説明

飲料の製造方法、および飲料

【課題】 農作物(特にスイカ)の無駄をなくし、農作物そのものの市場価格が低い場合であっても、他の商品に加工し、且つ付加価値を見出すことにより、育成者において安定した収入を確保できるようにする。
【解決手段】 スイカなど、アスコルビナーゼを含有する果物および野菜の少なくとも何れかをすり潰す擂り潰し工程と、擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れか、又は擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れかから取得した搾汁を70℃以上で、1分〜30分間過熱殺菌する加熱殺菌工程とを含む飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイカその他の果実および野菜の搾汁を用いた飲料の製造方法並びに飲料に関し、特にスイカ特有の栄養成分に着目して健康増進を企図することのできる飲料の製造方法および飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から果実や野菜は、調味料、ジャムなどの加工食品、飲料の原料として広く使用されている。中でもスイカは、その果汁に8%程度の糖質の他、少量のリンゴ酸、アルギニン、シトルリン、カロチン、リコピン、リノール酸、及びビタミンA、B1、C、カリウム、カルシウム、鉄等のミネラル類を含んでおり、特にシトルリンは、利尿作用を促進する効果が認められていることから、古来より腎臓疾患に特効がある民間薬または健康補助食品としても利用されている。
【0003】
果実を用いた加工食品は多数提供されているが、特にスイカに着目してみれば、当該スイカの果肉から搾り取った果汁を煮詰めてスイカ糖を作成することが知られている。
【0004】
かかるスイカ糖に関し、従前においては蜂蜜入りスイカ糖が提案されている。具体的には、特許文献1(特開2003−300895号公報)において、腎臓疾患に有効な民間薬または健康補助食品として利用されるスイカの果汁を加工して、少ない量で果汁を相当量飲んだ場合と同等またはそれ以上の有効成分を効率的に摂取できるようにし、また、保存性を高めることにより、季節に関係なく、一年中利用できる蜂蜜入りスイカ糖を提供するべく、無農薬で栽培されたスイカから果肉を取り出し、果肉を搾って果汁をつくり、果汁を水飴と同等か近似の粘度を有するまで弱火で煮詰め、煮詰めたものが冷えて固まる前に所要量の蜂蜜を混ぜて製造した蜂蜜入りスイカ糖が提案されている。
【0005】
また、各種果物の搾り汁は、様々な清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料など、様々な飲料の原料にも使用されている。
【0006】
例えば特許文献2(再表02/067702号公報)では、果汁等の植物成分の豊かな味わいと炭酸の刺激的なさわやかさを兼ね備えた炭酸飲料を提供するべく、炭酸飲料中、植物成分を10〜80重量%含み、炭酸ガスを2容量%より多く含み、可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で8度以下であり、高甘味度甘味料を含み、それによって付与される甘味が全甘味の25重量%以上(砂糖甘味換算)であり、全甘味量が砂糖甘味換算で8〜14重量%とすることが提案されている。
【0007】
また特許文献3(特開2001−190252号公報)では、免疫賦活作用があるといわれている野菜及び/又は果物の汁液を含有し、かかる野菜や果実のえぐ味やくさみ等が感じられず、風味が良くて飲みやすい飲料を提供するべく、タマネギ、キャベツ、ナガネギ、ホウレンソウ、ニンジン、パセリ、ナス、ピーマン、キュウリ、ダイコン、カブ、ニンニク、バナナ、リンゴ、キウイ、パイナップル、スイカ、ブドウ、ナシ、レモン、イチゴ、ナツミカン、カキ、及びミカンからなる群から選ばれる一種以上の野菜及び/又は果物の汁液と乳原料とを含有する飲料であって、飲料全体に対してショウガの汁液をストレート換算で0.001〜0.05重量%の割合で含有する飲料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−300895号公報
【特許文献2】再表02/067702号公報
【特許文献3】特開2001−190252号公報報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
農作物の収穫量、特に露地栽培された農作物の収穫量は天候の影響を受けやすく、またその食味も天候の影響を受ける事から、市場における価格や育成者である農家の収益は、天候により大きく変動してしまうのが実情である。特に、農作物の市場における価値は、天候の影響のみならず、様々なブームやゴシップの影響も受ける事から、育成者における収益は相当に不確定であるのが実情である。
そして農作物の市場価値が低い場合には、それを収穫して市場に流通させるコストをまかなう事が出来ず、収穫・出荷すればする程赤字になってしまうこともあり、このような場合には、敢えて収穫を行わず、そのまま放置する事も行われていた。
【0010】
そこで本発明では、このような農作物の無駄をなくし、農作物そのものの市場価格が低い場合であっても、他の商品に加工し、且つ付加価値を見出すことにより、育成者において安定した収入を確保できるようにするべく、飲料の製造方法、および飲料を提供する事を第一の課題とする。また、長期保存可能とすることで、露地栽培の果物が流通しない時期に、当該果物の加工品を流通させ得るようにすることで、付加価値を見出す事ができるようにした飲料の製造方法、および飲料を提供する事を第二の課題とする。
【0011】
ここで、育成した果実の利用方法としては、前記特許文献に記載されているように、各種加工食品や飲料の原料として利用することが考えられるが、その製造に際しては果肉の取り出しを行わなければならず、加工が容易といいえるものではなかった。更に、果肉を取り出してこれを原料として用いたとしても、何ら他の成分を添加しなければ、実質的に果物を食したのと同じ成分しか摂取することができず、これでは加工した食品や飲料の付加価値を向上させる事は出来ない。
【0012】
そこで本発明は、加工が容易である飲料の製造方法、および飲料を提供する事を第三の課題とし、さらに加工を簡易としながらも、単に果実を食した場合には摂取することのできる成分を含ませる事のできる飲料の製造方法、および飲料を提供する事を第四の課題とする。
【0013】
そしt、果物の中でもスイカの市場価値や売れ行きは、その年ごとに天候の影響を受けやすいという特質がある。そこで本発明は、果物の中でも、特に気候による価格の変動が著しいスイカを有効に利用することのできる飲料の製造方法、および飲料を提供する事を第五の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明ではアスコルビナーゼを含有する果物から果汁を搾取し、当該果汁を用いるとともに、加熱殺菌処理による影響を極力減じた飲料の製造方法、および飲料を提供する。
【0015】
即ち、本発明では前記課題の少なくとも何れかの課題を解決するべく、果物および野菜の少なくとも何れかの搾り汁を含有する飲料の製造方法であって、当該製造方法は、アスコルビナーゼを含有する果物および野菜の少なくとも何れかをすり潰す擂り潰し工程と、擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れか、又は擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れかから取得した搾汁を70℃以上、望ましくは90〜120℃で、1分〜30分間程度過熱殺菌する加熱殺菌工程とを含む飲料の製造方法を提供する。
【0016】
かかる本発明において使用されるアスコルビナーゼを含有する果物および野菜としては、人参、カリフラワー、春菊、かぼちゃ、キャベツ、バナナ、りんご等、一般に食用となる部位にアスコルビナーゼを含有するものの他、果実以外の部位に当該アスコルビナーゼを含有する果物及び植物が含まれる。例えば、スイカは通常食用の対象となる果肉部分以外の皮の部分にアスコルビナーゼが含有されており、よって本発明において、係るスイカを丸ごと、好適に使用することが出来る。特に、スイカを使用する場合、通常は食用に使用されていない部位を使用し得ることから、本発明で発揮される効果が顕著なものとなる。
【0017】
また擂り潰し工程における果物や野菜の擂り潰し具合は、特に限定されるものではなく、少なくともこれらの材料から搾り汁を取得可能な程度にすり潰されれば良い。この擂り潰しは、野菜及び/又は果物をミキサーなどを用いて磨砕するか、或いは包丁などで細かく粉砕したり、或いはハンマーなどを用いて潰す事によって行う事が出来る。
【0018】
また、前記加熱殺菌工程では、擂り潰した果物や野菜、または擂り潰した果物や野菜から搾り出した搾汁を、70〜130℃で1秒〜5分間、望ましくは30秒から3分間過熱して殺菌し、長期保存が可能なようにする。殺菌には、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、ジャケット付きタンク等の通常の殺菌機を用いる他、各種鍋等の容器中で加熱しても良い。
【0019】
以上のような本発明に係る飲料の製造方法によれば、アスコルビナーゼを含有する果物及び/又は野菜(以下、「原料」ともいう)を擂り潰した原料成分中には、当然のことながらアスコルビナーゼが存在し、このアスコルビナーゼはビタミンC分解酵素であることから、当該原料成分中のビタミンCを破壊する事になる。しかしながら、長期保存可能な飲料とするためには、殺菌処理が必要不可欠であり、特に加熱殺菌の場合には、もともと熱によりビタミンCが破壊される事から、実質的には何ら悪影響は生じない。
【0020】
むしろ原料としてスイカを使用する場合には、当該アスコルビナーゼは、一般には食用に供されないスイカの白色の部分及び外皮部分(本明細書中では、両者をあわせて「外皮部分」という)に含まれている所、当該外皮部分にはアスコルビナーゼの他に、特殊アミノ酸であるシトルリンが、一般に食用に供されている果肉部分以上に含まれていることから、外皮部分をも使用することにより、アスコルビナーゼによるビタミンCの破壊の代わりに、シトルリンによる効能を享受する事が出来る。かかるシトルリンの効果としては、利尿作用と火照りをさますとの効果があり、更に当該シトルリンは、生体反応を円滑にするなどの働きを持つ遊離アミノ酸であり、シトルリンとアルギニンの変換過程で一酸化窒素を発生させ、この一酸化窒素が血管を拡張させ、血流量を増やし、また血管壁が厚くなるのを防ぎ、血管の硬化も抑制することから、動脈硬化予防、血流促進、筋肉の成長、肌の老化防止、精力増強等の効能を期待できる。
【0021】
而して、シトルリンを大量に含有する飲料を製造する為には、スイカを皮ごと、即ち収穫したスイカを洗浄してそのまま、果肉に含まれている種子も含めて擂り潰してスイカ搾汁を取得する事が望ましい。
【0022】
かかる飲料の製造方法では、果物および野菜の少なくとも何れかとして選択される果実がスイカであり、前記擂り潰し工程では、外皮と種子を含んで当該スイカをすり潰すことが望ましい。
【0023】
このようにスイカを丸ごと擂り潰した場合には、一般に食用に供されない外皮部分(本明細書においては、外側の外皮のみならず、その内側の白色部分を含む。以下同じ)にはアスコルビナーゼが含まれるが、この部分を使用することにより、シトルリンを含ませる事ができる。またスイカを丸ごと使用することにより、果肉を取り出したり、種を取り除くといった煩わしさを解消しながらも、むしろ果肉以外の部位(外皮部分と種)に多く含まれる成分を取り入れることができる。ただし、望ましくはスイカを擂り潰した後迅速に、或いは擂り潰しながら加熱殺菌を行えば、アスコルビナーゼによるビタミンCの分解を抑止する事ができることから望ましいものとなる。
【0024】
更に、ビタミンCを含有する他の成分、例えばレモンやオレンジの搾り汁などを配合する場合には、前記加熱殺菌処理後に行う事が望ましい。熱によるビタミンCの分解を阻止する為である。
【0025】
上記のようにスイカを丸ごと擂り潰した場合には、甘み成分が含まれていない外皮部分も含まれることから、自ずと甘み(糖度)が低下する事が考えられる。よって本発明においてスイカを丸ごとすり潰す場合には、前記擂り潰し工程よりも後の工程に、澱粉や糖類等の甘味成分を添加する甘味成分添加工程を含む事が望ましい。外皮部分における白色部分に含まれるスイカ糖などの糖分は微量である事から、当該糖分を補う為である。
【0026】
かかる甘味成分としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を使用することができる。具体的には、アセスルファムカリウム、アラビノース、アリテーム、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、エリスリトール、オリゴ−N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、キシリトール、キシロース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、グリセロール、クルクリン、グルコース、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スタキオース、ズルチン、ソルボース、タウマチン、ステビア抽出物、テアンデオリゴ糖、トレハロース、ナイゼリアベリー抽出物、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、ネオテーム、ネオトレハロース、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、パラチニット、パラチノース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フルクトース、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、マンニトール、ミラクルフルーツ抽出物、ラカンカ抽出物、ラクチトール、ラクトース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元水飴、酵素処理カンゾウ、酵素処理ステビア、酵素分解カンゾウ、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等の甘味成分の1種又は2種以上を使用することができる。この中で、特に蜂蜜はブドウ糖、果糖、オリゴ糖などの糖分の他、カリウム・カルシウム・鉄・銅・マンガン・ナトリウム・マグネシウム・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・葉酸などのミネラル・ビタミン類を含むことから、健康維持・管理の点で望ましいものとなる。更に、甘味成分は、例えば蜂蜜と砂糖などを組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、上記飲料の製造方法で使用するスイカは、栽培期間中の天候により糖度も異なる事から、これを飲料の原料として使用し、飲料の品質を一定にする場合には、擂り潰したスイカ、またはその搾り汁の糖度を測定し、必要に応じて糖類などの甘味成分を添加することが望ましい。よって、上記飲料の製造方法では、前記甘味成分添加工程に先立ち、擂り潰したスイカまたは擂り潰したスイカから取得したスイカ搾汁の糖度を測定する糖度測定工程を含み、前記甘味成分添加工程では、糖度測定工程における測定結果から添加する甘味成分の添加量を調整することが望ましい。
【0028】
特に本発明は、冷夏など栽培時の天候に恵まれない場合におけるスイカを有効に利用するものであるから、一般に天候に恵まれず、糖度が高くないスイカを使用する関係上、飲料としたときの糖度を調整する為に、当該糖度測定工程を含み、またその測定結果を反映させて甘味料を添加するようにしたものである。スイカは固体ごとに糖度が異なる事から、当該糖度測定工程を実施する事により安定した糖度の飲料を製造する事ができる。
【0029】
更に本発明では、前記課題の少なくとも何れかの課題を解決する為に、スイカを、外皮と種子を含んで擂り潰して取得したスイカ搾汁と、甘味成分とを含有し、屈折式糖度計による測定値(Brix値)が、6度〜14度、望ましくは7度〜12度である飲料を提供する。スイカを丸ごと(即ち外皮と種子を含んで)擂り潰す事により、その搾り汁には、前述の通り外皮部分からのシトルリンや、種からのタンパク質、脂肪(リノール酸)、ビタミンE、ビタミンBを含有させることができる。
【0030】
かかる飲料(の製造)に使用するスイカは、果肉が赤くなった収穫時期のスイカに限らず、収穫時期に至らない未成熟のスイカであっても良い。甘味成分を配合する事で、飲料としたときの甘さを十分確保する事ができるためである。特に、このような未成熟のスイカを使用しえることにより、育成途中で間引きした果実を使用して飲料を製造する事ができ、これにより農作物の無駄を省く事もできる。なお、甘味成分としては、前述の通りである。
【0031】
また、このスイカを用いた飲料にあっては、更に擂り潰したニンニク、又はその搾り汁を配合する事ができる。両者の配合割合は、擂り潰したスイカの使用料100容積部に対して、擂り潰したニンニクを15〜70容積部、望ましくは擂り潰したスイカの使用料100容積部に対して、擂り潰したニンニクを30〜50容積部とする事ができる。当該割合におけるニンニクの配合割合が15容積部未満であると、ニンニクの成分であるアリシンに由来する効能である、血液循環促進、消化液分泌促進、発汗、利尿、緩下、殺菌、鎮咳、去痰、駆虫などの作用が十分得られないおそれがあり、一方でニンニクの配合割合が70容積部を越えると、ニンニク由来の臭気が強すぎて食味に影響を及ぼす為である。なお、「容積部」とは、本明細書中、容積の割合を示す。
【0032】
また、配合するニンニクは擂り潰したものである事が望ましい。ニンニクを「すり潰す」ことにより、ニンニク中に含まれる「アリイン」が「アイリナーゼ」酵素に分解されて「アリシン」となり、この「アリシン」がビタミンB1と結合して、熱に強く、腸内吸収率の高い活性型ビタミンB1である「アリチアミン」とすることができる為である。一方、仮にニンニクをすり潰さずに配合して加熱殺菌を行った場合には、「アイリナーゼ」酵素が失活してしまい「アリイン」は「アリシン」に変化せずに残留し、ビタミンB1も破壊されてしまう為である。
【0033】
更に、擂り潰したニンニク、又は擂り潰したニンニクから抽出したニンニク搾汁、若しくはこれ等を添加した擂り潰したスイカとの混合成分、又は擂り潰したスイカから取得したスイカ搾汁との混合搾汁(以下、これらを「ニンニク含有成分」とする)を加熱殺菌する場合には、食用油脂分を添加すると共に、70℃〜100℃で加熱殺菌を行う事が望ましい。食用油脂分を配合することにより、前記「アリシン」が油脂分と結合して「脂質アリシン」となり、これがビタミンEと同じ働きをすることができ、更に70℃〜100℃で加熱する事により、「アホエン」「スルフィド類」という有効成分(脂溶性有機イオウ化合物)が得られる。この脂溶性有機イオウ化合物は、強い抗酸化力をもち、滋養強壮、食欲増進、末梢血管拡張、抗血栓作用、抗コレステロール作用、脳活性、抗ガン作用等として、様々な有効性を発揮することになる。
【0034】
そして本発明に係る飲料を製造する際には、更に擂り潰したニンニクを擂り潰したスイカと混合し、この混合成分を70℃〜100℃℃以上で、1分〜30分間過熱殺菌してから、その搾汁を取得してなる事が望ましい。
【0035】
なお、擂り潰したスイカと擂り潰したニンニクとを混合し、これを過熱することにより、その混合成分中の果肉部分に含まれる成分を液状部分(搾汁となる部分)に溶出させ、この溶出した成分を飲料中に含ませる事もできる為である。
【0036】
以上のようにすり潰されたスイカ、すり潰されたニンニク、またはすり潰されたスイカとすり潰されたニンニクとの混合物とは、所要の処理が行われた後に、必要に応じて濾過などにより果肉などの残渣が取り除かれて、それぞれスイカ搾汁、ニンニク搾汁、混合搾り汁となる。なお、この搾り汁中には、好みに応じて果肉などを含ませたままにしておいても良い。
【発明の効果】
【0037】
上記本発明の飲料の製造方法、特にスイカ搾汁含有飲料の製造方法によれば、冷夏などの天候やその他の理由等により十分な市場価値が得られないスイカであっても、これを有効利用することで無駄をなくし、他の商品に加工し、且つ付加価値を見出すことにより、育成者において安定した収入を確保できるようにした飲料の製造方法、および飲料が提供される。
【0038】
また、この製造方法では、加熱殺菌により長期保存可能となっており、これにより露地栽培のスイカが流通しない時期に、当該果物の加工品を流通させることができ、市場における優位性を確保して経済効果の大きい、果実飲料の製造方法、および飲料を提供する事ができる。
【0039】
更に、本発明に係る飲料の製造方法では、収穫したスイカを洗浄し、そのまま原料として使用することができることから加工が容易であり、さらに加工を簡易としながらも、単に果実を食した場合には摂取することのできる成分を含ませる事のできる飲料の製造方法、および飲料となっている。
【0040】
そして、果物の中でもスイカの市場価値や売れ行きは、その年ごとに天候の影響を受けやすいという特質があることから、本発明では、果物の中でも、特に気候による価格の変動が著しいスイカを有効に利用することのできる飲料の製造方法、および飲料を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第一の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図
【図2】第二の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図
【図3】第三の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面に基づき本発明に係る飲料5を、その製造方法と共に説明する。図1は第一の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図であり、図2は第二の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図であり、図3は第三の実施の形態に係る製造方法を示す工程流れ図である。
【0043】
図1〜3に示した各実施の形態に係る飲料5の製造方法では、何れも、アスコルビナーゼを含有する果物および野菜の少なくとも何れかをすり潰す擂り潰し工程10と、擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れか、又は擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れかから取得した搾汁を70℃以上で、1分〜30分間過熱殺菌する加熱殺菌工程20とを含んでいる。
【0044】
まず図1に示す実施の形態では、原料としてスイカ1とニンニク2とを使用し、これらをミキサー3などの破砕機に投入して擂り潰し、擂り潰し工程10を行っている。この擂り潰し工程10ですり潰されたスイカ1とニンニク2は加熱する為の容器に投入され、必要に応じて糖度を測定の上、甘味成分としての蜂蜜を添加することにより甘さを調整し、加熱殺菌工程20において加熱殺菌を行う。加熱殺菌後の成分は、漏斗などのろ過器4を使用してろ過し(ろ過工程30)、そのろ液を飲料5とする。
【0045】
かかる製造方法において、甘味成分である蜂蜜は、加熱殺菌工程20の前に配合されているが、当該蜂蜜自体、既に殺菌処理が行われている場合には、当該加熱殺菌工程20の後、即ちろ過工程30の前後に、当該蜂蜜を添加しても良い。
【0046】
また、原料の1つであるニンニク2をすり潰す際、又は擂り潰した後には、食用に供されている各種植物又は動物性の油成分6を添加して、これを加熱することが望ましい。擂り潰したニンニク2と油成分6を加熱する事により生じる脂溶性有機イオウ化合物の強い抗酸化力により、滋養強壮、食欲増進、末梢血管拡張、抗血栓作用、抗コレステロール作用、脳活性、抗ガン作用等が得られる為である。
【0047】
原料の1つであるスイカ1は、その外皮部分にビタミンC分解酵素であるアスコルビナーゼを含有していることから、一般的に赤い果肉部分に含まれるビタミンCは、当該アスコルビナーゼにより分解される。しかしながら、このビタミンCは何れにせよ加熱殺菌工程20で分解される事から、当該アスコルビナーゼが混入する事については何ら問題は生じない。むしろ、この外皮部分をもすり潰す事により、当該外皮部分に含まれる特殊アミノ酸(遊離アミノ酸)であるシトルリンを取り込むことができる。かかるシトルリンは、アルギニンとの変換過程で一酸化窒素を発生させ、この一酸化窒素が血管を拡張させ、血流量を増やし、また血管壁が厚くなるのを防ぎ、血管の硬化も抑制することから、動脈硬化予防、血流促進、筋肉の成長、肌の老化防止、精力増強等の効能が得られる。
【0048】
更に、スイカ1を丸ごとすり潰す事から、その果肉部分に点在する種子も含まれる。このスイカ1の種子は、リノール酸やタンパク質が非常に多く、ビタミンB群やEが豊富に含まれており、漢方において解熱作用、潤腸作用、老化防止、動脈硬化の予防、強精、イライラを鎮める鎮静作用があるとされる薬材である。
【0049】
よって、本実施の形態の製造方法におけるスイカ1の擂り潰し工程10では、当該スイカ1の種の外殻が割れる程度に擂り潰し、スイカ1の種子が含有する成分を有効に抽出できるようにすることが望ましい。
【0050】
而して、本実施の形態に係る飲料5の製造方法によれば、スイカ1を丸ごとすり潰す事から、その使用に際して果肉を取り出すなどの面倒が無く、むしろ一般に食用に供される果肉以外の部分に含まれる有効成分を効果的に取り込むことができる。よって、この製造方法で得られる飲料5を飲む事により、外皮部分に基づく、動脈硬化予防効果、血流促進効果、筋肉の成長効果、肌の老化防止効果、精力増強効果、および種子に基づく解熱作用効果、潤腸作用効果、老化防止効果、動脈硬化の予防効果、強精効果、イライラを鎮める鎮静作用効果を得る事ができる。
【0051】
そして、この擂り潰し工程10ではニンニク2も一緒に擂り潰している事から、多くの工程を経る事無くニンニク2に由来する成分を取り込むことができ、更に加熱に際して油分を添加することにより、脂溶性有機イオウ化合物の強い抗酸化力に基づく、滋養強壮効果、食欲増進効果、末梢血管拡張効果、抗血栓作用効果、抗コレステロール作用効果、脳活性効果、抗ガン作用効果などを得る事ができる。
【0052】
ただし、上記製造方法では、スイカ1とニンニク2とを一緒に擂り潰している事から、それぞれの原料に適した擂り潰し状態とするためには、原料の投入タイミングを異ならせるより他に無い。しかしながら、この場合には擂り潰し時間を早める事が出来ないことから、望ましい成分が転換してしまうおそれも払拭する事はできない。
【0053】
そこで、各原料ごとに擂り潰し時間を調整する場合には、図2に示すように、各原料ごとに擂り潰し工程10を実施する事が望ましい。特に、この図2に示すように各原料ごとに擂り潰し工程10を実施する場合には、更に加熱殺菌工程20も別に行う事ができる。その結果、例えばスイカ1の擂り潰し工程10では、当該スイカ1の種が割れるまで擂り潰しを行い、当該擂り潰したスイカ1の加熱殺菌工程20では、殺菌を実施できる程度、望ましくは90℃〜130度で分から10分間ほど加熱殺菌を行う。一方、ニンニク2の擂り潰し工程10では、ニンニク2が粉砕される程度に簡易に行ったり、或いは粉砕に際して油成分を添加しながらすり潰す。そして擂り潰したニンニク2には、擂り潰し工程10で油成分を添加していなければこの段階で添加し、70℃〜100℃で、30分程度加熱殺菌を行い、その仮定で脂溶性有機イオウ化合物を生じさせる。そしてこれらを混合したものをろ過し、そのろ液を飲料5とする事ができる。これにより、各材料ごとに最適な成分を抽出する事ができ、その結果製造される飲料5が発揮する効果も高いものとなる。なお、この工程においても前記実施の形態1と同じように、糖分が測定されて所要の蜂蜜を添加して、製品(飲料5)の品質を一定に保つ事ができる。
【0054】
さらに上記実施の形態に関連し、図3ではニンニク2を加熱せずに、そのまま使用した例を示している。即ち、スイカ1は擂り潰し工程10で擂り潰し、これを加熱殺菌する。一方、ニンニク2は、もともと殺菌効果が高い事から、これを擂り潰した後に、加熱殺菌する事無く、そのままろ過工程30に搬送する。よって、ろ過工程30では、擂り潰して加熱殺菌されたスイカ1と、擂り潰したニンニク2が処理され、そのろ液が飲料5として使用される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記本発明により、天候などの影響により農産物の市場価値が低い場合、特に冷夏などにおいてスイカ1の市場価値が低い場合であっても、これを畑の中に残留・廃棄することなく、有効に利用することができる。
【0056】
特に、スイカ1を原料として用い、これを丸ごと本発明に係る製造方法で利用することにより、通常食されない部位である外皮部分や種子に含まれる栄養分を抽出する事ができ、これにより、単にスイカ1として食する場合とは異なる市場価値を発揮させる事ができる。
【0057】
よって、本発明は農業分野において貢献できるのみならず、飲料5製造分野や健康食品製造分野に新たな飲料5を提供するものである。
【実施例1】
【0058】
本実施例では、前記図1に示したような第一の実施の形態に示す方法と近似する方法で飲料5を製造し、製造した飲料5について食品成分分析を行った。
【0059】
即ち、スイカ1を丸ごと擂り潰して得たスイカ1抽出液200容積部と、ニンニク2を擂り潰して得たニンニク2抽出液100容積部と、アカシアから取得した蜂蜜100容積部とを混合し、これを100℃で20分間過熱して殺菌し、飲料5を製造した。よって、特にこの実施例では、スイカ1とニンニク2とをそれぞれ別に擂り潰し、それぞれの抽出液を得てから、これらと蜂蜜を混合して飲料5を製造した。製造に使用したスイカ1抽出液の糖度は6.0であったが、上記製造方法によって製造した飲料5の糖度は約14度であった。
【0060】
このようにして得られた飲料5の食品成分分析を行った結果を、表1に示す。
【表1】

【実施例2】
【0061】
この実施例では、各成分の配合を以下のように変更して、前記実施例と同じように飲料5を製造し、その食品成分を分析した。
スイカ1を丸ごと擂り潰して得たスイカ1抽出液300容積部
ニンニク2を擂り潰して得たニンニク2抽出液100容積部
アカシアから取得した蜂蜜100容積部
【0062】
この実施例に使用したスイカ1抽出液の糖度は5.8度であり、製造した飲料5の糖度は約13度であった。
【表2】

【符号の説明】
【0063】
1 スイカ
2 ニンニク
3 ミキサー
4 過器
5 飲料
6 油成分
10 擂り潰し工程
20 加熱殺菌工程
30 ろ過工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
果物および野菜の少なくとも何れかの搾り汁を含有する飲料の製造方法であって、当該製造方法は、
アスコルビナーゼを含有する果物および野菜の少なくとも何れかをすり潰す擂り潰し工程と、
擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れか、又は擂り潰した果物および野菜の少なくとも何れかから取得した搾汁を70℃以上で、1分〜30分間過熱殺菌する加熱殺菌工程とを含むことを特徴とする、飲料の製造方法。
【請求項2】
前記果物および野菜の少なくとも何れかから選択される果実はスイカであり、前記擂り潰し工程では、外皮と種子を含んで当該スイカを擂り潰し、
更に前記擂り潰し工程よりも後の工程に、甘味成分(甘味成分として澱粉や糖類)を添加する甘味成分添加工程を含む、請求項1に記載の飲料の製造方法。
【請求項3】
前記甘味成分添加工程に先立ち、擂り潰したスイカまたは擂り潰したスイカから取得したスイカ搾汁の糖度を測定する糖度測定工程を含み、
前記甘味成分添加工程では、糖度測定工程における測定結果から添加する甘味成分の添加量を調整する、請求項2に記載の飲料の製造方法。
【請求項4】
更に、前記加熱殺菌工程に先立ち、擂り潰したスイカに擂り潰したニンニクを混合するニンニク成分混合工程を含み、前記加熱殺菌工程では、この混合成分を70℃以上で、1分〜30分間過熱殺菌する、請求項3に記載の飲料の製造方法。
【請求項5】
原料となる果物および野菜の少なくとも何れかとしてスイカが選択された飲料であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法で製造された飲料。
【請求項6】
スイカを、外皮と種子を含んで擂り潰して取得したスイカ搾汁と、甘味成分とを含有し、屈折式糖度計による測定値(Brix値)が、6〜14度であることを特徴とする飲料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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