説明

食品用包装材及びその製造方法

【課題】アルミ箔を使用せずとも、光沢があり美粧性に優れ、適度な折り曲げ性を有し、かつ、コスト性、製造性、リサイクル性、更に断熱性にも優れた食品用包装材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞100をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルム1であって、前記空洞含有樹脂フィルム表面1aから所定の距離においては前記空洞が形成されておらず、かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材、及び、結晶性を有するポリマーからなるポリマー成形体を、特定の温度条件下で高速延伸することを特徴とする前記食品用包装材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な食品を包装する用途に適した食品用包装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、あめ玉、粒ガムなどの菓子類を、一つ一つ個々にキャラメル包装する包装材として、金属光沢を活かし、美飾性の高いアルミ箔を基材とする包装材が使用されている。また、このアルミ箔を基材とする包装材において、包装材の意匠性をさらに高めるために、包装材に印刷を施すことがある。アルミ箔は、ある程度の印刷適性を有してはいるが、プラスティックフィルムに比べて印刷適性は落ちる。このため、意匠性を付与するために、従来から、印刷したプラスティックフィルムを、アルミ箔に積層するという手段がとられている。
【0003】
しかしながら、このような手段では、プラスティックフィルムをアルミ箔に積層する工程が必須であり、コスト性、製造性に優れないという問題があった。また、このような包装材はプラスティックフィルムとアルミ箔とが積層されてなるため、使用後のリサイクル性に優れないという問題があった。また、アルミ箔にプロピレンフィルムを積層したものでは、光沢が悪く、このため包装材として見栄え(美粧性)が悪いという問題があった。また、アルミ箔にポリエチレンテレフタレートフィルムやナイロンフィルムを積層したものでは、素材の曲げ弾性が高すぎるために、食品を個々にキャラメル包装する際、折り曲げた部分が元に戻ってしまい、意図する包装ができないといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、従来では、厚さ5〜50μmのアルミ箔と、厚さ10〜40μmのポリスチレンフィルムが積層されたキャラメル包装用食品包装材(特許文献1)が提案されている。しかしながら、該技術では、見栄え(美粧性)がよく、適度な折り曲げ性を有するキャラメル包装用食品包装材が得られるものの、依然としてプラスティックフィルムをアルミ箔に積層する工程が必須であり、そのため、コスト性、製造性、使用後のリサイクル性に優れないという問題があった。また、アルミ箔は断熱性に優れず、そのため、食品の保温、保冷目的の包装材としては適さないという問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−222262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、アルミ箔を使用せずとも、光沢があり美粧性に優れ、適度な折り曲げ性を有し、かつ、コスト性、製造性、リサイクル性、更に断熱性にも優れた食品用包装材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の結晶性ポリマーからなるポリマー成形体(ポリマーフィルム)を、適度な温度条件下で高速延伸すると、空洞を含有する樹脂フィルムとなり、この延伸されたフィルム(空洞含有樹脂フィルム)は、食品用の包装材として好適に利用可能であるという知見である。即ち、前記空洞含有樹脂フィルムからなる食品用包装材は、樹脂層(PBTの場合、屈折率約1.5)と空洞層(空気層、屈折率1)からなる多重層構造をとるため、これらの層間の構造的な光干渉(構造発色)作用により、アルミ箔を使用せずとも、光沢があり美粧性に優れるという利点を有する。また、前記空洞含有樹脂フィルムからなる食品用包装材は、空洞を含有するため、適度な折り曲げ性を有し、そのため、所望の程度に折り曲げ易く、また、折り曲げた部分が元に戻りすぎることもなく、食品の包装に適しているという利点を有する。更に、前記空洞含有樹脂フィルムからなる食品用包装材は、空洞を含有するため、適度なクッション性を有し、そのため、食品の破損を保護する効果に優れるという利点を有する。更に、前記空洞含有樹脂フィルムからなる食品用包装材は、空洞を含有するため、適度な断熱性を有し、そのため、温度変化が激しい環境下においても、食品の保温、保冷、結露防止効果に優れるという利点を有する。また、前記食品用包装材は、PBT等の結晶性ポリマーのみから製造することが可能であり、そのため、コスト性、製造性、及び、リサイクル性にも優れるという利点を有する。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムであって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たし、
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材である。
<2> 結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである前記<1>に記載の食品用包装材である。
<3> 入射角60°以下で、波長400〜800nmの光を入射して測定した際の光沢度が60以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<4> 折り曲げ前の食品用包装材の折り曲げ角度を0°とし、前記食品用包装材を二つに折畳んだ状態の折り曲げ角度を180°とした場合、前記食品用包装材を折り曲げ角度90°となるように折り曲げ、24時間静置した際の、前記食品用包装材の折り曲げ角度が70°以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<5> 熱伝導率が0.1W/mK以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の食品用包装材である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の食品用包装材の製造方法であって、
結晶性を有するポリマーからなるポリマー成形体を、10〜36,000mm/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸し、空洞含有樹脂フィルムを形成する工程を含むことを特徴とする食品用包装材の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、アルミ箔を使用せずとも、光沢があり美粧性に優れ、適度な折り曲げ性を有し、かつ、コスト性、製造性、リサイクル性、更に断熱性にも優れた食品用包装材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(食品用包装材)
本発明の食品用包装材は、結晶性を有するポリマーからなり、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする。
【0011】
<空洞含有樹脂フィルム>
前記空洞含有樹脂フィルムは、結晶性を有するポリマー(本明細書中において、単に「結晶性ポリマー」と称することがある)からなり、内部に空洞を含有する。
【0012】
−結晶性ポリマー−
一般に、ポリマーは、結晶性ポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0013】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、空洞含有樹脂フィルムの力学強度や製造の観点から、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類の少なくともいずれかが好ましく、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうち2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0014】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0015】
前記結晶性ポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが0.4〜1.2であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0016】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜260℃がより好ましい。前記融点が40〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0017】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0018】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。
【0019】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0020】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0021】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0022】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0023】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイド(空洞)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・s以上であると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0025】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましい。
【0026】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0027】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0028】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加しても良い。
【0029】
このように、本発明の食品用包装材を構成する前記空洞含有樹脂フィルムは、前記したような結晶性ポリマーからなるものである。前記空洞含有樹脂フィルムとしては、少なくとも1種類の結晶性ポリマーからなるものが好ましく、また、1種類の結晶性ポリマーのみからなるものがより好ましい。
前記空洞含有樹脂フィルムは、従来技術においてボイド(空洞)を形成するために添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程でボイドを形成させることができるものであり、そのため、前記空洞含有樹脂フィルムからなる本発明の食品用包装材は、コスト性、製造性に優れたものであり、また、リサイクル性にも優れるという利点を有する。さらに、製造において、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、前記空洞含有樹脂フィルムの製造方法は、後述する本発明の食品用包装材の製造方法の項目に記載の通りである。
【0030】
ここで、前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じて前記結晶性ポリマー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤、蛍光増白剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0031】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0032】
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユビテック、OB−1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMなどの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このように蛍光増白剤を添加することで、より鮮明で青味のある白色性を与え、高級感を持たせることができる。
【0033】
−空洞−
前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞を含有し、前記空洞の空洞含有率及びアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、前記空洞含有樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。
【0034】
前記空洞含有率とは、空洞含有樹脂フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3体積%以上、50体積%以下が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマー成形体の密度)} ・・・(1)
【0035】
前記アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
前記アスペクト比が10以上であると、前記空洞含有樹脂フィルムからなる本発明の食品用包装材の、光沢性、折り曲げ性、及び断熱性を高めることができる点で、有利である。
【0036】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞含有樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0037】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0038】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0039】
ここで、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0040】
前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0041】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0042】
結晶性ポリマー層と空洞層との屈折率差ΔNは、具体的には、波長400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する結晶性ポリマー層の屈折率をN1として、前記選択される1つの波長の光に対する空洞層の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。ここで、より具体的には、結晶性ポリマー層の屈折率N1は、別途押し出し成形した、前記空洞含有樹脂フィルムと同じ種類の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しない樹脂フィルムを用いるか、あるいは前記空洞含有樹脂フィルムそのものをアッベ屈折計により測定することができる。なお、前記空洞含有樹脂フィルムにおける空洞部分の屈折率は、空洞を形成したフィルムを水中で切断した際に発生する気泡を分析した結果、空気であることが認められたため、空洞層の屈折率は空気の屈折率=N2の屈折率=1とすることができる。これらの差を算出し、ΔN(=N1−N2)を求めることができる。また、前記屈折率N1、N2は、波長589nmの光について測定することが好ましい。
【0043】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有しつつも、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記空洞含有樹脂フィルムの表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下がより好ましく、Ra=0.1μm以下が更に好ましい。
【0044】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、フィルム表面だけでなく、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たす。
但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0045】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂フィルムの表面」とは、厚み方向における、空洞含有樹脂フィルムの最外面を意味する。通常、前記空洞含有樹脂フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0046】
具体的には、空洞含有樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tとして、ロングレンジ接触式変位計などを用いて測定された厚さを用いてもよい。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂成形体の表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(1)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(1)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂フィルムが、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
なお、図2Dは空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
前記空洞含有樹脂フィルムは、このように、空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂フィルムの表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0047】
前記h(avg)が、h(avg)>T/100の関係を満たすことにより、前記空洞含有樹脂フィルムからなる本発明の食品用包装材は、高い平面性を有したものとなる。そのため、前記食品用包装材を、高輝度性で、光沢性に優れ、かつ印刷等に適したものとすることができる点で、有利である。
【0048】
また、前記空洞含有樹脂フィルムの厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、20〜40μmが更に好ましい。前記厚さが、20μm未満であると、空洞の数が少なくなり美粧性が悪化することがあり、150μmを超えると、前記空洞含有樹脂フィルムからなる食品用包装材の腰(曲げ弾性)が強くなりすぎ、折り曲げた部分が元に戻ってしまい、食品をうまく包装できないことがある。一方、前記厚さが、前記更に好ましい範囲内であると、適度な折り曲げ性を有するため、包装がし易い点で、有利である。
【0049】
<特性>
本発明の食品用包装材は、前記したような空洞含有樹脂フィルムからなり、そのため、前記食品用包装材は、例えば、光沢性、折り曲げ性、断熱性などにおいて、様々な優れた特性を有している。
【0050】
−光沢性−
前記光沢性の指標となる光沢度は、JIS規格のZ8741に記載される定義に準ずる。
前記食品用包装材の光沢度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、入射角60°以下で、波長400〜800nmの光を入射して測定したときに、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。ただし、前記入射角は、前記食品用包装材の表面に対して垂直に入射する角度を0°とする。ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
本発明の食品用包装材が、前記したような好ましい光沢度を有することにより、前記食品用包装材は、光沢があり、美粧性に優れるという優れた効果を奏することが可能となる。
【0051】
また、光沢性に関連した指標として、透過率があるが、前記食品用包装材の400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する透過率としては、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。前記透過率とは、前記食品用包装材の表面に対し、垂直に所定波長の光を入射したときの、透過光の光強度/入射光の光強度×100(%)の値を意味する。ここで、前記透過率は、分光光度計により測定することができる。
また、前記透過率は、相対的な値として規定することもできる。即ち、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)の、波長400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する透過率をM(%)として、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)と同じ厚さで、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)を構成する結晶性ポリマーと同一の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しないポリマー成形体の、前記選択される1つの波長の光に対する透過率をN(%)とした際のM/N比が、0.2以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。
【0052】
−折り曲げ性−
前記折り曲げ性とは、素材を2つ折にした場合の戻りの程度であり、食品を、例えば個々にキャラメル包装する際などに、折り曲げた部分が元に戻りすぎることがなく、意図する包装ができる性質を示す。
ここで、前記食品用包装材の折り曲げ性は、折り曲げ前の食品用包装材の折り曲げ角度を0°とし、食品用包装材を二つに折畳んだ際の折り曲げ角度を180°と規定した場合、前記食品用包装材を、折り曲げ角度90°となるように折り曲げ、24時間静置した後の折り曲げ角度を測定することにより、評価することができる。折り曲げ角度を90°となるように折り曲げ、24時間静置した後の前記食品用包装材の折り曲げ角度は、70°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましい。また、この際(24時間静置後)の折り曲げ角度の上限は、90°であることが好ましい。
本発明の食品用包装材が、24時間静置後でも、このような高い折り曲げ角度を保つことにより、前記食品用包装材は、折り曲げた部分が元に戻りすぎることがなく、食品を意図した状態で包装することが可能となる。
【0053】
−断熱性−
前記食品用包装材の断熱性の指標となる熱伝導率としては、0.1(W/mK)以下であることが好ましく、0.09(W/mK)以下であることがより好ましく、0.08(W/mK)以下であることが更に好ましい。ここで、前記熱伝導率は、熱拡散率、比熱、密度の測定値の積によって算出することができる。前記熱拡散率は一般的にはレーザーフラッシュ法(例えば、TC−7000((株)真空理工製))により測定できる。前記比熱はDSCによりJIS K7123に記載の方法に従って測定できる。前記密度は一定面積の質量とその厚みを測定することにより、算出することができる。
また、前記食品用包装材の好適な熱伝導率は、相対的な値として規定することもできる。即ち、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)の熱伝導率をX(W/mK)として、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)と同じ厚さで、前記食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)を構成する結晶性ポリマーと同一の結晶性ポリマーからなり、空洞を含有しないポリマー成形体の熱伝導率をY(W/mK)とした際のX/Y比が、0.27以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。
本発明の食品用包装材が、前記したような好ましい熱伝導率を有することにより、前記食品用包装材は、適度な断熱性を有し、そのため、温度変化が激しい環境下においても、優れた食品の保温、保冷、結露防止効果を奏することが可能となる。
【0054】
以上のように、前記食品用包装材は、前記したような空洞含有樹脂フィルムからなることにより、アルミ箔を使用せずとも、光沢があり美粧性に優れ、かつ、適度な折り曲げ性を有し、そのため、食品の包装材として好適に利用可能なものである。更に、前記食品用包装材は、適度な断熱性を有するため、温度変化が激しい環境下においても、食品の保温、保冷、結露防止効果に優れるという利点を有し、また、記食品用包装材は、空洞を含有し、適度なクッション性を有するため、食品の破損を保護する効果に優れるという利点を有する。また、本発明の食品用包装材は、結晶性ポリマーのみから製造し得るため、コスト性、製造性に優れたものであり、また、アルミなどの金属を含まないため、リサイクル性にも優れるという利点を有する。
【0055】
なお、前記食品用包装材は、前記空洞含有樹脂フィルムのみからなることが、コスト性、製造性、リサイクル性の点で好ましいが、前記食品用包装材に所望の機能を付与する目的から、前記空洞含有樹脂フィルムと、他の機能性ポリマーフィルムとを併用して(例えば積層して)なるものであってもよい。前記空洞含有樹脂フィルム以外の他の機能性ポリマーフィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、酸素遮断フィルムなどが挙げられる。ただし、本発明において、アルミ箔は併用しないことが好ましい。
また、前記食品用包装材は、前記空洞含有樹脂フィルムそれ自体を、複数層に積層してなるものであってもよい。前記空洞含有樹脂フィルムを複数層に積層させることにより、より断熱性を高め、食品の保温、保冷効果、結露防止効果を向上させることができる点で、有利である。この際の前記空洞含有樹脂フィルムの積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜80層が好ましい。
また、前記食品用包装材は、前記空洞含有樹脂フィルムを、色素などで着色してなるものであってもよい。前記空洞含有樹脂フィルムを着色することにより、より美粧性を高めることができる点で、有利である。
【0056】
前記食品用包装材を用いて包装され得る食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、あめ玉、粒ガム、ケーキ、クッキー等の菓子類、野菜、食肉等の生鮮食品、ハム、チーズ、練り物等の加工食品、冷凍保存食品、ヨーグルト等の発酵乳製品、ゼリー等のデザート類などが挙げられる。中でも、前記食品用包装材は、光沢があり美粧性に優れるため、菓子類、デザート類などの美粧性が求められる食品用包装材として、特に好適であると考えられる。
また、前記食品用包装材は、食品の保温、保冷、結露防止効果にも優れるため、例えば、熱水や電子レンジ等で加熱されることが想定されたレトルト食品等の温食品や、冷蔵庫や冷凍庫にて保管されることが想定された鮮魚、食肉、冷凍食品等の冷食品用の包装材としても好適であると考えられる。なお、前記食品用包装材はアルミ箔等の金属を含まないため、電子レンジでの使用にも好適であると考えられる。
また、前記食品用包装材は、適用される包装手法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、キャラメル包装などに好適である。ここで、キャラメル包装とは、一般に、食品を包装材で包み込み、包装材の端部を折り曲げて包装する方法であり、前記食品用包装材は、適度な折り曲げ性を有するため、このような包装手法に特に好適であると考えられる。
また、前記食品用包装材は、食品の個別包装に使用されるものであってもよいし、複数の食品の包装に使用されるものであってもよい。中でも、前記食品用包装材は、空洞を含有し、クッション性に優れるため、食品の個別包装に適用されることにより、食品の破損を保護する効果をよりよく発揮できることが考えられる。
【0057】
(食品用包装材の製造方法)
本発明の食品用包装材の製造方法としては、少なくともポリマー成形体を延伸(例えば、2倍〜8倍に延伸)し、空洞含有樹脂フィルムを形成する工程を含み、更に必要に応じて、積層工程や着色工程等のその他の工程を含んでなる。
【0058】
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性ポリマーからなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
前記ポリマー成形体を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性ポリマーがポリエステル樹脂である場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。また、前記ポリマー成形体の製造は、前記ポリマー成形体の延伸とは独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0059】
<空洞含有樹脂フィルム形成工程>
前記空洞含有樹脂フィルム形成工程では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞含有樹脂フィルムが得られる。
【0060】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性ポリマーが、複数種類の結晶状態からなり、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性ポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0061】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0062】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0063】
−延伸速度−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0064】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000〜36,000mm/minが好ましく、1,100〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0065】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10〜300mm/minが好ましく、40〜220mm/minがより好ましく、70〜150mm/minが更に好ましい。
【0066】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0067】
−延伸温度−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0068】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0069】
なお、前記延伸において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂フィルムは、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしても良い。
【0070】
図1は、空洞含有樹脂フィルム形成工程の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)1として使用してもよい。
【0071】
以上のようにして、空洞含有樹脂フィルム形成工程により、空洞含有樹脂フィルムを得ることができ、前記空洞含有樹脂フィルムは、そのままで、本発明の食品用包装材として使用することができる。
また、前記食品用包装材に所望の機能を付与する目的で、前記空洞含有樹脂フィルムと、他の機能性ポリマーフィルムとを積層することで、本発明の食品用包装材とすることもできる。前記空洞含有樹脂フィルムと、前記他の機能性ポリマーフィルムとを積層する方法としては、特に制限はなく、従来公知の積層方法を適宜利用することができる。
また、前記食品用包装材の断熱性を更に高める目的から、前記空洞含有樹脂フィルムそれ自体を複数層に積層することで、本発明の食品用包装材とすることもできる。前記空洞含有樹脂フィルムを複数層に積層する方法としても、特に制限はなく、従来公知の積層方法を適宜利用することができる。
また、前記食品用包装材の美粧性を更に高める目的から、前記空洞含有樹脂フィルムを着色して、本発明の食品用包装材とすることもできる。前記空洞含有樹脂フィルムの着色方法としては、特に制限はなく、従来公知の着色方法を適宜利用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0073】
[実施例1]
極限粘度(IV)=0.72であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を、溶融押出機を用いて245℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸し、80μm厚のフイルム(空洞含有樹脂フィルム)を得た。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例1の食品用包装材として使用した。
【0074】
[実施例2]
実施例1において、ポリマーフィルムの厚さを約50μmとしたこと、延伸温度を30℃としたこと、1段目の延伸速度を100mm/minとしたこと、2段目の延伸速度を12,000mm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、30μm厚の空洞含有樹脂フィルムを得た。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例2の食品用包装材として使用した。
【0075】
[実施例3]
実施例1において、ポリマーフィルムの厚さを約100μmとしたこと、延伸温度を40℃としたこと、1段目の延伸速度を11,000mm/minとし、2段目の延伸を行わなかった(延伸を1段階のみとした)こと以外は、実施例1と同様にして60μm厚の空洞含有樹脂フィルムを得た。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例3の食品用包装材として使用した。
【0076】
[実施例4]
ポリプロピレン(ポリプロピレン100%樹脂、Aldrich社製、重量平均分子量19万、数平均分子量5万、MFI:35g/10min(ASTM D1238、230℃・2.16kg)、Tm:170〜175℃)を、溶融押出機を用いて210℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約150μmのポリマーフィルムを得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、35℃の加温雰囲気下で、12,000mm/minの速度で、1段で1軸延伸し、50μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例4の食品用包装材として使用した。
【0077】
[実施例5]
相対粘度2.7、MI=2であるナイロンMXD6 S6007(三菱ガス化学(株)製)(ポリアミド類)を、溶融押出機を用いて260℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、80℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,000mm/minの速度で、はじめと同一方向に更に1軸延伸し、40μm厚の空洞含有樹脂フイルムを得た。
得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例5の食品用包装材として使用した。
【0078】
[比較例1]
ポリスチレンフィルムとして「OPSフィルムGM」(旭化成工業(株)製、二軸延伸ポリスチレンフィルム:厚さ20μm、縦方向ORS=15kg/cm、横方向ORS=7kg/cm)を用い、積層面を放電処理し、ブタジエン系アンカーコート剤「EL−451」(東洋モートン(株)製)を、乾燥塗布量で40mg/mとなるように塗布し乾燥した。アルミ箔は「SA30」(住友軽金属(株)製:厚さ7μm)を使用した。二軸延伸ポリスチレンフィルムとアルミ箔を、「セイカボンドA−342、C−60」(大日精化(株)製)を用い、ドライラミネートして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、比較例1の食品用包装材として使用した。
なお、前記積層フィルムが空洞を含有しないものであることを走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0079】
[比較例2]
実施例1と同様のPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂、ポリエステル類)を用い、実施例1と同様の方法で、厚さ120μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を得た。このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を、延伸せずに、比較例2の食品用包装材として使用した。
なお、前記ポリマー成形体(ポリマーフィルム)が空洞を含有しないものであることを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0080】
[比較例3]
実施例1において、延伸温度を、40℃に代えて、100℃で延伸したこと以外は、実施例1と同様にして空洞含有樹脂フィルム(食品用包装剤)の製造を試みた。延伸に供したポリマーフィルムは、1段目の延伸の後に、ネッキングの発生が確認されず、2段目の延伸でも空洞が発現しなかった。得られた41μm厚の樹脂フィルムを、比較例3の食品用包装材として使用した。
なお、前記樹脂フィルムが空洞を含有しないものであることを、走査型電子顕微鏡(S−4800日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0081】
[比較例4]
実施例1において、延伸温度を、40℃に代えて、5℃で延伸したこと以外は、実施例1と同様にして空洞含有樹脂フィルム(食品用包装剤)の製造を試みた。しかしながら、延伸に供したポリマーフィルムは1段目の延伸を始めた途端に破断し、比較例4の空洞含有樹脂フィルム(食品用包装材)は得られなかった。
【0082】
[比較例5]
実施例1において、1段目の縦延伸速度を、100mm/minに代えて、40,000mm/minで延伸した以外は、実施例1と同様にして空洞含有樹脂フィルム(食品用包装剤)の製造を試みた。しかしながら、延伸に供したポリマーフィルムは1段目の延伸を始めた途端に破断し、比較例5の空洞含有樹脂フィルム(食品用包装材)は得られなかった。
【0083】
実施例1〜5及び比較例1〜5の食品用包装材の製造につき、表1にまとめて示す。(なお比較例4〜5では、ポリマーフィルムが延伸時に破断し、食品用包装材が得られなかったため、表には示していない。)
【0084】
−厚さの測定方法−
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。
【0085】
−空洞含有率の測定方法−
比重を測定し、この比重に基づいて算出した。
具体的には、空洞含有率を下記の(1)式により算出した。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマーフィルムの密度)} ・・・(1)
【0086】
−アスペクト比の測定方法−
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚み(r)を測定し、その平均の厚さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(2)
L=(ΣL)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0087】
−フィルム表面に最も近くに位置する空洞からフィルム表面までの距離の測定方法−
樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。
撮像の際には、前記樹脂フィルムを平面状に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出した。各樹脂フィルムにおいて算出された厚みの算術平均値Tは、上記「−厚さの測定方法−」で測定された厚さ(表1参照)と同じであった。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から樹脂フィルム上面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に樹脂フィルムの表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記樹脂フィルムの上面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(4)式により算出した。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(4)
【0088】
【表1】

【0089】
[評価]
食品用包装材が得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の食品用包装材について、下記の評価を行った。
【0090】
(1)光沢性の評価(光沢度の測定)
変角光沢計VG−1001DP(商品名、日本電色工業(株)製)を用いて、波長400〜800nmを含む光について、60°入射、60°受光の条件で、得られた食品用包装材の光沢度を測定し、光沢性を以下のように評価した。
−光沢性の評価基準−
○:光沢度が60(%)以上。
×:光沢度が60(%)未満。
【0091】
(2)折り曲げ性の評価(折り曲げ角度の測定)
得られた食品用包装材を、縦50mm、横50mmに切り出し、あめ玉に見立てた縦20mm、横15mm、高さ5mmのガラス片を、手により図3のようにキャラメル包装した。(比較例1の食品用包装材については、フィルム面がガラス片の側になるようにしてキャラメル包装した。)キャラメル包装時、図4のようにガラス片の上部と接するフィルムを90°の角度で折り曲げ、24時間放置した後、折り曲げた部分の角度(図4中、符号4、折り曲げ角度(°))を測定し、折り曲げ性を以下のように評価した。なお、図3及び図4中、符号2は食品用包装材を示し、符号3はガラス片を示す。
−折り曲げ性の評価基準−
○:折り曲げた部分の戻りが少なく、24時間放置後の折り曲げ角度が70°以上である。
×:折り曲げた部分の戻りが多く、24時間放置後の折り曲げ角度が70°未満である。
【0092】
(3)断熱性の評価(熱伝導率の測定)
熱拡散率はTC−7000((株)真空理工製)を用いて測定した。食品用包装材の両面をスプレーにより黒化し、室温で測定した。密度、比熱は後述の方法で測定し、熱拡散率、比熱、密度の3つの測定値の積から熱伝導率を求めた。
密度は、食品用包装材から一定面積を切り取り、その質量を天秤で測定し、その厚みを膜厚計で測定し、質量を体積で割ることで求めた。
比熱はJIS K7123に記載の方法で求めた。DSCとしては、Q1000(TAインスツルメント社製)を用いた。
求めた熱伝導率から、断熱性を以下のように評価した。
−断熱性の評価基準−
○:熱伝導率が0.1W/mK以下である。
×:熱伝導率が0.1W/mKを超える。
【0093】
以上の評価結果を、表2に示す。(なお比較例4〜5では食品用包装材が得られなかったため、表には示していない。)
【0094】
【表2】

【0095】
(4)保温性の評価
実施例1の食品用包装材(空洞含有樹脂フィルム)を、厚みが約2.2mmになるように積層(28層)して、評価用サンプルを作製した。また、比較例1の食品用包装材(ポリスチレンフィルム+アルミ箔)についても同様に積層(81層)し、評価用サンプルを作製した。なお、前記各食品用包装材を単に重ねるだけでは空気層が形成されるため、粘度の高い流動パラフィンを食品用包装材間に塗り、熱伝導率を高める処理を施した。表面に熱伝対を貼りつけた各評価用サンプルをアルミ製ボトル350ml容器の底から30mmの部位に貼りつけ、アルミ製ボトル内に氷水200mlを注いだ直後から1秒毎に温度測定した。結果を図5に示す。
【0096】
表2によれば、実施例1〜5のみが、光沢があり美粧性に優れ、適度な折り曲げ性を有し、かつ、断熱性にも優れた食品用包装材であることがわかる。また、図5によれば、比較例1の食品用包装材に比べ、実施例1の食品用包装材が、より保温性に優れていることがわかる。なお、実施例1〜5の食品用包装材は、アルミ箔を使用せずとも、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類等の結晶性ポリマーのみから製造することができ、そのため、コスト性、製造性、リサイクル性にも優れた食品用包装材である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、本発明の食品用包装材の製造方法(空洞含有樹脂フィルムの製造方法)の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図2D】図2Dは、空洞の各中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図3】図3は、キャラメル包装の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、食品用包装材の折り曲げ性の評価方法を示す概略図である。
【図5】図5は、実施例1及び比較例1の食品用包装材の保温性を評価した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1 空洞含有樹脂フィルム(空洞含有樹脂成形体)
1a 表面
100 空洞
L 空洞の配向方向における空洞の長さ
r 空洞の配向方向に直交する厚み方向における空洞の長さ
h(i) 空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離
T 空洞の配向方向に直交する断面における厚みの算術平均値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有するポリマーからなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムであって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たし、
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
かつ、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である空洞含有樹脂フィルムからなることを特徴とする食品用包装材。
【請求項2】
結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン類、ポリエステル類、及び、ポリアミド類から選択される少なくともいずれかである請求項1に記載の食品用包装材。
【請求項3】
入射角60°以下で、波長400〜800nmの光を入射して測定した際の光沢度が60以上である請求項1から2のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項4】
折り曲げ前の食品用包装材の折り曲げ角度を0°とし、前記食品用包装材を二つに折畳んだ状態の折り曲げ角度を180°とした場合、前記食品用包装材を折り曲げ角度90°となるように折り曲げ、24時間静置した際の、前記食品用包装材の折り曲げ角度が70°以上である請求項1から3のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項5】
熱伝導率が0.1W/mK以下である請求項1から4のいずれかに記載の食品用包装材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の食品用包装材の製造方法であって、
結晶性を有するポリマーからなるポリマー成形体を、10〜36,000mm/minの速度で、かつ、
延伸温度をT(℃)、結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸し、空洞含有樹脂フィルムを形成する工程を含むことを特徴とする食品用包装材の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−190744(P2009−190744A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31048(P2008−31048)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】