説明

食品廃棄物からの有効成分抽出方法及び廃棄物減量方法、並びに有効成分抽出装置及び廃棄物減量装置

【課題】 食品廃棄物からアミノ酸などの有効成分を抽出する為の装置であって、高温高圧下で目的温度での有効成分を浪費なく、効率よく抽出することが出来る抽出装置の提供。
【解決手段】 水を入れて加熱することで蒸気を発生する高温高圧容器1内には食品廃棄物を収容する特殊容器2をその上部を開口した状態で配置し、該高温高圧容器1にはヒーター8a,8bを取付け、上記特殊容器2の底には抽出管を接続すると共に該抽出管の途中には冷却装置、採集流量調整弁14及び圧力調整弁24を設け、そして抽出管の先端には有効成分を含む液が収容される採集容器7を有している。又、上記高温高圧容器1へ給水するための給水管を接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品廃棄物(例えば、おから、酒かすなどの製品精製後の残物)中に含まれているアミノ酸などの有効成分を抽出する為の方法及び廃棄物の減量方法であり、又有効成分抽出装置及び廃棄物の減量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品メーカーなどからは多くの廃棄物が排出され、これの処理方法に関して色々な技術が提案されている。例えば、特開2005−111385号に係る「食品廃棄物の処理方法」は、食品廃棄物の処理時間を短縮することが出来るもので、固体状の食品廃棄物と液体状の食品廃棄物とが混在する食品廃棄物に澱粉質を添加した後、発酵菌を含有する菌床に混入して食品廃棄物を発酵させ、発酵の際に発生する発酵熱で澱粉質をアルファー化させると共に、発酵熱で食品廃棄物に残存する水分を蒸発させる技術である。
【0003】
特開2001−334245号に係る「食品廃棄物の処理方法及び装置」は、非可食部分の分解精度及び可食部分の回収率を向上し、回収可食分を肥料として利用可能とする。このように、食品廃棄物(例えば、おから、酒かすなど製品精製後の残物)を産業廃棄物として処理していたが、これらの廃棄物の中にもアミノ酸などの有効成分が相当量含まれており、単一食品中からの抽出は安定した組成の有効成分を取り出すことができ為に有益とされている。
【0004】
ところで、密閉容器に食品廃棄物と水を適量入れ常温の状態から一定温度に触媒中で昇温し、高圧高温水下で一定時間保持後冷却し、常温に到達後開封して有効成分の抽出を行っており、温度帯による抽出物の判断がつかないと同時に、廃棄物と水は常に接触しており多量の溶液の中からの必要な成分を抽出しなくてはならない。
【0005】
又、蒸気発生器からの高温蒸気を食品廃棄物に直接散布し、該蒸気の凝縮液を採集して抽出物を取り出す方法も知られている。しかし、この方法は廃棄物の試料温度が目的温度に到達する間、高温蒸気を照射しなければならず、抽出物は参考成分にしかなかった。
【0006】
さらに、食品廃棄物と水を高圧圧入できる粘度に調整した混合物を、高圧ポンプで細長いチューブに圧入し、その道中にヒーターと冷却装置を取り付け連続的に混合物として加工し、最後に遠心分離器で有効成分を抽出する方法がある。しかし、この方法では試料に対する有効成分抽出比率が低く、又熱エネルギー消費が高いため、有効成分抽出装置としては不向きである。
【0007】
特開2004−65184号に係る「食品廃棄物利用の良質タンパク回収方法」は、廃棄パンなどの食品廃棄物を効率的に処理することが出来、上水や酵素の必要量を低減でき、食品廃棄物以外の余分な原料を必要とせず、均質かつ良質のタンパクを回収することが出来る食品廃棄物利用の良質タンパク回収方法である。
【特許文献1】特開2005−111385号に係る「食品廃棄物の処理方法」
【特許文献2】特開2001−334245号に係る「食品廃棄物の処理方法及び装置」
【特許文献3】特開2004−65184号に係る「食品廃棄物利用の良質タンパク回収方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の有効成分抽出装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、高温高圧下で目的温度での有効成分を浪費なく、効率よく抽出することが出来る方法及び装置を提供する。一方、この装置で処理された後の廃棄物の重量が大幅に減量する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る食品廃棄物からの有効成分抽出装置は、蒸気発生容器中に食品廃棄物を特殊容器に充填して蓋をし、ボルト等で封止した後、食品廃棄物が浸水しない水位まで容器に高圧ポンプで給水を行う。その後容器外壁よりヒーターで加熱を行う。目的温度に達した後、水蒸気を廃棄物に当てながら抽出弁を解放する場合と、徐々に水位を上昇させて蒸気発生容器内に配置した上記特殊容器の上部開口から流入して廃棄物に高温高圧水を当てて排出する場合とが有り、目的に応じて選択出来る。
【0010】
特に水蒸気を照射する場合は廃棄物の減量に効果が有り、高温高圧水を経由する場合は有効成分を抽出する場合に効果がある。試料内部の有効成分が期待できる廃棄物は高温高圧水で処理し、有効成分がさほど期待できない廃棄物は水蒸気で減量するように目的に応じて処理が可能となる。有効成分を含んだ高温高圧水は間接冷却管で冷却されて採集される。また容器から放出された水蒸気は、間接冷却管内を経由し凝縮液となり採集される。
【0011】
ヒーターは2段構造に配置され、容器の下層部と上層部を別々に加熱する構造となっている。熱量負荷や液量に応じて、加熱方法は下層部と上層部のヒーターを使い分けることが可能である。そこで容器に給水された水は発生蒸気と共に容器外に放出され、容器内の水位は低下する。本装置では水位センサーで水位を検知し高圧ポンプで容器内に給水でき温度低下が極力少なくなるように配管中に予熱ヒーターを取付け、高圧ポンプの吐出量を加減することができる。
【0012】
また水蒸気として容器外にバルブによって放出された気体又は高温水は、取り出し口手前で冷却装置により凝縮又は冷却され、低い温度の液体として取り出し、抽出物の蒸発及び昇華を防止することができる。抽出物輸送管は冷却による凝結により、抽出物の堆積、スケール化で抽出中の有効成分の混入や輸送管の冷却効果低下などにより、定期的に洗浄する必要がある。本装置では高圧ポンプからの吐出液を利用し、抽出途中でも輸送管内を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0013】
食品廃棄物を高温高圧容器に充填し、制御された温度の水蒸気を定時間照射することにより、目的とするアミノ酸、有機酸等の有効抽出が可能である。
又、食品廃棄物を高温高圧容器に充填し、処理条件で有効成分を抽出した後の食品廃棄物は重量が減少し、処理前の約4割に減量されたことからも、廃棄物処理にかかる負担を軽減することが出来る。
【実施例】
【0014】
図1は本発明に係る有効成分抽出装置の構成を示す実施例であり、主に1の蒸気発生容器、9の蓋及びボルト、3の給水タンク、4の高圧ポンプ、6の冷却管で構成されており、それに計測器、止め弁、附属機器、安全弁18などが付随する装置である。
【0015】
蒸気発生容器1には、試料及び試料ポット2を装着できる固定枠が装着してあり、その固定枠上部には開口部を設けてあり、蒸気発生容器1内で発生した蒸気が試料及び試料ポット2を通過し、有効成分を含んだ蒸気が固定枠底部より凝固することなく容器外部に排出される様に形成されている。
【0016】
蒸気発生容器1での給水量管理は、液面計5に附属する水位センサー12a,12b,12c,12d・・・の間で行われている。同給水は容器内部が高圧の条件下でも可能な様に、給水元弁13を介して、給水タンク3の水を高圧ポンプ4で加圧し、ヒーター11で加熱した温水が容器給水弁22を開くことにより、蒸気発生容器1に送り込まれる。高圧ポンプ4の吐出量はヒーター11の昇温状況で加減することが出来、容器内温度の急変を防止出来る。またヒーター11の出力制御も可能である。
【0017】
蒸気発生容器1の胴外周側にヒーター8a,8bが配置されており、電気又は熱媒等を熱源とする。このヒーター8a,8bは、温度センサー10a,10bで容器内温度変化をPID制御しており、昇温に必要な熱量を微積分し過昇温にならないように制御している。また圧力計17の計測値からの制御も可能である。容器冷却弁15は容器内部液温度の冷却用に間接冷却コイルを容器内液相部に配置してあり、仮に過昇温の場合でもこの容器冷却弁15を開き、コイル内部に冷却水が通ることにより過昇温を防止することが出来る。この容器冷却弁15は容器の通常冷却用としても使用される。
【0018】
所定温度に容器内水温が到達すると、冷却水弁16を開き、冷却管6を冷却する。その後容器温度と圧力が急激に降下しない容量の有効成分を含んだ水蒸気は、採集流量調整弁14と圧力調整弁24を開くならば、その採集流量調整弁14を通過後、有効成分を含んだ水蒸気は冷却管6を流れ、凝縮水となり圧力調整弁24を通過して採集容器7で有効成分を含む水溶液となる。
【0019】
抽出物輸送管内部の洗浄は、採集流量調整弁14、容器給水弁22を閉めた後、洗浄弁23と圧力調整弁24を開け、高圧ポンプ4を運転することで可能となる。このような工程で有効成分の抽出が行われ、蒸気発生容器1内の水位が低水位位置12dを超えて低下すると高圧ポンプ4が作動し所定水位位置12aまで給水し、所定温度までヒーター8a,8bで加熱して水温を温度調節する。この動作を繰り返すことにより長時間有効成分の抽出が可能である。
【0020】
抽出完了後はヒーター8a,8bの電源を切り、排水弁19を開くならば蒸気発生容器1内の温水は給水タンク3へ導かれ、水と混じり低い温度の温水となる。排水完了後は排水弁19を閉め、この温水を再び高圧ポンプ4を経由し蒸気発生容器1に送り込んで該蒸気発生容器1の冷却を行う。さらに排水弁19を開いて給水タンク3へ高温水を送り込む。給水タンク3の温度上昇が見られれば、給水タンク3の排水弁21を開き低温度の水に取り替える。給水タンク3への給水は、給水弁20の自動水位調整器又はボールタップ弁を使用する。
(高温水による減量化)
上記装置で水蒸気による各条件での連続抽出後、装置内の液を冷却しながら排出し、圧力を大気圧になるまで開放した後、試料ポットごと残ったおからを取り出し、湿潤重量と乾燥重量から算出した場合のそれぞれの減量率を図2に示す。
食品廃棄物を高温高圧容器に充填し、処理条件で有効成分を抽出した後の食品廃棄物は重量が減少し、テストでは処理前の約4割に減量されたことからも、廃棄物処理に掛かる負担を軽減することが出来る。
オカラは処理温度が180℃、200℃では1時間で約40%に減量され、150℃では3時間〜4時間ほどで同様の減量に達する。
このような有機物の減量には限界があるが、食品リサイクル法が求める20%以上の減量化は十分に達成される。
【0021】
(高温水による有効成分の抽出)
本発明の装置を用いてオカラの有効成分を抽出した結果が図3である。同図は200℃で処理時間が1時間と4時間での高温水処理により検出される主なアミノ酸であり、常温の水で処理した場合も示している。このように、加熱時間が長くなるとアミノ酸の種類により分解が進行すると考えられ、抽出されるアミノ酸の種類及びその量は変化する。従って、最適な温度及び時間を設定することで、抽出したいアミノ酸を効率よく得ることが可能と成る。
【0022】
(水蒸気による減量化)
図4は水蒸気によるオカラの減量化を表している。最初に処理量100g
で試験した場合、160℃以下では水蒸気の水分を吸収して湿潤重量は増加しているが、乾燥すると10〜50%の減量となる。200℃では湿潤でも30%の減量、乾燥状態では60%近くの減量となる。さらに、処理量を400gに増加させると、処理温度が120℃から160℃に上昇するに従い湿潤重量は10%〜30%近くに減量すると共に、乾燥重量も25%〜45%へと減量している。これは、装置の大きさと処理量に最適な関係があることを示している。
【0023】
(水蒸気による有効成分の分析)
本装置の試料ポット2にオカラを入れて水蒸気による連続抽出を行い、成分分析を行った。
分析試料は水蒸気温度変化による抽出物の量を図5で示す。抽出時間変化による抽出物の量は図6に示す。
120℃で5時間抽出することで、カルノシン(アミノ酸)だけが際だって多く抽出出来ることが分かる。又、アスパラギン酸は160℃で抽出することで、その他の温度条件より際だって多く抽出出来ることも明らかである。
その他の食品廃棄物に関しても処理温度による抽出割合に特性があると考えられ、適切な処理温度が判明すれば、効率的な有効成分の抽出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る有効成分抽出装置の概略図。
【図2】オカラの高温水処理による残量の変化。
【図3】高温水及び水により抽出された主なアミノ酸。
【図4】オカラの処理温度と処理量による減量率に変化。
【図5】オカラの処理温度によるアミノ酸と有機酸の生成量。
【図6】オカラの処理時間によるアミノ酸と有機酸の生成量。
【符号の説明】
【0025】
1 蒸気発生容器
2 試料及び試料ポット
3 給水タンク
4 高圧ポンプ
5 液面計
6 冷却管
7 採集容器
8 ヒーター(蒸発器用)
9 蓋
10 温度センサー
11 ヒーター(給水用)
12 水位センサー
13 給水元
14 採集流量調整弁
15 容器冷却弁
16 冷却水弁
17 圧力計
18 安全弁
19 排水弁
20 給水弁
21 給水タンク排水弁
22 容器給水弁
23 洗浄弁
24 圧力調整弁










【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品廃棄物からアミノ酸などの有効成分を抽出する為の方法において、高温高圧容器内に配置した特殊容器に食品廃棄物を収容し、制御された温度と圧力の水蒸気又は高温高圧水を食品廃棄物に当て、上記特殊容器内の水蒸気又は高温高圧水を取り出し冷却することを特徴とする食品廃棄物からの有効成分抽出方法。
【請求項2】
食品廃棄物の重量を軽減する為の方法において、高温高圧容器内に配置した特殊容器に食品廃棄物を収容し、制御された温度と圧力の水蒸気を食品廃棄物に当て、上記特殊容器内の水蒸気を取り出すことを特徴とする食品廃棄物の重量軽減方法。
【請求項3】
食品廃棄物からアミノ酸などの有効成分を抽出する為の装置において、水を入れて加熱することで蒸気を発生する高温高圧容器内には食品廃棄物を収容する特殊容器をその上部を開口した状態で配置し、該高温高圧容器にはヒーターを取付け、上記特殊容器の底には抽出管を接続すると共に該抽出管の途中には冷却装置、採集流量調整弁及び圧力調整弁を設け、そして抽出管の先端には有効成分を含む液が収容される採集容器を有し、又、上記高温高圧容器へ給水するための給水管を接続していることを特徴とする食品廃棄物からの有効成分抽出装置。
【請求項4】
給水タンクに給水管を接続し、該給水管の途中には高圧ポンプと内部を流れる水を加熱するヒーターを設けた請求項3記載の食品廃棄物からの有効成分抽出装置。
【請求項5】
食品廃棄物の重量を軽減する為の装置において、水を入れて加熱することで蒸気を発生する高温高圧容器内には食品廃棄物を収容する特殊容器をその上部を開口した状態で配置し、該高温高圧容器にはヒーターを取付け、上記特殊容器の底には抽出管を接続すると共に該抽出管の途中には冷却装置、採集流量調整弁及び圧力調整弁を設け、そして抽出管の先端には有効成分を含む液が収容される採集容器を有し、又、上記高温高圧容器へ給水するための給水管を接続していることを特徴とする食品廃棄物の重量軽減装置。
【請求項6】
給水タンクに給水管を接続し、該給水管の途中には高圧ポンプと内部を流れる水を加熱するヒーターを設けた請求項5記載の食品廃棄物の重量軽減装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−90289(P2007−90289A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285782(P2005−285782)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(593196609)株式会社 オノモリ (3)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【Fターム(参考)】