説明

飲料への配合に適した核酸素材及びその製造方法

【課題】核酸の摂取を目的とした飲料又は液状食品において、DNAを高濃度で含有し、DNAを高濃度で水に溶解させた場合にも低粘度であり、且つDNAの分子量が1000〜30000Daである画分を60〜95%含有する核酸素材、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】エンド型ヌクレアーゼでDNAを加水分解して、DNAの分子量が1000〜30000Daである画分を60〜95%含有し、該核酸素材のDNAの含有率が80%(w/v)以上である分解調製物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の摂取のための飲料や液状食品への配合に適した、DNAの分子量が1000〜30000Daである画分を60〜95%含有し、DNAの含有率が80%(w/v)以上である溶解性に優れた核酸素材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)があり、これらは全ての生物に存在している。DNAの構成物質はデオキシリボヌクレオチドであり、デオキシリボース、リン酸及び核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン及びチミン)の三成分から成る。デオキシリボースに核酸塩基が結合し、デオキシリボースがホスホジエステル結合により直鎖状に結合することでDNAの鎖状高分子が構成されている。一方、RNAの構成物質はリボヌクレオチドであり、リボース、リン酸及び核酸塩基(アデニン、グアニン、シトシン及びウラシル)の三成分から成る。このようなDNAやRNAの構造や遺伝子を解読する研究については盛んに行われているが、核酸自体が持つ生理効果については、これまであまり研究されておらず、解明されていない。
【0003】
生体に必要なヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチド)は体内合成されることから、食品中のデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)は、栄養的価値はないものと思われてきた。このため、核酸の生理効果の研究については、あまり実施されてこなかった。
【0004】
ところが、近年の研究によって、食物中の核酸は、ヌクレオチドやヌクレオシドまで分解された後に吸収され、体内の核酸合成に再利用されることが多いことが判明し、下記のような多くの生理効果があることも判ってきた。このため核酸は、第七の準栄養素として摂取することが重要であるとされるようになった。
【0005】
即ち、核酸の構成成分であるヌクレオチド、ヌクレオシドには、次のような生理効果があると考えられている。
(1)コレステロール代謝への影響、離乳期の成長促進、脂肪代謝改善などの栄養改善効果。
(2)病気や癌に対する抵抗力増強、細胞活性の低下(老化)防止、リンパ系胸腺の発達促進などの免疫能改善効果。
(3)肝の再生、蛋白質の分解抑制、肝虚血時のエネルギー代謝の改善、肝障害に対する修復などの肝エネルギー代謝の賦活及び肝の再生効果。
(4)小腸粘膜の保護、下痢後の腸の回復などの腸管の保全効果。
(5)保湿効果、UV吸収の阻害、皮膚賦活などの皮膚に対する保護作用効果。
(6)老化に伴う脳機能の低下を抑制する効果。
【0006】
一方、従来、さけ、ます、にしん、たら、いか、ほたて貝等の魚貝類の精巣は、一般的に白子と称され、その一部が食用やミール原料として利用されているが、その殆どは廃棄処分されており未利用資源であった。しかしながら、魚介類の精巣は精子核の主要な構成成分であるヌクレオプロテイン(核蛋白、DNAと塩基性蛋白であるプロタミンやヒストンの複合体)を豊富に含んでおり、DNAの原料資源としては極めて有望である。
【0007】
本出願人は、魚介類精巣(白子)成分の生理効果に着目して、当該魚介類精巣よりヌクレオプロテインを抽出、精製し、これを利用して耐久力及び生殖能力増強用の栄養補助食品(特公平6−22467号:特許文献1)や、耐久力増強用栄養補助食品(特許第1901558号:特許文献2、特許第2567231号:特許文献3)を研究開発した。
【0008】
このように本出願人は、魚介類精巣を有効に活用することを目的に研究開発を進めた。その結果、白子成分であるヌクレオプロテインをさらに精製したDNAにも、脳機能低下抑制作用のあることを新たに見出して、脳機能低下抑制剤または脳機能低下抑制食品を研究開発し(特開2004−143110号公報:特許文献4)、またDNAには耐久力増強作用があることを見出して、耐久力増強剤を研究開発した(特開2003−235504号公報:特許文献5)。
【0009】
DNAが示すこれらの作用をヒトや動物の体内で発揮させるためには、効果的にDNAを摂取することが望ましい。効果的にDNAを摂取可能とする方法としては、DNAを高濃度で含有する素材を食品中に含有させればよく、例えば、清涼飲料水やドリンク等の飲料、あるいは水を含有する液状食品にDNAを溶解した状態で含有させてこれを摂取する方法が考えられる。
【0010】
これに類似した例としては、前述のヌクレオプロテイン(核蛋白)を用いて特開2003−325149号公報「水溶性核蛋白入り健康ドリンク」、および特開2004−16143号公報「水溶性核タンパク質分解物の製造方法」が出願されている(特許文献6、特許文献7)。これらは、白子から抽出したヌクレオプロテインに含まれる塩基性蛋白をプロテアーゼで加水分解した後、同じくヌクレオプロテインに含まれるDNAをエキソ型ヌクレアーゼで加水分解し、塩基性蛋白質及びDNAの加水分解物の混合物をドリンクに添加するものである。
【0011】
一方、本願出願人は、天然のDNAをヌクレアーゼにより処理して所望とする分子量分布のDNA調製物を得る方法を特開2006−187262号公報(特許文献8)に開示している。この公報の実施例では、鎖長5〜7のオリゴヌクレオチドを主体とするDNA分解調製物、100〜10000bpのDNAを含む分解調製物、数十〜1000bpのDNAを含む分解調製物、数十〜600bpのDNAを含む分解調製物、300bp以下のDNAを含む分解調製物、100bp以下のDNAを含む分解調製物が得られた点が記載されている。
【特許文献1】特公平6−22467号公報
【特許文献2】特許第1901558号明細書
【特許文献3】特許第2567231号公報
【特許文献4】特開2004−143110号公報
【特許文献5】特開2003−235504号公報
【特許文献6】特開2003−325149号公報
【特許文献7】特開2004−16143号公報
【特許文献8】特開2006−187262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先に述べたとおり、DNAは多様な生理効果を示すことから、健康食品などとして利用されている。DNAが健康食品などとして効率よく利用されるためには、ドリンク等の飲料あるいは液状の食品に溶解させた状態で摂取できるようにすることが好ましい。しかし、飲料への配合を目的としてDNAを高濃度で水に溶解させた場合、水溶液の粘度が増加して流動性が著しく低下すること、あるいは水溶液がゲル化して飲料あるいは液状の食品への混合が不可能となる問題が生じる。また、DNAをコラーゲンやビタミンC(アスコルビン酸)等を含む飲料あるいは液状の食品に溶解させた場合、沈殿や澱が生じることがある。清澄であること、又は澱がないことが要求される飲料や液状食品の場合には、前述のコラーゲンやビタミンCと併用することで沈殿や澱が生じることが問題となる。
【0013】
このようなDNAの水溶液の粘性増加やゲル化の問題は、DNAの分子量を小さくすることで解決可能であると考えられるが、従来知られている化学反応や酵素を用いる方法ではDNAがモノヌクレオチド或いはヌクレオシドに分解されるため、物質の安定性が低くなり、DNAが本来有している生理効果についても得られなくなる可能性が考えられる。
【0014】
一方、前述の特開2003−325149号公報や特開2004−16143号公報では、核タンパク質をプロテアーゼおよびヌクレアーゼで加水分解する方法が記されている。しかしながら、これらの公開公報は核蛋白質の製造方法であり、そこから核酸を分離、精製する方法については記載がない。したがって、これらの公開広報の方法で得られる核蛋白質はDNAの含有量が低く、DNAの摂取を目的として飲料や液状食品に配合する場合には、該核蛋白質を大量に添加しなければならない問題が生じる。
【0015】
一方、特許文献8には、ヌクレアーゼを利用したDNAの加水分解反応を制御して分解調製物中のDNAの分子量の範囲を調節可能である点が開示されているものの、飲料や液状の食品に配合するための水に対する溶解性及び水溶液の安定性に優れた核酸の分子量の範囲についてはなんら開示されていない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、核酸の摂取を目的とした飲料又は液状食品において、DNAを高濃度で含有し、DNAを高濃度で水に溶解させた場合にも低粘度であり、且つDNAの分子量が1000〜30000Daである画分を60〜95%含有する核酸素材、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、核酸を含有する飲料又は液状の食品に、DNAを高濃度で配合する方法について鋭意検討を行った結果、DNAを高濃度で水に溶解させた場合に低粘度を保ち、DNA中に、分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有し、且つ核酸素材(粉末等の固形分とした際の)全体に対するDNAの含有率が80%(w/v)以上である、飲料への配合に適した核酸素材を見出した。このような核酸素材はこれまでに例が無く、本発明は本発明者らにかかる新たな知見によってなされたものである。
【0018】
本発明にかかる飲料あるいは液状の食品への配合用の核酸素材は、DNA中に、分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有し、且つ核酸素材(固形分として)全体に対するDNAの含有率が80%(w/v)以上であることを特徴とする核酸素材である。
【0019】
本発明にかかる溶解性に優れ、飲料への配合に適した核酸素材は、20%(w/v)水溶液中で、10℃〜25℃での粘度が30mPa・s未満であり、20%(w/v)水溶液を4℃で24時間間保存した後もゲル化していない条件を満たす核酸素材である。
【0020】
また、本発明にかかる飲料あるいは液状の食品への配合用の核酸素材の製造方法は、エンド型ヌクレアーゼでDNAを加水分解して、DNAに分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有し、該核酸素材のDNAの含有率が80%(w/v)以上である分解調製物を得る工程を有することを特徴とする、核酸素材の製造方法である。
【0021】
上記のエンド型ヌクレアーゼによるDNAの加水分解は、マグネシウムイオンの存在下で行うことによりエンド型ヌクレアーゼの活性を賦活化することができる。
【0022】
上記のエンド型ヌクレアーゼで加水分解するDNAは、魚介類の白子から抽出したDNAを使用することができる。
【0023】
上記の方法により製造された核酸素材を使用することで、DNAを高濃度で含有し、粘性増加やゲル化といった問題が起こらず、コラーゲンやビタミンC(アスコルビン酸)等と併用した場合にも清澄を保ち、沈殿や澱を生じることのない核酸含有飲料あるいは核酸含有液状食品を提供することが可能である。
【0024】
なお、前述の特開2003−325149号公報や特開2004−16143号公報では、核タンパク質をプロテアーゼおよびヌクレアーゼで加水分解する方法が記されている。しかしながら、これらの公開公報は核蛋白質の製造方法であり、そこからDNAを分離、精製する方法については記載がない。したがって、これらの公開広報の方法で得られる核蛋白質はDNAの含有量が低く、飲料や液状食品にDNAを高濃度で配合することは困難である。一方、本発明はDNAの含量が80%(w/v)以上である核酸素材であり、本発明とこれらの公開広報は、根本的に技術的思想を異にするものと判断される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、核酸を含む飲料や液状の食品を製造する際に好適に用い得る核酸素材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明にかかる核酸素材は、粉末などの固体(固形)、クリーム状などの半固体あるいは水などの適当な溶媒での溶液などの形態として食品製造に提供することができる。先に示したDNAの含有量は、核酸素材を固形分とした際の総容量を基準としている。本発明にかかる核酸素材は、固形状態で用いて水溶液とした際に、20%(w/v)水溶液中において、10℃〜25℃における粘度が30mPa・s未満であり、20%(w/v)水溶液を4℃で24時間間保存した後もゲル化しないことを特徴とする。このとき、粘度を測定するための装置としては、例えば音叉型振動式粘度計(エーアンドデー社製、SV−10)を使用すれば良い。
【0027】
本発明にかかる核酸素材は、核酸素材中のDNAの全量に対して、分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有することを特徴とする。すなわち、核酸素材中に含まれるDNAの総重量に対して、1000〜30000Daである画分中のDNAの総重量が60〜95%の割合を占めていることを特徴とする。ここで分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準プルラン換算の分子量である。核酸素材中に含まれるDNAの総重量に対する1000〜30000Daである画分中のDNAの割合は、GPCでの分析結果を示すチャートのエリア面積の割合により求めることができる。
【0028】
分子量30001Da以上の画分の割合が大きくなる程、DNA水溶液の粘度低下の効果が得られなくなる。一方、分子量1000Da未満の画分の割合が大きくなると、ヌクレオチド、ヌクレオシド、或いはそれらの分解物が生成される確率が高くなり、DNAで確認されている生理効果が得られなくなる可能性が考えられる。
【0029】
また、本発明にかかる固形分としての核酸素材中に含まれるDNAの割合は80%(w/v)以上である。
【0030】
本発明にかかる核酸素材の製造で使用するエンド型ヌクレアーゼとしては、例えば、プロテアーゼP「アマノ」3G(天野エンザイム株式会社製)に含まれるヌクレアーゼが挙げられる。尚、これらのヌクレアーゼが分離、精製されている必要は無い。また、DNA切断用として遺伝子組み換え技術などにおいて利用されているエンド型ヌクレアーゼのなかから、本発明における分子量分布を得るための活性を有し、食品製造用として適するものであれば、そのようなエンド型ヌクレアーゼを選択して用いることができる。
【0031】
本発明にかかる核酸素材の製造で使用するマグネシウムイオンは、食品添加物として使用可能なマグネシウムであれば良く、例えば、塩化マグネシウム六水和物、L−グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸三マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
次に、エンド型ヌクレアーゼの酵素反応条件について説明する。サケの精巣から抽出、精製したDNAの11%(w/v)水溶液を調製し、1N水酸化ナトリウム水溶液でpH8.0とする。プロテアーゼP「アマノ」3GをDNAに対して1.8%(w/v)加え、30〜40℃で酵素反応を行う。このとき、塩化マグネシウムを10〜20mMとなるように加えることが好ましい。酵素反応後、90℃で10分間加熱して酵素を失活させ、凍結乾燥を行うことでDNAの粉末が得られる。このとき、酵素反応温度が40℃を超えると、ヌクレアーゼの熱安定性が下がり、結果として酵素量を増やす必要が生じるため、好ましくない。また、酵素反応温度が30℃未満では、ヌクレアーゼ活性が低いためにDNAを十分に加水分解することができない。また、塩化マグネシウムを添加しない場合、目的とする分子量分子量1000〜30000Daである画分を60%以上含有するDNAを得ることができない。逆に、塩化マグネシウムの添加量が20mMを超えた場合、ヌクレアーゼ活性が低下するために好ましくない。
【0033】
水単独、または、水を含む溶媒からなる水性媒体中でDNAをエンド型ヌクレアーゼで加水分解処理して得られる分解物を含む溶液から核酸素材粉末を調製することができる。粉末化のための方法としては種々の方法を利用可能である。例えば、分解物を含む溶液から固形分をろ過などの方法で除去して得られた溶液を凍結乾燥、或いはスプレードライさせることで粉末状の核酸素材を得ることができる。
【0034】
本発明にかかる飲料または液状食品としては、清涼飲料水、果汁飲料、栄養補給飲料、乳酸飲料、水分補給飲料(スポーツドリンク)、機能性飲料、アルコール飲料、スープ、たれ、ドレッシング等が挙げられる。これらの飲料または液状食品は、DNA単独の水溶液、或いはDNAとその他の成分を配合することで製造することができる。DNAは、例えば、他の配合物の前後に、又は同時に添加してもよいし、予めDNAを1〜20%(w/v)程度の水溶液に調製して、それらを他の配合物の前後に、又は同時に添加してもよい。飲料または液状食品に配合する成分としては、例えば、美容・健康食品素材として注目されているコラーゲンやビタミンC(アスコルビン酸)等が挙げられるが、飲料または液状食品に配合する成分はこれらに限定されない。
【0035】
飲料または液状食品へのDNAの添加量は、目的とするDNAの摂取量と、飲料や液状食品を清澄な、あるいは流動性のある状態を維持できる量とを考慮して設定することができ、これらの要件を少なくとも満たすものであれば特に限定されない。DNAの添加量は、例えば、0.05%(w/v)〜20%(w/v)の範囲から選択することが望ましい。
【0036】
また、飲料及び液状食品の水分含量は、所望とするDNA含有量を確保できる量に設定すればよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
サケ白子から抽出したDNAの約11%(w/v)溶液(株式会社ニチロ製、Na塩)100mLを40℃に保温した。次に、塩化マグネシウムを20mMとなるように加え、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.0に調整した。その後、プロテアーゼPアマノ3GをDNAに対して1.8%(w/v)加えて40℃で6時間反応させた。6時間反応後、90℃で10分間加熱して酵素を失活させ、凍結乾燥によりDNAの粉末9.73gを得た。DNAの分子量を測定した結果、GPCのピークトップ分子量は7597Daであった。表1に、得られたDNA及び従来のDNA製品の分子量分布を示した。
【0039】
実施例2
サケ白子から抽出したDNAの約13%(w/v)溶液(株式会社ニチロ製、Na塩)の370Lを40℃に保温した。次に、塩化マグネシウムを20mMとなるように加え、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.0に調整した。その後、プロテアーゼPアマノ3Gを加えて40℃で3時間反応させた。酵素反応1、2、3時間反応後にそれぞれ約200mLずつサンプリングし、90℃で10分間加熱して酵素を失活させた後、凍結乾燥によりDNAの粉末を得た。また、残りの溶液は90℃で10分間加熱した後、フィルター濾過、濃縮、スプレードライを行い、DNAの粉末40.4kgを得た。DNAの分子量を測定した結果、酵素反応を3時間行うことで、ピークトップ分子量27075Da、分子量1000〜30000Daの画分を64%含むDNAが得られた。表1に、得られたDNA及び従来のDNA製品の分子量分布を示した。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例3
実施例1、2で得られたDNA粉末、及び従来のDNA製品を、それぞれ20%(w/v)水溶液となるように脱イオン水に溶解し、粘度を測定した(表2)。また、各DNAの20%(w/v)水溶液を4℃で24時間保存した。その結果、実施例1で得られたDNA、及び実施例2で酵素反応を3時間行ったDNAは、20%(w/v)水溶液の10℃での粘度が30mPa・s以下となり、従来のDNA製品と比較して粘度が顕著に低下した。また、4℃での保存試験の結果、従来のDNA製品の20%(w/v)水溶液は4℃で24時間保存後にゲル化したのに対し、実施例1及び2で得られたDNAの20%(w/v)水溶液は4℃で24時間保存後もゲル化しなかった。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例1,2で得られたDNA粉末、及び従来のDNA製品を、10%(w/v)コラーゲン、0.9%(w/v)ビタミンCを含むpH3.8の水溶液に、それぞれ1%ずつ溶解し、4℃で24時間保存した。その結果、従来のDNA製品では沈殿物が析出したのに対し、実施例1で得られたDNA及び実施例2で酵素反応を3時間行ったDNAでは沈殿物は析出せず、溶液は清澄を維持した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料あるいは液状の食品への配合用の核酸素材において、DNA中に分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有し、該核酸素材のDNAの含有率が80%(w/v)以上であることを特徴とする核酸素材。
【請求項2】
前記核酸素材が、20%(w/v)水溶液中において、10℃〜27℃での粘度が30mPa・s未満であり、該核酸素材の20%(w/v)水溶液を4℃で24時間間保存した後もゲル化していないことを特徴とする請求項1に記載の核酸素材。
【請求項3】
請求項1に記載の核酸素材を製造するための方法であって、
エンド型ヌクレアーゼでDNAを加水分解して、DNA中に分子量が1000〜30000DaであるDNAの画分を60〜95%含有し、該核酸素材のDNAの含有率が80%(w/v)以上である分解調製物を得る工程を有することを特徴とする、核酸素材の製造方法。
【請求項4】
前記エンド型ヌクレアーゼによるDNAの加水分解を、マグネシウムイオンの存在下で行うことを特徴とする請求項3に記載の核酸素材の製造方法。
【請求項5】
前記分解調製物を粉末化する工程を更に有することを特徴とする請求項3または4に記載の核酸素材の製造方法。
【請求項6】
前記核酸が、魚介類の白子から抽出したDNAであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の核酸素材の製造方法。

【公開番号】特開2009−131222(P2009−131222A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311126(P2007−311126)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000233620)株式会社マルハニチロ食品 (34)
【Fターム(参考)】