説明

飲料ディスペンサ用容器のキャップ、これを備えた飲料ディスペンサ用容器、飲料ディスペンサシステム、並びに、そのキャップの製造装置及び製造方法

【課題】安価に水漏れを防止できる飲料ディスペンサ用容器のキャップを提供すること。
【解決手段】飲料ディスペンサ用容器20の開口部を塞ぐキャップ10において、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒30を受ける軸棒受け14と、軸棒受け14の先端に接続部17を介して接続される蓋部15とを備える。この飲料ディスペンサ用容器20のキャップ10は、軸棒受け14と蓋部15とをつなぐ肉薄の接続部17を含めて一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ディスペンサ用容器のキャップ、これを備えた飲料ディスペンサ用容器、飲料ディスペンサシステム、並びに、そのキャップの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料ディスペンサ、ウォータサーバなどと称される、主として飲料水を供給するためのシステムがある。特許文献1には、家庭やオフィスなどに置かれる飲料ディスペンサが開示されている。特許文献1の図1には、飲用水のカートリッジ容器が、逆さにされた状態で、飲料ディスペンサに取り付けられている様子が示されている。
【0003】
図7は、従来のカートリッジ容器と飲料ディスペンサとの接続部分の拡大断面図である。なお、図7には、キャップ10付近の更なる拡大図も付記している。カートリッジ容器20には、キャップ10が取り付けられる。キャップ10は、カートリッジ容器20の開口部を塞ぐものである。キャップ10には、同心円状の2つの凸部からなる開口部受け12,13が一体で形成されている。
【0004】
開口部受け12,13は、カートリッジ容器20の開口部を通じて水漏れが生じないように、その開口部の内側及び外側をそれぞれ受ける部分である。また、キャップ10の中央部分には、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒30(図8)が挿入される軸棒受け14が設けられている。軸棒受け14には、キャップ10の組立段階程で、手作業などによって、蓋部15が取り付けられる。つまり、蓋部15は、キャップ10本体とは別個のパーツである。
【0005】
図8は、図7のカートリッジ容器を飲料ディスペンサに取り付ける際の状態を示す図である。図8に示すように、カートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける際には、蓋部15は、軸棒30によって軸棒受け14から押し出される。軸棒30には、首部33を介して先端部32が形成されており、蓋部15は、軸棒30によって軸棒受け14から押し出された後には、先端部32に嵌合されることになる。
【0006】
また、軸棒30には、貫通孔31が設けられている。カートリッジ容器を飲料ディスペンサに取り付けた後には、カートリッジ容器20内の水は、飲料ディスペンサの給水レバー又は給湯レバーを操作することによって、貫通孔31を抜け、軸棒30を通り飲料ディスペンサ外に注出される。
【0007】
カートリッジ容器20を飲料ディスペンサから取り外す際には、再び、蓋部15は、図7に示すように、軸棒受け14内に入り込む。ここで、図7におけるキャップ10付近の拡大図を見ればわかるように、蓋部15の図面下側に位置する底面は、外側に向けて張り出している。この部分が、軸棒受け14の底面に当たると、当該底面が巣突破として機能するので、軸棒30の先端部32と蓋部15との嵌合が解除される。
【0008】
【特許文献1】 特開2008−273605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のカートリッジ容器20の開口部の内側及び外側の径は、カートリッジ容器の製造会社毎に数mmほど異なっている。したがって、キャップ10は、いかなるカートリッジ容器に対しても、汎用的に用いようとすると、その開口部を通じた水漏れを防止することが困難であった。
【0010】
このため、キャップ10を汎用的に用いるために、パッキンなどを利用して、水漏れ防止をするなどの対策が講じられているものもあるが、パッキン自体の臭いが飲料水に付加してしまうという問題があるため、水漏れの抜本的な解決が望まれている。
【0011】
また、キャップ10は、蓋部15とは別個のパーツであるため、軸棒受け14を通じた水漏れも懸念される。実際には、このような水漏れすることがないように、蓋部15は、軸棒受け14内にしっかりと取り付けられているが、蓋部15と軸棒受け14との間には、物理的に隙間があることには変わりがないので、万全な水漏れ対策が講じられていなかった。
【0012】
ところで、上記のように、キャップ10へのパッキンの取り付け、軸棒受け14への蓋部15の嵌合は、手作業で行われ、或いは、それ専用のロボットを用いて行われる。
【0013】
このため、その手作業のための人件費、或いは、ロボットを用意するなどの必要があるので、キャップ10の販売価格を抑えることは困難であった。また、パッキン自体、及び、蓋部15自体を用いると、その分、部品数が多くなるので、やはり、キャップ10の販売価格を抑えることは困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、安価に水漏れを防止できる飲料ディスペンサ用容器のキャップを提供することを課題とする。
【0015】
また、本発明は、上記飲料ディスペンサ用容器のキャップに付帯して、これを備える飲料ディスペンサ用容器、飲料ディスペンサシステムの提供、並びに、そのキャップの製造装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、飲料ディスペンサ用容器の開口部を塞ぐキャップにおいて、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けと、前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部とを備え、前記軸棒受けと前記蓋部とをつなぐ肉薄の接続部を含めて一体的に形成されている。
【0017】
また、本発明は、飲料ディスペンサ用容器の開口部を塞ぐキャップにおいて、前記開口部の上部に押圧される態様で接触可能とされている同心円状の複数の部位が形成されている。
【0018】
さらに、本発明の飲料ディスペンサ用容器は、上記いずれかのキャップと、飲料水が充填されている容器とを備え、当該容器は、前記キャップによって開口部が塞がれている。
【0019】
さらにまた、本発明の飲料ディスペンサシステムは、上記いずれかのキャップと、前記キャップによって開口部が塞がれており飲料水が充填されている容器と、前記容器内の飲料水を保持するとともに当該飲料水を給水する飲料ディスペンサとを備える。
【0020】
また、本発明の飲料ディスペンサ用容器のキャップの製造装置は、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けを規定する部分と、前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部を規定する部分と、前記軸棒受けと前記蓋部とを一体的につなぐ肉薄の接続部を規定する部分とを備える。
【0021】
さらに、本発明の飲料ディスペンサ用容器のキャップの製造方法は、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けを規定する部分と、前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部を規定する部分と、前記軸棒受けと前記蓋部とを一体的につなぐ肉薄の接続部を規定する部分とを含む型に対して樹脂を流し込む工程と、前記樹脂の冷却後に当該型から取り外す工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の飲料ディスペンサ用容器の開口部付近の拡大断面図である。
【図2】図1のキャップ10が取り付けられているカートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける場合の状態説明図である。
【図3】図1のキャップ10が取り付けられているカートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける場合の状態説明図である。
【図4】図1のキャップ10が取り付けられているカートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける場合の状態説明図である。
【図5】図1に示すカートリッジ容器と飲料ディスペンサとを具備する飲料ディスペンサシステムの模式図である。
【図6】図1のキャップ10を製造するための製造装置の模式図である。
【図7】従来のカートリッジ容器と飲料ディスペンサとの接続部分の拡大断面図である。
【図8】図7のカートリッジ容器を飲料ディスペンサに取り付ける前の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
10 キャップ
11 キャップ本体
12 開口部受け
13 開口部受け
14 軸棒受け
15 蓋部
16 開口部受け群
17 接続部
20 カートリッジ容器
30 軸棒
31 貫通孔
32 先端部
33 首部
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態の飲料ディスペンサ用容器の開口部付近の拡大断面図である。図1には、キャップ10付近の更なる拡大図も付記している。図1に示すカートリッジ容器20には、キャップ10が取り付けられる。キャップ10は、カートリッジ容器20の開口部を塞ぐものである。
【0026】
キャップ10には、例えば4つの同心円状の凸部からなる開口部受け群16が一体で形成されている。開口部受け群16は、カートリッジ容器20の開口部を通じた水漏れを防止するために、その開口部の上側を受ける部分である。
【0027】
開口部受け群16は、従来のキャップ10の開口部受け12,13に代えて形成されているものである。開口部受け群16を構成する各々の凸部の幅は、それぞれ、例えば0.5mm〜0.8mmと肉薄である。また、当該各々の凸部の長さは、例えば0.2mm〜0.8mmである。本実施形態では、当該各々の凸部の先端の位置(図1の凸部の下端の高さ)を揃えている。
【0028】
このため、キャップ10をカートリッジ容器20に取り付けられたときに、カートリッジ容器20の開口部の上部に、キャップ10が接触することになる。この際、開口部受け群16は、カートリッジ容器20の開口部の上部によって押されることになる。この結果、開口部受け群16を構成する凸部は、肉薄であるし、かつ、樹脂から成ることから変形する。したがって、パッキンを用いた場合と同程度で、カートリッジ容器20の開口部を通じた水漏れを防止することができる。
【0029】
また、開口部受け群16自体の幅は、径方向で例えば4mm〜6mm程度を確保している。このため、カートリッジ容器20の開口部の径が相対的に小さい場合には、開口部受け群16の内側の凸部がカートリッジ容器20の開口部の上側と接触することになる。一方、カートリッジ容器20の開口部の径が相対的に大きい場合には、開口部受け群16の外側の凸部がカートリッジ容器20の開口部の上側と接触することになる。
【0030】
つまり、本実施形態のキャップ10は、カートリッジ容器20の開口部の径の大小に拘らず、高い密閉度を得ることができる。もっとも、開口部受け群16の凸部の数は例示であり、4つに限られるものではない。ただし、カートリッジ容器20の異なる径の開口部に柔軟に対応するために、3つ〜8つ程度あることが好ましい。
【0031】
なお、典型的な一例を示すと、カートリッジ容器20の開口部の径が相対的に小さい場合には、開口部受け群16を構成する例えば4つの同心円状の凸部のうち、径が最も小さいものから三番目に小さいものまでがカートリッジ容器20の開口部の上側と接触するようにしている。ちなみに、図1には、開口部受け群16を構成する例えば4つの同心円状の凸部のうち、径が最も小さいものと二番目に小さいものとがカートリッジ容器20の開口部の上側と接触する例を示している。
【0032】
一方、カートリッジ容器20の開口部の径が相対的に大きい場合には、開口部受け群16を構成する例えば4つの同心円状の凸部のうち、最も径が大きいものから3番目に大きいものまでがカートリッジ容器20の開口部の上側と接触するようにしている。こうして、いわば、二重乃至三重のパッキン効果で高い密閉度を実現している。
【0033】
また、キャップ10の中心部分には、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒30(図2等)が挿入される軸棒受け14が設けられている。軸棒受け14の奥には蓋部15が位置する。蓋部15は、軸棒受け14と一体で形成されている。具体的には、軸棒受け14と蓋部15とは、カートリッジ容器20を飲料ディスペンサに取り付けられる前には、肉薄の接続部17を介して接続されている。
【0034】
このように、本実施形態の場合には、蓋部15は、キャップ10本体と一体の構成としていることから、キャップ10自体の組立段階程で、手作業などによって、キャップ10本体と蓋部15との結合作業は不要である。
【0035】
図2〜図4は、図1のキャップ10が取り付けられているカートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける場合の状態説明図である。飲料ディスペンサには、軸棒30が取り付けられている。
【0036】
図2に示すように、カートリッジ容器20を飲料ディスペンサへ取り付ける際には、飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒30の先端部32に、軸棒受け14を位置合わせさせる。こうすると、カートリッジ容器20には水が入っているため、その自重で、軸棒30の先端部32が、軸棒受け14に挿入される。その後、軸棒30の先端部32は、軸棒受け14の奥に位置する蓋部15に到達する。
【0037】
また、カートリッジ容器20は、例えば1ガロンに対応する12kg程度の重さがあるので、蓋部15に到達した後にも更に下に向けて進行することになる。
【0038】
図3に示すように、カートリッジ容器20が下に向けて進行すると、先端部32によって蓋部15が押されることによって、肉薄の接続部17が切断される。このとき、蓋部15は、キャップ10に対して初めて別パーツとなる。また、軸棒30の先端部32には、別パーツとなった蓋部15が嵌合されることになる。
【0039】
なお、軸棒30には、貫通孔31が設けられているので、カートリッジ容器20内の水は、飲料ディスペンサの給水レバー又は給湯レバーを操作すると、貫通孔31を抜け、軸棒30を通り飲料ディスペンサ外に注出されることとなる。
【0040】
図4に示すように、カートリッジ容器20を飲料ディスペンサから取り外す際には、従来技術として説明済みのように、蓋部15は、軸棒受け14内に入り込む。
【0041】
図5は、図1に示すカートリッジ容器と飲料ディスペンサとを具備する飲料ディスペンサシステムの模式図である。図5には、図1に示す飲料ディスペンサ用容器の他に、軸棒30が取り付けられている飲料ディスペンサ40を示している。
【0042】
飲料ディスペンサ40には、既知のように、カートリッジ容器内の水を温めるヒータと、ヒータによって温められたお湯を注出する給湯レバーと、カートリッジ容器内の水を冷やすクーラと、クーラによって冷やされた水を注出する給水レバーとを備えている。
【0043】
図6は、図1のキャップ10を製造するための製造装置の模式図である。なお、ここでは、製造装置として金型を用いてキャップ10を製造する例を説明するが、鋳型などの他の型を用いて製造してもよいし、型以外の製造装置を用いて製造してもよい。また、光造形技術を実現可能な装置を用いて、光造形によってキャップ10を製造してもよい。
【0044】
図6には、図面左側に、以下のような金型駒A〜Eを示している。すなわち、キャップ10本体の規定は、主として、金型駒C及び金型駒Dによって実現される。軸棒受け14の規定は、主として、金型駒A及び金型駒Dによって実現される。蓋部15の規定は、主として、金型駒A、金型駒B及び金型駒Eによって実現される。開口部受け群16の規定は、主として、金型駒Dによって実現される。接続部17の規定は、主として、金型駒A及び金型駒Bによって実現される。
【0045】
キャップ10を製造する場合には、まず、金型駒Bに形成されている螺子穴(図示せず)にボルトFを連結する。この状態で、ボルトFを、金型駒Aの中央に形成されている貫通孔に通すことによって、金型駒Aと金型駒Bとを結合させる。
【0046】
つぎに、図示しない固定側ベースの枠に対して、金型駒Cを取り付ける。つづいて、その金型駒Cに対して、結合済みの金型駒A及び金型駒Bを取り付ける。一方、図示しない可動側ベースの枠に対しては、金型駒Dを取り付け、つづいて、金型駒Dに金型駒Eを取り付ける。
【0047】
それから、既知のように、可動側ベースを固定側ベースに向けて可動させ、所望の樹脂を金型に流し込む。図6の図面右側には、樹脂を流し込んだ後の状態を示している。その後、樹脂を冷却させ、可動側ベースを固定側ベースから離し、キャップ10を金型から取り出す。こうして、キャップ10の製造が完了する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料ディスペンサ用容器の開口部を塞ぐキャップにおいて、
飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けと、
前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部とを備え、
前記軸棒受けと前記蓋部とをつなぐ肉薄の接続部を含めて一体的に形成されている飲料ディスペンサ用容器のキャップ。
【請求項2】
前記開口部の上部に押圧される態様で接触可能とされている同心円状の複数の部位が形成されている請求項1記載の飲料ディスペンサ用容器のキャップ。
【請求項3】
請求項1記載のキャップと、飲料水が充填されている容器とを備え、
当該容器は、前記キャップによって開口部が塞がれている飲料ディスペンサ用容器。
【請求項4】
請求項1記載のキャップと、
前記キャップによって開口部が塞がれており飲料水が充填されている容器と、
前記容器内の飲料水を保持するとともに当該飲料水を給水する飲料ディスペンサとを備える飲料ディスペンサシステム。
【請求項5】
飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けを規定する部分と、
前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部を規定する部分と、
前記軸棒受けと前記蓋部とを一体的につなぐ肉薄の接続部を規定する部分とを備える飲料ディスペンサ用容器のキャップの製造装置。
【請求項6】
飲料ディスペンサに取り付けられている軸棒を受ける軸棒受けを規定する部分と、
前記軸棒受けの先端に接続部を介して接続される蓋部を規定する部分と、
前記軸棒受けと前記蓋部とを一体的につなぐ肉薄の接続部を規定する部分とを含む型に対して樹脂を流し込む工程と、
前記樹脂の冷却後に当該型から取り外す工程とを含む、飲料ディスペンサ用容器のキャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−63310(P2011−63310A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236643(P2009−236643)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(300023419)石田金型製作所有限会社 (1)
【Fターム(参考)】