説明

食中毒原因毒素の毒性を中和するための組成物

【課題】 食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)に対してごく少量でも強く「毒素を中和する作用」を発揮する薬学的組成物や飲食用組成物を提供する。
【解決手段】 ヘビ抽出物を含有する、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための薬学的組成物、飲食用組成物により、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)に対してごく少量でも強く「毒素を中和する作用」を発揮する薬学的組成物や飲食用組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食中毒原因毒素の毒性を中和するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に食品を管理する技術や食品を衛生的に流通・保存する技術の進展が、食中毒の予防に貢献しているが、それでも依然として数多の食中毒の発生事例が報告されている。
【0003】
食中毒の原因となる毒素(食中毒原因毒素)としては、代表的なものとして、赤痢菌、ボツリヌス菌、病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、ウェルシュ菌やコレラ菌などの細菌に由来する毒素(菌体毒素)と、トウアズキやトウゴマなどといった植物に含まれる毒素が挙げられる。
【0004】
こうした食中毒原因毒素による中毒に対応するため、食中毒患者に対して薬学的に処方可能な薬学的組成物や生物の飲食用に使用可能な飲食用組成物として、食中毒症状を引き起こす原因となる細菌に対して殺菌作用のある物質の検索や、食中毒症状を引き起こす原因となる細菌や植物に由来する毒素を中和する作用のある物質の探索がなされ、さらに、そうした物質のうちごく少量でも強い作用を発揮するものであって大量に調製可能なものが提案されることが期待されている。
【0005】
殺菌作用のある物質についてみると、様々な抗生物質などが提案されている。ところが、食中毒の直接の原因は、毒素であることから、殺菌では食中毒原因毒素による中毒に十分に対応できない。食中毒原因毒素に対応するためには、毒素そのものを中和することが重要である。このことは、植物に由来する毒素についても同じである。また、毒素を中和する具体的な物質についてみると、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素に対しては、その毒素を中和する物質として、ヘビ抽出物が提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特願2006−316354号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、薬学的組成物や飲食用組成物について、「腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く食中毒原因毒素」に対してごく少量でも「毒素を中和する作用」を有効に発揮するものであって大量に調製可能なものは、まだ十分な検討がなされているとはいえない。したがって、「腸管出血性大腸菌を除く食中毒原因毒素」に対してごく少量でも強く「毒素を中和する作用」を発揮する物質が切望されている。
【0008】
本発明は、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)に対してごく少量でも強く「毒素を中和する作用」を発揮する薬学的組成物や飲食用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)ヘビ抽出物を含有する、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための薬学的組成物、(2)前記ヘビ抽出物が、毒ヘビ類由来である、上記(1)に記載の薬学的組成物、(3)前記ヘビ抽出物が、マムシ抽出物である、上記(1)に記載の薬学的組成物、(4)前記マムシ抽出物が、ハンピ流エキスである、上記(3)に記載の薬学的組成物、(5)前記ヘビ抽出物が、コブラ抽出物である、上記(1)に記載の薬学的組成物、(6)前記コブラ抽出物が、コブラチンキ剤である、上記(5)に記載の薬学的組成物、(7)前記ヘビ抽出物が、ハブ抽出物である、上記(1)に記載の薬学的組成物、(8)前記ハブ抽出物が、ハブ酒である、上記(7)に記載の薬学的組成物、(9)食中毒原因毒素は、志賀赤痢菌、大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)、セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、腸炎ビブリオ、緑膿菌からなる群より選ばれる細菌の菌体毒素、及び/又は、トウアズキ、カボチャ、トウゴマからなる群より選ばれる植物に含まれる毒素からなる、上記(1)に記載の薬学的組成物、(10)ヘビ抽出物を含有する、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための飲食用組成物、(11)前記ヘビ抽出物が、毒ヘビ類由来である、上記(10)に記載の飲食用組成物、(12)前記ヘビ抽出物が、マムシ抽出物である、上記(10)に記載の飲食用組成物、(13)前記マムシ抽出物が、ハンピ流エキスである、上記(12)に記載の飲食用組成物、(14)前記ヘビ抽出物が、コブラ抽出物である、上記(10)に記載の飲食用組成物、(15)前記コブラ抽出物が、コブラチンキ剤である、上記(14)に記載の飲食用組成物、(16)前記ヘビ抽出物が、ハブ抽出物である、上記(10)に記載の飲食用組成物、(17)前記ハブ抽出物が、ハブ酒である、上記(16)に記載の飲食用組成物、(18)食中毒原因毒素は、志賀赤痢菌、大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)、セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、腸炎ビブリオ、緑膿菌からなる群より選ばれる細菌の菌体毒素、及び/又は、トウアズキ、カボチャ、トウゴマからなる群より選ばれる植物に含まれる毒素からなる、上記(10)に記載の飲食用組成物、を要旨とする。
【0010】
ただし、本明細書において、「ヘビ抽出物」とは、ヘビ亜目の動物の全体もしくは一部を用いて調製された抽出物をいう。ここに、「ヘビ亜目の動物の全体もしくは一部」には、該ヘビ亜目の動物の全体もしくは一部が乾燥した状態にあるもの、および、該ヘビ亜目の動物の全体もしくは一部が乾燥した状態にないもののいずれも含まれる。
【0011】
また、「腸管出血性大腸菌」とは、ベロ毒素を産生する大腸菌を示し、具体的には、O157(Escherichia coli O157:H7)、O26、O111などを挙げることができる。
【0012】
本明細書において、「中和」とは、食中毒原因毒素による毒性を弱める活性を示す。
【0013】
また、「流エキス」とは、生薬の浸出液を示し、「チンキ」とは、生薬をエタノール又はエタノールと精製水の混液で浸出させた浸出液から製された液剤を示す。
【0014】
「ハンピ」とは、マムシからその皮を剥ぐとともにその内臓を取り除いてなるものをさらに乾燥させたものを示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)に対してごく少量でも強く「毒素を中和する作用」を発揮する薬学的組成物や飲食用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(薬学的組成物について)
本発明は、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための薬学的組成物であり、ヘビ抽出物を含有するものである。
【0017】
<食中毒原因毒素について>
本発明において、「食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)」とは、食中毒の原因となる毒素であって、細菌もしくは植物に由来するものであり、且つ、タンパク質、脂質、多糖類の少なくともいずれか1種類にてなるものもしくはこれら2種類以上の複合体にてなるものであり、さらに、分子量が数万以上、より具体的には2万以上であるものを示す。
【0018】
したがって食中毒原因毒素は、「細菌に由来する毒素」と「植物に由来する毒素」を含む概念である。ここに、食中毒原因毒素に含まれる「細菌に由来する毒素」は、「志賀赤痢菌、大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)、セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、腸炎ビブリオ、緑膿菌」からなる群より選ばれた1種類または2種類以上の細菌の菌体毒素であることが好ましい。なお、本明細書に示す「菌体毒素」は、菌体内毒素(エンドトキシン)、菌体外毒素(エキソトキシン)のいずれであってもよい。
【0019】
また、食中毒原因毒素に含まれる「植物に由来する毒素」は、「トウアズキ、カボチャ、トウゴマ」からなる群より選ばれた1種類または2種類以上の植物に含まれる毒素であることが好ましい。なお、例えば、トウアズキに含まれる毒素には、アブリンがあげられ、カボチャに含まれる毒素には、ペポシンがあげられ、トウゴマに含まれる毒素には、リシンがあげられる。これらの毒素は、いずれも植物由来のリボトキシンである。
【0020】
上記したような食中毒原因毒素は、細胞のレセプターと相互作用して細胞死を誘導する性質を示す。そして、この性質が、食中毒原因毒素の毒性である。
【0021】
<ヘビ抽出物について>
この薬学的組成物に含まれるヘビ抽出物を調製するにあたり、「ヘビ」は、ヘビ亜目の動物から適宜選択されるが、具体的に、ハブ、マムシ、コブラなどの毒ヘビ類を好ましく挙げることができる。
【0022】
ヘビ抽出物には、ヘビを構成する全体もしくは一部が用いられる。また、ヘビ抽出物の調製にあたり、ヘビは、乾燥された状態にあるものであっても、乾燥された状態にないものであっても、いずれでもよい。したがって、ヘビ抽出物に用いられるヘビの材料として、例えば、ハンピが用いられてもよい。
【0023】
ヘビ抽出物の調製方法としては、従前より公知の抽出方法を適宜用いることができる。具体的に、例えば、ヘビの材料を抽出用溶媒に浸す方法などの抽出方法にてヘビ抽出物を調製してもよい。ヘビ抽出物を調製する際に用いられる抽出用溶媒としては、特に限定されず、メタノール、エタノール、ヘキサン、ベンゼン、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの有機溶媒や、水などの様々な種類の溶媒を用いることができ、また、それら様々な種類の溶媒のうちの2種以上を混合したものを用いることができる。なお、抽出用溶媒は、エタノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、水のいずれか、もしくは、これらのうち2種類以上を混合したものであることが好ましい。ヘビ抽出物を調製する際の抽出方法を実施する時間(抽出時間)や実施温度(抽出温度)といった条件は、特に限定されない。
【0024】
抽出方法を実施する際に用いる抽出用溶媒の残留性や経済性、抽出作業の効率を考慮すれば、次のように、ヘビの抽出物を調製することが好ましい。
【0025】
すなわち、ヘビの材料を乾燥させた状態とし若しくは乾燥させた状態とせずに、そのヘビの材料を、そのままの状態で若しくは粉砕された状態にして、ヘビの湿重量に対して1〜10倍の重量の抽出用溶媒(エタノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールといった溶媒)に浸して浸漬物Aを調製する。そして、その浸漬物Aを室温で1〜10日放置することで抽出が行われる。そして、放置後、浸漬物Aをろ過してろ液を得ることにより、ヘビ抽出物を得ることができる。
【0026】
また、ヘビの材料を乾燥させた状態とし若しくは乾燥させた状態とせずに、そのヘビの材料を、そのままの状態で若しくは粉砕された状態にて、ヘビの湿重量に対して1〜10倍の重量の水に浸して浸漬物Bを調製する。そして、その浸漬物Bを加熱して80〜100℃の温度にしてその状態を1〜10時間維持することで抽出が行われる。そして、加熱処理後得られた浸漬物Bを更にろ過してろ液を得ることにより、ヘビ抽出物を得ることができる。
【0027】
上記のようにろ液として得られるヘビ抽出物は、必要に応じて希釈若しくは濃縮されてもよい。
【0028】
<流エキスの調製方法>
本発明において、ヘビ抽出物は、流エキスとして調製されてもよい。ところで、通常、流エキスは、生薬を25%〜50%エタノールで抽出することによって得られる。したがって、ヘビ抽出物が流エキスである場合、ヘビ抽出物は、ヘビの材料を25%〜50%エタノールで抽出してなるものとして調製することができる。
【0029】
<薬学的組成物の調製と使用>
本発明の薬学的組成物は、上記に説明したヘビ抽出物を含有するものとして、適宜の剤型に調製されて治療剤をなし、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性の中和に使用される。こうした食中毒原因毒素の毒性の中和は、被験体(食中毒患者)の状況に応じて適宜選択された投与方法にて被験体に投与されることで実施される。
【0030】
<薬学的組成物の調製>
薬学的組成物にてなる治療剤は、上記に説明されたヘビ抽出物を、シロップ剤、丸剤または錠剤、散剤、カプセル、注射剤などといった剤型に応じて調製するための各処理工程によって処理されて得られる。各処理工程は、従前より公知な方法を用いることができる。
【0031】
調製された治療剤は、使用される直前まで、密封アンプルやバイアルに貯蔵されて保管されてよい。
【0032】
<薬学的組成物の投与方法>
薬学的組成物にてなる治療剤の投与方法は、有効量を被験体(患者)に投与する方法を適宜選択できる。このとき、薬学的組成物の内容と投与方法に応じて剤型が適宜選択される。
【0033】
治療剤の投与方法としては、経口投与、直腸内への投与、腹腔内投与、鼻腔投与注射や注入による投与などの非経口投与など、生体内にヘビ抽出物成分に取り込ませることが可能な方法を挙げることができる。治療剤の投与方法は、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を効率よく中和するためには経口投与であることが好ましい。
【0034】
治療剤を投与する場合、治療剤は、個々の被験体の状況に応じた投薬量を適宜定められて、その被験体に投与される。具体的に、治療剤中に配合される有効成分をなすヘビ抽出物の量は、治療又は上有効な量である限り、これを適用すべき患者の症状により、あるいはその剤形等に応じて、適宜決定することができるが、一般的には、治療剤の1回の投与あたり、経口投与では約3〜1000mg、非経口投与では、例えば注射投与の場合では約1〜500mgとされるのが好ましい。また、治療剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり画一的ではないが、通常、成人1日あたり、ヘビ抽出物の量が約1〜1,000mgになるような量であることが好ましい。
【0035】
治療剤を非経口投与する場合、通常、治療剤は、その投与量を薬学的に受容可能なキャリア(非毒性の固定、半固体、液体の充填剤、希釈剤、被包剤などの補助剤)に添加して、投与可能な形態とされて被験体に投与される。この場合、キャリアとしては、被験体の血液に対する等張液、生理食塩水、水、リンゲル溶液、デキストロース溶液などを挙げることができる。キャリアには、等張性や化学的安定性を高める物質などが適宜含まれてよく、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、ポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤、アミノ酸が10残基以下のポリペプチド、血清アルブミンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性高分子化合物、アミノ酸、単糖類、二糖類、3以上の糖鎖構造を有する多糖類、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などのキレート剤、などが含まれていてもよい。なお、治療剤は、投与可能な形態とされたうえで、実際に使用される直前まで、アンプルやバイアルなどの保管容器に貯蔵されて保管されていてもよい。
【0036】
治療剤を非経口投与する場合、治療剤は、同様に個々の被験体の状況に応じた投薬量を適宜定められて、所定の器具(例えば、注射投与の場合は、注射器)にセットされて被験体に投与される。治療剤など非経口投与にあたって使用される薬剤は、被験体の食中毒の状況にとって不利に働くウイルス、生物を除去されている。これらの除去は、治療剤などの薬剤を滅菌ろ過膜に通じることで具体的に実現できる。そして、その治療剤が非経口投与用の器具に充填されて、被験体に投与される。
【0037】
本発明の薬学的組成物によれば、上記したような治療薬をそのままもしくは所定の形態として保管容器に貯蔵してなるものが提供され、また、それと非経口投与用の器具とを併せて薬学的キットが提供される。
【0038】
本発明において、薬学的組成物をなす治療剤を投与するにあたっては、治療剤を持続的に有効にする点で、薬学的組成物が徐放性を備えるもの(徐放性剤)として調製されて、徐放システムにて被験体への投与が行われることが好ましい。
【0039】
徐放性剤は、ヘビ抽出物を含む治療剤を構成する各成分にてなる組成物(ヘビ抽出物、もしくは、ヘビ抽出物と各種添加剤の混合物)を、徐放性マトリックスにて包括させることで調製することができる。徐放性マトリクスとしては、親水性ポリマー物質、疎水性ポリマー物質などを適宜用いることができる。具体的には、ポリラクチド、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレンビニルアセテートまたはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0040】
徐放性剤は、ヘビ抽出物を含む治療剤を構成する各成分にてなる組成物を、リポソームに包含してなるものであってもよい。ヘビ抽出物を含むリポソームは、公知の方法により適宜調製され得る。
【0041】
<薬学的組成物による毒性の中和>
本発明のヘビ抽出液を含む薬学的組成物は、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するためのものである。ここに、「毒性の中和」は、毒性がどの程度抑制されたかを測定することにより、具体的に確認することが可能である。具体的には、培養細胞を用いた方法として、「食中毒原因毒素存在下での培養細胞の生存率を薬学的組成物の存在下と非存在下で測定して両者を比較する方法」によって、「毒性の中和」の効果の程度を測定することができる。
【0042】
<薬学的組成物の利用形態>
本発明の薬学的組成物が経口投与可能なものである場合、薬学的組成物は、そのまま経口摂取されてもよいが、飲食物や、飲食物を構成する飲食用組成物に対して添加されて飲食物と一体に飲食されることで摂取されてよい。飲食物としては、薬学的組成物が腸管内に到達することができるものを好ましく挙げることができる。具体的には、例えば、果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果肉入り飲料や果粒入り果実飲料、野菜汁や野菜ペーストを含む野菜系飲料、豆乳や豆乳を含む豆乳飲料、コーヒーやコーヒーを含むコーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、炭酸飲料、アルコール飲料などの嗜好飲料類、ソーメン、ひやむぎ、うどん、そば、ラーメン、パン、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉、ギョーザの皮、ビーフン、春雨、シリアルなどの穀物粉加工製品類、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子などの菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、麺つゆ類、スパイス類などの調味料類、バター、マーガリン類、マヨネーズ類、植物油などの油脂類、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリームなどの乳製品類、即席麺、カップ麺、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席味噌汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズドライ食品などの加工食品類、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済み冷凍食品などの冷凍食品、水産物缶詰、果実缶詰、肉類缶詰、ペースト缶詰などの缶詰類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮類などの水産加工品類、ジャム・マーマレード類、漬物・煮豆類、農産乾物類などの農産加工品類、ベビーフード、ふりかけ・お茶漬けのりなどの食品などが挙げられる。
【0043】
薬学的組成物を飲食物に添加した場合に、ヘビ抽出物の配合量の範囲は、添加される飲食物の種類などにより適宜選択されるが、約0.01〜50重量%であり、好ましくは0.1〜30重量%である。配合量が0.01重量%以上であることで、ヘビ抽出物の経口摂取による食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性の中和の効果を十分に得ることができるようになり、配合量が50重量%以下であることで、飲食物自体の風味に悪影響を及ぼさないようにすることができるようになる。
【0044】
(飲食用組成物について)
次に、本発明の飲食用組成物について説明する。飲食用組成物は、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するためのものであり、ヘビ抽出物を含有するものであり、且つ、飲食物を構成するためのものである。
【0045】
飲食用組成物によって構成される飲食物は、上記した薬学的組成物を添加可能な飲食物として例示した各種の飲食物を挙げることができる。また、飲食用組成物におけるヘビ抽出物の配合量の範囲は、薬学的組成物を飲食物に添加した場合において示したヘビ抽出物の配合量と同範囲である。
【実施例】
【0046】
実験にはVero細胞が用いられた。Vero細胞を、ウシ胎児血清を含むMEMα培地中で培養し、これによりVero細胞浮遊液を得た。Vero細胞浮遊液を、プレートに播き、48時間培養した。その後、プレートに「志賀毒素と溶媒」の混合物あるいは「志賀毒素と薬学的組成物」を添加し、更に培養し、細胞染色を行い、吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。志賀毒素と薬学的組成物で処理したVero細胞では、志賀毒素による生存率の低下抑制が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘビ抽出物を含有する、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための薬学的組成物。
【請求項2】
前記ヘビ抽出物が、毒ヘビ類由来である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ヘビ抽出物が、マムシ抽出物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記マムシ抽出物が、ハンピ流エキスである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ヘビ抽出物が、コブラ抽出物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記コブラ抽出物が、コブラチンキ剤である、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記ヘビ抽出物が、ハブ抽出物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記ハブ抽出物が、ハブ酒である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
食中毒原因毒素は、志賀赤痢菌、大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)、セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、腸炎ビブリオ、緑膿菌からなる群より選ばれる細菌の菌体毒素、及び/又は、トウアズキ、カボチャ、トウゴマからなる群より選ばれる植物に含まれる毒素からなる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ヘビ抽出物を含有する、食中毒原因毒素(ただし、腸管出血性大腸菌の菌体外毒素を除く)の毒性を中和するための飲食用組成物。
【請求項11】
前記ヘビ抽出物が、毒ヘビ類由来である、請求項10に記載の飲食用組成物。
【請求項12】
前記ヘビ抽出物が、マムシ抽出物である、請求項10に記載の飲食用組成物。
【請求項13】
前記マムシ抽出物が、ハンピ流エキスである、請求項12に記載の飲食用組成物。
【請求項14】
前記ヘビ抽出物が、コブラ抽出物である、請求項10に記載の飲食用組成物。
【請求項15】
前記コブラ抽出物が、コブラチンキ剤である、請求項14に記載の飲食用組成物。
【請求項16】
前記ヘビ抽出物が、ハブ抽出物である、請求項10に記載の飲食用組成物。
【請求項17】
前記ハブ抽出物が、ハブ酒である、請求項16に記載の飲食用組成物。
【請求項18】
食中毒原因毒素は、志賀赤痢菌、大腸菌(腸管出血性大腸菌を除く)、セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コレラ菌、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、腸炎ビブリオ、緑膿菌からなる群より選ばれる細菌の菌体毒素、及び/又は、トウアズキ、カボチャ、トウゴマからなる群より選ばれる植物に含まれる毒素からなる、請求項10に記載の飲食用組成物。

【公開番号】特開2009−274977(P2009−274977A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126871(P2008−126871)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(506391060)
【出願人】(506390993)
【Fターム(参考)】