説明

食品残渣処理装置、食品残渣処理システム

【課題】食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なう有効な技術を提供する。
【解決手段】食品残渣Aの処理空間を有する処理容器110と、処理空間を区画するよう処理容器に取り付けられ、食品残渣の流通を阻止し且つ空気の流通を許容する複数の孔を有する平板状の区画部材111と、区画部材よりも容器上方に形成され、食品残渣を収容する上部空間112と、上部空間に食品残渣を導入する導入口116と、区画部材よりも容器下方に形成され、空気が供給される下部空間113と、下部空間と処理容器外領域とを連通する連通部114と、連通部に取り付けられ、空気を送気する送風機120との着脱が可能な着脱コネクター115とを備え、送風機から送気された空気は、着脱コネクター及び連通部を通じて下部空間に供給され、上部空間に収容された食品残渣の乾燥処理に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品残渣を処理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品循環資源の再生利用に関する動きが高まるなか、食品製造業、食品流通業、外食産業、ホテル、学校等の排出元において排出される食品製造副産物、余剰食品、調理加工残渣等の各種の食品残渣を、例えば飼料や肥料として有効的に利用する施策が重要課題として掲げられている。その場合、食品残渣の再利用に際しては、一般的に腐敗や変成が起こり易い食品残渣の取り扱いに留意することが必要とされる。例えば、食品残渣を排出元や使用先において一時的に保管する際や、また食品残渣を排出元から使用先へと運搬したりする際には、当該食品残渣が腐敗したり変成したりするのを防止しつつ一定期間安定して保管するための処理技術が望まれている。
【0003】
従来、この種の食品残渣を再利用するための処理技術として、例えば下記特許文献1に開示された処理方法が参照される。引用文献1に開示のこの処理方法では、食品残渣に吸水性繊維質材料を混合することによって、表面水分が減少された食品残渣組成物を得ることを特徴としているが、この処理方法では、食品残渣に混合するための吸水性繊維質材料が別途必要な点や、食品残渣に吸水性繊維質材料を混合する際に破砕や切断といった大掛かりな細分割処理が必要となる点においてコストメリットが低い。
そこで、食品残渣を再利用するための処理においては、食品残渣を簡便に処理する技術が要請される。また、食品残渣を排出元から使用先へと運搬するまでの間で生じる当該食品残渣の腐敗や変成の進行を考慮した場合には、処理装置自体における食品残渣の処理のみならず、排出元での食品残渣の引き取りから使用先までの運搬、更には処理装置で処理した後の処理物の保管までの一連の処理過程を包括的に遂行することが有効とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−198559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なうのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、各請求項に記載の発明が構成される。
【0007】
本発明にかかる食品残渣処理装置は、食品残渣を処理する処理装置とされる。この食品残渣処理装置は、処理容器、区画部材、収容領域、導入口、空気供給領域、連通部及び着脱コネクターを含む。
【0008】
処理容器は、食品残渣の処理空間を有する容器として構成される。区画部材は、処理空間を区画するよう処理容器に取り付けられ、食品残渣の流通を阻止し且つ空気の流通を許容する複数の孔を有する平板状の部材として構成される。収容領域は、処理空間のうち前記区画部材よりも容器上方に形成され、食品残渣を収容する領域として構成される。導入口は、処理容器に設けられ収容領域に食品残渣を導入するための開口部分として構成される。この導入口は、収容領域における空気のシール性を確保する機能や、収容領域への異物等が混入するのを阻止する機能を果たす蓋部材によって開閉可能な構成であるのが好ましい。空気供給領域は、処理空間のうち区画部材よりも容器下方に形成され、空気が供給される領域として構成される。連通部は、処理容器において空気供給領域と処理容器外領域とを連通する連通部分として構成される。着脱コネクターは、連通部に取り付けられ、空気を送気する送風機との着脱が可能なコネクターとして構成される。なお、ここでいう送風機は、食品残渣処理装置の一構成要素とされてもよいし、或いは食品残渣処理装置とは別個の構成要素として準備されてもよい。
【0009】
上記構成の食品残渣処理装置において、送風機から送気された空気は、着脱コネクター及び連通部を通じて空気供給領域に供給され、これにより空気供給領域から区画部材の孔を通じて収容領域へと上向きに流れる空気が、収容領域に収容された食品残渣の再利用のための乾燥処理に供される。このような構成によれば、着脱コネクターを用いて処理容器に送風機を接続した状態で、食品残渣を再利用するための乾燥処理を行ない、この乾燥処理の後には処理容器から送風機を取り外したコンパクトな状態で、当該処理容器の保管や運搬を行なうことが可能となる。これにより、食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なうことが可能となる。
【0010】
また、前記の食品残渣処理装置において、連通部は、処理容器の側壁において空気供給領域を臨む位置に開口状に設けられているのが好ましい。このような構成によれば、処理容器内の空気供給領域へと水平方向に導入された空気の流れが、空気供給領域から収容領域へと向かう上向流に変換される。これにより、区画部材の孔を通過する上向きの空気に対し均一な流れを付与することが可能となる。
【0011】
本発明にかかる食品残渣処理システムは、前記の食品残渣処理装置の処理容器に加えて、運搬車両、第1の送風機及び第2の送風機を備える。
運搬車両は、食品残渣処理装置の処理容器を載置可能な台車を有する車両として構成される。ここでいう「運搬車両」は、処理容器を運搬することが可能な車両であればよく、当該運搬車両として、台車の車輪を駆動する駆動部分を有する運搬トラックや、台車の車輪を駆動する駆動部分が省略された車両、例えば手押し式の運搬車両等を用いることができる。第1の送風機は、食品残渣が排出される排出元に準備され、処理容器の連通部に取り付けられた着脱コネクターに着脱可能な送風機として構成される。第2の送風機は、食品残渣の使用先に準備され、処理容器の連通部に取り付けられた着脱コネクターに着脱可能な送風機として構成される。
【0012】
ここでいう「排出元」として典型的には、食品製造業、食品流通業、外食産業、ホテル、学校等が挙げられ、当該排出元から排出される「食品残渣」として典型的には、食品製造副産物、余剰食品、調理加工残渣等が挙げられる。また、ここでいう「使用先」として典型的には、乾燥処理された後の食品残渣を飼料として加工する飼料製造業者や、乾燥処理された後の食品残渣を家畜用の飼料として使用する畜産農家等が挙げられる。この場合、食品残渣の使用先は、食品残渣の排出元から離間した遠隔地に設けられてもよいし、或いは食品残渣の排出元と同じ領域で当該排出元に比較的近接して設けられてもよい。
【0013】
上記食品残渣処理システムでは、第1の処理モード、運搬処理モード及び第2の処理モードが少なくとも含む。第1の処理モードは、排出元において、処理容器に対し着脱コネクターを介して第1の送風機が接続された状態で、第1の送風機から空気が送気される処理モードとされる。運搬処理モードは、排出元で第1の送風機の接続が解除された処理容器を、運搬車両によって使用先に運搬処理を有する処理モードとされる。この運搬処理モードでは、運搬処理にその前後の準備処理が適宜包含されてもよい。第2の処理モードは、使用先において、運搬車両によって運搬された処理容器に対し着脱コネクターを介して第2の送風機が接続された状態で、第2の送風機から空気が送気される処理モードとされる。
このような食品残渣処理システムによれば、処理容器と送風機とが着脱コネクターを用いて着脱自在に接続されるため、食品残渣を乾燥処理した処理容器を、送風機を取り外したコンパクトな状態で運搬でき、以って当該処理容器を食品残渣の排出元から使用先へと低コストで運搬することが可能となる。
【0014】
また、前記の食品残渣処理システムにおいて、第1の送風機及び第2の送風機は、それぞれ排出元及び使用先にて別個に準備される構成であるのが好ましい。このような構成によれば、食品残渣の使用先においては、処理容器を着脱コネクターを用いて別の送風機に接続して、再び食品残渣の乾燥処理を行なうことが可能となるところ、処理容器を排出元の送風機ごと運搬する必要がなく合理的である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なうことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態の食品残渣処理装置100を模式的に示す図である。
【図2】図1中の着脱コネクター115のカップリング構造130を示す断面図である。
【図3】図1中の食品残渣処理装置100を用いた処理フローを示す図である。
【図4】本実施の形態の食品残渣処理システム10の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、排出元から排出された食品残渣を処理する処理装置、及び当該処理装置を用いた運搬システムについて説明するものである。
【0018】
本発明にかかる「食品残渣処理装置」の一実施の形態の食品残渣処理装置100の構成に関しては、図1が参照される。図1には、本実施の形態の食品残渣処理装置100が模式的に示されている。この図1に示すように、本実施の形態の食品残渣処理装置100は、当該装置の外郭を形成する処理容器110を主体として構成される。
【0019】
処理容器110は、内部に中空状の処理空間を有する箱状容器として構成される。この処理容器110の横断面(図1中の左右方向に関する断面)の形状に関しては、円形、楕円形、多角形等、種々の形状を採り得る。ここでいう処理容器110が、本発明における「処理容器」に相当する。
【0020】
この処理容器110の処理空間には、当該処理空間を上部空間112と下部空間113とに区画する(「仕切る」ともいう)区画部材111が取り付けられている。この区画部材111は、食品残渣Aの通過を阻止する一方、空気等のガスの通過を許容する複数の孔を有する多孔板として構成されている。ここでいう区画部材111が、本発明における「区画部材」に相当する。
【0021】
本構成において、上部空間112は、処理容器110の処理空間のうち区画部材111よりも容器上方に形成され、食品残渣Aを収容する収容部分として使用される。一方、下部空間113は、処理容器110の処理空間のうち区画部材111よりも容器下方に形成され、送風機120からの空気が供給される空間として使用される。ここでいう上部空間112及び下部空間113がそれぞれ、本発明における「収容領域」及び「空気供給領域」に相当する。なお、必要に応じては、処理容器110のうち上部空間112と下部空間113とをそれぞれ別体の部材によって構成することもできる。
【0022】
更に、処理容器110は、当該処理容器110の側面に設けられる連通部114と、連通部114に取り付けられた着脱コネクター115と、上部空間112に連通する導入口116と、導入口116を塞ぐ蓋部材117と、当該処理容器110の底面に取り付けられた支持部材118と、当該処理容器110の内部底面として形成された受け面119とを備える構成とされる。
【0023】
連通部114は、処理容器110の側壁において下部空間113を臨む位置に開口状に設けられた開口部分として構成される。この連通部114のみを通じて処理容器110の内部空間と外部空間、すなわち下部空間113と処理容器110外領域とが連通されることとなる。ここでいう連通部114が、本発明における「連通部」に相当する。
【0024】
着脱コネクター115は、処理容器110の連通部114に取り付けられ、処理容器110の下部空間113と送風機120側とを確実に接続する接続手段としての機能を果たし、また当該接続と当該接続の解除を容易に行なうことが可能なカップリング構造を有する着脱式のコネクターとして構成されている。すなわち、着脱コネクター115は、処理容器110外において処理容器110の処理空間から外れた領域、特には区画部材111よりも下方の下部空間113から外れた領域に設けられている。なおこの着脱コネクター115は、処理容器110の下部空間113との外部空間とが常時に連通するように構成されてよいし、処理容器110の下部空間113との外部空間とが常時に連通する開状態と、当該連通が阻止された閉状態とに切り換え可能な開閉機能を有する構成であってもよい。ここでいう着脱コネクター115が、本発明における「着脱コネクター」に相当する。
【0025】
ここで上記着脱コネクター115の具体的なカップリング構造130については図2が参照される。図2に示すように、カップリング構造130は、処理容器110側に取り付けられたカプラー131(第1部材)と、送風機120側の接続配管121に取り付けられたアダプター132(第2部材)と、カプラー131側に設けられ、カプラー131とアダプター132との間に介在する係止部材133(第3部材)を用いて構成される。アダプター132の外表面には、係止部材133が係合可能な溝部132aが形成されている。本構成において、カプラー131内にアダプター132が挿入される際、係止部材133を図2中の矢印方向に変位させて係止部材133をアダプター132の溝部132aに係合させることによって、カプラー131とアダプター132とが互いに抜け止めがなされたロック状態とされる。カプラー131からアダプター132を抜き取る場合も同様に、係止部材133を図2中の矢印方向に変位させて係止部材133のアダプター132の溝部132aとの係合を解除させる。
【0026】
なお、係止部材133の変位に関しては、係止部材133全体が物理的に図2中の矢印方向に動作する構成であってもよいし、或いは係止部材133を弾性部材とし、アダプター132の挿入動作に伴う当該アダプター132の押圧力によって係止部材133図2中の矢印方向に弾性変形する構成であってもよい。また、アダプター132側に係止部材133に相当する部材を設け、この部材に係合可能な溝部を係止部材133側に設ける構成を採用することもできる。
また、上記カップリング構造130にかえて、処理容器110側に取り付けられた第1フランジと、送風機120側の接続配管121に取り付けられた第2フランジを互いに突き合わせて、ボルトナットによって接続するカップリング構造を採用することもできる。
【0027】
図1に戻って、導入口116は、処理容器110に設けられ、食品残渣Aの処理に際して当該食品残渣Aを処理容器110の上部空間112へと導入する開口部分として構成される。また、この導入口116は、後述するように食品残渣Aの処理において生じる、湿気を含む空気を排気する排気口としての機能を果たす。ここでいう導入口116が、本発明における「導入口」に相当する。処理容器110のうちこの導入口116側を、処理容器110の容器上方として規定することができる。この導入口116は、蓋部材117によって開閉可能な構成であるのが好ましい。蓋部材117は、上部空間112における空気のシール性を確保する機能や、導入口116を通じて処理容器110の上部空間112に異物等が混入するのを阻止する機能を果たす。必要に応じてはこの蓋部材117を省略することもできる。
【0028】
支持部材118は、処理容器110の底面を支持する機能を果たす。また、この支持部材118は、別の処理容器110の上面に係合可能に構成されている。本構成によれば、上下に積み重ねされた処理容器110同士が支持部材118を介して互いに位置決めされることとなり、複数の処理容器110を上下に積み重ねて保管ないし運搬するのに有効とされた積み重ね構造が実現される。なお、必要に応じては、この支持部材118には、処理容器110の水平度を調節可能とする調節機能や、処理容器110の自走を可能とするキャスター等を搭載することもできる。
【0029】
受け面119は、処理容器110の下部空間113において区画部材111と平行状に延在する延在面として構成されおり、特に連通部114や着脱コネクター115内の空気流通部115aよりも低所に配置されている。すなわち、本実施の形態では、連通部114は、処理容器110の側壁のうち処理容器110の受け面119(内部底面)よりも容器上方に配設され、受け面119は、連通部114との間で、上部空間112から区画部材111の孔を通じて下部領域113へと落入した食品残渣Aの微細物を貯留可能な貯留部を形成する。従って、食品残渣Aが区画部材111の孔よりも微細化してこの孔を通じて下部空間113に落入した場合でも、微細化した食品残渣Aを受け面119によって確実に受け止めることが可能となる。しかも、本実施の形態では、処理容器110の下部空間113と処理容器110外領域とが連通部114及び着脱コネクター115のみを通じて連通された閉鎖構造とされている上に、受け面119を連通部114や着脱コネクター115の空気流通部115aよりも低所に配置することによって、受け面119に一旦堆積した食品残渣Aの微細物が、送風機接続状態において連通部114及び着脱コネクター115を通じて送風機120側に漏洩したり、送風機接続解除状態、例えば運搬時において連通部114及び着脱コネクター115を通じて外部に飛散するのをそれぞれ阻止するのに有効とされる。
【0030】
送風機120は、空気を圧縮し外気よりも高圧化して吐出する機能を有する。この送風機120は、接続配管121に接続されており、更にこの接続配管121が処理容器110の着脱コネクター115に接続可能とされる。本構成において接続配管121は、着脱コネクター115との着脱作業を容易とする可撓性の部材によって構成されるのが好ましい。ここでいう送風機120が、本発明における「送風機」に相当する。なお、この送風機120は、処理容器110とともに食品残渣処理装置100の一構成要素とされてもよいし、或いは食品残渣処理装置100とは別の構成要素として準備されてもよい。
【0031】
次に、上記構成の食品残渣処理装置100の作用効果について、図3を参照しつつ説明する。ここで図3には、図1中の食品残渣処理装置100を用いた処理フローが示されている。この図3に示すように、本実施の形態の食品残渣処理は、少なくともステップS10〜S30を含む。
【0032】
(ステップS10)
ステップS10は、食品残渣処理の本質的な処理であるステップS20のための前処理ステップ(準備ステップ)とされる。このステップS10では、処理容器110及び送風機120を含む食品残渣処理装置100を準備するとともに、処理容器110の導入口116から所定の食品残渣Aを上部空間112へと導入する。食品残渣Aの導入後は、必要に応じて導入口116を蓋部材117によって容器上方から塞ぐ。一方で、処理容器110の着脱コネクター115に送風機120の接続配管121を接続する。
【0033】
(ステップS20)
ステップS20では、ステップS10に引き続いて送風機120を起動する。これにより送風機120から送気された空気は、接続配管121、着脱コネクター115及び連通部114を経由して下部空間113の側方から連続的に供給される。当該空気によって下部空間113の圧力が高められると、当該空気が今度は区画部材111に形成された孔を通じて上部空間112へと流れる。このとき、着脱コネクター115を処理容器110の側面に設ける一方、下部空間113の上方に区画部材111を配置した構成によって、下部空間113へと水平方向に導入された空気の流れが、下部空間113から上部空間112へと向かう上向流に変換される。これにより、区画部材111の孔を通過する上向きの空気に対し均一な流れを付与する整流機能が発揮される。
【0034】
上部空間112では、当該上部空間112を上向きに流れる空気が食品残渣Aに接触することによって、上部空間112に収容された食品残渣Aの乾燥処理に供される。この処理を、食品残渣Aに適した所定時間継続することによって、食品残渣Aの含有される水分が速やかに除去された所望の乾燥レベルが実現され、当該食品残渣Aは腐敗や変成が起こりにくい状態の処理物B(すなわち、乾燥処理がなされた後の食品残渣A)が形成されることとなる。なお、必要に応じては、送風機120を処理容器110の着脱コネクター115に接続する構成にかえて、不活性ガスや、大気よりも露点の低い空気やガス等を供給可能なボンベないし供給設備を処理容器110の着脱コネクター115に接続する構成を採用することもできる。
【0035】
(ステップS30)
ステップS30は、食品残渣処理の本質的な処理であるステップS20のための後処理ステップとされる。このステップS30では、ステップS20で乾燥処理された後の処理物Bの乾燥状態を維持するべく、送風機120で高圧化された空気を、ステップS20と同風量で或いはステップS20よりも風量を下げた状態で、連続的ないし断続的に処理容器110の下部空間113に供給する。なお、食品残渣Aの腐敗や変成がそれ以上進行しないような場合には、このステップS30を省略することもできる。
【0036】
次に、上記構成の食品残渣処理装置100を用いた食品残渣処理システムについて図4を参照しつつ説明する。ここで図4には、本実施の形態の食品残渣処理システム10の概要が示されている。この図4に示すように、食品残渣処理システム10は、前述の食品残渣処理装置100の処理容器110、運搬車両400、第1の送風機220及び第2の送風機320とを含む構成とされる。
【0037】
運搬車両400は、食品残渣処理装置100の処理容器110を載置可能な台車410を有する運搬車両として構成される。特に本実施の形態では、この運搬車両400が、台車410の車輪を駆動する駆動部分を有する運搬トラックとして構成されている。ここでいう運搬車両400が、本発明における「運搬車両」に相当する。なお、この運搬車両400は、台車410の車輪を駆動する駆動部分が省略された車両、例えば手押し式の運搬車両として構成されてもよい。
【0038】
第1の送風機220は、食品残渣が排出される排出元200に準備され、処理容器110の着脱コネクター115に着脱可能な送風機として構成される。一方、第2の送風機320は、食品残渣の使用先300に準備され、処理容器110の着脱コネクター115に着脱可能な送風機として構成される。ここでいう第1の送風機220及び第2の送風機320がそれぞれ、本発明における「第1の送風機」及び「第2の送風機」に相当する。
【0039】
なお、第1の送風機220及び第2の送風機320は、少なくとも一方の送風機が前述の送風機120と同様の風量を発生する送風機として構成されてもよいし、或いは両方の送風機が前述の送風機120とは異なる風量を発生する送風機として構成されてもよい。すなわち本実施の形態では、第1の送風機220及び第2の送風機320の風量が送風機120の風量と必ずしも合致する必要はなく、第1の送風機220の接続配管221が処理容器110の着脱コネクター115に着脱可能とされた構成であり、且つ第2の送風機320の接続配管321が処理容器110の着脱コネクター115に着脱可能とされる構成であれば足りる。
【0040】
上記食品残渣処理システム10による処理には、以下に示すような第1の処理モード、運搬処理モード、第2の処理モードが包含される。この食品残渣処理システム10では、これらの処理モードに加えて更なる処理モードを遂行することも可能である。
【0041】
(第1の処理モード)
第1の処理モードは、食品残渣Aの排出元200において、処理容器110に対し着脱コネクター115を介して第1の送風機220の接続配管221が接続された状態で、第1の送風機220から空気が送気される処理モードとされる。この第1の処理モードは、前述のステップS20と同様の処理とされるところ、排出元200において、食品残渣Aの乾燥処理によって前記の処理物Bが形成されることとなる。ここでいう第1の処理モードが、本発明における「第1の処理モード」に相当する。なお、この第1の処理モードにおいて、前述のステップS20と同様の処理に引き続いて、前述のステップS30と同様の処理が遂行されてもよい。
【0042】
ここでいう「排出元200」として典型的には、食品製造業、食品流通業、外食産業、ホテル、学校等が挙げられ、またこの排出元200から排出される「食品残渣A」として典型的には、食品製造副産物、余剰食品、調理加工残渣等が挙げられる。ここでいう排出元200が、本発明における「排出元」に相当する。
【0043】
(運搬処理モード)
運搬処理モードは、排出元200で第1の送風機220の接続が解除された処理容器110を、運搬車両400によって使用先300へと運搬するモードとされる。この運搬処理モードでは、まず処理容器110の着脱コネクター115と第1の送風機220の接続配管221との接続を解除する。その後、処理容器110を運搬車両400の台車410に載置した状態で、運搬車両400を使用先300へと移動させる。なお、開閉機能を有する着脱コネクター115を採用する場合には、外気中の湿気が処理容器110内に侵入するのを防止するべく、当該着脱コネクター115を閉状態に設定するのが好ましい。そして、処理容器110を運搬車両400の台車410から積み降ろして、使用先300の所望の設置場所に設置し、更に処理容器110の着脱コネクター115と第2の送風機320の接続配管321とを接続する。ここでいう運搬処理モードが、本発明における「運搬処理モード」に相当する。
【0044】
(第2の処理モード)
第2の処理モードは、使用先300において、処理容器110に対し着脱コネクター115を介して第2の送風機320の接続配管321が接続された状態で、第2の送風機320から空気が送気される処理モードとされる。この第2の処理モードは、前述のステップS30と同様の処理とされるところ、使用先300において、前記の処理物Bの乾燥状態が維持されることとなる。ここでいう第2の処理モードが、本発明における「第2の処理モード」に相当する。
【0045】
ここでいう「使用先300」として典型的には、処理物Bを飼料として加工する飼料製造業者や、処理物Bを家畜用の飼料として使用する畜産農家等が挙げられる。この使用先300は、必要に応じて1つの排出元200に対して1または複数を割り当てることが可能である。ここでいう使用先300が、本発明における「使用先」に相当する。なお、この使用先300は、食品残渣の排出元200から離間した遠隔地に設けられてもよいし、或いは食品残渣の排出元200と同じ領域で当該排出元200に比較的近接して設けられてもよい。
【0046】
上述のように、本実施の形態によれば、着脱コネクター115を用いて処理容器110に送風機を接続した状態で、食品残渣を再利用するための乾燥処理を行ない、この乾燥処理の後には処理容器110から送風機を取り外したコンパクトな状態で、当該処理容器110の保管や運搬を行なうことが可能となる。これにより、食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なうことが可能となる。
また本実施の形態によれば、食品残渣の使用先においては、処理容器110を着脱コネクター115を用いて別の送風機に接続して、再び食品残渣の乾燥処理を行なうことが可能となるところ、処理容器110を排出元の送風機ごと運搬する必要がなく合理的である。
【0047】
特に本実施の形態の着脱コネクター115を用いることによって、処理容器110の下部空間113と送風機120側とを確実且つ容易に接続することが可能となる。また、本実施の形態では、この着脱コネクター115をそもそも処理容器110外に設けており、特に区画部材111よりも下方の下部空間113から外れた領域に着脱コネクター115が配設されているため、下部空間113と送風機120側との接続部分に食品残渣が付着することがなく、よって空気漏れの原因となることがない。
【0048】
また、本実施の形態によれば、前述の処理容器110の積み重ね構造によって、複数の処理容器110を上下に積み重ねて保管する際、1または複数の処理容器110の着脱コネクター115を通じて空気を送気することが可能となる。これにより、複数の処理容器110を上下に積み重ねて保管した状態での食品残渣の乾燥処理が可能とされる。特には、最下段の処理容器110の着脱コネクター115のみを通じて空気を送気するのが好ましい。これにより、一度に複数の処理容器110に保管された食品残渣の乾燥処理を行なうことができ合理的である。
【0049】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0050】
上記実施の形態では、処理容器110の側面に、下部空間113と処理容器110外領域とを連通する連通部114を設ける場合について記載したが、本発明では、連通部114に相当する部位を必要に応じて処理容器110の側面以外の部位、例えば処理容器110の底面に設けることもできる。
【0051】
また上記実施の形態では、第1の送風機220及び第2の送風機320は、それぞれ排出元200及び使用先300にて別個に準備される場合について記載したが、本発明では1つの送風機を排出元200と使用先300とで兼務することも可能である。
【0052】
また本発明では、上記の実施形態の記載に鑑みた場合、以下のような食品残渣処理方法が提供され得る。
【0053】
すなわち、本発明では、
「前記食品残渣の処理空間を有する処理容器と、前記処理容器に取り付けられ、前記食品残渣の流通を阻止し且つ空気の流通を許容する複数の孔を有する区画部材と、前記処理空間のうち前記区画部材よりも容器上方に形成され、前記食品残渣を収容する収容領域と、前記処理容器に設けられ前記収容領域に前記食品残渣を導入する導入口と、前記処理空間のうち前記区画部材よりも容器下方に形成され、空気が供給される空気供給領域と、前記処理容器において前記空気供給領域と処理容器外領域とを連通する連通部と、前記連通部に取り付けられ、空気を送気する送風機との着脱が可能な着脱コネクターと、を備える食品残渣処理装置を準備する第1のステップと、
前記導入口から前記収容領域に前記食品残渣を導入する第2のステップと、
前記送風機を準備して、当該送風機を前記処理容器の前記連通部に取り付けられた前記着脱コネクターに装着する第3のステップと、
前記送風機で空気を送気し、当該空気を前記着脱コネクター及び前記連通部を通じて前記空気供給領域に供給し、これにより前記空気供給領域から前記区画部材の孔を通じて前記収容領域へと上向きに流れる空気によって、前記収容領域に収容された前記食品残渣の乾燥処理を行なう第4のステップと、を含むことを特徴とする食品残渣処理方法」という方法を採り得る。
ここでいう第1〜第3のステップは、上記実施の形態のステップS10によって遂行され、またここでいう第4のステップは、上記実施の形態のステップS20及びS30によって遂行される。
【0054】
また、本発明では、
「前述の食品残渣処理方法であって、
前記第3のステップでは、前記送風機として、前記食品残渣が排出される排出元において前記着脱コネクターに着脱可能な第1の送風機と、前記食品残渣の使用先において前記処理容器の前記着脱コネクターに着脱可能な第2の送風機とを準備するとともに、前記処理容器を前記排出元に設置した場合には、当該処理容器の前記着脱コネクターに前記第1の送風機を装着する一方、前記処理容器を前記使用先に設置した場合には、当該処理容器の前記着脱コネクターに前記2の送風機を装着し、
前記第4のステップでは、前記処理容器を前記排出元に設置した場合には、前記第1の送風機で空気を送気する一方、前記処理容器を前記使用先に設置した場合には、前記第2の送風機で空気を送気することを特徴とする食品残渣処理方法」という方法を採り得る。
【0055】
上記の各食品残渣処理方法によれば、前述の実施形態と同様に、食品残渣を再利用するための処理を、当該食品残渣の運搬や保管を含めて低コストで包括的に行なうことが可能となるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
10…食品残渣処理システム
100…食品残渣処理装置
110…処理容器
111…区画部材
112…上部空間
113…下部空間
114…連通部
115…着脱コネクター
115a…空気流通部
116…導入口
117…蓋部材
118…支持部材
119…受け面
120…送風機
121…接続配管
130…カップリング構造
131…カプラー
132…アダプター
132…溝部
133…係止部材
200…排出元
220…第1の送風機
221…接続配管
300…使用先
320…第2の送風機
321…接続配管
400…運搬車両
410…台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品残渣を処理する食品残渣処理装置であって、
前記食品残渣の処理空間を有する処理容器と、
前記処理空間を区画するよう前記処理容器に取り付けられ、前記食品残渣の流通を阻止し且つ空気の流通を許容する複数の孔を有する平板状の区画部材と、
前記処理空間のうち前記区画部材よりも容器上方に形成され、前記食品残渣を収容する収容領域と、
前記処理容器に設けられ前記収容領域に前記食品残渣を導入する導入口と、
前記処理空間のうち前記区画部材よりも容器下方に形成され、空気が供給される空気供給領域と、
前記処理容器において前記空気供給領域と処理容器外領域とを連通する連通部と、
前記連通部に取り付けられ、空気を送気する送風機との着脱が可能な着脱コネクターと、
を備える構成であり、
前記送風機から送気された空気は、前記着脱コネクター及び前記連通部を通じて前記空気供給領域に供給され、これにより前記空気供給領域から前記区画部材の孔を通じて前記収容領域へと上向きに流れる空気が、前記収容領域に収容された前記食品残渣の乾燥処理に供されることを特徴とする食品残渣処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食品残渣処理装置であって、
前記連通部は、前記処理容器の側壁において前記空気供給領域を臨む位置に開口状に設けられていることを特徴とする食品残渣処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の食品残渣処理装置の前記処理容器と、
前記処理容器を載置可能な台車を有する運搬車両と
前記食品残渣が排出される排出元に準備され、前記処理容器の前記連通部に取り付けられた前記着脱コネクターに着脱可能な第1の送風機と、
前記食品残渣の使用先に準備され、前記処理容器の前記連通部に取り付けられた前記着脱コネクターに着脱可能な第2の送風機と、
を備え、
前記排出元において、前記処理容器に対し前記着脱コネクターを介して前記第1の送風機が接続された状態で、前記第1の送風機から空気が送気される第1の処理モードと、
前記排出元で前記第1の送風機の接続が解除された前記処理容器を、前記運搬車両によって前記使用先に運搬する処理を有する運搬処理モードと、
前記使用先において、前記運搬車両によって運搬された前記処理容器に対し前記着脱コネクターを介して前記第2の送風機が接続された状態で、前記第2の送風機から空気が送気される第2の処理モードと、
を含むことを特徴とする食品残渣処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の食品残渣処理システムであって、
前記第1の送風機及び前記第2の送風機は、それぞれ前記排出元及び前記使用先にて別個に準備されることを特徴とする食品残渣処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−139981(P2011−139981A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1249(P2010−1249)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(510006967)有限会社環境テクシス (1)
【Fターム(参考)】