説明

食品原材料の製造装置および加工食品

【課題】食品原材料の製造装置および加工食品を提供すること。
【解決手段】植物性の食用粒から食品原材料を製造する際に、前記植物性の食用粒を微酸性電解水中に浸漬し、該植物性の食用粒が潤けるまでの期間内に前記微酸性電解水を交換しながら複数回にわたり、空気を供給しながら洗浄する。その食品原材料を用いて製造した植物由来の加工食品を、微酸性電解水に浸るようにして微酸性電解水を満たした水槽に保存するか、または微酸性電解水で満たしたパックに詰める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原材料を製造するための製造装置および加工食品に関し、より詳細には、微酸性電解水を用いた食品原材料の製造装置および加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆食品は、一般的な古来からの食品である。大豆食品は、その種類も広く、豆腐、湯葉、おから等が知られている。これらの大豆食品の中で、豆腐は、広く知られた食品である。豆腐の昔ながらの一般的な製造方法は、まず、水に浸漬した大豆をすって炊き、煮呉を作る。絹ごし豆腐は、この煮呉を絞って得られた豆乳に凝固剤(にがり)を加え、型箱内で凝固させることで製造される。木綿豆腐は、穴の開いた型箱に木綿の布を敷き、絹ごし豆腐を崩し入れ、圧縮して水分を抜くことで製造される。製造されたそれぞれの豆腐は、その後、型から取り出され、水に晒して余分なにがりや灰汁が取り除かれた後、多くの場合には、水に浸された状態で保存される。この様に昔ながらの製法で作られた豆腐は、1丁ずつカットされ、店頭販売が行われたり、水で満たされたパックに詰められ、スーパーなどの食料品売り場へ卸されたりしている。
【0003】
さらに近年では、機械化による大量生産に適した充填豆腐と呼ばれる豆腐が、市場に流通している。充填豆腐は、煮呉を製造するまでの工程は上述した豆腐と同様であるが、その煮呉を絞って得られた豆乳を一旦冷やし、凝固剤と一緒に容器に充填し、密閉した後、加熱して凝固することによって製造される。
【0004】
充填豆腐は、密閉した後に加熱されるため、その間に殺菌処理が行われ、保存性に優れた豆腐である。しかしながら、木綿豆腐を製造する際に行われる崩し工程を行えないため、充填豆腐は絹ごし豆腐に限られるものであり、また、水に晒すことによって余分なにがりや灰汁を取り除く工程も行えないため、カット豆腐に比べ風味が劣るものであった。
【0005】
一方、昔ながらの豆腐は、製造から2日程度の保存期間しかなく、その保存期間の短さが流通の障壁となっていた。そこで、市販されている豆腐は、パック詰めされた後に高温スチームによる殺菌処理を行い、その後、加熱された商品の冷却を行うといったボイルクール工程が、その製造工程に多く採用されている。このボイルクール工程によって豆腐の保存性は向上した反面、加熱によって豆腐にすが立ってしまうといった問題や、風味が落ちるといった問題があった。さらには、ボイルクール槽自体が高額であり、稼動時には重油を使用するため、生産コストの面でも優れたものではなかった。
【0006】
ところで、近年、有効塩素を含有したpH5.0〜6.5のいわゆる微酸性電解水が注目を集めている。例えば、国際出願(国際出願番号PCT/JP2010/003928)、特許第4712915号(特願2011−504069)(特許文献1)には、微酸性電解水の製造装置およびそのために使用することができる電解槽が記載されている。なお、本明細書において、用語「微酸性電解水」とは、食品添加物対応、2002年6月10日、官報 第3378号に規定されるように、pH:5.0〜6.5、有効塩素濃度:10〜30mg/Lの範囲の水溶液を意味する。
【0007】
図4は、特許文献1に記載された微酸性電解水を製造するための電解装置400の概略図である。この図を用いて、微酸性電解水の製造方法について説明する。電解装置400は、電解槽410を備えており、制御装置432により制御が行われている。希釈水は、希釈水流路428に設置された電磁弁420、フロースイッチ421、定流量弁422、チェック弁423を経由して、電解槽410内に設けられた希釈水流路に導入される。
【0008】
希塩酸は、希塩酸ポンプ425により希塩酸タンク424から所定量吸引されて電解槽410の下部に配設された貯留部へと供給され、圧力および流速が安定化された後、電解槽410の電極スタック412内へと導入される。電極スタック412には、直流電源431から直流電流が印加されており、電極スタック412を成す平板電極の間に流入した希塩酸を電解する。直流電源431から電解槽410への給電電線上には、電流センサー430が設置されており、常時電流値が監視されている。
【0009】
電解槽410で電解され生成した被電解液は、電解槽410の上部の開口から希釈水流路に排出され、希釈水と混合され、流路429に排出される。流出された被電解液は、流路上に設置されたスタティックミキサー427を通過してさらに均一混合され、微酸性電解水として排出される。
【0010】
上記のように製造される微酸性電解水は、含塩素組成物の電解により生成された、分子状次亜塩素酸を酸化性生成物として含有しているため、高い酸化能力を有している。この高い酸化能力は、殺菌、除菌、脱臭、脱色、手洗い用、洗顔用などの高機能水として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】PCT/JP2010/003928
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、豆腐の製造工程に、微酸性電解水を使用することによって、製造される豆腐のす立ちや風味の劣化を防ぎ、保存性に優れた豆腐をより低コストで製造することを可能とするための食品原材料の製造装置および加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、大豆を膨潤させるための水、豆腐から余分なにがりや灰汁を取り除くための水晒しの水および豆腐を水中で保存するための水に、微酸性電解水を使用することによって、昔ながらの豆腐の保存性やコスト面の問題点を改善することができることを見出し、本発明に至ったのである。
【0014】
すなわち、本発明では、大豆を潤かす際に、微酸性電解水に浸漬してばっ気洗浄しながら膨潤させ、食品原材料である膨潤大豆を製造する。この膨潤大豆をすって炊き、煮呉を製造する。煮呉を絞って得られた豆乳ににがりを加え、型箱内で凝固させた豆腐を、微酸性電解水に晒して余分なにがりや灰汁を取り除く。その後、本発明では、微酸性電解水に晒した豆腐をカットして微酸性電解水を満たした水槽に保存するか、または微酸性電解水で満たしたパックに詰める。
【発明の効果】
【0015】
本発明により製造された豆腐は、微酸性電解水の殺菌効果により保存性に優れ、パック詰め後の加熱処理が行われないため、ボイルクール工程を採用して製造された豆腐と比較して、す立ちや風味の劣化のない豆腐の製造が可能となる。また、高額なボイルクール槽が不要となり、ボイルクール槽を稼動させるための重油も不要となるため、より低コストでの豆腐の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の食品原材料の製造装置100の概略図。
【図2】食品原材料の製造工程のフローチャート200。
【図3】本実施形態の植物由来の加工食品の保存方法のために使用される保存装置300およびパッケージ340の概略図。
【図4】微酸性電解水を製造するための電解装置400の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。図1は、本実施形態の食品原材料の製造装置100の概略図である。本実施形態では、食品原材料として、植物由来の食品である豆腐の製造に使用する大豆を一例として説明を行う。製造装置100は、微酸性電解水製造装置110と、貯水タンク120と、ポンプ130とを備えている。貯水タンク120には、微酸性電解水製造装置110が製造した微酸性電解水が貯留されている。ポンプ130は、制御装置190からの指示に応答して、貯水タンク120に貯留された微酸性電解水を汲み出すために用いられる。また、ポンプ130には、電磁弁142を介して延びた配管140が配設され、原料大豆を洗浄・膨潤させるために、適宜後述する浸漬タンク150へと微酸性電解水が供給される。
【0018】
さらに図1の製造装置100は、浸漬タンク150と、ブロワ160と、レベルスイッチ170とを備えている。浸漬タンク150は、豆腐を製造するための原料となる大豆180を潤かし、水で膨潤させる機能を有する。また、本実施形態では、浸漬タンク150は、大豆180を膨潤させながら、貯水タンク120から供給される微酸性電解水でばっ気洗浄を行う機能も有している。
【0019】
ブロワ160は、浸漬タンク150内にばっ気用のエアを供給するため用いられ、浸漬タンク150には、ブロワ160から電磁弁164を介して延びたエア供給ライン162が、貯留された微酸性電解水に対してばっ気可能な位置まで延ばされている。ばっ気洗浄の際に、大豆180は、ブロワ160から供給される空気によって浸漬タンク150内を上下に動き、この結果、膨潤期間中での洗浄・殺菌効果を著しく高めることができる。レベルスイッチ170は、浸漬タンク150内に微酸性電解水154が設定したレベルまで供給されたことを検知して、制御装置190に通知するために設けられている。レベルスイッチ170は、浸漬タンク150の深さ位置を設定できるように、例えば3レベルのセンサのセットとして構成することもできる。
【0020】
浸漬タンク150には、さらに排水弁152が配設されている。排水弁152は、浸漬タンク150の微酸性電解水が原料大豆を適切な時間洗浄した後、洗浄後の微酸性電解水を排水し、フレッシュな微酸性電解水を再度貯留して原料大豆が充分に膨潤するまでの間に複数回の膨潤・ばっ気洗浄を可能とするために用いられる。
【0021】
なお、製造装置100を構成するポンプ130、電磁弁142、排水弁152、ブロワ160、および電磁弁164は、制御装置190に接続され、レベルスイッチ170からの通知や時間によって制御されている。また、ポンプ130から浸漬タンク150まで延びる配管140およびブロワ160から浸漬タンク150まで延びるエア供給ライン162は、分岐されて他の複数のタンクと接続されても良く、その場合は、それぞれの配管やエア供給ラインに設けられた電磁弁を指定して開閉できるよう、制御装置190に制御させることができる。
【0022】
本実施形態では、例えば、微酸性電解水製造装置110として、微酸性電解水研究所社製の装置を使用することができ、ポンプ130として、エレポン化工機株式会社製のSL−35F、ブロワ160として、富士電機株式会社製のVFZ401A、レベルスイッチ170として、オムロン株式会社製のPS−3S等を使用することができる。
【0023】
図2は、図1に示した製造装置100を用いて、食品原材料である膨潤大豆を製造する工程のフローチャート200である。以下、図2を用いて、本実施形態の食品原材料の製造装置について説明する。図2の製造工程は、ステップS201から始まり、大豆のばっ気洗浄、殺菌、膨潤が行われ、ステップS210で終了する。
【0024】
ステップS201では、制御装置190がポンプ130を作動させ、貯水タンク120に貯留されている微酸性電解水が汲み出される。続いて、電磁弁142が開かれ、汲み出された微酸性電解水が配管140を通り、大豆180の入った浸漬タンク150へ注入される。レベルスイッチ170によって、洗浄に必要な量まで微酸性電解水が注入されたことが検知されると、制御装置190はその通知を受け、ポンプ130を停止させ、電磁弁142を閉じ、注水が停止される。
【0025】
ステップS202では、制御装置190がブロワ160を作動させ、エア供給ライン162に設けられた電磁弁164を開く。浸漬タンク150では、約5min、ばっ気しながら大豆180の殺菌洗浄が行われる。大豆180の殺菌洗浄後、ブロワ160が停止され、電磁弁164が閉じられる。ステップS203では、浸漬タンク150の排水弁152が開かれ、微酸性電解水が排出される。
【0026】
排水完了後、ステップS204では、制御装置190が排水弁152を閉じ、続いてポンプ130を作動し、電磁弁142を開き、浸漬タンク150へ微酸性電解水が注入される。レベルスイッチ170によって、浸漬タンク150の上限まで微酸性電解水が注入されたことが検知されると、制御装置190はその通知を受け、ポンプ130を停止させ、電磁弁142を閉じ、注水が停止される。
【0027】
ステップS205では、浸漬タンク150内で1〜3hour、大豆180が浸漬される。なお、この間はブロワを作動させずに、大豆180の膨潤を進行させる。このステップによって、微酸性電解水の殺菌成分が、大豆180の表皮と実の間に存在すると言われる耐熱性芽胞菌へとアタックできるようになると推測される。大豆180の浸漬が終了すると、ステップS206では、S202と同様に約5min、ばっ気しながら大豆180の殺菌洗浄が行われる。その後、ステップS207では、浸漬タンク150の排水弁152が開かれ、微酸性電解水が排出される。
【0028】
排水完了後、ステップS208では、S204と同様に、再び浸漬タンク150の上限まで微酸性電解水が注入される。ステップS209では、適宜設定された浸漬時間まで、ブロワを作動させずに大豆180が浸漬される。浸漬が完了すると、ステップS210では、浸漬タンク150の排水弁152が開かれ、微酸性電解水が排出される。浸漬タンク150に残された膨潤大豆は、製造プラントへ搬入され、豆腐、豆乳、おからといった様々な大豆食品の原材料として用いられる。
【0029】
図1および図2に示した本発明の食品原材料の製造装置および製造工程について、大豆を用いて説明したが、上述した製造装置および製造工程は、大豆のみならず、イネ、ムギ、トウモロコシなどの主穀、ヒエ、アワ、キビなどの雑穀、アズキ、インゲンマメ、ラッカセイなどの菽穀、ソバ、アマランス、キノアなどの擬穀といった穀物類やジャガイモ、サツマイモ、コンニャクイモなどの芋類等、水に潤かして洗浄が可能なあらゆる植物性の食用粒に対して使用することができる。
【0030】
図3は、本実施形態の植物由来の加工食品の保存方法のために使用される保存装置300およびパッケージ340の概略図である。保存される植物由来の加工食品はともに豆腐とし、はじめに、保存装置300について説明する。保存装置300は、微酸性電解水製造装置110と、貯水タンク120と、水槽310とを備えている。貯水タンク120には、図1と同様に、微酸性電解水製造装置110が製造した微酸性電解水が貯留されている。また、貯水タンク120は、コック124を介して水槽310まで延びる微酸性電解水供給ライン122を備え、コック124を開くことによって、貯水タンク120に貯留された微酸性電解水が水槽310へと供給される。
【0031】
水槽310は、豆腐330を微酸性電解水320中で保存するために用いられるとともに、型箱内で凝固させた豆腐を型から出して微酸性電解水に晒すために用いることもできる。その際、余分なにがりや灰汁が、貯留された微酸性電解水320中に排出されるため、水晒しの終了後にフレッシュな微酸性電解水へと入れ替えが行えるよう、水槽310には、排水弁312が配設されている。
【0032】
次に、パッケージ340について説明する。パッケージ340は、型から出して微酸性電解水に晒した後の豆腐344をパック342に詰め、フレッシュな微酸性電解水343で満たしたものである。また、パッケージ340は、パック342の開口部が保護フィルム(図示せず)によって覆われ密閉されている。
【0033】
保存装置300およびパッケージ340の保存形態は、豆腐の販売方法によって適宜選択することができる。例えば、水槽310に保存された豆腐330を直接取り出して店頭販売することもできるし、パッケージ340に豆腐を小分けに保存して、スーパーなどの食料品売り場へ卸すこともできる。また、保存装置300およびパッケージ340はともに、豆腐が容器内に貯留された微酸性電解水に完全に浸るように保存されるため、浸漬されている間は、外部からの菌の付着を防ぐことが可能となる。
【0034】
図3に示した本発明の植物由来の加工食品の保存方法について、豆腐を用いて説明したが、上述した方法は、豆腐のみならず、湯葉、こんにゃく、しらたき、漬物、麺類、缶詰、ゼリーなどのデザート類等、水に浸っている状態で保存可能なあらゆる植物由来の加工食品に対して使用することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態をもって説明してきたが、以下、本発明について、実施例をもってより具体的に説明する。なお、本発明は後述する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
1.食品原材料の細菌検査
まず、図1の装置を用いて製造される膨潤大豆について、細菌検査を行った。使用する浸漬タンク、タンクに挿入されるエア供給ラインやレベルスイッチは、予め微酸性電解水を用いて殺菌洗浄を行った。試料Aは、図2に示したフローチャート200に順じて処理を行った膨潤大豆(実施例1)であり、試料Bは、ばっ気洗浄処理を一切行わず、微酸性電解水に浸漬することのみによって製造した膨潤大豆(比較例1)である。なお、以下、実施例に示す細菌検査とは、食品衛生検査指針微生物編(1990・2004)、食品衛生検査指針追補II微生物編(1996)厚生労働省 監修を準用して行った。結果を以下の表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示す通り、実施例1として、微酸性電解水を用いてばっ気洗浄を行った試料Aは、比較例1である試料Bの製造工程では殺菌しきれなかった大腸菌群も検出されなかった。また、実施例1では、一般生菌数についても、比較例1の約1000分の1の菌数しか検出されなかった。これは、実施例1の膨潤大豆の製造行程で行われる、微酸性電解水中でのばっ気洗浄が、大豆に生存する細菌に対して、高い殺菌効果を有することを示すものである。
【0039】
2.植物由来の加工食品の細菌検査
次に、図3に示した装置を用いて保存される絹ごし豆腐の保存性の検証のため、保存から数日経過後の絹ごし豆腐について、細菌検査を行った。試料Cは、微酸性電解水を用いて製造・保存した絹ごし豆腐(実施例2)、試料Dは、水道水を用いて製造・保存した絹ごし豆腐(比較例2)であり、両試料とも、水温を4℃に設定された水槽に保存した後、検査を行った。両試料の詳しい製造方法および検査結果について、以下順に説明する。
【0040】
まず、試料Cの絹ごし豆腐の製造について、製造工程の途中で行った細菌検査の結果を示しながら詳しく説明する。はじめに、膨潤大豆の製造から図3の保存装置300に豆腐を保存するまでに使用される器具等を、微酸性電解水を用いて殺菌洗浄した。器具等が充分に殺菌されていることを確認するため、豆腐を凝固させる型箱(豆腐型箱)、豆腐をカットするカッター(豆腐カッター)および水晒しを行うための水槽(水晒し用水槽)の3検体について細菌検査を行った。検査は、それぞれの検体を減菌リン酸緩衝生理食塩水に湿らせた減菌綿棒を用いて100cm拭き取り、リン酸緩衝生理食塩水を加え10mlとし、振り出した液を試料液として行った。結果を以下の表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示す通り、3検体とも充分に殺菌されていることが確認された。また、他の器具についても微酸性電解水を用いて殺菌洗浄を行い、豆腐の製造を行った。
【0043】
絹ごし豆腐の原料となる膨潤大豆は、試料Aと同様に製造したものを用いた。この膨潤大豆を水とともにすりつぶし、呉を製造した。この際に加える水については、微酸性電解水ではなく市販の水(ミネラルウォーター)を用いた。製造された呉を炊いて煮呉とし、この煮呉を絞って豆乳とおからに分別した。豆腐の製造には、豆乳とにがりが用いられるため、ここで得られた豆乳および使用するにがりについて、細菌検査を行った。結果を以下の表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に示す通り、得られた豆乳の検査結果は、試料Aの膨潤大豆と同様の結果であった。これは、大豆をすりつぶす際に加えられる水については、微酸性電解水ではなく、それぞれの豆腐屋においてこだわりのある水を使用することができることを示すものである。また、使用されるにがりについても、充分に菌数の少ないものであることが確認できた。
【0046】
続いて、豆乳を熱いうちに型箱へ流し込み、そこへにがりを加えて凝固させた。製造した絹ごし豆腐は、微酸性電解水の入った水晒し用の水槽に取り出され、余分なにがりと灰汁が取り除かれ、カットされる。カットされた豆腐は、図3に示した保存装置300の水槽310へと保存し、試料C(実施例2)とした。豆腐の保存装置に使用される水槽についても、他の装置と同様に使用前に微酸性電解水を用いて殺菌洗浄し、洗浄後、水槽に微酸性電解水を貯留し、豆腐を保存する前に細菌検査を行った。結果を以下の表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示す通り、水槽に貯留された微酸性電解水からは細菌は検出されなかった。すなわち、製造した豆腐の保存装置のための水槽として問題なく用いることができることがわかった。
【0049】
次に、試料Dの絹ごし豆腐の製造方法について説明する。原料となる膨潤大豆は、水道水を入れ替えながら、充分に洗浄した大豆を浸漬して製造した。その後、水晒し用の水槽および豆腐の保存用の水槽に水道水が貯留されていること以外は、試料Cと同様の方法を用い、また、同様のにがりを用いて絹ごし豆腐を製造し、これを試料D(比較例2)とした。なお、製造工程で使用される器具等についても、水道水を用いて洗浄を行った。
【0050】
上述した方法で製造された絹ごし豆腐について、数日間にわたって細菌検査を行い、試料CおよびDについての結果を、それぞれ以下の表5および表6に示す。なお、表6中の0日目とは、保存開始直後の豆腐について行われた検査であることを示している。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
表5および表6に示す通り、大腸菌群および大腸菌については、いずれの試料についても不検出であった。しかしながら、一般生菌数については、実施例2である試料Cは、保存開始日から11日目まで300未満/gという、充分に低い数値を保っていることが確認できた。これは、微酸性電解水によって、保存期間中における試料Cへの新たな菌の付着が防がれ、さらには、試料Cの残留菌の増殖が抑制されたことを示す実験結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、説明したように、本発明によれば、植物性の食用粒を微酸性電解水中で潤かしながらばっ気洗浄することによって食品原材料を製造し、その食品原材料を用いて製造した植物由来の加工食品を微酸性電解水中で保存することによって、パック詰め後に加熱殺菌の必要のない、保存性に優れた植物由来の加工食品をより低コストで製造することが可能な食品原材料の製造装置および加工食品が提供される。
【符号の説明】
【0055】
110‥微酸性電解水製造装置、120‥貯水タンク、122‥微酸性電解水供給ライン、124‥コック、130‥ポンプ、140‥配管、142、164、420‥電磁弁、150‥浸漬タンク、152、312‥排水弁、154、320、343‥微酸性電解水、160‥ブロワ、162‥エア供給ライン、170‥レベルスイッチ、180‥大豆、190、432‥制御装置、300‥保存装置、310‥水槽、330、344‥豆腐、340‥パッケージ、342‥パック、410‥電解槽、412‥電極スタック、421‥フロースイッチ、422‥定流量弁、423‥チェック弁、424‥希塩酸タンク、425‥希塩酸ポンプ、427‥スタティックミキサー、428‥希釈水流路、429‥流路、430‥電流センサー、431‥直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性の食用粒を微酸性電解水中で潤かしながらばっ気洗浄することによって食品原材料を製造する製造装置であって、
前記植物性の食用粒のばっ気洗浄を制御する制御装置と、
前記微酸性電解水が供給され、前記植物性の食用粒を浸漬する浸漬タンクと、
前記微酸性電解水が前記浸漬タンクの設定されたレベルまで供給されたことを検知し、前記制御装置に通知するレベルスイッチと、
前記通知に応答して前記制御装置により、前記微酸性電解水中に空気を供給しない期間と、前記微酸性電解水中に空気を供給してばっ気洗浄する期間として動作されるブロワと
を備える、食品原材料の製造装置。
【請求項2】
前記制御装置は、さらに前記植物性の食用粒を潤かすためのばっ気洗浄が終了した後に前記浸漬タンクの中の洗浄後の微酸性電解水を排出させ、再度微酸性電解水の供給を指令する、請求項1に記載の食品原材料の製造装置。
【請求項3】
前記微酸性電解水は、希塩酸を無隔膜電解槽で電解し、電解液を希釈することによって得られる、pH5.0〜6.5の次亜塩素酸水である、請求項1または2に記載の食品原材料の製造装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の製造装置によって製造した植物性の食用粒を加工した加工食品を、微酸性電解水中に浸る状態でパック詰めした前記植物性の食用粒由来の加工食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−42757(P2013−42757A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31667(P2012−31667)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2011−182345(P2011−182345)の分割
【原出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(512040897)
【出願人】(509266789)株式会社微酸性電解水研究所 (7)
【Fターム(参考)】