説明

風速測定装置および方法

レーザレーダ(ライダ)風速測定20デバイスを含むブイなどの浮揚プラットホーム装置36が、説明される。ライダ22は、前記プラットホーム36に対して知られている位置の1つまたは複数の遠隔プローブ体積における風速度測定を行うために配置される。風速測定装置は、使用時に、空間の絶対位置における風速を測定することを可能にする、プラットホーム36の運動を監視する運動検出手段26をさらに含むこともできる。風速度データに、プラットホームの移動に対して補償をすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ(ライダ)風速測定システムを使用した風速測定用の方法および装置に関する。より詳細には、本発明は、ブイなどの浮動プラットホームで使用するための風速測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化石燃料を燃焼させることによって生成される温室ガスを削減しようとして、再生可能なエネルギー資源の利用に大きな関心がある。多くの関心を集めている1つのタイプの再生可能なエネルギー資源は、風力である。
【0003】
多くの風力タービンを含む陸ベースのウインドファームは、エネルギーを生成するために何年も商業的に使用されてきた。しかし、そのようなウインドファームに適した場所を見つけることが、特に地域の環境的な反対からみて問題になることがわかってきた。最近、これが、環境的な影響が大幅に低減されるオフショアのウインドファームの開発につながってきた。さらに、そのようなウインドファームは、一般に海で見いだされる、より強い風速を利用することができる。
【0004】
風力タービンを配置するために適切なオフショアの場所を選択することは、タービンによって生成されるエネルギーが、比較的高い建設費を補うのに十分であることを保証するために特に重要である。しかし、適切なオフショアの場所を決定するプロセスは、陸ベースの場所の適合性を評価するときには出合わなかった多くの問題によって妨げられた。例えば、陸への風力タービンの設置前に、風の状況が適していることを保証するために、風速を提案された場所で長期間(例えば、12カ月またはそれ以上)記録することが一般的である。タービンのブレードが位置する地面の上方の高度で、好ましくは行われるそのような風速測定は、適切な機械式または音響式風速計をもつマストを立てて、一般に陸で行われる。同じようなタイプの測定は、オフショアで行うのは困難であるとわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陸で使用されたものに類似した機械式または音響式風速計が取り付けられたマストを使用して、オフショアの風速データを記録することが以前に試みられた。マストは、海底に直接固定され、あるいはバージまたはブイなどの浮揚プラットホームに取り付けられた。オフショアの風力タービンのブレードは、一般に水の表面の上方に何十(ことによると何百)メートルに配置されるので、マストは、同じような位置に従来の風速計を配置するために理想的には十分に高くあるべきである。しかし、マストを直接支持するために海底に必要な基礎を形成する費用は、法外に高い可能性がある。同様に、バージを見込みのありそうな場所に長期間係留することは、単純に費用がかかり過ぎるので、有人のバージを使用して定期的な測定を行うのが可能なだけであった。さらに、比較的高いマストおよび従来の風速計装置を支えるのに十分に安定したブイの建設は、技術的に難しいことがわかった。
【0006】
オフショアに位置する場所における風速データの収集に関連するいくつかの問題についてのより詳細は、Grainger,W.,Gammidge,A,およびSmith,D.によって、“Offshore wind data for wind farms”と題する論文で、proceedings of the twentieth British Wind Energy Association wind energy conference (“wind energy−switch to wind power”),ISBN−1−86058−374−4に与えられている。
【0007】
従来の風速計システムを取り付けたマストに加えて、地面ベースのライダシステムが知られている。ライダシステムは、空気中に存在する自然のエアロゾル(例えば、塵埃、花粉、水滴など)から散乱されたレーザ光に与えられたドップラーシフトを測定することによって、風速データを提供する。COレーザベースのライダシステムの例は、VaughanおよびForresterによって、Wind Engineering,Vol 13,No 1,1989年,pp1−15に記載されており、特にそのセクション8を参照されたい。より最近では、Karlssonらによって、Applied Optics,Vol.39,No.21,2000年7月20日に記載されたタイプの、低コストの光学ファイバベースのライダデバイスが開発された。
【0008】
ライダシステムは、一定の遠隔プローブ体積の内部で反射された放射に与えられたドップラーシフトを測定し、したがって、送信/反射されたレーザビームに平行な方向の風速度データだけを得ることができる。地面に配置されたライダデバイスの場合、ライダを制御された方法で、例えば、円錐形走査を使用して走査することによって、地面の上方の所定距離の真の(3D)風速度ベクトルを測定することが可能である。これは、風ベクトルを知られている角度の範囲で交差させることを可能にし、それによって真の風速度ベクトルを構成することを可能にする。地面ベースの走査ライダシステムは、ウィンドシア、乱流、および伴流の渦を測定するために、何年も軍と民間の両方の応用例で使用されてきた。例えば、Laser Doppler Velocimetry Applied to the measurement of Local and Global Wind,J.M.Vaughan and P.A.Forrester,Wind Engineering Vol.13,No.1,1989年を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、浮揚プラットホーム装置は、風速測定デバイスを含み、風速測定デバイスが、前記浮揚プラットホームに対して知られている位置の1つまたは複数の遠隔プローブ体積において風速度測定を行うために配置されたレーザレーダ(ライダ)を含むことを特徴とする。
【0010】
したがって、本発明は、広々した水面で任意の望ましい位置に迅速にかつ容易に配置でき、かつ信頼できる風速測定値を提供できる浮揚プラットホーム装置(すなわち、水に浮くプラットホーム)を提供する。特に、浮揚プラットホームを、容易にオフショアに配置することができる。したがって、本発明は、その上に従来の風速計を取り付けた海底から立ち上がるタワーを建設する必要を克服し、かつ以前に可能であったのと比べて、より低い費用で、見込みのあるオフショアのウインドファームの場所の風のプロファイルを評価することを可能にする。さらに、本発明の装置は、風力発電産業の必要に合うだけではなく、例えば、石油およびガス産業および気象予報で使用されているような、風データ収集システムを置き換えることも可能にする。
【0011】
有利には、風速測定デバイスは、真の風速度ベクトルを求めることができるように、複数の位置の遠隔プローブ体積から風速度測定値を得るように配置される。例えば、好都合にも、ライダはビーム走査手段を含むことができる。このようにして、プラットホームに対して知られた位置の複数の遠隔プローブ体積を提供することができる。走査手段を含むことは有利であるが、決して必須ではない。有利には、走査手段は、レーザビームを円錐形に走査させるように配置することができ、そのような方法は、極度に穏やかな状況下でも、風のデータを記録できることを保証するであろう。しかし、簡単さが重要な場合、プラットホームの運動(例えば、波の運動によって起こされる傾きおよび傾斜)だけが、より低い電力消費を有し、大抵の状況下で使用可能である受動のビームスキャナを提供する。プラットホーム(例えば波)運動が少ししか、または全くないとき、受動ビーム走査は、明らかにあまり有用ではないことがわかるが、これは、一般に風が小さい場合に対応し、そのような期間のデータは、通常あまり関心がない。
【0012】
有利には、風速測定デバイスは、使用時に浮揚プラットホームの運動を監視する運動検出手段をさらに含む。したがって、運動検出手段は、各風速度の測定値に対して、ライダの遠隔プローブ体積の絶対位置を求めることを可能にする。ここで、絶対位置という用語は、地球上の固定された点に対して画定された空間における位置、例えば、地面または海底に対して測定された位置である。遠隔プローブ体積の相対位置が、絶対遠隔プローブ体積の位置に変換される精度は、運動検出手段の精度に応じることも留意すべきである。一般に、運動検出手段の精度は、角度において約1度であり、速度において、(任意の方向で)毎秒数センチメートルであるべきである。
【0013】
したがって、本発明は、空間の絶対位置における風速度に関する信頼できるデータを提供することができる、浮揚プラットホーム上またはその中に取り付けられた風速度測定装置を提供する。有利には、複数の絶対位置における遠隔プローブ体積から得られた風速度測定値は、所定の空間の領域(例えば、風力タービンの見込みのありそうな位置)で、真の風速度ベクトルを求めることを可能にする。
【0014】
有利には、運動検出手段は、1つまたは複数の遠隔プローブ体積に対し得られた風速度の測定値を、任意の相対プラットホーム速度に対し補正できるように、プラットホーム速度を監視する。
【0015】
運動検出手段は、任意の1つまたは複数の数の運動センサを含むことができる。運動検出手段で使用される運動センサのタイプは、プラットホームによって取り入れられる運動のタイプ、および得られるデータへのこの運動の影響の重要性に応じる。センサの組み合わせが、各測定値に対してライダプローブ体積の位置を求めることを可能にする。
【0016】
好都合には、運動検出手段は、回転センサを含む。言い換えれば、コンパスの方向(すなわち、装置が向いている方位)が測定される。好都合には、運動検出手段は、横揺れセンサ、例えば2次元の横揺れセンサを含む。これは、プラットホームの傾斜を求めることを可能にし、したがって風向を計算することを可能にする。
【0017】
有利には、運動検出手段は、縦揺れ(heave)センサを含む。このセンサは、測定プラットホームの垂直速度を求めるために使用され、したがって、プラットホームの垂直位置における任意の変化を確定することを可能にする。測定された垂直速度成分を、測定された風速の垂直成分を補正するために使用することもできる。
【0018】
有利には、運動検出手段は、並進センサも含むこともできる。このセンサは、(2次元で)測定プラットホームの水平速度を求めるために使用され、プラットホームの位置を求めることを可能にする。測定された水平速度を、測定された風速の水平成分を補正するために使用することもできる。
【0019】
全地球測位システム(GPS)を、プラットホームの絶対位置を監視するために提供することもできる。プラットホームが、画定した領域内部に留まるように拘束されている場合、並進センサは、一般に必要ではない。例えば、それに風速測定装置が取り付けられているプラットホームが、つながれているブイである場合がそうである。しかし、現在の低価格のGPSシステムによって提供される近似的な位置情報は、漂流するプラットホームの位置を(例えば海洋研究用に)監視し、または係留の障害または盗難から単に見張ることを可能にするであろう。
【0020】
上述のセンサ機能のすべてまたは組み合わせを行うために、単一のセンサを提供できることが、当分野の技術者によって理解されるであろう。例えば、十分に正確で入手可能であるならば、回転、横揺れ、縦揺れ、および位置の測定をするために、単一の絶対位置決めおよび方向センサを使用することもできる。
【0021】
好都合には、運動検出手段の出力を受信し、かつ各風速度の測定値の遠隔プローブ体積の絶対位置を計算するために、処理手段が提供される。さらに、有利には、処理手段を、風速を計算するときに(運動検出手段で測定された)プラットホーム速度を補償するように構成することができる。好ましくは、データ記憶手段も含まれる。
【0022】
処理手段およびデータ記憶手段を、パーソナルコンピュータで提供することができる。得られたデータを、例えば、GSM、サットコム(satcoms)、短波無線(SW radio)、またはメテオバースト(meteorburst)などの知られている通信手段を経由して、遠隔システムに定期的に送信することができる。より詳細なデータが必要な場合、より広い帯域幅の通信システムを代替として利用することができる。非常に詳細な情報を、後でサービスエンジニアが収集するように、磁気または光学記憶媒体にローカルに記憶させておくことができる。
【0023】
有利には、ライダはバイスタティックである。バイスタティックライダシステムは、別々の送信および受信の光学素子をもつことからその名前が由来する。モノスタティックライダシステムも知られており、それらが共通の送信および受信の光学素子をもつのでそのように呼ばれる。バイスタティックシステムの平行でない送信および受信ビームは、特に有利である。なぜなら、それらビームを、一定の点で交差させるように配置し、それによって、遠隔プローブ体積(すなわち、ドップラーの風速の測定値がそこから得られる空間における領域)を正確に画定できる。プローブ体積の制限は、分散した標的に対する反射信号の強度の低減につながり得るが、モノスタティックシステムと比べて、擬似反射から生成されるノイズは大幅に低減される。
【0024】
好ましくは、ライダは光ファイバベースである。例えば、ライダは、KarlssonらによりApplied Optics,Vol.39,No.21,2000年7月20日に記載されたタイプでよい。ファイバベースのライダシステムは、小さいサイズ、低電力消費、頑丈さゆえに、CO2レーザベースシステムと比べて有利である。
【0025】
有利には、ライダは、浮遊プラットホームの内部に取り付けられる。透明の窓を、プラットホームの内部に設けることができ、それを通ってレーザを方向付けることができる。あるいは、装置を、プラットホームの外側部分に取り付けることができる。有利には、ライダは、ほぼ垂直な監視方向をもつように配置される。
【0026】
(浮動プラットホームとも呼ぶこともできる)浮揚プラットホームは、好都合には、ブイを含む。ブイという用語は、当分野の技術者には、無人で動力のない浮揚するプラットホームを意味するとしてよく知られている。ブイを所定の位置に係留してもよく、またはそれが潮と共に漂流してもよい。本発明のブイを、オフショアで大洋/海洋で使用することができ、あるいはそれを湖、河などの内陸の広々した水面で使用することができる。浮揚プラットホームは、代替として、例えばボート、船など水に浮かぶように配置された任意のプラットホームを含むことができる。
【0027】
ライダによって生成された放射が、それを通って放出される出力ポートを清掃するために、手段を提供することもできる。例えば、ワイパまたは洗浄拭取システムを提供することができる。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、浮揚プラットホームの付近の風速度を求める方法が提供され、その方法は、(i)レーザレーダ(ライダ)を浮揚プラットホームに取り付けるステップと、(ii)可動プラットホームに対して知られている位置の1つまたは複数の遠隔プローブ体積から風速度の測定値を得るために、ライダを使用するステップとを特徴とする。
【0029】
好都合には、方法は、(iii)前記可動プラットホームの運動を測定するために運動検出手段を使用するステップをさらに含む。これが、プローブ体積の風速度の測定値の絶対位置を求めることを可能にする。
【0030】
好都合には、方法は、(iv)可動プラットホームに対して知られている位置の複数のプローブ体積から風速度の測定値を得る追加のステップも含む。有利には、方法は、運動検出手段によって測定されたプラットホームの速度を考慮して、得られた風速度の測定値を補正するステップも含む。
【0031】
次に、本発明が、以下の図面に関連して例だけとして説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1を参照して、従来技術のライダ2が示される。ライダシステムは、空間に一定のプローブ体積を画定するように、重なり合う送信ビームおよび受信ビームをもつ。ライダ2は、遠隔プローブ体積が円錐形走査4を行うように配置され、それによって空間の領域で真の速度ベクトルを推定することを可能にする角度の範囲で、風速度を交差させることを可能にする。他の走査パターンが知られており、ライダの範囲およびポインティング(または観察)方向が、十分な精度で常に知られているという条件の下で、それを真の風速度ベクトルを求めるために使用することができる。そのようなライダシステムは、ウィンドシア、乱流、および伴流の渦を測定するために、何年も軍と民間の両方の応用例で使用されてきた。
【0033】
空間の固定された領域(すなわち地面に対して固定された領域)において信頼できる風速測定を行うために、従来技術のライダシステムは、所定位置に固定され、走査手段が、ライダの観察方向変えるように提供され、それによって上述の空間の領域を通ってプローブ体積を走査する。航空機などの移動するプラットホームに対して固定された位置(すなわち、地面に対して移動する領域で)で、風速測定を行うことも知られている。
【0034】
したがって、ライダシステムは、移動するプラットホームに配置されたとき、空間の固定された領域の風速に関する信頼できる情報を提供することができないと当分野の技術者によって考えられていた。特に、固定されたプラットホームの必要性は、ライダシステムが、オフショアのブイまたはバージなど相当のかつ予知できない運動をするプラットホームから、空間の絶対位置で測定を行うことが考えられなかったことを意味した。
【0035】
図2を参照して、固定されたプラットホームにライダシステムを取り付ける必要を克服した、本発明の風速測定装置20が示される。装置20は、走査手段24を組み込んだライダシステム22と、運動検出手段26と、コンピュータ28と、データ送信システム30とを含む。
【0036】
ライダシステム22は、固定された範囲をもち、(ビーム32で示されたように)レーザ放射を装置20に対して知られている方向に送受信する。すなわち、装置20に対するデバイスのプローブ体積が知られている。この例では、走査手段24は、ビーム32を、装置20に対して知られている円錐形の経路で走査することができる。しかし、プラットホームの運動は、走査されたビームも、追加の擬ランダム走査の摂動にさらされることを意味する。例えば、装置がオフショアのブイに取り付けられた場合、波の運動で起こされた傾きおよび傾斜は、ビーム32によって追跡された空間の絶対経路を変える。これは、図2に関して記載されたタイプの風速測定装置20を含むブイ36の走査パターン34を示す、図3に示されている。
【0037】
固定された範囲のライダが記載されたが、風の場が様々な高度で応答信号を送ることを可能にするために、それによって測定プローブの範囲(例えば、高度)を変えることができる手段を組み込んだ、ライダシステムを使用することもできる。例えば、これは、バイスタティックシステムで交差の位置を変えることによって、モノスタティックシステムで焦点を変えることによって、あるいはレンジゲイト式パルスライダシステムを使用することによって、成し遂げることができる。
【0038】
以前に、プラットホーム(例えばバラストタンクなど)またはライダシステム(例えばジンバル式取り付け台を提供することによって)を安定させるいくつかの手段を提供することが、必要であると考えられた。しかし、本発明によれば、運動検出手段26は、装置の方向を測定するように構成され、したがって、走査中のプローブ体積の絶対位置が知られている。したがって、知られている絶対位置の複数のプローブ体積において、とられた風速測定値から、コンピュータ28は、空間の領域で3次元の風ベクトルを計算することが可能である。
【0039】
走査手段24は、典型的な従来技術の光学走査システムを含むことができる。例えば、走査される領域に応じて、強力なモータで駆動された角度をつけたミラーを使用した、ラスタまたはベクトル走査を考えることができる。他の極端としては、走査手段を全く除外して、代わりに、擬ランダム走査パターンを提供するために、例えば自然の波の運動を利用する。
【0040】
利用できる機械的走査の選択肢の中で、多分、最も簡単な機構は、単一のミラー、または単一の軸の周りに回転させられる光学プリズムである。これは、レーザビームを円錐形に走査させ、そのような方法は、極度に穏やかな状況下でも風のデータを記録できることを保証するであろう。
【0041】
風速測定装置が取り付けられているプラットホームのどのような運動も、風速測定が行われるプローブ体積の位置に明らかに影響する。風速測定システムが取り付けられたブイの場合、ブイの回転(すなわちコンパス方向)および横揺れ(すなわち傾斜)は、プローブサンプルの位置に影響する。固定された範囲のライダシステムが使用された場合、縦揺れ(垂直変位)が、測定が行われる絶対高度を変え、したがって空間における領域に対して計算された風速度データの精度に影響すると考えられる。さらに、プラットホームの垂直速度は、空間の所定の領域のプローブ体積から測定されたドップラーシフトに影響することに留意すべきである。しかし、プラットホーム移動の瞬間速度を測定し、所定のプローブ体積に対して測定された速度を補正するのに使用することができる。
【0042】
磁気コンパス、ジャイロスコープ、および加速度計などのいくつかの確立された運動検出技術を使用して、回転、横揺れ、および縦揺れを監視することができる。係留されたブイの並進は比較的小さく、プローブの位置に大きくは影響しないが、瞬間的なプラットホーム速度を、正確な水平風速測定値を提供するために補償すべきである。しかし、気象または海洋研究で使用される漂流するブイの場合、何かの形の位置決めシステムが必要であろう。例えば、全地球測位システム(GPS)を使用することもできる。
【0043】
運動検出手段26を形成する各方向センサからのデータ(例えば、回転、横揺れ、縦揺れ、および並進)は、ライダシステム22からの風速信号と共にコンピュータ28に送られる。それからコンピュータは、様々なプローブ体積における風速を計算し、3次元の風ベクトルを求める。コンピュータを、何分もの期間にわたるデータを平均するように構成することができる。あるいはコンピュータは、何10ミリ秒の時間尺度で、風の構造に関する詳細な情報を得るように構成されることができる。
【0044】
得られた(平均されたまたは詳細な)データを、コンピュータ28によって、例えばハードディスクドライブに記憶し、データ送信システム30を経由して、定期的に遠隔システムにダウンロードすることができる。受信器(図示せず)を、得られるデータのタイプを変える制御コマンドを受信するために提供することができる。あるいは、データを遠隔システムに継続して送信してもよく、統合コンピュータ28は、複雑ではなく、またはそれを専用プロセサに代えることができる。
【0045】
時間平均されたデータが、システムによって出力される場合、送信システム30は、既存の商業的通信システム、例えば、GSM、サットコム、短波無線、またはメテオバーストを含むことができる。しかし、より詳細なデータも必要な場合、より広い帯域幅の通信システムを使用することが必要となるかもしれないが、これらもより多くの電力を消費するものの容易に利用することができる。
【0046】
現在、ファイバベースのライダシステムは、約200ワットの電力を必要とする。これに加えて、必要な運動センサ、航海灯、通信、および多分ヒータが、電力予算をおそらく400ワットまで上げるであろう。自律性でブイに取り付けられたライダの場合、この電力は、半連続的に生成されなければならないであろう。必要な電力を生成するために様々な選択肢が存在する。例えば、太陽、波、風、ディーゼル/ガソリン、燃料電池または電池等がある。これらのエネルギー源の組み合わせを、連続運転を提供するために使用することもできる。
【0047】
信頼できる運転を保証するために、外部光学素子(例えばレンズまたは窓)用に何らかの形の清掃システム(図示せず)を導入することも必要かもしれない。例えば車の前照灯に使用される単純なワイパシステムが、大部分の場合、多分適切であるであろう。改良は、(結果として追加の適切な洗浄流体液溜のメンテナンスの複雑さを伴う)洗浄器システムを含むことであろう。あるいは、厳しい状況で明らかな視界を保つために、モータスポーツの運転者によって使用される、ちょうどデバイスのように、簡単な透明の箔を、外部光学素子にわたって広げることもできる。この方法は、レーザビームの望まれない散乱を起こす塩の蓄積の問題を克服するであろう。
【0048】
最後に図4を参照して、オフショアの風力タービンの前に配置された風測定装置を組み込んだブイの図の説明が示される。本発明の風速測定装置の多くの代替の使用が、当分野の技術者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来技術の地上ベースの走査式レーザ風速計システムを示す図である。
【図2】本発明の風速測定システムを示す図である。
【図3】図2に示されたデバイスの走査パターンを示す図である。
【図4】図2に関して記載されたタイプの風速測定システムを組み込んだブイを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速測定デバイスを含む浮揚プラットホーム装置であって、風速測定デバイスが、前記浮揚プラットホームに対して知られている位置の1つまたは複数の遠隔プローブ体積における風速度測定を行うために配置されたレーザレーダ(ライダ)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
風速測定デバイスが、真の風速度ベクトルを求めることができるように、複数の位置における遠隔プローブ体積から風速度の測定値を得るために配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ライダが、ビーム走査手段をさらに含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ビーム走査手段が、円錐形走査を提供するために配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
風速測定デバイスが、使用時に浮揚プラットホームの運動を監視する運動検出手段をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
運動検出手段が、回転センサを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
運動検出手段が、横揺れセンサを含む、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
運動検出手段が、縦揺れセンサを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
運動検出手段が、並進センサを含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
処理手段が、追加で提供され、運動検出手段の出力を受けかつ各風速度の測定値の遠隔プローブ体積の絶対位置を計算する、請求項5から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
処理手段が、運動検出手段によって測定されたプラットホーム速度を受け、相対プラットホーム速度に対して前記風速度の測定値を補償する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
データ記憶手段が、追加で提供される、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
ライダが、バイスタティックである、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
ライダが、光ファイバベースである、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
風速測定デバイスが、浮揚プラットホーム装置の内部に取り付けられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
手段が、光学ポートを清掃するために提供され、ライダによって送信され受信された放射が、光学ポートを通過する、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
ライダが、使用時にほぼ垂直な監視方向をもつ、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
浮揚プラットホーム装置が、ブイである、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
浮揚プラットホームの付近の風速度を求める方法であって、(i)レーザレーダ(ライダ)を浮揚プラットホームに取り付けるステップと、(ii)可動プラットホームに対して知られている位置の1つまたは複数の遠隔プローブ体積から風速度の測定値を得るために、ライダを使用するステップとを特徴とする方法。
【請求項20】
(iii)前記可動プラットホームの運動を測定するために、運動検出手段を使用するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(iv)可動プラットホームに対して知られている位置の複数のプローブ体積から風速度の測定値を得る追加のステップを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
(v)プラットホームの相対速度に対して得られた風速度の測定値を補償する追加のステップを含む、請求項19および21のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527512(P2007−527512A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518370(P2006−518370)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002988
【国際公開番号】WO2005/008284
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】