説明

食品収納袋、食品収納袋用の原反フィルム、および製造装置

【課題】低コストで製造でき、しかも内部のガスは確実に抜け、外気との連通によって香気成分を失うことがない食品収納袋を提供する。
【解決手段】食品を収納して密閉することができる収納袋であって、該収納袋を形成するフィルムが、内側フィルムと外側フィルムとを互いに接着した積層フィルムであり、内側フィルムと外側フィルムとの間に、部分的に接着しないで空気の流通を可能にした通気部を形成し、通気部内において、内側フィルムに収納袋内部と通気可能な通気細孔を形成し、外側フィルムに外気と連通可能な排気口を形成した。収納袋内の食品がガスを放出すると、内側フィルム12の通気細孔6を通って通気部4を経由して排気口5からガスを放出するので、内圧が高まらず収納袋は膨張しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品収納袋、食品収納袋用の原反フィルムおよび食品収納袋用原反フィルムの製造装置に関する。さらに詳しくは、コーヒー豆、生味噌、果物などの食品は発酵の進行や呼吸作用等によりガスを発生するが、このような収納した食品の出すガスにより内圧が高くなっても収納袋が膨張しすぎたり破裂することがないようにした食品収納袋と、その食品収納袋を製造するための原反フィルムおよび製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの充満により収納袋が膨張しすぎたり、破裂することがないように、収納袋にガス抜き弁を取付けることが従来より行われている(特許文献1)。
このガス抜き弁は、袋内部のガス圧が高くなったガスは抜いても、外部の空気を流入させてはいけないので、通気部と弁部を設けて逆止弁機能を与えた構造となっている。このため、ガス抜き弁を収納袋に一体形成することができないので、収納袋を形成した後で、ガス抜き弁を溶着して取付けることになるが、後付け工法を用いるため、収納袋の製造工程が複雑になり、収納袋の単価も高くなっていた。
【0003】
【特許文献1】特公平5−79567号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑み、低コストで製造でき、しかも内部のガスは確実に抜け、外気との連通によって香気成分を失うことがない食品収納袋、食品収納袋用の原反フィルムおよび食品収納袋用原反フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の食品収納袋は、食品を収納して密閉することができる収納袋であって、該収納袋を形成するフィルムが、内側フィルムと外側フィルムとを互いに接着した積層フィルムであり、該積層フィルムの内側フィルムと外側フィルムとの間に、部分的に接着しないで空気の流通を可能にした通気部を形成し、該通気部内において、前記内側フィルムに収納袋内部と通気可能な通気細孔を形成し、前記外側フィルムに外気と連通可能な排気口を形成したことを特徴とする。
第2発明の食品収納袋は、第1発明において、前記通気部における通気細孔が、前記内側フィルムに形成した切り目であることを特徴とする。
第3発明の食品収納袋は、第1発明において、前記通気部が、収納袋の表面において、該収納袋の一端から他端にかけて直線状に所定の幅を有するように設けられており、該通気部の両端において、前記排気口が開口していることを特徴とする。
第4発明の食品収納袋用の原反フィルムは、内側フィルムと外側フィルムとを互いに接着した積層フィルムであり、該積層フィルムの内側フィルムと外側フィルムとの間に、部分的に接着しないで空気の流通を可能にした通気部を形成しており、該通気部内において、前記内側フィルムに収納袋内部と通気可能な通気細孔を形成していることを特徴とする。
第5発明の食品収納袋用原反フィルムの製造装置は、回転駆動されるドラムと、該ドラムの外表面において円周方向等間隔に取付けられた刃とからなるドラムカッターを用い、該ドラムカッターに請求項4記載の原反フィルムを巻き掛けた状態で、前記ドラムカッターと回転させると共に前記原反フィルムを走行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
第1発明によれば、収納袋内の食品がガスを放出すると、内側フィルムの通気細孔を通って通気部を経由して排気口からガスを放出するので、内圧が高まらず収納袋は膨張しない。また、通常の状態では、内側フィルムと外側フィルムが接触して空気の自然な通りを妨げているので、香気成分が抜けることはない。そして、この収納袋は、外付けの逆止弁等を用いないので、部品点数が少なく、製造工程も少なくてすむので、低コストで製造できる。
第2発明によれば、通気細孔が切り目であるので、通常の状態では閉じられていて外気との流通が生じないので香気成分の喪失防止に効果が高い。しかも、内圧が高くなったときは切り目が開くので、ガスの放出は充分可能である。
第3発明によれば、通気部が収納袋の一端から他端にかけてトンネル状に形成されることになるので、外気に接触するまでの流路が長くなり、その結果、通常では香気成分の喪失防止に高い効果を奏する。しかし、内圧が高いときは、トンネル状の通気部を通ってでも外気に放出できるので、ガス抜き効果は充分となる。
第4発明によれば、原反フィルムに予め通気部と通気細孔が形成されているので、積層フィルムを、内側フィルムを内側にして製袋し、通気部の任意の個所に排気口を形成するだけで、第1発明の食品収納袋を能率よく製造できる。また、第3発明の食品収納袋であれば、製袋するだけで排気口も同時にできるので、生産性がより高くなる。
第5発明によれば、ドラムカッターに請求項4記載の原反フィルムを巻き掛けた状態で、前記ドラムカッターと回転させると、原反フィルムを走行させながら、刃が原反フィルムに突入して、等間隔で切り目を入れていくことができるので、能率よく本発明の食品収納袋用の原反フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施形態に係る収納袋を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る食品収納袋の斜視図である。図2は図1の食品収納袋の横断面図である。図3は通気部の拡大断面図である。図4は食品収納袋の使用状態の説明図である。
【0008】
図1および図2により本発明が適用される収納袋Aの基本構造を説明する。この収納袋Aは、1枚のフィルムの両端縁を合わせた中央接着部1で接着して筒状にし、その筒状の上端縁を上端接着部2で接着し、下端縁を下端接着部3でさらに接着したものである。なお、上記のような収納袋Aの形状はこれに限られるものではなく、ガゼット袋(マチ付きの袋)や、三方袋などの種々の形態のものを含むものである。
【0009】
前記収納袋Aを構成するフィルムは、内側フィルム12と外側フィルム11とからなる。そして、内側フィルム12自体が単層フィルムであってもよく積層フィルムであってもよい。また、外側フィルム11自体も単層フィルムであってもよく積層フィルムであってもよい。
上記の内側フィルム12と外側フィルム11は、基本的には全面的に積層して使用されるものである。しかし、本発明で特徴とする通気部4では、内側フィルム12と外側フィルム11が、互いに接着されておらず、空気が流通するトンネル状に形成されている。
図1の実施形態では、通気部4は、収納袋Aの上端から下端にかけて形成されているが、このように端から端でなくとも、部分的に形成してもよい。
【0010】
前記通気部4の構成をさらに詳細に説明する。
前記通気部4の両端には排気口5,5が形成されている。ただし、この排気口5,5は常時開口した形状に保たれているものではなく、通気部4の内側フィルム12と外側フィルム11が互いに接触しているときは自然に塞がれた状態になっており、通気部4内の内側フィルム12と外側フィルム11が互いに離れたとき、例えばガスが通るときには自然に開くものである。
【0011】
前記通気部4内における内側フィルム12には、所々に通気細孔6が形成されている。この通気細孔6は収納袋A内のガス圧が高くなったとき少し開いてガスを通せば足りるので、小さな開口でよい。むしろ、大きすぎると、収納した食品の香気成分等が逃げてしまうので好ましくない。
本実施形態では、通気細孔6は刃物で切り込んだ切り目で形成している。
また、切り目で形成した通気細孔6は、図3に示すように2個を並列に設けている。この2個の通気細孔6(以下、切り目6ということがある)を並列に設けた理由は、つぎのとおりである。
切り目6は幅が狭いので、仮に1個のときは、切り目6が充分に開いていないことからガス抜きが不完全になることがある。これに対し、切り目が2個並列していると、(A)図のように、内側フィルム12が平坦な状態で個々の切り目6の隙間が小さいときでも、二つ合わせると少しはガスが通りやすくなり、また、(B)図に示すように、内側フィルム12が不規則に撓むと、2カ所の切り目6のうち少なくとも1カ所で折れ曲がりやすいので、折れて隙間が広がった切り目6からガスが通りやすくなるのである。
【0012】
図4に基づき、本実施形態の食品収納袋Aの使用状態を説明する。
図示の食品収納袋A内には、コーヒー豆や生味噌などのガスを発生する食品が入れられて、ある程度膨らんでいる(但し、食品は図示せず)。
この状態で、食品が発酵の進行や呼吸作用によりガスを発生すると、しだいに食品収納袋A内の内圧が高くなってくる。内圧が高くなり食品収納袋Aの外の大気圧との差がある程度生ずると、ガスが通気細孔(切り目)6を開いて、トンネル状の通気部4内に入り、その両端の排気口5から出ていく。このため、食品収納袋Aの内圧が異常に高まることがないので、食品収納袋Aが破裂することもない。そして、外部の空気が食品収納袋A内に逆流することはない。なぜなら、排気口5は自然な状態では軽く閉じられており、大気圧はそれを開く方向には作用しないからである。また、仮に通気部4内に空気が入っても、食品収納袋Aの内部より外部の圧力が高くなることはないので、通気細孔(切り目6)を通って、内部に空気が流入することもない。
以上のように、本実施形態によれば、内部のガス圧は排出するが、外気は導入しないので、食品の味を保ちつつ食品収納袋Aの破裂を防止することができる。
そして、本実施形態の食品収納袋Aは、後付けの部品等を用いず、本来必要なフィルムのみを用いているので、無駄な材料費が発生せず、安価に製造することができる。
【0013】
図5は、前記食品収納袋Aを製造するための原反フィルムを示している。
11は外側フィルムであり、幅は後述する内側フィルム12と同じ長さで、両側の端部1aは図1に示す中央接着部1となる部分である。
12は内側フィルムであり、中間層フィルム13と内層フィルム14の積層フィルムで構成されている。
【0014】
前記外側フィルム11は裏側に印刷21が施されるが、印刷適性を有するものであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどの合成樹脂性フィルムが用いられる。
【0015】
前記中間層フィルム13は、非通気性(ガスバリアー性)を有するものであればよく、例えば、蒸着されたポリエチレンテレフタレートやナイロン、2軸延伸ポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムが用いられる。
前記内層フィルム14は、ヒートシール性を有するものであればよく、例えば、ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムが用いられる。
【0016】
中間層フィルム13と内層フィルム14は接着剤23で接着され、これにより内側フィルム12が作られる。そして、前記外側フィルム11の印刷面側と内側フィルム12の中間層フィルム13とが接着剤22で接着される。これにより3層の積層フィルムが作られる。
符号24は剥離剤で、外側フィルム11の裏側に部分的に塗布される。このインモールド部24には接着剤22を塗布しないで、外側フィルム11と内側フィルム12を積層したとき、互いに接合しない部分ができ、この部分が、通気部4となる。
そして、通気部4に通じるように通気細孔(切り目)6を入れると、原反フィルムが出来上がる。
【0017】
つぎに、前記原反フィルムの製造方法を説明する。
図6のI図は外側フィルムのインモールド工程、II図は内側フィルムの貼り合せ工程をそれぞれ示す説明図である。図7のIII図は内側フィルムへの切り目入れ工程、IV図は内側フィルムと外側フィルムの貼り合せ工程のそれぞれの説明図である。図8のA図は切り目入れ工程の説明図、B図は切り目入れドラムの斜視図である。
【0018】
図6のI図に示すように、外側フィルム11に印刷21を施し、ついで必要な個所に剥離剤24を塗布している。剥離剤24は所望の幅で帯状に塗布されるが、この工程をインモールド工程という。一方では同図のII図に示すように、中間層フィルム13と内層フィルム14との間に接着剤23を塗布して、2つのフィルム13,14を合わせて積層し、内側フィルム12を作る。この工程が貼り合わせ工程である。
【0019】
つぎに、図7のIII図に示すように、内側フィルム12にドラムカッター30で切り目6を入れる切り目入れ工程が実行される。
前記ドラムカッター30による切り目入れ工程の具体例を図8に基づき説明する。
内側フィルム12を1次ロールR1から2次ロールR2に巻き取っていく途中で、ドラムカッター30に内側シート12を巻き掛けて送っていく。ドラムカッター30は、円筒状のドラム31の外表面に刃32を取付けている。刃32は2枚が並列に並べられて、円周方向において等間隔に4カ所に設けられている。そして、ドラム31は、モータ等の適当な駆動源で回転されるようになっている。
上記の構造のドラムカッター30を用いると、図7のIII図に示すように、内側フィルム12を走行させながら能率よく切り目6を入れていくことができる。
【0020】
再び図7のIV図にかえると、この工程は、外側フィルム11と内側フィルム12の貼り合わせ工程を示している。両フィルム11,12を接合するため、接着剤22を挟んで重ね合わせるが、外側フィルム11にはインモールド工程で剥離剤24が帯状に塗布されているので、この剥離剤24の上面に限っては、外側フィルム11と内側フィルム12が接着されない部分ができる。そして、この部分が通気部4となる。
また、この通気部4となる部分には通気細孔(切り目)6が合わせられている。
以上の工程により、図5に示す原反フィルムが、連続的に能率よく製造される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品収納袋の斜視図である。
【図2】図1の食品収納袋の横断面図である。
【図3】通気部の拡大断面図である。
【図4】食品収納袋の使用状態の説明図である。
【図5】食品収納袋を構成するフィルムの拡大断面図である。
【図6】I図は外側フィルムのインモールド工程、II図は内側フィルムの貼り合せ工程をそれぞれ示す説明図である。
【図7】III図は内側フィルムへの切り目入れ工程、IV図は内側フィルムと外側フィルムの貼り合せ工程のそれぞれの説明図である。
【図8】A図は切り目入れ工程の説明図、B図は切り目入れドラムの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
A 収納袋
4 通気部
5 排気口
6 通気細孔
11 外側フィルム
12 内側フィルム
13 中間層フィルム
14 内層フィルム
22 接着剤
23 接着剤
24 剥離剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納して密閉することができる収納袋であって、
該収納袋を形成するフィルムが、内側フィルムと外側フィルムとを互いに接着した積層フィルムであり、
該積層フィルムの内側フィルムと外側フィルムとの間に、部分的に接着しないで空気の流通を可能にした通気部を形成し、
該通気部内において、前記内側フィルムに収納袋内部と通気可能な通気細孔を形成し、前記外側フィルムに外気と連通可能な排気口を形成した
ことを特徴とする食品収納袋。
【請求項2】
前記通気部における通気細孔が、前記内側フィルムに形成した切り目である
ことを特徴とする請求項1記載の食品収納袋。
【請求項3】
前記通気部が、収納袋の表面において、
該収納袋の一端から他端にかけて直線状に所定の幅を有するように設けられており、
該通気部の両端において、前記排気口が開口している
ことを特徴とする請求項1記載の食品収納袋。
【請求項4】
内側フィルムと外側フィルムとを互いに接着した積層フィルムであり、
該積層フィルムの内側フィルムと外側フィルムとの間に、部分的に接着しないで空気の流通を可能にした通気部を形成しており、該通気部内において、前記内側フィルムに収納袋内部と通気可能な通気細孔を形成している
ことを特徴とする食品収納袋用の原反フィルム。
【請求項5】
回転駆動されるドラムと、該ドラムの外表面において円周方向等間隔に取付けられた刃とからなるドラムカッターを用い、
該ドラムカッターに請求項4記載の原反フィルムを巻き掛けた状態で、前記ドラムカッターと回転させると共に前記原反フィルムを走行させる
ことを特徴とする食品収納袋用原反フィルムの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−76609(P2006−76609A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262366(P2004−262366)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(504343731)西日本パック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】