説明

飛昇性微粒子

【課題】粒子によるシート表面への凹凸の形成する方法としては、予め成形前の樹脂に粒子を添加しておき、これをシートなどに成形する方法、シート表面に粒子と粒子を固着するための成分を分散させた液を塗布する方法あるいは接着剤を塗布したシート表面にガラスビーズを静電気的な吸引力によって飛昇させて固着させる方法などが知られているが、シートの強度が低下する、凹凸斑が発生する、重くなる、焼却処分ができないなどの問題点が存在していた。本発明は、かかる現状に基づきなされたものであり、シート表面に均一な高密度の凹凸を形成することのできる有機微粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】有機微粒子の表面に、界面活性剤および/または無機塩化合物、並びに珪素化合物が付与されてなり、電気抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする飛昇性微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気的な吸引力により飛昇させることが可能である飛昇性微粒子に関する。特に、流動性が高く、低い電圧でも飛昇可能であり、シート表面に均一な高密度の凹凸を形成することのできる有機微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シートやフィルムなどの表面に凹凸を形成させるために粒子が利用されている。シートやフィルムの表面に凹凸を形成する目的としては、ブロッキング防止が最も一般的であるが、最近では、フレキシブル印刷版によるカラー印刷時の見当精度を向上させるために使用され始めている。フレキシブル印刷版は、印刷機の版胴に巻きつけるように固定して使用されるが、固定時に印刷版と版胴の間に空気が残留しやすく、残留した空気により、部分的に印刷版が伸びたり、印刷時に残留空気が移動したりして、見当精度を悪化させ、カラー印刷の品質低下を招いていた。凹凸を有するシートはこの残留空気を逃がすために印刷版と版胴の間に挟むなどの方法で利用されているが、この凹凸は印刷版の変形や伸びを防ぐために、均一な高密度の凹凸であることが求められている。
【0003】
粒子を用いて凹凸を形成する方法としては、予め成形前の樹脂に粒子を添加しておき、これをシートなどに成形する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、この方法においては、シート内部に存在する粒子は凹凸形成に関与せずに無駄になってしまう。さらに、シート内部の粒子はシートの強度などの物性を低下させる一因になる可能性があるため、多量に粒子を添加することはできず、高密度の凹凸を形成させることは難しい。また、添加する粒子も微小なものに限定され、凹凸の高さも小さくならざるを得ない。
【0004】
また、別の方法として、シート表面に粒子と粒子を固着するための成分を分散させた液を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。この方法では、上記のような粒子の無駄やシート強度の低下は起こらないが、分散液中で粒子の凝集が起こりやすく、均一に粒子を固着させることが難しい。特に、高密度の凹凸を形成しようとする場合には、添加する粒子の量を多くすることになり、凹凸に斑が生じやすくなる。
【0005】
さらに、接着剤を塗布したシート表面に、静電気的な吸引力によって粒子を飛昇させて固着させる方法も知られている(例えば、特許文献3)。この方法では、均一に粒子を固着させやすく、高密度に凹凸を形成することが可能である。しかし、粒子として、静電気的な吸引力によって飛昇可能なものを使用する必要がある。ガラス粒子はこのような性質を有するものであるが、ガラス粒子は重いため、得られるシートも重くならざるを得ない。また、焼却処分もできないため、実用上扱いにくいものとなる。この点、軽量である有機微粒子でも原理的には静電気的な吸引力による飛昇は可能である。しかし、有機微粒子は電気伝導率が低く、飛昇させるためには非常に高い電圧が必要となり、火災や爆発を引き起こす可能性があるなどの問題を有している。
【特許文献1】特開平11−106520号公報
【特許文献2】特開平9−291250号公報
【特許文献3】特開2001−096941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べてきたように、従来技術における粒子によるシート表面への凹凸の形成においては、シートの強度が低下する、凹凸斑が発生する、重くなる、焼却処分ができない、火災や爆発の可能性があるなど、均一な高密度の凹凸を形成することに対して、様々な障害が存在していた。本発明は、かかる現状に基づきなされたものであり、軽量で、かつ、低い電圧で飛昇し、シート表面に均一な高密度の凹凸を形成することのできる有機微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、以下に示す本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1)有機微粒子の表面に、界面活性剤および/または無機塩化合物、並びに珪素化合物が付与されてなり、電気抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする飛昇性微粒子。
(2)有機微粒子の平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする(1)に記載の飛昇性微粒子。
(3)有機微粒子が、ビニル系重合体からなることを特徴とする(1)または(2)に記載の飛昇性微粒子。
(4)有機微粒子が、架橋構造を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の飛昇性微粒子。
(5)有機微粒子が、平均粒子径の0.8〜1.2倍の粒子径を有する微粒子を全体の70%以上含有するものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の飛昇性微粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飛昇性微粒子は、有機微粒子であるため軽量であり、かつ、低電圧で飛昇させることが可能であるという特徴を有するものである。このような特徴を有する本発明の飛昇性微粒子は、静電気的な吸引力を利用してシート等の表面に凹凸形成させる加工法に安全に利用することができるため、表面に均一な高密度の凹凸を有し、しかも軽量で取り扱いやすいシートを製造することを可能にするものであり、ブロッキング防止のみならず、フレキシブル印刷版などの用途にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の飛昇性微粒子は、基材として有機微粒子を用いる。該有機微粒子の成分としては、有機物である限り特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどを採用することができる。
【0011】
また、有機微粒子の形状としては、特に限定されず、真球状、扁平状、不定形などが挙げられる。真球上の場合、均一で高密度の凹凸を形成させるのに好都合である。さらに、有機微粒子は多孔質、中空などの構造を有していてもよい。
【0012】
有機微粒子の粒子径は、シート表面に加工した際の凹凸の高さを決める因子となる。従って、有機微粒子の粒子径は、用途に応じて適宜選択することになるが、通常、平均粒子径として1〜100μmであることが望ましい。平均粒子径が1μmに満たない場合はシート表面に有効な凹凸を形成することが難しく、逆に100μmを超える場合には粒子が十分に飛昇しなくなる可能性がある。
【0013】
また、有機微粒子の粒子径は、均一であるほど緻密で高さの揃った凹凸を作成することが可能になる。凹凸の高さが不揃いであったり、凹凸の密度が粗であったりすると、シートを重ねた場合などに周りよりも高い部分に集中して圧力がかかるため、シートに傷がついたり、シートが変形したりする場合がある。シート自体の性質あるいは用途によってはかかる問題が顕在化するため、通常、有機微粒子が、その粒子径分布において、平均粒子径の0.8〜1.2倍の範囲の粒子径を有する微粒子を全体に対して70%以上、好ましくは80%以上有するものが好ましい。
【0014】
以上のように本発明に係る有機微粒子は、平均粒子径および粒子径分布が制御されたものであることが望ましい。このような有機微粒子を得る方法としては、特に限定はなく、例えば、重合などによって得られた粒子径分布の広い有機微粒子を、粉砕・分級などの物理的な方法を用いて所望の粒子径、粒子径分布のものとすることができる。また、有機微粒子としてビニル系重合体を採用する場合には、後述するような方法を用いて、重合段階で粒子径や粒子径分布の制御が行うことが可能である。
【0015】
ビニル重合において、粒子径および粒子径分布を制御する方法としては、分散重合で得られた粒子径の揃った微小ポリマーを核としてシード重合を行う方法や、分散媒に分散させた均一な大きさのモノマー滴を重合する方法などが挙げられる。後者の方法について、均一な大きさのモノマー滴を作成する方法としては、均一な孔を有する膜にモノマーを通過させる方法、モノマー粗分散液を平板に衝突させる方法、モノマー粗分散液同士を衝突させる方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
【0016】
ビニル重合において使用できるモノマーの種類としては、重合により粒子を形成できる限り特に制限はなく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体やその塩など;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、モノエチルアクリルアミド、n−ブチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、モノエチルメタクリルアミド、n−ブチルメタクリルアミド、t−ブチルメタクリルアミド等のアミド基を有する単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン系単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2―アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸等のビニル基含有酸化合物やその塩など;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;N一ビニルフタルイミド、N−ビニルサクシノイミド等のビニルイミド類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン類等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクリロレイン等の不飽和アルデヒド類;N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の多官能モノマーなどを挙げることができ、使用される用途に必要な特性を満足するよう適宜選択し、場合によっては組み合わせて使用すればよい。
【0017】
また、本発明の飛昇性微粒子に耐熱性、耐溶剤性あるいは硬度などの性質が必要な場合には、本発明に係る有機微粒子が架橋構造を有することが望ましい。なお、架橋構造の種類や導入方法には特に制限はなく適宜選択すればよいが、例えば、上述のビニル系重合体の場合であれば、ジビニルベンゼンやエチレングリコールジメタクリレートなどの多官能モノマーを共重合したり、あるいは、反応性官能基を有するモノマーを共重合して得られたポリマーと複数の反応性官能基を有する化合物を反応させたりするといった方法が挙げられる。これらの方法における架橋構造に関わる多官能モノマーや反応性官能基を有するモノマーの使用量としては、全モノマー量に対して好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上であることが望ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る有機微粒子は、本発明の飛昇性微粒子に必要とされる特性が不十分とならない範囲で顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、酸化防止剤などの各種添加剤を含有していても構わない。
【0019】
次に、上述してきた有機微粒子に付与される、界面活性剤、無機塩化合物および珪素化合物について説明する。本発明の飛昇性微粒子において、界面活性剤および無機塩化合物は、有機微粒子の電気抵抗率を下げ、低電圧であっても静電気的な吸引力による飛昇が起こるようにする効果を有する。本発明においては、界面活性剤および無機塩化合物のどちらか一方を使用するだけでもよいが、両方を併用することがより望ましい。また、珪素化合物は、有機微粒子の分離性を向上させ、粒子同士が塊にならないようにする効果を有する。
【0020】
このような界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩などのカチオン系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、脂肪酸アルカノールアミドなどのノニオン系界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどの両性界面活性剤などを使用することができる。
【0021】
また、無機塩化合物としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを使用することができる。珪素化合物としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸、コロイダルシリカなどを使用することができる。
【0022】
これらの処理剤の有機微粒子への付与量としては、後述する電気抵抗率となり、有機微粒子に良好な飛昇性を付与できるよう適宜設定すればよい。通常の場合であれば、有機微粒子の特性や飛昇させる際に加える電圧の大きさ等の加工条件などにもよるが、概ね有機微粒子に対して、界面活性剤が0.01〜0.5重量%、無機塩化合物が0.3〜5重量%、コロイダルシリカが0.3〜5重量%であることが好ましい。
【0023】
処理剤の付与方法としては、上述の処理剤を付与できる方法であれば、特に制限されない。例えば、界面活性剤、無機塩化合物および珪素化合物を分散または溶解させた処理液を作成し、該処理液に有機微粒子を含浸させた後、脱水、乾燥することにより付与する方法や、界面活性剤、無機塩化合物、珪素化合物のそれぞれについて分散または溶解させた処理液を作成し、各処理液について別々に含浸、脱水、乾燥を行うという方法などを挙げることができる。処理液中の濃度としては、脱水の程度にもよるが、界面活性剤については1重量%以下、無機塩化合物については5重量%以下、珪素化合物は5重量%以下であることが望ましい。なお、ここでいう含浸とは処理液を付着させることを指し、例えば浸漬、噴霧などの方法で実施することができる。また、処理液に用いる分散媒あるいは溶媒としては、特に限定はなく、水や有機溶剤あるいはこれらの混合溶剤などを使用することができる。
【0024】
また、本発明の飛昇性微粒子は電気抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cm、より好ましくは1×10〜1×10Ω・cmであることが望ましい。電気抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmの範囲である場合、良好な飛昇性を得ることが可能である。電気抵抗率は、上述した界面活性剤、無機塩化合物および珪素化合物の組み合わせや付与量を調節することで制御することが可能である。
【0025】
本発明の飛昇性微粒子を用いてシート表面に凹凸を形成させる方法としては、特に限定されるものではなく、飛昇性微粒子を接着剤を塗布したシートに吹き付けたり、ふるい落としたりして形成させることも可能であるが、高密度の凹凸を形成する場合には本発明の飛昇性という特徴を利用する方法が好適である。このような方法としては、例えば、平板状の電極上に本発明の飛昇性微粒子をほぼ均一になるように載せ、該電極から一定距離をおいて平行に接着剤を塗布したシートを取り付け、該シートを接地した状態で、直流電圧を印加して飛昇性微粒子を上方に飛昇させ、シート表面に固着させる方法などを挙げることができる。ここで、通常の場合、電極とシートの距離としては5〜30cm、直流電圧としては10〜100kVが採用される。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明は何らこれらの記載に限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載の部は、特に断りのない限り重量部であり、%は重量パーセントである。また、実施例中の測定・評価の方法は以下のとおりである。
【0027】
<1>平均粒子径およびシャープ度
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−200V」を使用して水を分散媒として測定し、体積基準で表した粒子径分布から、平均粒子径[μm]および平均粒子径の0.8〜1.2倍の範囲の粒子径を有する微粒子の割合(シャープ度)[%]を求めた。
【0028】
<2>電気抵抗率
20℃×65%RH雰囲気下で16時間以上放置した微粒子試料をステンレス製シャーレに入れ、試料上に直径6cmの円形電極を静かに載せ、28g/cmの圧力を加えた状態で、円形電極とステンレス製シャーレの間に直流電圧500Vを印加し、電気抵抗R[Ω]を測定する。得られた結果から次式により電気抵抗率ρ[Ω・cm]を求めた。
電気抵抗率ρ[Ω・cm]=電気抵抗R[Ω]×(円形電極の面積S[cm]/円形電極とステンレス製シャーレの間の距離[cm])
【0029】
<3>飛昇性
直流高圧発生装置(ERO Flock)に微粒子試料30gを入れる。次に、接地した鋼板の下に該装置を5cmの間隔をあけて設置する。続いて該装置に振動を与えながら直流電圧40kVを30秒間印加して、試料を飛昇させる。装置内に残った試料の重量[g]を測定し、以下の基準によって飛昇性を判定した。判定が「○」であれば、静電気的な吸引力を利用する加工法に好適に利用できると判断される。
○:残った試料の重量[g]が6g未満
△:残った試料の重量[g]が6g以上24g未満
×:残った試料の重量[g]が24g以上
【0030】
<4>表面粗度
鋼板にアクリル樹脂系水性塗料を均一に塗布したこと以外は上記<3>の方法と同様にして、鋼板に飛昇性微粒子を固着させ、表面に凹凸のある鋼板を作成する。得られた鋼板の表面粗度を表面粗さ形状測定機(ハンディサーフE−35A、(株)東京精密製)を用いて測定し、中心線平均粗さRaおよび十点平均粗さRzからRa/Rzを求めた。Ra/Rzが大きいほど、より均一な凹凸が形成されているものと考えられる。
【0031】
[実施例1]
メタクリル酸メチル95部、エチレングリコールジメタクリレート5部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部、ポリビニルアルコール2部、純水300部を混合、撹拌することによってモノマー分散液を作成し、50℃で1時間、続いて80℃で1時間重合を行い、水洗、脱水して、有機微粒子を得た。得られた有機微粒子20部、エレクトロストリッパーF(陰イオン性界面活性剤、固形分70%:花王(株)製)0.07部、スノーテックスO(コロイダルシリカ、固形分20%:日産化学工業(株)製)7.5部、硫酸アンモニウム1.5部および純水80部を混合し、10分間撹拌した(薬剤処理)後、脱水、乾燥することにより、実施例1の飛昇性微粒子を得た。得られた有機微粒子および飛昇性微粒子の評価結果を表1に示す。なお、薬剤処理を行う前の有機微粒子の電気抵抗率は1013Ω・cmを越えるものであった。
【0032】
[実施例2]
実施例1で得られた有機微粒子を分級して、表1に記載の平均粒子径と粒子径分布を有する有機微粒子を得た。該有機微粒子20部、エレクトロストリッパーF 0.07部、スノーテックスO 7.5部、硫酸アンモニウム1.5部および純水80部を混合し、10分間撹拌した後、脱水、乾燥することにより、実施例2の飛昇性微粒子を得た。得られた飛昇性微粒子の評価結果を表1に示す。
【0033】
[実施例3]
実施例2において、エレクトロストリッパーFを0.14部とし、硫酸アンモニウムを使用しないこと以外は同様にして、実施例3の飛昇性微粒子を得た。得られた飛昇性微粒子の評価結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
実施例2において、スノーテックスOを使用しないこと以外は同様にして、比較例1の微粒子を得た。得られた微粒子の評価結果を表1に示す。
【0035】
[比較例2]
実施例2において、エレクトロストリッパーFを使用しないこと以外は同様にして、比較例2の微粒子を得た。得られた微粒子の評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1からわかるように実施例1〜3では良好な飛昇性を有する微粒子が得られた。また、粒子径の均一な有機微粒子を使用した実施例2および3については均一な凹凸を形成することができた。これらに対して、珪素化合物を使用しなかった比較例1は、電気抵抗率は十分に低かったにもかかわらず、飛昇性が低下し、凹凸も不均一なものであった。また、界面活性剤を使用せず、それを補うだけの無機塩化合物も使用しなかった比較例2は、電気抵抗率を十分に低下させることができず、飛昇性も不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機微粒子の表面に、界面活性剤および/または無機塩化合物、並びに珪素化合物が付与されてなり、電気抵抗率が1×10〜1×1010Ω・cmであることを特徴とする飛昇性微粒子。
【請求項2】
有機微粒子の平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の飛昇性微粒子。
【請求項3】
有機微粒子が、ビニル系重合体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の飛昇性微粒子。
【請求項4】
有機微粒子が、架橋構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の飛昇性微粒子。
【請求項5】
有機微粒子が、平均粒子径の0.8〜1.2倍の粒子径を有する微粒子を全体の70%以上含有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の飛昇性微粒子。

【公開番号】特開2006−111711(P2006−111711A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299802(P2004−299802)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】