説明

食物採取に用いる備品用グリップ材並びにグリップ及びその成形方法

【課題】加齢による握力減少や病気、怪我などにより握力が低下した人が、僅かな握力でも使用でき、食事を楽しむことを可能にする、食物採取に使用する箸、スプーン、フォーク、ナイフなどの備品のグリップを与えるグリップ材、並びに該グリップ材により形成されたオリジナルグリップ及びその成形方法の提供。
【解決手段】(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第1剤と上記(A)成分及び(C)白金族金属系触媒を含む第2剤とからなる2成分型室温硬化性シリコーン組成物を用いる備品用グリップ材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や怪我、病気などにより握る力の弱くなった人のための箸、フォーク、スプーン、ナイフなど、食物を採取するための備品のグリップに用いるグリップ材、並びに該グリップ材を用いて形成されたその人にオリジナルなグリップ及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、高齢者や怪我、病気などにより握る力の弱くなった人のための箸、フォーク、スプーン、ナイフなどの食物を採取するための備品は、握りやすく、また握る力が弱くても保持できるように備品のグリップ部をEPR製スポンジで被覆したり、ラグビー状ゴムボールを取り付けるなどの工夫がなされてきた。しかし、どれも満足するレベルではなく、例えばEPR製スポンジは、繰り返しの煮沸洗浄、滅菌に対する耐久性に難があり、ラグビー状ゴムボールは、繰り返しの煮沸洗浄、滅菌に対する耐久性は問題ないが、重いという欠点があった。
【0003】
一方、筆記具用グリップ材としては、特開平4−59300号公報(特許文献1)に、形状記憶樹脂を用いたグリップ材が提案されているが、これは形状記憶させる時に加熱が必要であるという問題があり、特開平9−272294号公報(特許文献2)には、シリコーンゴム発泡体を用いるものが提案されているが、発泡剤の分解残渣の安全性の問題により食物採取に用いる備品用としては不適である。
【0004】
【特許文献1】特開平4−59300号公報
【特許文献2】特開平9−272294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、加齢による握力減少や病気、怪我などにより握力が低下した人が、僅かな握力でも使用でき、食事を楽しむことを可能にする、食物採取に使用する箸、スプーン、フォーク、ナイフなどの備品のグリップを与えるグリップ材、並びに該グリップ材により形成されたオリジナルグリップ及びその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、形成に加熱の必要がなく、耐熱性に優れ、人体に接触しても害がなく、消毒のために繰り返し煮沸洗浄しても耐え得る2成分型室温硬化性シリコーン組成物、特に付加反応硬化型の2成分型室温硬化性シリコーン組成物からなるグリップ材が好適であることを知見した。
この場合、2成分型のシリコーン組成物は、ベースポリマーを含む第1剤と、混合された際にベースポリマーを架橋する硬化剤又は硬化触媒を含む第2剤とに分けて調製、保存され、使用時に第1剤と第2剤とを混合して用いるものであり、この混合により硬化が開始されるものであるが、特に、組成物の針入度が30〜100、混合後の可使時間が20秒〜5分の2成分型室温硬化性シリコーン組成物が、混練り性や硬化特性などの作業性に優れ、食物採取に用いる備品用オリジナルグリップの形成に好適であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記に示す食物採取に用いる備品用グリップ材並びにグリップ及びその成形方法を提供する。
〔請求項1〕
2成分型室温硬化性シリコーン組成物からなる食物採取に用いる備品用グリップ材。
〔請求項2〕
2成分型室温硬化性シリコーン組成物の可使時間が20秒〜5分であり、その組成物の針入度が30〜100である請求項1記載のグリップ材。
〔請求項3〕
2成分型室温硬化性シリコーン組成物が、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含む第1剤と、
上記(A)成分、及び
(C)白金族金属系触媒
を含む第2剤とからなり、
上記(B)成分の含有量が、全(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モルの範囲となる量であり、(C)成分の含有量が、(A)、(B)成分を反応、硬化させる有効量であって、使用時に上記第1剤と第2剤とを混合させることからなる請求項1又は2記載のグリップ材。
〔請求項4〕
(A)成分が、室温でオイル状のオルガノポリシロキサン及び室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンを含有する請求項3記載のグリップ材。
〔請求項5〕
更に、(D)石英粉末を含有する請求項3又は4記載のグリップ材。
〔請求項6〕
更に、(E)流動パラフィンを含有する請求項3〜5のいずれか1項記載のグリップ材。
〔請求項7〕
請求項1〜6のいずれか1項記載のグリップ材を用いて形成された食物採取に用いる備品用グリップ。
〔請求項8〕
請求項1〜7のいずれか1項記載の2成分型室温硬化性シリコーン組成物を食物採取に用いる備品のグリップを設けるべき部位に巻き付けると共に、この巻き付けた組成物を所要時間手で握りしめることにより、当該握りしめた形状に硬化、成形することを特徴とする食物採取に用いる備品用グリップの成形方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグリップ材は、2成分を混合した際の混練り性や硬化特性などの作業性に優れ、得られた食物採取に使用する箸、スプーン、フォーク、ナイフなどの備品のグリップは、耐熱性に優れ、人体に接触しても害がなく、この備品を用いることにより、加齢による握力減少や病気、怪我などにより握力が低下した人が、僅かな握力でも使用でき、食事を楽しむことを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の食物採取に用いる備品用グリップ材は、2成分型室温硬化性シリコーン組成物からなるものであり、該組成物としては、付加反応硬化型であることが好ましい。このような付加反応硬化型の2成分型室温硬化性シリコーン組成物としては、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)白金族金属系触媒
を含有するもので、更に詳しくは、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含む第1剤(なお、下記(C)成分は含まない)と、
上記(A)成分、及び
(C)白金族金属系触媒
を含む第2剤(なお、上記(B)成分は含まない)とからなり、
上記(B)成分の含有量が、全(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モルの範囲となる量であり、(C)成分の含有量が、(A)、(B)成分を反応、硬化させる有効量であって、使用時に上記第1剤と第2剤とを混合させるものであることが好ましいが、場合によっては(A)成分を含み、(B)、(C)成分を含まない第1剤と、(B)、(C)成分を含み、(A)成分を含まない第2剤との組み合わせであってもよい。
【0010】
ここで、(A)成分は、シリコーン組成物のベースポリマー(主剤)であり、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。このようなアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(i)で示されるものを挙げることができる。
1aSiO(4-a)/2 (i)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0011】
ここで、上記R1で示されるケイ素原子に結合した非置換又は置換の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0012】
この場合、R1のうち平均して少なくとも2個、好ましくは平均2〜20個、より好ましくは平均2〜10個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、全有機基(即ち、上記の非置換又は置換1価炭化水素基)R1中、0.0001〜20mol/100g、好ましくは0.001〜10mol/100g、特に0.01〜1mol/100g程度とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものが好ましい。
【0013】
このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、樹枝状(三次元網状)が挙げられ、好ましくは主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0014】
また、このオルガノポリシロキサンは、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またこれらの重合体の混合物である。(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは1種単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0015】
また、このオルガノポリシロキサンの23℃における粘度は、100mPa・s以上であることが好ましく、一般に言うところのオイル状のもの、生ゴム状のものも含まれる。本発明のグリップ材としては、混練性を高めるために、室温(23℃)で粘度100〜100,000mPa・sのオイル状のオルガノポリシロキサンと、室温(23℃)で重合度2,000〜12,000の生ゴム状のオルガノポリシロキサンを併用することが好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定できる(以下、同じ)。また、重合度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値として測定し得る。この場合、オイル状オルガノポリシロキサンと生ゴム状オルガノポリシロキサンとは、質量比として10:90〜90:10、特に25:75〜75:25の割合で併用することが好ましい。
【0016】
(B)成分は、グリップ材を構成するシリコーン組成物の架橋剤であり、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、Si−H基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0017】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化付加反応により組成物を硬化させる架橋剤として作用するものであり、下記平均組成式(ii)
2bcSiO(4-b-c)/2 (ii)
(式中、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基である。またbは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個程度)、より好ましくは3〜100個のケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を有することが必要である。
【0018】
ここで、R2としては、式(i)中のR1と同様の基を挙げることができるが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものがよい。
【0019】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0020】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜1,000、特に3〜300程度のものを使用することができる。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの23℃における粘度が1〜100,000mPa・sであることが好ましく、特に10〜5,000mPa・sであることが好ましい。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0021】
本組成物において、このケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モル、特に0.8〜5モルとなる量であり、0.5モルより少ないと、十分な架橋構造に至らず、10モルよりも多いと、硬化したゴム材料の強度が低下してしまう。
【0022】
(C)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSi−H基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この白金属金属系触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。
なお、この白金族金属系触媒の配合量は触媒有効量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)及び(B)成分の合計質量に対して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度配合することが好ましい。
【0023】
本発明のグリップ材には、更に下記(D)成分及び/又は(E)成分を配合することが好ましい。
【0024】
(D)成分の石英粉末は、平均粒子径が0.1〜20μmであることが好ましく、特に好ましくは0.5〜15μmである。平均粒子径が20μmを超えると、流動性を抑制する能力が低下する場合があり、0.1μm未満であると、組成物が硬くなってしまうことがある。また、石英粉末の形状は特に限定されず、球状、平板状、針状、不定形状でもよい。なお、この平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における重量平均粒子径で表すことができる。
【0025】
(D)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して50〜600質量部が好ましく、特に好ましくは100〜400質量部である。(D)成分の配合量が少なすぎると組成物の針入度が高くなり、柔らかすぎるために2成分を混練りするのが難しく、かつ形状を保持できなくなる場合があり、多すぎると組成物の針入度が低くなり、硬すぎるために2成分を混練りするのが難しくなる場合がある。
【0026】
(E)成分の流動パラフィンは、組成物の粘度を下げ、取り扱い易さ、即ち作業性を向上させるとともに、硬化物の硬度を下げる効果がある。
(E)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、特に好ましくは10〜50質量部である。(E)成分の配合量が5質量部未満であると、取り扱い易さが低減し、100質量部を超えると、(E)成分がブリードすることがある。
【0027】
本発明のグリップ材には、上記の(A)〜(E)成分の他にも、無機顔料、有機染料などの着色剤、香料、離型剤等の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0028】
更に、本発明のグリップ材には、その作業可能時間を調整するために、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのオルガノシロキサン化合物;2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアセチレン化合物や、エンイン化合物、トリアゾール類、フォスフィン類等の硬化抑制剤を含有することが好ましい。
【0029】
2成分型室温硬化性シリコーン組成物は、上述したように、(A)成分、(B)成分を含有する第1剤と(A)成分、(C)成分を含有する第2剤とを使用時に混合して使用するものが好ましい。なお、(D)、(E)成分及びその他の成分は、上記第1剤及び第2剤のどちらかに配合してもよいし、その両方に配合してもよい。
【0030】
また、(A)成分を第1剤と第2剤とに分けて2成分型とする場合、(A)成分は質量比として70:30〜30:70、特に60:40〜40:60の割合で第1剤と第2剤に配合することが好ましい。
この場合、第1剤と第2剤とを混合した場合の混合物の態様はパテ状であることが好ましく、更に第1剤と第2剤もそれぞれパテ状であることが、手作業にて容易に混合し得、取り扱い性に優れていることから好ましい。
本発明のオリジナルグリップの調製方法は、上記第1剤と第2剤とを所定の時間、例えば手作業等により均一混合した後、食物採取用備品のグリップ部(グリップを設けたい部位)に巻き付け、この巻き付けた組成物を所定の時間、手で握りしめる。しばらく室温にて放置することにより、目的とするオリジナルグリップを成形することが可能となる。
【0031】
本発明の2成分型室温硬化性シリコーン組成物は、第1剤と第2剤を混合した後、時間を追って硬くなるが、手作業が可能な時間(可使時間)は、20秒〜5分、特に30秒〜4分が好ましい。20秒より短いと、一連の作業を行なうことが困難なことがあり、5分より長いと、作業効率が悪くなることがある。なお、この可使時間は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンや白金族金属系触媒の量、更に硬化抑制剤の添加等により調整できる。
【0032】
本グリップ材の適用時(硬化前)の針入度は30〜100、特に40〜80であることが好ましい。針入度が100より大きいと柔らかすぎるために、形状を保持することができないことがあり、30より小さいと硬すぎるために、混練り性が著しく低下することがある。なお、針入度は、JIS K2220ちょう度試験方法に準じて測定できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部は質量部を示し、平均粒径はレーザー光回折法による粒度分布測定により測定した値を示し、粘度は回転粘度計により測定した23℃における値を示す。
【0034】
各実施例において、浸入度及び可使時間の測定は、下記に示す方法により測定した。
〈針入度〉
JIS K2220ちょう度試験方法に準じ、1/4円錐形状のコーンを使用して測定した。
〈可使時間〉
可使時間は、シリコーン組成物を均一に混合した時点からこの混合組成物が、手作業で混練りできなくなるまでの時間として測定した。
【0035】
〔実施例1〕
第1剤は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサン50部と、ジメチルシロキサン単位99.500モル%、メチルビニルシロキサン単位0.475モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン50部に、流動パラフィンを30部、平均粒径が5μmの結晶性シリカを350部混合し、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン0.004部、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(Si−H 0.005mol/g)8部からなる。第2剤は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサン50部と、ジメチルシロキサン単位99.500モル%、メチルビニルシロキサン単位0.475モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン50部に、流動パラフィンを30部、平均粒径が5μmの結晶性シリカを350部混合し、更に、硬化触媒として塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として50ppmを混合したものからなる。
第1剤の針入度と第2剤の針入度は、それぞれ51、47で、これらを1対1で配合したところ、可使時間は40秒であり、ゴム硬度(JISタイプA)が83のゴム材が得られた。
更に、第1剤と第2剤を混合後、スプーンの持ち手部分に巻き付け、手で握り、10分間放置したところ、手にフィットするオリジナルの持ち手を作ることができた。
【0036】
〔実施例2〕
第1剤は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン50部と、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン50部に、流動パラフィンを30部、平均粒径が5μmの結晶性シリカを150部混合し、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン0.004部、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン8部、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(Si−H 0.005mol/g)2部からなる。第2剤は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が5,000mPa・sのジメチルポリシロキサン50部と、ジメチルシロキサン単位99.850モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン50部に、流動パラフィンを30部、平均粒径が5μmの結晶性シリカを150部混合し、更に、硬化触媒として塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体を白金金属として50ppmを混合したものからなる。
第1剤の針入度と第2剤の針入度は、それぞれ82、79で、これらを1対1で配合したところ、可使時間は180秒であり、ゴム硬度(JISタイプA)が12のゴム材が得られた。
更に、第1剤と第2剤を混合後、スプーンの持ち手部分に巻き付け、手で握り、10分間放置したところ、手にフィットするオリジナルの持ち手を作ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分型室温硬化性シリコーン組成物からなる食物採取に用いる備品用グリップ材。
【請求項2】
2成分型室温硬化性シリコーン組成物の可使時間が20秒〜5分であり、その組成物の針入度が30〜100である請求項1記載のグリップ材。
【請求項3】
2成分型室温硬化性シリコーン組成物が、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
を含む第1剤と、
上記(A)成分、及び
(C)白金族金属系触媒
を含む第2剤とからなり、
上記(B)成分の含有量が、全(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜10モルの範囲となる量であり、(C)成分の含有量が、(A)、(B)成分を反応、硬化させる有効量であって、使用時に上記第1剤と第2剤とを混合させることからなる請求項1又は2記載のグリップ材。
【請求項4】
(A)成分が、室温でオイル状のオルガノポリシロキサン及び室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサンを含有する請求項3記載のグリップ材。
【請求項5】
更に、(D)石英粉末を含有する請求項3又は4記載のグリップ材。
【請求項6】
更に、(E)流動パラフィンを含有する請求項3〜5のいずれか1項記載のグリップ材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のグリップ材を用いて形成された食物採取に用いる備品用グリップ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の2成分型室温硬化性シリコーン組成物を食物採取に用いる備品のグリップを設けるべき部位に巻き付けると共に、この巻き付けた組成物を所要時間手で握りしめることにより、当該握りしめた形状に硬化、成形することを特徴とする食物採取に用いる備品用グリップの成形方法。

【公開番号】特開2010−47643(P2010−47643A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210805(P2008−210805)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(802000019)株式会社新潟TLO (27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】