説明

食品の容器と食品容器の開封方法

【課題】 容器が結露している場合、指先が水で濡れている場合、あるいは指先の力が弱い高齢者や手先の不自由な人でも容易に容器の蓋材を開封できるようにする。
【解決手段】 容器本体10のフランジ部15に樹脂フィルム状の蓋材20を密閉状態にヒートシールしてなり、前記フランジ部15上の蓋材20または前記フランジ部15から外側に外れた部位の蓋材20のいずれか一方に孔30を穿設し、該孔30に爪楊枝、果物用フォーク等の開封補助部材を引っ掛けて前記容器本体10からの蓋材剥離を容易にした構成。前記孔30を最大寸法が約4mm以下の円形、楕円、長円、隅部に丸みを持たせた矩形の内の一つとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水分含有量が20%を超える食品の包装分野において内容物の保存性や保護のために、樹脂製のフィルムまたはシートよりなる容器本体に樹脂フィルム状の蓋材をシールすることにより密封し、使用時に容易に開封できる所謂イージーオープンタイプの密封包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
イージーオープンタイプの密封包装容器は内容物の保存性や保護のための安定した密封性が要求されると共に、使用時に容易に開封できることが要求される。イージーオープンタイプの密閉包装容器には、通常、容易に開封を開始できるように開封口が形成されており、カップ等丸い本体形状のものはフランジ部の一部を凸型とすることにより、トレイ等の四角い本体形状のものはコーナーのフランジ部を広くして活用することにより開封口が形成されている。
【0003】
0.5mm以下のシートを成形したトレイや軟質フィルムによるソフトガスパック包装のパッケージなどでは通常、フランジ部のシール部分に未シール部分を設けて開封口とし、未シール部分の蓋材と底材の両方をつかんで開封するようにして使用されている。また、蓋材につまみ部(タブ)を設け、該つまみ部を指で掴み剥離(ピーリング)を容易にしている。
【0004】
トレイ状の容器の場合、フランジ部の限られたシール幅で密封性を保持する為、高めの剥離強度の容器本体と蓋材の組み合わせ、例えば800g〜2000g/15mmの剥離強度のものが一般的に使用されており、開封にはかなり指先の力を必要とする。高齢者や婦女子、手先の不自由な人には開封しにくいという問題があった。
【0005】
容易に開封できる包装容器としてコーナー部に二箇所以上の開封口を設け、必要に応じて切り込みまたはノッチを設けて、2段階以上のフランジに沿った方向への蓋材剥離操作を行うものとして特開2005−096787号公報が提案されている。
【0006】
フランジの角部に開封口となる未シール部(未接合部)を有し、該未接合部に1つ以上の凸部を設けた易開封の包装容器として特開2002−302158号公報が提案されている。
【0007】
フランジ部と蓋材のシール部近傍に切れ目またはスリット状貫通孔を設け再封時の保持力を向上させたものとして特開2006−131263号公報、特開2004−182292号公報が、湯切り性をよくするためフランジ部と蓋材のシール部近傍に切れ目を備えた構成として特開2003−285881号公報が提案されている。
【特許文献1】特開2005−096787号公報
【特許文献2】特開2002−302158号公報
【特許文献3】特開2006−131263号公報
【特許文献4】特開2004−182292号公報
【特許文献5】特開2003−285881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1及び2においては、切り込みまたはノッチを併用しないと高齢者や手先の不自由な人では指でつまんだ蓋材部分が滑ってしまい開封しにくい。特に冷蔵庫から出して容器が結露している場合、または炊事で指先が濡れている場合、つまんだ蓋材が滑って開封しにくい。
特許文献3は本願発明と目的及び構成が異なるうえ、切れ目はフランジ部の内側方向に配設されている。
【0009】
特許文献4は蓋材に配設するスリット状貫通孔の目的と構成が本願発明と異なる。そして、特許文献4におけるスリット状貫通孔はフランジ部外縁に沿って円弧状に約25mm以上の長い範囲にわたって設けないとフランジ部外縁に引っ掛けられない。そして、爪楊枝や果物用ナイフを前記スリット状貫通孔に引っ掛けて蓋材を剥離した場合、爪楊枝や果物用ナイフがスリット状貫通孔から外れてうまく引っ掛けられない。または、蓋材がスリット状貫通孔の端部から裂ける、あるいは千切れるといった恐れがあった。
【0010】
特許文献5における切れ目は、湯切り性を目的としており本願発明と目的と構成が異なる。
さらに、特許文献3〜5の容器は豆腐やプリン、水羊羹、ゼリー、ヨーグルト、もずくなど水分含有量が20%を超える食品や液状に近い食品を密封包装するものでない。容器内に保存する食品は水分含有量が20%以下で、開封後、給湯して食する即席麺などのかなり乾燥した食品である。さらに、特許文献3〜5における蓋材は容器との接合力が弱く比較的容易に開封できる。
【0011】
本発明は容器内に豆腐やプリン、水羊羹、あんみつ、ゼリー、ヨーグルト、ところてん、もずく、茶碗蒸し、あげ、こんにゃく、ご飯、煮物、漬物など水分含有量が20%を超える食品や液状に近い食品を所定期間保存可能に密封すると共に、容易に開封できることを目的とする。特に、容器が結露している場合,または指先が水で濡れていて蓋材を掴んでも滑りやすい場合、あるいは指先の力が弱い高齢者や手先の不自由な人などが爪楊枝、料理用串、果物用フォークの内いずれか一つの開封補助部材を用い容易に開封できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる水分含有量が20%を超える食品の容器は、有底容器の開口端面に樹脂フィルム状の蓋材を密閉状態に接合し、前記開口端面上の前記蓋材または前記開口端面から外側に外れた部位の前記蓋材のいずれか一方に爪楊枝、料理用串、果物用フォークの内いずれか一つの開封補助部材を引っ掛けられる孔を穿設し前記蓋材の剥離を容易にしたことを特徴としたもので、容器が結露している場合、指先が水で濡れている場合、あるいは指先の力が弱い高齢者や手先の不自由な人でも爪楊枝、料理用串、果物用フォークなどの開封補助部材を用い容易に開封できる (請求項1)
【0013】
さらに、本発明にかかる水分含有量が20%を超える食品の容器は、孔の最大寸法が約4mm以下の円形、楕円、長円、隅部に丸みを持たせ蓋材が裂けないようにした矩形の内から選んだ一つとしたことを特徴としたもので、容器フランジ部の未シール開封口の面積、または蓋材の端を指でつまむ場合のつまみ代(タブ面積)を従前より小さくできる。即ち、容器及び蓋剤の材料費を少なくできる。 (請求項2)
【0014】
さらに、本発明にかかる食品容器の開封方法は、有底容器の開口端面に樹脂フィルム状の蓋材を密閉状態に接合し、前記蓋材前記開口端面上の前記蓋材または前記開口端面から外側に外れた部位の前記蓋材のいずれか一方に最大寸法が約4mm以下の小孔を穿設しておき、前記孔に爪楊枝、料理用串、果物用フォークの内いずれか一つを引っ掛け前記蓋材を剥離するようにしたことを特徴としたもので、これにより容器が結露している場合、指先が水で濡れている場合、あるいは指先の力が弱い高齢者や手先の不自由な人でも容易に開封できる。また、容器及び蓋剤の材料費を少なくできる。 (請求項3)
【発明の効果】
【0015】
上記構成により本発明の食品用容器は、容器内に豆腐やプリン、水羊羹、あんみつ、ゼリー、ヨーグルト、ところてん、もずく、茶碗蒸し、あげ、こんにゃく、ご飯、煮物、漬物など水分含有量が20%を超える食品や液状に近い食品を密封するとともに、容易に開封できる。特に、容器が結露している,または指先が水で濡れていて蓋材を掴んでも滑りやすい場合、あるいは指先の力が弱い高齢者や手先の不自由な人などが爪楊枝、料理用串、果物用フォークなどの開封補助部材を用い容易に開封できる。
また、容器フランジ部の未シール開封口の面積を小さくできる、または蓋材の端を指で掴む場合のつまみ代(タブ面積)を従前より小さくでき、容器及び蓋剤の材料費を少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる水分含有量が20%を超える食品の容器は上述の通りである。容器本体の構成材料は、蓋材5が易剥離状態に接着できる限り、その材質が特に制限されるものではなく、通常のイージーオープンタイプの容器の容器本体として使用される材料を使用することができ、このような材料として、例えばA−PET、PET−G(イーストマンコダック社製)などのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やポリスチレン等よりなるシート、あるいは、これらの樹脂とエチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン等を積層したシート等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の容器本体の形状は任意に構成してよく、例えば、矩形、円形や長円形の容器本体に角部を設けた形状等とすることもできる。なお、容器本体の大きさは、特に制限されるものではなく、包装容器の用途等に合わせて適宜選定することができる。
容器本体の開口端面に配設したフランジ部には、蓋材がヒートシール、超音波溶接などで接合(接着)される。ヒートシールの幅は特に制限されるものではなく、用途や内容品の重量等に合わせて適宜選定することができるが、密封性、取り扱い性などを考慮すれば、通常、2〜15mm、特に3〜10mm程度が好適である。
【0018】
未シール部は、容器本体の2箇所の角部の形状及び該角部のフランジ部形状に対応した略三角形とするのが好ましい。その大きさは、特に制限されず、蓋材を引き上げるきっかけとなる程度の大きさであることが望ましい。なお、未シール部の形状は、略三角形に制限されるものではなく任意の形状としてよいことは自明である。
【0019】
蓋材は、容器本体のフランジ部に易剥離状態に接合できる限り、その材質が特に制限されるものではなく、通常のイージーオープンタイプの容器の蓋材として使用される材料を使用することができ、このような材料として、例えば延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム等の蓋材にイージーピール性を有するシール層を積層したもの、あるいは、これらに必要に応じて、アルミ箔、エチレンビニルアルコール共重合体層、無機質蒸着層などを積層した積層体を挙げることができる。
【0020】
なお、蓋材の厚さは、特に制限されるものではないが、密封性、取り扱い性などを考慮すれば、通常、30〜100μm、特に40〜70μm程度が好適である。
【0021】
上記容器本体、蓋材の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば容器本体は、カレンダー法や押出し、共押出しなどで形成されたシールを、真空成型や圧空成型などのシート成型で製造される。蓋材は、上述した延伸フィルム基材にイージーピール性を有するシーラントを押出ラミネート法やドライラミネート法等の公知の製造方法によって製造することができる。特に、押出ラミネート法を採用することによって、蓋材を薄く成型することができ、コスト的に有利となる。その反面、押出ラミネートは、シーラントを形成する面に高い温度がかかるため、シーラント側にカールしやすい。
【0022】
ここで、容器本体のフランジ部と蓋材とが易剥離状態となるようにイージーピール接合部を形成する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができ、このような方法として、例えば容器をポリプロピレン系樹脂で成形し、蓋材のシール層をポリエチレン系樹脂で形成して、界面で易剥離を発現させる方法、蓋材のシール層を多層に形成して、各シール層間で易剥離を発現させる方法、蓋材のシール層を多層に形成するに際し、中間に凝集力の小さいシール層を設け、このシール層を凝集破壊させて、易剥離を発現させる方法等の方法を挙げることができる。
【0023】
蓋材の非シール部分に穿孔する孔は前述のごとく蓋材の剥離を容易にするため配設されている。該孔の最大寸法が約4mm以下、好ましくは1mm〜3mm程度の円形、楕円、長円、隅部に丸みを持たせ裂けないようにした矩形の内から選んだ一つとするのが好ましい。穿孔する場所は開口端面フランジ部の非シール部分(図1参照)または前記開口端面から外側に外れた部位(図3参照)のいずれか一方とするのが好ましい。穿孔手段はレーザー加工、プレス加工など任意の手段を用いてよいことは自明である。
なお、蓋材の剥離に用いる開封補助部材は任意の部材を用いてよいが、爪楊枝、料理用串、果物用フォーク、錐状部材、鉤形部材の内いずれか一つとするのが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の一実施例における食品用容器を図面と共に説明する。図1は本発明の一実施例における食品用容器の要部平面図、図2は一部を断面にした図1の要部側面図、図3は本発明のもう一つの実施例における食品用容器の要部平面図、図4は一部を断面にした図3の要部側面図を示す。
【0025】
図1、図2において、食品用容器100は平面視が略矩形状の有底容器本体10と蓋材20とを備え、開口端面に配設したフランジ部15に約4mm幅の略矩形輪状のヒートシール部40によって接合し容器内に食品を密封してなる。そして、略三角形状の非シール部50を容器角部の2箇所に配設し開封口とした。さらに、前記非シール部50に直径約2.5mmの孔30をレーザー加工で穿孔し、蓋材20の剥離を容易にする構成とした。前記孔30に果物用フォークの先を引っ掛けて蓋材20を剥離すれば指先の力が弱くても容易に開封できる。水で指先が濡れていても、容器表面が結露していても果物用フォークが指から外れることはない。
なお、有底の容器本体10は厚さ約150μmのポリプロピレン系樹脂を成型し、蓋材20は厚さ50μm程度のフィルムシートであってシール層をポリエチレン系樹脂で形成して、界面で易剥離を発現させた。
【0026】
図3、図4において、食品用容器200は略円筒状の容器本体210と蓋材220とを備え、開口端面に配設したフランジ部215に約3mm幅の輪状ヒートシール部240によって接合し容器内に食品を密封してなる。そして、蓋材220を容器本体210の外側に延出し略三角形状のタブ250を構成した。前記タブ250は開封の際のつまみ代となる。そして、前記タブ250に直径約2.5mmの孔230をプレス加工で穿孔し、蓋材220の剥離を容易にする構成とした。前記孔230に爪楊枝の先を引っ掛け蓋材220を剥離すれば指先の力が弱くても容易に開封できる。水で指先が濡れていても、容器表面が結露していても爪楊枝が指から滑り外れることはない。
この実施例の場合も、容器本体210と蓋材220の構成材料を前述の容器100(図1)に同一とした。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、水分含有量が20%を超える食品用容器の他に、給湯して食する即席麺のように比較的水分含有量が低い食品の容器としても利用できる。また、容器内のバターや植物油脂上に直接載置された覆いシートの端部に小孔を配設することにより、爪楊枝等で引っ掛けて容易に剥離することができ、手を汚さず済む。アイスクリームの覆い蓋に小孔を穿孔しても同様のことが言える。さらに、医薬品、ミニカー等の玩具、時計やアクセサリー等の各種生活用品を密封する容器などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例における食品用容器の要部平面図
【図2】一部を断面にした図1の要部側面図
【図3】本発明のもう一つの実施例における食品用容器の要部平面図
【図4】一部を断面にした図3の要部側面図
【符号の説明】
【0029】
10、210 容器本体
15、215 フランジ部
20、220 蓋材
30、230 孔
40、240 ヒートシール部
50 非シール部
100、200 食品用容器
250 タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底容器の開口端面に樹脂フィルム状の蓋材を密閉状態に接合し、前記開口端面上の前記蓋材または前記開口端面から外側に外れた部位の前記蓋材のいずれか一方に爪楊枝、料理用串、果物用フォークの内いずれか一つの開封補助部材を引っ掛けられる孔を穿設し前記蓋材の剥離を容易にしたことを特徴とする水分含有量が20%を超える食品の容器。
【請求項2】
孔の最大寸法が約4mm以下の円形、楕円、長円、隅部に丸みを持たせた矩形のうちから選んだ一つとしたことを特徴とする請求項1記載の水分含有量が20%を超える食品の容器。
【請求項3】
有底容器の開口端面に樹脂フィルム状の蓋材を密閉状態に接合し、前記蓋材前記開口端面上の前記蓋材または前記開口端面から外側に外れた部位の前記蓋材のいずれか一方に最大寸法が約4mm以下の小孔を穿設しておき、前記孔に爪楊枝、料理用串、果物用フォークの内いずれか一つを引っ掛け前記蓋材を剥離するようにしたことを特徴とする食品容器の開封方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−44645(P2008−44645A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222147(P2006−222147)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(595082412)株式会社アスク (31)
【Fターム(参考)】