説明

食物繊維を含むパン類の製造方法

【課題】製パン性改良のために特別な加工をしていない食物繊維を使用した場合であっても、品質の良好なパン類を製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】食物繊維を含む生地を調製した後、該生地を分割するまでの時間が0〜20分であることを特徴とする食物繊維を含むパン類の製造方法である。食物繊維がふすま又は若葉粉であることを特徴とする前記パン類の製造方法である。食物繊維の使用量は穀粉と食物繊維の合計100質量部中35質量部以下であり、21〜35質量部の多量の食物繊維を含ませる場合に好ましく使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物繊維を含むパン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類にふすま等の食物繊維を含ませると製パン性が悪くなることが知られている。
これを改良するために、食物繊維等を加工する方法が知られており、例えば、活性乳酸菌を小麦ふすまと小麦胚芽、小麦粉、食塩水からなる混合物に接種し小麦ふすまと胚芽を十分に水和させ、これをパン生地中に混合する方法(特許文献1参照)、食物繊維や胚芽を製パン工程で使用する水、イースト及び糖類と共に予め混合して液状物をつくり、その液状物を醗酵させた後、得られた醗酵液を用いてパン生地を製造する方法が知られている(特許文献2参照)。
これらの方法は、製パン工程とは別に食物繊維を加工する工程が必要であり、あまり効率的な方法ではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開昭54−117055号公報
【特許文献2】特開平5−316925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、製パン性改良のために特別な加工をしていない食物繊維を使用した場合であっても、品質の良好なパン類を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、食物繊維を含む生地を調製した後、該生地を分割するまでの時間が0〜20分であれば良好な食物繊維を含むパン類を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、食物繊維を含む生地を調製した後、該生地を分割するまでの時間が0〜20分であることを特徴とする食物繊維を含むパン類の製造方法である。
また、食物繊維がふすま又は若葉粉であることを特徴とする前記パン類の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
食物繊維を含む品質の良好なパン類を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
製パン方法として、代表的なストレート法及び中種法により本発明の方法を説明する。
ストレート法の製パン工程は、原料を混捏し生地を調製した後、生地を90〜120分間醗酵し(フロアタイム)、該生地を分割してさらに25分間程度醗酵を行い(ベンチタイム)、その後モルダー等で整形してさらに30分間程度醗酵し(ホイロ)、焼成することからなる。
本発明をストレート法で行う場合は、食物繊維を含む生地を混捏し生地を調製した後、分割までの醗酵時間(フロアタイム)を全くとらないか、20分以内にすることにより行い、それ以外の工程は従来のストレート法と同様でよい。
【0008】
中種法の製パン工程は、原料の一部を混捏し、中種生地を調製し4時間程度醗酵させ、該生地に残りの原料を加えさらに混捏して生地を調製し20分程度醗酵し(フロアタイム)、該生地を分割してさらに20分間程度醗酵を行い(ベンチタイム)、その後モルダー等で整形してさらに30分間程度醗酵し(ホイロ)、焼成することからなる。
中種法の場合は、残り原料を中種生地に加えるときに食物繊維を中種生地に加える。
残り原料としては食物繊維のみであってもよい。
本発明を中種法で行う場合は、食物繊維を含む生地を混捏し生地を調製した後、分割までの醗酵時間(フロアタイム)を全くとらないか、20分以内にすることにより行い、それ以外の工程は従来の中種法と同様でよい。
【0009】
いずれの方法でも、食物繊維を含む生地を調製してから分割までの醗酵時間を全くとらないか、20分間以内にすることが必要である。
液種法や湯捏ね法等、ストレート法や中種法以外の製パン方法においても食物繊維を含む生地を調製してから分割までの醗酵時間を全くとらないか、20分間以内にすることで本発明の効果を得ることができる。
また、フロアタイムではなく分割後のベンチタイムやホイロ時間を短縮しても本発明の効果を得ることはできない。
【0010】
本発明で使用できる食物繊維として、ふすまや若葉粉を挙げることができる。
ふすまとして小麦、ライ麦又はライ小麦などのふすまの粉末や砕片を使用することができる。
ふすまは、未加工のふすま以外にも焼成ふすまや石臼式粉砕機で粉砕したものも使用することができる。
本発明において若葉粉として小麦、そば、だったんそば又は大麦などの若葉の粉末や砕片などを使用することができる。
食物繊維としておからも使用できるが、おからの場合は本発明の方法でなくても良好なパンを得ることができる。
これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
本発明おいて食物繊維の使用量は、穀粉と食物繊維の合計100質量部中35質量部以下である。
小麦全粒粉をそのまま使用した場合、ふすまの使用量は穀粉と食物繊維の合計100質量部中20質量部程度になるが、本発明の方法によれば、さらに多量の食物繊維を使用することができ、本発明では、食物繊維の使用量が穀粉と食物繊維の合計100質量部中21質量部以上35質量部以内であるような多量の食物繊維を使用する場合に好ましく用いることができる。
【0012】
本発明おいて使用できる穀粉としては、パン類に使用できる穀粉であれば特に限定されず、小麦粉の他、そば粉、ライ麦粉、ライ小麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末を使用することができる。
また、本発明おいて使用できるその他の副資材はパン類に使用できるものであれば特に限定されない。
【0013】
本発明の方法により製造できるパン類としては、イースト醗酵工程を含むパン類であれば特に限定されず食パン、菓子パンなどのオーブンで焼成するパン類やイーストドーナツなどのフライするパン類を挙げることができる。
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜3]ストレート法による試験
表1に示す配合の原料(ショートニングを除く)を低速2分間、中速3分間、高速1分間混捏しショートニングを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速5分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0015】
【表1】

【0016】
表2に示すフロアタイムをとり、450gに分割しベンチタイムを25分間とった。
その後、生地をモルダーで整形し、温度38℃、湿度85%で30分間ホイロをとり、210℃で25分間焼成して食パンを得た。
ふすまは石臼式粉砕機で粉砕したものも使用した。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
フロアタイムが0〜20分間の場合に良好な食パンを得ることができた。
【0019】
[実施例4〜5]ふすまの種類の比較試験
実施例1において、ふすまを生ふすま及び焼きふすまに変更し、フロアタイムを20分間に変更した以外は実施例1と同様にして食パンを得た。
結果を表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
生ふすま及び焼きふすまでも良好な食パンを得ることができた。
【0022】
[実施例6〜8、比較例4〜6]イーストドーナツによる試験
表4に示す配合(ショートニングを除く)の原料を低速2分間、中速3分間混捏しショートニングを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速1分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0023】
【表4】

【0024】
表5に示すフロアタイムをとり、50gに分割しベンチタイムを20分間とった。
その後、生地を整形し、温度32℃、湿度75%で40分間ホイロをとり、180℃で90秒間反転して90秒間フライしてイーストドーナツを得た。
ふすまは石臼式粉砕機で粉砕したものも使用した。
体積は製品3個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表5に示す。
【0025】
【表5】

【0026】
フロアタイムが0〜20分間の場合に良好なイーストドーナツを得ることができた。
【0027】
[実施例9〜11、比較例7〜9]菓子パンによる試験
表6に示す配合(マーガリンを除く)の原料を低速2分間、中速3分間、高速1分間、混捏しマーガリンを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速3分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0028】
【表6】

【0029】
表7に示すフロアタイムをとり、50gに分割しベンチタイムを25分間とった。
その後、生地を整形し、温度38℃、湿度85%で40分間ホイロをとり、210℃で9分間焼成して菓子パンを得た。
ふすまは石臼式粉砕機で粉砕したものも使用した。
体積は製品3個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表7に示す。
【0030】
【表7】

【0031】
フロアタイムが0〜20分間の場合に良好な菓子パンを得ることができた。
【0032】
[実施例12]中種法による試験
表8に示す配合の原料を低速2分間、中速2分間混捏し生地温度24℃に捏ね上げた。
その後、温度27℃、湿度75%で4時間醗酵し中種を得た。
【0033】
【表8】

【0034】
前記中種に表9に示す配合(ショートニングを除く)の原料を低速2分間、中速3分間、高速1分間、混捏しショートニングを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速5分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0035】
【表9】

【0036】
20分間フロアタイムをとり、450gに分割しベンチタイムを20分間とった。
その後、生地をモルダーで整形し、温度38℃、湿度85%で30分間ホイロをとり、210℃で25分間焼成して食パンを得た。
ふすまは石臼式粉砕機で粉砕したものを使用した。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表10に示す。
【0037】
【表10】

【0038】
中種法でも良好な食パンを得ることができた。
実施例12では、本捏のときに小麦粉を加えていないが、中種の一部の小麦(20質量部)を本捏のときに加えても同様に良好な食パンを得ることができた。
【0039】
[実施例13〜15、比較例10〜12]小麦若葉粉による試験
表11に示す配合の原料(ショートニングを除く)を低速2分間、中速3分間、高速1分間混捏しショートニングを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速5分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0040】
【表11】

【0041】
表12に示すフロアタイムをとり、450gに分割しベンチタイムを25分間とった。
その後、生地をモルダーで整形し、温度38℃、湿度85%で30分間ホイロをとり、210℃で25分間焼成して食パンを得た。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表12に示す。
【0042】
【表12】

【0043】
小麦若葉粉末を使用した場合でもフロアタイムが0〜20分間の場合に良好な食パンを得ることができた。
【0044】
[参考例1〜6]微粉砕おからペーストによる試験
表13に示す配合の原料(ショートニングを除く)を低速2分間、中速3分間、高速6分間混捏しショートニングを加え、さらに低速1分間、中速3分間、高速12分間混捏し生地温度27℃に捏ね上げた。
【0045】
【表13】

【0046】
表14に示すフロアタイムをとり、450gに分割しベンチタイムを25分間とった。
その後、生地をモルダーで整形し、温度38℃、湿度85%で30分間ホイロをとり、210℃で25分間焼成して食パンを得た。
体積は製品1個をナタネ置換法により測定した値である。
食感評価は熟練のパネラー10名により行った。
結果を表14に示す。
【0047】
【表14】

【0048】
微粉砕おからペーストを使用した場合はフロアタイムが0〜20分間の場合に良好な食パンを得ることができたが20分間を超えても同様であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維を含む生地を調製した後、該生地を分割するまでの時間が0〜20分であることを特徴とする食物繊維を含むパン類の製造方法。
【請求項2】
食物繊維がふすま又は若葉粉であることを特徴とする請求項1に記載のパン類の製造方法。