説明

食品トレー用吸水性フィルム及びそれを用いた食品包装体

【課題】密閉性に優れた包装を簡単にすることができるとともに、食品から滲出するドリップを効率的に吸収可能であり、かつ、廃棄が容易な食品トレー用吸水性フィルムを提供する。
【解決手段】吸水層2と、吸水層2の一方の面上に配設されるバイコンポーネント不織布からなる食品接触層3と、を備えた食品トレー用吸水性フィルム1である。食品接触層3は透水性及びヒートシール性を有する層であり、ラップフィルムとヒートシールすることで食品を密閉して包装することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品販売店等において食品の輸送・陳列に用いられる食品トレー用吸水性フィルム、それを用いた食品包装体、及び食品の包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット等の食料品販売店においては、生鮮食品を輸送・陳列するためにポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックからなる食品トレーが広く用いられている。食品トレーは一般に浅い皿形の容器であり、食肉、鮮魚、野菜、果物、加工品、及び惣菜等の食品を内側に置いた後、上からラップフィルムを掛けて包装して輸送・陳列を行う。
【0003】
なお、食肉や鮮魚等のドリップが滲出し易い食品を食品トレーに収容するには、例えば、吸水紙や軟質ウレタンフォーム等の吸水シートを食品トレー内に敷いておき、滲出したドリップを吸水シートに吸収させるといった方法が採用されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−175572号公報
【特許文献2】特開2006−56580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来用いられているプラスチック製の食品トレーに食品を収容するには、その全体をラップフィルムで包み込むように包装して食品を収容する必要がある。このため、包装に手間がかかる場合が多かった。また、プラスチック製の食品トレーは、リサイクルするために分別して洗浄したり、一定期間保管したりする必要がある等、使用後の処理が煩雑である場合が多かった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、密閉性に優れた包装を簡単にすることができるとともに、食品から滲出するドリップを効率的に吸収可能であり、かつ、廃棄が容易な食品トレー用吸水性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、吸水層の一方の面上に、透水性及びヒートシール性を有するバイコンポーネント不織布からなる食品接触層を配設することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す食品トレー用吸水性フィルム、食品包装体、及び食品の包装方法が提供される。
【0009】
[1]吸水層と、前記吸水層の一方の面上に配設される透水性及びヒートシール性を有するバイコンポーネント不織布からなる食品接触層と、を備えた食品トレー用吸水性フィルム。
【0010】
[2]前記バイコンポーネント不織布が、融点の異なる二種類の樹脂からなる芯鞘構造を有する化学繊維により形成された、その目付け量が10〜50g/mのものである前記[1]に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0011】
[3]前記吸水層が、パルプ又はレーヨンにより形成された、その目付け量が10〜100g/mの不織布又は紙からなる層である前記[1]又は[2]に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0012】
[4]前記吸水層の他方の面上に配設される、少なくとも前記吸水層側に位置する面上に不透水層を有するその目付け量が30〜500g/mの板紙を更に備えた前記[1]〜[3]のいずれかに記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0013】
[5]前記吸水層の厚み方向に撥水性材料が浸透し、前記吸水層が仕切られて立体的な複数の吸水領域が形成されており、前記吸水領域の、前記食品接触層側に位置する面の面積が、それぞれの前記吸水領域につき4〜100mmである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0014】
[6]前記撥水性材料がホットメルト接着剤であるとともに、前記食品接触層と前記吸水層が、前記ホットメルト接着剤により接着されている前記[5]に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0015】
[7]前記撥水性材料が、パラフィン、シリコンオイル、食用油、天然ゴム成分、及び高級脂肪酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であるとともに、前記食品接触層と前記吸水層が、ホットメルトウェブとホットメルトパウダーの少なくともいずれかにより接着されている前記[5]に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【0016】
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の食品トレー用吸水性フィルムと、前記食品トレー用吸水性フィルムの前記食品接触層の上面に載置される食品と、前記食品を被覆して配置されるラップフィルムと、を備え、前記食品接触層の外周と前記ラップフィルムの外周がヒートシールにより接着され、前記食品トレー用吸水性フィルムと前記ラップフィルムの間に前記食品が密封された食品包装体。
【0017】
[9]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の食品トレー用吸水性フィルムの前記食品接触層の上面に食品を載置する工程と、載置した前記食品をラップフィルムで被覆するとともに、前記食品接触層の外周と前記ラップフィルムの外周をヒートシールにより接着して、前記食品トレー用吸水性フィルムと前記ラップフィルムの間に前記食品を密封する工程と、を含む食品の包装方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、密閉性に優れた包装を簡単にすることができるとともに、食品から滲出するドリップを効率的に吸収可能であり、かつ、廃棄が容易なものである。
【0019】
本発明の食品包装体は、密閉性に優れているとともに、食品から滲出したドリップが効率的に吸収されて外部に漏出し難く、かつ、食品を取り出した後は容易に廃棄することができるものである。
【0020】
本発明の食品の包装方法によれば、滲出したドリップが外部に漏出し難く、高い密閉性で食品を包装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の食品トレー用吸水性フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】吸水層の一例を模式的に示す上面図である。
【図3】格子状に形成された吸水領域の一例を模式的に示す上面図である。
【図4】ハニカム状に形成された吸水領域の一例を模式的に示す上面図である。
【図5】本発明の食品トレー用吸水性フィルムの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】食品トレー用吸水性フィルムを用いて食品を包装する方法の一例を示す模式図である。
【図7】食品トレー用吸水性フィルムの剛性測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、吸水層と、この吸水層の一方の面上に配設されるバイコンポーネント不織布からなる食品接触層とを備えたものである。バイコンポーネント不織布からなる食品接触層は透水性を有する層であり、食品と接触する面(食品接触面)を有する部分である。食品接触面上に載置された食肉、鮮魚等の食品から生じたドリップは食品接触層を透過し、その下に配置された吸水層へと到達して吸収される。このため、本発明の食品トレー用吸水性フィルムを使用すれば、鮮度良好な状態で食品を保持することができるとともに、見映えも良好な状態で食品を陳列することができる。
【0024】
また、バイコンポーネント不織布からなる食品接触層は、ヒートシール性を有する層であり、最外層に位置する部分である。このため、食品接触層と、食品接触面に載置した食品の表面を覆ったラップフィルムとを、食品接触層の上面(食品接触面)でヒートシールによって接合し、食品を封入することができる。従って、本発明の食品トレー用吸水性フィルムを使用すれば、従来の食品トレーのようにトレー全体をラップフィルムで覆う必要がなく、簡単なヒートシール用の装置を使用して容易に包装することができる。また、可燃物として廃棄処理可能な材料によって構成されているため、使用後の廃棄が極めて簡単である。以下、本発明の食品トレー用吸水性フィルムの更なる詳細について説明する。
【0025】
(1)吸水層
吸水層は、食品から生ずるドリップ等、水を主成分とする液体を吸収可能な層である。この吸水層を構成する材料については特に限定されないが、優れた吸水性を発揮するとともに廃棄処理が容易である等の観点から、パルプ又はレーヨンによって形成された不織布又は紙が好ましい。
【0026】
吸水層を構成する材料の具体例としては、紙、乾式パルプ不織布、スパンレース不織布、ラテックスボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、解繊不織布等を挙げることができる。なお、クレープ加工された紙(クレープ紙)を用いると、吸水速度が上昇することともに、吸水量が増加するために好ましい。不織布又は紙の目付け量は10〜100g/mであることが好ましい。目付け量が上記数値範囲内である不織布又は紙を用いることで、良好な吸水速度を維持しつつ、十分な量のドリップを吸収することができる。
【0027】
吸水層の厚みは特に限定されないが、通常20〜1200μm、好ましくは40〜300μm程度である。なお、吸水層の一例として、厚さ148μm程度のクレープ紙からなる層を挙げることができる。
【0028】
(2)食品接触層
食品接触層は、バイコンポーネント不織布によって形成された層である。食品接触層の一方の面は吸水層側に配置されている。また、食品接触層の他方の面は食品が接触する食品接触面であり、最外部に露出している。
【0029】
バイコンポーネント不織布は、透水性とともにヒートシール性をも発揮する不織布である。バイコンポーネント不織布は、通常、物性の異なる二種類の樹脂によって形成された芯鞘構造を有する化学繊維をサーマルボンディングすること等によって得られる不織布である。この芯鞘構造を有する化学繊維は、一方の樹脂で芯が形成され、他方の樹脂で芯の外周を取り囲むように鞘が形成された二重構造を有するものである。
【0030】
食品と接触するバイコンポーネント不織布には、カテキン、ワサビチオール、ヒノキチオール、カプサイシン等の植物由来の抗菌・防カビ剤を塗布したり、食品に害の少ないエタノール、クエン酸等の無機系の抗菌・防カビ剤を塗布したりすることも可能である。
【0031】
バイコンポーネント不織布は、融点(Tm)の異なる二種類の樹脂からなる芯鞘構造を有する化学繊維により形成されたものであることが好ましい。なお、芯鞘構造を有する化学繊維は(1)芯がポリエチレンテレフタレート(PET)であって鞘がポリエチレン(PE)であるもの、(2)芯がPETであって鞘が変性PETであるもの、(3)芯がポリプロピレン(PP)であって鞘がPEであるもの、及び(4)芯がPPであって鞘が変性PPであるもの、の少なくともいずれかであることが好ましい。このような化学繊維で形成されたバイコンポーネント不織布を用いることで、透水性だけでなく、より優れたヒートシール性を有する食品接触層を形成することができる。
【0032】
バイコンポーネント不織布の目付け量は、10〜50g/mであることが好ましく、15〜30g/mであることが更に好ましい。目付け量が上記の数値範囲内であるバイコンポーネント不織布を用いることで、十分な強度を有する食品接触層を形成することができる。なお、バイコンポーネント不織布の目付け量が10g/m未満であると、食品接触層の強度が不足して切れ易くなる場合がある。一方、50g/m超であると、食品トレー用の材料としてはコスト面で不利になる場合がある。
【0033】
芯鞘構造を有する化学繊維の芯を構成する樹脂の融点(Tm)は、通常150〜300℃、好ましくは160〜270℃である。また、芯鞘構造を有する化学繊維の鞘を構成する樹脂の融点(Tm)は、通常100〜270℃、好ましくは110〜250℃である。
【0034】
食品接触層の厚みは特に限定されないが、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm程度である。なお、食品接触層の一例として、厚さ110μm程度のバイコンポーネント不織布からなる層を挙げることができる。
【0035】
(3)吸水領域
吸水層には、吸水領域が複数形成されていることが好ましい。複数の吸水領域を吸水層に形成することで、吸収したドリップの吸水層の内部での水平方向への移動(拡散)を抑制することができるとともに、食品接触層の端部からのドリップの漏出を防止することが可能となる。
【0036】
複数の吸水領域は、例えば吸水層の内部に、吸水層の厚み方向に撥水性材料を浸透させ、吸水層を立体的に仕切ることにより形成することができる。それぞれの吸水領域の食品接触層食品接触層側に位置する面(吸水面)の面積は、4〜100mmであることが好ましく、4〜40mmであることが更に好ましく、4〜20mmであることが特に好ましい。それぞれの吸水領域の吸水面の面積を上記数値範囲内とすることで、吸水層内におけるドリップの拡散をより効果的に抑制することができる。
【0037】
それぞれの吸水領域の吸水面の形状については特に限定されないが、製造し易さ等の観点からは格子状、ハニカム状、これらを任意に組み合わせた形状等が好ましい。
【0038】
吸水層の内部に浸透させる撥水性材料の好適例としては、ホットメルト接着剤、パラフィン、シリコンオイル、食用油、天然ゴム成分、及びステアリン酸カルシウムやベヘニン酸カリウム等の高級脂肪酸塩等を挙げることができる。これらの撥水性材料を、その性状に合わせて加熱溶融或いは希釈等し、塗工し易い状態にして用いることができる。なお、これらの撥水性材料の二種以上を組み合わせて用いることもできる。ホットメルト接着剤を撥水性材料として用いる場合には、吸水領域を形成すると同時に、吸水層と食品接触層を接着することができるために好ましい。即ち、食品接触層又は吸水層にホットメルト接着剤を所定の形状(例えば、格子状やハニカム状)に印刷して塗布し、塗布されたホットメルト接着剤を吸水層に浸透させつつ吸水層と食品接触層を接着すれば、製造工程を簡略化することができるために好ましい。
【0039】
また、パラフィン、シリコンオイル、食用油、天然ゴム成分、及び高級脂肪酸塩等を撥水性材料として用いる場合には、これらの撥水性材料をそのまま、或いはその性状に合わせて加熱溶融又は希釈したものを吸水層に塗工及び浸透させて予め吸水領域を形成しておき、次いで、吸水領域が形成された吸水層と食品接触層を接着することが好ましい。なお、吸水領域が形成された吸水層と食品接触層は、ホットメルトウェブとホットメルトパウダーの少なくともいずれかにより接着することが、食品接触層から移動してきたドリップの吸水領域への浸透を阻害し難くなるために好ましい。
【0040】
(4)板紙
本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、吸水層の他方の面上に配設される適度な剛性を有する板紙を更に備えたものであることが、輸送や陳列の際に折れ曲がり難く、安定した状態で食品を包装及び保持することができるために好ましい。板紙の目付け量は30〜500g/mであることが好ましい。なお、目付け量が30〜100g/m程度の板紙は、例えば魚、骨付き肉、練り物等の硬めの食品を包装する場合に好適である。一方、目付け量が30〜100g/m程度の板紙は、例えば切り身の肉、刺身、一口大の点心、惣菜等の柔らかめの食品を包装する場合に好適である。
【0041】
板紙は、少なくとも吸水層側に位置する面上に不透水層を有するものであることが、吸水層に吸収された水分の外部への漏出を抑制することができるために好ましい。不透水層の具体例としては、PEフィルム、PPフィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、塩化ビニル(PVC)フィルム等の樹脂フィルムを挙げることができる。また、コート層を有する紙(コート紙)を板紙として用いてもよい。PEフィルム等を不透水層として用いる場合には、吸水層と板紙の貼り合わせを押出ラミネート等の手法によって行い、吸水層と板紙の間にPEフィルムを配置すればよい。
【0042】
不透水層の厚みは5〜20μmであることが好ましく、10〜20μmであることが更に好ましい。不透水層の厚みを上記の数値範囲とすることで、板紙に対する水分の浸透や、食品トレー用吸水性紙の外部への水分の漏出を効果的に抑制することができる。なお、不透水層の厚みが5μm未満であると、薄過ぎるためにピンホール等の欠陥が発生する場合がある。一方、20μm超であると、厚過ぎるためにコスト面で不利となる傾向にある。
【0043】
板紙(不透水層を除く)の厚みは特に限定されないが、通常40〜500μm、好ましくは50〜150μm程度である。なお、板紙の一例として、厚さ113μm程度の純白紙を挙げることができる。
【0044】
(5)食品トレー用吸水性フィルム
図1は、本発明の食品トレー用吸水性フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の食品トレー用吸水性フィルム1は、吸水層2と、この吸水層2の上面に配設される食品接触面13を有する食品接触層3とを備えている。食品接触層3と吸水層2は、ホットメルト接着剤7からなる接着部7Aによって接着されている。また、吸水層2の内部には、ホットメルト接着剤7の一部が吸水層2の厚み方向に浸透して撥水部7Bが形成されている。なお、吸水層2の下面には不透水層8と板紙4が配設されている。
【0045】
図2は、吸水層の一例を模式的に示す上面図である。また、図3は、格子状に形成された吸水領域の一例を模式的に示す上面図である。図2及び3に示すように、吸水層2の表面にホットメルト接着剤7(図1参照)が印刷等されることで撥水部7Bが形成されている。そして、吸水層2には、撥水部7Bによって吸水層2が仕切られ、格子状の吸水面6Aを有する吸水領域6が複数形成されている。撥水部7Bの幅Wは、通常2〜5mm、好ましくは1〜2mmである。撥水部7Bの幅Wが2mm未満であると、ホットメルト接着剤7の印刷が困難であるとともに、形成される撥水部7Bの撥水性が不十分になる場合がある。一方、撥水部7Bの幅Wが5mm超であると、吸水層2に占める撥水部7Bの割合が多くなり過ぎてしまい、吸水性が低下する場合がある。なお、撥水部7Bの一辺の長さLは、通常2〜10mm、好ましくは8〜10mmである。
【0046】
図4は、ハニカム状に形成された吸水領域の一例を模式的に示す上面図である。図4に示すように、吸水層12には、撥水部17Bによって吸水層12が仕切られ、ハニカム状の吸水面16Aを有する吸水領域16が複数形成されている。なお、ハニカム状は、図4に示すような複数の正六角形によって構成されているものに限定されず、例えば、六角形以外の多角形(例えば五角形)、円形、不定形、及びこれらの組み合わせ等であってもよい。
【0047】
図5は、本発明の食品トレー用吸水性フィルムの他の実施形態を模式的に示す断面図である。図5に示す実施形態の食品トレー用吸水性フィルム11においては、食品接触層3と吸水層22が適当な間隔を隔てて配置された接着部27Aによって接着されている。即ち、食品接触層3と吸水層22は点接着(ドット接着)又は線接着されている。吸水層22の内部には撥水部27Bが形成されており、この撥水部27Bに区画されることで複数の吸水領域26が形成されている。なお、撥水部27Bは、パラフィン等の撥水性材料が吸水層22に格子状やハニカム状に印刷等され、吸水層22の内部に浸透することによって形成されている。
【0048】
本発明の食品トレー用吸水性フィルムの目付け量は特に限定されないが、通常、100〜800g/m、好ましくは150〜600g/m程度である。なお、本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、従来の食品トレーのような皿型の容器ではなく、シート状のものである。このため、食品トレー用吸水性フィルムは、食品の輸送や陳列を容易にすべく、適度な剛性を有するものであることが好ましい。食品トレー用吸水性フィルムの剛性は、剛性を有する板紙を吸水層に配設すること、或いは吸水層及び食品接触層の厚みや大きさを変えること等によって調整することができる。
【0049】
なお、食品トレー用吸水性フィルムの剛性測定方法について説明する。図7は、食品トレー用吸水性フィルムの剛性測定方法を示す模式図である。図7に示すように、25mm×120mmの寸法に裁断した食品トレー用吸水性フィルム31を用意し、この食品トレー用吸水性フィルム31の一方の端部20mmを架台25上に置き、その上に重さ50gの錘15を置いて食品トレー用吸水性フィルム31を固定する。室温:20℃、相対湿度:40%の条件で1時間放置した後、架台25の端から飛び出した食品トレー用吸水性フィルム31の先端部の水平位置からの垂れ下がり量Dを測定し、その測定値を「剛性」の目安とする。
【0050】
上記の方法によって測定される食品トレー用吸水性フィルムの垂れ下がり量Dは、通常0〜10mm、好ましくは0〜5mm程度である。垂れ下がり量Dが上記の数値範囲内であると、形状保持性に優れているために食品の輸送や陳列を更に行い易くなる。
【0051】
本発明の食品トレー用吸水性フィルムの吸水率は、自重の50〜1000%であることが好ましく、80〜200%であることが更に好ましい。吸水率が上記数値範囲内であると、ドリップが生じ易い鮮魚や食肉等の食品を包装するために用いた場合であっても、十分にドリップを吸収することができる。なお、上記吸水率は以下に示す方法により測定され、下記式(1)に従って算出される。
【0052】
食品トレー用吸水性フィルムを室温:20℃、相対湿度:40%の条件で1時間放置した後、100mm×100mmの寸法に裁断して重量を測定する。刷毛を用いて食品接触面に市水を均一に塗布し、1分経過後に食品接触面の余剰の水滴を拭き取って重量を測定する。
吸水率(%)={(吸水後の重さ−吸水前の重さ)/(吸水前の重さ)}×100
・・・(1)
【0053】
食品トレー用吸水性フィルムの厚みは特に限定されないが、通常0.2〜2.0mm、好ましくは0.4〜0.6mm程度である。また、食品トレー用吸水性フィルムの大きさ(面積)や形状についても特に限定されず、包装される食品の大きさや形状によって任意に設定することができる。なお、食品トレー用吸水性フィルムの大きさは、一般的には40000〜65000mm程度である。
【0054】
なお、食品トレー用吸水性フィルムを構成する材料(板紙、吸水層、不透水層等)に、顔料や染料を用いて着色や印刷を施すことも好ましい。食品トレー用吸水性フィルムの構成材料に着色や印刷を施すことによって、食品を陳列した際の視認性が向上したり、購入者の購買意欲が向上したりする等、商品価値がより高まるといった利点がある。
【0055】
(6)食品トレー用吸水性フィルムの使用方法(食品包装体の製造方法)
本発明の食品トレー用吸水性フィルムを使用する方法について具体的に説明する。図6は、食品トレー用吸水性フィルムを用いて食品を包装する方法の一例を示す模式図である。図6に示すように、食品トレー用吸水性フィルム21の食品接触層3の上面(食品接触面13)に食品30を載置した後、ヒートシール可能なラップフィルム40で食品30の上面を覆う。ラップフィルム40の端部と食品接触層3の端部をヒートシールにより接合し、食品30の周りを囲むようにヒートシール部10を形成すれば、食品包装体50を得ることができる。
【0056】
食品30の上面を覆うラップフィルム40としては、従来の食品トレーに用いられるラップフィルムをそのまま用いることが可能である。なお、食品トレー用吸水性フィルム21は、従来の食品トレーのような皿型の容器ではなく、シート状のものである。このため、食品トレー用吸水性フィルム21を用いて食品包装体50を得るためには、より厚手のラップフィルム40を使用して食品30の上面を保護することが好ましい。具体的には、厚みが15〜30μmであるラップフィルムを用いることが好ましい。
【0057】
(7)食品トレー用吸水性フィルムの製造方法
本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、それぞれの層を構成する材料を用意し、これらの材料を所定の積層順となるように配置し、接着することによって製造することができる。なお、それぞれの層を構成する材料どうしは、例えば、熱ロール圧着加工、ラミネート加工等の加工方法によって接着することができる。
【0058】
吸水層に吸水領域を形成するには、例えば、吸水層を構成する不織布に対して、所定の形状(格子状、ハニカム状等)となるように撥水性材料を塗工すればよい。撥水性材料は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアコート印刷等の印刷方法によって吸水層を構成する不織布に対して塗工することが、正確なパターンで簡便かつ高速に撥水性材料を塗工できるために好ましい。なお、塗工する撥水性材料の量は、吸水層を構成する不織布のサイズや目付け量、及び形成しようとする吸水領域のサイズ等を勘案して適宜設定される。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(材料)
食品トレー用吸水性フィルムを製造するに際し、以下に示す材料を使用した。
(1)バイコンポーネント不織布(ハビックス社製、目付け量:20g/m、芯:PET、鞘:PE、大きさ:180mm×220mm、厚み:110μm)
(2)乾式不織布(東海加工紙社製、商品名「晒タオル」、目付け量:50g/m、大きさ:180mm×220mm、厚み:148μm)
(3)板紙(日本大昭和板紙社製、商品名「キャピタルラップ」、目付け量:80g/m、大きさ:180mm×220mm、厚み:113μm)
(4)ホットメルト接着剤(ポリエチレン系ディスパージョン(微細なポリエチレン粒子を水系液体中に分散させたもの))
【0061】
(実施例1)
乾式不織布の表面に、一辺が5mmの格子状(線幅:0.8mm)となるようにホットメルト接着剤をロールコート方法で印刷して塗布した。次いで、乾式不織布とバイコンポーネント不織布を積層して圧着し、乾式不織布とバイコンポーネント不織布を接着して積層体を得た。得られた積層体の乾式不織布側の表面にPEフィルムを介して板紙を配置し、ラミネート加工することにより、積層体と板紙を貼り合わせて食品トレー用吸水性フィルムの原紙を得た。得られた原紙を180mm×220mmの大きさに切断して、食品トレー用吸水性フィルムを得た。なお、得られた食品トレー用吸水性フィルムの目付け量は300g/mであった。
【0062】
(評価)
得られた食品トレー用吸水性フィルムについて、以下に示す方法により性能を評価した。
【0063】
[剛性(垂れ下がり量の測定)]:
図7に示すように、25mm×120mmの寸法に裁断した食品トレー用吸水性フィルム31の一方の端部20mmを架台25上に置き、その上に重さ50gの錘15を置いて食品トレー用吸水性フィルム31を固定した。室温:20℃、相対湿度:40%の条件で1時間放置した後、架台25の端から飛び出した食品トレー用吸水性フィルム31の先端部の水平位置からの垂れ下がり量Dを測定した。測定結果を表1に示す。なお、同様の手順で測定した葉書(市販品)及びコピー紙(市販品)のそれぞれの垂れ下がり量Dの測定結果を表1に示す。
【0064】
[吸水率の測定]:
食品トレー用吸水性フィルムを室温:20℃、相対湿度:40%の条件で1時間放置した後、100mm×100mmの寸法に裁断して重量を測定した。刷毛を用いて食品接触面に市水を均一に塗布し、1分経過後に食品接触面の余剰の水滴を拭き取って重量を測定した。測定した吸水前後の食品トレー用吸水性フィルムの重さから、下記式(1)に従って吸水率を算出した。結果を表1に示す。
吸水率(%)={(吸水後の重さ−吸水前の重さ)/(吸水前の重さ)}×100
・・・(1)
【0065】
【表1】

【0066】
[包装試験機を使用した評価]:
実施例1の食品トレー用吸水性フィルム(180mm×220mm)を10枚用意した。図6に示すように、用意した食品トレー用吸水性フィルム21の食品接触面13上に、市水80gを含浸させて折り畳んだ雑巾を載せ、厚さ20μmのラップフィルム40で覆った。次いで、自動包装試験機を使用し、食品接触層3(食品接触面13)とラップフィルム40を、その外形が178mm×218mmの四角形状である1mm幅のヒートシール部10を形成して接合して食品包装体50の擬似評価体を作製した。
【0067】
作製した擬似評価体を5分間放置した後、その外観を観察した。具体的には、(1)ヒートシール部から外周部への水漏れ、(2)食品トレー用吸水性フィルムの裏側(板紙側)への水の浸透、及び食品トレー用吸水性フィルムの外周部から裏側(板紙側)への水の染み出し等を観察した。その結果、10枚用意した食品トレー用吸水性フィルムを用いて作製したすべての擬似評価体について、上記(1)〜(3)のいずれも観察されず、良好な食品包装体を作製可能であることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の食品トレー用吸水性フィルムは、食料品販売店等において食品の輸送・陳列に用いられる食品トレー(包装体)を構成するための材料として好適である。
【符号の説明】
【0069】
1,11,21,31 食品トレー用吸水性フィルム
2,12,22 吸水層
3 食品接触層
4 板紙
6,16,26 吸水領域
6A,16A 吸水面
7 ホットメルト接着剤
7A,27A 接着部
7B,17B、27B 撥水部
8 不透水層
10 ヒートシール部
13 食品接触面
15 錘
25 架台
30 食品
40 ラップフィルム
50 食品包装体
D 垂れ下がり量
L 撥水部の一辺の長さ
W 撥水部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水層と、前記吸水層の一方の面上に配設される透水性及びヒートシール性を有するバイコンポーネント不織布からなる食品接触層と、を備えた食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項2】
前記バイコンポーネント不織布が、融点の異なる二種類の樹脂からなる芯鞘構造を有する化学繊維により形成された、その目付け量が10〜50g/mのものである請求項1に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項3】
前記吸水層が、パルプ又はレーヨンにより形成された、その目付け量が10〜100g/mの不織布又は紙からなる層である請求項1又は2に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項4】
前記吸水層の他方の面上に配設される、少なくとも前記吸水層側に位置する面上に不透水層を有するその目付け量が30〜500g/mの板紙を更に備えた請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項5】
前記吸水層の厚み方向に撥水性材料が浸透し、前記吸水層が仕切られて立体的な複数の吸水領域が形成されており、
前記吸水領域の、前記食品接触層側に位置する面の面積が、それぞれの前記吸水領域につき4〜100mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項6】
前記撥水性材料がホットメルト接着剤であるとともに、
前記食品接触層と前記吸水層が、前記ホットメルト接着剤により接着されている請求項5に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項7】
前記撥水性材料が、パラフィン、シリコンオイル、食用油、天然ゴム成分、及び高級脂肪酸塩からなる群より選択される少なくとも一種であるとともに、
前記食品接触層と前記吸水層が、ホットメルトウェブとホットメルトパウダーの少なくともいずれかにより接着されている請求項5に記載の食品トレー用吸水性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の食品トレー用吸水性フィルムと、前記食品トレー用吸水性フィルムの前記食品接触層の上面に載置される食品と、前記食品を被覆して配置されるラップフィルムと、を備え、
前記食品接触層の外周と前記ラップフィルムの外周がヒートシールにより接着され、前記食品トレー用吸水性フィルムと前記ラップフィルムの間に前記食品が密封された食品包装体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の食品トレー用吸水性フィルムの前記食品接触層の上面に食品を載置する工程と、
載置した前記食品をラップフィルムで被覆するとともに、前記食品接触層の外周と前記ラップフィルムの外周をヒートシールにより接着して、前記食品トレー用吸水性フィルムと前記ラップフィルムの間に前記食品を密封する工程と、を含む食品の包装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−162202(P2011−162202A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23515(P2010−23515)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000111432)三井化学ファブロ株式会社 (36)
【出願人】(501383048)ジェイソフト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】