説明

食器洗い機

【課題】電極センサーの経年変化による濁度検出値の誤差補正を可能とすることにより、経年変化に対して濁度測定の精度を高めた食器洗い機を実現する。
【解決手段】濁度センサー装置は、電極センサー4を備えたコルピッツ型発振回路部1と、その発振電圧出力を整流する整流回路部2と、さらに、マイコン8で制御されコルピッツ型発振回路部1に複数の異電圧の電源電圧を印加可能とした駆動電源電圧調整部7とを備えたもので、電極センサー4の経年変化によるインピーダンスの変化に対して、コルピッツ型発振回路部1に、より電圧の高い電源電圧を印加することにより、電源電圧を上げて回路のQを同じにするように補正をかけ、濁度測定時の出力変化カーブをほぼ同等にすることで、洗浄水の濁度測定の精度を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄水の濁度を測定する機能を有した食器洗い機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食器洗い機など、その機器で使用している状態の洗浄水の濁度を測定し、その汚れ度合いや汚れ度合いの変化を検知することにより、すすぎ水の時間や量の削減を図って省エネルギーを行う機器が市場に提供されてきた。洗浄水の汚れ度合いや汚れ度合いの変化を検知する手段として光センサーを用いたものが一般的であるが、洗浄水に接触させて設けた一対の電極間の電気的情報によって洗浄水の汚れ度合いや汚れ度合いの変化を検知する方式のものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の食器洗い機は、一対の電極間の静電容量の変化で洗浄水の汚れを検知するものであるが、洗浄水もしくは清水を用いて内部に収納した被洗浄物を洗うということにおいて食器洗い機と類似する洗濯機においては、一対の電極間のインピーダンスの変化を検知することで洗浄水の汚れを検知する方式のものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図3は、上記特許文献2のような機器の濁度センサー装置の回路部を示したもので、また図4は、水及び洗剤水・洗浄水の汚れ度と濁度センサー装置の回路部で得られる整流電圧値の関係を示したもので、以下その構成および動作、作用について説明する。
【0005】
図3に示すように、濁度センサー装置の回路部はコルピッツ型発振回路部1とその発振電圧を整流して直流レベルに変換する整流回路部2とからなり、コルピッツ型発振回路部1のL負荷としてM結合されたトランス3を用いており、発振回路のL負荷と直接接続されない側のL負荷両端に電極センサー4が接続されるように構成されている。
【0006】
洗浄水の濁度を測定する場合、電極センサー4により洗浄水のインピーダンスがトランス3に接続され、M結合によりコルピッツ型発振回路部1のQ値に影響することにより、水の場合や洗剤水や汚れ水の場合など、発振電圧波形の整流で得られる直流の電圧レベル(AD_IN電圧レベル)はそれぞれ異なる値となる。図4に示すように、仮に電極センサー4が新しい時は、真水の時がインピーダンスが一番大きいため一番電圧値が高く検出する。洗剤水そして汚れ水の汚れ度に応じて、電極センサー4のインピーダンスが低下することより、発振回路のQ値が徐々に小さくなり、その時の得られる整流された直流の電圧レベルは、図4に示すように右肩下がりの電圧レベルとして得られる、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−36528号公報
【特許文献2】特開2010−268942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、電極センサー4が使用などの経年変化により、電極表面に酸化物や異物などの付着してくることで、水没時のインピーダンスが変化し小さくなることにより発振のQ値が下がることになり、図4に示すように、初期注水時の電圧レベル値が、機器の使用初期に対して、経年変化後は下がることとなる。また、洗浄水の汚れ度に対しても同様に、ほぼ同率で下がることになる。
【0009】
濁度は、初期の注水時に測定した電圧レベルに対して、任意の測定時に得られる電圧レベルの変化値で濁度を判断するため、経年変化により、電圧変化カーブの傾きが変わることによって、同じ汚れ度でも初期の注水時に対しての変化値が少なくなる、つまり濁度が小さく判定する側にずれるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗浄水の濁度を測定する機能を有した食器洗い機において、濁度センサー装置を構成している電極センサーの経年変化によるインピーダンス変化に対し、その検出電圧値の低下を補正するように回路部への印可電圧を変化させることにより、濁度の判定の精度を改善した濁度測定機能を有する食器洗い機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の食器洗い機は、食器類等の被洗浄物を収納する洗浄槽と、洗浄水循環路によって前記洗浄槽内に洗浄水を循環させるとともに被洗浄物を洗浄水で洗浄する洗浄手段と、前記洗浄水循環路内の洗浄水の濁度を測定する濁度センサー装置と、前記濁度センサー装置からの入力情報に基づき前記濁度センサー装置の動作を制御するマイクロコンピュータ装置とを備え、前記濁度センサー装置は、電極センサーを備えたコルピッツ型発振回路部と、その発振電圧出力を整流する整流回路部と、さらに、前記マイクロコンピュータ装置で制御され前記コルピッツ型発振回路部に複数の異電圧の電源電圧を印加可能とした駆動電源電圧調整部とを備えたものである。
【0012】
これにより、電極センサーが経年変化によりインピーダンスが下がってきた時に、あらかじめマイコンに定めた電圧レベル以下に測定時の電圧が検出されると、インピーダンスの低下による発振回路のQ値の低下を補正するように回路部への印可電圧を変化させることによって、出力低下を防ぎ、洗浄水の濁度の判定の精度を改善するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食器洗い機は、電極センサーの経年変化によりインピーダンスが下がってきた時に、濁度が小さい方向にずれて測定されてしまうのを改善し、経年変化に対して濁度測定の精度を高めた食器洗い機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における食器洗い機の濁度センサー装置の回路部を示す回路図
【図2】本発明の実施の形態1における食器洗い機の水及び洗剤水・洗浄水の汚れ度と濁度センサー装置の回路部で得られる整流電圧値の関係図
【図3】従来の機器の濁度センサー装置の回路部を示す回路図
【図4】従来の機器の水及び洗剤水・洗浄水の汚れ度と濁度センサー装置の回路部で得られる整流電圧値の関係図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、食器類等の被洗浄物を収納する洗浄槽と、洗浄水循環路によって前記洗浄槽内に洗浄水を循環させるとともに被洗浄物を洗浄水で洗浄する洗浄手段と、前記洗浄水循環路内の洗浄水の濁度を測定する濁度センサー装置と、前記濁度センサー装置からの入力情報に基づき前記濁度センサー装置の動作を制御するマイクロコンピュータ装置とを備え、前記濁度センサー装置は、電極センサーを備えたコルピッツ型発振回路部と、その発振電圧出力を整流する整流回路部と、さらに、前記マイクロコンピュータ装置で制御され前記コルピッツ型発振回路部に複数の異電圧の電源電圧を印加可能とした駆動電源電圧
調整部とを備えたことにより、初期注水時に検出される電圧レベルが、あらかじめ決められた電圧以下になると、発振回路に印可する電源電圧をより電圧の高い系統に切替えて、コルピッツ型発振回路部の駆動を行なうようにして、電極センサーが経年変化でインピーダンスが下がり発振電圧が下がることを、コルピッツ型発振回路部の駆動電圧を上げることで発振電圧を補正し、濁度値が小さい方にずれて測定されるのを防ぎ、経年変化に対して洗浄水の濁度測定の精度を高めることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態における食器洗い機の基本構成は、従来よく知られた食器洗い機と同様であるので、図は省略し、以下に簡単に説明する。
【0018】
洗浄する食器類(被洗浄物)を収納する洗浄槽を筐体の内部に設けており、洗浄槽の内部には、食器類を載置する食器かごと、食器かごに載せられた食器類に向けて水を噴射する洗浄ノズルと、洗浄ノズルに洗浄水を加圧供給する洗浄ポンプと、洗浄槽内の洗浄水や空気を加熱するヒータとを備えている。洗浄ノズルには、洗浄水循環路の一端が接続されており、洗浄水循環路の他端は洗浄槽の底部に設けられた排水口に接続されている。洗浄ポンプは、洗浄水循環路の途中に設けてあり、洗浄ノズルから噴射された洗浄水を排水口および洗浄水循環路を経て循環させ、再び洗浄ノズルに供給する。これらの洗浄ノズル、洗浄ポンプ、洗浄水循環路等によって洗浄手段を構成している。
【0019】
洗浄水の濁度を検知する濁度センサー装置が洗浄水循環路に設けられている。この濁度センサー装置は、洗浄水循環路を流れる洗浄水に接触する形で設けられた一対の電極よりなる電極センサー4を有し、一対の電極間のインピーダンスを検出することよって、洗浄水の汚れ度合いや汚れ度合いの変化を検出する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態1における食器洗い機の濁度センサー装置の回路部を示すものである。図2は本発明の実施の形態1における食器洗い機の水及び洗剤水・洗浄水の汚れ度と濁度センサー装置の回路部で得られる整流電圧値の関係を示すものである。
【0021】
図1において、従来と同様に、濁度センサー装置の回路部は、コルピッツ型発振回路部1と整流回路部2、コルピッツ型発振回路部1のL負荷としてM結合されたトランス3、発振回路のL負荷と直接接続されない側のL負荷両端に電極センサー4が接続されるように構成されている。
【0022】
本発明の実施の形態1においては、上記構成に加えて、コルピッツ型発振回路部1の電源は、Vddの電圧を供給するトランジスタ5及びVddの電圧より高い電圧Vdd1を供給するトランジスタ6が接続されるように駆動電源電圧調整部7を備えて構成され、マイクロコンピュータ装置(以下、マイコンと称す)8の出力により駆動の印可電源電圧を切替え可能に構成されている。
【0023】
マイコン8は、上記のように切替え可能とした電源電圧で濁度センサー装置のコルピッツ型発振回路部1を駆動するとともに、整流回路部2で整流して得られる直流の電圧レベル(AD_IN電圧レベル)に基づいて洗浄水の濁度判定を行うよう構成している。
【0024】
以上のように構成された食器洗い機の濁度センサー装置の回路部について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
洗浄水の濁度を測定するに、まず、初期注水時の水の濁度をマイコン8によりトランジスタ5をオンしてVdd電圧にてコルピッツ型発振回路部1を駆動し、水の濁度を測定する。この時、図2に示すように、整流回路部2で整流して得られる直流の電圧レベル(AD_IN電圧レベル)をあらかじめマイコン8に設定された電圧レベルV0と比較し、この電圧レベルV0以上ならば、Vdd電圧での駆動により、濁度を測定する(図2において実線で示した電圧出力カーブ)。
【0026】
電極センサー4の経年変化などに起因して得られるインピーダンスが小さくなった場合は発振回路のQ値が下がり、そのため発振電圧が下がり、結果的に整流された電圧レベルが下がることとなる(図2において破線で示した電圧出力カーブ)。このように、前記のあらかじめマイコン8に設定された電圧レベルV0より得られる電圧値が低い場合は、マイコン8によりトランジスタ6をオンしてVdd1電圧にてコルピッツ型発振回路部1を駆動するように切替える。
【0027】
電源電圧が上がることにより、電極センサー4の経年変化などによるQ値の低下を補正するように働き、出力値は元の電圧に補正され、Vddで駆動した出力カーブ(図2において実線で示した電圧出力カーブ)に近似的にほぼ同等に補正することができる。これによって、電極センサー4の経年変化前とほぼ同じ検出精度で洗浄水の濁度検出が行える。そしてこれ以降は、濁度を測定する場合はVdd1の電源電圧で測定する。
【0028】
以上のように、本実施の形態の食器洗い機においては、電極センサーの経年変化などによるインピーダンス低下に対して、発振回路の印可電圧を上げることにより、発振回路における発振電圧の補正をかけ、経年変化前とほぼ同等の出力電圧カーブを得られるようにすることにより、濁度を測定する際、初期注水時の水の電圧レベルとの出力差で測定する洗浄水の濁度の検出精度を大幅に改善できるものであり、経年変化によって濁度が小さく判定される方にずれるのを最小限にとどめることを可能にするものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明にかかる食器洗い機は、濁度センサー装置において、電極センサーの経年劣化などによる濁度測定のズレを大幅に改善させ、長期に亘って洗浄水の濁度測定を安定かつ正確に行えるようにできるもので、精度良い濁度センサー装置を備えた食器洗い機を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 コルピッツ型発振回路部
2 整流回路部
3 トランス
4 電極センサー
5、6 トランジスタ
7 駆動電源電圧調整部
8 マイコン(マイクロコンピュータ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器類等の被洗浄物を収納する洗浄槽と、洗浄水循環路によって前記洗浄槽内に洗浄水を循環させるとともに被洗浄物を洗浄水で洗浄する洗浄手段と、前記洗浄水循環路内の洗浄水の濁度を測定する濁度センサー装置と、前記濁度センサー装置からの入力情報に基づき前記濁度センサー装置の動作を制御するマイクロコンピュータ装置とを備え、前記濁度センサー装置は、電極センサーを備えたコルピッツ型発振回路部と、その発振電圧出力を整流する整流回路部と、さらに、前記マイクロコンピュータ装置で制御され前記コルピッツ型発振回路部に複数の異電圧の電源電圧を印加可能とした駆動電源電圧調整部とを備えた食器洗い機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−81685(P2013−81685A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224647(P2011−224647)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】