説明

風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキス、及びその製造方法

【課題】茶葉感が強く、爽やかさを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキス、及び該生茶葉抽出エキスを含有させた茶飲料のような飲食品を提供すること。
【解決手段】生茶葉抽出エキスの製造方法において、(A)生茶葉を急速冷凍する工程、及び(B)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、或いは、更に、(C)生茶葉抽出エキスに酵素を添加する工程、による処理を採用することにより、風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを製造する。本発明は、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキスを提供すると共に、本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法は、複雑な工程を経ることなく、実用的な方法で風味・バランスや飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生茶葉の急速冷凍処理を用いて、風味バランスと飲みやすさを備えた香味豊かな生茶葉抽出エキスを製造する方法、及び該生茶葉抽出エキスを含有させた飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
お茶は、世界各地で広く普及した飲料であり、その中でも緑茶は、我が国において古くから、最も人々に親しまれた飲料である。現在、茶の製造には、各種の方法が用いられているが、緑茶の通常の製茶工程は、殺青工程、粗揉工程、揉念工程、中揉工程、精揉工程、乾燥工程からなり、製茶された荒茶を火入れ、篩分け、切断、合組、火入れ等の工程を経て仕上茶に加工し、緑茶として流通させる方法が普通に採られる方法である。また、現在は、緑茶等の茶飲料の原料として、茶抽出エキスの利用も盛んに行なわれている。
【0003】
茶飲料の調製に際しては、上記のとおり生茶葉の採摘後、加熱処理、乾燥を行い茶葉の加工を行なうのが通常の方法であるが、生茶葉の香味をそのまま生かして加工する方法も試みられている。また、その様な場合に、生茶葉を冷凍することで、香味の改善を試みる方法も開示されている。例えば、特開2005−160416号公報には、ツバキ科の常緑樹であるチャ(学名: Camellia sinensis (L) O. Kuntze )の生の葉を摘採後凍結処理し、凍結した茶葉を水蒸気蒸留して得られる留出液を緑茶飲料に配合することにより、フレッシュで耐熱性のある香気・香味が付与された密閉容器入り緑茶飲料を提供する方法が開示されている。
【0004】
また、特開2007−110990号公報には、生茶葉を凍結させる工程と、凍結された生茶葉を水と混合し、粉砕搾汁する工程と、得られた粉砕搾汁液を濾過し、抽出液を得る工程と、得られた抽出液を加熱する工程により、緑茶飲料原料液を製造することにより、加熱処理により香気成分が失われるのを防ぎながらも、酵素活性を抑制することによって、酸化が抑制され、且つ香気に優れた緑茶飲料原料液を製造する方法が開示されている。
【0005】
更に、特開平11−346702号公報には、生葉を洗浄し水で濡らした状態で真空庫内に入れ、真空引きすることにより前記水の気化熱で前記生葉を凍結させる前処理を施した後、真空凍結乾燥処理により乾燥させることにより、酸化を抑制し、生葉本来の香味と有効成分を変えることなく、長期保存に耐える各種生葉加工品を低コストで製造することが開示されている。
【0006】
また、特開2004−113090号公報には、破砕処理した萎凋処理前の生茶葉と、茶葉組織破壊酵素の溶解液とを混合し、発酵(タンニン酸化反応)、茶葉組織破壊酵素処理、および抽出処理を単一工程で行うことにより、苦渋味が少なく、コクと旨味を有する発酵茶葉抽出液を効率的に得ることを特徴とする発酵茶葉抽出液の製造方法が開示されている。更に、特開2007−135534号公報には、茶葉の生葉を弱アルカリ性温水に浸漬させた後に、所定の大きさにカットしてペースト状にし、更に真空凍結することにより、生葉の鮮度を極力落とさずに、水への分散性を改善でき、生葉本来の鮮やかな緑色と新鮮な香りと程好い渋味を高いバランスで有する緑茶ペーストを得ることを特徴とする水性の緑茶ペーストの製造方法が開示されている。
【0007】
上記のとおり、生茶葉の香味を利用した各種の茶飲料の製造方法が開示されているが、かかる方法を持ってしても、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキスを提供するという観点からは、今までに必ずしも満足のいく方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−346702号公報
【特許文献2】特開2004−113090号公報
【特許文献3】特開2005−160416号公報
【特許文献4】特開2007−110990号公報
【特許文献5】特開2007−135534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキス、該生茶葉抽出エキスを含有させた茶飲料のような飲食品を提供すること、及び、該生茶葉抽出エキスを、複雑な工程を経ることなく、実用的に製造する方法を提供することからなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、生茶葉抽出エキスの製造方法において、生茶葉を急速冷凍する工程、及び、凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、による処理を採用することにより、風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、生茶葉抽出エキスの製造方法において、(A)生茶葉を急速冷凍する工程、及び(B)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、による処理を含むことにより風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを製造する方法からなる。
【0011】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法により、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさの点においても優れた生茶葉抽出エキスを製造することができる。本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法においては、上記(A)及び(B)の工程に、更に、(C)生茶葉抽出エキスに酵素を添加する工程を付加することにより、旨味を向上させ、全体的な風味・バランスの良さや飲みやすさを向上させることができる。かかる場合の酵素としては、ぺクチナーゼ及び/又はタンナーゼを挙げることができる。
【0012】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法において、凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程は、カラム抽出により行なうことができる。かかる場合のカラム抽出は、抽出温度95〜40℃で行うことが好ましい。本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法により、風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを製造することができ、該生茶葉抽出エキスを含有させた飲食品を調製することができる。かかる飲食品としては、緑茶飲料を挙げることができる。
【0013】
すなわち、具体的には本発明は、
(1)生茶葉抽出エキスの製造方法であって、以下の工程:
(A)生茶葉を急速冷凍する工程、
(B)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、
による処理を含むことを特徴とする風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法や、
(2)生茶葉抽出エキスの製造方法であって、上記(1)記載の(A)及び(B)の工程に、更に、(C)生茶葉抽出エキスに酵素を添加する工程、による処理を含むことを特徴とする上記(1)記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法や、
(3)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程が、カラム抽出により行なわれることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法、
からなる。
【0014】
また、本発明は、
(4)カラム抽出が、95〜40℃で行われることを特徴とする上記(3)に記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法や、
(5)生茶葉抽出エキスに添加する酵素が、ペクチナーゼ及び/又はタンナーゼであることを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法や、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の生茶葉抽出エキスの製造方法により製造された風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスや、
(7)上記(6)記載の生茶葉抽出エキスを含有させたことを特徴とする飲食品や、
(8)飲食品が、緑茶飲料であることを特徴とする上記(7)に記載の飲食品、
からなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキス、及びその製造方法を提供する。本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法により、複雑な工程を経ることなく、実用的な方法で風味・バランスや飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを提供することができる。また、本発明の生茶葉抽出エキスを用いることにより、緑茶飲料のような香味に優れた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、生茶葉抽出エキスの製造方法において、(A)生茶葉を急速冷凍する工程、及び(B)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、或いは、更に、(C)生茶葉抽出エキスに酵素を添加する工程、による処理を採用することにより、風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを製造する方法からなる。
【0017】
本発明において用いられる茶葉は特に限定されないが、Camellia sinensisに属する茶葉等を用いることができる。
【0018】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法においては、生茶葉を急速冷凍により冷凍処理される。ここで定義する急速冷凍とは、実質的に茶葉の酵素活性がゼロになる0℃以下まで、冷却開始より1時間以内、好ましくは30分以内に冷却することであり、使用する装置としてはIQF凍結装置、ブライン凍結装置、急速冷凍庫などが挙げられる。本発明において好ましくは、IQF凍結装置を用いることができる。緩慢冷凍であると香味上好ましくなく、特に茶葉感が弱く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りが低くなり、渋味、雑味が強くなる傾向がある。ここで定義する緩慢冷凍とは常温の茶葉を脱気、冷却等の前処理を行わず、−10〜−30℃の雰囲気下の冷凍庫内にて保存し凍結を行うことである。生茶葉を緩慢冷凍すると、自己の酵素活性により発熱し、凍結するまでに長時間要するために品質が劣化する。
【0019】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法においては、凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する。本発明において、凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出するために用いられる抽出方法は、カラム抽出が好ましい。バッチ抽出では、カラム抽出と比較すると、茶葉感に欠け、渋味、雑味が強くなる傾向があり、全体的な香味バランスや飲みやすさの点においてもカラム抽出の方が好ましい。
【0020】
カラム抽出とは、抽出出口にストレーナーを備えた抽出容器に抽出原料を充填し、抽出容器の上部若しくは下部より抽出溶媒を供給し、抽出原料を対流させずに抽出する方法であり、高濃度の抽出液を得ることができる。装置としてはカラム抽出機やドリップ抽出機が挙げられる。本発明において好ましくはカラム抽出機を用いることができる。バッチ抽出とは、抽出容器に抽出原料と抽出溶媒を投入して攪拌抽出を行う方法である。
【0021】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法において、生茶葉抽出エキスの抽出時の温度は、95〜40℃が好ましく、更に好ましくは95〜70℃である。95℃を超えると加熱臭や劣化臭が発生し、かつ褐変することにより風味が悪くなるという問題があり、40℃未満であると香味上好ましくなく、特に茶葉感に欠け、渋味、雑味が強くなる傾向がある。本発明においては、凍結された生茶葉は粉砕やこれに類する処理を行わず、生茶葉そのままの形態で用いられる。生茶葉を粉砕すると、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りが低くなり、特に渋味、雑味が強くなる傾向がある。
【0022】
本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法において、生茶葉抽出エキスに酵素を添加して処理することができる。用いられる酵素としては、ぺクチナーゼ、タンナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼが挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ぺクチナーゼ又はタンナーゼであり、特に、好ましくはペクチナーゼとタンナーゼを併用することである。このような酵素処理を行うことにより、旨味が向上し、特に全体的な風味・バランスの良さや飲みやすさが向上する。
【0023】
本発明の生茶葉抽出エキスは様々な飲食品に含有させ、香味豊かな飲食品を製造することができる。例えば、清涼飲料、冷菓・デザート類である。中でも、緑茶飲料に含有させることが好ましい。飲料においては、本発明の生茶葉抽出エキスを飲料原料に含有させて、そのまま飲用する場合はもちろん、UHT殺菌やレトルト殺菌を施した容器詰め飲料に含有させることもできる。
【0024】
本発明の生茶葉エキスやこれを含有させた飲食品においては渋味が低減されているが、渋味の原因の一つにタンニン、カテキンが挙げられる。タンニンの測定は、酒石酸鉄比色法、フォーリンチオカルト法などの方法で測定することができる。本発明においてカテキンの測定は、HPLC法で測定することができる。本発明において香気成分の測定は、香気成分の抽出濃縮操作を行なった上でGC法で測定することができる。抽出濃縮操作としてはヘッドスペース法、固相抽出法、固相マイクロ抽出(SPME)法、溶剤抽出法、スターバー抽出(SBSE)法などの方法が挙げられる。
【0025】
本発明の官能評価に用いられている評価項目において、「茶葉感」とは生葉から感じる滋味を表現し、「爽やかさ」とは生葉のもつ新鮮香や軽い青さを表し、「青臭さ」とは好ましくない草様の青臭を意味し、「みずみずしさ」とはみる芽香があり後味がスッキリしていることであり、「甘い香り」とは華やかで蜜のような香りがすることであり、「渋味」とは飲んだ後に舌に残る渋みを指し、「旨味」とは飲んだ後に感じる旨味のことで、「雑味」とは舌にざらつきを伴う収斂味のことで、「風味・バランスの良さ」とは香りと呈味の一体感を指し、「飲みやすさ」とは喉越しよく飲める感覚を評価する項目である。
【0026】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例1】
【0027】
[冷凍方法について(急速冷凍、緩慢冷凍)条件No.1,2]
<No.1>:洗浄した生茶葉をIQF凍結装置にて20分間処理し、生茶葉の温度を0℃に冷却した後、−20℃の冷凍庫で1ヶ月保存した。次にこの凍結生茶葉400gをカラム抽出機に充填し、カラム抽出を行った。90℃の熱水をカラム下部より通液し、カラム上部より抽出液を得、生茶葉の3倍量である1200gの抽出液を得た。次に、液量に対して0.03%(w/w)のビタミンCを加え、3000rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.2)で濾過を行なった。得られた抽出液を重曹でpH6.0に調整したのち、80℃ 10分間の殺菌を行い、生茶葉抽出エキスを得た。
【0028】
<No.2>:実施例1において、IQF凍結装置を使用せず、洗浄後−20℃の冷凍庫にて保存した。生茶葉の温度は冷凍開始より36時間後に0℃に達した。そのまま−20℃の冷凍庫で1ヶ月保存した。以降は実施例1と同様にして生茶葉抽出エキスを得た。得られた抽出液をBrix 0.2に希釈し、ビタミンC、重曹を用いてpH6.0になるように調整した飲料を作成し、官能評価を行った。官能評価は、7人の専門パネルにより以下の要領にて行った。
【0029】
<茶葉感、爽やかさ、青臭さ、みずみずしさ、甘い香り、渋味、旨味および雑味は>:1点が弱い、2点は少し弱い、3点は普通、4点は少し強い、5点は強い、で評価した。<風味・バランスの良さ、飲みやすさは>:1点が悪い、2点が少し悪い、3点がどちらでもない、4点が少し良い、5点が良い、で評価した。
【0030】
[結果]
結果を、表1に示す。本発明の製造方法において、急速冷凍を採用して他の工程と組み合わせることにより、緩慢な冷凍を行った場合と比較して、特に茶葉感に富み、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りの評価が高くなり、渋味、雑味が抑えられる。また、全体的な風味・バランスや飲みやすさの点においても優れている結果であった。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
[抽出方法について(カラム抽出、バッチ抽出)条件No.1,8]
<No.8>:洗浄した生茶葉をIQF凍結装置にて20分間処理し、0℃に冷却した後、−20℃の冷凍庫で1ヶ月保存した。この凍結生茶葉 200gに対し、3倍量である600gの90℃の熱水に入れ、時々攪拌しながら1分間バッチ抽出を行った。次に、液量に対して0.03%(w/w)のビタミンCを加え、3000rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.2)で濾過を行なった。得られた抽出液を重曹でpH6.0に調整したのち、80℃10分間の殺菌を行い、生茶葉抽出エキスを得た。官能評価は、実施例1と同様に実施した。
【0033】
[結果]
結果を表2に示す。本発明の製造方法において、カラム抽出を採用して他の工程と組み合わせることにより、バッチ抽出を行った場合と比較して、茶葉感に富み、特に渋味、雑味が非常に低く抑えられる。また、全体的な風味・バランスや飲みやすさの点においても優れている結果であった。また、香気成分の分析の結果を以下に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
<香気の分析条件>
生茶葉抽出エキスをBrix 0.2になるように希釈し、サンプルとした。サンプル10mlに対し、内部標準として10ppbのEthyl Benzoate溶液を10μl添加した。塩化ナトリウムを3g添加したあと、固相マイクロ抽出(SPME)法を用いて抽出し、GC/MSにて分析を行った。抽出条件:60℃、30分;脱着温度:240℃;GC:Agilent6890N;検出器:Agilent5973;カラム:TC−WAX 60m×0.25μm×I.D.0.25mm;温度:70℃(1分)→240℃ 昇温 4℃/分
【0036】
結果を、表3に示す。下記の香気成分の分析結果より、カラム抽出を採用して他の工程と組み合わせることにより、野草臭であり低級茶葉の指標となるtrans-2-hexenalやcis-3-hexenyl acetateは低く抑えられており、官能評価の茶葉感が高くなる点、青臭さが低くなる点と相関していることがわかる。
【0037】
【表3】

【実施例3】
【0038】
[抽出方法について(カラム抽出)条件No.1、3、4,5,6]
<No.3>:No.1において、抽出を70℃の熱水で行う以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
<No.4>:No.1において、抽出を55℃の温水で行う以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
<No.5>:No.1において、抽出を40℃の温水で行う以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
<No.6>:No.1において、抽出を10℃の冷水で行う以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
官能評価は、実施例1と同様に実施した。
【0039】
[結果]
結果を表4に示す。本発明の製造方法において、抽出温度を比較的高くして他の工程と組み合わせることにより、特に茶葉感に富み、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りの評価が高くなり、渋味、雑味が抑えられる。また、全体的な風味・バランスや飲みやすさの点においても優れている結果であった。以上の結果から、抽出温度は95〜40℃が好ましく、95〜70℃が更に好ましい。
【0040】
【表4】

【0041】
香気成分の分析結果を表5に示す。表5の香気成分の分析結果より、カラム抽出による抽出温度を高くするほど、野草臭であり低級茶葉の指標となるcis-3-hexenyl acetateは低く抑えられ、フレッシュな爽やかさの指標となるcis-3-hexenolは概ね高くなり、cis-3-hexenol/cis-3-hexenyl acetateの値は高くなることがわかる。以上の香気分析結果は、官能評価の爽やかさ、みずみずしさが高い点と相関していることがわかる。
【0042】
【表5】

【実施例4】
【0043】
[生茶葉の粉砕処理の有無 条件No.1、7、8、9]
[方法]:
<No.7>:No.1において、凍結生茶葉400gをミキサー(パナソニック株式会社製ミキサーMX−X57)にて粉砕してからカラム抽出した以外はNo.1と同様にし、生茶葉抽出エキスを得た。
<N0.9>:No.1において得られた凍結生茶葉200gに対し、3倍量である600gの90℃の熱水に入れミキサー(パナソニック株式会社製ミキサーMX−X57)にて1分間粉砕し、バッチ抽出した。次に、液量に対して0.03%(w/w)のビタミンCを加え、3000rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.2)で濾過を行なった。得られた抽出液を重曹でpH6.0に調整したのち、80℃、10分間の殺菌を行い、生茶葉抽出エキスを得た。(No.8は実施例2にて記載)官能評価は、実施例1と同様に実施した。
【0044】
[結果]
結果を、表6(カラム抽出)及び表7(バッチ抽出)に示す。本発明の製造方法において、生茶葉を粉砕処理に供さず、生茶葉そのままの形態で用いて他の工程と組み合わせることにより、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りの評価が高くなり、特に渋味、雑味が抑えられる。
【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【実施例5】
【0047】
[生茶葉の酵素処理の有無 条件No.1、12、13、14]
<No.12>:No.1において得られた凍結生茶葉400gをカラム抽出機に充填し、カラム抽出を行った。90℃の熱水をカラム下部より通液し、カラム上部より抽出液を得、生茶葉の3倍量である1200gの抽出液を得た。次に、液量に対して0.03%(w/w)のビタミンC、0.005%(w/w)のペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム株式会社製)を加え、40℃で1時間攪拌反応させた。反応の後、3000rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.2)で濾過を行なった。得られた抽出液を重曹でpH6.0に調整したのち、80℃、10分間の殺菌を行い、生茶葉抽出エキスを得た。
【0048】
<No.13>:No.12において、ペクチナーゼG「アマノ」の代わりに0.0003%(w/w)のタンナーゼFKT50(キッコーマン株式会社製)を使用した以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
<No.14>No.12においてペクチナーゼG「アマノ」に加え0.0003%(w/w)のタンナーゼFTK50(キッコーマン株式会社製)を使用した以外は同様にして生茶葉抽出エキスを得た。
官能評価は、実施例1と同様に実施した。
【0049】
[結果]
結果を表8に示す。本発明の製造方法において、酵素処理工程を他の工程と組み合わせることにより、旨味の評価が高くなり、特にぺクチナーゼとタンナーゼを併用することにより、全体的な風味・バランスや飲みやすさの点において優れた生茶葉抽出エキスを製造できることがわかった。
【0050】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、茶葉感が強く、爽やかさ、みずみずしさ、甘い香りを有し、渋味や雑味が低減され、全体的な風味・バランスや飲みやすさを備えた優れた香味の生茶葉抽出エキス、及びその製造方法を提供する。本発明の生茶葉抽出エキスの製造方法により、複雑な工程を経ることなく、実用的な方法で風味・バランスや飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスを提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生茶葉抽出エキスの製造方法であって、以下の工程:
(A)生茶葉を急速冷凍する工程、
(B)凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程、
による処理を含むことを特徴とする風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法。
【請求項2】
生茶葉抽出エキスの製造方法であって、請求項1記載の(A)及び(B)の工程に、更に、(C)生茶葉抽出エキスに酵素を添加する工程、
による処理を含むことを特徴とする請求項1記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法。
【請求項3】
凍結された不粉砕生茶葉から生茶葉抽出エキスを抽出する工程が、カラム抽出により行なわれることを特徴とする請求項1又は2に記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法。
【請求項4】
カラム抽出が、95〜40℃で行われることを特徴とする請求項3に記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法。
【請求項5】
生茶葉抽出エキスに添加する酵素が、ぺクチナーゼ及び/又はタンナーゼであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキスの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の生茶葉抽出エキスの製造方法により製造された風味バランスと飲みやすさを備えた生茶葉抽出エキス。
【請求項7】
請求項6記載の生茶葉抽出エキスを含有させたことを特徴とする飲食品。
【請求項8】
飲食品が、緑茶飲料であることを特徴とする請求項7に記載の飲食品。


【公開番号】特開2011−130740(P2011−130740A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295163(P2009−295163)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】