食品のほぐし装置及び方法
【課題】冷却保存された食品を、傷めることなく効率よくかつばらつきなくほぐす。
【解決手段】食品のほぐし装置は、上端開口部20aから内部空間に食品Fを投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器20を備える。回転容器20は回転軸方向の両側から内部空間を挟む一対の軸方向壁部材24と回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟む一対の幅方向壁部材26,27とを有し、一対の軸方向壁部材に下方に向かって他の軸方向壁部材の間隔が狭まる圧縮傾斜部24bが形成され、一対の幅方向壁部材の両側に他の幅方向壁部材との間隔が広がる伸長傾斜部26c,27cがそれぞれ形成される。ほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器20の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部又は凸条に食品を載せて食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【解決手段】食品のほぐし装置は、上端開口部20aから内部空間に食品Fを投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器20を備える。回転容器20は回転軸方向の両側から内部空間を挟む一対の軸方向壁部材24と回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟む一対の幅方向壁部材26,27とを有し、一対の軸方向壁部材に下方に向かって他の軸方向壁部材の間隔が狭まる圧縮傾斜部24bが形成され、一対の幅方向壁部材の両側に他の幅方向壁部材との間隔が広がる伸長傾斜部26c,27cがそれぞれ形成される。ほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器20の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部又は凸条に食品を載せて食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却保存された調理麺等の食品をほぐすために用いられるほぐし装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼きそばや、焼きうどん等のように茹麺を調理した調理麺が商品容器に入れられて販売されている。この種の調理麺の製造方法は、麺を熱湯で茹でた後に味付けの為に油で炒める等の調理が行われ、その調理麺は雑菌の繁殖を抑制するために調理後急冷され、番重等の保存容器に入れて低温で保存される。このように冷却保存された調理麺は、その後一食毎に分けられ、分けられた一食毎の麺をプラスチック製の商品容器に包装して販売している。
【0003】
一方、調理後急冷されて保存された調理麺は、低温で保存されている間に番重等の保存容器の形状に固まってしまうことが生じる。この原因は明らかにされていないので詳細な記載は避けるけれども、その保存により固定化した調理麺を一旦ほぐした後に一食毎に分けることが従来から行われている。ここで、固定化していない茹麺等であれば突起が内面に形成されて回転する受皿に投入し、その茹麺を攪拌してほぐすことが提案されているけれども(例えば、特許文献1参照。)、保存容器の形状に固定化した調理麺を突起等を用いて強制的に攪拌すると、その攪拌する突起により調理麺の一部の麺線が引っ張られてちぎれてしまうような事態を生じ、商品価値が損なわれる不具合がある。このため、従来からこの調理麺のほぐし作業は作業員の手により行われ、作業員が自分の手を使って調理麺を過度に引っ張らないように注意しつつ攪拌し、これにより調理麺をほぐしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−9795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作業員による調理麺のほぐし作業は、雑菌の繁殖を防止するためにその調理麺を低温に保存した状態で行わなければならず、そのほぐし作業において作業員の手が低温の調理麺により比較的短時間で冷えきってしまう不具合があった。このため、単一の作業員による長時間の連続作業が難しく、生産効率をなかなか向上させることができないという問題があった。また、作業員の長時間作業が可能であったとしても、作業員の握力は疲労により徐々に弱まるため、作業の終了時における調理麺のほぐし具合が不十分になることもあり、調理麺のほぐし具合にばらつきが生じるという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、冷却保存された調理麺等の食品を、傷めることなく効率よくかつばらつきなくほぐすことのできる食品のほぐし装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品のほぐし装置は、上端開口部から内部空間に食品を投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器を備える。その回転容器は回転軸方向の両側から内部空間を挟む一対の軸方向壁部材と回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟む一対の幅方向壁部材とを有し、一対の軸方向壁部材のいずれか一方又は双方に下方に向かって他の軸方向壁部材との間隔が狭まる圧縮傾斜部が形成され、一対の幅方向壁部材の回転軸方向の両側に回転軸の両側に向かって他の幅方向壁部材との間隔が広がる伸長傾斜部がそれぞれ形成されたことを特徴とする。
【0008】
また、食品のほぐし装置は、回転容器の上端開口部を開放可能に閉止する蓋体を備え、回転容器の内部空間に臨む蓋体の内面に回転軸に直交する方向に延びる凸条を形成することが好ましく、一対の軸方向壁部材及び一対の幅方向壁部材のそれぞれの下端縁により包囲される下端開口部を形成し、その下端開口部を開放可能に閉止するシャッタ部材を備えることが更に好ましい。
【0009】
本発明の食品のほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部又は凸条に食品を載せてその食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品のほぐし方法は、自重による食品の圧縮工程と伸長工程を繰り返すことにより食品をほぐすので、機械化に際して従来必要とされた食品を攪拌するための突起のようなものを必要としない。そして、その圧縮工程と伸長工程を食品の自重により行うので、その食品に過度な力が加わるようなことはなく、低温で保存された食品を傷めるようなことはない。また、圧縮工程と伸長工程を繰り返す間にその食品の中に十分空気を取り入れることができるので、食品をふっくらとほぐすことができる。
【0011】
また、本発明の食品のほぐし装置における一対の軸方向壁部材に下方に向かって他の軸方向壁部材との間隔が狭まる圧縮傾斜部を形成するので、その一対の軸方向壁部材を備える回転容器は下方に向かって水平断面積が減少するものとなる。このため、この回転容器に食品を投入して落とし込むと、その食品を自重により圧縮することができる。一方、回転容器の一対の幅方向壁部材の両側に伸長傾斜部を形成したので、回転容器を回転させると、下側に移動した幅方向壁部材の上面に食品が載る状態となる。すると、その壁部材の上面に載った食品は、その両側における部分がその伸長傾斜部に沿って自重により移動することになる。よって、食品が投入された回転容器を回転させることにより、その食品の自重による圧縮と伸長の双方を行うことができる。
【0012】
このほぐし装置は、低温に維持された空間における使用も可能であるので、ほぐし作業の機械化が可能となり、作業員が直接その手でほぐしていた場合と比較してそのほぐしに係る効率を著しく向上させることができる。具体的には、作業員が通常2〜3分必要としていたほぐし作業を、本発明の装置及び方法により30秒程度にまで短縮させることが期待できる。また、そのほぐしの程度は回転容器の回転回数により決定されるので、これを一定とすることにより、そのほぐしの程度にばらつきが生じるようなことも回避することができる。このため、本発明の食品のほぐし装置及び方法では、冷却され低温で保存された食品を、その品質を落とすことなく、効率よくかつばらつきなくほぐすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のほぐし装置を示す図10のA−A線断面図である。
【図2】そのほぐし装置を示す図11のB−B線断面図である。
【図3】その回転容器が基本状態から90°回転した状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】図3のC−C線断面図である。
【図5】その回転容器が基本状態から180°回転した状態を示す図1に対応する断面図である。
【図6】図5のD−D線断面図である。
【図7】その回転容器が基本状態から90°逆方向に回転した状態を示す図3に対応する断面図である。
【図8】その回転容器の内部形状を示す図11のE−E線断面図である。
【図9】そのほぐし装置の平面図である。
【図10】そのほぐし装置の正面図である。
【図11】そのほぐし装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図8〜図11に、本発明の食品のほぐし装置10を示す。このほぐし装置10は、支持台11に回転可能に設けられた回転容器20を備え、その支持台11は回転容器20の両側に配置された一対の脚片12,13を備える。一対の脚片12,13はそれぞれ同一構造であり、それらの脚片12,13は、水平に延びて下部両側にキャスタ12a,13aが設けられた台棒12b,13bと、その台棒12b,13bの上部に上方に延びて組み立てられた脚立部材12c,13cを備える。これらの脚片12,13における台棒12b,13bは連結部材14により連結され、この連結部材14には、ほぐされた食品が排出される番重10aの両側を支持する支持レール16が固定される。そして、脚立部材12c,13cの上部には回転容器20を回転可能に支持するためのベアリング軸受け12d,13dがそれぞれ取付けられる。
【0016】
図8に示すように、回転容器20は、断面が矩形を成すパイプを方形状に配置して得られた枠部材21を有し、枠部材21の対向する両側の短片21a,21aにおける中央部分に互いに外側に向かう丸棒22,22が同軸に固定される。図2に示すように、枠部材21の短片21a,21aには、一対の軸方向壁部材23,24の上縁が接続され、図1に示すように、枠部材21の対向する両側の長片21bには、一対の幅方向壁部材26,27の上縁が接続される。この一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27のそれぞれの両側縁は隣接する壁部材の側縁に接続され、この一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27により包囲される空間により回転容器20の内部空間が構成される。
【0017】
図8に示すように、枠部材21の両側から外側に向かう丸棒22,22は、支持台11における脚立部材12c,13cの上部に設けられたベアリング軸受け12d,13dに支持される。これにより回転容器20は丸棒22,22の中心軸である水平な回転軸を中心として回転可能に取付けられる。このため、一対の軸方向壁部材23,24は、回転軸方向の両側から内部空間を挟むものとなり、一対の幅方向壁部材26,27は、その回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟むものとなる。そして、枠部材21に接続された一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27の上縁により包囲される空間により、内部空間に食品を投入可能な回転容器20の上端開口部20aが形成され、一対の軸方向壁部材23,24の下端縁と一対の幅方向壁部材26,27の下端縁により包囲されて下端開口部20bが形成される。
【0018】
図2に示すように、一対の軸方向壁部材23,24はそれぞれ対称構造であり、これらの壁部材23,24は、枠部材21に接続される上板部23a,24aと、その上板部23a,24aの下端に上端が接続し下方に向かって互いの間隔が狭まるように傾斜する圧縮傾斜部23b,24bと、その圧縮傾斜部23b,24bの下端に上端が接続され下端開口部20bを形成する鉛直な下板部23c,24cとをそれぞれ備える。
【0019】
図1及び図2に示すように、一対の幅方向壁部材26,27もそれぞれ対称構造であり、これらの壁部材26,27も、枠部材21に接続される上板部26a,27aと、一対の軸方向壁部材23,24のそれぞれの下板部23c,24cの両側を連結して下端開口部20bを形成する下板部26b,27bをそれぞれ備える。下板部26b,27bは、山形を成す上側の2辺を有し、この一対の幅方向壁部材26,27は、その下板部26b,27bの上側2辺から回転軸方向の両側に延びてそれぞれ形成された伸長傾斜部26c,27cと、その伸長傾斜部26c,27cの上縁を上板部26a,27aの下縁に連結する連結部26d,27dとを備える。ここで、伸長傾斜部26c,27cは、図8に示すように回転軸方向の外側に向かって他の壁部材27,26との間隔が広がるように傾斜して形成され、かつその外側の端縁が軸方向壁部材23,24の圧縮傾斜部23b,24bの側縁に接続される。また、連結部26d,27dは、図1に示すように、上板部26a,27aの下縁から下板部26b,27bの上端に向かって下方になだらか傾斜するように構成される。このような一対の軸方向壁部材23,24と一対の幅方向壁部材26,27を備えることにより、この回転容器20は下方に向かって水平断面積が減少する内部空間を有するものとなる。
【0020】
図2に示すように、一対の軸方向壁部材23,24の下端縁には板状のシャッタ部材28の両側を移動可能に保持するレール23d,24dがそれぞれ設けられ、図1に示すように、このシャッタ部材28には下端開口部20bと同形同大の開放孔28aが形成される。シャッタ部材28は、レール23d,24dに沿って移動し、この開放孔28aが下端開口部20bに合致することによりその下端開口部20bを開放し、シャッタ部材28が移動して開放孔28aが形成されていない他の部分を下端開口部20bに合致させることによりその下端開口部20bを閉止可能に構成される。
【0021】
図8〜図10に戻って、回転容器20には、その上端開口部20aを開放可能に閉止する蓋体31が設けられる。この蓋体31は、枠部材21の上面に重合するフランジ32を有する方形のハット状を成す。この蓋体31は、フランジ32における回転軸に平行な長片32bが枠部材21の一方の長片21bに複数の蝶番34を介して取付けられ、この蝶番34を介して回転し、回転容器20の上端開口部20aを覆うことによりその開口部20aを閉止し、その状態から図11の二点鎖線で示すように他方の長片32bが枠部材21の他方の長片21bから離間するように回転すると、その上端開口部20aを開放するように構成される。そして、フランジ32の他方の長片32bには枠部材21の他方の長片21bに重合した状態を維持する固定具36と、その蓋体31の開閉の際に作業員が把持するハンドル37が取付けられる。
【0022】
この蓋体31にはハット状の天面を構成する天板33が設けられ、フランジ32における短片32a(図9)の内端縁から天板33の端縁に連続する起立板33b(図11)が回転軸方向の両側に設けられる。また、フランジ32における長片32bの内端縁から天板33の側縁に連続する傾斜板33cが回転軸方向に直交する方向の両側に設けられる。このような構成の蓋体31における回転容器20の内部空間に臨む内面には、断面が台形状の凸条33aが回転軸に直交する方向に延びて形成される。即ち、その凸条33aは蓋体を構成する天板33に一体的に形成され、その両端が天板33の両側に連続する傾斜板33cにそれぞれ連結される(図9)。そして、この凸条33aは蓋体31の回転軸方向の中央部分に形成される(図1及び図2)。また、図10に示すように、支持台11の一対の脚片13の一方には丸棒22を介して回転容器20を回転させる駆動手段であるモータ38がギアボックス38aと共に設けられ、このモータ38は駆動することにより回転容器20を水平な回転軸を中心として回転可能に構成される。
【0023】
次に、本発明における食品のほぐし方法について説明する。ここで、ほぐす食品は、茹で上げた後に調理され、その後急冷されて番重等の保存容器に入れられ、その後の低温による保存により番重等の保存容器の形状に固まってしまった調理麺Fである場合を示す。
【0024】
本発明の食品のほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、その食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0025】
<圧縮工程>
圧縮工程では、下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に食品を落とし込んで自重によりその食品を圧縮する。前述したほぐし装置10を用いる場合には、図11に示すように、上端開口部20aが上側になるように回転容器20を固定し、その状態で蓋体31を二点鎖線で示すように回転させて、回転容器20の上端開口部20aを開放する。そして、この上端開口部20aから冷却保存により番重等の保存容器の形状に固まってしまった調理麺を内部空間に投入する。
【0026】
図1及び図2に示すように、回転容器20に投入された調理麺Fは一対の軸方向壁部材23,24の下方に向かって互いの間隔が狭まる圧縮傾斜部23b,24bの間に達し、この傾斜部23b,24bにより下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に調理麺Fが自重により実線矢印で示すように落ち込む。すると、水平断面積の減少に従って調理麺F自体が占める容積も減少し、調理麺Fは自重による落ち込みにより圧縮される。
【0027】
ここで、この調理麺Fの投入時には、シャッタ部材28により下端開口部20bを閉止しておき、調理麺Fがこの下端開口部20bから外部に排出されることを防止する。
【0028】
<伸長工程>
伸長工程では、傾斜部26c,27c又は凸条33aに食品を載せて食品の一部又は全部を自重により動かす。前述したほぐし装置10を用いる場合には、図3〜図6に示すように、回転容器20を回転させることにより行う。なお、回転容器20を回転させる以前に蓋体31により回転容器20の上端開口部20aを閉止することにより、調理麺Fが回転容器20の回転と共にその上端開口部20aから外部に排出されることを防止することができる。そして、回転容器20の回転は駆動手段であるモータ38を駆動することにより行うことができる。
【0029】
図1及び図2に示すように上端開口部20aが上側にある回転容器20の基本状態から図3及び図4に示すように回転容器20を略90度回転させた状態では、一対の幅方向壁部材26,27の内の一方の壁部材26が下側に位置し、その下側の壁部材26の上面に調理麺Fが載るような状態となる。ここで、その壁部材に26は、下板部26bの上側2辺から回転軸方向の両側に延びて伸長傾斜部26c,26cがそれぞれ形成されており、この傾斜部26c,26cはその壁部材26が調理麺Fの下側に位置した状態でその回転軸方向の外側に向かってその位置を下げる傾斜部26c,26cとなる。このため、その壁部材26の上面に載った調理麺Fは、その両側における部分がその傾斜部26c,26cに沿って自重により矢印で示すように回転軸方向の両側に移動する。また図3に示すように、調理麺Fの連結部26dにはみ出た一部も自重により下方に移動し、これらによりその調理麺Fは周囲に拡がり、その調理麺Fは自重により伸長される。
【0030】
回転容器20が更に回転して、図5及び図6に示すように回転容器20が基本状態から略180度回転して反転した状態では、蓋体31が下側に位置し、回転容器20自体はその蓋体31の上方に位置することになる。すると回転容器20に投入された調理麺Fは、その回転容器20から自重により蓋体31の内側に落ち込み、図5の矢印で示すように傾斜板33c上を滑動又は転動して天板33に至り、図6に示すように、その蓋体31に内面に形成された凸条33aをまたいで載るような状態となる。この凸条33aは回転容器20の内部空間側に突出するものであるので、この凸条33aをまたぐように載った調理麺Fは、図6の矢印で示すように自重により凸条33aの両側に分かれるように拡がり、これによりその調理麺Fの中心部は自重により更に伸長される。特にこの凸条33aは、調理麺Fの中央部分に対向する蓋体31の回転軸方向の中央部分に形成されるので、壁部材26の上面に載って拡げられた調理麺Fの伸長が不足しがちな中心部分を更に伸長させることができる。
【0031】
上記伸長工程の後は、再び圧縮工程を行う。この圧縮工程には駆動手段であるモータ38を駆動することにより、その回転容器20を同方向に又は逆方向に回転させて回転容器20を上端開口部20aが上側にある基本状態に戻す。すると、図1及び図2に示すように、回転容器20の下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に調理麺Fが再び自重により落ち込み、その調理麺Fを自重により圧縮することができる。
【0032】
その後再び伸長工程を行うけれども、このときは、図7に示すように、回転容器20を基本状態から先の伸長工程時における回転方向と逆方向に回転させることが好ましい。図7に示すように回転容器20を逆方向に回転させて、他方の壁部材27を調理麺Fの下側に位置させても、その回転軸方向の外側に向かってその位置を下げる傾斜部27cにより、その壁部材27の上面に載った調理麺Fは、その両側における部分が自重により両側に移動し、調理麺Fの連結部27dにはみ出た一部も自重により下方に移動し、これらによりその調理麺Fを自重により伸長することができる。
【0033】
このような圧縮工程と伸長工程を繰り返すことにより調理麺Fはほぐされ、ほぐされた後の調理麺Fは、回転容器20を基本状態に固定した状態でシャッタ部材28を移動させることにより、開放された下端開口部20bから排出することができ、その下方に位置させた番重10a等の容器にそのほぐされた調理麺Fを集めて取り出すことができる。
【0034】
このように、本発明のほぐし方法では、調理麺Fを攪拌してほぐすための突起等を用いずに、自重による圧縮と伸長を繰り返すことによりその調理麺Fをほぐすものである。このため、食品である調理麺Fに過度な力が加わるようなことはなく、冷却保存された調理麺Fを傷めることがない。また、圧縮工程と伸長工程を繰り返す間にその食品である調理麺Fの中に十分空気を取り入れることができるので、この調理麺Fをふっくらとほぐすことができる。
【0035】
また、本発明の食品のほぐし装置では、このような圧縮と伸長を、調理麺Fを投入した回転容器20を回転させることにより行うことができる。この装置10は、低温に維持された空間における使用も可能であるので、ほぐし作業の機械化を可能とし、作業員が直接その手でほぐしていた場合と比較してそのほぐしに係る効率を著しく向上させることができる。具体的には、作業員が通常2〜3分必要としていたほぐし作業を、本発明の装置及び方法により30秒程度にまで短縮させることが期待できる。また、そのほぐしの程度は回転容器20の回転回数により決定されるので、これらを一定とすることにより、そのほぐしの程度にばらつきが生じるようなことを回避することができる。このため、本発明では、作業員によりほぐしを行っていた場合と比較して、食品である調理麺Fのほぐし時間を短縮させることが可能となり、そのほぐし具合が不十分になるようなことも回避することができる。このため、冷却保存された調理麺Fを、その品質を落とすことなく、効率よくかつばらつきなくほぐすことができる。
【0036】
また、本発明のほぐし装置10における回転容器20は、自重により調理麺Fの圧縮と伸長を繰り返すものであるので、食品である調理麺Fが投入される内面にその調理麺Fが動くための平坦な面を必要とする。このことから、回転容器20の内面にはその動きを阻止するような攪拌用の突起を形成しない。このように突起を形成しないことにより、食品がその内面に残存するようなことも少なくなることから、その回転容器20内面の清掃作業が極めて容易となり、極めて衛生的になる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、回転容器20が略180度回転して反転する例を示したが、比較的ほぐしやすい調理麺F等の食品であれば、回転容器20を反転させることなく、図1及び図2に示す基本状態から180度未満の任意の角度で正逆方向に交互に回転させ、回転容器20が反転する以前に再び基本状態に戻すようにしても良い。例えば、回転容器20を基本状態から100度の角度で正逆方向に交互に回転させても良い。このように回転容器20を反転させなくても、基本状態から90度を超えて回転容器20を回転させると、その回転容器20から調理麺Fを自重により蓋体31の内側に落ち込ませることができる。ここで、回転軸に直交する方向に延びて凸条33aを形成したので、蓋体31の内側に落ち込んだ調理麺Fは必ずその凸条33aに載ることになり、その調理麺Fの中心部を確実に伸長することができる。
【0038】
また、上述した実施の形態では、蓋体31とシャッタ部材28を設ける場合を説明したが、回転容器20を反転させないのであれば、回転容器20の内部空間に投入した食品が回転容器20の揺動の際に上端開口部20aから排出されない場合もあり得る。このような場合には、蓋体31をあえて設けることを必要としない。また、回転容器20を反転させてほぐした後の調理麺F等の食品をその上端開口部20aから排出させる場合には、あえてシャッタ部材28を設けることを必要とせず、下端開口部20bを封止しても良い。
【0039】
また、上述した実施の形態では、回転容器20を回転させる駆動手段としてモータ38を例示したが、回転容器20を回転可能である限り、この駆動手段は丸棒22に直接連結固定され、作業員がその手に持って回転容器20を手動により回転させるクランク状のハンドルであっても良い。
【0040】
また、上述した実施の形態では、一対の軸方向壁部材23,24の双方に圧縮傾斜部23b,24bを形成したが、容器20の基本状態における内部空間の水平断面積が下方に向かって減少する限り、一対の軸方向壁部材23,24のいずれか一方に圧縮傾斜部を形成しても良い。
【0041】
また、上述した実施の形態では、上端開口部20aが回転軸方向に長い長方形を成す回転容器20を用いて説明したが、上端開口部は正方形を成していても良く、回転軸方向が短い長方形を成していても良い。
【0042】
また、上述した実施の形態では、ほぐす食品が焼きそばや焼きうどんのような調理麺Fである場合を例示したが、ほぐす食品は、低温で保存されている間に番重等の保存容器の形状に固まってしまう、スパゲティ、パスタ、調理される以前の茹麺、調理された棊子麺又はチャーハン等の調理米飯であっても良い。
【0043】
更に、上述した実施の形態では、ほぐした食品を番重等の容器に取り出す場合を説明したが、ほぐした食品をベルトコンベア等の作業ラインに直接排出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 ほぐし装置
20 回転容器
20a 上端開口部
20b 下端開口部
23,24 軸方向壁部材
23b,24b 圧縮傾斜部
26,27 幅方向壁部材
26c,27c 伸長傾斜部
28 シャッタ部材
31 蓋体
33a 凸条
F 調理麺(食品)
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却保存された調理麺等の食品をほぐすために用いられるほぐし装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼きそばや、焼きうどん等のように茹麺を調理した調理麺が商品容器に入れられて販売されている。この種の調理麺の製造方法は、麺を熱湯で茹でた後に味付けの為に油で炒める等の調理が行われ、その調理麺は雑菌の繁殖を抑制するために調理後急冷され、番重等の保存容器に入れて低温で保存される。このように冷却保存された調理麺は、その後一食毎に分けられ、分けられた一食毎の麺をプラスチック製の商品容器に包装して販売している。
【0003】
一方、調理後急冷されて保存された調理麺は、低温で保存されている間に番重等の保存容器の形状に固まってしまうことが生じる。この原因は明らかにされていないので詳細な記載は避けるけれども、その保存により固定化した調理麺を一旦ほぐした後に一食毎に分けることが従来から行われている。ここで、固定化していない茹麺等であれば突起が内面に形成されて回転する受皿に投入し、その茹麺を攪拌してほぐすことが提案されているけれども(例えば、特許文献1参照。)、保存容器の形状に固定化した調理麺を突起等を用いて強制的に攪拌すると、その攪拌する突起により調理麺の一部の麺線が引っ張られてちぎれてしまうような事態を生じ、商品価値が損なわれる不具合がある。このため、従来からこの調理麺のほぐし作業は作業員の手により行われ、作業員が自分の手を使って調理麺を過度に引っ張らないように注意しつつ攪拌し、これにより調理麺をほぐしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−9795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作業員による調理麺のほぐし作業は、雑菌の繁殖を防止するためにその調理麺を低温に保存した状態で行わなければならず、そのほぐし作業において作業員の手が低温の調理麺により比較的短時間で冷えきってしまう不具合があった。このため、単一の作業員による長時間の連続作業が難しく、生産効率をなかなか向上させることができないという問題があった。また、作業員の長時間作業が可能であったとしても、作業員の握力は疲労により徐々に弱まるため、作業の終了時における調理麺のほぐし具合が不十分になることもあり、調理麺のほぐし具合にばらつきが生じるという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、冷却保存された調理麺等の食品を、傷めることなく効率よくかつばらつきなくほぐすことのできる食品のほぐし装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の食品のほぐし装置は、上端開口部から内部空間に食品を投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器を備える。その回転容器は回転軸方向の両側から内部空間を挟む一対の軸方向壁部材と回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟む一対の幅方向壁部材とを有し、一対の軸方向壁部材のいずれか一方又は双方に下方に向かって他の軸方向壁部材との間隔が狭まる圧縮傾斜部が形成され、一対の幅方向壁部材の回転軸方向の両側に回転軸の両側に向かって他の幅方向壁部材との間隔が広がる伸長傾斜部がそれぞれ形成されたことを特徴とする。
【0008】
また、食品のほぐし装置は、回転容器の上端開口部を開放可能に閉止する蓋体を備え、回転容器の内部空間に臨む蓋体の内面に回転軸に直交する方向に延びる凸条を形成することが好ましく、一対の軸方向壁部材及び一対の幅方向壁部材のそれぞれの下端縁により包囲される下端開口部を形成し、その下端開口部を開放可能に閉止するシャッタ部材を備えることが更に好ましい。
【0009】
本発明の食品のほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部又は凸条に食品を載せてその食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品のほぐし方法は、自重による食品の圧縮工程と伸長工程を繰り返すことにより食品をほぐすので、機械化に際して従来必要とされた食品を攪拌するための突起のようなものを必要としない。そして、その圧縮工程と伸長工程を食品の自重により行うので、その食品に過度な力が加わるようなことはなく、低温で保存された食品を傷めるようなことはない。また、圧縮工程と伸長工程を繰り返す間にその食品の中に十分空気を取り入れることができるので、食品をふっくらとほぐすことができる。
【0011】
また、本発明の食品のほぐし装置における一対の軸方向壁部材に下方に向かって他の軸方向壁部材との間隔が狭まる圧縮傾斜部を形成するので、その一対の軸方向壁部材を備える回転容器は下方に向かって水平断面積が減少するものとなる。このため、この回転容器に食品を投入して落とし込むと、その食品を自重により圧縮することができる。一方、回転容器の一対の幅方向壁部材の両側に伸長傾斜部を形成したので、回転容器を回転させると、下側に移動した幅方向壁部材の上面に食品が載る状態となる。すると、その壁部材の上面に載った食品は、その両側における部分がその伸長傾斜部に沿って自重により移動することになる。よって、食品が投入された回転容器を回転させることにより、その食品の自重による圧縮と伸長の双方を行うことができる。
【0012】
このほぐし装置は、低温に維持された空間における使用も可能であるので、ほぐし作業の機械化が可能となり、作業員が直接その手でほぐしていた場合と比較してそのほぐしに係る効率を著しく向上させることができる。具体的には、作業員が通常2〜3分必要としていたほぐし作業を、本発明の装置及び方法により30秒程度にまで短縮させることが期待できる。また、そのほぐしの程度は回転容器の回転回数により決定されるので、これを一定とすることにより、そのほぐしの程度にばらつきが生じるようなことも回避することができる。このため、本発明の食品のほぐし装置及び方法では、冷却され低温で保存された食品を、その品質を落とすことなく、効率よくかつばらつきなくほぐすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のほぐし装置を示す図10のA−A線断面図である。
【図2】そのほぐし装置を示す図11のB−B線断面図である。
【図3】その回転容器が基本状態から90°回転した状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】図3のC−C線断面図である。
【図5】その回転容器が基本状態から180°回転した状態を示す図1に対応する断面図である。
【図6】図5のD−D線断面図である。
【図7】その回転容器が基本状態から90°逆方向に回転した状態を示す図3に対応する断面図である。
【図8】その回転容器の内部形状を示す図11のE−E線断面図である。
【図9】そのほぐし装置の平面図である。
【図10】そのほぐし装置の正面図である。
【図11】そのほぐし装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図8〜図11に、本発明の食品のほぐし装置10を示す。このほぐし装置10は、支持台11に回転可能に設けられた回転容器20を備え、その支持台11は回転容器20の両側に配置された一対の脚片12,13を備える。一対の脚片12,13はそれぞれ同一構造であり、それらの脚片12,13は、水平に延びて下部両側にキャスタ12a,13aが設けられた台棒12b,13bと、その台棒12b,13bの上部に上方に延びて組み立てられた脚立部材12c,13cを備える。これらの脚片12,13における台棒12b,13bは連結部材14により連結され、この連結部材14には、ほぐされた食品が排出される番重10aの両側を支持する支持レール16が固定される。そして、脚立部材12c,13cの上部には回転容器20を回転可能に支持するためのベアリング軸受け12d,13dがそれぞれ取付けられる。
【0016】
図8に示すように、回転容器20は、断面が矩形を成すパイプを方形状に配置して得られた枠部材21を有し、枠部材21の対向する両側の短片21a,21aにおける中央部分に互いに外側に向かう丸棒22,22が同軸に固定される。図2に示すように、枠部材21の短片21a,21aには、一対の軸方向壁部材23,24の上縁が接続され、図1に示すように、枠部材21の対向する両側の長片21bには、一対の幅方向壁部材26,27の上縁が接続される。この一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27のそれぞれの両側縁は隣接する壁部材の側縁に接続され、この一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27により包囲される空間により回転容器20の内部空間が構成される。
【0017】
図8に示すように、枠部材21の両側から外側に向かう丸棒22,22は、支持台11における脚立部材12c,13cの上部に設けられたベアリング軸受け12d,13dに支持される。これにより回転容器20は丸棒22,22の中心軸である水平な回転軸を中心として回転可能に取付けられる。このため、一対の軸方向壁部材23,24は、回転軸方向の両側から内部空間を挟むものとなり、一対の幅方向壁部材26,27は、その回転軸に直交する水平方向の両側から内部空間を挟むものとなる。そして、枠部材21に接続された一対の軸方向壁部材23,24及び一対の幅方向壁部材26,27の上縁により包囲される空間により、内部空間に食品を投入可能な回転容器20の上端開口部20aが形成され、一対の軸方向壁部材23,24の下端縁と一対の幅方向壁部材26,27の下端縁により包囲されて下端開口部20bが形成される。
【0018】
図2に示すように、一対の軸方向壁部材23,24はそれぞれ対称構造であり、これらの壁部材23,24は、枠部材21に接続される上板部23a,24aと、その上板部23a,24aの下端に上端が接続し下方に向かって互いの間隔が狭まるように傾斜する圧縮傾斜部23b,24bと、その圧縮傾斜部23b,24bの下端に上端が接続され下端開口部20bを形成する鉛直な下板部23c,24cとをそれぞれ備える。
【0019】
図1及び図2に示すように、一対の幅方向壁部材26,27もそれぞれ対称構造であり、これらの壁部材26,27も、枠部材21に接続される上板部26a,27aと、一対の軸方向壁部材23,24のそれぞれの下板部23c,24cの両側を連結して下端開口部20bを形成する下板部26b,27bをそれぞれ備える。下板部26b,27bは、山形を成す上側の2辺を有し、この一対の幅方向壁部材26,27は、その下板部26b,27bの上側2辺から回転軸方向の両側に延びてそれぞれ形成された伸長傾斜部26c,27cと、その伸長傾斜部26c,27cの上縁を上板部26a,27aの下縁に連結する連結部26d,27dとを備える。ここで、伸長傾斜部26c,27cは、図8に示すように回転軸方向の外側に向かって他の壁部材27,26との間隔が広がるように傾斜して形成され、かつその外側の端縁が軸方向壁部材23,24の圧縮傾斜部23b,24bの側縁に接続される。また、連結部26d,27dは、図1に示すように、上板部26a,27aの下縁から下板部26b,27bの上端に向かって下方になだらか傾斜するように構成される。このような一対の軸方向壁部材23,24と一対の幅方向壁部材26,27を備えることにより、この回転容器20は下方に向かって水平断面積が減少する内部空間を有するものとなる。
【0020】
図2に示すように、一対の軸方向壁部材23,24の下端縁には板状のシャッタ部材28の両側を移動可能に保持するレール23d,24dがそれぞれ設けられ、図1に示すように、このシャッタ部材28には下端開口部20bと同形同大の開放孔28aが形成される。シャッタ部材28は、レール23d,24dに沿って移動し、この開放孔28aが下端開口部20bに合致することによりその下端開口部20bを開放し、シャッタ部材28が移動して開放孔28aが形成されていない他の部分を下端開口部20bに合致させることによりその下端開口部20bを閉止可能に構成される。
【0021】
図8〜図10に戻って、回転容器20には、その上端開口部20aを開放可能に閉止する蓋体31が設けられる。この蓋体31は、枠部材21の上面に重合するフランジ32を有する方形のハット状を成す。この蓋体31は、フランジ32における回転軸に平行な長片32bが枠部材21の一方の長片21bに複数の蝶番34を介して取付けられ、この蝶番34を介して回転し、回転容器20の上端開口部20aを覆うことによりその開口部20aを閉止し、その状態から図11の二点鎖線で示すように他方の長片32bが枠部材21の他方の長片21bから離間するように回転すると、その上端開口部20aを開放するように構成される。そして、フランジ32の他方の長片32bには枠部材21の他方の長片21bに重合した状態を維持する固定具36と、その蓋体31の開閉の際に作業員が把持するハンドル37が取付けられる。
【0022】
この蓋体31にはハット状の天面を構成する天板33が設けられ、フランジ32における短片32a(図9)の内端縁から天板33の端縁に連続する起立板33b(図11)が回転軸方向の両側に設けられる。また、フランジ32における長片32bの内端縁から天板33の側縁に連続する傾斜板33cが回転軸方向に直交する方向の両側に設けられる。このような構成の蓋体31における回転容器20の内部空間に臨む内面には、断面が台形状の凸条33aが回転軸に直交する方向に延びて形成される。即ち、その凸条33aは蓋体を構成する天板33に一体的に形成され、その両端が天板33の両側に連続する傾斜板33cにそれぞれ連結される(図9)。そして、この凸条33aは蓋体31の回転軸方向の中央部分に形成される(図1及び図2)。また、図10に示すように、支持台11の一対の脚片13の一方には丸棒22を介して回転容器20を回転させる駆動手段であるモータ38がギアボックス38aと共に設けられ、このモータ38は駆動することにより回転容器20を水平な回転軸を中心として回転可能に構成される。
【0023】
次に、本発明における食品のほぐし方法について説明する。ここで、ほぐす食品は、茹で上げた後に調理され、その後急冷されて番重等の保存容器に入れられ、その後の低温による保存により番重等の保存容器の形状に固まってしまった調理麺Fである場合を示す。
【0024】
本発明の食品のほぐし方法は、下方に向かって水平断面積が減少する容器の内部空間に食品を自重により落とし込む圧縮工程と、その食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0025】
<圧縮工程>
圧縮工程では、下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に食品を落とし込んで自重によりその食品を圧縮する。前述したほぐし装置10を用いる場合には、図11に示すように、上端開口部20aが上側になるように回転容器20を固定し、その状態で蓋体31を二点鎖線で示すように回転させて、回転容器20の上端開口部20aを開放する。そして、この上端開口部20aから冷却保存により番重等の保存容器の形状に固まってしまった調理麺を内部空間に投入する。
【0026】
図1及び図2に示すように、回転容器20に投入された調理麺Fは一対の軸方向壁部材23,24の下方に向かって互いの間隔が狭まる圧縮傾斜部23b,24bの間に達し、この傾斜部23b,24bにより下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に調理麺Fが自重により実線矢印で示すように落ち込む。すると、水平断面積の減少に従って調理麺F自体が占める容積も減少し、調理麺Fは自重による落ち込みにより圧縮される。
【0027】
ここで、この調理麺Fの投入時には、シャッタ部材28により下端開口部20bを閉止しておき、調理麺Fがこの下端開口部20bから外部に排出されることを防止する。
【0028】
<伸長工程>
伸長工程では、傾斜部26c,27c又は凸条33aに食品を載せて食品の一部又は全部を自重により動かす。前述したほぐし装置10を用いる場合には、図3〜図6に示すように、回転容器20を回転させることにより行う。なお、回転容器20を回転させる以前に蓋体31により回転容器20の上端開口部20aを閉止することにより、調理麺Fが回転容器20の回転と共にその上端開口部20aから外部に排出されることを防止することができる。そして、回転容器20の回転は駆動手段であるモータ38を駆動することにより行うことができる。
【0029】
図1及び図2に示すように上端開口部20aが上側にある回転容器20の基本状態から図3及び図4に示すように回転容器20を略90度回転させた状態では、一対の幅方向壁部材26,27の内の一方の壁部材26が下側に位置し、その下側の壁部材26の上面に調理麺Fが載るような状態となる。ここで、その壁部材に26は、下板部26bの上側2辺から回転軸方向の両側に延びて伸長傾斜部26c,26cがそれぞれ形成されており、この傾斜部26c,26cはその壁部材26が調理麺Fの下側に位置した状態でその回転軸方向の外側に向かってその位置を下げる傾斜部26c,26cとなる。このため、その壁部材26の上面に載った調理麺Fは、その両側における部分がその傾斜部26c,26cに沿って自重により矢印で示すように回転軸方向の両側に移動する。また図3に示すように、調理麺Fの連結部26dにはみ出た一部も自重により下方に移動し、これらによりその調理麺Fは周囲に拡がり、その調理麺Fは自重により伸長される。
【0030】
回転容器20が更に回転して、図5及び図6に示すように回転容器20が基本状態から略180度回転して反転した状態では、蓋体31が下側に位置し、回転容器20自体はその蓋体31の上方に位置することになる。すると回転容器20に投入された調理麺Fは、その回転容器20から自重により蓋体31の内側に落ち込み、図5の矢印で示すように傾斜板33c上を滑動又は転動して天板33に至り、図6に示すように、その蓋体31に内面に形成された凸条33aをまたいで載るような状態となる。この凸条33aは回転容器20の内部空間側に突出するものであるので、この凸条33aをまたぐように載った調理麺Fは、図6の矢印で示すように自重により凸条33aの両側に分かれるように拡がり、これによりその調理麺Fの中心部は自重により更に伸長される。特にこの凸条33aは、調理麺Fの中央部分に対向する蓋体31の回転軸方向の中央部分に形成されるので、壁部材26の上面に載って拡げられた調理麺Fの伸長が不足しがちな中心部分を更に伸長させることができる。
【0031】
上記伸長工程の後は、再び圧縮工程を行う。この圧縮工程には駆動手段であるモータ38を駆動することにより、その回転容器20を同方向に又は逆方向に回転させて回転容器20を上端開口部20aが上側にある基本状態に戻す。すると、図1及び図2に示すように、回転容器20の下方に向かって水平断面積が減少する内部空間に調理麺Fが再び自重により落ち込み、その調理麺Fを自重により圧縮することができる。
【0032】
その後再び伸長工程を行うけれども、このときは、図7に示すように、回転容器20を基本状態から先の伸長工程時における回転方向と逆方向に回転させることが好ましい。図7に示すように回転容器20を逆方向に回転させて、他方の壁部材27を調理麺Fの下側に位置させても、その回転軸方向の外側に向かってその位置を下げる傾斜部27cにより、その壁部材27の上面に載った調理麺Fは、その両側における部分が自重により両側に移動し、調理麺Fの連結部27dにはみ出た一部も自重により下方に移動し、これらによりその調理麺Fを自重により伸長することができる。
【0033】
このような圧縮工程と伸長工程を繰り返すことにより調理麺Fはほぐされ、ほぐされた後の調理麺Fは、回転容器20を基本状態に固定した状態でシャッタ部材28を移動させることにより、開放された下端開口部20bから排出することができ、その下方に位置させた番重10a等の容器にそのほぐされた調理麺Fを集めて取り出すことができる。
【0034】
このように、本発明のほぐし方法では、調理麺Fを攪拌してほぐすための突起等を用いずに、自重による圧縮と伸長を繰り返すことによりその調理麺Fをほぐすものである。このため、食品である調理麺Fに過度な力が加わるようなことはなく、冷却保存された調理麺Fを傷めることがない。また、圧縮工程と伸長工程を繰り返す間にその食品である調理麺Fの中に十分空気を取り入れることができるので、この調理麺Fをふっくらとほぐすことができる。
【0035】
また、本発明の食品のほぐし装置では、このような圧縮と伸長を、調理麺Fを投入した回転容器20を回転させることにより行うことができる。この装置10は、低温に維持された空間における使用も可能であるので、ほぐし作業の機械化を可能とし、作業員が直接その手でほぐしていた場合と比較してそのほぐしに係る効率を著しく向上させることができる。具体的には、作業員が通常2〜3分必要としていたほぐし作業を、本発明の装置及び方法により30秒程度にまで短縮させることが期待できる。また、そのほぐしの程度は回転容器20の回転回数により決定されるので、これらを一定とすることにより、そのほぐしの程度にばらつきが生じるようなことを回避することができる。このため、本発明では、作業員によりほぐしを行っていた場合と比較して、食品である調理麺Fのほぐし時間を短縮させることが可能となり、そのほぐし具合が不十分になるようなことも回避することができる。このため、冷却保存された調理麺Fを、その品質を落とすことなく、効率よくかつばらつきなくほぐすことができる。
【0036】
また、本発明のほぐし装置10における回転容器20は、自重により調理麺Fの圧縮と伸長を繰り返すものであるので、食品である調理麺Fが投入される内面にその調理麺Fが動くための平坦な面を必要とする。このことから、回転容器20の内面にはその動きを阻止するような攪拌用の突起を形成しない。このように突起を形成しないことにより、食品がその内面に残存するようなことも少なくなることから、その回転容器20内面の清掃作業が極めて容易となり、極めて衛生的になる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、回転容器20が略180度回転して反転する例を示したが、比較的ほぐしやすい調理麺F等の食品であれば、回転容器20を反転させることなく、図1及び図2に示す基本状態から180度未満の任意の角度で正逆方向に交互に回転させ、回転容器20が反転する以前に再び基本状態に戻すようにしても良い。例えば、回転容器20を基本状態から100度の角度で正逆方向に交互に回転させても良い。このように回転容器20を反転させなくても、基本状態から90度を超えて回転容器20を回転させると、その回転容器20から調理麺Fを自重により蓋体31の内側に落ち込ませることができる。ここで、回転軸に直交する方向に延びて凸条33aを形成したので、蓋体31の内側に落ち込んだ調理麺Fは必ずその凸条33aに載ることになり、その調理麺Fの中心部を確実に伸長することができる。
【0038】
また、上述した実施の形態では、蓋体31とシャッタ部材28を設ける場合を説明したが、回転容器20を反転させないのであれば、回転容器20の内部空間に投入した食品が回転容器20の揺動の際に上端開口部20aから排出されない場合もあり得る。このような場合には、蓋体31をあえて設けることを必要としない。また、回転容器20を反転させてほぐした後の調理麺F等の食品をその上端開口部20aから排出させる場合には、あえてシャッタ部材28を設けることを必要とせず、下端開口部20bを封止しても良い。
【0039】
また、上述した実施の形態では、回転容器20を回転させる駆動手段としてモータ38を例示したが、回転容器20を回転可能である限り、この駆動手段は丸棒22に直接連結固定され、作業員がその手に持って回転容器20を手動により回転させるクランク状のハンドルであっても良い。
【0040】
また、上述した実施の形態では、一対の軸方向壁部材23,24の双方に圧縮傾斜部23b,24bを形成したが、容器20の基本状態における内部空間の水平断面積が下方に向かって減少する限り、一対の軸方向壁部材23,24のいずれか一方に圧縮傾斜部を形成しても良い。
【0041】
また、上述した実施の形態では、上端開口部20aが回転軸方向に長い長方形を成す回転容器20を用いて説明したが、上端開口部は正方形を成していても良く、回転軸方向が短い長方形を成していても良い。
【0042】
また、上述した実施の形態では、ほぐす食品が焼きそばや焼きうどんのような調理麺Fである場合を例示したが、ほぐす食品は、低温で保存されている間に番重等の保存容器の形状に固まってしまう、スパゲティ、パスタ、調理される以前の茹麺、調理された棊子麺又はチャーハン等の調理米飯であっても良い。
【0043】
更に、上述した実施の形態では、ほぐした食品を番重等の容器に取り出す場合を説明したが、ほぐした食品をベルトコンベア等の作業ラインに直接排出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
10 ほぐし装置
20 回転容器
20a 上端開口部
20b 下端開口部
23,24 軸方向壁部材
23b,24b 圧縮傾斜部
26,27 幅方向壁部材
26c,27c 伸長傾斜部
28 シャッタ部材
31 蓋体
33a 凸条
F 調理麺(食品)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口部(20a)から内部空間に食品(F)を投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器(20)を備え、
前記回転容器(20)は前記回転軸方向の両側から前記内部空間を挟む一対の軸方向壁部材(23,24)と前記回転軸に直交する水平方向の両側から前記内部空間を挟む一対の幅方向壁部材(26,27)とを有し、
前記一対の軸方向壁部材(23,24)のいずれか一方又は双方に下方に向かって他の軸方向壁部材(24,23)との間隔が狭まる圧縮傾斜部(23b,24b)が形成され、
前記一対の幅方向壁部材(26,27)の前記回転軸方向の両側に前記回転軸の両側に向かって他の幅方向壁部材(27,26)との間隔が広がる伸長傾斜部(26c,27c)がそれぞれ形成された
ことを特徴とする食品のほぐし装置。
【請求項2】
回転容器(20)の上端開口部(20a)を開放可能に閉止する蓋体(31)を備え、前記回転容器(20)の内部空間に臨む前記蓋体(31)の内面に回転軸に直交する方向に延びる凸条(33a)が形成された請求項1記載の食品のほぐし装置。
【請求項3】
一対の軸方向壁部材(23,24)及び一対の幅方向壁部材(26,27)のそれぞれの下端縁により包囲される下端開口部(20b)が形成され、前記下端開口部(20b)を開放可能に閉止するシャッタ部材(28)を備える請求項1又は2記載の食品のほぐし装置。
【請求項4】
下方に向かって水平断面積が減少する容器(20)の内部空間に食品(F)を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部(26c,27c)又は凸条(33a)に前記食品(F)を載せて前記食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返す食品のほぐし方法。
【請求項1】
上端開口部(20a)から内部空間に食品(F)を投入可能であって水平な回転軸を中心として回転可能に設けられた回転容器(20)を備え、
前記回転容器(20)は前記回転軸方向の両側から前記内部空間を挟む一対の軸方向壁部材(23,24)と前記回転軸に直交する水平方向の両側から前記内部空間を挟む一対の幅方向壁部材(26,27)とを有し、
前記一対の軸方向壁部材(23,24)のいずれか一方又は双方に下方に向かって他の軸方向壁部材(24,23)との間隔が狭まる圧縮傾斜部(23b,24b)が形成され、
前記一対の幅方向壁部材(26,27)の前記回転軸方向の両側に前記回転軸の両側に向かって他の幅方向壁部材(27,26)との間隔が広がる伸長傾斜部(26c,27c)がそれぞれ形成された
ことを特徴とする食品のほぐし装置。
【請求項2】
回転容器(20)の上端開口部(20a)を開放可能に閉止する蓋体(31)を備え、前記回転容器(20)の内部空間に臨む前記蓋体(31)の内面に回転軸に直交する方向に延びる凸条(33a)が形成された請求項1記載の食品のほぐし装置。
【請求項3】
一対の軸方向壁部材(23,24)及び一対の幅方向壁部材(26,27)のそれぞれの下端縁により包囲される下端開口部(20b)が形成され、前記下端開口部(20b)を開放可能に閉止するシャッタ部材(28)を備える請求項1又は2記載の食品のほぐし装置。
【請求項4】
下方に向かって水平断面積が減少する容器(20)の内部空間に食品(F)を自重により落とし込む圧縮工程と、傾斜部(26c,27c)又は凸条(33a)に前記食品(F)を載せて前記食品の一部又は全部を自重により動かす伸長工程とを繰り返す食品のほぐし方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−273576(P2010−273576A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127609(P2009−127609)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(506272297)常陽機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(506272297)常陽機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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