説明

食品排水の泡沫遠心分離による排水処理方法

【課題】少ない動力消費で、食品製造時等に排出される排水中の所定の物質を濃縮した相と希釈した相とに分離し、薬品等をできるだけ添加せずに、必要に応じて清流に流すことができるまでに排水を浄化しうる排水処理方法を提供する。また、上記の濃縮相を工程に戻して資源リサイクルすることもできる排水処理方法を提供する。さらには、大幅な設備投資や多大な運転コストを必要とせず、多量の排水を効率的に処理しうる排水処理方法を提供する。
【解決手段】排水に微小気泡を発生させ、排水中の気泡表面に付着可能な物質を前記微小気泡の表面に付着させて捕捉し、該微小気泡の集合体を取り出して遠心分離し、前記気泡表面に付着した物質を濃縮するとともに、一方前記排水を浄化する食品製造工程からの排水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品排水を少ない動力消費で、外部からの薬剤添加等できるだけ行わずに浄化処理する排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造時の排水には蛋白質や糖質などを含有するものがある。それらの物質は排水中に溶解ないし懸濁浮遊している。これに対して例えば、蛋白質などの浮遊物質(Suspended Solid)を分離する方法として、限外濾過法や蒸発乾燥法などが挙げられる。しかし、これらの方法は食品製造の一般工程として採用するには多大な設備やエネルギーが必要となり、コストがかかりすぎる。食品製造時の排水処理として現実的ではない。また、薬剤を添加して排水中の溶解物質を凝集および沈殿させる方法は広く行われている。
【0003】
一方、昨今、環境保全への積極的な取り組みが要請されている。そのため食品排水という比較的環境負荷の小さいものであっても、極めて高度に浄化する処理システムの開発が望まれている。この場合、浄化処理後の排水に処理に用いた薬剤が微量でも混入することは好ましいこととはいえない。特に全有機炭素(TOC)濃度を低減させ、例えばCOD(化学的酸素要求量)やBOD(生物学的酸素要求量)において厳しい自然保護、環境汚染防止基準が課されるような地域にあっても、適合しうるよう排水を処理するシステムの構築が理想とされる。しかしながら、上述のとおり、従来の方法は排水についてこのような厳格な基準を満たさせることは難しく、実施上これを満足する処理システムはこれまで提案されていない。
【0004】
食品排水として例えば、豆腐製造において排出される大豆ホエー排水が挙げられる。大豆ホエーは豆乳ににがりを添加し凝固させた後、できた豆腐から分離される液体分であり、大豆由来の蛋白質や糖質を含んでいる。
これに関連して、大豆ホエーを炭酸飲料として再利用する方法(特許文献1)や、凝固剤を添加して木綿豆腐等に加工すること(特許文献2)が提案されているが、いずれも薬剤等の添加を必要とする。また、豆腐製造において遠心分離を利用して所定の物質を分離した例もあるが(特許文献3〜6)、排水の全量を遠心分離により処理するには大規模な設備と多大なエネルギーが必要となる。上記の限外濾過などと同様に、排水処理方法として実際的ではない。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−064465号公報
【特許文献2】特開平04−218354号公報
【特許文献3】特開昭52−130942号公報
【特許文献4】特開昭53−121993号公報
【特許文献5】特開昭59−203462号公報
【特許文献6】特開平04−187695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少ない動力消費で、食品製造時等に排出される排水中の所定の物質を濃縮した相と希釈した相とに分離し、薬品等をできるだけ添加せずに、必要に応じて清流に流すことができるまでに排水を浄化しうる排水処理方法の提供を目的とする。また、上記の濃縮相を工程に戻して資源リサイクルすることもできる排水処理方法の提供を目的とする。さらには、大幅な設備投資や多大な運転コストを必要とせず、多量の排水を効率的に処理しうる排水処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)排水に微小気泡を発生させ、排水中の気泡表面に付着可能な物質を前記微小気泡の表面に付着させて捕捉し、該微小気泡の集合体を取り出して遠心分離し、前記気泡表面に付着した物質を濃縮するとともに、一方前記排水を浄化することを特徴とする食品製造工程からの排水処理方法。
(2)前記気泡表面に付着可能な物質が蛋白質であることを特徴とする(1)に記載の排水処理方法。
(3)前記気泡表面に付着可能な物質が炭水化物であることを特徴とする(1)に記載の排水処理方法。
(4)前記排水が豆腐製造時に排出される大豆ホエー含有水であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の排水処理方法。
(5)前記遠心分離により、前記気泡表面に付着可能な物質を濃縮した相を泡沫層として、前記気泡表面に付着可能な物質を希釈した相を液層として分離することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排水処理方法によれば、少ない動力消費で、排水中の所定の物質を濃縮した相と希釈した相とに分離し、薬剤等をできるだけ添加せずに排水を浄化することができ、必要に応じて厳しい環境汚染防止基準の課されるような地域の清流であっても流すことができるほどに浄化しうるという優れた効果を奏する。また、必要に応じて上記の濃縮相を食品製造工程に戻して再利用しうるものとし、資源リサイクルをも実現しうる。
さらに、本発明の排水処理方法は、食品製造工程からの排水の処理に適し、大幅な設備投資や多大な運転コストを必要とせず、多量の排水を効率的に処理する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の排水処理方法は、(i)排水に微小気泡を多数発生させ、その微小気泡を集合させる工程と、(ii)その気泡集合体を取り出して遠心分離し、所定の物質を希釈した相と、その物質を濃縮した相とに分離する工程とを有する。これにより、食品製造時等の排水を浄化することができ、好ましくは厳しい環境保護基準の課される地域の清流にも流すことができるほどに浄化する。
【0010】
まず気泡集合体を形成する工程(i)について図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の排水処理方法に用いられる装置の好ましい態様を模式的に示す装置図である(ただし本発明は本態様により限定して解釈されるものではない。)。この工程においては、まず、食品製造時等に排出された排水18が気泡塔2に容れられる。ここで気泡塔2は図示したもののような長さのある円筒形の気泡塔を用いることが好ましい。気泡塔の大きさは特に限定されないが、豆腐の工業生産において大豆ホエーを処理するようなときには、例えば気泡塔2の高さを500〜3000mmとすることが好ましく、より好ましくは1000〜2000mmであり、気泡塔2の断面直径を50〜150mmとすることが好ましく、75〜100mmがより好ましい。気泡塔の直径が大きすぎると、気泡集合体の流動が対流してしまい、浮上分離効果が得られなくなることがある。ここで気泡塔2はその長手方向を鉛直線方向にして設置し、頂部19により密閉した状態とすることが好ましい。このように密閉状態とすることで、後述する微小気泡17を効果的に集合させ良好な気泡集合体層12を形成することができるとともに遠心分離機本体16への移送効率を高めることができる。
【0011】
気泡塔2に仕込む排水18の量は特に限定されないが、図示したような縦長の円筒形気泡塔を用いるときには、例えば、気泡塔の高さの1/5〜2/3の高さまで排水を仕込むことが好ましく、1/4〜2/3がより好ましい。そしてこの排水18は送液配管4によって循環されている。詳しくは、排水18が循環方向pに向けて配管4内を送液ポンプ3により送られ、ベンチュリ管状の微小気泡発生手段1を経て、気泡塔2内に戻される。このとき、循環する排水と、別配管27内をコンプレッサー9により空気流通方向qに向けて送られてくる空気とが、微小気泡発生手段1中で混合され、これにより気泡塔2内に良好な気泡17を発生させることができる。発生した微小気泡17は気泡塔2内の液体層11を通過して排水の表面(排水と泡沫の界面)13上に徐々に集合して気泡集合体層12を形成する(ただし、界面13は図示したもののように明確なものでなくてもよい。)。さらに上記の排水循環及び空気との混合を行い、微小気泡発生手段1より微小気泡を送りつづければ、気泡集合体層12は高さを増していき、気泡塔2の頂部19に近づいていく。気泡集合体を形成するときの温度は特に限定されず、例えば10〜80℃で行うことが好ましく、20〜70℃がより好ましい。
ここで、上記の排水循環のための配管4及び空気を送るための配管27には、必要に応じて流量計5、圧力計6、バルブ8などを設けることが好ましい。
【0012】
ここで、微小気泡発生手段1について詳しく説明する。微小気泡発生手段1は循環させた排水と空気とを混合し、気泡塔内に微小気泡を発生させることができれば特に限定されない。例えば、特開2003−230824号公報に記載された、(a)液体を導入する液体導入部と、(b)導入される液体に気体を混入する気体導入部と、(c)混入された気体から多数の微小気泡を生成させる微小気泡生成部と、(d)発生した多数の微小気泡の放出口とを有し、(e)該液体は界面活性剤を含んでおり、該界面活性剤の作用により該微小気泡生成部で生成された多数の微小気泡の合体を抑制しながら該微小気泡を放出させることができるものを用いることができる。
【0013】
図2は微小気泡発生手段1の好ましい実施態様を模式的に示す拡大断面図である。図示した微小気泡発生手段は、ノズル本体101とそこに流体連通可能に連結された末広ノズル部102とを有している。ノズル本体101は略円筒状の形状を有しており、ノズル本体の内壁で囲まれる空間も円筒状を有していることが好ましい。ノズル本体101の先端側は開口状となっており末広ノズル102と連結されている。ノズル本体101の基端側には排水循環用の配管4が連結されている。そしてノズル本体101の底部には気体を導入する気体流通配管27が挿通されている。
【0014】
図示した末広ノズル102は、流れ方向に断面積が初め小さくなった後に次第に大きくなるノズルであり、ベンチュリ管に類似した形状を有している。末広ノズル102は、ノズル本体101の先端側の開口部に流体連通可能に連結される基端部108と、気液混合流体を放出する放出口を構成する先端部109とを有している。末広ノズル102の基端部108には、流断面積を絞った絞り部が形成されており、絞り部によって形成されたスロート110を通過すると、内壁は連続状に拡径していく。末広ノズル102の内壁で囲まれた空間、好ましくは略円錐形状の空間が良好な微小気泡を発生させる。
【0015】
略円錐形状の空間111は側面視において、拡がり角θを40°未満にすることが実際的であり、20°以下とすることが好ましく、10°以下とすることがより好ましく、6°程度にすることが特に好ましい。拡がり角θが大きすぎると放出口近傍で流れの剥離が起きてしまい、流れに対する抵抗が大きくなることがある。そうなると、それだけノズルの入口の圧力を高くする必要があり、動力を余分に使うことになる。すなわち、拡がり角θを狭くすることにより、省エネルギー性に優れる点で好ましい。なお図示した実施形態の末広ノズル102では、その内部空間111の内壁を側面視(もしくは断面視)において直線状、つまり内部空間の形状を円錐状としたが、例えば、側面視(もしくは断面視)において内部壁が緩やかな湾曲面になるように形成してもよい。
スロート部110の最狭位置の孔の直径(スロート孔径)φは特に限定されない。例えば加工性を考慮し1mm以上とすることが実際的である。上限についても特に限定されず、例えば処理する排水の量により定めればよく、通常約100mm以下のものを用いることが実際的であり、大口径配管による大量処理を考慮して250mm以下の範囲のものとしてもよい。
排水の流量Vp(循環方向p)は特に限定されないが、スロート部を通過する流速を9〜20m/s程度とすることが好ましい。空気の流量Vq(空気流通方向q)は特に限定されないが、水に対する体積比率として1〜50%程度とすることが好ましい。
上述のように、拡がり角θ、スロート孔径φ、排水流量Vp、及び空気の流量Vqは処理する排水の量等により適宜定めればよく特に限定されるものではないが、これらの値を所定の範囲にすることで微小気泡17として一層良好なマイクロバブルを次々に多数発生させ送り込むことができる。マイクロバブルの大きさは特に限定されないが、その直径がマイクロメートルサイズであることが好ましく、平均直径10〜500μm程度であることが好ましい。
【0016】
排水流通配管4はポンプ3を介して気泡塔2に流体連通連結されており(図1参照)、加圧された排水がノズル101内に導入されることが好ましい。気体を導入する気体導入管27は、ノズル本体101の底壁を貫通して、ノズル本体101の長さ方向(流体の流方向)に平行して延出していることが好ましく、スロート110を通る仮想軸線113上に延設していることが好ましい。このようにすることで、気体導入管27の先端の空気出口114を、末広ノズル102の基端部108の開口に臨ませ、良好な微小気泡の発生を促すことができる。
【0017】
ノズル本体101と末広ノズル102とを別体の部材から構成し、枠体117により連結したものを図示したが、これらを一体の一つの部材から構成してもよい。そして図示した態様においては、取り付け具118により気泡塔2に微小気泡発生手段1(ノズル本体101、末広ノズル102、枠体117)を接合している。ノズル本体101の構成部材は金属製(例えばステンレス製)であることが好ましく、末広ノズル102の構成部材はプラスチック製(例えばアクリル樹脂製)であることが好ましい。ただしこれらの材質は限定されるものではない。
【0018】
本発明の排水処理方法に用いられる排水は、好ましくは食品製造時に排出される排水であり、微小気泡に付着可能な物質を含有するものである。微小気泡に付着可能な物質としては、液中浮遊物質(SS)が挙げられ、浮遊物質は有機化合物のみならず、無機化合物、それらの複合化合物の固形分を含むものである。なかでも、食品製造時に排出される蛋白質、炭水化物、脂質、食品微粉末(例えば、平均粒子径10μm以下のもの)などが挙げられる。
【0019】
例えば、豆腐製造時に排出される大豆ホエーには、蛋白質及び炭水化物の固形分が含まれており、通常、水溶性成分は水中に溶解しており、非水溶性成分は水中に浮遊し分散している。また、乳製品の製造時にも同様の排水が排出される。また米のとぎ汁は炭水化物を含有する。本発明の排水処理方法においては、上述の排水を浄化処理することができ、なかでも固形分を含む排水を処理することが好ましく、豆腐製造時に排出される大豆ホエーを処理することがより好ましい。大豆ホエーに含まれる固形分の含有量は、製造する豆腐の種類や量等により異なるが、固形分を10〜15%の範囲で含有する大豆ホエーが一般的である。
【0020】
本発明に排水処理方法により大豆ホエーを処理するとき、その排水が製造直後(排出直後)のものであっても、その後一定期間保管したものであってもよい。大豆ホエーに含まれる蛋白質等は保管により変質することもあるが、本発明の排水処理方法によれば、そのように排水の状態に変化が生じたときにも、効果的に固形分等を濃縮した相と希釈した相とに分離することができ、良好な処理を行うことができる。なお、排水にはpH調整剤等の添加剤を含有させてもよく、例えば上述した微小気泡集合体の形成をコントロールするために適宜添加剤を含有させてもよい。
【0021】
本発明の排水処理方法においては、上記のようにして気泡塔2に形成した微小気泡集合体の少なくとも一部を取出し、遠心分離を行う。この工程について図1に基づいて説明する(但し本発明はこの態様により限定して解釈されるものではない。)。気泡塔2に形成された微小気泡集合体12は、吸引ポンプ(図示せず)により、少しずつ吸引管15を通じて吸引方向rに向けて取り出される。このとき、吸引管15は遠心分離機本体16に接続され、さらにその遠心分離機本体16は捕集容器32に接続されている。このようにして泡沫遠心分離システム(吸引管15、遠心分離機本体16、捕集容器32)全体にわたり、微小気泡集合体12が流れるようにすることが好ましい。
【0022】
この泡沫遠心分離システムにおいて各部材の接続は通常の接合具によればよい。ここで遠心分離機本体16は軸棒27を有し、この軸棒27が支柱23に回動可能に設置されており、軸棒27が回転駆動機(図示せず)に接続されている。この回転駆動機(モーター等)により遠心分離機本体16が回転する。図示した泡沫遠心分離システムにおいては、支柱23及び捕集容器32が基板28に設置され固定されている。
【0023】
吸引管15により取り出された気泡集合体は遠心分離機本体16に送られる。遠心分離機本体は回転方向tもしくはuに回転して、内部の気泡集合体を遠心分離することができる。このとき、遠心分離機本体16内部の気泡集合体は遠心分離されながら、後から流入してくる気泡集合体の押し出し力により移動方向sに向けて徐々に移動し、捕集容器32の底部に捕集される。捕集容器32内では、排水18に含まれる微小気泡の表面に付着可能な物質が濃縮された遠心分離後泡沫層24と、微小気泡の表面に付着可能な物質が希釈された遠心分離後液体層26とに分離され捕集される。遠心分離時の温度は特に限定されず、例えば10〜80℃で行うことが好ましく、20〜70℃がより好ましい。
【0024】
遠心分離機本体16の大きさは特に限定されず、処理する排水の量等により適宜選定すればよいが、大豆ホエーの工業生産における処理を考慮したとき、例えば直径100〜300mmが好ましく、150〜200mmがより好ましい。長さは150〜500mmが好ましく、200〜400mmがより好ましい。遠心分離機本体の回転による遠心力は特に限定されるものではなく、処理する排水の種類や濃度等に応じて適宜調節することができるが、例えば遠心力2〜20Gとなるよう回転させることが好ましい。
【0025】
捕集容器32に捕集された遠心分離後泡沫層24と、遠心分離後液体層26とは、図示したもののように2層に分かれて分離されるため、容易にそれぞれを分離して回収することができる。
【0026】
気泡表面に付着可能な物質の濃度についていうと、遠心分離を行う前の気泡集合体12において、排水18に比べ気泡表面に付着可能な物質を濃縮していてもよいが、ここでは気泡集合体が取り出されればよく濃縮されていなくてもよい。
【0027】
そして、濃縮泡沫24における気泡表面に付着可能な物質の遠心分離後濃縮率は、3倍以下の濃縮率であることが実際的であり、その範囲で通常実用上の利点を有する。これに対し、希釈液体26における気泡表面に付着可能な物質の遠心分離後希釈率は、0.3以上の希釈率であることが実際的であり、その範囲で通常実用上の利点を有する。ここで、遠心分離後濃縮率は、「遠心分離後の泡沫24のTOCの質量濃度」を「気泡塔内に仕込んだ排水18のTOCの質量濃度」で除した値と定義する。遠心分離後希釈率は、「遠心分離後の液体26のTOCの質量濃度」を「気泡塔内に仕込んだ排水18のTOCの質量濃度」で除した値と定義する。
【0028】
このように、本発明の排水処理方法によれば、浮遊物質(SS)等を濃縮した濃縮泡沫24と、それを希釈した希釈液体26とを分離し、容易にそれぞれを回収しうる。これにより希釈液体26は例えば浄化槽のような排水浄化処理によりTOC濃度を希釈し浄化した排水として廃液できる。そして上記の濃縮後泡沫24については例えば有機肥料、堆肥や飼料等に活用してもよく、また食品製造に用いうるものである場合には製造工程に戻してリサイクルしてもよい。この場合、濃縮後の泡沫24は時間経過とともに液化するが、消泡剤を加えて液化を促進してもよい。
【実施例】
【0029】
本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0030】
図1に示した装置により以下のようにして大豆ホエー排水の処理を行った。
温度58℃、pH5.6の大豆ホエー排水18を気泡塔2(直径100mm、高さ1500mmの円筒形気泡塔)に仕込んだ。そして、ホエー排水を配管4を通して循環させ、別配管27から送り込んだ空気とベンチュリ管状の微小気泡発生手段1(拡がり角θ:6°、スロート孔径φ:3mm)で混合し、気泡塔2に供給した。このとき、ホエー排水の循環流量Vpを6.7[L/min]、空気流量Vqを0.6[L/min]とした。実験開始より、約10分後に泡沫遠心分離機本体16(直径140mm、長さ300mmの横型のものを用い、遠心力を6Gとした。)に気泡集合体が移動し始めた。
【0031】
次いで、気泡塔の気泡集合体12は、連続的に吸引管15を通って、泡沫遠心分離機本体16に移動してきた。約14分後に泡沫遠心分離機から、濃縮した泡沫24と、TOC濃度の薄い液体26とに分離され、流れ出始めた。
濃縮泡沫24における遠心分離後濃縮率は約1.7倍であり、希釈液体26の遠心分離後希釈率は約0.6倍であった。この結果から、本発明の排水処理方法により、効率的に大豆ホエー排水の浮遊物質の濃縮分離及び浄化処理ができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の排水処理方法に用いられる装置の好ましい態様を模式的に示す装置図である。
【図2】微小気泡発生手段の好ましい実施態様を模式的に示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 微小気泡発生手段
2 気泡塔
3 送液ポンプ
4 排水流通配管
5 流量計
6 圧力計
8 バルブ
9 コンプレッサー
11 液体層(排水層)
12 気泡集合体(気泡集合体層)
13 排水の表面(液層と気泡集合体層との界面)
15 吸引管
16 遠心分離機本体
17 微小気泡
18 排水(大豆ホエー)
19 気泡塔の頂部
23 支柱
24 濃縮泡沫層
26 希釈液体層
27 軸棒
28 基板
32 捕集容器
101 ノズル本体
102 末広ノズル
108 末広ノズルの基端部
109 末広ノズルの先端部
110 末広ノズルのスロート部
111 末広ノズル中央部の空間
113 仮想軸線
114 空気出口
117 枠体
118 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に微小気泡を発生させ、排水中の気泡表面に付着可能な物質を前記微小気泡の表面に付着させて捕捉し、該微小気泡の集合体を取り出して遠心分離し、前記気泡表面に付着した物質を濃縮するとともに、一方前記排水を浄化することを特徴とする食品製造工程からの排水処理方法。
【請求項2】
前記気泡表面に付着可能な物質が蛋白質であることを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記気泡表面に付着可能な物質が炭水化物であることを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記排水が豆腐製造時に排出される大豆ホエー含有水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記遠心分離により、前記気泡表面に付着可能な物質を濃縮した相を泡沫層として、前記気泡表面に付着可能な物質を希釈した相を液層として分離することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−194582(P2008−194582A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30376(P2007−30376)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国の委託研究の成果(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術研究助成事業、プロジェクトID:04A20004、「マイクロバブルによる省エネ排水システムの開発」(代表者:高木周)産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(505119081)有限会社ハルタ (2)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】