説明

風通組織織物、風通組織織物の製造方法、二重織織物、二重織織物の製造方法

【課題】 少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体を得ることができる風通組織織物を提供すること。
【解決手段】 第1の布地10と第2の布地20を有する二重組織を有し、経方向又は緯方向に第1の間隔p1で第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた風通組織を有する織物であって、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方に、第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた方向と直交する方向に、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸30を、第2の間隔p2で用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少量の繊維を用いながら纏まりのある織物となる風通組織織物及び二重織織物に関する。また、本発明は繊維として絹を用いた場合には、足暖用具・膝掛け・ショールに用いるのに好適な採暖用織物として利用することができる風通組織織物及び二重織織物に関する。
【背景技術】
【0002】
安眠を得るためには、身体を一定の温度に保つ必要があるといわれている。特に寒い冬場には、冷える足を暖めるために電気炬燵等のフットウオーマーが使用されることがある。そこで、本出願人はコンパクトに収納ができるとともに、電気等の熱源を使用せずに人体を暖めることでき、しかも肌触りの良く人体に無害な採暖用織物を提案している(例えば、本出願人の提案に係る特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には風通組織を利用したインテリア用ふくれ織物が提案されている。このようなインテリア用ふくれ織物では、高収縮糸条と低収縮糸条を経糸および緯糸共に1:1の配列で用いて,ジャガード織機により風通組織を持ち,低収縮糸条が風通組織の表組織に,高収縮糸条が風通組織の裏組織になるように組織した風通組織を有する柄織物を用いている。
【特許文献1】実用新案登録第3110569号公報
【特許文献2】特開平7−82654号公報 [0002]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者が鋭意研究を係属したところ、当該採暖用織物の為には、プリーツ状の皺を効果的に形成できる織物構造が必要であることが判明した。また、このようにプリーツ状の皺を形成すると、少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体を得ることができる。そこで、このような性状の織物構造体を得るための織物が必要とされてきた。また、特許文献2の風通組織では、高収縮糸条と低収縮糸条を経糸および緯糸共に1:1の配列で用いており、形成されるふくれは高収縮糸条と低収縮糸条の配列により定まり、採暖用織物のプリーツ状の皺としては適さないという課題があった。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するもので、少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体を得ることができる風通組織織物、風通組織織物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は上述した課題を解決するもので、少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体を得ることができる二重織織物、二重織織物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する第1の発明の風通組織織物は、図1に示すように、第1の布地10と第2の布地20を有する二重組織を有し、経方向又は緯方向に第1の間隔p1で第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた風通組織を有する織物であって、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方に、第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた方向と直交する方向に、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸30を、第2の間隔p2で用いることを特徴とするものである。
【0007】
このように構成された織物組織においては、第1の間隔p1で第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させているので、経方向又は緯方向の風通組織が織られる。高収縮糸30は、第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた方向と直交する方向に、第2の間隔p2で用いられるので、一方向で交差する風通組織と比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸30の収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で交差する風通組織と比較して風通組織のふくれ状態を柔軟に定めることができる。高収縮糸30の収縮比率は、例えば第1の間隔p1と第2の間隔p2の比、織物を構成する繊維と比較した場合の高収縮糸の繊維材料としての収縮率、高収縮糸30として用いる糸の太さや本数、等を適宜に選択して定められる。
【0008】
上記目的を達成する第2の発明の風通組織織物は、図2に示すように、第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第1の横糸(51a、51b)を通して織られる第1の布地12と、第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第2の横糸(52a、52b)を通して織られる第2の布地22と、第1の布地12と第2の布地22とを、緯方向に第3の間隔p3で交差させた経方向風通組織80を有する織物であって、風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸32a、32bを、第4の間隔p4で用いることを特徴としている。
【0009】
このように構成された織物組織においては、第1の布地12と第2の布地22の表裏を緯方向に第3の間隔p3で交差させる構造としているので、経方向風通組織80が織られる。高収縮糸32a、32bは、第1の布地12と第2の布地22の表裏を交差させた方向と直交する横方向に、第4の間隔p4で用いられる。そこで、経方向風通組織のみと比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸32a、32bの収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で交差する風通組織と比較して風通組織のふくれ状態を柔軟に定めることができる。
【0010】
好ましくは、第2の発明の風通組織織物において、経方向風通組織80を境界として、第1の布地12と第2の布地22が緯方向に交差した領域では、第1の布地12として第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第2の横糸(52a、52b)を通して織られ、第2の布地22として第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第1の横糸(51a、51b)を通して織られる構造とすると、経方向風通組織80を境界として、表地と裏地が第1の布地12と第2の布地22で交代しても横糸(51a、51b、52a、52b)については交代しなくて済むから、織機の横糸織の制御が簡単に行える。
【0011】
上記目的を達成する第3の発明の風通組織織物は、図5に示すように、第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第1の横糸(71a、71b)を通して織られる第1の布地14と、第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第2の横糸(72a、72b)を通して織られる第2の布地24と、第1の布地14と第2の布地24とを、経方向に第5の間隔p5で交差させた緯方向風通組織90を有する織物であって、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸34を、第6の間隔p6で用いることを特徴としている。
【0012】
このように構成された織物組織においては、第1の布地14と第2の布地24の表裏を経方向に第5の間隔p5で交差させる構造としているので、緯方向風通組織90が織られる。高収縮糸32a、32bは、第1の布地14と第2の布地24の表裏を交差させた方向と直交する縦方向に、第6の間隔p6で用いられる。そこで、緯方向風通組織のみと比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸32a、32bの収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で交差する風通組織と比較して風通組織のふくれ状態を柔軟に定めることができる。
【0013】
好ましくは、第3の発明の風通組織織物において、緯方向風通組織90を境界として、第1の布地14と第2の布地24が経方向に交差した領域では、第1の布地14として第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第2の横糸(72a、72b)を通して織られ、第2の布地24として第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第1の横糸(71a、71b)を通して織られる構造とすると、緯方向風通組織90を境界として、表地と裏地が第1の布地14と第2の布地24で交代しても横糸(71a、71b、72、72b)については交代しなくて済むから、織機の横糸織の制御が簡単に行える。
【0014】
好ましくは、第2又は第3の発明の風通組織織物において、第1の布地(12、14)又は第2の布地(22、24)の少なくとも一方が平織であるとよい。この場合、第1の布地が平織である場合は、第1の縦糸(41、61)と第2の縦糸(42、62)が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、第1の横糸(51、71)が当該織物を構成する糸となる。また、第2の布地が平織である場合は、第3の縦糸(43、63)と第4の縦糸(44、64)が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、第2の横糸(52、72)が当該織物を構成する糸となる。平織は縦糸横糸交互に浮き沈みする組織で、交錯点が多く薄手で摩擦に強くなるという性質がある。平織は縦糸2本と横糸2本から織れる織物の基本構造であるため、織機の構造が簡単ですみ、織物の生産効率が高くなる。
【0015】
なお、第2の発明の風通組織織物で、第1の布地12又は第2の布地22の少なくとも一方が平織の場合において、請求項3のように、経方向風通組織80を境界として、第1の布地14と第2の布地24が緯方向に交差した領域では、表地と裏地が第1の布地14と第2の布地24で交代しても横糸71、72については交代しない構造とする場合には、次のようになる。第1の布地が平織である場合は、第1の縦糸41と第2の縦糸42が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、経方向風通組織80を境界として交差前では第1の横糸51が当該織物を構成し、交差後は第2の横糸52が当該織物を構成する糸となる。第2の布地が平織である場合は、第3の縦糸43と第4の縦糸44が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、緯方向風通組織90を境界として交差前では第2の横糸52が当該織物を構成し、交差後は第1の横糸51が当該織物を構成する糸となる。なお、第1の布地12又は第2の布地22の少なくとも一方が平織に代えて、後に述べる綾織又は朱子織の場合も同様である。
【0016】
また、第3の発明の風通組織織物で、第1の布地14と第2の布地24の少なくとも一方が平織の場合において、請求項5のように、緯方向風通組織90を境界として、第1の布地14と第2の布地24が経方向に交差した領域では、表地と裏地が第1の布地14と第2の布地24で交代しても横糸71、72については交代しない構造とする場合には、次のようになる。第1の布地が平織である場合は、第1の縦糸61と第2の縦糸62が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、緯方向風通組織90を境界として交差前では第1の横糸71が当該織物を構成し、交差後は第2の横糸72が当該織物を構成する糸となる。第2の布地が平織である場合は、第3の縦糸63と第4の縦糸64が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、緯方向風通組織90を境界として交差前では第2の横糸72が当該織物を構成し、交差後は第1の横糸71が当該織物を構成する糸となる。なお、第1の布地14又は第2の布地24の少なくとも一方が平織に代えて、後に述べる綾織又は朱子織の場合も同様である。
【0017】
好ましくは、第2又は第3の発明の風通組織織物において、第1の布地(12、14)又は第2の布地(22、24)の少なくとも一方があや織であってもよい。この場合、第1の布地があや織である場合は、第1の縦糸(41、61)が当該あや織を構成する一本の糸であり、第2の縦糸(42、62)が当該あや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、第1の横糸(51、71)が第1の縦糸(41、61)及び第2の縦糸(42、62)と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸となる。また、第2の布地があや織である場合は、第3の縦糸(43、63)が当該あや織を構成する一本の糸であり、第4の縦糸(44、64)が当該あや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、第2の横糸(52、72)が第3の縦糸(43、63)及び第4の縦糸(44、64)と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸となる。あや織は縦糸3本と横糸3本から織れる織物の三原組織であるが、縦糸横糸4本以上からなる綾織も種々あり、5枚斜紋、8枚斜紋とも呼ばれる。
【0018】
好ましくは、第2又は第3の発明の風通組織織物において、第1の布地(12、14)又は第2の布地(22、24)の少なくとも一方が朱子織であってもよい。この場合、第1の布地が朱子織である場合は、第1の縦糸(41、61)が当該朱子織を構成する一本の糸であり、第2の縦糸(42、62)が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、第1の横糸(51、71)が第1の縦糸(41、61)又は第2の縦糸(42、62)と所定飛び数で交錯する所定本数の糸となる。また、第2の布地が朱子織である場合は、第3の縦糸(43、63)が当該朱子織を構成する一本の糸であり、第4の縦糸(44、64)が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、第2の横糸(52、72)が第3の縦糸(43、63)又は第4の縦糸(44、64)と所定飛び数で交錯する所定本数の糸となる。朱子織は糸の曲がり数が少ないので、表面は滑らかで糸密度は多くなり、生地は厚手でやわらかで光沢に富んだ織物となる。朱子織では交錯点は隣り合わず、しかも一定間隔になっており、5枚朱子、7枚朱子と呼ばれている。
【0019】
上記目的を達成する第4の発明の二重織織物は、例えば図7に示すように、第1の縦糸141と第2の縦糸142を交差させながら第1の横糸(151a、151b)を通して織られる第1の布地16と、第3の縦糸143と第4の縦糸144を交差させながら第2の横糸(152a、152b)を通して織られる第2の布地26と、第1の布地16と第2の布地18とを、緯方向に第7の間隔p7で連結させる経方向連結組織82を有する二重織織物であって、前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸36a、36bを、第8の間隔p8で用いる構成としている。
【0020】
このように構成された二重織織物においては、第1の布地16と第2の布地26を緯方向に第7の間隔p7で連結させる経方向連結組織82を有するので、2枚の布地は二重織織物を構成する。高収縮糸36a、36bは、第1の布地16と第2の布地26を経方向連結組織82で連結させた方向と直交する横方向に、第8の間隔p8で用いられる。そこで、経方向連結組織82のみ二重織織物に存在する場合と比較して、二重織織物の纏まりがあるとあると共に、高収縮糸36a、36bの収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で連結する二重織織物と比較して二重織織物のふくれ状態を柔軟に定めることができる。
【0021】
上記目的を達成する第5の発明の二重織織物は、例えば図9に示すように、第1の縦糸161と第2の縦糸162を交差させながら第1の横糸(171a、171b)を通して織られる第1の布地18と、第3の縦糸163と第4の縦糸164を交差させながら第2の横糸(172a、172b)を通して織られる第2の布地28と、第1の布地18と第2の布地28とを、経方向に第9の間隔p9で連結させる緯方向連結組織92を有する織物であって、二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸38を、第10の間隔p10で用いる構成としている。
【0022】
このように構成された二重織織物においては、第1の布地18と第2の布地28を経方向に第9の間隔p9で連結させる緯方向連結組織92を有するので、2枚の布地は二重織織物を構成する。高収縮糸38は、第1の布地18と第2の布地28を緯方向連結組織92で連結させた方向と直交する横方向に、第10の間隔p10で用いられる。そこで、緯方向連結組織92のみ二重織織物に存在する場合と比較して、二重織織物の纏まりがあるとあると共に、高収縮糸38の収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で連結する二重織織物と比較して二重織織物のふくれ状態を柔軟に定めることができる。
【0023】
好ましくは、第4又は第5の発明の二重織織物において、第1の布地(16、18)又は第2の布地(26、28)の少なくとも一方が平織であるとよい。この場合、第1の布地が平織である場合は、第1の縦糸(141、161)と第2の縦糸(142、162)が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、第1の横糸(151、171)が当該織物を構成する糸となる。また、第2の布地が平織である場合は、第3の縦糸(143、163)と第4の縦糸(144、164)が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、第2の横糸(152、172)が当該織物を構成する糸となる。また、第4又は第5の発明の二重織織物において、第1の布地(16、18)又は第2の布地(26、28)の少なくとも一方があや織又は朱子織であってもよい。
【0024】
好ましくは、本発明の風通組織織物及び二重織織物において、当該織物を構成する繊維として天然繊維、合成繊維、再生繊維の少なくとも何れか1種類を用いるとよい。天然繊維には、例えば絹や綿を用いることが出来る。合成繊維は、炭化水素化合物よりなるものに限らず、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維など各種の材料を用いることができる。
【0025】
好ましくは、本発明の風通組織織物及び二重織織物において、当該高収縮糸を構成する繊維としてナイロン、ポリエステル、又は強撚性繊維の少なくとも何れか1種類を用いるとよい。また、高収縮糸を用いる場合に、必要とする風通組織織物のフクレに応じて、織物を構成する繊維と比較して収縮率がどの程度高い繊維材料を用いるか、高収縮糸30として用いる糸の太さや本数を適宜に選択し、さらに風通組織織物の経緯方向風通組織の繰り返し単位(p1、p3、p5)と高収縮糸の繰り返し単位(p2、p4、p6)との比、又は二重織織物の経緯方向連結組織の繰り返し単位(p7、p9)と高収縮糸の繰り返し単位(p8、p10)との比を考慮して定めることができる。
【0026】
好ましくは、本発明の風通組織織物又は二重織織物において、例えば図11に示すように、当該織物を構成する繊維として絹等の繊維を用い、当該高収縮糸を織り込む組織をなす布の当該高収縮糸と同一又は直交する方向に、織物を構成する繊維の径よりも広い幅を有するプラスチック製フィルム糸180を第11の間隔p11で用いるとよい。第11の間隔は適宜に選定できるが、例えば風通組織織物の経緯方向風通組織の繰り返し単位、二重織織物の経緯方向連結組織の繰り返し単位、高収縮糸の繰り返し単位を基準として、当該繰り返し単位と同じ又はこれにより細かい繰り返し単位を用いるとよい。
【0027】
このように構成された風通組織織物又は二重織織物においては、プラスチック製フィルム糸180が織物を構成する繊維の損傷を防止して、風通組織織物又は二重織織物の耐久性を増すので、例えば足暖用具・膝掛け・ショールに半年以上用いても、風通組織織物又は二重織織物が有する少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体の状態が維持される。
【0028】
上記目的を達成する第1の方法発明としての風通組織織物の製造方法は、図4に示すように、第1の布地12を、第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第1の横糸(51a、51b)を通して織るステップ(S102)と、第2の布地22を、第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第2の横糸(52a、52b)を通して織るステップ(S104)と、この第1の布地12と第2の布地22とを、緯方向に第3の間隔p3で交差させて経方向風通組織を形成するステップ(S106、S108)とを有する風通組織を有する織物の製造方法であって、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸(32a、32b)を、第4の間隔p4で用いるステップ(S114、S116、S118)を有することを特徴とする。
【0029】
上記目的を達成する第2の方法発明としての風通組織織物の製造方法は、図6に示すように、第1の布地14を、第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第1の横糸(71a、71b)を通して織るステップ(S202)と、第2の布地24を、第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第2の横糸(72a、72b)を通して織るステップ(S204)と、この第1の布地14と第2の布地24とを、経方向に第5の間隔p5で交差させて緯方向風通組織を形成するステップ(S206、S208)とを有する風通組織を有する織物の製造方法であって、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸34を第6の間隔p6で用いるステップ(S200)を有することを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成する第3の方法発明としての二重織織物の製造方法は、図8に示すように、第1の布地16を、第1の縦糸141と第2の縦糸142を交差させながら第1の横糸(151a、151b)を通して織るステップ(S302)と、第2の布地26を、第3の縦糸143と第4の縦糸144を交差させながら第2の横糸(52a、52b)を通して織るステップ(S304)と、この第1の布地16と第2の布地26とを、緯方向に第7の間隔p7で連結させて経方向連結組織を形成するステップ(S306、S308)とを有する製造方法であって、二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸(36a、36b)を第8の間隔p8で用いるステップ(S314、S316、S318)を有することを特徴とする。
【0031】
上記目的を達成する第4の方法発明としての二重織織物の製造方法は、図10に示すように、第1の布地18を、第1の縦糸161と第2の縦糸162を交差させながら第1の横糸(171a、171b)を通して織るステップ(S402)と、第2の布地28を、第3の縦糸163と第4の縦糸164を交差させながら第2の横糸(172a、172b)を通して織るステップ(S404)と、この第1の布地18と第2の布地28とを、経方向に第9の間隔p9で連結させて緯方向連結組織を形成するステップ(S406、S408)とを有する二重織織物の製造方法であって、二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸38を第10の間隔p10で用いるステップ(S400)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の風通組織織物によれば、経緯の何れか一方向で交差する風通組織と比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸の収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で交差する風通組織と比較してふくれ状態を柔軟に定めることができる。そこで、袋状又は筒状の多重織物として適している。また、風通組織織物を用いて足暖用具・膝掛け・ショール等の繊維組成物を製作すれば、当該繊維組成物がコンパクトに収納できるとともに、保温性も高いため人体を暖めることでき、しかも薄手で肌触りもよい。
【0033】
また、本発明の二重織織物によれば、経緯の何れか一方向で連結させる二重織組織と比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸の収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で連結する二重織組織と比較してふくれ状態を柔軟に定めることができる。そこで、袋状又は筒状の多重織物として適している。好ましくは、当該織物を構成する繊維として絹等の繊維を用い、当該高収縮糸を織り込む組織をなす布の当該高収縮糸と同一又は直交する方向に、織物を構成する繊維の径よりも広い幅を有するプラスチック製フィルム糸を第11の間隔で用いると、ピリングが防止され、肌触りの良さが長持ちする。
【0034】
本発明の風通組織織物又は二重織織物を用いた織物構造体は、例えば繊維に触媒を分有させた高機能性材料とすることで、水質汚濁の防止や大気汚染の防止に有効な触媒の担体としても用いることができる。そこで、このような高機能性繊維でも効果的にプリーツ状の皺を形成すると、例えば多孔質材料を触媒の担体として用いた場合と比較して、軽量化ができると共に空気抵抗も低くなり、好ましいという性質がある。
【0035】
本発明の風通組織織物の製造方法によれば、通常の二重組織の織物を経緯の何れか一方向で交差させる風通組織の製造方法において、前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方であって、風通組織の交差方向と直交方向に、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を用いるステップを加えているだけなので、従来の風通組織の織り方を基本として高収縮糸を織りこむ工程を加えればよく、従来の織機を用いて織ることが容易に行える。そこで、袋状又は筒状の多重組織織物の製造方法として適している。
【0036】
本発明の二重織織物の製造方法によれば、通常の二重組織の織物を経緯の何れか一方向で連結させる二重織織物の製造方法において、前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方であって、連結方向と直交方向に、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を用いるステップを加えているだけなので、従来の風通組織の織り方を基本として高収縮糸を織りこむ工程を加えればよく、従来の織機を用いて織ることが容易に行える。そこで、袋状又は筒状の多重織物の製造方法として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施例を示す二重組織の風通組織織物の織物構造を示す斜視図である。図1に示すように、風通組織織物は第1の布地10と第2の布地20を有する二重組織を有し、経方向又は緯方向に第1の間隔p1で第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた風通組織を有する織物である。ここでは、第1の布地10と第2の布地20が平織の場合を示しているが、織物の三原組織である綾織や朱子織でもよく、また一方が平織で他方が綾織や朱子織でもよい。第1の間隔p1は、風通組織として適宜に定めることができるが、衣類用の用途では2cm〜10cm程度の場合が多い。
【0039】
ここでは、高収縮糸30を風通組織の裏地に設けたものを示しているが、高収縮糸30は風通組織の表地側に設けても良く、また裏地と表地の両方に設けても良い。高収縮糸30は第2の間隔p2で、風通組織の裏地側に設ける。第2の間隔p2は適宜に定めることができるが、例えば、当該織物を構成する繊維10本〜100本に対して、1本又は2本の高収縮糸30を用いる。高収縮糸30としては、ナイロン、ポリエステル、又は強撚性繊維等が用いられる。当該織物を構成する繊維としては、天然繊維、合成繊維、再生繊維等を用いるとよい。天然繊維には、例えば絹や綿を用いることが出来る。合成繊維は、炭化水素化合物よりなるものに限らず、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維など各種の材料を用いることができる。
【0040】
このように構成された織物組織においては、第1の間隔p1で第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させているので、経方向又は緯方向の風通組織が織られる。高収縮糸30は、第1の布地10と第2の布地20の表裏を交差させた方向と直交する方向に、第2の間隔p2で用いられるので、一方向で交差する風通組織と比較して纏まりがあるとあると共に、高収縮糸30の収縮比率を適宜に選択することで、経緯2方向で交差する風通組織と比較して風通組織のふくれ状態を柔軟に定めることができる
【0041】
図2は、本発明の第1の実施例を示すよこ方向縮み(緯フクレ)の風通組織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。図2(A)は裏地側からみた平面図、(B1)は図2(A)のB1−B1に沿った通常繊維の緯方向断面図、(B2)は図2(A)のB2−B2に沿った高収縮糸の緯方向断面図、(C)は図2(A)のC−Cに沿った経方向断面図である。なお、図2(A)に示す平面図は、裏地側の組織を表示して、表地側の組織が裏地側の組織と上下重なる状態で示しているが、裏地側の組織と表地側の組織を平織の繰り返し単位を基本として糸1/2本分ずらして表記することもできる。この平面図における裏地側の組織表記は、図2に限らず、図5、図7、図9、図11でも同様である。
【0042】
図2(B1)に示すように、縦糸と横糸の組合せにより緯方向に区間I、区間II、区間III、区間IVの4区間の繰り返しとなっている。区間Iは、第1の布地12と第2の布地22の二層構造である。第1の布地12は、第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第1の横糸51a、51bを通して織られる。第2の布地22は、第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第2の横糸52a、52bを通して織られる。平織なので、第1の横糸51a、51bと第2の横糸52a、52bは夫々2本を繰り返し単位としている。
【0043】
区間IIと区間IVは、経方向風通組織80を示すもので、緯方向に第1の布地12と第2の布地22とを、第3の間隔p3で交差させる際に交互に現われる。区間IIIは、1の布地12と第2の布地22を区間Iと単純に逆にして、第3の布地12aと第4の布地22aとしている。即ち、図2(B1)にあるように、第3の布地12aは、第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第1の横糸51a、51bを通して織られる。第4の布地22aは、第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第2の横糸52a、52bを通して織られる。なお、区間IIIとしては、第1の布地12と第2の布地22の二層構造を「緯方向に第3の間隔で交差させた経方向風通組織」として、第1の横糸51a、51bと第2の横糸52a、52bの位置関係を区間Iと逆にし第3の布地12aと第4の布地22aとしてもよい。
【0044】
高収縮糸32a、32bは、よこ方向縮みの風通組織織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有するもので、風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方のよこ糸として、第4の間隔p4で用いる。ここは、高収縮糸32a、32bをよこ糸として用いているので、よこ糸が織物組織と一体をなすように隣接して2本入れている。よこ方向縮みの風通組織織物を構成する繊維には、第1の縦糸41、第2の縦糸42、第3の縦糸43、第4の縦糸44、第1の横糸51a、51b及び第2の横糸52a、52bが含まれる。第4の間隔p4は第3の間隔p3と独立に定めることができるが、典型的には第3の間隔p3と大略同じにすると平織の浮き沈み模様を大型にしたフクレが得られる。高収縮糸32a、32bが横糸として用いられる箇所では、図2(B2)に示すように、高収縮糸32a、32bが位置する裏地側又は表地側において、経方向風通組織80を通過する位置で他方側の組織の縦糸と連絡するように、高収縮糸32a、32bが織られる。このたとき、高収縮糸32a、32bに隣接する通常繊維は、本来の位置する裏地側又は表地側の縦糸と交差するように織られる。
【0045】
次に、このようなよこ方向縮みの風通組織織物の織り方について説明する。図3は、二重組織の風通組織織物の織物を織る織機の構造を示す斜視図である。この実施形態の場合、平織のための織機を組合せたものを示している。ヘルドフレーム100、102は第1の縦糸41と第2の縦糸42を繰り出すため綜絖枠で、ヘルド(綜絖)101と呼ばれる所定本数の鋼線を有する。第1の布地12を織るのに必要な縦糸は、第1の縦糸41と第2の縦糸42であり、第1の布地12の幅に対応する所定本数が同期して、ヘルド101の糸通し穴を通して、経方向に繰り出される。ヘルドフレーム100、102は、開口運動をするので、これに同期してシャットルに導かれて横糸51がよこ入れ120の位置で緯方向に移動して、第1の布地12が織られて行く。なお、第1の縦糸41と第2の縦糸42は、其々送り出しロール110、112に巻装されている。
【0046】
ヘルドフレーム104、106は、第3の縦糸43と第4の縦糸44を繰り出すため綜絖枠で、ヘルド(綜絖)と呼ばれる所定本数の鋼線を有する。第2の布地22を織るのに必要な縦糸は、第3の縦糸43と第4の縦糸44であり、第2の布地22の幅に対応する所定本数同期してヘルドの糸通し穴を通して、経方向に繰り出される。ヘルドフレーム104、106は、開口運動をするので、これに同期してシャットルに導かれて横糸52がよこ入れ122の位置で緯方向に移動して、第2の布地22が織られて行く。なお、第3の縦糸43と第4の縦糸44は、其々送り出しロール114、116に巻装されている。
【0047】
ここでは、風通組織織物が経方向風通組織80を有するので、緯方向に第1の布地12と第2の布地22とを、第3の間隔p3で交差させる必要がある。そこで、経方向風通組織80を形成するように、ヘルドフレーム100、102とヘルドフレーム104、106の移置合せをすると共に、送り出しロール110、112と送り出しロール114、116に巻装される糸の種類を考慮する。高収縮糸32a、32bは、風通組織の裏地側のよこ糸として、第4の間隔p4で用いるため、第4の間隔p4で横糸51、52に代えて高収縮糸32a、32bをシャットルで緯方向に移動させる。そして、適宜のタイミングでおさ打ち120によりおさ打ちをして、横糸の間隔を適宜に定めて織る。
【0048】
なお、図3の実施例では、第1の縦糸41と第2の縦糸42、第3の縦糸43と第4の縦糸44を送り出しロール110、112と送り出しロール114、116の2組のロールを用いる場合を示しているが、一組のロールによって第1〜第4の縦糸41、42、43、44を繰り出して、4枚のヘルドフレーム100、102、104、106を用いるようにしてもよい。
【0049】
図4はよこ方向縮みの風通組織織物の製造方法を示すフローチャートである。まず、第1の布地12を、第1の縦糸41と第2の縦糸42を交差させながら第1の横糸51a、51bを通して織る(ステップS102)。また、第2の布地22を、第3の縦糸43と第4の縦糸44を交差させながら第2の横糸52a、52bを通して織る(ステップS104)。そして、第1の横糸51a、51bと第2の横糸52a、52bが、緯方向に第3の間隔p3進んだか判断し(ステップS106)、Noであればそのままシャットルにより横糸を緯方向に移動させて、ステップS110に進む。ステップS106でYesであれば、この第1の布地12と第2の布地22とを、緯方向に第3の間隔p3で交差させて経方向風通組織80を形成する(ステップS108)。そして、第1の布地12と第2の布地22の織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS110)、NoであればS102に戻る。
【0050】
ステップS110でYesであれば、織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS112)、Yesであれば終了となる。ステップS112でNoであれば、始端又は直近の高収縮糸32a、32bから、経方向に第4の間隔p4進んだか判断する(ステップS114)。ステップS114でYesであれば、次の横糸として高収縮糸32a、32bをセットして(ステップS116)、S102に戻る。ステップS114でNoであれば、次の横糸として第1の横糸51a、51b又は第2の横糸52a、52bをセットして(ステップS118)、S102に戻る。
【0051】
図5は、本発明の第2の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の風通組織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。図5(A)は裏地側からみた平面図、(B)は図5(A)のB−Bに沿った緯方向断面図、(C1)は図5(A)のC1−C1に沿った通常繊維の経方向断面図、(C2)は図5(A)のC2−C2に沿った高収縮糸の緯方向断面図である。
【0052】
図5(C1)に示すように、縦糸と横糸の組合せにより経方向に区間V、区間VI、区間VII、区間VIIIの4区間の繰り返しとなっている。区間Vは、第1の布地14と第2の布地24の二層構造である。第1の布地14は、第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第1の横糸71a、71bを通して織られる。第2の布地24は、第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第2の横糸72a、72bを通して織られる。平織なので、第1の横糸71a、71bと第2の横糸72a、72bは夫々2本を繰り返し単位としている。
【0053】
区間VIと区間VIIIは、緯方向風通組織90を示すもので、経方向に第1の布地14と第2の布地24とを、第5の間隔p5で交差させる際に交互に現われる。区間VIIは、第1の布地14と第2の布地24を区間Vと単純に逆にして、第5の布地14aと第6の布地24aとしている。即ち、図5(C1)にあるように、第5の布地14aは、第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第1の横糸71a、71bを通して織られる。第6の布地24aは、第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第2の横糸72a、72bを通して織られる。なお、区間VIIとしては、第1の布地14と第2の布地24の二層構造を「経方向に第5の間隔で交差させた緯方向風通組織」として、第1の横糸71a、71bと第2の横糸72a、72bの位置関係を区間Vと逆にして、第5の布地14aと第6の布地24aとしてもよい。
【0054】
高収縮糸34は、たて方向縮みの風通組織織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有するもので、風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、第6の間隔p6で用いる。ここは、高収縮糸34を縦糸として用いており、縦糸の場合は1本でも織物組織と一体をなすから、高収縮糸34は1本でも織物組織上は充分であるが、さらに縮みを大きくする場合には複数本入れてもよい。たて方向縮みの風通組織織物を構成する繊維には、第1の縦糸61、第2の縦糸62、第3の縦糸63、第4の縦糸64、第1の横糸71a、71b及び第2の横糸72a、72bが含まれる。
【0055】
第6の間隔p6は第5の間隔p5と独立に定めることができるが、典型的には第5の間隔p5と大略同じにすると平織の浮き沈み模様を大型にしたフクレが得られる。高収縮糸34が横糸として用いられる箇所では、図5(C2)に示すように、高収縮糸34が位置する裏地側又は表地側において、緯方向風通組織90を通過する位置で他方側の組織の横糸と交差するように、高収縮糸34が織られる。このたとき、高収縮糸34に隣接する通常繊維は、本来の位置する裏地側又は表地側の横糸と交差するように織られる。
【0056】
次に、このようなたて方向縮みの風通組織織物の織り方について説明する。図6は、たて方向縮み風通組織織物の製造方法を示すフローチャートである。まず、縦糸として、高収縮糸34を第6の間隔p6でセットし、その余に織物を構成する繊維をセットする(ステップS200)。次に、第1の布地14を、第1の縦糸61と第2の縦糸62を交差させながら第1の横糸71a、71bを通して織る(ステップS202)。また、第2の布地24を、第3の縦糸63と第4の縦糸64を交差させながら第2の横糸72a、72bを通して織る(ステップS204)。
【0057】
次に、第1の横糸71a、71bと第2の横糸72a、72bは緯方向に第5の間隔p5進んだか判断し(ステップS206)、Noであればそのままシャットルにより横糸を緯方向に移動させて、ステップS210に進む。ステップS206でYesであれば、この第1の布地14と第2の布地24とを、緯方向に第5の間隔p5で交差させて緯方向風通組織90を形成する(ステップS208)。そして、第1の布地14と第2の布地24の織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS210)、NoであればS202に戻る。ステップS210でYesであれば、織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS212)、Yesであれば終了となる。ステップS212でNoであれば、次の横糸として第1の横糸71a、71bと第2の横糸72a、72bをセットして(ステップS214)、S202に戻る。
【0058】
なお、上記の第1及び第2の実施の形態としては、第1の布地と第2の布地が共に平織の場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の布地と第2の布地が共に綾織であってもよい。あや織は縦糸3本と横糸3本から織れる織物の三原組織の一つであるが、縦糸横糸4本以上からなる綾織も種々あり、5枚斜紋、8枚斜紋とも呼ばれる。また、第1の布地と第2の布地が共に朱子織であってもよい。朱子織は糸の曲がり数が少ないので、表面は滑らかで糸密度は多くなり、生地は厚手でやわらかで光沢に富んだ織物となる。朱子織では交錯点は隣り合わず、しかも一定間隔になっており、5枚朱子、7枚朱子と呼ばれている。
【0059】
さらに、第1の布地と第2の布地として、一方を平織とし、他方をあや織又は朱子織としてもよい。平織は縦糸横糸交互に浮き沈みする組織で、交錯点が多く薄手で摩擦に強くなるという性質がある。平織は縦糸2本と横糸2本から織れる織物の基本構造であるため、織機の構造が簡単ですみ、織物の生産効率が高くなる。そこで、二重組織の風通組織織物においては、織物の三原組織から適宜の組織を用いることで、平織・あや織・朱子織の複合的な性質を持たせることができる。
【0060】
この場合、図2の説明においては、第1の縦糸41、第2の縦糸42、第3の縦糸43、第4の縦糸44、第1の横糸51a、51b及び第2の横糸52a、52bを用いて平織を説明している。また、図5の説明においては、第1の縦糸61、第2の縦糸62、第3の縦糸63、第4の縦糸64、第1の横糸71a、71b及び第2の横糸72a、72bを用いて平織を説明している。綾織では、平織の説明において以下のように読替える。第1の布地があや織である場合は、第1の縦糸があや織を構成する一本の糸であり、第2の縦糸があや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、第1の横糸が第1の縦糸及び第2の縦糸と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸となる。また、第2の布地があや織である場合は、第3の縦糸があや織を構成する一本の糸であり、第4の縦糸が当該あや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、第2の横糸が第3の縦糸及び第4の縦糸と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸となる。
【0061】
朱子織では、平織の説明において以下のように読替える。第1の布地が朱子織である場合は、第1の縦糸が当該朱子織を構成する一本の糸であり、第2の縦糸が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、第1の横糸が第1の縦糸又は第2の縦糸と所定飛び数で交錯する所定本数の糸となる。また、第2の布地が朱子織である場合は、第3の縦糸が当該朱子織を構成する一本の糸であり、第4の縦糸が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、第2の横糸が第3の縦糸又は第4の縦糸と所定飛び数で交錯する所定本数の糸となる。
【0062】
図7は、本発明の第3の実施例を示すよこ方向縮み(緯フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。図7(A)は裏地側からみた平面図、(B1)は図7(A)のB1−B1に沿った通常繊維の緯方向断面図、(B2)は図7(A)のB2−B2に沿った高収縮糸の緯方向断面図、(C)は図7(A)のC−Cに沿った経方向断面図である。
【0063】
図7(B1)に示すように、縦糸と横糸の組合せにより緯方向に区間IX、区間Xの2区間の繰り返しとなっている。区間IXは、第1の布地16と第2の布地26の二層構造である。第1の布地16は、第1の縦糸141と第2の縦糸142を交差させながら第1の横糸151a、151bを通して織られる。第2の布地26は、第3の縦糸143と第4の縦糸144を交差させながら第2の横糸152a、152bを通して織られる。平織なので、第1の横糸151a、151bと第2の横糸152a、152bは夫々2本を繰り返し単位としている。区間Xは、経方向連結組織82を示すもので、緯方向に第1の布地16と第2の布地26とを、第7の間隔p7で連結させるために、第1の横糸151bが第7の間隔p7で第2の布地26の第3の縦糸143又は第4の縦糸144と交差している(図7(B1)、(B2)参照)。
【0064】
高収縮糸36a、36bは、よこ方向縮みの二重織織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有するもので、二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方のよこ糸として、第8の間隔p8で用いる。ここは、高収縮糸36a、36bをよこ糸として用いているので、よこ糸が織物組織と一体をなすように隣接して2本入れている。よこ方向縮みの二重織織物を構成する繊維には、第1の縦糸141、第2の縦糸142、第3の縦糸143、第4の縦糸144、第1の横糸151a、151b及び第2の横糸152a、152bが含まれる。第8の間隔p8は第7の間隔p7と独立に定めることができるが、典型的には第7の間隔p7と大略同じにすると平織の浮き沈み模様を大型にしたフクレが得られる。
【0065】
図8はよこ方向縮みの二重織織物の製造方法を示すフローチャートである。まず、第1の布地16を、第1の縦糸141と第2の縦糸142を交差させながら第1の横糸151a、151bを通して織る(ステップS302)。また、第2の布地26を、第3の縦糸143と第4の縦糸144を交差させながら第2の横糸152a、152bを通して織る(ステップS304)。そして、第1の横糸151a、151bと第2の横糸152a、152bが、緯方向に第7の間隔p7進んだか判断し(ステップS306)、Noであればそのままシャットルにより横糸を緯方向に移動させて、ステップS310に進む。ステップS306でYesであれば、この第1の布地16と第2の布地26とを、緯方向に第7の間隔p7で連結させて経方向連結組織82を形成する(ステップS308)。そして、第1の布地16と第2の布地26の織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS310)、NoであればS302に戻る。
【0066】
ステップS310でYesであれば、織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS312)、Yesであれば終了となる。ステップS312でNoであれば、始端又は直近の高収縮糸36a、36bから、経方向に第8の間隔p8進んだか判断する(ステップS314)。ステップS314でYesであれば、次の横糸として高収縮糸36a、36bをセットして(ステップS316)、S302に戻る。ステップS314でNoであれば、次の横糸として第1の横糸151a、151b又は第2の横糸152a、152bをセットして(ステップS318)、S302に戻る。
【0067】
図9は、本発明の第4の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。図9(A)は裏地側からみた平面図、(B)は図9(A)のB−Bに沿った緯方向断面図、(C1)は図9(A)のC1−C1に沿った通常繊維の経方向断面図、(C2)は図9(A)のC2−C2に沿った高収縮糸の緯方向断面図である。
【0068】
図9(C1)に示すように、縦糸と横糸の組合せにより経方向に区間XI、区間XIIの2区間の繰り返しとなっている。区間XIは、第1の布地18と第2の布地28の二層構造である。第1の布地18は、第1の縦糸161と第2の縦糸162を交差させながら第1の横糸171a、171bを通して織られる。第2の布地28は、第3の縦糸163と第4の縦糸164を交差させながら第2の横糸172a、172bを通して織られる。平織なので、第1の横糸171a、171bと第2の横糸172a、172bは夫々2本を繰り返し単位としている。区間XIIは、緯方向連結組織92を示すもので、緯方向に第1の布地18と第2の布地28とを、第9の間隔p9で連結させるために、第1の横糸171bが第9の間隔p9で、第2の布地26を構成する第3の縦糸163・第4の縦糸164と交差している(図9(C1)、(C2)参照)。
【0069】
高収縮糸38は、たて方向縮みの二重織織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有するもので、二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、第10の間隔p10で用いる。ここは、高収縮糸38を縦糸として用いており、縦糸の場合は1本でも織物組織と一体をなすから、高収縮糸38は1本でも織物組織上は充分であるが、さらに縮みを大きくする場合には複数本入れてもよい。たて方向縮みの風通組織織物を構成する繊維には、第1の縦糸161、第2の縦糸162、第3の縦糸163、第4の縦糸164、第1の横糸171a、171b及び第2の横糸172a、172bが含まれる。第10の間隔p10は第9の間隔p9と独立に定めることができるが、典型的には第9の間隔p9と大略同じにすると平織の浮き沈み模様を大型にしたフクレが得られる。
【0070】
次に、このようなたて方向縮みの二重織織物の織り方について説明する。図10は、たて方向縮み二重織織物の製造方法を示すフローチャートである。まず、縦糸として、高収縮糸38を第10の間隔p10でセットし、その余に織物を構成する繊維をセットする(ステップS400)。次に、第1の布地18を、第1の縦糸161と第2の縦糸162を交差させながら第1の横糸171a、171bを通して織る(ステップS402)。また、第2の布地28を、第3の縦糸163と第4の縦糸164を交差させながら第2の横糸172a、172bを通して織る(ステップS404)。
【0071】
次に、第1の横糸171a、171bと第2の横糸172a、172bは緯方向に第9の間隔p9進んだか判断し(ステップS406)、Noであればそのままシャットルにより横糸を緯方向に移動させて、ステップS410に進む。ステップS406でYesであれば、この第1の布地18と第2の布地28とを、緯方向に第9の間隔p9で交差させて緯方向連結組織92を形成する(ステップS408)。そして、第1の布地18と第2の布地28の織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS410)、NoであればS402に戻る。ステップS410でYesであれば、織るべき幅は確保できたか判断し(ステップS412)、Yesであれば終了となる。ステップS412でNoであれば、次の横糸として第1の横糸171a、171bと第2の横糸172a、172bをセットして(ステップS414)、S402に戻る。
【0072】
図11は、本発明の第5の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。図11(A)は裏地側からみた平面図、(B)は図11(A)のB−Bに沿った緯方向断面図、(C1)は図11(A)のC1−C1に沿った通常繊維の経方向断面図、(C2)は図11(A)のC2−C2に沿った高収縮糸の緯方向断面図である。なお、第5の実施例は第4の実施例において、第1の縦糸161と第2の縦糸162に代えてプラスチック製フィルム糸180を第11の間隔p11で用いたものである。そこで、ここでは、図11の説明において、図9と相違する箇所のみを説明し、重複する説明は省略する。
【0073】
図において、たて方向縮みの二重織織物を構成する繊維として絹等の繊維が用いられている。そして、高収縮糸38を織り込む組織をなす裏地となる布18に、高収縮糸38と同じ経方向に、プラスチック製フィルム糸180を第11の間隔p11で用いている。プラスチック製フィルム糸180は、織物を構成する繊維の径よりも広い幅を有する細いテープ状のもので、例えば透明又は織物を構成する繊維と同じ色に着色されたナイロン製を用いる。フィルム糸180の幅は、例えば織物を構成する繊維の径の2〜10倍の範囲で適宜に定めると良く、厚さは織物を構成する繊維と同じ程度に選定するとよい。ここでは、高収縮糸38の繰り返し単位である第10の間隔p10に、2本のプラスチック製フィルム糸180を用いている。そこで、2本のプラスチック製フィルム糸180は、ここでは高収縮糸38の繰り返し単位p10をp11aとp11bに2分割して用いている。
【0074】
このように構成された二重織織物においては、プラスチック製フィルム糸180が織物を構成する繊維の損傷を防止して、二重織織物の耐久性を増すので、例えば足暖用具・膝掛け・ショールに半年以上用いても、二重織織物が有する少量の繊維で比較的空隙率の高い織物構造体の状態が維持される。他方、二重織織物に絹のみを用いた比較実施例では、半年程度使用すると絹糸の繊維構造が一部崩れたり切れたりして、肌触りが劣化した。プラスチック製フィルム糸180には、織物を構成する繊維で発生する静電気を逃がす役割があると考えられており、糸のピリングが防止される。ここで、ピリングとは、生地の表面が摩擦されて毛羽立って絡み合い、小さな球状の毛玉(ピル)を生じる現象をいう。従って、プラスチック製フィルム糸180には、現在市販されているナイロン製やテトロン(登録商標)製に加えて、ポリエステル製や他のプラスチック製のフィルムに導電性加工を施したものでもよい。
【0075】
なお、プラスチック製フィルム糸180を用いることは、たて方向縮みの二重織織物に限られるものではなく、よこ方向縮みの二重織織物や風通組織織物、たて方向縮みの風通組織織物にも適用できる。この場合、プラスチック製フィルム糸180は高収縮糸が用いられる経緯方向と同じ方向に用いるのが良い。また、第11の間隔は適宜に選定できるが、例えば風通組織織物の経緯方向風通組織の繰り返し単位、二重織織物の経緯方向連結組織の繰り返し単位、高収縮糸の繰り返し単位を基準として、当該繰り返し単位と同じ又はこれにより細かい繰り返し単位を用いるとよい。さらに、プラスチック製フィルム糸180は高収縮糸が用いられる経緯方向と直交する方向に用いてもよい。この場合、プラスチック製フィルム糸180は高収縮糸の影響によってフクレが生じる方向にあるため、プラスチック製フィルム糸180の厚さや幅を小さくして、プラスチック製フィルム糸180の剛性を小さくするのが良い。
【0076】
また、上記実施の形態においては、二重組織の風通組織織物や二重織織物を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3重以上の多重組織でも良い。この場合は、この多重組織のなかの任意の2組織間に、本発明の二重組織の風通組織織物や二重織織物を存在させることで、高収縮糸による変わりプリーツ状の皺が形成でき、重量的に軽く、保温性もよい、デザイン的にも変化を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施例を示す二重組織の風通組織織物の織物構造を示す斜視図で、裏地側から見たものを示している。
【図2】本発明の第1の実施例を示すよこ方向縮み(緯フクレ)の風通組織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。
【図3】二重組織の風通組織織物の織物を織る織機の構造を示す斜視図である。
【図4】よこ方向縮みの風通組織織物の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の風通組織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。
【図6】たて方向縮み風通組織織物の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施例を示すよこ方向縮み(緯フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。
【図8】よこ方向縮みの二重織織物の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。
【図10】たて方向縮みの二重織織物の製造方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第5の実施例を示すたて方向縮み(経フクレ)の二重織織物の織物構造を示す構成図で、平織の場合を示している。
【符号の説明】
【0078】
10、12、14、16、18 第1の布地
20、22、24、36、38 第2の布地
30、32、34、36、38 高収縮糸
41〜44、61〜64 縦糸(風通組織)
51a、51b、52a、52b、71a、71b、72a、72b 横糸(風通組織)
80 経方向風通組織
90 緯方向風通組織
141〜144、161〜164 縦糸(二重織織物)
151a、151b、152a、152b、171a、171b、172a、172b 横糸(二重織織物)
180 プラスチック製フィルム糸
p1、p3、p5 風通組織の表裏地の交差間隔
p7、p9 二重織織物の連結間隔
p2、p4、p6、p8、p10 高収縮糸の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の布地と第2の布地を有する二重組織を有し、経方向又は緯方向に第1の間隔で前記第1の布地と第2の布地の表裏を交差させた風通組織を有する織物であって、
前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方に、前記第1の布地と第2の布地の表裏を交差させた方向と直交する方向に、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第2の間隔で用いることを特徴とする風通組織織物。
【請求項2】
第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織られる第1の布地と、
第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織られる第2の布地と、
この第1の布地と第2の布地とを、緯方向に第3の間隔で交差させた経方向風通組織を有する織物であって、
前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第4の間隔で用いることを特徴とする風通組織織物。
【請求項3】
前記経方向風通組織を境界として、前記第1の布地と第2の布地が緯方向に交差した領域では、前記第1の布地として第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら前記第2の横糸を通して織られ、前記第2の布地として第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら前記第1の横糸を通して織られることを特徴とする請求項2に記載の風通組織織物。
【請求項4】
第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織られる第1の布地と、
第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織られる第2の布地と、
この第1の布地と第2の布地とを、経方向に第5の間隔で交差させた緯方向風通組織を有する織物であって、
前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第6の間隔で用いることを特徴とする風通組織織物。
【請求項5】
前記緯方向風通組織を境界として、前記第1の布地と第2の布地が経方向に交差した領域では、前記第1の布地として第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら前記第2の横糸を通して織られ、前記第2の布地として第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら前記第1の横糸を通して織られることを特徴とする請求項4に記載の風通組織織物。
【請求項6】
第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織られる第1の布地と、
第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織られる第2の布地と、
この第1の布地と第2の布地とを、緯方向に第7の間隔で連結させる経方向連結組織を有する二重織織物であって、
前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第8の間隔で用いることを特徴とする二重織織物。
【請求項7】
第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織られる第1の布地と、
第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織られる第2の布地と、
この第1の布地と第2の布地とを、経方向に第9の間隔で連結させる緯方向連結組織を有する織物であって、
前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第10の間隔で用いることを特徴とする二重織織物。
【請求項8】
前記第1又は第2の布地の少なくとも一方が平織であり、
前記第1の布地が平織である場合は、前記第1の縦糸と前記第2の縦糸が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、前記第1の横糸が当該織物を構成する糸であって、
前記第2の布地が平織である場合は、前記第3の縦糸と前記第4の縦糸が、それぞれ当該織物を構成する一本の糸であると共に、前記第2の横糸が当該織物を構成する糸であることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか1項に記載の風通組織織物、或いは請求項6又は請求項7に記載の二重織織物。
【請求項9】
前記第1又は第2の布地の少なくとも一方があや織であり、
前記第1の布地があや織である場合は、前記第1の縦糸が当該あや織を構成する一本の糸であり、前記第2の縦糸が当該あや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、前記第1の横糸が前記第1の縦糸及び前記第2の縦糸と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸であって、
前記第2の布地があや織である場合は、前記第3の縦糸が当該あや織を構成する一本の糸であり、前記第4の縦糸が当該あや織を構成する2本以上のその余の糸であると共に、前記第2の横糸が前記第3の縦糸及び前記第4の縦糸と交差して斜紋線を形成する所定本数の糸であることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか1項に記載の風通組織織物、或いは請求項6又は請求項7に記載の二重織織物。
【請求項10】
前記第1又は第2の布地の少なくとも一方が朱子織であり、
前記第1の布地が朱子織である場合は、前記第1の縦糸が当該朱子織を構成する一本の糸であり、前記第2の縦糸が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、前記第1の横糸が前記第1の縦糸又は前記第2の縦糸と所定飛び数で交錯する所定本数の糸であって、
前記第2の布地が朱子織である場合は、前記第3の縦糸が当該朱子織を構成する一本の糸であり、前記第4の縦糸が当該朱子織を構成する4本以上のその余の糸であると共に、前記第2の横糸が前記第3の縦糸又は前記第4の縦糸と所定飛び数で交錯する所定本数の糸であることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか1項に記載の風通組織織物、或いは請求項6又は請求項7に記載の二重織織物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の風通組織織物又は二重織織物において、
当該織物を構成する繊維として繊維、合成繊維、再生繊維の少なくとも何れか1種類を用い、
当該高収縮糸を構成する繊維としてナイロン、ポリエステル、又は強撚性繊維の少なくとも何れか1種類を用いたことを特徴とする風通組織織物又は二重織織物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の風通組織織物又は二重織織物において、
当該織物を構成する繊維として絹等の繊維を用い、
当該高収縮糸を織り込む組織をなす布の当該高収縮糸と同一又は直交する方向に、織物を構成する繊維の径よりも広い幅を有するプラスチック製フィルム糸を第11の間隔で用いたことを特徴とする風通組織織物又は二重織織物。
【請求項13】
第1の布地を、第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織るステップと、
第2の布地を、第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織るステップと、
この第1の布地と第2の布地とを、緯方向に第3の間隔で交差させて経方向風通組織を形成するステップと、
を有する風通組織を有する織物の製造方法であって、
前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第4の間隔で用いるステップを有することを特徴とする風通組織織物の製造方法。
【請求項14】
第1の布地を、第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織るステップと、
第2の布地を、第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織るステップと、
この第1の布地と第2の布地とを、経方向に第5の間隔で交差させて緯方向風通組織を形成するステップと、
を有する風通組織を有する織物の製造方法であって、
前記風通組織の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を第6の間隔で用いるステップを有することを特徴とする風通組織織物の製造方法。
【請求項15】
第1の布地を、第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織るステップと、
第2の布地を、第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織るステップと、
この第1の布地と第2の布地とを、緯方向に第7の間隔で連結させる経方向連結組織を形成するステップと、
を有する二重織織物の製造方法であって、
前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の横糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第8の間隔で用いるステップを有することを特徴とする二重織織物の製造方法。
【請求項16】
第1の布地を、第1の縦糸と第2の縦糸を交差させながら第1の横糸を通して織るステップと、
第2の布地を、第3の縦糸と第4の縦糸を交差させながら第2の横糸を通して織るステップと、
この第1の布地と第2の布地とを、経方向に第9の間隔で連結させる緯方向連結組織を形成するステップと、
を有する二重織織物の製造方法であって、
前記二重織織物の裏地又は表地となる側の少なくとも一方の縦糸として、当該織物を構成する繊維と比較して高い収縮率を有する高収縮糸を、第10の間隔で用いるステップを有することを特徴とする二重織織物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−77543(P2007−77543A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267528(P2005−267528)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【特許番号】特許第3872089号(P3872089)
【特許公報発行日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(304006333)丸中株式会社 (1)
【Fターム(参考)】