説明

飲料中のビタミン類の分解を防止する飲料組成物および方法

【課題】ビタミン含有組成物が、PETやガラス瓶などの透明あるいは実質的に透明な瓶に入っている場合、光への曝露によって起こるその中のビタミンAを含むビタミン類の分解を防ぐ。
【解決手段】ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12およびこれらの組合せからなる群から選択されるビタミンと、C6-C3フェニルプロペンカルボニル構造を有する少なくとも一種類のビタミン安定剤と、を含むビタミン強化組成物を提供する。ビタミン安定剤は、飲料中におけるビタミン安定剤の量が10ppmから500ppmまでの範囲で供給されるための十分な量で含まれる。さらに、ビタミン強化組成物におけるビタミンの分解を防止する方法も併せて提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミン含有組成物中のビタミンの分解を防ぐ方法およびその方法を用いて製造された、飲料であってよい組成物に関する。さらに詳しく述べると、本発明の組成物とは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12またはそれらの組合せ、およびビタミン安定剤を含むビタミン含有組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ビタミン類は、数多くの機能を担う必須栄養素である。ビタミンの欠乏は、見過ごされている公衆衛生上の問題として指摘されてきた。それを受けて、食品および飲料業界では、消費者のビタミン摂取量を増やすため、ビタミンを強化した組成物を開発してきた。しかしながら、ビタミン含有製品が製造施設から出荷され、消費者の元へ届いた時点から、その製品は空気、光、酸、温度および他の含有成分との相互作用に晒される可能性がある。残念ながら、前述の要素のどれかに晒されると、結果的にビタミンは分解されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリエチレンテレフタレート(PET)やガラス瓶では、光、特に蛍光灯の光の透過によって、製品取引の段階での実際のビタミンAの含有量が推奨摂取許容量(RDA)を満たさないほど、ビタミンAが分解する可能性があることが明らかになっている。3500国際単位(IU)という、かなり多量のビタミンAの場合でさえも、PETにおける現在の技術では、食事摂取基準(DRI)が主張する量の20%に相当する1000IUほどもビタミンAの含有量を残すことができなかった。例えば、新たに調製した3500IUのビタミンAを約590cc(20オンス)のPETボトルに果汁と共に入れ、典型的な貯蔵用の蛍光灯(店内用の中身が見える冷却器(visi-coolers)に見られるような)に1週間曝露された場合のビタミンAの残存量は、およそ1000IUであった。消費者の購買までの取引にかかる平均的な時間は、さらにもっと長くなるだろう。
【0004】
したがって、その組成物がPETやガラス瓶などの透明あるいは実質的に透明な瓶に入っている場合、光、特に蛍光灯(店内用の中身が見える冷却器(visi-coolers)に見られるような)の光への曝露によって起こる、ビタミンAを含むビタミン含有組成物中のビタミン類の分解を防ぐことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様に従って、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12およびこれらの組合せから選択されるビタミンと、少なくとも一種類のビタミン安定剤を含むビタミン含有組成物を提供する。通常、安定剤は、組成物中に存在するビタミン類の分解に対し、少なくともある程度の安定性を与えたり、分解を防止したりするのに効果的な量で用いられるだろう。ビタミン安定剤は、組成物中のビタミンまたはビタミン類を安定させ、光、特に蛍光灯の光への曝露によるビタミンの分解を防ぎ、また、以下の化学式:
【化1】

【0006】
から選択される化学式で表されるC6-C3フェニルプロペンカルボニル構造を有するビタミン安定剤を含む。
【0007】
本発明の別の態様に従って、ビタミン含有組成物における、光、特に蛍光灯の光への曝露によって起こるビタミンの分解を防ぐ、あるいは少なくとも減少させる方法を提供する。当該方法は、化学式1またはそれらの組合せから選択される化学式で表されるC6-C3フェニルプロペンカルボニル構造を有するビタミン安定剤を、少なくとも一種類加える工程を含む。例えば、光、特に蛍光灯の光への曝露によって起こるビタミンの分解率を少なくとも減少させるために、通常、少なくともビタミンにある程度の安定性を与えるのに効果的な量で少なくとも一種類のビタミン安定剤を加える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
フェニルプロペンカルボニル化合物(C6-C3)は、飲料中のビタミンの分解を防ぐことが知られている。C6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物は植物の二次代謝産物の一種であり、至るところに存在する。これらの化合物は、多くの植物性の物質から得ることができ、あるいは、合成により製造することも可能である。これらの物質の多くは、現在、食品および飲料用に利用されている。
【0009】
理論に縛られたくはないが、これらの化合物はビタミン安定剤として機能することによって、分解を防ぐと考えられている。ビタミン安定剤は、ラジカルスカベンジャーとして知られている多くの物質のひとつである。光が含有物の分解を引き起こす過程において、フリーラジカルが主要な反応種になると考えられている。透明容器入りの飲料において、ラジカルスカベンジャーの濃度が十分に維持されれば、飲料が棚に陳列されている期間中の光が引き起こす含有物の分解を、ある程度減少させることができる。本発明にかかるビタミン安定剤は、蛍光灯によるビタミンAの分解時に飲料中に発生するフリーラジカルを取り除くと考えられている。通常、飲料は、店内に設置され、冷やされた中身が見える冷却器(visi-coolers)内に陳列されているときに、蛍光灯に晒される。
【0010】
本発明のある態様に従って、少なくとも一種類のビタミンと、少なくとも一種類のビタミン安定剤を含んだビタミン含有組成物を提供する。本発明に適したビタミン類には、ビタミンAとそのパルミチン酸エステル、ビタミンD、ビタミンB12およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。これらのビタミン類は従来技術としてよく知られており、すでに市販されている。
【0011】
ビタミンまたはビタミン類は、組成物内に要望通りの量を含めることができる。通常、本発明にかかるビタミン含有組成物中には、推奨摂取許容量(RDA)に見合うか、あるいはそれを超える十分な量のビタミンが含まれる。しかしながら、RDAはガイドラインであるから、その時々で改定の対象となり、それゆえに、当業者にとっては、食品組成物中のビタミンの量は、進展したガイドライン、あるいは、いずれかの時点で存在するガイドラインに従い、調整可能なものとして認識されるだろう。
【0012】
本発明にかかるビタミン安定剤は、広義において、(i)不飽和であること、(ii)炭素原子が酸化されていること、の両方を満たしたC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物である。C6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物は、植物から生成、または合成による製造の両方が可能である。一般的なC6-C3フェニルプロペンカルボニル構造は、以下の異性体構造(a)、(b)、(c)のいずれかで表すことができる。
【化2】

【0013】
これらの構造を単体で、あるいは、もっと大きな構造の一部分として保持するいずれの化合物も、C6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物としての利用に適している。言い換えれば、本発明にかかる、植物から生成または合成により製造されたビタミン安定剤は、ビタミンの分解を、少なくともある程度防止または減少させる。ビタミン安定剤は、市販されているかもしれないし、公知技術の手順に従って合成されるかもしれないし、また、既知の植物やその抽出物から得たり、単離あるいは抽出したりすることによって供給されるであろう。代表的な抽出手順の一例が、B. Buszewski et al., J. Pharm. Biomed. Anal., Vol. 11, no. 3, p. 211-215 (1993) に開示されている。
【0014】
本発明のある実施の形態に従って、本発明への利用に適しているC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物としては、ロスマリン酸、クロロゲン酸、シコリン酸、カフェイン酸、クマリン酸、けい皮酸、フェルラ酸、シナプ酸、カフタル酸、エイクロル酸(eichloric acid)、エキナコサイドおよびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。一般的な化学式2(a)がロスマリン酸やクロロゲン酸、シコリン酸などの物質に存在していることは、下記に示す構造から明らかである。
【化3】

【0015】
不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、一般的なC6-C3フェニルプロペンカルボニル構造を有する化学式2(a)および化学式2(b)、化学式(c)の置換体もまた、本発明への利用に適するということが、これらの物質の構造から明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。適切な置換基としては、水酸基、メトキシル基、および通常、植物の代謝産物であるフェノール類から得られるその他の置換基を含むが、これらに限定されない。さらに、シコリン酸は、その構造中に化学式2(a)の構造を2つ有することにより、リストに記載された他の酸のいくつかよりも、ビタミン安定剤としてより効果的に働くだろうということが容易に認識できる。一般に、アリール環へ水酸基を付加するとビタミンの安定化が向上することが知られている。それゆえに、ビタミンを安定させる機能は、カフェイン酸(水酸基2つ)>フェルラ酸>クマリン酸>けい皮酸(水酸基なし)であることが認められる。
【0016】
本発明のある好ましい実施の形態では、植物から得られるビタミン安定剤である、上に記載したC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物を、植物の抽出物から得る。本発明において、利用に適した抽出物としては、ローズマリー抽出物、生コーヒー豆抽出物、ブルーベリー抽出物、ロドデンドロン抽出物、ひまわり種子抽出物(sunflower kernel extract)、チコリ葉抽出物、パープル・コーンフラワー抽出物、レタス抽出物、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。さらに大まかに言うと、シソ科、ツツジ科、キク科のどれかに属する植物の抽出物であれば、利用に適している。下記の表1に見られるように、上記抽出物のそれぞれが、ビタミン安定剤としての機能を有する、ひとつあるいはさらに多くのC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物を含んでいる。
【表1】

【0017】
当業者にとっては、所定の抽出物に含まれるC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物の量が様々であるということは、容易に認識されるだろう。元々の種が違えば、得られるC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物の量も様々である。その量は、抽出される植物の生育段階によっても、異なるであろう。実例として、下記の表2にエキナセア属パープレア種(Echinacea purpurea)の品種‘Magical Ruth’におけるクロロゲン酸とエキナコサイドの変化量を示した。
【表2】

【0018】
さらに、‘Magical Ruth’中のシコリン酸の含有量は、段階Iの4.67%から段階IVの1.42%まで変化した。このことから、早期に収穫すれば、目的のビタミン安定剤を最も多く含む抽出物を得られるだろうと推測される。
【0019】
本発明において、利用に適した他のC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物としては、シンナモイルエステル類、クマリン類、カルコン類、フラボン類、クロモン類、イソフラボン類、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。これらのタイプの化合物の多くは、茶類やワイン類だけでなく、果物類、野菜類、ナッツ類、種子類、および花類からも得られる、フラボノイド類と呼ばれる天然物として知られる群から調達することが可能であり、このフラボノイド類は抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗酸化、抗炎症、抗突然変異、抗アレルギーおよびいくつかの酵素に対する抑制作用など、多くの生物学上および薬学上の活性が実証されている。以下の構造から分かるとおり、化学式4(a)のシンナモイルエステル類、化学式4(b)のクマリン類、化学式4(c)のカルコン類、および化学式4(d)のフラボン類は化学式2(a)の一般的なC6-C3構造を有し、化学式(e)のクロモン類は化学式2(c)の一般的なC6-C3構造を有し、化学式4(f)のイソフラボン類は化学式2(b)の一般的なC6-C3構造を有している。
【化4】

【0020】
本発明において、利用に適したシンナモイルエステル類としては、シンナミルホーメート、酢酸シンナミル、けい皮酸エチル、シンナミルプロピオナート、シンナミルα-トルアート、シンナミル2-アミノベンゾアート、アントラニル酸シンナミル、安息香酸シンナミル、シンナミルβ−フェニルアクリラート、ブタン酸シンナミル、シンナミルシンナメート、シンナミルイソブチレート、シンナミルイソバレラート、シンナミルメチルケトン、シンナミルo−アミノベンゾアート、シンナミルフェニルアセテート、シンナミル3−フェニルプロペノアートおよびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。 一般的なC6-C3フェニルプロペンカルボニル構造を有する化学式4(a)の置換体において、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが、これらの物質の構造から明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。化学式4(a)の一般的な構造上の適切な置換基としては、非置換ならびに置換アルキル類はもちろんのこと、直鎖、非直鎖、環状および非環状のアルキル類を含むいずれのアルキル基も含まれ、またこれらに限定されない。
【0021】
本発明において、利用に適したクマリン類としては、クマリン、クメストロール、ダルベルギン、ダフネチン、エスクレチン、シトロプテン、ノラルベルギン(noralbergin)、ウンベリフェロン、スコポレチン、キサントトキソール、プソラレン、ベルガプテン、フラキセチン、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。化学式4(b)の一般的な構造において、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。化学式4(b)の一般的な構造にとっての適切な置換基としては、OH、OCH3、C642、PhおよびCH=CHOを含むが、これらに限定されない。下記の表3に、前述の本発明に利用するのに適しているクマリン系化合物の置換基を示す。
【表3】

【0022】
本発明に利用するのに適しているカルコン類としては、カルコン、ポリヒドロキシカルコン類、ブテイン、フロリジン、エキナチン、マレイン、イソリキリチゲニン、フロレチンおよびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。化学式4(c)の一般的な構造において、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。化学式4(c)の一般的な構造にとっての適切な置換基としては、OH、OCH3およびOGlcを含むが、これらに限定されない。下記の表4に、前述の本発明に利用するのに適しているカルコン系化合物の置換基を示す。
【表4】

【0023】
本発明に利用するのに適しているフラボン類としては、ロイホリン、ジオスミン、アピイン、アピゲニン、ミリセチン、ケンペロール、ルテオリン、モリン、ネオジオスミン、ケルセチン、ルチン、バルカレイン (balcalein)、クプレッスフラボン、ダチセチン、ジオスメチン、フィセチン、ガランギン、ゴッシペチン、ゲラルドール、ヒノキフラボン、スクテラレイン、フラボノール、プリムレチン、プラトール、ロビネチン、クエルセタゲチン、テトラヒドロキシフラボン、タンゲレチン、シネンセチン、ホルツネリン、ケンペリド、クリソエリロール、イソラムネチン、ビテキシン、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0024】
フラボン類は、例えばケルセチンのように、本来、苦味があり、かつ、不溶性である。しかしながら、ビタミン安定剤として使用する程度であれば、飲料の甘味と酸味によって、苦味が複合的に抑制される現象のおかげで、使用した飲料母体には、通常、苦味は認められない。すべてのビタミン安定剤についての最も好ましい使用量は、所定の実験によって測定される、加える飲料母体への溶解度に左右される。
【0025】
化学式4(d)の一般的な構造がロイホリンやルチンといった物質中に存在することは、下記に示す構造から明らかである。
【化5】

【0026】
化学式4(d)の一般的な構造において、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を取得するためには、置換体の存在は不可欠である。適切な置換基としては、OH、ORut、OApioGlc、ONeoHesp、二量体、OCH3およびOGlcを含むが、これらに限定されない。下記の表5に、上に記載した本発明への利用に適しているフラボン系化合物の置換基を示す。
【表5−1】

【表5−2】

【0027】
クロモンなどのクロモン類は本発明への利用に適している。化学式4(e)の一般的な構造における置換体は、化学式2(c)に示すように、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。化学式4(e)の一般的な構造にとっての適切な置換基としては、OH、OCH3、OGlcなどを含むが、これらに限定されない。
【0028】
本発明に利用するのに適しているイソフラボン類としては、ダイジン、ダイゼイン、バイオカミンA、プルネチン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、ゲニステイン、6,7,4’-トリヒドロキシイソフラボン、7, 3’, 4’-トリヒドロキシイソフラボンおよびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。化学式4(f)の一般的な構造における置換体は、化学式2(b)に示すように、不飽和部分が近くにあり、酸化された炭素原子が存在すること、の両方が満たされる場合には、本発明への利用に適するということが明らかである。要するに、広範囲にわたる適切なビタミン安定剤を得るためには、置換体の存在は不可欠である。化学式4(f)の一般的な構造にとっての適切な置換基としては、OH、OCH3およびOGlcを含むが、これらに限定されない。下記の表6に、本発明に利用するのに適している上に記載したイソフラボン系化合物の置換基を示す。
【表6】

【0029】
本発明の好ましい実施の形態では、一般的に化学式4(a)〜(f)の構造のいずれかを有する上述のC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物を、植物の抽出物から得る。本発明への利用に適する抽出物としては、セイヨウトチノキ、タンポポ、ユーカリ、レッド・ストリンギーバーク(red stringybark)、ノコギリヤシ、スイカズラ、サンザシ、ノニフルーツ、レッド・クローバー、オレンジ、グレープフルーツ、シトロメロ(citrumelo)、アタニー(attani)、ポメロ(pummelo)、橙、レメロ(lemelo)、夏蜜柑、ソバ、カモミール、およびこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。下記の表7に見られるように、上記抽出物のそれぞれが、植物由来のビタミン安定剤としての機能を有する、ひとつあるいはさらに多くのC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物を含んでいる。
【表7】

【0030】
上記のように、表7の植物に関しては、当業者にとっては、所定の抽出物に含まれるC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物の量が様々であるということは、容易に認識されるだろう。元々の種が違えば、得られるC6-C3フェニルプロペンカルボニル化合物の量も様々である。その量もまた、抽出する植物の生育段階や抽出物を得る植物の部位によって異なるであろう。例えば、柑橘系果物の多くでは、フラボン類やフラボノール類の含有量は、フラベド、アルベドおよび果汁嚢と比較して、葉の部分で高くなる。
【0031】
一般に、上に記載したビタミン安定剤(一般的に化学式2(a)〜(c)および化学式4(a)〜(f)の構造式のもの)のいずれかを、本発明にかかるビタミン含有組成物中に、10ppmから500ppmまでの範囲、好ましくは50ppmから300ppmまでの範囲、さらに好ましくは100ppmから200ppmまでの範囲で、飲料中の安定剤として十分な量になるように、飲料に含める。ビタミン安定剤を植物の抽出物から得る場合、その抽出物を、本発明にかかるビタミン含有組成物中に、前述の量と同じく、飲料中の安定剤として十分な量になるように、飲料に含める。抽出物に含まれる安定剤の量は変化する可能性があることに注意することが重要である。例えば、ある抽出物が5%の有効成分または安定剤を含んでいるとすれば、500ppmの抽出物の使用は、すなわち25ppmの安定剤を使用したことになる。
【0032】
本発明の第2の態様は、ビタミン含有飲料中にビタミンを安定させる量のビタミン安定剤を加えることを含む、ビタミン含有飲料中のビタミンの分解を防ぐ方法を対象としている。
【0033】
飲料としては、濃縮液、フレーバー水、ビタミン強化水、果汁、果汁入りフレーバー飲料、スポーツ飲料、乳製品およびアルコール製品はもちろんのこと、炭酸清涼飲料水、ファウンテン・ドリンク(fountain beverages)、冷凍のRTD(ready-to-drink)飲料、コーヒー、茶、粉末タイプの清涼飲料を含むが、これらに限定されない。飲料は炭酸ガス入りまたは炭酸ガスの入っていない場合がありうる。飲料は、高温充填される可能性がある。
【0034】
ビタミン含有飲料は、ひとつあるいはさらに多くの前述のビタミン類を加えることで、補強されるかもしれない。さらに、ビタミン安定剤もまた本発明の第1の態様について述べたことと同様である。ビタミン含有組成物は、飲料製造のいずれの段階、すなわち、シロップや濃縮物、飲料の完成品であっても良いかもしれない。
【0035】
前述のように、“ビタミンを安定させる量”とは、ビタミン含有飲料において、ビタミンの分解を実質的に減少させるかあるいは防止するのに十分な量を称する。一般に、ビタミン安定剤は、10ppmから500ppmまでの範囲、好ましくは50ppmから300ppmまでの範囲、さらに好ましくは100ppmから200ppmまでの範囲で、ビタミン含有飲料に加えられる。ビタミン安定剤を植物の抽出物から得る場合、その抽出物を、本発明にかかるビタミン含有食品組成物中に、前述の量と同じく、飲料中の安定剤として十分な量になるように、飲料に含める。
【0036】
本発明に従ったビタミン含有飲料中のビタミンの分解を防ぐ方法は、必要に応じて、さらに、その飲料にソルビン酸、アコニット酸、アブシジン酸、フマル酸、マレイン酸、またはこれらのうちのいずれかの組合せから選択される非アリールエンカルボニル(non-aryl enoic carbonyl)化合物を加えることを含む。この場合は、一般に、飲料へ10ppmから200ppmまでの範囲、好ましくは25ppmから100ppmまでの範囲の量の非アリールエンカルボニル(non-aryl enoic carbonyl)化合物を飲料に加える。
【0037】
本発明の第3の態様は、ビタミンおよびビタミンを安定させる量のビタミン安定剤を含んでなる、安定したビタミン含有飲料を対象としている。本発明の第3の態様である安定したビタミン含有飲料は、必要に応じて、ソルビン酸、アコニット酸、アブシジン酸、フマル酸、マレイン酸、またはこれらのいずれかの組合せから選択される非アリールエンカルボニル(non-aryl enoic carbonyl)化合物を加えることを含むであろう。ビタミン、ビタミン安定剤ならびに非アリールエンカルボニル(non-aryl enoic carbonyl)化合物の量は、本発明の第1ならびに第2の態様に関して先に述べたとおりである。
【実施例】
【0038】
【表8】

【0039】
実施例1 透明ガラス容器入りビタミンCおよびEDTA含有透明レモン-ライム(L/L)炭酸清涼飲料(CSD)
ビタミンCおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)含有の透明レモン-ライム(L/L)炭酸清涼飲料(CSD)を調製した。7種類の炭酸清涼飲料サンプルにそれぞれRoche社から得た2500IUのビタミンAパルミチン酸エステルおよび表8に示す量のルチン、サンメリン(SanMelin)(商標)またはブルーベリー葉抽出物を加えて調製した。サンプルはすべて透明ガラス容器に充填した。暗所ならびに明所のサンプルはそれぞれ、ルチン、サンメリン(SanMelin)(商標)またはブルーベリー葉抽出物が添加されていない。暗所のサンプルには遮光をした。明所サンプルを含んだ他のすべてのサンプルには、典型的な貯蔵用蛍光灯の光に曝露した。表の値はすべて1週間の時点で測定した。
【0040】
実施例2 透明ガラス容器入りビタミンCおよびEDTA含有透明レモン-ライム(L/L)炭酸清涼飲料(CSD)
実施例2は最初のビタミンAパルミチン酸エステルの含有量が2000IUである点が、実施例1と異なっていた。
【0041】
実施例3 ペットボトル入り5%果汁含有非炭酸ピンクレモネード
5%の果汁を含む非炭酸のピンクレモネード飲料を調製した。最初のビタミンAパルミチン酸エステルの含有量が3500IUであり、サンプルをペットボトルに充填したこと以外は、実施例1および実施例2と同様である7種類のサンプルを調製した。
【0042】
実施例4 透明ガラス容器入りレトルト処理された酸性度の高い乳製品
高酸性の乳製品を調製した。ビタミンAパルミチン酸エステルを2000IU含んだ実施例2と同様の7種類のサンプルを調製し、レトルト処理を行った。
【0043】
本発明について、いくつかの実施の形態に従って述べてきたが、当業者にとって明らかなように、本発明は、当然のことながら、様々に交換、変更および再配列することが可能であり、これらの交換、変更および再配列は本発明にかかる請求の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンAと、ルチンから成るビタミン安定剤とを含むビタミン含有飲料組成物。
【請求項2】
前記ビタミンAがビタミンAパルミチン酸エステルであることを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項3】
前記ビタミン安定剤が、飲料中におけるビタミン安定剤の量が10ppmから500ppmまでの範囲で供給されるのに十分な量で含まれることを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項4】
前記ビタミン安定剤が、飲料中におけるビタミン安定剤の量が50ppmから300ppmまでの範囲で供給されるのに十分な量で含まれることを特徴とする請求項3記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項5】
前記ビタミン安定剤が、飲料中におけるビタミン安定剤の量が100ppmから200ppmまでの範囲で供給されるのに十分な量で含まれることを特徴とする請求項4記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項6】
前記ビタミン安定剤が植物由来のものであることを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項7】
前記ビタミン安定剤が合成によって作製されたものであることを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項8】
前記ルチンが、酵素的に修飾されたイソクエルシトリンであることを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項9】
前記植物由来のビタミン安定剤が、植物の抽出物により供給されることを特徴とする請求項6記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項10】
前記抽出物が、セイヨウトチノキ抽出物、ユーカリ抽出物、ストリンギーバーク(stringybark)抽出物、ノニフルーツ抽出物、オレンジ抽出物、ソバ抽出物、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項9記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項11】
ソルビン酸、アコニット酸、アブシジン酸、フマル酸、マレイン酸、またはこれらの組合せから選択される非アリールエンカルボニル(non-aryl enoic carbonyl)化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のビタミン含有飲料組成物。
【請求項12】
ビタミン含有飲料中のビタミンAの分解を防ぐ方法であって、ルチンから成るビタミン安定化化合物をビタミン含有飲料に添加する工程を含む方法。
【請求項13】
ビタミンAパルミチン酸エステルと、ルチンから成るビタミン安定剤と、を含んでなる安定なビタミン含有飲料。

【公開番号】特開2011−67221(P2011−67221A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2184(P2011−2184)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2006−298834(P2006−298834)の分割
【原出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(593203701)ペプシコ,インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
【Fターム(参考)】