説明

食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】様々な状態で保存された場合でも保存安定性に優れ、且つ、優れた洗浄性(洗浄力や特に漂白力)を示す食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を含有する食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、(A)成分中における無水物の含有量が、60質量%以上である、食器洗浄機用洗浄剤組成物。(A)珪酸塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物(B)塩素系漂白剤(C)トリポリリン酸及びその塩から選ばれる化合物(D)ノニオン性界面活性剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器洗浄機で使用するための洗浄剤組成物に関するものである。特に業務用の食器洗浄機の使用に適した洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は、汚れた皿、グラス、料理器具などの食器を洗浄する設備であり、家庭やレストラン、喫茶店などの厨房で使用されている。通常、食器洗浄は、洗浄工程―濯ぎ工程の順で行われ、洗浄工程では、手洗い用食器洗浄剤と異なる無泡性或いは低泡性の食器洗浄機用洗浄剤が使用されている。さらに食器洗浄機用洗浄剤では、茶渋、コーヒーなどの変色した汚れに対する漂白性能を高めるために、漂白剤が配合されることがある。
【0003】
特許文献1には、水溶性アミノポリカルボキレートを含有する、漂白作用、酵素安定性に優れた、自動食器洗浄機に使用できる漂白洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の食器洗浄機の使用に際して洗浄剤は、粉体状態(袋詰めされた状態)、湿潤状態(ホッパー中で水と接触した状態)、溶液状態(洗浄用の希釈溶液とされた状態)といった様々な状態で保存・放置されることになるが、特許文献1の発明では、これらの保存・放置状態のいずれの場合であっても優れた保存安定性を維持することが難しい。その結果、洗浄力や特に漂白力についても十分な効果が得られなかった。
【0006】
従って、本発明の課題は、様々な状態で保存された場合でも保存安定性に優れ、且つ、優れた洗浄性(洗浄力や特に漂白力)を示す食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
下記(A)〜(D)成分を含有する食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、(A)成分中における無水物の含有量が、60質量%以上である、食器洗浄機用洗浄剤組成物を提供する。
(A)珪酸塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物
(B)塩素系漂白剤
(C)トリポリリン酸及びその塩から選ばれる化合物
(D)ノニオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な形態で保存された場合でも保存安定性に優れ、且つ、優れた洗浄性(洗浄力や特に漂白力)を示す食器洗浄機用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(A)成分>
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物に用いられる(A)成分は、珪酸塩(好ましくは珪酸のアルカリ金属塩)及び炭酸塩(好ましくは炭酸のアルカリ金属塩)からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物を含有し、(A)成分中における無水物の含有量が60質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)のものである。
【0010】
(A)成分の無機化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウムなどのアルカリ金属珪酸塩、及びこれらの無水物を挙げることができ、無水物であることが好ましく、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムがより好ましく、無水ケイ酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0011】
(A)成分は、
(A-1)珪酸塩から選ばれる1種以上のもの、
(A-2)炭酸塩から選ばれる1種以上のもの、
(A-3)珪酸塩から選ばれる1種以上のものと、炭酸塩から選ばれる1種以上のものとの組み合わせ、にすることができる。
【0012】
これらの中では、洗浄性及び保存安定性の観点から、(A)成分は、(A-3)が好ましく、無水炭酸ナトリウムと無水珪酸ナトリウムとを併用することがより好ましい。珪酸塩と炭酸塩とを併用する場合は、珪酸塩と炭酸塩との質量比は、珪酸塩/炭酸塩=10/90〜50/50が好ましく、20/80〜40/60がより好ましい。
【0013】
<(B)成分>
(B)成分の塩素系漂白剤としては、ジクロロイソシアヌール酸、ジクロロイソシアヌール酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌール酸カリウムなどの塩、トリクロロイソシアヌール酸、サラシ粉、高度サラシ粉、亜塩素酸ナトリウムなどの水系で次亜塩素酸又は亜塩素酸を発生しうるものを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(B)成分としては、ジクロロイソシアヌール酸ナトリウムなどのジクロロイソシアヌール酸塩が好ましい。
【0014】
<(C)成分>
(C)成分のうち、トリポリリン酸の塩としては、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。(C)成分としては、トリポリリン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
<(D)成分>
(D)成分のノニオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンオキシエチレンオキシプロピレングリコールなどを挙げることができ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンオキシエチレンオキシプロピレングリコールが好ましい。
【0016】
また、(D)成分は、洗浄性の観点から、下記一般式(I)で表されるノニオン性界面活性剤〔以下、(D1)成分という〕が好適に用いられる。
1−(AO)n−R2 (I)
〔式中、R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜24の炭化水素基である。nは平均付加モル数であり、1〜500の数である。AOは、同一又は異なっていてもよいオキシエチレン基、オキシプロピレン基、又はオキシブチレン基である〕。
【0017】
(D1)成分の一般式(I)中、R1、R2は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜24のアルキル基、より好ましくは水素原子、又は炭素数6〜18のアルキル基、特に好ましくは水素原子、又は炭素数8〜14のアルキル基である。また、一般式(I)中、nは平均付加モル数であり、好ましくは1〜400、より好ましくは1〜350、更に好ましくは1〜200、特に好ましくは1〜100の数である。また、一般式(D1)中、AOは、同一又は異なっていてもよく、好ましくはエチレン基、プロピレン基である。
【0018】
また、(D)成分は、洗浄性、無泡性や低泡性の観点から、下記一般式(II−1)で表されるノニオン活性剤、及び一般式(II−2)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤〔以下、(D2)成分という〕が好ましい。
HO(CH2CH2O)a(CH(CH3)CH2O)b(CH2CH2O)c (II−1)
HO(CH(CH3)CH2O)d(CH2CH2O)e(CH(CH3)CH2O)f (II−2)
〔式中、a、b、c、d、e及びfは、平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1〜350の数である〕。
【0019】
(D2)成分は、何れも、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)の合計中、EOを10モル%以上含むことが好ましく、これを満たすようにa、b、c、d、e及びfを選定することが好ましい。
【0020】
また、(D2)成分の重量平均分子量は、1,000〜15,000が好ましく、より好ましくは1,500〜6,000である。(D2)成分は、「プルロニック」、「プルロニックR」の商品名でBASF社から入手可能である。(D2)成分としては、低泡性の観点から、式(II−2)のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0021】
(D)成分は、仕上がり性の観点から、下記一般式(III−1)で表されるノニオン活性剤、及び一般式(III−2)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤〔以下、(D3)成分という〕が好ましい。
3−O−(EO)p−(PO)q−(EO)r−H (III−1)
〔式中、R3は炭素数8〜18の炭化水素基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。p、q、rはそれぞれ平均付加モル数を表し、p=1〜10、q=0.5〜5、r=1〜10である〕。
4−O−(EO)s−(PO)t−H (III−2)
〔式中、R4は炭素数8〜18の分岐鎖のアルキル基もしくは分岐鎖のアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。s、tはそれぞれ平均付加モル数を表し、s=4〜10、t=2〜10であり、0.3≦(t/s)≦1.5である。〕
【0022】
一般式(III−1)において、R3は炭素数10〜14の炭化水素基、更に炭素数10〜14の直鎖のアルキル基が好ましく、p=2〜8が好ましく、q=0.5〜4.5、更に1〜3、特に1〜2が好ましく、r=2〜8が好ましく、p+r=1〜30、更に2〜20、特に4〜15が好ましい。一般式(III−1)の非イオン界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(1.5)ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(1.5)ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(4.5)ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテルなどが挙げられる。ここで、当該化合物に関し、( )内はエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの平均付加モル数である(以下同様)。
【0023】
一般式(III−2)において、R4は炭素数10〜14の炭化水素基、更に炭素数10〜14の分岐鎖のアルキル基が好ましい。また、R4の炭素数10〜14の炭化水素基の中でも、炭素数10〜14の2級炭化水素基が好ましい。一般式(III−2)中、s=5〜9が好ましく、t=5〜9が好ましい。一般式(III−2)の非イオン界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(8.5)−sec−テトラデシルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
また、一般式(III−2)の化合物は、R4の分岐鎖(好ましくは2級)炭化水素基を有する分岐鎖(好ましくは2級)アルコールにEOを付加した後、POを付加することで合成できる。
【0025】
また、(D3)成分の重量平均分子量は、200〜5,000が好ましく、より好ましくは200〜2,000である。(D3)成分の中で、一般式(III−1)の化合物は「エマルゲン」の商品名で花王(株)から入手可能であり、一般式(III−2)の化合物は「ソフタノール」の商品名で日本触媒(株)から入手可能である。(D3)成分としては、仕上がり性の観点から、一般式(III−1)のノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0026】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、ビルダーと称される化合物、特に有機化合物を含有することができる。ビルダーの作用機構としては、金属キレート作用、アルカリ緩衝作用、及び固体粒子分散作用が重要である。なかでも、キレート剤を含有することが好ましい。
【0027】
キレート剤としては、無機系のキレート剤として、(C)成分以外にも、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、オルソリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩を用いることができる。
【0028】
その他、有機系のキレート剤として、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,2−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸の塩、
2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸の塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン−2,2,5,5−テトラカルボン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、スルホコハク酸、リンゴ酸、グルコン酸などの、クエン酸以外の有機酸の塩、
ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸/ポリマレイン酸共重合高分子化合物及びその塩などを用いることもできる。
【0029】
(C)成分以外のキレート剤を含有するときは、本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物中、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0030】
なお、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸の塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩などのアミノポリ酢酸などのように分子内に窒素原子を含む水溶性有機キレート剤の含有量は、洗浄性及び保存安定性の観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、使用しないことが望ましい。
【0031】
本発明の組成物では、さらに水素結合による吸水性を有する粉体の有機高分子化合物を含有することができる。具体的には、デキストリン、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビンガム、あるいはこれらの誘導体、加工デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどの合成高分子化合物などが挙げられる。これらの含有量は、保存安定性の観点から、本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物中、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0032】
その他、国際公開第99/58633号パンフレットに記載されているアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、酵素、漂白剤、消泡剤、防錆剤、ハイドロトロープ剤、表面改質剤、香料などを含有することができる。
【0033】
<食器洗浄機用洗浄剤組成物>
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(A)成分を、洗浄性の観点から、好ましくは45〜80質量%、より好ましくは50〜75質量%。更に好ましくは50〜70質量%含有する。
【0034】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(B)成分を、漂白性能の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜7質量%。更に好ましくは0.5〜5質量%、より更に好ましくは1〜3質量%含有する。
【0035】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(C)成分を、カルシウム捕捉能の観点から、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜50質量%。更に好ましくは30〜45質量%、より更に好ましくは30〜40質量%含有する。
【0036】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(D)成分を、洗浄性の観点から、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜30質量%。更に好ましくは0.1〜10質量%、より更に好ましくは0.5〜5質量%含有する。
【0037】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、固体や粉末状である。
【0038】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、使用にあたっては水などで適当な濃度に希釈した洗浄液として用いることができ、その場合には、0.05〜0.5質量%に希釈して用いることができる。
【0039】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、カールフィッシャー法にて測定される水分量(質量%)が5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。前記水分量は、(A)成分として珪酸塩などとして含水塩を含むものを用いた場合にも計測されることになる。
【0040】
本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物は、業務用及び家庭用の食器洗浄機用として使用することができるが、特に一度に大量に、かつ1日に何度も洗浄する業務用として適している。
【0041】
業務用の食器洗浄機で洗浄するときには、例えば、業務用食器洗浄機専用ホッパーに食器洗浄機用洗浄剤組成物が充填されたプラスチックなどの容器ごと決められた方向にセットして、或いはパウチ容器などに充填された食器洗浄機用洗浄剤組成物を業務用食器洗浄機専用ホッパーに移しかえる。そして、セットされた組成物に対して水や温水をスプレーやシャワーなどが噴霧され、溶解された洗浄液が業務用食器洗浄機内部へ供給され、食器の洗浄に使用される。
【0042】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用されることになる。本発明の組成物から調製された洗浄液は、保存安定性に優れ、有効塩素濃度の低下が少ないため、このような連続して循環させる使用態様においても優れた洗浄効果を得ることができる。
【実施例】
【0043】
表1に示した配合組成の食器洗浄機用洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で洗浄性、漂白性、保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
また各洗浄剤の水分%はカールフィッシャー法により測定を行った。測定は、平沼微量水分測定装置AQ7を用い、発生液としてクーロマットAK(林純薬工業(株))、対極液としてクーロマットCGK(林純薬工業(株))を用いた。
【0045】
〔1〕洗浄性評価
洗浄機として1ドアタイプの業務用食器洗浄機(三洋電機DW−230L型)を用い、複合モデル汚れ(蛋白質、油脂、デンプンの混合物A)を1枚当り5gを全面に塗布し、乾燥した磁性皿(直径200mm×高さ30mm)4枚について、洗浄温度60℃、洗浄剤組成物濃度0.2質量%、洗浄時間40秒、濯ぎ温度80℃、濯ぎ時間15秒の条件で洗浄した。乾燥後、磁性皿の外観を目視で観察し、下記の基準で洗浄性を判定した。
【0046】
5:磁性皿が4枚とも汚れが除去された
4:磁性皿が4枚とも殆ど(皿面積の90%以上)汚れが除去された
3:磁性皿が4枚とも汚れの除去が不十分である
2:磁性皿が4枚とも殆ど(皿面積の90%以上)汚れが除去されない
1:磁性皿が4枚とも全く汚れが除去されない
【0047】
〔2〕保存安定性評価
(2−1)評価1(粉末保存)
洗浄剤組成物を、袋状容器(材質:ナイロン/PET ラミネートフィルム)、形状(平袋、容量約3L)に2kg充填し、密封した状態で、50℃で20日間保存した後の有効塩素濃度を測定し、保存前の有効塩素濃度から、保存後の有効塩素残存率を求めた。有効塩素残存率から、以下の基準で保存安定性を評価した。この評価は、パウチ詰め製品のような形態での保存を想定した保存安定性の評価である。
【0048】
5:有効塩素残存率が90%以上
4:有効塩素残存率が70%以上90%未満
3:有効塩素残存率が50%以上70%未満
2:有効塩素残存率が30%以上50%未満
1:有効塩素残存率が30%未満
【0049】
(2−2)評価2(湿潤保存)
所定量(2kg)の洗浄剤組成物を、業務用コンベア式食器洗浄機DW2000R/L(三洋電機)のホッパーに投入し、洗浄機を、洗浄液濃度が0.1質量%となるような設定で運転し、初期有効塩素濃度(保存前の有効塩素濃度)を測定した。さらにホッパー内の洗浄剤が十分湿潤した状態で、運転を停止した。洗浄剤がホッパー内で湿潤した状態で放置し、3日後に同様に装置運転を行い、その時の有効塩素濃度を測定し、有効塩素残存率を求めた。評価1と同様の判定基準で保存安定性を評価した。この評価は、実使用場面で、ホッパー内の洗浄剤に水が接触した状態で放置された場合を想定した保存安定性の評価である。
【0050】
(2−3)評価3(溶液保存)
洗浄剤組成物の0.1質量%水溶液を調製し、50℃で3時間静置後の有効塩素濃度を測定し、有効塩素残存率を求めた。評価1と同様の判定基準で保存安定性を評価した。この評価は、ホッパーから供給された洗浄剤から調製された洗浄液についての保存安定性の評価である。
【0051】
〔3〕茶渋漂白性能評価
(茶渋汚れの調製)
メラミン製カップ(容量約150cc)に紅茶濃縮液(沸騰水1Lに対し、紅茶のティーバックを10個入れ、30分間煮出したものを室温まで冷ましたもの)を8分目まで入れ、1昼夜放置後、液を廃棄し、漂白試験を行った。
【0052】
(漂白性能評価)
所定量(2kg)の洗浄剤組成物を1ドアタイプの業務用食器洗浄機(三洋電機DW−230L型)のホッパーに投入し、洗浄機を、洗浄液濃度が0.1質量%となるような設定で運転し、洗浄温度60℃、洗浄剤組成物濃度0.1質量%、洗浄時間40秒、濯ぎ温度80℃、濯ぎ時間15秒の条件で20回空運転を行った。
【0053】
その後、上記茶渋汚れの付着したメラミンカップ4個をラック上に設置し、洗浄温度60℃、洗浄剤組成物濃度0.1質量%、洗浄時間40秒、濯ぎ温度80℃、濯ぎ時間15秒の条件で5回洗浄を行い、その外観を目視で観察し、下記の基準で洗浄性を判定した。
【0054】
5:メラミン製カップは4個とも茶渋が除去され白くなった
4:メラミン製カップは4個とも茶渋が除去されかなり白くなった(評価5よりも白さが劣っていた)
3:メラミン製カップは4個とも茶渋が除去されたが、主に角部分に茶色部分が一部残っていた
2:メラミン製カップは4個とも茶渋があまり除去されず、平面部分にも茶色部分がかなり残っていた
1:メラミン製カップは4個とも茶渋が除去されず茶色のままであった
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1〜7と比較例1〜2との対比から明らかなとおり、(A)〜(D)成分を含有していることにより、全ての測定項目において良い結果が得られた。
【0057】
実施例1〜4の対比から明らかなとおり、(A)成分として、無水炭酸ナトリウムと無水珪酸ナトリウムを組み合わせた方(実施例1及び4)が洗浄性は優れていた。
【0058】
実施例1〜6と実施例7との対比から明らかなとおり、水分量が少ない方(即ち、(A)成分として無水物のみを使用した方)が洗浄性と保存安定性は優れていた。
【0059】
実施例1〜4と実施例5、6との対比から明らかなとおり、分子内に窒素原子を含む溶性有機キレート剤を含まない方が、保存安定性及び茶渋漂白性能が優れていることがわかる。
【0060】
(注)表中の成分は以下のものである。
・ノニオン性界面活性剤1:
PO・EO・POブロックポリマー、Pluronic RPE2520(BASF社製)
・ノニオン性界面活性剤2:R4−O−(EO)s−(PO)t−H (III−2)(式中、R4は炭素数12〜14の2級アルキル基、S=7.0、t=8.5を示す)(原料名:ソフタノールEP7085 (株)日本触媒)
・NTA3Na:ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩(ディゾルビン A−92;アクゾノーベル社製)
・EDTA4Na:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩
・ポリマー分散剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体、ナトリウム塩:Sokalan CP5 Granules(BASF社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含有する食器洗浄機用洗浄剤組成物であって、(A)成分中における無水物の含有量が、60質量%以上である、食器洗浄機用洗浄剤組成物。
(A)珪酸塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物
(B)塩素系漂白剤
(C)トリポリリン酸及びその塩から選ばれる化合物
(D)ノニオン性界面活性剤
【請求項2】
(A)成分の含有量が45〜80質量%、(B)成分の含有量が0.1〜10質量%、(C)成分の含有量が20〜50質量%、(D)成分の含有量が0.1〜10質量%である請求項1記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が無水物である請求項1又は2記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がジクロロイソシアヌール酸及びその塩から選ばれる化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(A)成分が、珪酸塩から選ばれる1種以上のものと、炭酸塩から選ばれる1種以上のものとの組み合わせである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
食器洗浄機用洗浄剤組成物中の窒素原子を含む水溶性有機キレート剤の含有量が、10質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項7】
カールフィッシャー法により測定される水分量が5.0質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−280796(P2010−280796A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134633(P2009−134633)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】