説明

飛行機玩具

【課題】給排液口を通して液体を供給又は排出可能なおもり部を設けることにより、おもりの重さの微調整を行え、壁等を傷付けず、軽量で持ち運びし易い飛行機玩具を得る。
【解決手段】飛行機玩具は、胴体11と、胴体11の中央部両側に設けられた一対の主翼13と、胴体11の後部に設けられた尾翼14,15とを備える。この玩具の胴体11はプラスチックシート又はゴムシートにより中空かつ気密に形成され、閉止可能な給排気口18を通して気体を封入することにより、形状が維持される。また、この玩具の胴体11の前部に給排液口17を通して液体を供給又は排出可能なおもり部12が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル風船の玩具のうち、海水浴やプールで使用するビーチボールに翼をつけて飛ばして遊べる飛行機玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機玩具は硬質で弾力性のない材料や機械的強度の弱い材料により形成されていた。このため、複数人で飛行機玩具を飛ばしてキャッチボール感覚で遊ぶと、飛行機玩具が破損する等のおそれがあった。
そのため、塩化ビニル製の飛行機玩具が開発された。しかし、この飛行機玩具は重心を設ける等の飛行理論に基づいて作られていないため、この飛行機玩具を投げてもスムーズに飛ばす、すぐに地面に落ちてしまうという問題があった。
そこで、細長い筒状のフィルムからなる胴体に板状の主翼と補助翼及び垂直尾翼を備えた組立式飛行機玩具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に示される飛行機玩具は、胴体に貼着される釣合用おもりを有するため、飛行距離を延ばすことができる。
【特許文献1】特許第2965555号公報(請求項1、請求項5、段落[0006]、[0007]、[0008]、[0013]、[0018]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に示される飛行機玩具では、おもりがゴム製であるため、胴体内の空気量や気象条件に合せておもりの重さの微調整を行うことができず、飛行距離を延ばすことができなかった。また、このおもりをゴムにより形成すると比較的厚い硬質のゴムにならざるを得ず、飛行機玩具を飛ばして壁等に当たった場合、壁等を傷付けるおそれがあった。更に、飛行機玩具の胴体から空気を抜いてこの玩具を持ち運ぶとき、比較的重量の大きいゴム製のおもりを一緒に持ち運ばなければならない問題点もあった。
本発明の目的は、給排液口を通して液体を供給又は排出可能なおもり部を設けることによりおもりの重さの微調整を行うことができ、壁等を傷付けず、軽量で持ち運びし易い、飛行機玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、図1〜図5に示すように、胴体11と、胴体11の中央部両側に設けられた一対の主翼13と、胴体11の後部に設けられた尾翼14,15とを備え、少なくとも胴体11がプラスチックシート又はゴムシートにより中空かつ気密に形成されるとともに閉止可能な給排気口18を通して気体を封入することにより、形状が維持される飛行機玩具の改良である。
その特徴ある構成は、胴体11の前部に給排液口17を通して液体を供給又は排出可能なおもり部12が設けられたところにある。
この請求項1に記載された飛行機玩具では、おもり部12へ給排液口17を通して適量の液体を供給することにより、飛行機玩具の飛行バランスを最適な状態にすることができる。また、飛行機玩具を飛ばしてこの玩具が壁等に当たっても、おもり部12そのものの変形や、この変形に伴うおもり部12内部の液体の移動により壁等に伝わる衝撃が小さくなる。更に、おもり部12から液体を排出すると、重量が軽くなるので、飛行機玩具を容易に持ち運ぶことができる。
また、おもり部12は胴体11の内部又は胴体11の外部にプラスチックシート又はゴムシートを液密に添着することにより形成し、給排液口17が胴体11の前部又はおもり部12に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
以上述べたように、本発明によれば、飛行機玩具に給排液口を通して液体を供給又は排出可能なおもり部を設けたので、適量の液体を供給することにより、胴体内の気体の量や気象条件に合せておもり部の重さの微調整を行うことができる。この結果、飛行機玩具の飛行バランスを最適な状態にすることができるので、飛行機玩具の飛行距離を延ばすことができる。また、飛行機玩具を飛ばしてこの玩具が壁等に当たった場合でも、おもり部の変形やおもり部内部の液体の移動により衝撃が吸収されるため、壁等に伝わる衝撃が小さくなって壁等が傷付かない。また、おもり部から液体を排出すると重量が軽くなるので、飛行機玩具を容易に持ち運ぶことができる。更に、主翼に平行な平面と補助翼に平行な平面とのなす角度が1〜10度となるように補助翼を主翼に対して後上がりに形成すれば、飛行機玩具を飛ばしたときに機首が上がるため、飛行距離を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
図1〜図3に示すように、本発明の飛行機玩具10は、胴体11と、胴体11の中央部両側に水平方向に延びて設けられた一対の主翼13と、これらの主翼13にそれぞれ吊下げられた一対のエンジン16と、胴体11の後部両側に水平方向に延びて設けられた一対の補助翼14と、胴体11の後部上縁に上方に延びて設けられた単一の垂直尾翼15と、胴体11に設けられた給排気口18と、胴体11の前部に設けられたおもり部12と、おもり部12に設けられた給排液口17を備える。
【0007】
胴体11は、略楕円状の一対の楕円部を左右対称に一体的に形成した1枚のプラスチックシート、即ち軍配うちわに近い形状に打抜いた1枚のプラスチックシートのうち、胴体11の上側に相当するプラスチックシートの周縁部を高周波ウェルダー又は超音波シーラー等の熱により溶着することで、形成される(図2及び図3)。また胴体11は中空かつ気密に形成され、気体が給排気口18を通って胴体11に封入されたり或いは胴体11から排出されるように構成される。気体の排出時には、胴体11は全体的に扁平な略楕円状となるように構成される。また気体の封入時には、胴体11の前端部は前端が丸まった略円錐状となり、胴体11の中央部は後方に向うに従って次第に細くなる細長い略円筒状となり、更に胴体11の後端部は後端が丸まった略円錐状となるように構成される。また胴体11の中心線を含む縦断面における下側の線は後上がりに傾斜する曲線となる。上記胴体11を形成するプラスチックシートの材質としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、プラスチックシートの構造としては、上記プラスチックを用いたフィルム等、或いはこれらのフィルム等にナイロン等を積層してアルミニウムを蒸着した複合フィルム等が挙げられる。以下、主翼13、エンジン16、補助翼14及び垂直尾翼15についても胴体11と同様のプラスチックシートが用いられる。なお、この実施の形態では、胴体11を1枚のプラスチックシートから構成したが、2枚以上のプラスチックシート構成してもよい。
【0008】
一対の主翼13は、それぞれ上下対称で同じ大きさの2枚のプラスチックシートの各々の周縁部が、胴体11のときと同様に溶着されることで、胴体11と同様に中空かつ気密に形成される。主翼13と胴体11との溶着部分には、部分的に気体の出入口が設けられる。これにより胴体11に気体が封入されると同時に主翼13にも気体が封入されるように構成される。更に、主翼13には、この主翼13の幅方向の中央に主翼13の長手方向に延びる溶着部を形成してもよい。この溶着部は主翼13の上側シートと下側シートを溶着することにより形成され、主翼13の機械的強度を向上するという機能を有する。
一方、一対のエンジン16は、左右それぞれ1枚の円形状のプラスチックシートの周縁部分と2枚の略三角形状のプラスチックシートの周縁部分を胴体11の形成方法と同様に溶着することで、気体の封入時に先端が丸まった略円錐状となるように構成される。エンジン16は略円錐状の部分の側面に突出した取着部を有し、この取着部の先端部を主翼13の下面に溶着することにより主翼13に吊下げられる。エンジン16は、円形状の底面部分が、胴体11の中心線を含む縦断面と平行になるように設けられる。なお、この実施の形態では、エンジンを3枚のプラスチックシートから構成したが、1枚、2枚又は4枚以上のプラスチックシートにより構成してもよい。また、エンジンを主翼に添着しなくてもよい。
【0009】
一方、一対の補助翼14は、一対の主翼13と同様に形成されるとともに、一対の主翼13と同様に胴体11に溶着される。また補助翼14に平行な平面と、主翼13に平行な平面とのなす角度θは仰角と呼ばれる(図3)。この仰角θが1〜10度、好ましくは3〜7度となるように、補助翼14が主翼13に対して後上がりに形成される。上記仰角θを1〜10度にすることで、補助翼14が風を受けて機体後尾を下げる力が発生し、機首が上がり、飛行距離をより延ばすことができるという効果がある。なお、補助翼14には、この補助翼14の幅方向の中央に補助翼14の長手方向に延びる溶着部を形成してもよい。この溶着部は補助翼14の上側シートと下側シートを溶着することにより形成され、補助翼14の機械的強度を向上するという機能を有する。
また、単一の垂直尾翼15は、主翼13と同様に形成され、主翼13と同様に胴体11に溶着される。なお、この実施の形態では、主翼、補助翼、垂直尾翼を2枚のプラスチックシートから構成したが、1枚又は3枚以上のプラスチックシートにより構成してもよい。更に、給排気口18は、胴体11の後部の左側面であって補助翼14の前方に設けられる。給排気口18には、内部に逆止弁が組込まれかつ栓を有する給排用短管が設けられる。気体の封入又は排出を行うには、指等で給排用短管を押さえて、息を吹き込むか又は胴体11等を圧迫する。給排用短管は、胴体11の内部に押込んで格納できるように構成される。なお、この実施の形態では、給排気口を胴体後部の左側面を設けたが、主翼、補助翼及び垂直尾翼の胴体への溶着部分や、おもり部と重ならない箇所であれば、胴体の外面のどこに設けてもよい。
【0010】
また、おもり部12は、胴体11の前端底部(図1及び図2)に設けられる。なお、おもり部を胴体の前端底部ではなく、胴体の前部であれば、胴体の前端上部や、胴体の前端部に設けてもよい。おもり部12は、1枚の略楕円状のプラスチックシートの周縁部を胴体11の前部の外側に溶着することで形成される。おもり部12は水道水や海水等の液体が入る空間を有する。おもり部12に供給される液体の重量は、液体を除いた飛行機10自体の1〜40倍、好ましくは5〜20倍に設定される。ここで、おもり部12に供給される液体の重量を、液体を除いた飛行機10自体の重量の1〜40倍の範囲に限定したのは、1倍未満では飛行機10が安定して飛ばず、40倍を越えると飛行機10を飛ばしたときに機首がほぼ鉛直下方に向いて落下するからである。更に、給排液口17は、おもり部12の下部に設けられる。給排液口17には、栓を有する給排用短管が設けられる。液体の封入又は排出を行うには、給排用短管の栓をあけて水道水や海水等の液体を注入するか又はおもり部12を圧迫する。給排用短管はおもり部12の内部に押込んで格納できるように構成される。
【0011】
図3中の符号19は輪ゴムを引っかけるためのフックである。このフック19は、略鉤状の硬質のビニル片を胴体11の前部下面に接着することにより形成される。具体的には、上記硬質のビニル片を、胴体11を構成するプラスチックシートと同一の一対のシートにより挟んで溶着することにより形成される。なお、このフック19に輪ゴムを引っかけてゴムの弾性力を利用して飛行機玩具を飛ばすことで、体全体を使って飛ばすときよりも楽な体勢で飛ばすことができるという効果がある。
【0012】
このように構成された飛行機玩具10では、おもり部12及び給排液口17を胴体11に一体化して設けることで、従来の分解できる飛行機玩具のゴム製のおもりと異なり、おもりを忘れたり、なくしてしまうというおそれがない。また、本発明の飛行機玩具10では、胴体11への気体の充填具合や天候条件等により、おもり部12への海水や水道水等の液体の供給量を変更して、おもりの重さを微調整することが可能である。これにより飛行機玩具10の飛行バランスを最適な状態にすることができる。
また、一定の形状を有するゴム製のおもりでは、飛行機玩具を飛ばしてこの玩具が壁等に当たった場合、おもりの形状が変わらずに衝撃の大きさをそのまま伝えるため壁等を傷付けるおそれがあった。これに対し本発明では、飛行機玩具10を飛ばしてこの玩具10が壁等に当たった場合、おもり部12はプラスチックシートで形成されているため、おもり部12自体の形状が変化し、この変化に伴いおもり部12内部の液体が移動することで衝撃が吸収される。この結果、壁等に伝わる衝撃が小さくなり、壁等が傷付くおそれがない。更に、飛行機玩具10を構成する要素の主翼13、エンジン16、補助翼14及び垂直尾翼15をプラスチックシートにより中空かつ気密に形成したので、飛行機玩具10全体の折り畳みが可能となり、従来の飛行機玩具よりも省スペースで持ち運びが容易となる。
【0013】
なお、上記第1の実施の形態では、おもり部を胴体の前部の外側に溶着したが、面ファスナー又は両面テープ等で着脱可能に胴体に添着してもよい。この場合、おもり部は略楕円形状の袋状に形成される。おもり部の上部と、胴体前部のおもり部を添着する部分の双方に面ファスナー又は両面テープ等をそれぞれ接着する。これにより、おもり部を胴体から着脱可能にすることができ、遊戯場所において適当な液体を入手できない場合でも、事前におもり部へ給液し遊戯場所において胴体に添着することでおもりとすることができるとともに、比較的小さいおもり部のみを流し台等の蛇口近傍に持って行くだけで済むのでおもり部への給液作業が容易になる。
【0014】
<第2の実施の形態>
図4及び図5は本発明の第2の実施形態を示す。図4及び図5において図1又は図2及び図3と同一符号は同一部品を示す。
本実施の形態では、おもり部12は胴体11の前部の内側に設けられる。おもり部12は1枚の略楕円状のプラスチックシートの周縁部を、胴体11の前部の内側に溶着することで胴体11の前部の内側に形成される。給排液口17は、胴体11前部の内側に溶着されたプラスチックシートに対向する胴体11の前部下面に設けられる。給排液口17には、栓を有する給排用短管が設けられる。液体の封入又は排出を行うには、給排用短管の栓をあけて水道水や海水等の液体を注入するか又は胴体11を圧迫する。給排用短管は胴体11の内部に押込んで格納できるように構成される。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。このように構成された飛行機玩具10では、おもり部12を構成するプラスチックシートの周縁部が外側に露出しないので、見栄えを向上できる。上記以外の動作は第1の実施の形態と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0015】
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、主翼と補助翼を設けたが、主翼と補助翼の代わりに三角翼を設けてもよい。また、上記第1及び第2の実施の形態では、主翼、エンジン、補助翼及び垂直尾翼を中空かつ気密に形成したが、主翼、補助翼又は垂直尾翼を発砲スチロール等の板材により形成してもよい。更に、上記第1及び第2の実施の形態では、胴体、主翼、尾翼等をプラスチックシートにより形成したが、胴体、主翼、尾翼等をゴムシートにより形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明第1実施形態の飛行機玩具を示す図3のA部拡大断面図である。
【図2】図1のB−B線断面図である。
【図3】その飛行機玩具の側面図である。
【図4】第2実施形態の飛行機玩具の図1に対応する拡大断面図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 飛行機玩具
11 胴体
12 おもり部
13 主翼
14 補助翼
15 垂直尾翼
16 エンジン
17 給排液口
18 給排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体(11)と、前記胴体(11)の中央部両側に設けられた一対の主翼(13)と、前記胴体(11)の後部に設けられた尾翼(14,15)とを備え、少なくとも前記胴体(11)がプラスチックシート又はゴムシートにより中空かつ気密に形成されるとともに閉止可能な給排気口(18)を通して気体を封入することにより、形状が維持される飛行機玩具において、
前記胴体(11)の前部に給排液口(17)を通して液体を供給又は排出可能なおもり部(12)が設けられたことを特徴とする飛行機玩具。
【請求項2】
おもり部(12)は胴体(11)の内部又は胴体(11)の外部にプラスチックシート又はゴムシートを液密に添着することにより形成され、給排液口(17)が胴体(11)の前部又はおもり部(12)に設けられた請求項1記載の飛行機玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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