説明

飛翔虫類捕獲ネット

【課題】 自動車,精密機器,家具,陶器等の製作,塗装工場や、食品加工工場等で増殖したり、あるいは外部より侵入したりする種々の飛翔虫類を、通気性を有する捕獲ネットに粘付着せしめて捕獲することを目的とし、特に大規模工場内で発生し又は外部より飛来する虫類を、種を問わず効率的,経済的且つ簡易に捕獲できるようにする。
【解決手段】 網の片面又は両面の、一部又は全体に粘着剤が塗布してあるとともに、網は、網脚の太さDを直径0.1mm〜1.5mmの範囲とし、網目を形成する一辺の長さをLとするとき、L/Dの値を、L/D=3〜15の範囲とし、粘着剤に虫誘因効果を有する微香を付し、また網は、片面又は両面の、一部又は全面を、590nm〜610nmの波長を有する赤黄系色又は(及び)450nm〜500nmの波長を有する青紫系色により着色した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車,精密機器,家具,陶器等の製作,塗装工場や、食品加工工場等で増殖したり、あるいは外部より侵入したりする種々の飛翔虫類を粘付着せしめて捕獲する捕集具に関するものである。
【0002】
双翔目類(オオチョウバエ,ニセケバエ等のハエ類、ユスリカ,アカイエカ等の蚊類)、半翔目類(ヨコバエ,ウンカ等)等々の比較的小型で大量発生する飛翔虫類や、蝶,蛾等に代表される比較的中型の燐翔目類は、製品や半製品に付着したり混入することで、トラブル発生の原因とされるので、品質管理上大変問題視されている。本発明はこれら飛翔、浮遊する虫類を確実かつ容易に捕集することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
飛翔する虫類を捕獲するためには、虫の趨光性を利用し、光源を利用して誘引し容器内に取り込んだり、水没させたり、焼き付けたりして捕集する方法や、蚊取線香のように誘因香気を煙とともに発生させて殺虫する方法や、ハエ取紙のように細巾である帯状体に粘着剤を塗布しこれにハエ類をとまらせて捕獲する方法等、古来より身近に各種製品がみられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら旧来の製品はそれぞれ欠陥があって、有効ではなく、特にエリアの大きい工場内では利用できなかった。例えば、趨光性を利用するものでは捕獲対象範囲が小さく、なによりも費用,コストが甚大で利用し難く、また電源等の制約もあって利用範囲が限られ実用化には供しない。
【0005】
一方、蚊取線香では対象虫が蚊類の一部に限定されることが多く、また捕獲エリアが狭い上に、虫によっては逆に嫌気して逃避拡散するケースもあって、安定した虫捕集に無理があった。
【0006】
さらに、ハエ取紙にあっては狭い範囲での飛翔するハエ主体の捕獲しかできず、大規模な生産工場全体を対象とすることはとても不可能であり、さりとて無数に「ハエ取紙」を吊り下げることは作業性,美観等の面から実用上不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明にかかる飛翔虫類捕獲ネットは上記課題を解決するために、網の片面又は両面の、一部又は全体に粘着剤が塗布してあるとともに、網は、網脚の太さDを直径0.1mm〜1.5mmの範囲とし、網目を形成する一辺の長さをLとするとき、L/Dの値を、L/D=3〜15の範囲とした(請求項1)ものである。
【0008】
また、粘着剤に虫誘因効果を有する微香を付し(請求項2)、さらに網は、片面又は両面の、一部又は全面を、590nm〜610nmの波長を有する赤黄系色又は(及び)450nm〜500nmの波長を有する青紫系色により着色してある(請求項3)ものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる飛翔虫類捕獲ネットによれば、基本構成を網としたので長大なものも容易に製造でき、またその設置も簡単に行うことが可能となり、特に大規模工場内で発生し又は外部より飛来する虫類を種を問わず効率的,経済的且つ簡易に捕獲できる。
【0010】
双翔目類(オオチョウバエ,ニセケバエ等のハエ類、ユスリカ,アカイエカ等の蚊類)、半翔目類(ヨコバエ,ウンカ等)等の飛翔する各種虫類は、例えば塗装工場ではその溶液,溶剤臭に誘引されて集まってくる。又、食品工場でも食品臭に誘引されて同様に工場内外から飛来してくる。そして、これら飛翔する虫類は空気の流れにのって浮遊するものが多く、これらを通気性を有する本発明にかかる飛翔虫類捕獲ネットによれば効率的に且つ広範囲で捕獲でき、虫類が製品に付着したり混入したりすることを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
網の片面又は両面の任意箇所に粘着剤を塗布する。また、使用する網は合成樹脂製又は天然繊維製とし、網脚の太さDを直径0.1mm〜1.5mmの範囲、より好ましくは0.4mm〜1.2mmの範囲とし、網目を形成する一辺の長さをLとするとき、L/Dの値を、L/D=3〜15の範囲とする。
【0012】
そして、粘着剤には必要に応じて虫誘因効果を有する各種の香りを付与する。なお、付与する香りとしては合成香料や天然香料等各種のものが適用可能であり、例えば有機溶剤の香りや果物の香りが使用可能である。何れにしてもフェロモンを刺激,誘発するようなものであればよい。また、網はその片面又は両面を590nm〜610nmの波長を有する赤黄系色と450nm〜500nmの波長を有する青紫系色により任意に着色する。
【0013】
なお、粘着剤の性能は各種考えられるが、要点は大小を問わずに各種飛翔する虫類が飛べなくなる程度の、比較的粘性が弱いものの絡み付き易い付着量の多い粘着樹脂であり、また長期間夏場や冬場の室内作業温度である5℃〜40℃の範囲で、硬化したり、液状軟化したりしない安定粘性を保有していることなどが要求される。
【実施例】
【0014】
次に、本発明にかかる飛翔虫類捕獲ネットの実施例について説明する。まず、使用する粘着剤について説明する。
粘着剤としては例えば下記の例1〜例3のような組成のものが使用可能であり、これを後述する芳香剤とともに網に塗布する。なお、網への塗布方法としては基本的にはマングルによる圧着やニップロールによるが、その他刷毛やローラーで塗ったり、スプレーで塗布したり、あるいは網をこれらに浸漬してもよい。
【0015】
[粘着剤の例1]
ゴム系粘着剤(SBS又はSIS又はブチルゴム) 100部
樹脂(ロジン,テルペン等) 250部
パラフィンオイル 50部
酸化防止剤 2〜5部
【0016】
[粘着剤の例2]
アクリル系粘着剤 100部
樹脂(ロジン等) 10〜30部
架橋剤他助剤 0.5〜1部
【0017】
[粘着剤の例3]
EVA 40部
樹脂(ロジン等) 40部
ワックス 20部
酸化防止剤 2部
【0018】
本発明で使用する粘着剤は前記のように、特に柔軟性が大で、粘着性能がいわゆる接着力よりもむしろタック力(ねばりつき)が要求され、かつ非常に柔軟で塗布量も多いにもかかわらず基材(網)からの脱落しないものが適する。
【0019】
また、誘因効果のある微香を付与するものとしては、果物等の天然香料も使用可能であるが、例えばトルエンやキシレン等の有機系溶剤の臭いを香料として使用可能である。この場合は、例えばポリブデンやポリイソブチレンを希釈し、かつ微香を発するものとして有機溶剤たるキシレンやトルエン等を使用する。
【0020】
使用する網の素材としては合成樹脂製でも天然繊維製でもよく、また、実際に編んだものでも、あるいは網目状に合成樹脂で形成したものでもどちらでもよい。金属製の素材のものの使用も考えられるが、軽量化,柔軟性,粘着剤の塗布性やコストの面から合成樹脂のものや天然繊維のものを使用する。本発明は基本的構成を網とすることにより、ハエ取り紙等のような紙やフィルム素材と異なり通気性を確保できる。空中を飛翔する虫類の多くは空気の流れにのって浮遊するので、捕獲ネットを設置展開した場合もその箇所において空気の流れを遮断することなく、空気が普通に流通するようにする必要がある。そのようにしておくことにより、飛翔している虫類が捕獲ネットを避けることなく、自然と捕獲ネットにあたかも吸い寄せられるようになる。したがって、網脚の太さと網目の大きさの関係が重要なものとなる。
【0021】
そして、適度な通気性を確保しつつ飛翔してきた虫類を捕獲するためには、網は、網脚の太さDを直径0.1mm〜1.5mmの範囲とし、網目を形成する一辺の長さをLとするとき、L/Dの値を、L/D=3〜15の範囲とする。なお通気性,軽量化,強度,経済性を勘案した観点から、網脚の太さDは0.4mm〜1.2mmの範囲とし、またL/D=5〜10の範囲とするのがより望ましい。より具体的には、例えば網脚の太さDを0.8mmとし網目の大きさを6mmとする。この場合、L/D=7.5となる。また、網脚の太さDを1.0mmとし網目の大きさを5mmとする。この場合、L/D=5となる。
【0022】
そして微香を有する粘着剤は、網の片面の一部又は全体やあるいは両面の一部や全体に塗布する。また、片面と他面で塗布する粘着剤の種類を変えてもよい。設置する環境に応じて虫類捕獲効果が有効に発揮されるようにするためである。なお、網脚の太さや網目を形成する一辺の長さに応じて、網への粘着剤の粘着力や粘着量を調整するのが望ましく、したがって上記の例の配合量はその一例である。
【0023】
また、虫が好むとされる、590nm〜610nmの波長を有する赤黄系色と450nm〜500nmの波長を有する青紫系色のどちらか一方かあるいは二色により、網の片面の一部又は全体やあるいは両面の一部や全体を任意に着色する。帯状に色を変えたり、あるいは交互に色を変えるようにする。また、部分的にこれらの色を使用してもよく、あるいは片面と他面で色を変えるようにしてもよい。
【0024】
例えば、屋内外の境に設置するような場合は、片面を屋内用に赤黄系色とし、他面を屋外用に青紫系色とする。そして、捕獲対象とする虫の大きさや種類に応じて粘着剤のタック力を調整してもよい。なお、網の着色方法としては、着色した網糸を使用して編組してもよく、あるいは網地に適当な方法により着色するようにしてもよい。
【0025】
なお、設置と運搬の便宜のために、網の上辺部と下辺部に網目を目通しする支持棒を配してもよい。あるいは上辺部と下辺部を袋状にし、その中を支持棒を通してもよい。支持棒の材質としては金属製やプラスチック製で、網を支持できる程度の強度があれば適当な太さ形状でよい。支持棒を配しておくと、支持棒を芯としてロール巻きや折り畳み状に包装成形し、持ち運びを容易にし、使用に際しては、上下の支持棒を介して吊り下げるようにして利用することにより、手軽で展張セットが容易にできることになる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の飛翔虫類捕獲ネットは、通気性があるフィルター機能を有しつつ、色調,微香臭により一層の各種飛翔虫類の誘因,接近,接触効果を高め、かつ虫の僅かな接触や「とまり」行動に対し、確実,容易に捕獲機能を発揮するのでその効果は従来品になく絶大である。そしてまた、本発明は任意に広幅,長大な形状が得られ、かつ軽量で取り扱い易いことも大きな特徴であり、これにより広範囲なエリア,工場内の飛翔虫類をとりわけ効率よく経済的に捕獲することができ、自動車,精密機器,家具,陶器等の製作,塗装工場や、食品加工工場等で有効に活用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網の片面又は両面の、一部又は全体に粘着剤が塗布してあるとともに、網は、網脚の太さ(以下「D」と称する場合がある。)を直径0.1mm〜1.5mmの範囲とし、網目を形成する一辺の長さをLとするとき、L/Dの値を、L/D=3〜15の範囲としたことを特徴とする飛翔虫類捕獲ネット。
【請求項2】
粘着剤に虫誘因効果を有する微香を付してある請求項1記載の飛翔虫類捕獲ネット。
【請求項3】
網は、片面又は両面の、一部又は全面を、590nm〜610nmの波長を有する赤黄系色又は(及び)450nm〜500nmの波長を有する青紫系色により着色してある請求項1又は請求項2記載の飛翔虫類捕獲ネット。