説明

食品容器

【課題】 十分な断熱性を有するとともに落下衝撃にも強く、しかも安価に製造することが出来るピラード食品容器を提供する。
【解決手段】 ブランクシート10が筒状に巻回されて側壁部70が形成されている。ブランクシート10の対抗する両側縁間には、柱状部20が射出成形により形成されている。柱状部20の反対側にも、柱状部20と略同一形状及び寸法の第二柱状部30が形成されている。ブランクシート10の下端開口部全体には、射出成形により底部40が形成されている。底部40には糸尻部41が形成されている。ブランクシート10の上端周縁には、射出成形によりフレーム部50が形成されている。フレーム部50の周縁にはフランジ51が形成されている。柱状部20及び第二柱状部30の下方から約1/3の高さから、底部40に亘って段部60が形成されている。ブランクシートが発泡樹脂層を有している。射出成形樹脂が発泡樹脂層の樹脂と同種の樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形金型内にブランクシートを収納し、射出成形樹脂を射出してカップ状容器を形成するピラード容器であって、特に、食品を収納するのに好適な食品容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、立体的な容器は、ガラスビン、金属缶等に代わり、軽くて丈夫で安価なことからプラスチック製の容器が年々多くなってきている。プラスチック容器は丼状、弁当箱状、トレー等の絞りが浅い容器は、その生産性が良いことから真空、真空・圧空成形等のシートからの成形品が多く用いられている。しかし、L/D(深さ/口径、以下同様)の大きな容器の場合は、シートからの成形品ではシートが伸ばされるために偏肉が出易いので、偏肉の出ない射出成形容器が多く用いられている。
【0003】
しかしながら、射出成形容器は、樹脂100%の固相の樹脂で構成されているので断熱性が劣り、熱い飲食品や冷たい飲食品を入れた場合には、熱過ぎたり冷た過ぎたりして長時間手で持つことが出来ないものであった。また、容器としての必要な剛性及び強度を得るために、全体的にある程度の厚みが必要であった。
さらに、近年地球温暖化対策が叫ばれて来ており、特に、再生の出来ない石油資源消費量の削減が望まれている。
【0004】
そこで、近年、L/Dの大きな容器として、上述した射出成形容器の問題点を改善することが出来るピラード容器が多く用いられるようになった。このピラード容器は、一般に、紙層を主体とするブランクシートを射出成形機金型内に筒状に収納し、このブランクシートの側端部の突合せ部分及び上下端の開口部分に射出成形樹脂を射出充填して形成するものである(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、ピラード容器においては、一般に、ピラード容器の周壁部とするブランクシートは、射出樹脂で形成される骨格部材との接着性を高めるため、紙を主体とする基材層の内側にコーティング等によりPP等の熱接着性樹脂層が設けられている。しかしながら、基材層と熱接着性樹脂層とからなるブランクシートでは、落下時等の衝撃によりブランクシートが骨格部材との接合部で破断する恐れがあった。
【0006】
そこで、特許文献1においては、ブランク板(ブランクシート)を、基材層に引張強度が大きい二軸延伸フィルムを介して熱接着性樹脂層を積層して形成し、落下時の衝撃に耐え得るようにしたものである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−207936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1で提案されたピラード容器においては、二軸延伸フィルムの費用、基材層と一体化するためのAC剤の費用、溶融押出しPPの費用、一体化するための加工費用が増加する問題があった。
【0009】
本発明は以上の問題点を解決するためになされたもので、十分な断熱性を有するとともに落下衝撃にも強く、しかも安価に製造することが出来る食品容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討し、ブランクシートに発泡樹脂層を設けるとともに、発泡樹脂層に使用する樹脂と射出成形樹脂とを同種の樹脂とすることにより、十分な断熱性を確保できるとともに、ブランクシートと骨格部とが完全に一体化して落下衝撃等に極めて強くなり、しかも安価に製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
請求項1に係る食品容器は、射出成形機の金型内に容器の側壁部となるブランクシートを巻回して収納し、該ブランクシートの対抗する両側縁間、下端開口部全体、及び上端開口周縁に射出成形樹脂を射出充填することにより、柱状部、底部、及びフランジを有するフレーム部を形成する容器であって、前記ブランクシートが発泡樹脂層を有するとともに、該発泡樹脂層の樹脂と射出成形樹脂とが同種の樹脂であることを特徴として構成されている。
【0012】
請求項2に係る食品容器は、射出成形機の金型内に容器の側壁部及び底面部となるブランクシートを巻回して収納し、該ブランクシートの対抗する両側縁間、底面部の全体又は少なくとも底面部の糸尻を形成する部分、及び上端開口周縁に射出成形樹脂を射出充填することにより、柱状部、底部又は糸尻部、及びフランジを有するフレーム部を形成する容器であって、前記ブランクシートが発泡樹脂層を有するとともに、該発泡樹脂層の樹脂と射出成形樹脂とが同種の樹脂であることを特徴として構成されている。
【0013】
請求項3に係る食品容器は、請求項1又は2記載の食品容器において、発泡樹脂層の樹脂が、PE樹脂、PP樹脂又はPET樹脂であることを特徴として構成されている。
【0014】
請求項4に係る食品容器は、請求項1、2又は3記載の食品容器において、ブランクシートが、発泡樹脂層の少なくとも一方の面に平滑な未発泡層を有していることを特徴として構成されている。
【0015】
請求項5に係る食品容器は、請求項1、2、3又は4記載の食品容器において、ブランクシートが、酸素ガスバリヤー層を有していることを特徴として構成されている。
【0016】
請求項6に係る食品容器は、請求項5記載の食品容器において、酸素ガスバリヤー層が、EVOHフィルム、PVDCフィルム、MXD6−NYフィルム、Al箔、SiOx蒸着PETフィルム、Al蒸着PETフィルム、又はポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー・糖類の混合ポリマーコートされたPET若しくはO−NYフィルムであることを特徴として構成されている。
【0017】
請求項7に係る食品容器は、請求項1、2、3、4、5又は6記載の食品容器において、発泡樹脂層が、ガス発泡で発泡させた発泡樹脂層であることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る食品容器においては、射出成形機の金型内に容器の多くを占める側壁部に発泡樹脂層を主体とするブランクシートを巻回して収納し、ブランクシートの対向する側縁間(柱状部)、下端開口部全体(底部)、上端開口周縁(フランジを有するフレーム部)の骨格部をブランクシートの樹脂と同種の樹脂を射出して形成している。したがって、少ない樹脂量で容器としての断熱性を確保することができ、また、ブランクシートと骨格部とが融着により強固に一体化するので、落下衝撃に際しても破断することがない。さらに、柱状部により上部からの圧力に十分抗することができるとともに、フレーム部のフランジにより蓋材をヒートシールすることができる。
【0019】
請求項2に係る食品容器においては、上述した請求項1と同様に、断熱性、落下衝撃に際して破断することが無いものである。さらに、ブランクシートが底部にも存在するので、容器に酸素ガスバリヤー性を付与する場合には、ブランクシートに酸素ガスバリヤー層を設けることにより、酸素ガスバリヤー性を容易に確保することができる。
【0020】
請求項3に係る食品容器においては、発泡樹脂層の樹脂がPE樹脂、PP樹脂、A−PET樹脂であるので、コストも安く、又食品安全衛生性にも優れた容器とすることが出来る。
【0021】
請求項4に係る食品容器においては、平滑な未発泡層の面に印刷を施すことができるので、美粧性を得ることができ外観上好ましいものである。
【0022】
請求項5に係る食品容器においては、ブランクシートが発泡樹脂層と酸素ガスバリヤー層とから構成されているので、容器に酸素ガスバリヤー性を付与することが出来る。
【0023】
請求項6に係る食品容器においては、酸素ガスバリヤー層が、EVOHフィルム、PVDCフィルム、MXD6−NYフィルム、Al箔、SiOx蒸着PETフィルム、Al蒸着PETフィルム、又はポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー・糖類の混合ポリマーコートされたPET若しくはO−NYフィルムであるので、安価に製造することができる。
【0024】
請求項7に係る食品容器においては、発泡樹脂層がガス発泡による樹脂層であるので、ガスは時間の経過とともに空気と置換するので、食品安全衛生性上好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の食品容器においては、ブランクシートは発泡樹脂層を有している。この発泡樹脂層は、一般的には、化学発泡やガス発泡によって作製される。化学発泡は、熱によってガスを発生する炭酸水素ナトリウム系や、アゾジカルボンアミドのようなアゾ化合物、P−トルエンスルホニルアジドのようなアジド化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンのようなニトロソ化合物等の化学発泡剤を樹脂と練り込み、押出し機から押出して外気の圧力(1気圧)になった時に発泡するものである。化学発泡はシートの中に必ず発泡後の発泡残渣が残り、特にアゾ化合物、アジド化合物、ニトロソ化合物等は発癌性のあるアミン化合物を作る危険性があるので、食品安全衛生性上食品容器には好ましくない。ガス発泡は、押出し機の樹脂の中に炭酸ガス、ブタンガス、窒素ガス等を送り込み、押出し機から押出して外気の圧力になった時に発泡するものである。また、最近、押出し機の中に炭酸ガスを送り込んで超臨界状態(液体と気体の中間)にして押出す技術を用いることも出来る。
【0026】
発泡樹脂層に用いる樹脂は、PE樹脂、PP樹脂、PET樹脂等がある。発泡樹脂層の発泡倍率は、1.3〜5.0倍が好ましく、1.5〜3.0倍がより好ましい。発泡倍率が1.3倍未満では断熱性に劣り、5.0倍を超えると発泡セルが大きくなりシートとしての腰が失われるようになる。発泡樹脂層の厚みは0.3〜1.5mmが好ましく、0.5〜1.0mmがより好ましい。厚みが0.3mm未満ではシートとしての腰がなく、1.5mmを超えるとコスト高となるだけである。
【0027】
発泡樹脂層の一方の面には平滑な未発泡層を設けることができる。平滑な未発泡層を設けることにより、印刷を施すことが出来るので美粧性において好ましい。平滑な未発泡層を設けるには、発泡樹脂層の樹脂と同一樹脂のフィルムをドライラミネートで積層しても、共押出し法で発泡樹脂層と未発泡層を共押出ししても良い。
【0028】
未発泡層の厚みは、15〜80μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。厚みが15μm未満では、ドライラミネートで積層する場合は安価である市販のフィルムがなく、また共押出し法では均一に共押出しすることが難しい。厚みが80μmを超えると、断熱性に劣るようになり、また樹脂の削減の効果が失われるようになる。
【0029】
ブランクシートに酸素ガスバリヤー層を設けることができる。酸素ガスバリヤー層を設けることにより、容器内への酸素の進入を防止できるので、食品等をより長期間保存することができる。酸素ガスバリヤー層を設けるには、酸素ガスバリヤー層がEVOH樹脂層、PVDC樹脂層又はMXD6−NY樹脂層の場合には、2種3層の共押出し機を用い、中央に酸素ガスバリヤー層、その両側を発泡樹脂層として、発泡樹脂層/酸素ガスバリヤー層/発泡樹脂層の構成で共押出しして積層することができる。また、EVOHフィルム、PVDCフィルム、MXD6−NYフィルムを用いて、発泡樹脂層の一方の面にドライラミネートで積層することも出来る。
【0030】
酸素ガスバリヤー層として、Al箔、SiOx蒸着PETフィルム、Al蒸着PETフィルム、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー・糖類の混合ポリマーコートされたPET又はO−NYフィルムを用いる場合は、共押出しでは不可能であるので、ドライラミネートにより積層する。ドライラミネートで積層する場合には、まず酸素ガスバリヤーフィルムの一方の面に二液硬化型のポリウレタン接着剤を塗布し、乾燥ゾーンで乾燥した後、発泡樹脂層の樹脂と同一樹脂のフィルムをニップロールで圧力をかけながら積層する。次いで、反対側のフィルムが積層されていない酸素ガスバリヤーフィルム面に上記と同様、二液硬化型のポリウレタン接着剤を塗布し、上記と同様乾燥した後、発泡樹脂層とニップロールで圧力をかけながら積層し、フィルム層/酸素ガスバリヤー層/発泡樹脂層からなる層構成のブランクシートを作製する。
【0031】
以上のようなブランクシートは、容器を構成できるように所定形状に打ち抜かれたものであり、その形状の例を図1及び図2に示す。図1及び図2はそれぞれブランクシートの平面図である。図1に示すブランクシート10は側壁のみに用いられるもので、容器の側壁部となる扇型の側壁部用部材11が形成されている。図2に示すブランクシート10は側壁と底面に用いられるもので、容器の側壁部となる扇型の側壁部用部材11と、側壁部用部材11を連結する容器の底面部となる略円形の底面部用部材12とで形成されている。
【0032】
次いで、所定形状に打ち抜かれたブランクシートは、射出成形機の金型内に巻回して収納され、ブランクシートの対向する両側縁間(柱状部)、下端開口部全体(底部)、上端開口周縁部(フランジを有するフレーム部)の骨格部材を、発泡樹脂層の樹脂と同種の樹脂を射出成形して形成する。
【0033】
ブランクシートの両側縁間に射出して形成する柱状部は、両側縁間の柱状部1本でも良いが、反対側にも同様の柱状部を形成することが好ましい。反対側にも柱状部を形成することにより、容器の上部からの圧力を均等に受けることができる。
【0034】
側壁部のみのブランクシートを用いる場合、下端開口部全体に射出して形成する底部は、平面でも良いが、糸尻を設けるとともに、ブランクシートの内面に糸尻を受ける段部を設け、スタッキング及びデスタッキングを容易にすることが好ましい。また、側壁部及び底面部となるブランクシートを用いる場合は、ブランクシートの底面部を覆うように底面部全体に射出成形しても良いが、側壁部のみのブランクシートの場合と同様に、底面部の中を繰り抜いたように糸尻を設けるとともに、ブランクシートの内面に糸尻を受ける段部を設けてもよい。糸尻を受けるための段部は、柱状部に一体に形成することができ、この場合、段部の幅は、柱状部の全巾でも良いが、糸尻は下端開口部の全周に形成されているので、柱状部の中央に1〜2mmの巾で設けることができる。1〜2mmの巾で設けることにより、使用する樹脂の量を少なくすることが出来る。
【0035】
上端開口周縁に形成するフレーム部のフランジは、イージーピールの蓋材をヒートシールするために3.0〜8.0mmの巾が必要であり、安定的なヒートシールと容器全体の印象から4.0〜6.0mmの幅が好ましい。
【0036】
以上のようにして製造した食品容器の一実施形態を図面を参照して説明する。図3は食品容器の平面図、図4は図3中A−A線断面図、図5は図3中B−B線断面図、図6は食品容器の柱状部の拡大斜視図、図7も食品容器の第二柱状部の拡大斜視図である。
【0037】
図3〜図5において、ブランクシート10が筒状に巻回されて側壁部用部材11で側壁部70が形成されている。このブランクシート10の対抗する両側縁間には、図6に示すように、柱状部20が射出成形により形成されており、また、柱状部20の反対側にも、図7に示すように、柱状部20と略同一形状及び寸法の第二柱状部30が形成されている。ブランクシート10の下端開口部全体には、射出成形により底部40が形成されており、この底部40には糸尻部41が形成されている。ブランクシート10の上端周縁には、射出成形により帯状のフレーム部50が形成されており、このフレーム部50の周縁にはフランジ51が形成されている。また、柱状部20及び第二柱状部30の下方から約1/3の高さから、底部40に亘って段部60が形成されており、この段部60は容器内方へ突出した形状であるので、糸尻部41を受けることが出来るようになっている。
【0038】
〔実施例1〕
モダンマシナリー(株)製、押出し機(90mmφ、L/D=32)に、サンアロマー(株)製ポリプロピレン樹脂PL500A(MFR=3.3)75部、PF814(MFR=2.8)25部をドライブレンドした樹脂を投入し、発泡後のシート厚み0.7mm、発泡倍率2.0倍になるように炭酸ガスの封入量を調整しながら、250℃の温度でTダイから押出し、炭酸ガス発泡の発泡ポリプロピレンシートを得た。
【0039】
一方、東セロ(株)製ポリプロピレンフィルム「EC,30μm」にコロナ処理を行い、濡れ指数を42dyne/cm以上としたコロナ処理面にサカタインクス(株)製インキ「ラミオールマークIIIRグレード」を用いて、湯気の立っているコーヒーカップと受け皿の図柄及び説明文の多色の裏印刷を行った。
【0040】
この印刷したポリプロピレンフィルムを中島精機エンジニアリング(株)製ドライラミネートLX−3にセットし、ヘリオ彫刻によるスクリーン線数95線のグラビアロールで、ウレタン接着剤(東洋モートン(株)製、主剤:TM−569、硬化剤:CAT−RT37、溶剤:酢酸エチルエステル)を塗布し、熱風温度40℃、65℃、55℃の3ゾーンの乾燥後、前記発泡樹脂シートと貼合して、ポリプロピレンフィルム層/インキ層/ポリウレタン接着剤層/発泡ポリプロピレンシート層からなる積層発泡シートを作製した。
【0041】
この積層発泡シートを図1に示すような形状のブランクシートに打ち抜いた後、日積樹脂工業(株)製射出成形機「FE210−S50−ASE」の金型内に巻回して収納し、型締圧210t、樹脂温度230℃で日本ポリプロピレン(株)製ポリプロピレン樹脂「ノバテックBC03B」をブランクシートの対向する両側縁間とその反対部分に柱状部及び第二柱状部、下端開口部全体に底面部、上端開口周縁にフランジを有するフレーム部を射出成形して図3〜図7に示すような食品容器を作成した。
【0042】
なお、フランジ51の巾5.0mm、厚み1.0mmとし、帯状のフレーム部50の巾(第4図中、縦方向の長さ)8.0mm、厚み1.2mmとし、柱状部20は巾9mm、厚み1.7mmとし、段部60の高さ(段部60上端面の容器最下端からの長さ)35mm、巾1.0mm、テーパー角度(上方へ行くに従って肉厚に形成されている角度)1度、突出長さ(柱状部20から内方へ突出している長さ)1.8mmとし、底部40の高さ(ブランクシート10と接合している部分。糸尻部41を含む。)14mm、糸尻41の高さ3mm、厚み1.0mmとしている。
【0043】
得られた食品容器は、側壁部11に美粧印刷が施され、射出成形により正確に形成されたフランジと糸尻の形状から高級感のある食品容器であった。
また、骨格部(柱状部、底面部、フレーム部)とブランクシートとは強固に一体化し、落下衝撃にも破断等することが無かった。
【0044】
〔断熱性の評価〕
食品容器に温度70℃の温水を注ぎ、容器の温水はアルコール温度計で測定し、食品容器側壁の温度はヒートラベル(ミクロン(株)製、“6R−40”温度レンジ40,43,46,49,54,60℃6点表示)を貼り、その変色温度を測定した。結果は以下の通りであった。
容器の温水温度:65℃
側壁の表示温度:46℃
以上の結果、食品容器内の温水は飲み頃の温度であるが、食品容器側壁は手に持って熱くない程度であり、良好に断熱されていることが確認された。
【0045】
〔樹脂の削減量〕
本発明の食品容器の重量を測定し、この容器と同一容量、同一形状の容器を射出成形により、厚み1.0mmで形成した場合の樹脂量を計算し、両者の樹脂量を比較した。結果は以下の通りであった。
本発明の食品容器:13.8g
射出成形による容器:19.6g
容器の面積:210.6cm
樹脂を射出する体積:210.6cm×0.1cm=21.06cm
容器の重量:21.06cm×0.93(PPの比重)=19.6g
以上のように、本発明による食品容器は、従来の射出成形による容器と比較して、13.8/19.6×100=70.4%と、約30%の樹脂の削減量となり、再生の出来ない石油資源の消費量の削減に貢献することが出来る。これは、本発明の食品容器においては、容器の大部分を占める側壁部に0.7mmの2倍発泡ブランクシートを用いたことによる。
【0046】
〔実施例2〕
ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー・糖類の混合ポリマーがコートされたPETフィルム(呉羽化学工業(株)製、ET−130R)のコート面に、実施例1と同様にサカタインクス(株)製インキを用いて、実施例1と同様に裏印刷を行った。次いで、実施例1の炭酸ガス発泡シートに、実施例1と同様に、ウレタン接着剤(東洋モートン(株)製)を用いてドライラミネートで貼合した。この積層発泡シートを図2に示す形状に打ち抜いてブランクシートを作製した。
【0047】
この打ち抜いたブランクシートを実施例1と同一の射出成形機の金型内に巻回して収納し、実施例1と同一の樹脂を同一条件で射出成形し、酸素ガスバリヤー性を有する食品容器を得た。
【0048】
〔酸素ガスバリヤー性の評価〕
この得られた食品容器のフランジに、イージーピール層(35μ)/ドライ/Al箔(7μ)/ドライ/PET(12μ)の層構成のイージーピールフィルムをヒートシールして密封した。この密封した容器の酸素ガスバリヤー性を、酸素透過度測定器(MOCON社製、OX−TRAN(登録商標)、MODEL2/21)を用い、温度30℃、湿度80%RH以下で測定した。
測定した結果、酸素ガスバリヤー性は、1.3ml/m.D.atmであり、長期の食品保存が可能なことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による食品容器に用いるブランクシートの一実施形態の平面図
【図2】本発明による食品容器に用いるブランクシートの他の実施形態の平面図
【図3】本発明による食品容器の一実施形態の平面図
【図4】図3中A−A線断面
【図5】図3中B−B線断面図
【図6】本発明による食品容器の柱状部の拡大斜視図
【図7】本発明による食品容器の第二柱状部の拡大斜視図
【符号の説明】
【0050】
10 ブランクシート
11 側壁部用部材
12 底面部用部材
20 柱状部
30 第二柱状部
40 底面部
41 糸尻部
50 フレーム部
51 フランジ
60 段部
70 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の金型内に容器の側壁部となるブランクシートを巻回して収納し、該ブランクシートの対抗する両側縁間、下端開口部全体、及び上端開口周縁に射出成形樹脂を射出充填することにより、柱状部、底部、及びフランジを有するフレーム部を形成する容器であって、前記ブランクシートが発泡樹脂層を有するとともに、該発泡樹脂層の樹脂と射出成形樹脂とが同種の樹脂であることを特徴とする食品容器。
【請求項2】
射出成形機の金型内に容器の側壁部及び底面部となるブランクシートを巻回して収納し、該ブランクシートの対抗する両側縁間、底面部の全体又は少なくとも底面部の糸尻を形成する部分、及び上端開口周縁に射出成形樹脂を射出充填することにより、柱状部、底部又は糸尻部、及びフランジを有するフレーム部を形成する容器であって、前記ブランクシートが発泡樹脂層を有するとともに、該発泡樹脂層の樹脂と射出成形樹脂とが同種の樹脂であることを特徴とする食品容器。
【請求項3】
前記発泡樹脂層の樹脂が、PE樹脂、PP樹脂又はPET樹脂であることを特徴とする請求項1及び2記載の食品容器。
【請求項4】
前記ブランクシートが、発泡樹脂層の少なくとも一方の面に平滑な未発泡層を有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の食品容器。
【請求項5】
前記ブランクシートが、酸素ガスバリヤー層を有していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の食品容器。
【請求項6】
前記酸素ガスバリヤー層が、EVOHフィルム、PVDCフィルム、MXD6−NYフィルム、Al箔、SiOx蒸着PETフィルム、Al蒸着PETフィルム、又はポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー・糖類の混合ポリマーコートされたPET若しくはO−NYフィルムであることを特徴とする請求項5記載の食品容器。
【請求項7】
前記発泡樹脂層が、ガス発泡で発泡させた発泡樹脂層であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の食品容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−96525(P2009−96525A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270865(P2007−270865)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(594050821)日生化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】