいて顧客毎の店舗内滞在時間を収集することができると共に、領域滞在時間も収集することができる。
さらに、停止時間Tstと精算情報に含まれる購入商品とを組み合わせることにより、商品を購入するために要した時間を算出することができる。
【0091】
さらにまた、データベースに格納されたショッピングカート3の利用した顧客毎の移動経路情報に基づいて、顧客の動線を判断して、買い物に効率の良い売り場配置の設定や顧客混雑の分散などの顧客動向を考慮したレイアウト設定を行うことができる。
このように、上記実施形態によると、ショッピングカート3にインクリメント型のロータリエンコーダ7と圧電式ジャイロ8とを設けることにより、ショッピングカート3の移動経路を、移動経路通りに正確に検出することができるという効果が得られる。このとき、顧客に移動経路を検出するための機器を所持させる必要がなく、顧客に煩わしさを与えることなく移動経路の検出を行うことができる。
【0092】
しかも、圧電式ジャイロ8で発生する累積誤差については、商品陳列棚21に配設された位置情報送信部22との間で通信を行うことにより、現在位置座標及び方位を補正することができ、この時点で圧電式ジャイロ8をリセットするので、累積誤差の影響を抑制することができる。
そして、顧客の移動経路を連続的に検出することができるので、同一購入領域内での往復移動回数を検出することができ、顧客が同一購入領域内で商品選択迷い状態となっていることを正確に検出することができ、この商品選択迷い状態を検出したときに、商品選択補助情報を表示装置16に表示して、顧客に商品の選択の助けになる商品選択補助情報を的確に提供することができる。
【0093】
また、買い物品の料金精算を行う精算所にショッピングカート3のコントロールユニット6で収集した移動経路情報を取得する移動経路情報取得手段を設けたので、顧客が買い物を始めてから料金精算するまでの移動経路情報を確実に取得することができ、精算所に設けたPOSシステムの精算情報と移動経路情報とを併せてデータベースに格納することにより、顧客の移動経路と購入品との関係を正確に把握することができ、顧客動向を正確に解析することができ、この解析結果を利用して顧客に効率良く買い物できる売り場レイアウトを設定することができる。
【0094】
さらに、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6では移動経路情報の収集のみを行い、移動経路の解析は他の処理装置(パーソナルコンピュータ40)を使用して行うので、演算処理装置10の演算負荷を軽減することができると共に、安価なCPUを適用することができる。
また、上述のように、POSシステム32では、精算を行う際に、ショッピングカート3から受信した会員情報、つまり、このショッピングカート3を利用した顧客に対して情報提供した、会員用の特典情報を反映した会員用価格情報に基づいて精算を行うから、商品情報入力部35により購入商品の商品情報を入力する入力操作員、いわゆるレジ打ち係が、会員用の特典情報を反映させるべきか、或いは非会員用の特典情報を反映させるべきか等を考慮する必要はない。したがって、レジ打ち係が、特典情報を考慮して例えば割引価格の入力操作等を行う必要はないから、レジ打ち係の負荷が増加することはなく、また、レジ打ち係の入力ミス等の発生も防止することができる。また、顧客は、特典を受けるための操作を何ら行う必要はなく、また、レジ打ち係も特典を反映させるための操作を行う必要はないから、顧客は、ショッピングカート3を利用するだけで、提供されるべき特典を漏れなく受けることができる。
【0095】
また、ショッピングカート3の利用者に対し、特典情報を提供し、これを反映させる際に、顧客は、特典を受けるにあたって顧客は何ら操作を伴うことなく特典を得ることができるから、例えば、クーポン券を用いる場合等のように、クーポン券の出し忘れや、クーポン券の提示が面倒なため、クーポン券を利用しない等といったことが生じることを回避することができ、単に商品購入を行うだけで、提供されている特典を漏れなく受けることができる。
【0096】
そして、このように、顧客は、何ら操作を行うことなく、単に商品購入を行うだけで、特典を得ることができ、この特典は、ショッピングカート3を利用しない場合に比較してより高特典となるように設定されているから、顧客のショッピングカート3を利用しようという意欲を向上させることができ、すなわちショッピングカート3の利用率を向上させることができる。なお、さらに、ショッピングカート3の利用を促すため、ショッピングカート3のカート置場4A、4Bや、図示しない買い物かご置場に、ショッピングカート3の利用者には利用者限定の特典がある旨の表示を行ったり、ショッピングカート3を利用すると共に、会員となればさらにお得な特典を得ることができる旨の表示等を行ったりするようにしてもよい。
【0097】
そして、このようにショッピングカート3の利用率を向上させることができるから、より多くの顧客についての移動経路情報及び精算情報を獲得することができる。したがって、より多くの顧客の移動経路情報や精算情報を獲得しこれに基づいてマーケティングデータを生成しこれに基づいてマーケティングを行うことによって、より有効なマーケティングを行うことができる。
【0098】
また、上述のように、特典情報を提供する方法としてショッピングカート3に設けた表意装置で行うようにしている。したがって、クーポン券等印刷物によって特典情報を提供する場合には、不要なごみの排出につながるが、クーポン券を用いずに表示装置6への表示により情報提示を行うから、不要なごみが排出することを回避することができる。
なお、上記実施形態においては、ショッピングカート3の固定車輪3aにインクリメント型のロータリエンコーダ7を設けて、車輪3aの前進及び後退を把握するようにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3の前進及び後退を、前後方向加速度センサを設けることにより検出するようにしてもよい。この場合には、ロータリエンコーダ7に代えて車輪3aの回転に応じて車輪速パルスを出力する車輪速センサを設けることができ、さらには、車輪3aの角速度をジャイロで検出して、その角速度を積分することにより、車輪3aの走行方向を検出することもでき、要はショッピングカート3の移動方向と移動距離とを測定可能なセンサを設けるようにすればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、走行距離ΔL及び累積回転角度θaに基づいて位置座標X′,Y′を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3の走行速度Vを検出することができる場合には、位置座標X′,Y′は下記(3)式及び(4)式に従って算出することができ、この他任意の推定航法(デッドレコニング)を適用することができる。
【0100】
X′=X+V・Δt・cosθa …………(3)
Y′=Y+V・Δt・sinθa …………(4)
ここで、Δtはサンプリング周期である。
【0101】
さらに、上記実施形態では、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6でデータ解析処理を行って、位置座標X′,Y′及び累積回転角度θa、売り場位置情報を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ショッピングカート3に配設したコントロールユニット6の演算処理装置10で位置情報送信部22から現在位置情報を取得する毎に、現在時刻及び前回のジャイロリセット時刻と記憶した各角速度ω及び走行情報Dとを位置情報送信部22を介してパーソナルコンピュータ40に送信して、パーソナルコンピュータ40で現在までの圧電式ジャイロ8のドリフト分を算出し、このドリフト分に基づいてそれまでに収集した角速度ωを補正し、補正後の角速度ωと累積回転角度θaとに基づいて前記(1)式及び(2)式の演算を行って位置情報を算出し、これを移動経路情報としてコントローラ6の演算処理装置10に送信するようにしてもよい。
【0102】
さらにまた、上記実施形態では、商品陳列棚21の上部に位置情報送信部22を配設した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、建物の壁面や天井或いは床面等の構造物に配設することができる。また、位置情報送信部22としてはブルーツースや無線LANのような近距離無線通信手段を、通信範囲を商品区分に合わせて制限して適用することができる。
【0103】
なおさらに、圧電式ジャイロ8の累積誤差を補正するには、位置情報送信部22を適用する場合に限らず、床面にランドマークを形成して、このランドマークを撮像装置で撮像することにより、現在位置情報を取得するようにしてもよく、この場合には、撮像装置で撮像した床面画像から光学式マウスと同様の処理を行うことにより、移動方向と移動速度を算出することができるので、上述した(3)及び(4)式によって位置座標X′,Y′を算出することができる。
【0104】
また、上記実施形態では、角速度を検出する手段として圧電式ジャイロを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の構成のジャイロを適用することができ、要はショッピングカート3の角速度(ヨーレート)を検出することができればよく、ジャイロ以外の角速度センサも適用することができる。
さらに、上記実施形態では、ショッピングカート3に搭載したコントロールユニット6に商品選択補助情報を記憶しておく場合について説明したが、これに限定されるものではなく、位置情報送信部22から商品選択補助情報をコントロールユニット6に送信するようにしてもよく、さらには、カート置場4A及び4Bにプログラム更新装置を設け、例えば深夜等の営業時間外に図18に示すプログラム更新処理を実行するようにしてもよい。
【0105】
このプログラム更新処理は、先ず、ステップS101で、アップデートする更新プログラムが存在するか否かを判定し、更新プログラムが存在しない場合には、そのまま処理を終了し、更新プログラムが存在する場合には、ステップS102に移行して、通信可能なショッピングカート3が存在するか否かを判定し、通信可能なショッピングカート3が存在しない場合にはそのまま処理を終了し、通信可能なショッピングカート3が存在する場合には、ステップS103に移行する。
【0106】
このステップS103では、該当するショッピングカート3の例えばMACアドレス等のID情報を取得し、次いでステップS104に移行して、取得したID情報に基づいて管理テーブルを参照して、該当するショッピングカート3が今回の更新プログラムのアップデートを完了しているか否かを判定し、アップデートが完了していないときにはステップS105に移行して、該当するショッピングカート3のコントロールユニット6に対して更新プログラムを送信してアップデートを行い、次いでステップS106に移行して、管理テーブル該当するID情報位置にアップデートの完了を記録してからステップS107に移行して、他の通信可能なID情報のショッピングカート3が存在するか否かを判定し、存在する場合には前記ステップS103に戻り、存在しない場合には処理を終了する。
【0107】
一方、前記ステップS104の判定結果が、更新プログラムのアップデートが完了しているときには直接ステップS107に移行する。このように、プログラム更新装置を設けることにより、商品選択補助情報の更新を、人手をかけることなく自動的に行うことができる利点がある。
また、上記実施の形態においては、利用者の移動経路情報を収集すると共に、特典情報を提供する場合について説明したが、特典情報の提供のみを行うようにしてもよく、この場合には、利用者は、ショピングカート3を利用して商品購入を行うだけで、特典情報で提示される特典を受けることができる。
【0108】
また、上記実施の形態においては、カードリーダ17aを用いて利用者が会員かどうかを認証する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、バーコードリーダを設け、会員コード読み取り式にしても良いし、指紋或いは声紋認証を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、表示装置16で情報表示を行うことにより、特典情報を提供する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、表示装置16と共にスピーカを設け、表示だけでなくスピーカによっても特典情報を提供するようにしてもよく、スピーカのみを設けるようにしてもよい。要は、ショッピングカート3の利用者に対して特典情報を提示することができればどのような方法であってもよい。
【0109】
また、上記実施の形態においては、ショッピングカート3の利用者に対し、会員か非会員に応じて、前記表1に示すように各種の特典を提供する場合について説明したが、これに限るものではなく、単にショッピングカート3の利用者か、利用者でないかに応じて特典内容を変更し、ショッピングカート3の利用者については会員及び非会員に関わらず、会員用の特典を提供するようにしてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、会員かどうかを認証する際に、その会員情報から会員個人を特定することができ、また、会員毎にその履歴をデータベース43に保有しているから、会員であるときには、会員毎に、その過去の購入履歴に応じて異なる特典を提供してもよい。例えば、ある商品を所定回数以上購入しているならば、この商品に対してさらに高特典となるように設定してもよく、また、例えば誕生日月や、電話番号の数字が特定の数字の人、或いは、会員登録期間が5年、10年等規定年数に達した人等に対して特別の特典を付与するようにしてもよい。
【0111】
この場合には、例えば、会員であることが認証されたときこの会員の購買履歴情報をデータベース43から獲得する購買履歴情報獲得手段と、この獲得した購買履歴情報に基づいてこの会員固有の特典情報を生成する個別特典情報生成手段とをパーソナルコンピュータ40に設け、これを、初期情報送信装置17を介してコントロールユニット6に送信すると共に、その特典情報を反映した会員固有の価格情報を生成し、これをPOSシステム32のメモリ38に格納する。そして、移動経路データ通信部33において、移動経路情報と共に、会員情報を含む会員情報を受信したとき、この会員情報に含まれる会員番号に基づいてこの会員に対応する価格情報を抽出し、この会員固有の価格情報に基づいて精算を行うようにすればよい。要は、会員が精算を行う場合には、この会員に対して設定した会員固有の特典情報に対応する価格情報に基づいて精算を行うようにすればよい。
【0112】
また、上記実施の形態においては、利用者が迷っているときにのみ、お買い得商品情報等を情報提供するようにしているが、ショピングカート3の利用者の現在位置及びその移動経路に沿って、利用者近傍の商品に対する特典情報と共にお買い得情報等、全ての顧客に対して提供されているサービス情報も表示するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、カート置場4A、4Bのそれぞれに認証装置としてのカードリーダ17aを設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、ショッピングカート3毎に認証装置としてのカードリーダ17aを設けてもよい。このように、ショッピングカート3毎に認証装置を設けることによって、ショッピングカート3がどの場所においてあっても、認証を行うことができる。
【0113】
また、上記実施の形態においては、特典情報の提示手段としてショピングカート3に、表示装置16を設けた場合について説明したが、さらに、例えば、商品陳列棚21等、利用者の移動可能経路の近傍に、スピーカや表示装置等の固定の特典情報提示装置を配置し、この特典情報提示装置からも特典情報の提供を行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、カードリーダ17aで認証を行ったかどうかに関わらず、ショッピングカート3を利用できる場合について説明したが、例えば、硬貨を投入したときロックが外れてショッピングカートが利用可能となり、ショッピングカートを返却したとき硬貨が返却されるように構成されているシステムの場合には、硬貨の代わりに認証装置を設け、正しく認証ができたときにロックが外れてショッピングカートの利用が可能となるように構成してもよい。この場合には、認証装置を備えた会員用カート置場と、硬貨投入により利用可能となる硬貨投入機構を備えた非会員用カート置場とを設ければよく、或いは、認証装置及び硬貨投入機構を備えたカート置場を設けてもよい。
【0114】
ここで、上記実施の形態において、エンコーダ7及び圧電式ジャイロ8が走行状態検出手段に対応し、図8のステップS14、S19〜S23の処理と、図9及び図10の処理と、メモリ11とが移動経路情報形成手段に対応し、図8のステップS35の処理と、図11のステップS78で移動経路情報を送信する処理と図13で移動経路情報をデータベースに格納する処理とが移動経路情報収集手段に対応し、表示装置16が特典情報提示手段に対応し、図11のステップS75〜S77の処理が特典情報反映手段に対応している。
【0115】
また、カードリーダ17a及び図12のステップS81、S82の処理が認証手段に対応し、図11のステップS78で精算情報を送信する処理と図13のステップS92及びS93の処理とが購買履歴収集手段に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】カート置場を示す平面図である。
【図3】ショッピングカートに配設したコントロールユニットの一例を示すブロック図である。
【図4】カート置場に配設した初期情報送信装置の一例を示すブロック図である。
【図5】商品陳列棚の位置情報送信部とショッピングカートとの位置関係を示す説明図である。
【図6】POSシステムの一例を示すブロック図である。
【図7】初期情報送信装置で実行する初期情報送信処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】コントロールユニットで実行する移動経路情報収集処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】コントロールユニットで実行する移動経路情報形成処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】コントロールユニットで実行する通過位置情報算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】POSシステムで実行するデータ取得処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】パーソナルコンピュータで実行する特典情報送信処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】パーソナルコンピュータで実行するデータ解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】ショッピングカートの移動経路を示す説明図である。
【図15】購買領域への複数進入する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図16】購買領域に滞在する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図17】購買領域内で複数回往復移動する形の商品選択迷い状態の説明に供する説明図である。
【図18】プログラム更新装置で実行するプログラム更新処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
1…店舗、2…出入口、3…ショッピングカート、3a…固定車輪、4A,4B…カート置場、5…ガイドバー、6…コントロールユニット、7…エンコーダ、8…圧電式ジャイロ、9…センサユニット、10…演算処理装置、11…メモリ、12…通信制御部、13…無線通信アンテナ、14…位置情報受信部、15…バッテリ、16…表示装置、17…初期情報送信装置、17a…カードリーダ、17b…カートスイッチ、21…商品陳列棚、22…位置情報送信部、31…精算所、32…POSシステム、33…移動経路データ通信部、34…アンテナ、35…商品情報入力部、36…表示部、37…演算処理装置、38…メモリ、40…パーソナルコンピュータ、43…データベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の移動経路情報を収集する顧客移動経路情報収集装置であって、
前記顧客が使用するショッピングカートに設けられ、その走行状態を検出する走行状態検出手段と、
当該走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいて前記ショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段と、
当該移動経路情報形成手段で形成した移動経路情報を前記ショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段と、
前記ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段と、
商品の精算を行う精算装置に設けられ、前記ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、前記ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で前記精算を行う特典情報反映手段と、を備えることを特徴とする顧客移動経路情報収集装置。
【請求項2】
前記ショッピングカート利用者用の特典は、前記ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されることを特徴とする請求項1記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項3】
前記特典情報提示手段は、前記移動経路情報形成手段で形成したショッピングカートの移動経路情報に基づいて前記ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に関する特典情報を提示することを特徴とする請求項2記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項4】
前記ショッピングカートの利用者が予め登録された会員かどうかを認証する認証手段と、
前記ショッピングカートを利用した会員の購買状況を収集しこれを会員毎に蓄積する購買履歴収集手段と、
前記認証手段で会員であることが認証されたとき、当該会員の購買履歴情報を、前記購買履歴収集手段から獲得する購買履歴情報獲得手段と、
当該購買履歴情報獲得手段で獲得した前記会員の購買履歴情報に基づいて前記会員個別の特典情報を生成する個別特典情報生成手段と、を備え、
前記特典情報提示手段は、前記個別特典情報生成手段で生成した前記会員個別の特典情報を提示することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項5】
前記認証手段は、前記ショッピングカートのカート置場に設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項1】
顧客の移動経路情報を収集する顧客移動経路情報収集装置であって、
前記顧客が使用するショッピングカートに設けられ、その走行状態を検出する走行状態検出手段と、
当該走行状態検出手段で検出した走行状態に基づいて前記ショッピングカートの移動経路情報を形成する移動経路情報形成手段と、
当該移動経路情報形成手段で形成した移動経路情報を前記ショッピングカート利用者の移動経路情報として収集する移動経路情報収集手段と、
前記ショッピングカートに設けられ、ショッピングカート利用者用の特典情報を提示する特典情報提示手段と、
商品の精算を行う精算装置に設けられ、前記ショッピングカートの利用者が商品の精算を行うとき、前記ショッピングカート利用者用の特典情報に応じた商品価格で前記精算を行う特典情報反映手段と、を備えることを特徴とする顧客移動経路情報収集装置。
【請求項2】
前記ショッピングカート利用者用の特典は、前記ショッピングカートの非利用者に対する特典よりも高特典となるように設定されることを特徴とする請求項1記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項3】
前記特典情報提示手段は、前記移動経路情報形成手段で形成したショッピングカートの移動経路情報に基づいて前記ショッピングカート利用者の現在位置近傍の商品に関する特典情報を提示することを特徴とする請求項2記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項4】
前記ショッピングカートの利用者が予め登録された会員かどうかを認証する認証手段と、
前記ショッピングカートを利用した会員の購買状況を収集しこれを会員毎に蓄積する購買履歴収集手段と、
前記認証手段で会員であることが認証されたとき、当該会員の購買履歴情報を、前記購買履歴収集手段から獲得する購買履歴情報獲得手段と、
当該購買履歴情報獲得手段で獲得した前記会員の購買履歴情報に基づいて前記会員個別の特典情報を生成する個別特典情報生成手段と、を備え、
前記特典情報提示手段は、前記個別特典情報生成手段で生成した前記会員個別の特典情報を提示することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の顧客移動経路情報収集装置。
【請求項5】
前記認証手段は、前記ショッピングカートのカート置場に設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載の顧客移動経路情報収集装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−128420(P2007−128420A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322231(P2005−322231)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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