説明

飛しょう体発射システム

【課題】障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことを目的とする。
【解決手段】通信機能を有する飛しょう体20を発射する発射装置12に、該飛しょう体20との通信を行うアンテナ26が設けられ、通信装置14に、アンテナ26に比較して通信距離が長く、該飛しょう体20との通信を行うためのアンテナ30が設けられている。そして、管制装置16に設けられている送受信部44によって、アンテナ26又はアンテナ30を介して飛しょう体20との間で情報の送受信が行われ、発射装置制御部42によって、発射装置12が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛しょう体発射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体が搭載可能とされ、該飛しょう体を発射する発射装置、該飛しょう体との通信を行う通信装置、及び該通信装置を介して飛しょう体との間で各種情報の送受信を行う管制装置によって、飛しょう体が目標物に向けて発射されている。
【0003】
このような、飛しょう体発射システムに関する技術として、特許文献1には、管制装置である発射装置制御システムが、目標位置情報を通信装置である送信機によって飛しょう体へ送信する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−1359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、発射装置と通信装置とが離れて配置されている場合に、発射装置と通信装置との間に山や高層ビル等の障害物が位置することによって、飛しょう体と通信装置との通信が不可能となり、飛しょう体の発射ができない、あるいは発射した飛しょう体の制御が困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことができる飛しょう体発射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の飛しょう体発射システムは以下の手段を採用する。
【0008】
すなわち、本発明に係る飛しょう体発射システムは、通信機能を有する飛しょう体が搭載可能とされ、該飛しょう体を発射する発射手段、及び前記飛しょう体との通信を行うための第1の通信手段が設けられると共に、移動可能な発射装置と、前記第1の通信手段に比較して通信距離が長く、前記飛しょう体との通信を行うための第2の通信手段が設けられると共に、移動可能な通信装置と、前記第1の通信手段又は前記第2の通信手段を介して前記飛しょう体との間で情報の送受信を行う送受信手段、及び前記発射装置を制御する発射装置制御手段が設けられると共に、移動可能な管制装置と、を備える。
【0009】
本発明によれば、通信機能を有する飛しょう体を発射する発射装置に、該飛しょう体との通信を行う第1の通信手段が設けられ、通信装置に、第1の通信手段に比較して通信距離が長く、該飛しょう体との通信を行うための第2の通信手段が設けられている。そして、管制装置に設けられている送受信手段によって、第1の通信手段又は第2の通信手段を介して飛しょう体との間で情報の送受信が行われ、発射装置制御手段によって、発射装置が制御される。
【0010】
このため、発射装置と通信装置とが離れて配置され、発射装置と通信装置との間に山や高層ビル等の障害物が位置することによって、第2の通信手段を介した飛しょう体との通信が不可能となっても、発射装置に設けられた第1の通信手段を介して管制装置は、飛しょう体との通信が可能となる。
【0011】
以上のことから、本発明によれば、障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことができる。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の飛しょう体発射システムは以下の手段を採用する。
【0013】
すなわち、本発明に係る飛しょう体発射システムは、通信機能を有する飛しょう体が搭載可能とされ、該飛しょう体を発射する発射手段、及び前記飛しょう体との通信を行うための第1の通信手段が設けられると共に、移動可能な発射装置と、前記第1の通信手段に比較して通信距離が長く、前記発射装置から発射された前記飛しょう体との間で通信を行うための第2の通信手段、前記第1の通信手段又は前記第2の通信手段を介して前記飛しょう体との間で情報の送受信を行う送受信手段、及び前記発射装置を制御する発射装置制御手段が設けられると共に、移動可能な管制装置と、を備える。
【0014】
本発明によれば、通信機能を有する飛しょう体を発射する発射装置に、該飛しょう体との通信を行う第1の通信手段が設けられ、管制装置に、第1の通信手段に比較して通信距離が長く、該飛しょう体との通信を行うための第2の通信手段が設けられている。そして、管制装置に設けられている送受信手段によって、第1の通信手段又は第2の通信手段を介して飛しょう体との間で情報の送受信が行われ、発射装置制御手段によって、発射装置が制御される。
【0015】
このため発射装置と通信装置とが離れて配置され、発射装置と通信装置との間に山や高層ビル等の障害物が位置することによって、第2の通信手段を介した飛しょう体との通信が不可能となっても、発射装置に設けられた第1の通信手段を介して管制装置は、飛しょう体との通信が可能となる。
【0016】
以上のことから、本発明によれば、障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことができる。
【0017】
さらに、本発明の飛しょう体発射システムでは、前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信が不可能であったため前記第1の通信手段を介して前記飛しょう体との通信を行っている状態で、前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信が可能となった場合に、前記第1の通信手段を介した前記飛しょう体との通信を前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信へ切り替える。
【0018】
第1の通信手段を介して飛しょう体との通信を行っている状態で、第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信が不可能な状態から可能な状態となった場合に、第2の通信手段を介して飛しょう体との通信を行うように切り替える。
【0019】
これにより、飛しょう体の飛しょう高度が高高度となり、第1の通信手段を介した通信が不可能な状態となる前に第2の通信手段を介した飛しょう体との通信を行うため、飛しょう体との通信が途切れることを防止ができる。
【0020】
さらに、本発明の飛しょう体発射システムでは、前記第1の通信手段を介して前記飛しょう体との通信を行っている状態で、前記飛しょう体が前記発射装置から発射され、第1の通信手段との通信状況に比較して第2の通信手段との通信状況の方が良好な場合に、前記第1の通信手段を介した前記飛しょう体との通信を前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信へ切り替える。
【0021】
第1の通信手段を介して飛しょう体との通信を行っている状態で、飛しょう体が前記発射装置から発射され、第2の通信手段との通信状況が良好な場合に、第2の通信手段を介して飛しょう体との通信を行うように切り替える。
【0022】
これにより、飛しょう体の飛しょう高度が高高度となり、第1の通信手段を介した通信が不可能な状態となる前に第2の通信手段を介した飛しょう体との通信を行うため、飛しょう体との通信が途切れることを防止ができる。
【0023】
さらに、本発明の飛しょう体発射システムでは、前記第1の通信手段が、円形状に配置された指向性を有する複数のアンテナを含む。
【0024】
第1の通信手段は、指向性を有する複数のアンテナが円形状に配置されているため、飛しょう体の方向に応じてアンテナを切り替えることで、飛しょう体との通信ができるので、既存のアンテナを利用した簡易な構成で飛しょう体との通信ができる。
【発明の効果】
【0025】
障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る飛しょう体発射システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る発射装置に設けられたアンテナの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る通信装置に設けられたアンテナの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る発射装置、通信装置、及び管制装置の配置を示す模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る飛しょう体発射プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る飛しょう体発射システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る発射装置、通信装置、及び管制装置の配置を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る通信先切替プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】他の実施形態に係る飛しょう体発射システムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る飛しょう体発射システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜5を用いて説明する。
【0029】
本実施形態に係る飛しょう体発射システム10は、発射装置12、通信装置14、及び管制装置16を備えており、発射装置12、通信装置14、及び管制装置16は、車輛に搭載されることによって、移動可能とされている。また、発射装置12と管制装置16、通信装置14と管制装置16は、無線又は有線によって通信が可能とされている。
【0030】
発射装置12は、通信機能を有する飛しょう体20が搭載可能とされ、該飛しょう体20を発射する発射部22、発射部22から飛しょう体20を発射するための制御を行う発射制御部24、及び飛しょう体20との通信を行うためのアンテナ26が設けられている。なお、発射部22に搭載可能とされる飛しょう体20の数は一つでもよく、複数でもよい。
【0031】
また、アンテナ26は、指向性を有する複数のアンテナが円形状に配置されている。なお、本実施形態に係るアンテナ26は、図2に示すように、円形状に複数配置されるアンテナとして、ホーンアンテナ26Aを用いるが、これに限らず、指向性を有するアンテナであれば、他のアンテナを用いてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態に係るアンテナ26では、複数のホーンアンテナ26Aが、円形状に等間隔で、かつ上下3段に重ねられて配置されている。なお、最下段の各ホーンアンテナ26Aは水平方向を向いて配置される一方、上段及び中段の各ホーンアンテナ26Aは、斜め上方を向くように、水平方向に対して所定角度で配置されている。これにより、アンテナ26は、低コストでより広い範囲で無線通信が可能となる。なお、円形状に配置された複数のホーンアンテナ26Aは、3段に限定されず、1段又は2段でもよいし、4段以上の複数段でもよく、ホーンアンテナ26Aの上記角度の大きさも限定されない。
【0033】
また、アンテナ26を介して飛しょう体20との通信を行う場合には、飛しょう体20の進行方向に応じて、飛しょう体20との通信を行うホーンアンテナ26Aを切り替えて用いる。具体的には、例えば、飛しょう体20の進行方向及び速度に基づいて、所定時間後の飛しょう体20の位置(以下、「予測位置」という。)を算出し、該予測位置に基づいてホーンアンテナ26Aを切り替える。これにより、アンテナ26を介した飛しょう体20との通信が途切れることが、防止される。
【0034】
なお、アンテナ26を、発射装置12と管制装置16との無線通信に用いてもよい。これにより、発射装置12と飛しょう体20との通信、発射装置12と管制装置16との通信に要する設備の簡略化が可能となる。この場合、発射装置12と管制装置16との通信に用いる通信プロトコル(通信規格)、発射装置12と飛しょう体20との通信に用いる通信プロトコルは、各々異なるため、両方の通信プロトコルに対応した通信用のハードウエアあるいはソフトウエアを必要とする。
【0035】
一方、通信装置14は、発射装置12から発射された飛しょう体20との通信を行うためのアンテナ30が設けられている。
【0036】
本実施形態に係るアンテナ30は、所謂フェーズドアレイアンテナであり、図3(A),(B)に示されるように、円筒状の本体30Aの側面に、複数のアンテナ(本実施形態では、一例として、マイクロストリップアンテナ(Micro Strip Antenna:MSA)30B)が2次元状に配置されている。そして、アンテナ30は、アンテナ26に比較してアンテナゲインが高いため、より長距離(広範囲)に渡り通信が可能とされている。具体的には、アンテナ26の通信距離は、例えば数十kmであり、アンテナ30の通信距離は、例えば数百kmである。
【0037】
なお、アンテナ30としては、図3(A),(B)に示されるようなフェーズドアレイアンテナに限定されず、アンテナ26よりも通信距離が長いアンテナであれば、他の種類のアンテナを用いてもよい。
【0038】
一方、管制装置16は、管制装置16の全体の制御を司る主制御部40、発射装置12を制御する発射装置制御部42、及びアンテナ26又はアンテナ30を介して飛しょう体20との間で情報の送受信を行う送受信部44が設けられている。
【0039】
そして、管制装置16は、送受信部44によって、アンテナ26又はアンテナ30を介して飛しょう体20との通信が可能となっている場合に、主制御部40が発射装置制御部42から発射装置12へ飛しょう体20の発射指示を示す発射指示情報を出力する。そして、発射装置12に発射指示情報が入力されると発射制御部24が、飛しょう体20を発射するように発射部22を制御し、発射が完了すると、発射制御部24が、発射が完了したことを示す発射完了情報を管制装置16へ出力する。
【0040】
また、管制装置16は、送受信部44が目標物(本実施形態では、一例として、飛しょうしている目標物)の位置情報、目標物の速度、所定時間経過後の目標物の予測位置情報等の目標物情報を、アンテナ26又はアンテナ30を介して飛しょう体20へ送信する。そして、飛しょう体20は、目標物情報を受信すると、該目標物情報に基づいて、自身が目標物へ到達するように自身を制御すると共に、自身の位置情報等のステータス情報を送信する。そして、送受信部44がアンテナ26又はアンテナ30を介して上記ステータス情報を受信する。
【0041】
なお、飛しょう体20は、アンテナ26又はアンテナ30から送信される電波を受信するための通信手段としてのアンテナを備えているが、図1では省略する。
【0042】
次に、図4,図5を参照して、本第1実施形態に係る飛しょう体発射システム10の作用を説明する。
【0043】
図4は、本実施形態に係る発射装置12、通信装置14、及び管制装置16の配置位置を示した模式図の一例である。図4に示す例では、通信装置14と管制装置16との間が数十km、発射装置12と管制装置16との間が数十km離れている。そして、通信装置14と発射装置12との間には、山や高層ビル等の障害物が位置している。
【0044】
図4に示す発射装置12、通信装置14、及び管制装置16の配置の場合、通信装置14に設けられたアンテナ30から見て飛しょう体20が山や高層ビル等の障害物の陰になり、該障害物の影響によってアンテナ30を介した飛しょう体20との通信ができない場合がある。このような場合、従来では、飛しょう体20の発射が実行されなかった。
【0045】
また、発射装置12から飛しょう体20が発射された後に、通信装置14のアンテナ30を介した飛しょう体20との通信が不可能となった場合は、飛しょう体20の制御が不可能となり、例えば、飛しょう体20が、自らを爆破させる場合があった。
【0046】
そこで、本実施形態に係る飛しょう体発射システム10では、通信装置14のアンテナ30を介した飛しょう体20との通信が不可能な場合に、発射装置12のアンテナ26を介して飛しょう体20との通信を行う。
【0047】
図5は、飛しょう体20が発射装置12から発射される前に、管制装置10に設けられた主制御部40によって実行される飛しょう体発射プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、該プログラムは、主制御部40に設けられている不図示の記憶手段の予め定められた領域に記憶されている。
【0048】
まず、ステップ100では、通信装置14のアンテナ30から電波を送信するように送受信部44を制御する。なお、本ステップで送信する電波は、飛しょう体20との通信が可能か否かを判定するために予め定められた試験用の電波であり、該電波は、飛しょう体20に向けてアンテナ30から送信される。
【0049】
次のステップ102では、通信装置14のアンテナ30を介して飛しょう体20との通信が可能か否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ104へ移行する一方、否定判定の場合は、ステップ108へ移行する。
【0050】
なお、ステップ102において肯定判定となる場合とは、アンテナ30から送信された上記試験用の電波を飛しょう体20が受信し、飛しょう体20が、上記試験用の電波を受信したことを示す所定の電波をアンテナ30へ向けて送信し、アンテナ30が飛しょう体20からの上記所定の電波を受信した場合である。
【0051】
ステップ104では、飛しょう体20の発射の指示を示す発射指示情報を、発射装置12へ出力するように発射装置制御部42を制御する。発射装置12の発射制御部24は、発射指示情報が入力されると、飛しょう体20を発射部22から発射させ、発射が完了すると発射完了情報を発射装置制御部42へ出力する。
【0052】
次のステップ106では、発射制御部24からの発射完了情報が発射装置制御部42に入力されるまで待ち状態となり、発射完了情報が発射装置制御部42に入力されると本プログラムを終了する。この場合は、発射装置12からの飛しょう体20の発射が不可能であることを示している。
【0053】
一方、ステップ102で否定判定となった場合は、ステップ108で、発射装置12のアンテナ26から上記試験用の電波を送信するように送受信部44を制御する。
【0054】
次のステップ110では、発射装置12のアンテナ26を介して飛しょう体20との通信が可能か否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ112へ移行する一方、否定判定の場合は、本プログラムを終了する。
【0055】
なお、アンテナ26から送信された上記試験用の電波を飛しょう体20が受信し、飛しょう体20が、上記試験用の電波を受信したことを示す所定の電波をアンテナ26へ向けて送信し、アンテナ26が飛しょう体20からの上記所定の電波を受信した場合を、ステップ110における肯定判定とする。
【0056】
ステップ112では、飛しょう体20との通信に用いるアンテナをアンテナ30からアンテナ26へ切り替え、ステップ104へ移行する。
【0057】
これにより、管制装置16は、発射装置12のアンテナ26を介して、飛しょう体20との間で情報の送受信を行うため、障害物の影響により飛しょう体との間で通信が不可能となることを防ぐことができる。
【0058】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0059】
図6に、本第2実施形態に係る飛しょう体発射システム10の構成を示す。なお、図6における図1と同一の構成部分については図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
飛しょう体20は、アンテナ26又はアンテナ30から送信される電波を受信するためのアンテナ50、並びにアンテナ50の通信先をアンテナ26又はアンテナ30に切り替える切替部52を備えている。
【0061】
次に、図7,図8を参照して、本第2実施形態に係る飛しょう体発射システム10の作用を説明する。
【0062】
飛しょう体20は、低高度を飛しょうしている状態では、図7(A)に示すように、山や高層ビル等の障害物の影響により、アンテナ30を介した管制装置16との通信は不可能な状態のままである。しかし、飛しょう体20が高高度を飛しょうする状態となると、山や高層ビル等の障害物の影響を受けることがなくなるため、図7(B)に示すように、アンテナ30を介した管制装置16との通信が可能となる。一方、アンテナ26は、アンテナ30に比較して通信距離が短いため、飛しょう体20が高高度を飛しょうする状態となると、アンテナ26を介した管制装置16との通信が困難となる。
【0063】
そこで、切替部52は、飛しょう体20が発射された後、アンテナ50を介した通信先を、時分割で交互にアンテナ26とアンテナ30とに切り替える。これによって、飛しょう体20は、アンテナ26を介した通信が可能となる状態を検知することができる。なお、本第2実施形態では、通信装置14は、飛しょう体20の発射後、送受信部44からの電波の送信指示に基づいてアンテナ30から飛しょう体20に向けて電波を送信し続けている。
【0064】
図8は、切替部52によって実行される通信先切替プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、該プログラムは、切替部52に設けられている不図示の記憶手段の予め定められた領域に記憶されている。なお、本プログラムは、飛しょう体20が発射装置12から発射された後に開始される。そのため、本プログラムの開始状態では、アンテナ50の通信先は、アンテナ26とされている。
【0065】
まず、ステップ200で、第1所定時間が経過するまで待ち状態となる。なお、該第1所定時間とは、例えば、アンテナ50がアンテナ30との送受信が可能となると予測される通信可能予測時間である。
【0066】
通信可能予測時間は、通信装置14と発射装置12との距離、及び通信装置14と発射装置12との間の障害物の位置、高さ等の地理的条件、並びに飛しょう体20の速度に基づいて予め算出される。なお、第1所定時間が経過するまでの間、飛しょう体20は、アンテナ50及びアンテナ26を介して管制装置16との通信を行う。また、第1所定時間として、通信可能予測時間を用いずに、予め定められた時間(例えば、30秒)を用いてもよい。
【0067】
次のステップ202では、アンテナ50の通信先を発射装置12が備えるアンテナ26から通信装置14が備えるアンテナ30へ切り替える。
【0068】
次のステップ204では、予め定められた第2所定時間(本実施形態では、一例として1秒)が経過するまで待ち状態となる。すなわち、ステップ204の間に、飛しょう体20は、アンテナ50とアンテナ30とを介した管制装置16との通信を試みる。
【0069】
次のステップ206では、アンテナ50とアンテナ30との通信が可能か否かを判定し、肯定判定の場合は、ステップ212へ移行する一方、否定判定の場合は、ステップ208へ移行する。
【0070】
ステップ208では、アンテナ50及びアンテナ30を介した通信が確立していないため、アンテナ50の通信先をアンテナ30からアンテナ26へ切り替える。
【0071】
次のステップ210では、予め定められた第3所定時間が経過するまで待ち状態となり、第3所定時間が経過すると、ステップ202へ移行する。
【0072】
すなわち、ステップ210の間に、飛しょう体20は、アンテナ50とアンテナ26とを介して管制装置16との通信を行う。なお、第3所定時間の長さは、第2所定時間と同じでもよいし、異なってもよいし、管制装置16と飛しょう体20とが通信を行っている場合は、管制装置16と飛しょう体20との情報の送受信が終了するまでとしてもよい。
【0073】
一方、ステップ212では、アンテナ50及びアンテナ30を介した通信が確立されているため、アンテナ50の通信先をアンテナ30に固定した後、本プログラムを終了する。なお、アンテナ50とアンテナ30とを介した通信が確立されると、送受信部44は、アンテナ26からの電波の送受信を停止し、アンテナ30を介した電波の送受信のみを実行するように切り替える。
【0074】
なお、切替部52は、アンテナ50とアンテナ26との通信状況に比較してアンテナ50とアンテナ30との通信状況の方が良好な場合に、アンテナ50の通信先をアンテナ30に切り替え、固定してもよい。以下に、この場合の例、すなわちアンテナ50の通信先をアンテナ30に切り替える切替条件の具体例を示すが、切替条件は、下記例に限られない。
【0075】
例えば、飛しょう体20の切替部52が、アンテナ26及びアンテナ30から送信され、アンテナ50で受信された電波の電力(以下、「受信電力」という。)の大きさを比較し、アンテナ26からの電波の受信電力に比較して、アンテナ30からの電波の受信電力の方が大きい場合に、アンテナ50の通信先をアンテナ30に切り替える。
【0076】
また、切替部52は、上述した通信先切替プログラムにおいて、ステップ202を実行した後に、ステップ204〜210を実行しているが、これに限らず、ステップ202を実行した後に、ステップ204〜210を実行することなく、ステップ212を実行してもよい。すなわち、発射装置12から飛しょう体20が発射され、通信可能予測時間が経過した場合とは、アンテナ26との通信状況に比較してアンテナ30との通信状況の方が良好であると考えられるため、切替部52は、アンテナ50とアンテナ30とを介した管制装置16との通信を試みることなく、アンテナ50の通信先をアンテナ30に切り替える。
【0077】
以上説明したように、飛しょう体20と通信装置14との通信において、障害物の影響がなくなった場合に、アンテナ50の通信先をアンテナ30からアンテナ26に切り替えることができる。これにより、飛しょう体20の飛しょう高度が高高度となり、アンテナ30との通信が不可能な状態となる前にアンテナ26との通信を行うため、管制装置16と飛しょう体20との間の通信が途切れることを防止できる。
【0078】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、飛しょう体発射システム10を、発射装置12、通信装置14、及び管制装置16を備えるものとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、飛しょう体発射システム10を、図9に示すように、管制装置16にアンテナ30を設けることにより、管制装置16に通信装置の機能を具備させ、管制装置及び発射装置で構成される飛しょう体システムとする形態としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 飛しょう体発射システム
12 発射装置
14 通信装置
16 管制装置
20 飛しょう体
26 アンテナ
30 アンテナ
42 発射装置制御部
44 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する飛しょう体が搭載可能とされ、該飛しょう体を発射する発射手段、及び前記飛しょう体との通信を行うための第1の通信手段が設けられると共に、移動可能な発射装置と、
前記第1の通信手段に比較して通信距離が長く、前記飛しょう体との通信を行うための第2の通信手段が設けられると共に、移動可能な通信装置と、
前記第1の通信手段又は前記第2の通信手段を介して前記飛しょう体との間で情報の送受信を行う送受信手段、及び前記発射装置を制御する発射装置制御手段が設けられると共に、移動可能な管制装置と、
を備えた飛しょう体発射システム。
【請求項2】
通信機能を有する飛しょう体が搭載可能とされ、該飛しょう体を発射する発射手段、及び前記飛しょう体との通信を行うための第1の通信手段が設けられると共に、移動可能な発射装置と、
前記第1の通信手段に比較して通信距離が長く、前記発射装置から発射された前記飛しょう体との間で通信を行うための第2の通信手段、前記第1の通信手段又は前記第2の通信手段を介して前記飛しょう体との間で情報の送受信を行う送受信手段、及び前記発射装置を制御する発射装置制御手段が設けられると共に、移動可能な管制装置と、
を備えた飛しょう体発射システム。
【請求項3】
前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信が不可能であったため前記第1の通信手段を介して前記飛しょう体との通信を行っている状態で、前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信が可能となった場合に、前記第1の通信手段を介した前記飛しょう体との通信を前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信へ切り替える請求項1又は請求項2記載の飛しょう体発射システム。
【請求項4】
前記第1の通信手段を介して前記飛しょう体との通信を行っている状態で、前記飛しょう体が前記発射装置から発射され、第1の通信手段との通信状況に比較して第2の通信手段との通信状況の方が良好な場合に、前記第1の通信手段を介した前記飛しょう体との通信を前記第2の通信手段を介した前記飛しょう体との通信へ切り替える請求項1又は請求項2記載の飛しょう体発射システム。
【請求項5】
前記第1の通信手段は、円形状に配置された指向性を有する複数のアンテナを含む請求項1〜請求項4の何れか1項記載の飛しょう体発射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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