説明

飛翔体の誘導装置

【課題】軽量化、省スペース化、低コスト化された飛翔体の誘導装置を提供する。
【解決手段】前方の画像を撮像する光波画像センサ112と、光波画像センサ112から得られた画像データを2値化し、2値化した画像データの背景画像の角度変化量から機体角速度を算出し、この機体角速度と2値化した画像データの目標画像から誤差角を算出し、誤差角から誘導信号を算出する信号処理部102と、誘導信号と機体角速度に基づいて操舵翼を制御する制御部103と、を備える。また、誘導装置1はレートセンサからの入力信号を利用せずに、誤差角を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体の誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の飛翔体は、目標を検出するシーカと、機体姿勢角を検出するセンサの出力に基づいて誘導制御及び飛しょう制御をおこなっていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、飛翔体はさらに軽量化、省スペース化、低コスト化したいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−296361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量化、省スペース化、低コスト化された飛翔体の誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の飛翔体の誘導装置は、画像を撮像する光波画像センサと、光波画像センサから得られた画像データを2値化し、2値化した画像データの背景画像から角度変化量を算出し、この角度変化量と2値化した画像データの目標画像から誤差角を算出する信号処理部と、誤差角から誘導信号及び機体角速度を算出して操舵翼を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】誘導装置の構成を示す図である。
【図2】誘導装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】光波画像センサの画像データを示す図である。
【図4】光波画像センサの画像データを2値化した画像を示す図である。
【図5】背景回転量算出処理の様子を示す図である。
【図6】目標移動量算出処理の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態に係る飛翔体の誘導装置を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の飛翔体の誘導装置1の構成を示す図である。図1に示すように、誘導装置1は、飛しょう方向前方の光景を撮像して画像信号を出力するシーカ部101と、画像信号から誘導信号と機体姿勢角を算出して出力する信号処理部102と、誘導信号と機体姿勢角から操舵制御信号を算出して操舵翼の制御をおこなう制御部103と、を備える。
【0009】
シーカ部101は、レンズを備える広角光学系111と、飛翔体の機体に固定され、画像信号を出力する光波画像センサ112とを備える。
【0010】
信号処理部102は、光波画像センサ112から出力される画像信号を入力し、この画像信号を処理する信号処理回路121と、信号処理回路121の出力に基づいて飛しょう制御を行う飛しょう制御回路122と、を備える。
【0011】
制御部103は、操舵翼131と、操舵翼131を駆動するモータ132と、操舵翼103の回転角を検出し、飛しょう制御回路122に出力する角度センサ133と、操舵制御信号に基づいてモータ132を駆動する操舵駆動回路134と、を備える。飛翔体は、操舵翼131を4翼備え、これらの各操舵翼131は独立に駆動される。
【0012】
図2は、誘導装置1の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、誘導装置1の動作は発射前処理と発射後処理とを含む。動作201において、誘導装置1は光波画像センサ112から得られる画像信号を2値化処理する。この2値化処理は目標を検知しやすくするために輝度の閾値を高く設定して行う。
【0013】
動作202において、誘導装置1は2値化された画像信号に含まれる特に高輝度な対象を目標候補として抽出する。誘導装置1は、フレーム間においてこの抽出された目標候補の移動量を算出し、この移動量に基づいて目標を検出する目標検知処理を行い、目標にロックオンする。
【0014】
動作203において、誘導装置1は動作202において目標をロックオンしたかを判定する。誘導装置1は目標をロックオンした場合には動作204に進み、ロックオンしていない場合は動作201に戻る。
【0015】
動作204において、誘導装置1は背景を検知しやすくするために背景の輝度に合わせて閾値を低く設定する。
【0016】
動作205において、誘導装置1は動作204において輝度閾値を低くした状態で、2値化された画像信号に含まれる目標の抽出を継続する。輝度閾値を低くした状態では多くの対象が抽出できるため、誘導装置1は、フレーム間においてこの抽出された画像の移動量のほか、輝度、アスペクト比、大きさなどの特徴量を算出し、この移動量及び特徴量に基づいて目標を検出する目標検知処理を行う。
【0017】
動作206において、誘導装置1は飛翔体が発射されたかを判定する。誘導装置1は、発射されていない場合は動作204に戻り、発射された場合は動作207に進む。
【0018】
動作207において、誘導装置1は背景回転量算出処理を行う。すなわち、誘導装置1は2値化された画像データからフレームごとに目標を消去する。誘導装置1は得られた今回フレームの背景画像の特徴と前回フレームの背景画像の特徴とを比較し、背景の角度変化量から飛翔体のロール、ピッチ及びヨー方向の角度変化量を算出する。
【0019】
この角度変化量は1フレーム時間における飛翔体の角度変化量、すなわち機体角速度に相当する。従って、この角度変化量を積分した角度は飛翔体の姿勢角に相当する。
【0020】
動作208において、誘導装置1は目標移動量算出処理を行う。すなわち、誘導装置1は2値化された画像データからフレームごとに背景を消去する。誘導装置1は背景回転量算出処理において算出した背景の角度変化量分だけ今回画像を回転及び移動させる。誘導装置1は目標の位置を比較し、角度移動量を算出する。この角度移動量は誤差角とみなすことができ、誤差角を定倍して誘導信号を算出することができる。
【0021】
動作209において、誘導装置1は制御量を更新し、飛しょう制御回路122へ伝達する。誘導装置1は動作207から動作209を繰り返す。
【0022】
図3は、光波画像センサ112の画像データを示す図である。図3(A)は前回フレーム、図3(B)は今回フレームを示す。画像データには目標301と、背景が含まれる。
【0023】
図4は、光波画像センサ112の画像データを2値化した画像を示す図である。図4(A)は前回フレーム、図4(B)は今回フレームを示す。図4(A)及び図4(B)に示すように、輝度閾値を低くすると、目標301と背景が得られる。
【0024】
図5は、背景回転量算出処理の様子を示す図である。図5(A)は前回フレーム、図5(B)は今回フレームの、それぞれ目標を消去した画像である。背景は静止している物体であることが多いため、角度変化量を求めるのに適しているのに対し、目標は激しく動くため、角度変化量を求めるのに適さない。従って、誘導装置1は2値化した画像から目標を消去する。
【0025】
図5(C)乃至(G)は角度変化量を求める方法を示す図である。図5(C)は今回フレームにおいて同一背景画像の対象の一つを表示した画像の図である。図5(D)は前回フレームにおいて同一背景画像の対象の一つを表示した画像の図である。
【0026】
図5(C)及び、図5(D)に示すように、誘導装置1は今回フレームと前回フレームの画像から輝度、長さ、及びアスペクト比等に基づいて特徴量を抽出し、この特徴量が一致する画像を同一背景画像とみなす。
【0027】
次に、同一背景画像の端点を結びベクトルをフレーム毎に作成する。前回フレームにおいて端点a1と端点a2とを結んだベクトルをベクトルa、今回フレームにおいて端点b1と端点b2とを結んだベクトルをベクトルbとする。
【0028】
図5(E)はベクトルaとベクトルbの関係を示した図である。誘導装置1は次の(1)式によってロール回転角θを求める。
【数1】

【0029】
図5(F)は今回フレームの画像を画像中心O2周りに−θ分だけ回転させた画像である。図5(G)は図5(D)と図5(F)の同一背景画像の端点が一致するように配置した画像を示す図である。
【0030】
誘導装置1は、今回フレームの画像を画像中心O2周りに−θ分だけ回転させ、前回フレームの同一背景画像の端点が一致するように配置して比較画像を生成する。誘導装置1は、この比較画像の画像中心O1及び画像中心O2の位置を比較することにより、水平方向の移動量であるヨーY、及び垂直方向への移動量であるピッチPを求める。
【0031】
図6は、目標移動量算出処理の様子を示す図である。図6(A)は前回フレーム、図6(B)は今回フレームの、それぞれ背景を消去した画像である。誘導装置1は、前回フレームから前回目標301Aを、今回フレームから今回目標301Bを得る。
【0032】
図6は、目標移動量算出処理の様子を示す図である。図6(A)は前回フレームの背景に目標を重畳した画像である。図6(B)は今回フレームの背景に目標を重畳した画像である。誘導装置1は、前回フレームから前回目標301Aを、今回フレームから今回目標301Bを得る。
【0033】
図6(C)は角度移動量を求める方法を示す図である。図6(C)に示すように、誘導装置1は前回フレームに、今回フレームを背景回転量算出処理において求めた角度変化量だけ回転及び移動させて重ねる。
【0034】
次に、誘導装置1は前回目標301Aの位置と今回目標301Bの位置から、アジマス誤差角変化ΔHと、エレベーション誤差角変化ΔVとを得る。誘導装置1はアジマスの誤差角Hを次の(2)式、エレベーションの誤差角Vを次の(3)式に従って積算して求める。
【0035】
H=H+ΣΔH ・・・ (2)
V=V+ΣΔV ・・・ (3)
ここで、Hはロックオン時の画像中心と目標のアジマス誤差角、Vはロックオン時の画像中心と目標のエレベーション誤差角である。
【0036】
以上述べたように、本実施形態の誘導装置1は、画像を撮像する光波画像センサ112と、光波画像センサ112から得られた画像データを2値化し、背景画像から角度変化量を算出し、この角度変化量と目標画像から誤差角を算出する信号処理部102と、誤差角から誘導信号を算出して操舵翼を制御する制御部103と、を備える。また、誘導装置1はレートセンサからの入力信号を利用せずに誤差角を算出する。
【0037】
従って、レートセンサを使用しない分だけ軽量化、省スペース化、低コスト化できるという効果がある。
【符号の説明】
【0038】
1:誘導装置、
101:シーカ部、
102:信号処理部、
103:制御部、
112:光波画像センサ、
121:信号処理回路、
122:飛しょう制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する光波画像センサと、
前記光波画像センサから得られた画像データを2値化し、前記2値化した画像データの背景画像の角度変化量から機体角速度を算出し、この機体角速度と前記2値化した画像データの目標画像から誤差角を算出し、前記誤差角から誘導信号を算出する信号処理部と、
前記誘導信号と前記機体角速度に基づいて操舵翼を制御する制御部と、
を備える飛翔体の誘導装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記2値化した画像データから目標画像を消去した背景画像から角度変化量を算出し、
この角度変化量と前記2値化した画像データから背景画像を消去した目標画像から誤差角を算出する、ことを特徴とする請求項1記載の飛翔体の誘導装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
発射後に、前記光波画像センサから得られた画像データを2値化し、前記2値化した画像データの背景画像の角度変化量から機体角速度を算出し、この機体角速度と前記2値化した画像データの目標画像から誤差角を算出する、ことを特徴とする請求項1記載の飛翔体の誘導装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、
レートセンサからの入力信号を利用せずに、前記光波画像センサから得られた画像データを2値化し、前記2値化した画像データの背景画像の角度変化量から機体角速度を算出することにより飛しょう制御を行い、前記2値化した画像データの目標画像の誤差角から誘導信号を算出することにより誘導制御を行う、ことを特徴とする請求項1記載の飛翔体の誘導装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−252670(P2011−252670A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127814(P2010−127814)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】