説明

飛翔昆虫類捕獲器

【課題】ハエやハチ等の飛翔昆虫類を良好に誘引し捕獲することができ、しかも、使用者に不快感を与えるといったことのない飛翔昆虫類捕獲器を提供する。
【解決手段】内部に捕獲室2を形成すると共に、下部に縦向きの侵入用穴部7を設けた捕獲容器1と、この捕獲容器1の侵入用穴部7から吊り下げられた吊り下げ誘引板10と、からなる飛翔昆虫類捕獲器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を捕獲するために用いられる飛翔昆虫類捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔昆虫類、例えばハエを駆除するには、内部に殺虫剤を充填したエアゾールを用いて、駆除するハエに殺虫剤を噴霧して、これを駆除するのが一般的な手法であった。
【0003】
しかしながら、このエアゾールを用いたハエの駆除にあっては、いろいろな制約を受けるおそれがあり、これは、ハエ等が多く発生する食品や食器類のある台所付近では、エアゾールより噴霧した殺虫剤が食品や食器類に付着してしまうといった問題があり、これにより、食品や食器類のある台所付近での使用を控えているのが実情であった。
【0004】
このため、エアゾールによる殺虫剤の噴霧といった手法に代わって、ハエ取りリボンやハエ取り紙等を用いて、これらにハエを粘着させて捕獲する手法が考えられるが、このハエ取りリボンやハエ取り紙等では、どうしても粘着剤で捕獲したハエの死骸等が剥き出しのままとなり、使用中、使用者に不快感を与えるといった問題があったり、あるいは、粘着剤が露出しているので、使用者の手や衣服等に当該ハエ取りリボンやハエ取り紙等がくっついてしまうといったことがあり、取扱いに注意を払う必要があった。
【0005】
そこで、ハエ取りリボンやハエ取り紙等に代わって、捕獲器が普及しつつある。この捕獲器としては、例えば、特開2003−70403号公報に記載されているように、球体状の容器において、その上部と下部とに害虫であるハエ等が侵入可能な小穴と大穴とを設けると共に、内部にハエ等を誘引して殺す作用を有する誘引殺虫剤を収納する。これによって、内部に収納した誘引殺虫剤の臭気が上下の小穴と大穴とから外部に放散され、この臭気に誘われて、小穴あるいは大穴よりハエ等が容器の内部に引き入れられる。そして、容器の内部に引き入れられたハエ等が内部において誘引殺虫剤に触れることで死ぬようになっていた。
【特許文献1】特開2003−70403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の捕獲器にあっては、容器の内部に収納する誘引殺虫剤の臭気が弱いと、ハエ等を全く誘引することができず、また逆に、誘引殺虫剤の臭気を強くすると、今度は誘引殺虫剤の臭気を人間である使用者も嗅ぐことになり、使用者が不快感を覚えるといった問題が生じると共に、誘引殺虫剤の臭気によるハエ等の誘引には限界があり、臭気を強くしても、ハエ等を良好に誘引することができないといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような各問題の解消、すなわち、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を良好に誘引し捕獲することができ、しかも、使用者に不快感を与えるといったことのない飛翔昆虫類捕獲器を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、内部に捕獲室を形成すると共に、下部に縦向きの侵入用穴部を設けた捕獲容器と、この捕獲容器の侵入用穴部から吊り下げられた吊り下げ誘引板と、からなる飛翔昆虫類捕獲器である。
【0009】
第二の発明は、第一の発明において、前記吊り下げ誘引板にあっては、上辺を山形又は弓形等にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にした飛翔昆虫類捕獲器である。
【0010】
第三の発明は、第一又は第二の発明において、前記吊り下げ誘引板にあっては、複数枚の吊り下げ誘引板を幅方向で交差させてつなぎ合わせた飛翔昆虫類捕獲器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、捕獲容器から吊り下げられた吊り下げ誘引板に、ハエやハチ等の飛翔昆虫類が、足場として着地するようになり、着地したハエやハチ等の飛翔昆虫類が、その負の走地性により、吊り下げ誘引板を上方に向かって移動して、上方の捕獲容器内部へと入り込むようになり、これにより、ハエやハチ等の飛翔昆虫類を極めて良好に誘引して捕獲することができる。よって、従来の誘引殺虫剤等の臭気によってハエ等の飛翔昆虫類を誘引して捕獲するものと比べても、極めて高い捕獲効果を得ることができる。しかも、吊り下げ誘引板には一切粘着剤等が付いていないので、使用中、捕獲したハエの死骸等が剥き出しのままとなるのをなくし、使用者に不快感を与えるといった問題をなくすことができ、また、使用者の手や衣服等が粘着剤等にくっついてしまうといった問題もなくすことができ、極めて良好に当該飛翔昆虫類捕獲器を使用することができる。
【0012】
また、吊り下げ誘引板の上辺を山形又は弓形等にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にしたことにより、吊り下げ誘引板の上部において、ハエやハチ等の飛翔昆虫類をスムーズに上方に移動させることができ、これによって、ハエやハチ等の飛翔昆虫類の捕獲率を大幅に高めることができる。
【0013】
また、吊り下げ誘引板において、複数枚の吊り下げ誘引板を幅方向で交差させてつなぎ合わせたことにより、吊り下げ誘引板を360度どの方向からもハエやハチ等の飛翔昆虫類に視認させることができ、吊り下げ誘引板にハエやハチ等の飛翔昆虫類を良好に着地させることができ、これによっても、ハエやハチ等の飛翔昆虫類の捕獲率を大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による飛翔昆虫類捕獲器の一実施形態について説明する。
【0015】
図1、図2、図3に示すように、内部に捕獲室2を形成する捕獲容器1を備え、この捕獲容器1は、略半球状の上部容器体3と、この上部容器体3の下部に着脱自在に嵌合する円形皿状の下部容器体4とから中空構造に形成して、ここを捕獲室2にしたものである。そして、この捕獲容器1における上部容器体3は、その中央上端に小さい径の小穴部5を設ける。
【0016】
一方、捕獲容器1における下部容器体4は、その下部の中央において上方に向かって立ち上がる円筒状の筒部6を設けて、その上端を開放することで、ここに大きな径の縦向きの円形状の侵入用穴部7が設けられる。そして、この下部容器体4における侵入用穴部7の周囲にはリング状の凹部8が設けられる。
【0017】
なお、この上部容器体3と下部容器体4とからなる捕獲容器1にあっては、前述した略半球状や円形皿状に限定されるものではなく、円錐や角錐である錐体状のもの、円柱や角柱である柱体状のもの、直方体状のもの、多面体状のもの等、他の形状のものでも良い。
【0018】
そして、この捕獲容器1の侵入用穴部7から縦長の長方形状である短冊状の吊り下げ誘引板10を吊り下げる。この吊り下げ誘引板10は、紙、木材、樹脂等の材料より作られる。また、吊り下げ誘引板10は、上部に紐11を取り付けて、この紐11は、捕獲容器1の上部容器体3における小穴部5を貫通し、その上端を輪にすると共に、所望の箇所に球状の押し玉12とストッパー板13とを設けて、所望の箇所に設けた押し玉12とストッパー板13とで捕獲容器1の上部容器体3における小穴部5を挟むことにより、紐11が捕獲容器1の上部容器体3における小穴部5に取り付くようになり、これにより、吊り下げ誘引板10を捕獲容器1の侵入用穴部7から吊り下げるようにしている。なお、この吊り下げ誘引板10は、紐11によって捕獲容器1側に取り付けているが、吊り下げ誘引板10の上部の形状を変更することにより、吊り下げ誘引板10を捕獲容器1側に直接取り付けるようにしても良い。
【0019】
そして、この吊り下げ誘引板10には、色を付けることにより、ハエやハチ等の飛翔昆虫類の誘引力を高めることができる。例えば、黒や赤や緑等が好ましく、また、一色ではなく複数色にしても良い。
【0020】
この吊り下げ誘引板10にあっては、前述した紙、木材、樹脂等の一般的な材料で良く、板状になるものならどのようなものでも良い。また、その形等についても前述した一枚の縦長の長方形状である短冊状に限定されるものではなく、後述する他の形状あるいは形態等でも良い。
【0021】
ただし、吊り下げ誘引板10において、その大きさは、ハエやハチ等の飛翔昆虫類の誘引を良好に行うための視認性や接触性等を考慮して、その面積を、1〜1000cmに、より好ましくは、9〜250cmにするのが良い。また、短冊状の吊り下げ誘引板10の場合、その縦の長さについては、吊り下げ誘引板10に飛翔昆虫類が着地後、飛び去ってしまうといったことを防ぐため、20cm以下にするのが好ましい。
【0022】
そして、捕獲容器1内部の捕獲室2の凹部8には、液体15を収納する。この液体15は、醸造酢、醸造酒、果汁等の誘引作用を有する誘引液や水である。誘引液を使用した場合は、その誘引作用によって、飛翔昆虫類をより一層良好に誘引することができる。一方、水を使用した場合は、臭気等の発生がなく、使用時、使用者に一切の不快感を与えるといったことがないと共に、水であるので、安全でこぼれても床等を汚すことがない等の好適な点がある。また、これらの誘引液や水に殺虫剤等を混ぜても良い。さらに、捕獲室2に収納する物質としては、液体15に限定されるものではなく、ゲル状物質等でも良い。そして、これらに醸造酢、醸造酒、果汁等を入れるようにしても良い。なお、捕獲室2の凹部8には液体15等を収納するようにしていたが、飛翔昆虫類の習性等を考慮すれば、捕獲室2に液体15等を収納することなく、捕獲室2の内面を粘着剤でコーティングする、あるいは粘着シートを貼着だけでも、飛翔昆虫類を捕獲することが可能である。なお、このように捕獲室2の内面に粘着剤でコーティング等する場合、捕獲容器1内部にリング状の凹部8を設ける必要はない。
【0023】
次に、このようになる飛翔昆虫類捕獲器における実際の使用例について説明する。なお、この使用例としては、ハエを捕獲する例である。
【0024】
捕獲容器1における上部容器体3の小穴部5より飛び出した紐11の輪を、例えば台所の天井や壁等に装着したフックに引っ掛けることで、当該飛翔昆虫類捕獲器を台所に配置する。
【0025】
すると、飛び回っているハエが当該飛翔昆虫類捕獲器における吊り下げ誘引板10を止り木と思い、足場として吊り下げ誘引板10に着地する。そして、吊り下げ誘引板10に着地したハエは、ハエやハチ等の飛翔昆虫類における負の走地性により、吊り下げ誘引板10を上方に向かって移動する。この負の走地性とは、飛翔昆虫類等において、重力に逆らって上方に向かって移動する性質のことである。
【0026】
そして、この負の走地性により、ハエは吊り下げ誘引板10から上方の紐11に、そして紐11を伝わって、捕獲容器1における下部容器体4の侵入用穴部7より捕獲容器1内部に入り込む。その後、捕獲容器1内部において飛び回り、捕獲容器1内部を飛び回った後、捕獲容器1内部の捕獲室2の液体15に触れて、液体15が醸造酢等の誘引液や水の場合は溺死し、液体15が誘引液や水に殺虫剤等を混ぜたものの場合はそれに触れて死ぬようになる。
【0027】
このようにして、当該飛翔昆虫類捕獲器を台所に配置して、捕獲容器1内部の捕獲室2にハエを捕獲することで、台所付近にいるハエを駆除することができる。そして、捕獲容器1内部に捕獲したハエについては、これを廃棄することによって、当該飛翔昆虫類捕獲器を何度でも繰り返して使用することができる。
【0028】
次に、吊り下げ誘引板10における他の形状あるいは形態について述べる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0029】
吊り下げ誘引板10としては、図4に示すように、短冊状の吊り下げ誘引板10の上辺20を山形にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にする。あるいは、図5に示すように、短冊状の吊り下げ誘引板10の上辺20を弓形、具体的には半円形にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にする。
【0030】
このように吊り下げ誘引板10をその上端に向かって横幅が狭くなる形状にしたことにより、吊り下げ誘引板10に着地したハエやハチ等の飛翔昆虫類を負の走地性により吊り下げ誘引板10の上端まで確実に移動させて、捕獲容器1内部に導くことができる。これは、上辺20が水平であると、吊り下げ誘引板10の上端まで移動してきた飛翔昆虫類が上辺20から飛び去ってしまうといったことが多少あり、吊り下げ誘引板10をその上端に向かって横幅が狭くなる形状にすることで、これを防止することができる。なお、この吊り下げ誘引板10における上端に向かって横幅が狭くなる形状については、上端を尖らせるほど良好な効果を得ることができる。
【0031】
また、前述の吊り下げ誘引板10における上端に向かって横幅が狭くなる形状にすることを考慮すると、例えば、図6に示すように、吊り下げ誘引板10全体を円形状にしても良いし、あるいは、図7に示すように、全体を三角形状にしても良い。また、その他の多角形状や星型形状にしても良い。
【0032】
さらに、吊り下げ誘引板10における他の形態としては、図8に示すように、複数枚、例えば二枚の短冊状の吊り下げ誘引板10を用意して、この二枚の短冊状の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせる。そして、この十字状となる二枚の吊り下げ誘引板10を、捕獲容器1の侵入用穴部7から吊り下げるようにする。また、図9に示すように、短冊状の吊り下げ誘引板10の代わりに、円形状にした吊り下げ誘引板10を用いるようにしても良いし、あるいは、図10に示すように、三角形状にした吊り下げ誘引板10を用いるようにしても良い。
【0033】
このように二枚の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたことにより、吊り下げ誘引板10を360度どの方向からもハエやハチ等の飛翔昆虫類に視認させることができ、これらの吊り下げ誘引板10にハエやハチ等の飛翔昆虫類を極めて高い確率で着地させことができる。要するに、吊り下げ誘引板10におけるハエやハチ等の飛翔昆虫類の誘引力を高めることにより、飛翔昆虫類の捕獲率を大幅に高めることができる。
【0034】
なお、つなぎ合わせる吊り下げ誘引板10については、前述したような二枚に限定されるものではなく、それ以上の複数枚の吊り下げ誘引板10を用意し、これらをつなぎ合わせるようにしても良い。
【0035】
次に、本発明による飛翔昆虫類捕獲器において、各試験を行ったので、これらについて説明する。
【0036】
第一の試験として、飛翔昆虫類捕獲器における吊り下げ誘引板10の効果について試験した。図11(a)に示すように、捕獲容器1の下部に短冊状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Aと、図11(b)に示すように、吊り下げ誘引板10のない試験品Bとを使用して、捕獲容器1内部への捕獲数を調べた。なお、試験品Aにおける短冊状の吊り下げ誘引板10としては、縦の長さ15cm、横幅6.5cm、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板とする。また、各試験品における捕獲容器1内部には誘引液として、市販の醸造酢(赤酢)と水を1:1に溶いた液を収納する。
【0037】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に試験品Aと試験品Bを吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)100匹とイエバエ(Domestica musca)50匹を放ち、24時間経過した後に試験品Aと試験品Bで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
試験品Aでは、その捕獲数が114匹、試験品Bでは、その捕獲数が2匹であり、これから、吊り下げ誘引板10を吊り下げたものの方が、吊り下げ誘引板10のないものよりも明らかに捕獲において著しい効果があることがわかる。
【0040】
第二の試験として、本発明による飛翔昆虫類捕獲器と従来の捕獲器との捕獲効果について試験した。図12(a)に示すように、捕獲容器1内部に水21のみを収納すると共に、捕獲容器1の下部に短冊状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Aと、図12(b)に示すように、従来の捕獲器と同様、吊り下げ誘引板10を吊り下げることなく、捕獲容器1内部に誘引液22を収納して、この捕獲容器1内部に収納した誘引液22の臭気によって誘引して捕獲するようにした試験品Bとを使用して、捕獲容器1内部への捕獲数を調べた。なお、試験品Aにおける短冊状の吊り下げ誘引板10としては、縦の長さ15cm、横幅6.5cm、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板とする。
【0041】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に試験品Aと試験品Bを吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエ100匹とイエバエ50匹を放ち、24時間経過した後に試験品Aと試験品Bで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
試験品Aでは、その捕獲数が77匹、試験品Bでは、その捕獲数が12匹であり、これから、吊り下げ誘引板10を吊り下げた本発明による飛翔昆虫類捕獲器の方が、従来の捕獲器よりも明らかに捕獲において著しい効果がある。要するに、本発明による飛翔昆虫類捕獲器の方が、誘引液等の臭気によって飛翔昆虫類を誘引して捕獲する従来の捕獲器よりも極めて高い捕獲効果を得ていることがわかる。
【0044】
第三の試験として、飛翔昆虫類捕獲器における吊り下げ誘引板10の大きさについて試験した。まず、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板を用意する。この塩化ビニル板を、一辺3cm(面積:9cm)の正方形状、一辺4.5cm(面積:20.25cm)の正方形状、一辺6cm(面積:36cm)の正方形状、一辺9cm(面積:81cm)の正方形状、一辺13cm(面積:169cm)の正方形状、一辺16cm(面積が256cm)の正方形状、の大きさに製作し、これらを捕獲容器1にそれぞれ吊り下げる。そして、吊り下げ誘引板10がない(面積:0cm)ものを試験品A、一辺3cm(面積:9cm)の大きさのものを試験品B、一辺4.5cm(面積:20.25cm)の大きさのものを試験品C、一辺6cm(面積:36cm)の大きさのものを試験品D、一辺9cm(面積:81cm)の大きさのものを試験品E、一辺13cm(面積:169cm)の大きさのものを試験品F、一辺16cm(面積が256cm)の大きさのものを試験品Gとする。なお、各試験品における捕獲容器1内部には誘引液として、市販の醸造酢(赤酢)と水を1:1に溶いた液を収納する。
【0045】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に、試験品A、試験品B、試験品C、試験品D、試験品E、試験品F、試験品Gをそれぞれ吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエを350匹放ち、24時間経過した後に試験品Aから試験品Gで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
試験品Aでは、その捕獲数が1匹であるが、試験品Bでは、捕獲数が20匹と大幅に増え、試験品C、試験品Dでは、捕獲数が37匹、47匹とさらに増える。その後の試験品E、試験品F、試験品Gでも、捕獲数が増えた。
【0048】
よって、吊り下げ誘引板10の大きさとしては、試験品Bである吊り下げ誘引板10の面積が約9cm以上になると、ハエを良好に捕獲することができ、そして、吊り下げ誘引板10の面積が大きくなるにしたがって、捕獲数も増えて行き、捕獲において著しい効果があることがわかる。ただし、吊り下げ誘引板10をあまり大きくすると、飛翔昆虫類捕獲器としてのデザイン的にも、実用的にも劣ったものになってしまうといった問題が生じるおそれがあると共に、吊り下げ誘引板10におけるハエの着地点から上方の捕獲容器1までの距離が長くなると、例えば約20cmよりも長くなると、吊り下げ誘引板10に着地したハエが飛び去ってしまうといった問題が起こる。これらのことから、吊り下げ誘引板10の大きさとしては、その面積において、1〜1000cm、好ましくは9〜250cm、より好ましくは20〜170cmが良い。
【0049】
第四の試験として、飛翔昆虫類捕獲器における吊り下げ誘引板10の形状について試験した。図13(a)に示すように、捕獲容器1の下部に縦長の長方形状である短冊状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Aと、図13(b)に示すように、短冊状の吊り下げ誘引板10の上辺20を山形にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にした吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Bと、図13(c)に示すように、円形状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Cとを使用して、捕獲容器1内部への捕獲数を調べた。なお、各試験品における吊り下げ誘引板10には、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板を用いて、各試験品における吊り下げ誘引板10の面積をすべて約80cmとなるように、すなわち面積を同じにする。また、各試験品における捕獲容器1内部には誘引液として、市販の醸造酢(赤酢)と水を1:1に溶いた液を収納する。
【0050】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に、試験品A、試験品B、試験品Cをそれぞれ吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエを100匹放ち、24時間経過した後に試験品Aから試験品Cで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
試験品Aでは、その捕獲数が12匹、試験品Bでは、その捕獲数が41匹、試験品Cでは、その捕獲数が42匹であり、これから、吊り下げ誘引板10の上辺20を山形にし又は円形にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にしたもの(試験品B、試験品C)の方が、上辺20が水平のもの(試験品A)よりも明らかに捕獲において著しい効果があることがわかる。
【0053】
これは、吊り下げ誘引板10の上辺20を山形にし又は円形にすることで、着地したハエが負の走地性により吊り下げ誘引板10の上端まで移動して捕獲容器1内に入るが、その際、吊り下げ誘引板10の上辺20において、山形又は円形(弓形)にすることで、上辺20が水平のものと比べて、ハエをスムーズに誘導して上方に移動させることができ、着地したハエが飛び去るのをなくすことができるからと考えられる。
【0054】
第五の試験として、飛翔昆虫類捕獲器における吊り下げ誘引板10の形態について試験した。図14(a)に示すように、捕獲容器1の下部に縦長の長方形状である短冊状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Aと、図14(b)に示すように、円形状の吊り下げ誘引板10を吊り下げた試験品Bと、図14(c)に示すように、二枚の短冊状の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたもの(試験品Aの吊り下げ誘引板10を二枚使用する)を吊り下げた試験品Cと、図14(d)に示すように、円形状の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたもの(試験品Bの吊り下げ誘引板10を二枚使用する)を吊り下げた試験品Dとを使用して、捕獲容器1内部への捕獲数を調べた。なお、各試験品における吊り下げ誘引板には、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板を用いて、各試験品における吊り下げ誘引板10の一枚当たりの面積をすべて約80cmとなるように、すなわち面積を同じにする。また、各試験品における捕獲容器1内部には誘引液として、市販の醸造酢(赤酢)と水を1:1に溶いた液を収納する。
【0055】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に、試験品A、試験品B、試験品C、試験品Dをそれぞれ吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエを150匹放ち、24時間経過した後に試験品Aから試験品Dで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
試験品Aでは、その捕獲数が4匹、試験品Bでは、その捕獲数が11匹、試験品Cでは、その捕獲数が26匹、試験品Dでは、その捕獲数が90匹であり、これから、一枚の吊り下げ誘引板10を用いたものより、二枚の吊り下げ誘引板10を十字状につなぎ合わせたものの方が、ハエを捕獲する上で、著しい効果があることがわかる。特に、円形状の吊り下げ誘引板10を十字状につなぎ合わせたものは、非常に良い結果がでている。
【0058】
これらのことから、一枚の吊り下げ誘引板10を用いたものより、二枚の吊り下げ誘引板10を十字状につなぎ合わせて用いたものの方が、捕獲率が大幅に高まると共に、つなぎ合わせる吊り下げ誘引板10を三枚以上の複数枚にすると、より一層捕獲率が高まることが考えられる。
【0059】
これについては、ハエ等の飛翔昆虫類は視覚によって物を認識することが可能であり、これにより、複数枚の吊り下げ誘引板10をつなぎ合わせることで、360度どの方向からも飛翔昆虫類が吊り下げ誘引板10を良好に視認することができ、この吊り下げ誘引板10を止り木と思い、足場として着地するようになると考えられる。
【0060】
第六の試験として、飛翔昆虫類捕獲器において、二枚の吊り下げ誘引板10を十字状につなぎ合わせたものにおける吊り下げ誘引板10の形状について試験した。図15(a)に示すように、捕獲容器1の下部に縦長の長方形状である短冊状でかつ上辺20を山形にした吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたものを吊り下げた試験品Aと、図15(b)に示すように、捕獲容器1の下部に円形状の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたものを吊り下げた試験品Bと、図15(c)に示すように、捕獲容器1の下部に三角形状の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させて十字状につなぎ合わせたものを吊り下げた試験品Cとを使用して、捕獲容器1内部への捕獲数を調べた。なお、各試験品における吊り下げ誘引板10には、厚さ0.5mmの黒色の塩化ビニル板を用いて、各試験品における吊り下げ誘引板10の一枚当たりの面積をすべて約80cmとなるように、すなわち面積を同じにする。また、各試験品における捕獲容器1内部には誘引液として、市販の醸造酢(赤酢)と水を1:1に溶いた液を収納する。
【0061】
そして、チャンバー(大きさは、縦1.82m、横1.82m、高さ1.82m)内の天井に、試験品A、試験品B、試験品Cをそれぞれ吊るして、チャンバー内に、キイロショウジョウバエを200匹放ち、24時間経過した後に試験品Aから試験品Cで捕獲したハエの数、すなわち捕獲数を数えた。この結果を、以下の表6に示す。
【0062】
【表6】

【0063】
試験品Aでは、その捕獲数が42匹、試験品Bでは、その捕獲数が46匹、試験品Cでは、その捕獲数が77匹であり、略短冊状の吊り下げ誘引板10を使用した試験品Aや円形状の吊り下げ誘引板10を使用した試験品Bと比べて、三角形状の吊り下げ誘引板10を使用した試験品Cが、極めて高い捕獲数となっており、これから、三角形状の吊り下げ誘引板10が、ハエを捕獲する上で、さらに著しい効果があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の飛翔昆虫類捕獲器の正面図である。
【図2】本発明の飛翔昆虫類捕獲器の上面図である。
【図3】本発明の飛翔昆虫類捕獲器の断面図である。
【図4】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形状の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図5】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形状の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図6】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形状の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図7】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形状の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図8】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形態の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図9】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形態の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図10】本発明の飛翔昆虫類捕獲器における他の形態の吊り下げ誘引板を説明した正面図である。
【図11】(a)第一の試験における試験品Aを説明する正面図である。(b)第一の試験における試験品Bを説明する正面図である。
【図12】(a)第二の試験における試験品Aを説明する正面図である。(b)第二の試験における試験品Bを説明する正面図である。
【図13】(a)第四の試験における試験品Aを説明する正面図である。(b)第四の試験における試験品Bを説明する正面図である。(c)第四の試験における試験品Cを説明する正面図である。
【図14】(a)第五の試験における試験品Aを説明する正面図である。(b)第五の試験における試験品Bを説明する正面図である。(c)第五の試験における試験品Cを説明する正面図である。(d)第五の試験における試験品Dを説明する正面図である。
【図15】(a)第六の試験における試験品Aを説明する正面図である。(b)第六の試験における試験品Bを説明する正面図である。(c)第六の試験における試験品Cを説明する正面図である。
【符号の説明】
【0065】
1…捕獲容器、2…捕獲室、3…上部容器体、4…下部容器体、5…小穴部、6…筒部、7…侵入用穴部、8…凹部、10…吊り下げ誘引板、11…紐、12…押し玉、13…ストッパー板、15…液体、20…上辺、21…水、22…誘引液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に捕獲室2を形成すると共に、下部に縦向きの侵入用穴部7を設けた捕獲容器1と、
この捕獲容器1の侵入用穴部7から吊り下げられた吊り下げ誘引板10と、
からなることを特徴とする飛翔昆虫類捕獲器。
【請求項2】
前記吊り下げ誘引板10にあっては、上辺20を山形又は弓形等にして、上端に向かって横幅が狭くなる形状にしたことを特徴とする請求項1記載の飛翔昆虫類捕獲器。
【請求項3】
前記吊り下げ誘引板10にあっては、複数枚の吊り下げ誘引板10を幅方向で交差させてつなぎ合わせたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の飛翔昆虫類捕獲器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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