説明

食品用着色剤およびそれを用いた着色食品の製造方法

【課題】蒲鉾の製造において原料とする魚種により出来上がりの色調に差が出ることを抑えることができる、ビートレッドを主成分とする食品用着色剤およびそれを用いた着色食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】ビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを含有する食品用着色剤であって、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1質量部以上であることを特徴とする食品用着色剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用着色剤およびそれを用いた着色食品の製造方法に関し、より詳しくはビートレッドを主成分とする食品用着色剤およびそれを用いた着色食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒲鉾、魚肉ソーセージ、カニ蒲等の魚肉製品の赤色は、合成色素であるタール系色素あるいは天然系色素であるコチニール色素などを用いて着色していることが多い。タール系色素あるいはコチニール色素は、安価なうえ、pH、熱あるいは光に対し非常に安定であり、また、食品に添加した場合の色調が鮮やかであるという特長を有している。
【0003】
しかし、タール系色素は化学的な合成品であること、コチニール色素はエンジ虫からの抽出物であることで、消費者のイメージが悪いことからタール系色素やコチニール色素以外の赤色色素が望まれている。そこで、タール系色素やコチニール色素以外の色素についても食品への利用が研究されているものの、pH、熱あるいは光に不安定なものが多く、色調的にも鮮やかでないことが障害となって、食品への利用は進んでいなかった。
【0004】
上記タール系色素、コチニール色素以外の赤色色素として、ビートレッドが知られている。ビートレッドは、サトウダイコン(Beta vulgaris)の一変種のアカビートなどから得られるベタニン(分子式C2436213、分子量548.47)を主成分とする植物由来の色素であり、従来、酸化防止剤とともに食肉や魚肉製品の着色に使用されてきた(特許文献1参照)。しかし、ビートレッドは熱に弱いという性質があるため、食品製造中に長時間加熱される食品には使用できないとされてきた。
【0005】
この問題を解決すべく、本発明者らは以前、ビードレッドを油溶化物として用いることにより、耐熱性を向上したビートレッドを含む食品用着色剤および該着色剤を用いる食品の着色方法を開発した(特許文献2参照)。この方法は、ビートレッドを含む食品用着色剤の耐熱性を改善できる優れた方法である。
【0006】
しかし、上記方法を蒲鉾の製造に適用した場合、原料とする魚種によって出来上がりの色に違いが生じることがあった。蒲鉾の原料となる魚種は、製造時期や漁獲の状況により常に同じとは限らないため、魚種によって出来上がりの色調に差が出ない技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭51−18512号公報
【特許文献2】特許第4270433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、従来のビートレッドを含む食品用着色剤を改良し、蒲鉾のように原料素材が変動し、かつ、製造の際に加熱される加工食品の製造工程で使用した場合であっても、加熱加工後の製品の色調に差が出ない着色剤及び該着色剤を用いる食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の実情に鑑み検討を重ねた結果、ビートレッドを含有する着色剤にブドウ種子抽出物を添加することにより、原料素材が異なっても、出来上がった蒲鉾どうしの色調のバラツキが少ないことを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、必須成分としてビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを含有する、製造の際に加熱される加工食品用の着色剤であって、該着色剤中における上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1質量部以上である着色剤を提供する。
上記本発明の着色剤においては、上記ブドウ種子抽出物が、カテキン類を50質量%以上含有すること;上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1〜50質量部であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、製造工程において加熱される食品の原料に、上記食品用着色剤を添加して混合し、次いで該混合物を加熱することを特徴とする食品の製造方法を提供する。本発明の製造方法においては、上記食品が魚肉食品であることが好ましく、上記食品が蒲鉾であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来のビートレッドを含む食品用着色剤を改良し、製造工程において長時間加熱される加工食品の着色に用いた場合でも、加熱による色調の変化が少なく、さらに、蒲鉾のように原料素材が変動する加工食品に使用した場合であっても、原料素材によって出来上がりの色調がばらつくことの少ない食品用着色剤及びそれを用いた食品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
なお、本発明において、単に「食品」というときは、加熱加工後の食品を意味し、「原料素材」というときは、加熱加工前の食品原料を意味するものとする。
本発明の着色剤に使用するビートレッドは、アカザ科ビート(Beta vulgaris)の赤い根を、色素を含む状態で乾燥したもの、根を搾汁したもの、室温〜室温より幾分高い温度の水、酸性水溶液若しくは含水エタノールを用いて根から抽出して得られたもの、および該抽出液の精製加工品である。また、例えば、噴霧乾燥などにより粉末に加工されたものでもよい。
カテキン類とは、(+)−カテキン、(−)−カテキン、(+)−エピカテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキン、(+)−エピガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレートおよび(−)−エピガロカテキンガレートのことをいう。
【0014】
本発明に使用するビートレッドの油溶化物は、ビートレッド、その水溶液またはその水ペーストを、界面活性剤(乳化剤)を用いて油脂中に乳化したものである。該油溶化物中に含まれるビートレッドの色素固形分の量は、特に限定されないが、該油溶化物中1〜80質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜60質量%である。ビートレッドの含有量が1質量%より低い場合は、食品原料に対して油溶化物(着色剤)の添加量を多くする必要があるため、食品の特性を低下させる場合がある。一方、ビートレッドの含有量が80質量%より多い場合には、ビートレッドの油溶化が不十分となり、本発明で目的とするビートレッドの耐熱性向上効果が十分に発揮されない。
【0015】
上記油溶化物に使用する油脂は特に限定されないが、好ましくは常温で液体のものが良く、通常、融点が50℃以下のものを用いる。さらに好ましくは融点が40℃以下、最も好ましくは30℃以下である。油脂の具体例として、大豆、米、菜種、カカオ、パーム、胡麻、紅花、綿実、落花生、アボガド、カポック、芥子、ごぼう、小麦、月見草、つばき、とうもろこし、ひまわりなどから得られる一般的な植物性油脂、および牛、豚、鳥、いわし、さば、さめ、さんま、たらなどから得られる動物性油脂が挙げられ、これらの油脂は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらに本来含まれているリン脂質、ステロール類、ワックス類などが共存しても一向に差し支えない。
【0016】
油溶化に使用する乳化剤は特に限定されないが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどを用いることができる。
【0017】
本発明で用いる油溶化物は、上述のビートレッド、その水溶液またはその水ペースト、油脂および乳化剤を含有する組成物であり、これらの3者を常法に従って混合攪拌することによって得られる。なお、油溶化物の安定化および保管時の色素の安定化などを図る目的で、油溶化物に対してブドウ糖、果糖などの還元糖、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、抽出トコフェロールなどの酸化防止剤、重合リン酸塩、フィチン酸などのキレート剤などを併用することを妨げるものではない。なお、これら安定剤は1種単独で使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、安定剤は、油溶化に際して何れかの原料に混合しておいてもよい。また、本発明で使用する油溶化物は使用上の便宜のために、例えば、二重乳化により水に溶けるようにしたり、噴霧冷却法などにより適宜加工した状態であってもよい。
【0018】
本発明で用いる酸化防止剤は、食品添加物として用いられるものを広く例示することができ、例えば、特に制限はされないが、L−アスコルビン酸およびその塩などのアスコルビン酸類;エルソルビン酸およびその塩などのエルソルビン酸類;亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類など;ミックストコフェロール、トコトリエノールなどのトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)など;アスコルビン酸、パルミチン酸エステルなど;アオイ花抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブルーベリー葉抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ルチン抽出物、小豆全草、エンジュまたはソバ全草の抽出物、ローズマリー抽出物などの植物抽出物;その他酵素処理ルチン、ルチン分解物(クエルセチン)、酵素処理イソクエルシトリン、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、シスチンなどを挙げることができる。
【0019】
上記酸化防止剤の形態は特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状、乳液状、ペースト状などの任意の形態として使用することができる。特に好ましい酸化防止剤はアスコルビン酸、エルソルビン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
酸化防止剤の使用量が多い程、優れた耐熱性向上効果が得られるので上限は存在しないが、着色された食品の味や物性の観点、例えば、苦みや酸味に影響を与えない範囲で優れた効果を発揮させるには、ビートレッドの油溶化物100質量部に対し10〜100質量部の範囲が好ましい。酸化防止剤の使用量が少な過ぎると、色素の耐熱性向上効果が不十分であり、酸化防止剤の使用量が多過ぎると食品の味や物性を損なう畏れがある。
【0021】
本発明の着色剤は、上記ビートレッドの油溶化物、酸化防止剤に加えて、ブドウ種子抽出物を必須成分として含有する。本発明の着色剤は、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対してブドウ種子抽出物を0.1質量部以上含有する必要がある。ブドウ種子抽出物が0.1質量部より少ないと、加工食品の原料素材が異なる場合に、製品どうしの色調のバラツキを十分に抑えることができず、本発明の目的を十分に達成することができない。
ブドウ種子抽出物の添加量を増やした場合、上記効果に影響が出ることはないが、ブドウ種子抽出物の色が製品に現われ色調に影響を及ぼす可能性があることから、ビートレッドの油溶化物100質量部に対し、ブドウ種子抽出物は50質量部を超えないことが好ましい。
【0022】
本願発明の着色剤を加工食品の着色に用いることにより、魚種などの原料素材が異なる場合でも、加熱加工後の製品どうしの色調のバラツキを抑えることができる。この理由は明らかではないが、本発明者らは、上記ブドウ種子抽出物中のポリフェノール類、特にカテキン類が加熱時にアスコルビン酸ナトリウムの分解を妨げており、このことが色調のバラツキの抑制に関与しているものと推測している。
【0023】
ブドウ種子抽出物は、種々のポリフェノールの混合物であり、近年の研究によるとカテキン類、特に(±)−カテキンが主成分とされている。ブドウ種子抽出物の組成の例としては、(+)−カテキンと(−)−カテキンを約40%および(−)−エピカテキンを約25%含むものが挙げられる。
本発明の着色剤に使用するブドウ種子抽出物は、カテキン類の含有量が50質量%以上のものを用いることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。ブドウ種子抽出物は、例えば、商品名グラヴィノール(キッコーマン株式会社製)として販売されているものを使用することができる。
【0024】
本発明の着色剤は、種々の食品の原料に添加して使用することができ、適用対象となる食品原料は、魚種などを問わず特に制限されない。本発明の着色剤は、上記した通り、長時間加熱されても退色が少なく、さらに、食品素材が異なる場合であっても、加熱加工後の製品どうしの間の色調の差が少ないという特長を有することから、長時間加熱され、かつ、原料素材が変動することのある蒲鉾、魚肉ソーセージ、カニ蒲などの魚肉食品の製造に好適に用いることができ、特に蒲鉾の着色に好適に用いることができる。
上記本願発明の着色剤の添加量は、所望の着色濃度にもよるので一概には決められないが、一般的には食品原料100質量部に対して0.1〜15質量部添加する。
【0025】
また、本発明は、上記本発明の着色剤を食品の原料に添加して混合し、次いで該混合物を加熱することを特徴とする食品の製造方法を提供する。以下、蒲鉾を製造する場合を例に挙げて、本発明の製造方法を説明する。
【0026】
蒲鉾は、魚のすり身を主原料とする。このすり身は無塩の冷凍品であり、解凍後、食塩を加えて練り、次いで、砂糖、みりん、澱粉等を加えてよく練り合わせて練り肉を得る。この練り肉に上記本発明の着色剤を添加し、加熱してゲル化することにより蒲鉾を製造する。すり身の原料魚としては、スケトウダラが最も多く使用されるが、スケトウダラに加えてイトヨリダイ、グチ等も使用されることがあり、その使用量は製造時期や漁獲の状況に応じて変動する。
【0027】
本発明の製造方法の別の局面として、食品の原料に、ビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを添加して混合する工程、および、食品の原料を加熱する工程を有する食品の製造方法において、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対し、ブドウ種子抽出物を0.1質量部以上添加する食品の製造方法が挙げられる。この製造方法によれば、上記本願発明の着色剤を用いる場合と同様に、原料素材の違いに起因する出来上がりの色調のバラツキが抑えられた加熱加工食品を製造することができる。この製造方法において、ビートレッドの油溶化物、酸化防止剤およびブドウ種子抽出物は、同時に添加してもよく、別々の時点で添加してもよい。また、添加時期は、食品の加熱工程の前であっても加熱工程の間であってもよい。蒲鉾の製造においては、加熱により材料がゲル化して固まるので加熱前に添加すべきである。
元来、ビートレッドは加熱により退色しやすい色素であるが、上記本発明の製造方法によれば、ビートレッドの赤色は加熱を経て幾分退色するものの、加熱工程後でも十分な着色を維持することができる。
【実施例】
【0028】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制約されるものではない。なお、以下の文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0029】
[実施例1]
(ビートレッドの油溶化物の調製)
コーンサラダ油33部およびテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル7部をホモミキサーで予め十分撹拌混合した。さらに撹拌しながらビートレッドの水ペースト40部(色素固形分濃度40%)を徐々に添加し、ビートレッドをコーンサラダ油中に乳化させ、ビートレッドの油溶化物を得た。
【0030】
(蒲鉾用練り肉の製造)
無塩冷凍スケトウダラすり身100部に、氷水50部、食塩3部、砂糖2.5部、馬鈴薯澱粉2部、グルタミン酸ナトリウム0.5部およびみりん2部を加え、良く擂潰して蒲鉾用の練り肉を得た。
上記練り肉30部に対して、表1に示す組成の本発明の着色剤を加えて良く混合し、直径8cmのシャーレに乗せ、95℃で30分間蒸し器で蒸して着色蒲鉾を製造した。製造した蒲鉾は蒸し前と蒸し後(1日冷却後)に日本電色工業社製の色差計SE−2000で表面の色調(L、a、b)を測定した。結果を表2に示す。
【0031】
なお、表2において、Lの数値は、大きいほど着色食品の明度が高いことを示す。
aは、(+)側では数値が大きな程、着色食品の赤の度合いが大きく、
(−)側では数値(絶対値)が大きな程、緑の度合いが大きいことを示す。
bは、(+)側では数値が大きな程、黄の度合いが大きく、
(−)側では数値(絶対値)が大きな程、青の度合いが大きいことを示す。
【0032】
[実施例2〜5、比較例1〜5]
練り肉の製造に際し、無塩冷凍スケトウダラすり身に代えて、それぞれ、表1の実施例2〜5又は比較例1〜5に記載の魚種のすり身を使用し、表1に記載の着色剤を用いた他は、実施例1と同様にして着色蒲鉾を製造し、蒸し前と蒸し後に表面の色調を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
明度Lの平均値については、蒸し前(実施例1〜5(L=41.3)、比較例1〜5(L=40.9))でも、蒸し後(実施例(L=58.4)、比較例(L=59.8))でも、実施例と比較例との間に大きな差はみられなかった。
一方、明度Lの分散をみると、蒸し前では実施例1〜5の値も比較例1〜5の値も約0.9で差はわずかであったが、蒸し後では実施例1〜5の値が0.23であるのに対し、比較例1〜5の値は3.05と、大きな差が生じた。これらの結果から、本発明の着色剤を使用することにより、従来公知の着色剤を使用した場合と比べて、原料とする魚種の違いに起因する、出来上がった蒲鉾の色調のバラツキを抑制できることが明らかとなった。
【0034】
また、蒸し後の色調aの平均値は、実施例1〜5が24.3であるのに対し、比較例1〜5では22.0であり、本発明の着色剤を使用した場合には、加熱後であっても鮮やかな赤色を維持できることが明らかとなった。一方、蒸し後の色調bの平均値は、実施例1〜5が−1.98であるのに対し、比較例1〜5では−0.33と大きな値を示した。本発明に使用したビートレッドは加熱分解されると黄味を帯びて色調bの値が大きくなるので、この結果からも本発明の着色剤が従来公知の着色剤に比べて加熱による退色の少ないことが明らかである。
また、蒸し後の色調a、bの分散は、いずれも実施例1〜5に比べ、比較例1〜5では値が大きく、これらの結果からも、従来公知の着色剤に代えて、本発明の着色剤を使用することにより、原料とする魚種が異なる場合でも出来上がった蒲鉾の色調のバラツキを抑制できることが明らかである。また、肉眼による判断でも、本願発明の着色剤を使用した実施例1〜5の蒲鉾は、30分蒸し及び1日冷却後であっても、魚種間による色調の差は判別できなかったが、比較例1〜5の蒲鉾は、魚種間による色調のバラツキが明らかであった。
【0035】

【0036】

【0037】
[比較例6〜10]
練り肉の製造に際し、それぞれ、表1の比較例6〜10に記載の魚種のすり身と着色剤を用いた他は、実施例1と同様にして着色蒲鉾を製造し、蒸し前と蒸し後に表面の色調を測定した。結果を表3に示す。
【0038】

【0039】
着色剤に酸化防止剤もブドウ種子抽出物も使用しなかった比較例6〜10では、実施例1〜5および比較例1〜5と比較して、特に30分蒸し及び1日冷却後の色調aの平均値が小さくなっており、加熱による赤色の退色が大きいことが明らかである。
【0040】
[実施例6、7、比較例11]
練り肉の製造に際し、それぞれ、表1の実施例6、7、比較例11に記載の魚種のすり身と着色剤を用いた他は、実施例1と同様にして着色蒲鉾を製造し、蒸し前と蒸し後に表面の色調を測定した。結果を実施例1及び比較例1の結果と併せて表4に示す。
【0041】

【0042】
ビートレッドの油溶化物100質量部に対するブドウ種子抽出物の使用量は、実施例6が約7.7部、実施例7が約0.4部、使用した実施例6、比較例11が約0.008部である。なお、実施例6、7の着色剤を用いた場合、原料とする魚種が異なる場合でも出来上がった蒲鉾の色調のバラツキを抑制できたが、比較例11では、出来上がった蒲鉾の色調のバラツキは、比較例1〜5の結果と同程度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを含有する、製造の際に加熱される加工食品用の着色剤であって、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1質量部以上であることを特徴とする着色剤。
【請求項2】
前記ブドウ種子抽出物が、カテキン類を50質量%以上含有するものである請求項1に記載の着色剤。
【請求項3】
上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対する上記ブドウ種子抽出物の含有量が0.1〜50質量部である請求項1に記載の着色剤。
【請求項4】
食品の原料に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品用着色剤を添加して混合し、次いで該混合物を加熱することを特徴とする食品の製造方法。
【請求項5】
前記食品が魚肉食品である請求項4に記載の食品の製造方法。
【請求項6】
前記食品が蒲鉾である請求項4に記載の食品の製造方法。
【請求項7】
食品の原料に、ビートレッドの油溶化物と、酸化防止剤と、ブドウ種子抽出物とを添加して混合する工程、および、食品の原料を加熱する工程を有する食品の製造方法において、上記ビートレッドの油溶化物100質量部に対し、ブドウ種子抽出物を0.1質量部以上添加することを特徴とする食品の製造方法。

【公開番号】特開2012−183043(P2012−183043A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49513(P2011−49513)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(593157910)株式会社タイショーテクノス (10)
【Fターム(参考)】