食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法
【課題】
本発明は食肉類や魚卵類の加工時に発色剤として用いられる亜硝酸塩、硝酸塩等の食品添加物を使用しないで、発色効果を得られる天然発色物を提供する。
【解決手段】
食肉類の加工の際、野菜類に含有する、硝酸塩類や柑橘類に含有するアスコルビン酸さらに蜂蜜に含有する還元糖を利用し発色させる。
本発明は食肉類や魚卵類の加工時に発色剤として用いられる亜硝酸塩、硝酸塩等の食品添加物を使用しないで、発色効果を得られる天然発色物を提供する。
【解決手段】
食肉類の加工の際、野菜類に含有する、硝酸塩類や柑橘類に含有するアスコルビン酸さらに蜂蜜に含有する還元糖を利用し発色させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜肉加工品は、JAS法に基づくハム類、プレスハム、混合プレスハム、ソーセージ類、混合ソーセージ類、ベーコン類がある(非特許文献1参照)。これらは塩漬時や、燻煙の時畜肉の赤色が退色してしまう。これによって、畜肉加工品の商品価値の低下や見た目も悪くなる。したがって従来の製法では、塩漬時に指定食品添加物である亜硝酸ナトリウムを添加し赤色に発色させている。しかしこの亜硝酸ナトリウムは肉類の2級アミンと反応しニトロソアミンという,強力な発ガン物質を生成したり、モトヘモグロビン血症を起こすといわれる。そのため使用量も残留亜硝酸根として70ppm以下と制限されている。
【0003】
そのため、亜硝酸ナトリウム等の発色剤を用いることなく、食肉に亜硝酸ナトリウム等の発色剤を用いたような赤色を与える代替物、代替方法が要望されてきた。
【0004】
これらを、解決する方法として亜硝酸ナトリウムによる発色手段に代えて、炭酸カルシウムを主成分とした、畜肉加工用発色剤が開示されている(特許文献1等参照)。
【0005】
酵母エキスの中に含まれる発色成分を効率的に濃縮して、亜硝酸塩等の発色剤を用いることなく、肉類を発色させる発色剤が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−93015号公報
【特許文献2】特開平11−123065号公報
【非特許文献1】株式会社廣川書店「食品添加物公定書解説書」石館守三監修 B−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、炭酸カルシウムを主成分とした発色剤では、炭酸カルシウムの粒子を数μm程度までこまかくする必要があり大掛かりな設備が必要であり、酵母エキスの中に含まれる成分を用いた発色剤は、市場で入手できない等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、指定食品添加物である亜硝酸ナトリウムを使用することなく、野菜に含まれる硝酸イオンを基材とし食肉類を発色させる発色剤、製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸を含む果物、硝酸イオンを還元する還元糖を含む蜂蜜を活用することの有用性を見出し以下の発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させる発色剤。
【0010】
(1)に係る発明によれば、硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させるので、一切食品添加物を使用しないで食肉を加工することができる。
【0011】
(2) 前記食材1に含まれる硝酸イオンを還元する食材2をさらに含む(1)に記載の発色剤。
【0012】
(2)に係る発明によれば、硝酸イオンを還元する食材2を含むので、食肉を発色させる塩漬工程において、硝酸イオンを還元するので完成した食肉加工品に硝酸塩等が残留するおそれがすくない。
【0013】
(3) 前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上である(2)に記載の発色剤。
【0014】
(3)に係る発明によれば、前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上であるので、食肉を発色させる塩漬工程において、硝酸イオンを確実に還元することができるので、完成した食肉加工品に残留基準値の70ppm以上硝酸塩等が残留するおそれがない。
【0015】
(4) 前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(1)から(3)のいずれかに記載の発色剤。
【0016】
(5) 前記食材2が、アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(2)又は(3)のいずれかに記載の発色剤。
【0017】
(6) 前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【0018】
(4)から(6)の発明は、上記の発明を具体的に限定した内容である。具体的に記載した食材1、食材2を用いることにより発明内容を具体的に実施することができる。
【0019】
(7) 食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であって、硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程と、硝酸イオンを還元する食材2を混合して塩漬液を製造する工程と、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程と、を有する食肉の製造方法。
【0020】
(7)に係る発明は、食肉加工品の製造方法に関する発明であり、上記の(1)から(3)の発明に係る発色剤を用いて食肉加工品を製造するので、一切食品添加物を使用しないで食肉を加工することができる。また、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けするので、好気性菌の繁殖を抑制することができる。
【0021】
(8) 前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいづれか1つ又は組み合わせた食材である(7)に記載の食肉加工品の製造方法。
【0022】
(9) 前記食材2が、L―アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(7)又は(8)に記載の食肉加工品の製造法。
【0023】
(10) 前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である(7)又は(8)に記載の食肉加工品の製造方法。
【0024】
(8)から(10)の発明は、上記(7)の発明を具体的に限定した内容である。具体的に記載した食材1、食材2を用いることにより(7)の発明内容を具体的に実施することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、亜硝酸塩等の指定添加物を使用することなく、野菜や果物・蜂蜜等のすべて天然物を使用し発色効果が得られる。したがって生産者にとっては、食品添加物の表示の必要が無く、さらに無添加ハムの表示ができることによって、商品価値の増大が期待できる。又近年零細なハム公房などで生産される、無添加ハムの製造技術に寄与できる。又消費者にとっても安全な食品が供給されることになり有益な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0027】
図1は本発明に係る食品添加物を使用しない食肉加工品の製造工程図であり、図2は、各野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の量を示す図であり、図3は、各野菜に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図であり図4は、各果実に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図であり、図5は、硝酸イオンとL−アスコルビン酸との反応実験を示す図である。
【0028】
図1の(b)に示すように、ハムやソーセージの製造工程は、一例を挙げれば、ロース肉の成形をおこない(S10)、血絞りをおこない(S20)、常圧(大気圧)冷蔵で塩漬けをして(S30)、塩抜き工程(S40)を経て巻き締め(S50)を行い、乾燥後(S60)、燻煙して(S70)製造していた。さらに燻煙後殺菌し(S80)、冷却して(S90)、製品として出荷するために包装していた(S100)。
【0029】
これに対して、本発明では、図1の(a)に示すように食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であるので、硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程(S110)と、 硝酸イオンを還元する食材2を細切りする工程と(S120)と、これらを混合(S130)して塩漬液を製造する工程(S140)と、があり、従来の常圧(大気圧)冷蔵で行われ塩付け(S30)に代えて、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程(S150)と、それ以外は図(b)の工程により食肉加工品を製造する。
【0030】
畜肉加工品の発色理論によるとハムやソーセージの原料肉となる豚肉にはミオグロビンと呼ばれる色素タンパク質が含まれている。豚肉は加熱すると褐色に変化してしまうが、発色剤の亜硝酸塩を使用すると、亜硝酸塩から生じた一酸化窒素がミオグロビンと結合して、ニトロソミオグロビンといわれる加熱しても安定な赤色の色素を形成して特有のピンク色となる。
【0031】
このとき亜硝酸塩を還元するために、既存添加物のL−アスコルビン酸や還元性細菌が利用されている。しかし、上記で説明したような問題があった。
【0032】
したがって本発明では、指定添加物(亜硝酸ナトリウム・L−アスコルビン酸)を使用しないで、塩漬液(ピックル液)を調整し発色させ、かつ塩漬時に好気性微生物の繁殖を抑制することが特徴である。
【0033】
硝酸イオンを含む野菜(大根、カブ、白菜、水菜他)などの食材1により食品添加物を使用しない食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0034】
また、指定添加物(L−アスコルビン酸)を使用せず、食材1に含まれる、硝酸イオン(NO3―)を、柑橘類や野菜などの食材2によって無害な酸化窒素(NO)にまで還元し、食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0035】
さらに、指定添加物(L−アスコルビン酸)を使用せず、食材1に含まれる、硝酸イオン(NO3―)を蜂蜜中の還元糖(ブドウ糖、果糖)などの食材2によって無害な酸化窒素(NO)にまで還元し、食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0036】
図2に、硝酸イオンを含む野菜(大根、カブ、白菜、水菜他)などの食材1に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の含有量を示す。図2のデータは、五訂日本食品成分表(科学技術庁調査会編)を引用したものである。図2によると大根の皮付き生には硝酸イオンが1000mg/kg含まれるという。この硝酸イオンを利用し、肉を発色させることができる。
【0037】
肉の色素が赤色を呈するのは、肉中に鉄を含む赤いヘム色素(heme pigment)1分子と、タンパク質クロビンが結合した筋肉色素(ミオグロビン:Mb)およびヘム色素4分子とクロビンの結合した血色素(ヘモグロビン:Hb)が存在するためである。
【0038】
ヘム色素中の鉄は還元状態で2価(Fe2+、hemochrome)で、紫がかった暗赤色を呈しているが、永く空気に触れたり、加熱されたりすると、Fe2+が3価の鉄(Fe3+、hemichrome)となり、ヘムは酸化されてヘマチンに変わり、かっ色のメトミオグロビン(met Mb)およびメトヘモグロビン(met Hb)を生じるようになる。
【0039】
これが酸化であり、逆の変化(Fe3+→Fe2+)が還元である。このヘム色素の酸化還元反応が肉製品の発色にきわめて重要で、Fe3+は還元剤の存在で容易にFe2+の状態にもどりうる。
【0040】
このような色素に亜硝酸が作用する発色経路は、Mbについて一般につぎのように考えられている。まず、亜硝酸塩は酸化剤であるからMbをかっ色のmet Mbに酸化し、酸化されたmet Mbは他から添加されたL−アスコルビン酸ナトリウムのような還元剤、あるいは生肉自身の還元作用により還元されて、再びもとのMbにもどる。また他方において亜硝酸塩は、リン酸または加工中に生じた乳酸などの作用で遊離の亜硝酸となり、これはさらに還元されて、つぎのように酸化窒素(NO)生ずる。
【0041】
【化1】
【化2】
【0042】
ここに生じたNO(酸化窒素)はMbと容易に結合(ニトロソ化)してニトロソミオグロビン(MbNO)となり、塩漬け(curing)により美しい赤色として発色するから、cured meat colorと呼ばれる。
【0043】
仮に大根1kg中に、NaN03(分子量85)が1000mg/kg含まれるとすると(図2)、亜硝酸塩に全量が還元されるとすると、NaN02(分子量69)は、812mg/kgに相当する。つまり大根1kgには812mg亜硝酸塩が含まれることになる。さらに発色因子であるNO(酸化窒素)は353mg/kgに相当する。肉を発色させるには食品添加物公定書によると亜硝酸ナトリウム0.025%が適当であるといわれる(非特許文献1を参照)。すなわち肉1kgに0.25g添加すれば発色する。したがって大根で肉1kgを発色させるには、0.25/0.82×1000=308g加えればよいことがわかる。しかし実際に大根中含まれる硝酸イオンは、我々の実験によると、平均で3000mg/kg含まれていた。したがって実際には肉1kgに対して大根100g程度で発色した。
【0044】
また、図3、図4のように、野菜や果物類などの食材2には、L−アスコルビン酸が含有する。このL−アスコルビン酸を利用し食材1の野菜(大根)中の硝酸イオンを還元し、畜肉の発色因子であるNO(酸化窒素)が生成されることが期待できる。なお図3、図4のデータは科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」74ページ〜144ページより引用した。
【0045】
図5のように、1000ppm硝酸イオン標準溶液に、1000mgのL−アスコルビン酸を加え、硝酸イオンがL−アスコルビン酸により還元される実験をした。図5に示すように、10分で61ppm、3時間で13ppmにまで、減少した。したがって硝酸イオンは、酸化窒素まで還元されたことがわかる。
【0046】
さらに、野菜(大根)中の硝酸イオンを還元するために、食材2に蜂蜜中のブドウ糖、果糖を用い、これらにより、畜肉の発色因子であるNO(酸化窒素)に還元されることも期待することができる。
【0047】
図6に示すように、真空包装用袋に、食肉、塩漬液(ピックル液)を入れ真空度O.OO2Mpaかつ4℃で、真空塩漬することにより、大気中に曝さないことにより好気性菌の繁殖を抑制し、酸化窒素の大気中への飛散を防止し発色させることができる。
【実施例1】
【0048】
以下実施例を具体的に示す。実施例1は、本発明を豚もも・挽き肉について実施した例である。図7は、実施例の試料の配合を示す図である。図7のように、試料1は、豚もも・挽き肉に大根+食塩+蜂蜜+レモンを加えたもの。試料2は比較のために 豚もも・挽き肉に食塩だけを加えたものである。図8は、本発明の製造方法により製造した食肉加工品の発色を反射式色差計により測定したデータである。
【0049】
試料1と試料2について、上記で説明した工程に基づいて食肉肉加工品を製造した。図8において、色差計のL値は明るさ、a値は赤色、b値は黄色、を示す数値であり、それぞれ数値が大きいほど、明るさ、赤色、黄色、が強いことになる。
【0050】
その結果は、下記「図8」のように試料1はa値は17.44であり、試料2のa値は13.04であり、試料1のa値の数値が大きいことがわかる。つまり試料が赤く発色したことがわかる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、本発明をロースハムの製造に適用した一例である。図9は、本発明をロースハムに適用した場合の試料4の配合例であり、図10は、塩漬液の調製図であり、図11は、比較のために無添加のロースハムの試料3と、従来の製造法による亜硝酸ナトリウムを用いたロースハムの配合例である。図12は、各ロースハムの色差計データである。
【0052】
まず本発明に関する、塩漬液の製造について説明する。図10のように、食材1の大根の根を洗浄後皮付きのまま、成型肉に対し10%(480g)を計量する(S200)。これをフードカッターにて、硝酸塩の抽出のため粉砕する(S210)。
【0053】
次に食材2の人参の根(240g)、にんにく(48g)、パセリ(48g)、しょうが(48g)を約1mmに細切する(S220)。
【0054】
水960gに粉砕した食材1の大根、細切した食材2の、人参の根、ニンニク、パセリ、月桂樹、蜂蜜を加えボツリヌス菌などの殺菌・硝酸塩の還元のために5分間沸騰させる(S230)。
【0055】
食材2の人参の根、パセリは含有するL−アスコルビン酸によって食材1の還元を期待するが、加熱や人参に含まれる、アスコルビナーゼ(アスコルビン酸酸化酵素)により、L−アスコルビン酸は酸化されデヒドロアスコルビン酸になり、硝酸イオンの還元に多くを期待できない。そこで、下記のように食材2の蜂蜜を用い、含有する還元糖(ブドウ糖、果糖)により食材1の還元に寄与させた。
【0056】
なお、加工されたロースハムをおいしくするために、食材2の人参は、甘みや旨みに寄与し、食材2のにんにく、パセリ、月桂樹は、肉の臭みや、大根臭の抑制に寄与する。さらに、食材2の蜂蜜は、含有する還元糖(ブドウ糖、果糖)により食材1の還元に寄与する。
【0057】
その後、氷水又は冷凍庫で鍋ごと急速に4℃まで冷却する(S240)。
【0058】
冷却後レモン汁(48g)、を加える(S250)。これは加熱によりレモン汁に含有するL−アスコルビン酸の酸化を防止のため冷却後加える。蜂蜜の補助的な還元剤として機能させる。(硝酸塩の還元)これで塩漬液(ピックル液)が完成する(S260)。
【0059】
次に、塩漬液(ピックル液)を用いて、ロースハムの真空塩漬法を具体的に説明する。豚ロース肉を成型(余分な脂身・軟骨・血管等の削除)し、約700gにカットする。7ブロック、総重量4800gであった。
【0060】
そして、真空袋に成型肉を4ブロック入れる。このとき正確に成型肉の重量を計量する。豚肉1kg当りに上記塩漬液を441g真空袋に入れる。(成型肉に対し44.1%)
【0061】
前記図6のように、真空包装機を使い0.002Mpaで真空包装する。4℃で14日冷蔵塩漬し発色させる。以下、図1の製造工程図の工程S40からS100までを行いハムが完成する。
【0062】
次に図12に、試料3から試料5の製造したロースハムの発色について、反射式色差計によるデータをもとに説明する。試料3の発色剤を使用しなかったハムは、a値が平均で1.43と最も低く、発色しなかったことがわかる。
【0063】
試料4の本発明の製造方法により製造したハムは、a値が平均で8.27と供試料中最も高く、発色力が強いことがわかる。一方、試料5の従来より製造方法である発色剤として亜硝酸ナトリウムを使用したハムは、a値が平均で5.90と、やはり発色したことがわかる。しかし試料4よりも発色しなかったのは、亜硝酸を還元するL−アスコルビン酸を添加しなかったことに由来するものと思われる。さらに真空・冷蔵塩漬したことにより、還元性細菌が機能しなかったと想像される。なお、ロースハムでは、材料に用いたロース肉が脂身を含み赤色が試料1の豚もも・挽き肉より少ないため、加工品としての赤みも低い値となっている。
【0064】
このようにして、発色剤である亜硝酸ナトリウムを使用しなくても野菜や、果物、蜂蜜等のみで発色させることができることが判明した。
【0065】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、食材1は、硝酸イオンを含めば実施例で説明した以外の他の食材であっても良いし、食材2も食材1に含まれる硝酸イオンを還元するものであれば実施例で説明した以外の他の食材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る食品添加物を使用しない食肉加工品の製造工程図である。
【図2】各野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図3】各野菜に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図4】各果実に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図5】硝酸イオンとL−アスコルビン酸との反応実験を示す図である。
【図6】本発明の真空状態で塩漬けする工程を示す図である。
【図7】実施例の試料の配合を示す図である。
【図8】本発明の製造方法により製造した食肉加工品の発色を反射式色差計により測定したデータである。
【図9】本発明をロースハムに適用した場合の試料4の配合例である。
【図10】本発明の塩漬液の調製図である。
【図11】比較のために無添加のロースハムの試料3と、従来の製造法による亜硝酸ナトリウムを用いたロースハムの配合例である。
【図12】各ロースハムの色差計データである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜肉加工品は、JAS法に基づくハム類、プレスハム、混合プレスハム、ソーセージ類、混合ソーセージ類、ベーコン類がある(非特許文献1参照)。これらは塩漬時や、燻煙の時畜肉の赤色が退色してしまう。これによって、畜肉加工品の商品価値の低下や見た目も悪くなる。したがって従来の製法では、塩漬時に指定食品添加物である亜硝酸ナトリウムを添加し赤色に発色させている。しかしこの亜硝酸ナトリウムは肉類の2級アミンと反応しニトロソアミンという,強力な発ガン物質を生成したり、モトヘモグロビン血症を起こすといわれる。そのため使用量も残留亜硝酸根として70ppm以下と制限されている。
【0003】
そのため、亜硝酸ナトリウム等の発色剤を用いることなく、食肉に亜硝酸ナトリウム等の発色剤を用いたような赤色を与える代替物、代替方法が要望されてきた。
【0004】
これらを、解決する方法として亜硝酸ナトリウムによる発色手段に代えて、炭酸カルシウムを主成分とした、畜肉加工用発色剤が開示されている(特許文献1等参照)。
【0005】
酵母エキスの中に含まれる発色成分を効率的に濃縮して、亜硝酸塩等の発色剤を用いることなく、肉類を発色させる発色剤が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−93015号公報
【特許文献2】特開平11−123065号公報
【非特許文献1】株式会社廣川書店「食品添加物公定書解説書」石館守三監修 B−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、炭酸カルシウムを主成分とした発色剤では、炭酸カルシウムの粒子を数μm程度までこまかくする必要があり大掛かりな設備が必要であり、酵母エキスの中に含まれる成分を用いた発色剤は、市場で入手できない等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、指定食品添加物である亜硝酸ナトリウムを使用することなく、野菜に含まれる硝酸イオンを基材とし食肉類を発色させる発色剤、製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸を含む果物、硝酸イオンを還元する還元糖を含む蜂蜜を活用することの有用性を見出し以下の発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させる発色剤。
【0010】
(1)に係る発明によれば、硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させるので、一切食品添加物を使用しないで食肉を加工することができる。
【0011】
(2) 前記食材1に含まれる硝酸イオンを還元する食材2をさらに含む(1)に記載の発色剤。
【0012】
(2)に係る発明によれば、硝酸イオンを還元する食材2を含むので、食肉を発色させる塩漬工程において、硝酸イオンを還元するので完成した食肉加工品に硝酸塩等が残留するおそれがすくない。
【0013】
(3) 前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上である(2)に記載の発色剤。
【0014】
(3)に係る発明によれば、前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上であるので、食肉を発色させる塩漬工程において、硝酸イオンを確実に還元することができるので、完成した食肉加工品に残留基準値の70ppm以上硝酸塩等が残留するおそれがない。
【0015】
(4) 前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(1)から(3)のいずれかに記載の発色剤。
【0016】
(5) 前記食材2が、アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(2)又は(3)のいずれかに記載の発色剤。
【0017】
(6) 前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【0018】
(4)から(6)の発明は、上記の発明を具体的に限定した内容である。具体的に記載した食材1、食材2を用いることにより発明内容を具体的に実施することができる。
【0019】
(7) 食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であって、硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程と、硝酸イオンを還元する食材2を混合して塩漬液を製造する工程と、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程と、を有する食肉の製造方法。
【0020】
(7)に係る発明は、食肉加工品の製造方法に関する発明であり、上記の(1)から(3)の発明に係る発色剤を用いて食肉加工品を製造するので、一切食品添加物を使用しないで食肉を加工することができる。また、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けするので、好気性菌の繁殖を抑制することができる。
【0021】
(8) 前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいづれか1つ又は組み合わせた食材である(7)に記載の食肉加工品の製造方法。
【0022】
(9) 前記食材2が、L―アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である(7)又は(8)に記載の食肉加工品の製造法。
【0023】
(10) 前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である(7)又は(8)に記載の食肉加工品の製造方法。
【0024】
(8)から(10)の発明は、上記(7)の発明を具体的に限定した内容である。具体的に記載した食材1、食材2を用いることにより(7)の発明内容を具体的に実施することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、亜硝酸塩等の指定添加物を使用することなく、野菜や果物・蜂蜜等のすべて天然物を使用し発色効果が得られる。したがって生産者にとっては、食品添加物の表示の必要が無く、さらに無添加ハムの表示ができることによって、商品価値の増大が期待できる。又近年零細なハム公房などで生産される、無添加ハムの製造技術に寄与できる。又消費者にとっても安全な食品が供給されることになり有益な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0027】
図1は本発明に係る食品添加物を使用しない食肉加工品の製造工程図であり、図2は、各野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の量を示す図であり、図3は、各野菜に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図であり図4は、各果実に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図であり、図5は、硝酸イオンとL−アスコルビン酸との反応実験を示す図である。
【0028】
図1の(b)に示すように、ハムやソーセージの製造工程は、一例を挙げれば、ロース肉の成形をおこない(S10)、血絞りをおこない(S20)、常圧(大気圧)冷蔵で塩漬けをして(S30)、塩抜き工程(S40)を経て巻き締め(S50)を行い、乾燥後(S60)、燻煙して(S70)製造していた。さらに燻煙後殺菌し(S80)、冷却して(S90)、製品として出荷するために包装していた(S100)。
【0029】
これに対して、本発明では、図1の(a)に示すように食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であるので、硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程(S110)と、 硝酸イオンを還元する食材2を細切りする工程と(S120)と、これらを混合(S130)して塩漬液を製造する工程(S140)と、があり、従来の常圧(大気圧)冷蔵で行われ塩付け(S30)に代えて、作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程(S150)と、それ以外は図(b)の工程により食肉加工品を製造する。
【0030】
畜肉加工品の発色理論によるとハムやソーセージの原料肉となる豚肉にはミオグロビンと呼ばれる色素タンパク質が含まれている。豚肉は加熱すると褐色に変化してしまうが、発色剤の亜硝酸塩を使用すると、亜硝酸塩から生じた一酸化窒素がミオグロビンと結合して、ニトロソミオグロビンといわれる加熱しても安定な赤色の色素を形成して特有のピンク色となる。
【0031】
このとき亜硝酸塩を還元するために、既存添加物のL−アスコルビン酸や還元性細菌が利用されている。しかし、上記で説明したような問題があった。
【0032】
したがって本発明では、指定添加物(亜硝酸ナトリウム・L−アスコルビン酸)を使用しないで、塩漬液(ピックル液)を調整し発色させ、かつ塩漬時に好気性微生物の繁殖を抑制することが特徴である。
【0033】
硝酸イオンを含む野菜(大根、カブ、白菜、水菜他)などの食材1により食品添加物を使用しない食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0034】
また、指定添加物(L−アスコルビン酸)を使用せず、食材1に含まれる、硝酸イオン(NO3―)を、柑橘類や野菜などの食材2によって無害な酸化窒素(NO)にまで還元し、食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0035】
さらに、指定添加物(L−アスコルビン酸)を使用せず、食材1に含まれる、硝酸イオン(NO3―)を蜂蜜中の還元糖(ブドウ糖、果糖)などの食材2によって無害な酸化窒素(NO)にまで還元し、食肉加工品の食肉を発色させる発色剤である。
【0036】
図2に、硝酸イオンを含む野菜(大根、カブ、白菜、水菜他)などの食材1に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の含有量を示す。図2のデータは、五訂日本食品成分表(科学技術庁調査会編)を引用したものである。図2によると大根の皮付き生には硝酸イオンが1000mg/kg含まれるという。この硝酸イオンを利用し、肉を発色させることができる。
【0037】
肉の色素が赤色を呈するのは、肉中に鉄を含む赤いヘム色素(heme pigment)1分子と、タンパク質クロビンが結合した筋肉色素(ミオグロビン:Mb)およびヘム色素4分子とクロビンの結合した血色素(ヘモグロビン:Hb)が存在するためである。
【0038】
ヘム色素中の鉄は還元状態で2価(Fe2+、hemochrome)で、紫がかった暗赤色を呈しているが、永く空気に触れたり、加熱されたりすると、Fe2+が3価の鉄(Fe3+、hemichrome)となり、ヘムは酸化されてヘマチンに変わり、かっ色のメトミオグロビン(met Mb)およびメトヘモグロビン(met Hb)を生じるようになる。
【0039】
これが酸化であり、逆の変化(Fe3+→Fe2+)が還元である。このヘム色素の酸化還元反応が肉製品の発色にきわめて重要で、Fe3+は還元剤の存在で容易にFe2+の状態にもどりうる。
【0040】
このような色素に亜硝酸が作用する発色経路は、Mbについて一般につぎのように考えられている。まず、亜硝酸塩は酸化剤であるからMbをかっ色のmet Mbに酸化し、酸化されたmet Mbは他から添加されたL−アスコルビン酸ナトリウムのような還元剤、あるいは生肉自身の還元作用により還元されて、再びもとのMbにもどる。また他方において亜硝酸塩は、リン酸または加工中に生じた乳酸などの作用で遊離の亜硝酸となり、これはさらに還元されて、つぎのように酸化窒素(NO)生ずる。
【0041】
【化1】
【化2】
【0042】
ここに生じたNO(酸化窒素)はMbと容易に結合(ニトロソ化)してニトロソミオグロビン(MbNO)となり、塩漬け(curing)により美しい赤色として発色するから、cured meat colorと呼ばれる。
【0043】
仮に大根1kg中に、NaN03(分子量85)が1000mg/kg含まれるとすると(図2)、亜硝酸塩に全量が還元されるとすると、NaN02(分子量69)は、812mg/kgに相当する。つまり大根1kgには812mg亜硝酸塩が含まれることになる。さらに発色因子であるNO(酸化窒素)は353mg/kgに相当する。肉を発色させるには食品添加物公定書によると亜硝酸ナトリウム0.025%が適当であるといわれる(非特許文献1を参照)。すなわち肉1kgに0.25g添加すれば発色する。したがって大根で肉1kgを発色させるには、0.25/0.82×1000=308g加えればよいことがわかる。しかし実際に大根中含まれる硝酸イオンは、我々の実験によると、平均で3000mg/kg含まれていた。したがって実際には肉1kgに対して大根100g程度で発色した。
【0044】
また、図3、図4のように、野菜や果物類などの食材2には、L−アスコルビン酸が含有する。このL−アスコルビン酸を利用し食材1の野菜(大根)中の硝酸イオンを還元し、畜肉の発色因子であるNO(酸化窒素)が生成されることが期待できる。なお図3、図4のデータは科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」74ページ〜144ページより引用した。
【0045】
図5のように、1000ppm硝酸イオン標準溶液に、1000mgのL−アスコルビン酸を加え、硝酸イオンがL−アスコルビン酸により還元される実験をした。図5に示すように、10分で61ppm、3時間で13ppmにまで、減少した。したがって硝酸イオンは、酸化窒素まで還元されたことがわかる。
【0046】
さらに、野菜(大根)中の硝酸イオンを還元するために、食材2に蜂蜜中のブドウ糖、果糖を用い、これらにより、畜肉の発色因子であるNO(酸化窒素)に還元されることも期待することができる。
【0047】
図6に示すように、真空包装用袋に、食肉、塩漬液(ピックル液)を入れ真空度O.OO2Mpaかつ4℃で、真空塩漬することにより、大気中に曝さないことにより好気性菌の繁殖を抑制し、酸化窒素の大気中への飛散を防止し発色させることができる。
【実施例1】
【0048】
以下実施例を具体的に示す。実施例1は、本発明を豚もも・挽き肉について実施した例である。図7は、実施例の試料の配合を示す図である。図7のように、試料1は、豚もも・挽き肉に大根+食塩+蜂蜜+レモンを加えたもの。試料2は比較のために 豚もも・挽き肉に食塩だけを加えたものである。図8は、本発明の製造方法により製造した食肉加工品の発色を反射式色差計により測定したデータである。
【0049】
試料1と試料2について、上記で説明した工程に基づいて食肉肉加工品を製造した。図8において、色差計のL値は明るさ、a値は赤色、b値は黄色、を示す数値であり、それぞれ数値が大きいほど、明るさ、赤色、黄色、が強いことになる。
【0050】
その結果は、下記「図8」のように試料1はa値は17.44であり、試料2のa値は13.04であり、試料1のa値の数値が大きいことがわかる。つまり試料が赤く発色したことがわかる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、本発明をロースハムの製造に適用した一例である。図9は、本発明をロースハムに適用した場合の試料4の配合例であり、図10は、塩漬液の調製図であり、図11は、比較のために無添加のロースハムの試料3と、従来の製造法による亜硝酸ナトリウムを用いたロースハムの配合例である。図12は、各ロースハムの色差計データである。
【0052】
まず本発明に関する、塩漬液の製造について説明する。図10のように、食材1の大根の根を洗浄後皮付きのまま、成型肉に対し10%(480g)を計量する(S200)。これをフードカッターにて、硝酸塩の抽出のため粉砕する(S210)。
【0053】
次に食材2の人参の根(240g)、にんにく(48g)、パセリ(48g)、しょうが(48g)を約1mmに細切する(S220)。
【0054】
水960gに粉砕した食材1の大根、細切した食材2の、人参の根、ニンニク、パセリ、月桂樹、蜂蜜を加えボツリヌス菌などの殺菌・硝酸塩の還元のために5分間沸騰させる(S230)。
【0055】
食材2の人参の根、パセリは含有するL−アスコルビン酸によって食材1の還元を期待するが、加熱や人参に含まれる、アスコルビナーゼ(アスコルビン酸酸化酵素)により、L−アスコルビン酸は酸化されデヒドロアスコルビン酸になり、硝酸イオンの還元に多くを期待できない。そこで、下記のように食材2の蜂蜜を用い、含有する還元糖(ブドウ糖、果糖)により食材1の還元に寄与させた。
【0056】
なお、加工されたロースハムをおいしくするために、食材2の人参は、甘みや旨みに寄与し、食材2のにんにく、パセリ、月桂樹は、肉の臭みや、大根臭の抑制に寄与する。さらに、食材2の蜂蜜は、含有する還元糖(ブドウ糖、果糖)により食材1の還元に寄与する。
【0057】
その後、氷水又は冷凍庫で鍋ごと急速に4℃まで冷却する(S240)。
【0058】
冷却後レモン汁(48g)、を加える(S250)。これは加熱によりレモン汁に含有するL−アスコルビン酸の酸化を防止のため冷却後加える。蜂蜜の補助的な還元剤として機能させる。(硝酸塩の還元)これで塩漬液(ピックル液)が完成する(S260)。
【0059】
次に、塩漬液(ピックル液)を用いて、ロースハムの真空塩漬法を具体的に説明する。豚ロース肉を成型(余分な脂身・軟骨・血管等の削除)し、約700gにカットする。7ブロック、総重量4800gであった。
【0060】
そして、真空袋に成型肉を4ブロック入れる。このとき正確に成型肉の重量を計量する。豚肉1kg当りに上記塩漬液を441g真空袋に入れる。(成型肉に対し44.1%)
【0061】
前記図6のように、真空包装機を使い0.002Mpaで真空包装する。4℃で14日冷蔵塩漬し発色させる。以下、図1の製造工程図の工程S40からS100までを行いハムが完成する。
【0062】
次に図12に、試料3から試料5の製造したロースハムの発色について、反射式色差計によるデータをもとに説明する。試料3の発色剤を使用しなかったハムは、a値が平均で1.43と最も低く、発色しなかったことがわかる。
【0063】
試料4の本発明の製造方法により製造したハムは、a値が平均で8.27と供試料中最も高く、発色力が強いことがわかる。一方、試料5の従来より製造方法である発色剤として亜硝酸ナトリウムを使用したハムは、a値が平均で5.90と、やはり発色したことがわかる。しかし試料4よりも発色しなかったのは、亜硝酸を還元するL−アスコルビン酸を添加しなかったことに由来するものと思われる。さらに真空・冷蔵塩漬したことにより、還元性細菌が機能しなかったと想像される。なお、ロースハムでは、材料に用いたロース肉が脂身を含み赤色が試料1の豚もも・挽き肉より少ないため、加工品としての赤みも低い値となっている。
【0064】
このようにして、発色剤である亜硝酸ナトリウムを使用しなくても野菜や、果物、蜂蜜等のみで発色させることができることが判明した。
【0065】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることができる。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、食材1は、硝酸イオンを含めば実施例で説明した以外の他の食材であっても良いし、食材2も食材1に含まれる硝酸イオンを還元するものであれば実施例で説明した以外の他の食材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る食品添加物を使用しない食肉加工品の製造工程図である。
【図2】各野菜に含まれる硝酸イオンとL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図3】各野菜に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図4】各果実に含まれるL−アスコルビン酸の量を示す図である。
【図5】硝酸イオンとL−アスコルビン酸との反応実験を示す図である。
【図6】本発明の真空状態で塩漬けする工程を示す図である。
【図7】実施例の試料の配合を示す図である。
【図8】本発明の製造方法により製造した食肉加工品の発色を反射式色差計により測定したデータである。
【図9】本発明をロースハムに適用した場合の試料4の配合例である。
【図10】本発明の塩漬液の調製図である。
【図11】比較のために無添加のロースハムの試料3と、従来の製造法による亜硝酸ナトリウムを用いたロースハムの配合例である。
【図12】各ロースハムの色差計データである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させる発色剤。
【請求項2】
前記食材1に含まれる硝酸イオンを還元する食材2をさらに含む請求項1に記載の発色剤。
【請求項3】
前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上である請求項2に記載の発色剤。
【請求項4】
前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項1から3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項5】
前記食材2が、L−アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項6】
前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項7】
食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であって、
硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程と、
硝酸イオンを還元する食材2を混合して塩漬液を製造する工程と、
作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程と、
を有する食肉加工品の製造方法。
【請求項8】
前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項7に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項9】
前記食材2が、L−アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項7又は8に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項10】
前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項7又は8に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項1】
硝酸イオンを含む食材1により食肉を発色させる発色剤。
【請求項2】
前記食材1に含まれる硝酸イオンを還元する食材2をさらに含む請求項1に記載の発色剤。
【請求項3】
前記食材1と前記食材2とのモル比は、食材1に含まれる硝酸イオンを還元する当量以上である請求項2に記載の発色剤。
【請求項4】
前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項1から3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項5】
前記食材2が、L−アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項6】
前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項2又は3のいずれかに記載の発色剤。
【請求項7】
食品添加物を使用しない食肉加工品の製造方法であって、
硝酸イオンを含む食材1を粉砕する工程と、
硝酸イオンを還元する食材2を混合して塩漬液を製造する工程と、
作成された塩漬液に食肉を浸して真空状態で塩漬けする工程と、
を有する食肉加工品の製造方法。
【請求項8】
前記食材1が、大根、小松菜、チンゲン菜、水菜、カブのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項7に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項9】
前記食材2が、L−アスコルビン酸を含む果実、パセリ、ブロッコリー、京菜、キャベツのいずれか1つ又は組み合わせた食材である請求項7又は8に記載の食肉加工品の製造方法。
【請求項10】
前記食材2が、還元糖を含む蜂蜜である請求項7又は8に記載の食肉加工品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−165445(P2009−165445A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10139(P2008−10139)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【特許番号】特許第4295341号(P4295341)
【特許公報発行日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(307047690)
【出願人】(307047748)
【出願人】(307047900)
【出願人】(307047911)
【出願人】(307048011)
【出願人】(307047922)
【出願人】(307047933)
【出願人】(307047944)
【出願人】(307047955)
【出願人】(307047966)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【特許番号】特許第4295341号(P4295341)
【特許公報発行日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(307047690)
【出願人】(307047748)
【出願人】(307047900)
【出願人】(307047911)
【出願人】(307048011)
【出願人】(307047922)
【出願人】(307047933)
【出願人】(307047944)
【出願人】(307047955)
【出願人】(307047966)
【Fターム(参考)】
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