説明

飲料冷却攪拌食器

【課題】従来主流の氷による飲料冷却の問題点である、融解水による飲料希釈と衛生面および飲料希釈による香味悪化を解決すべく、飲み物本来の香味を美味しく安全に楽しめる飲料冷却攪拌食器を提供する。
【解決手段】コップに収まる体積の熱容量を備える蓄熱部と、該蓄熱部から突設するホルダー部とからなり、該蓄熱部に溝を備えてもよく、材料がセラミックスである飲料冷却攪拌食器。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を冷却しながら飲むための、氷の代替となる冷却機能に、美味しく安全に楽しめる機能を備えた、食器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲料を冷やしながら飲むための冷却手段として、氷の融解熱冷却が主流になっており、近年では、高分子化合物等を主成分とする、いわゆる保冷材が進化してきてはいるものの、氷の代用品としては、氷片状の天然石を冷却して用いるものしか商品化されていない。文献としては、例えば、保冷材を被覆した冷却部材の考案(文献1参照)や、冷媒として水や保冷材を内蔵した金属製スプーンの考案(文献2参照)の他、様々な細工が必用になった氷の加工管理を容易にするブロック氷の考案(文献3参照)が公開されている。
【文献1】
特許公開2006−57979号公報:冷却部材およびこの冷却部材の製造方法
【文献2】
実用新案公開平7−5472号公報:冷却スプーン
【文献3】
特許公開2007−71524号公報:ブロック氷
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
飲料を美味しく安全に冷却するためには、前記の氷、保冷材、天然石、のそれぞれには、次のような致命的な問題点がある。
1.氷は、融解水が飲料を稀釈し続ける為、時間と共に飲料の香味と安全性を大幅に悪化させる。
2.氷は、融解水が飲料と分離傾向に飲料を稀釈および冷却する為、基本的にかき混ぜ棒の機能しかないマドラー等による飲料の攪拌をやむなく必要とする。
3.世界的に主要な飲料である、ビール、ワイン、シャンパン、カクテルや、日本酒、日本茶などへの氷の使用は、上記1〜2に加え、冷えすぎ等がネックとなり、敬遠されている。
4.世界的に氷冷却が多用される炭酸飲料は、氷表面に多発する気泡と飲料の対流等により氷の融解が早いので、上記1〜2などの弊害が多い。
5.氷は、無味無臭の品質管理とトレーサビリティの確保が困難な上に、製氷に数時間もの時間とエネルギーを要する。
6.氷でできた飲用器も存在するが、上記1から5に加えて、融解水にまみれて冷たく滑る弊害から実用には向かない。
7.特に飲食店では、縦長のコリンズグラス用スティックアイスや、ロックグラス用ボールアイス等、飲み物や容器専用の氷塊の製作と管理にコストがかかる。
8.氷は、融解して無くなると共に、いっきに冷却効果が無くなる。
9.氷を多くすることにより、飲料の総量が不明確な場合が多い。
10.氷自体と氷の固着が、マドラーやストローによる攪拌作業の弊害になる。
11.氷は、飲料を飲み干す際や、ストローによる吸飲の際の弊害になる。
12.氷の低視認性と高平滑性により、望まぬ誤飲や氷噛みが多発している。
13.干ばつや砂漠化による水不足が増加するに従い、特に海外では不衛生な氷水による健康被害が顕在化している。
14.上記1〜13は、氷の使用量が多い程顕著になり、氷の冷淡な物理的飲料冷却が現代においても主流であることは、豊かな生活とは言い難い。
15.次に、保冷材は、高分子化合物等の主成分と防腐剤等の添加成分を樹脂等で外装する構造の為、成分流出、誤飲、雑菌繁殖、臭気付着、耐食性、等の問題から、飲料の直接冷却用としては普及していない。
16.一方、天然石は、鉛やカドミウム等の有害元素を含有しない保証が無い上に、主流のソープストーン材熱伝導率が約6W/mKと比較的高い為に温まり易く、雑菌繁殖、臭気付着、欠損剥離、耐食性、高価、等の問題が山積する。
17.上記16に加え、天然石は、氷片状の主流商品でさえ、誤飲、誤噛み歯の欠損、石同士の衝突欠損、容器の傷害欠損、等の問題から普及していない。
次に、前記文献1の冷却部材の従来技術は、上記15の問題がある上に、保冷材を外装するアクリル樹脂の熱伝導率が約0.2W/mKと低い為に冷却能力が著しく低下する。同様に、前記文献2の金属製スプーンの従来技術は、上記15の問題に加えて、水や保冷材を内蔵する金属の加工生産性、耐食性、安全性、爆裂危険性などの点で現実的ではない。また、前記文献3のブロック氷は、上記7を問題にとらえて、解決をはかろうとする背景技術の一例である。本発明は、上記の問題を解決すべく、飲み物本来の香味を美味しく安全に楽しめる飲料冷却攪拌食器を創作するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、コップなどの飲食用容器内で飲料を冷却する食器であって、該飲食用容器に収まる体積の熱容量を備える蓄熱部と、該蓄熱部から突設するホルダー部とからなり、材料がセラミックスである飲料冷却攪拌食器である。
【0005】
このような請求項1に記載の発明によれば、冷却装置で冷却された蓄熱部が飲料を衛生的に直接冷却可能で、且つホルダー部の操作により飲料を攪拌可能なマドラー機能を備え、繰返し使用可能な飲料冷却攪拌食器を作成することが出来る。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記蓄熱部が、溝または孔、もしくはその双方の造形を備える、請求項1に記載の飲料冷却攪拌食器である。
【0007】
このような請求項2に記載の発明によれば、飲み物や飲食用容器に合わせて最適な冷却効率を備える冷却攪拌食器を作成することが出来る。例えば、溝の造形に製氷すれば、融解熱を併用した冷却が出来る上に、やがて溝から分離して浮かぶ氷の造形を楽しめる。更に、飲料の量と色によって溝に流動形成される飲料の造形変化とグラデーションを視覚的に楽しめる。更に、蓄熱部の孔に別体のホルダー部を嵌合する分割構造にすることにより、収納や冷却装置内冷却をコンパクトに分割して行なえる上に、生産性と物流の面でも有利になる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記蓄熱部の一端が、前記飲食用容器の内底面に倣って略内底面近接形状をなす、請求項1または請求項2に記載の飲料冷却攪拌食器である。
【0009】
このような請求項3に記載の発明によれば、蓄熱部が飲食用容器の内底面に滑らかに近接して、その近辺に高い熱容量を得るので、飲食用容器に衝撃を与えないと共に、飲料を効率的に冷却および攪拌できる飲料冷却攪拌食器を作成することが出来る。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記セラミックスの材料が常温域で、密度2g/cm以上、且つ比熱700J/kg℃以上、且つ熱伝導率2W/mK以下の物性値を備える、磁器、陶器、ガラス、ファインセラミックスのいずれかである、請求項1から請求項3のいずれかに記載の飲料冷却攪拌食器である。
【0011】
このような請求項4に記載の発明によれば、限られた大きさの中で高熱容量と低熱伝導率を備えるセラミックス材料を厳選することができるので、冷却装置で冷却されたセラミックス材料の冷熱を長時間蓄熱して飲料を冷やし続けるのに最適な冷却攪拌食器を安価に作成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)図1および図2は、本発明の実施の形態1による飲料冷却攪拌食器の一実施例を示し、図1は正面図、図2(A)は図1の平面図、図2(B)は図1の底面図である。尚、図1にのみ飲料とコップを2点鎖線で示した。
実施の形態1の飲料冷却攪拌食器は、飲食用容器のうち飲用に多用される円筒形や逆円錐台形の一般的な平底コップ(10)の内底面(11)の80%程度を占める底面積と、平底コップ(10)の内面の3分の1程度の高さとからなる略円柱形の蓄熱部(13)を備える。この蓄熱部(13)は、その上面から上方に蓄熱部(13)と一体に突説する棒状のホルダー部(14)によって支持され、使用時は、平底コップ(10)に注がれた飲料(12)に沈んで、内底面(11)の一部と飲料(12)に接触する。寸法的には、飲み口径70〜80mm、容量200〜250cc程度の一般的な平底コップ(10)用の場合、蓄熱部(13)は底面の直径が40〜50mm程度で、高さが30〜40mm程度、またホルダー部(14)は高さが60〜100mm程度で、その上端を直径10〜20mm程度の略球形状として平底コップ(10)の上端付近に設ける。これらの本発明品の材料は、常温域における物性値が、密度2g/cm以上、且つ比熱700J/kg℃以上、且つ熱伝導率2W/mK以下の磁器、陶器、ガラス、ファインセラミックス等の所謂セラミックスが適しており、強度的には一般的な食器用の衝撃強度を満たせばよい。ここで、密度と比熱と熱伝導率の3物性値は、ある体積の冷却された本発明品が飲料の熱によって、温められ難い高熱容量と熱が伝わり難い低熱伝導率とを兼ね備えることを表わす指標として用いており、逆に冷却装置で本発明品を事前冷却する際の時間的冷え易さは、セラミックスであれば水の10倍程度冷却が早く、充分に冷え易いと言える。次に、磁器材料においては、石英、長石、カオリンを主成分に粘土を成形成分として加える一般的な磁器土の焼成において、特に素材が厚く無垢部の多くなる蓄熱部(13)の素材中に散在する微細な気孔の気孔率とその分布を最適化すること等により、密度2g/cm以上、且つ比熱900J/kg℃以上、且つ熱伝導率0.5W/mK以下の本発明に最適な物性値を備える上に、磁器本来の高耐食で平滑な上に吸水性が無く衛生的な特性を活かした磁器を開発できた。ここでは、上記の最適な物性値を備える磁器を飲食用容器の容量にみあった上記の体積量だけ用いることにより、平底コップ(10)の飲料冷却に必用充分な熱容量を備える本発明品を構成し、その外周全周にガラス質からなる一般的な磁器用の釉薬皮膜をシームレスに施して用いる。この釉薬皮膜の全周施釉焼成方法は、先ず、本焼成工程において、飲料冷却攪拌食器の形状に素焼きした磁器素材が焼成窯設備と接触する該磁器素材表面部近傍にのみ未施釉部を残して、該磁器素材外周に渡って本焼成用釉薬を施釉のうえ本焼成し、次の再焼成工程において、該未施釉部を、該本焼成用釉薬が溶融しない温度で溶融する再焼成用釉薬で施釉のうえ、焼成窯設備との接触が無い姿勢にて、該本焼成用釉薬が溶融せずに該再焼成用釉薬が溶融焼成する温度で再焼成する。ここで、蓄熱部(13)とホルダー部(14)を別々に素焼きまたは本焼成した物を接合焼成しても構わないが、上記と同様に、釉薬皮膜は全周に施す。尚、釉薬皮膜自体は、磁器用に一般的な膜厚0.1〜1mm程度のガラス質コーティングであれば、蓄熱部(13)の蓄熱保温性能を十分に発揮する上に、上記の磁器本来の特性を最大限に発揮する本発明品を安価で生産できる。また、セトモノのほとんどが薄肉部の縁欠け欠損で廃却される現実に対して、製品の全ての端部に薄肉突起が存在しないロングライフ強度設計を施す。
【0013】
(実施の形態1の作用)以下に前記実施の形態1の作用を従来の氷の代替の観点を中心に説明する。図1〜図2に示すように、本発明品は、平底コップ(10)の飲料冷却に必用な熱容量を備える蓄熱部(13)とそれを支持するホルダー部(14)が磁器で構成されると共に表面全周がシームレスに釉薬皮膜で被覆される為、磁器本来の酸にもアルカリ腐食にも強い抜群の高耐食性と、平滑で吸水性が無いので雑菌繁殖や臭気付着の面で優れる安全衛生特性とを兼ね備える。本発明品の使用手順として、先ず、冷凍庫や製氷機などの製氷できる程度の冷却能力を備えた冷却装置で本発明品を10分間程度冷却することにより、長時間の冷却が可能な冷熱を本発明品に蓄熱することができる。次に、冷却装置から冷却された本発明品を取り出して蓄熱部(13)を下方にした姿勢で平底コップ(10)に入れ、飲料(12)を注ぐと、飲料(12)はホルダー部(14)の一部と蓄熱部(13)の清潔で冷たい磁器肌に直接冷やされ、従来の氷の融解水による飲料稀釈が皆無である為、飲料(12)の風味を損なうことの無い、美味しい冷却を持続しながら飲料(12)本来の香味を最後まで存分に楽しむことができる。ここで、飲料(12)が先に注がれた平底コップ(10)等の飲食用容器に本発明品を後から入れる手順でも構わない。冷凍庫や製氷機などのどこにでもある冷却装置の空きスペースさえあれば、わずか10分、製氷の10分の1程度の短時間・省エネ急冷により、安全で美味しい飲料冷却を半永久的に繰り返して楽しめる。更に、磁器の縁欠け欠損が生じ難い強度設計を施しているので、ロングライフの使用にも充分耐える。更に、本発明品を冷却装置などの中で冷却する際は、既に冷凍されている清潔な氷や保冷材などの上に蓄熱部(13)を直接置けば効率的に急冷できる上に、急冷後は冷却装置内の蓄熱性能が増して冷却装置の冷却効率も向上する。また、氷による冷却は、上層のいわゆる氷水の部位は0℃程度まで冷え、飲み物によっては冷え過ぎる上に融解水希釈が激しいのに対し、下層では冷却されない部位も多く、マドラーやストロー等による煩わしい飲料の攪拌作業を必要とするが、本発明品は蓄熱部(13)の沈む下層側から直接飲料(12)を対流冷却するので、冷え過ぎずに均一で適度な飲料冷却を可能にすると共に、蓄熱部(13)を支持するホルダー部(14)を操作することにより、飲料の攪拌も容易に行なえる。更に、本発明品は、氷冷却の様にコップ(10)の側面を直接冷やさないので、主にコップ(10)の側面結露から滴り落ちる憂鬱な水滴が圧倒的に少なく、コースター等による水滴対策やコップ(10)の滑り落とし破損等に対する心配が少なくて済む。また、氷冷却が多用される炭酸飲料においては、氷表面に多発する気泡と飲料の対流等により、氷の融解が早まるので氷による冷却が適さないが、本発明品を用いることにより、上記の飲料稀釈が無く、飲料(12)本来の風味を最後まで存分に楽しめるメリットを最大限に活かすことができるので、氷が敬遠されるビール、シャンパンなども適温で美味しく冷却できる。更に、氷は無味無臭であることが少ない上、不衛生な地域では氷による食中毒も多く、その品質管理の難しさと、製氷に数時間もの時間とエネルギーを要するデメリットが、地球規模の水不足が進む現代において敬遠され出しているが、耐食性と安全衛生面が抜群に優れる本発明品を用いれば、それらのデメリットを解決できる。また、氷は飲料の総量を不明確にしたり、融解後いっきに冷却効果が無くなったり、マドラーやストローの弊害になったり、誤飲など、望まない不具合も多いが、上記の通り、ホルダー部(14)付きの蓄熱部(13)が平底コップ(10)にフィットする本発明品は、それらの不具合が生じない様に機能的に設計されている。以上より、冷凍庫や製氷機などで冷却された蓄熱部(13)が飲料(12)を美味しく衛生的に冷却し、ホルダー部(14)の操作により飲料(12)を攪拌可能なマドラー機能を備え、繰返し使用可能な飲料冷却攪拌食器を作成することが出来る。
【0014】
(実施の形態2)図3〜図6は、本発明の実施の形態2による飲料冷却攪拌食器の一実施例を示し、図3は正面図、図4(A)は図3の平面図、図4(B)、図5、図6(A)、図6(B)はそれぞれ図3の使用例説明図である。尚、図3にのみ飲料とコップを2点鎖線で示した。以下に前記実施の形態1に対し相違のある点を中心に説明する。
実施の形態2の飲料冷却攪拌食器は、前記実施の形態1のそれに対し、蓄熱部(23)とホルダー部(24)をそれぞれ山形と波形をモチーフにデザインした上に、蓄熱部(23)の上端平面に花をモチーフにした溝(25)を設けたものである。ここで、蓄熱部(23)は体積を前記実施の形態1の半分程度に設計することにより、ワイン、シャンパン、カクテル、日本酒、日本茶などの飲料(22)が、比較的容量の小さなコップ(20)で冷やし過ぎずに飲まれているのにも対応する。
【0015】
(実施の形態2の作用)以下に前記実施の形態2の作用を前記実施の形態1に対し相違のある点を中心に説明する。先ず、図4(B)に示すように、本発明品は、蓄熱部(23)の溝(25)が蓄熱部(23)の冷却表面積を増す上に、必要に応じて、冷凍庫や製氷機などの冷却装置で冷却する際に、溝(25)に衛生的な水や飲料(22)を入れて製氷することにより、氷の融解熱を併用して飲料(22)を効率的に冷却することができる。ここで、溝(25)に製氷した氷は、飲料を冷却しながら味わう間に、やがて溝(25)から剥がれて飲料(22)上部に浮かび上がるので、愛らしい花形の氷(26)が浮上する驚きと飲料(22)上で揺らめき漂う癒し感を楽しむことができる。また、この花形の氷(26)は、製氷の量と有無によって冷却効率を調整できる上に、冷やす飲料(22)そのものを製氷することにより融解水による稀釈も無くなり、飲料の色も楽しめる。更に、この溝(25)に入れる食品は、粉コーヒー、粉ジュース、固形スープ等の粉末固形飲料や、砂糖、シロップ、蜂蜜などの甘味料、ミルク、果汁、ジャム、濃縮飲料、香料などの調味料を、固体、液体、氷結、非氷結に関わらず、飲料(22)の冷却と共に提供することができるので、新たな風味の飲み物をスマートに提供できる。更に、溝(25)を深めに設けて、ゼリー、果実、アイスクリーム、シャーベット等のデザートを入れてデザート入り飲料にしたり、日本茶や紅茶、中国茶などの茶葉を入れて水出し茶の冷却に用いることもできる。ここで、70ccの蓄熱部(23)に設けた15ccの溝(25)にゼラチン質のレモンゼリーを入れて、冷凍庫で該レモンゼリーがゼリーアイス状に凍るまで製氷した本発明品をアイスティー飲料の冷却に用いた結果、ゼリーアイス状からゲル状のゼリーを経て部分的に融解が始まるまでの融解熱冷却も含めた冷却時間が長い上に、途中でアイスティー飲料に浮かんでゼリー状のまま香り続ける部位も多い為、抜群の冷却効率と見た目にも楽しく美味しい新たなアイスレモンティーの提供方法を確立できた。また、図5に示す様に、ホルダー部(24)を指(27)で摘んで、蓄熱部(23)を山形の略円錐形中心軸周りに回転(28)操作、および略円錐形中心軸方向に上下(28a)操作することにより、蓄熱部(23)と内底面(21)間の回転(28)擦り潰し機能と、激しい上昇流攪拌(28b)機能とを発揮することができる。これらにより、上記の粉末固形飲料、甘味料、調味料などを、飲料(22)に直接入れて攪拌する際、または溝(25)に入れて楽しむ際に、上記の回転(28)擦り潰し機能と上昇流攪拌(28b)機能の組合せで、飲料(22)を冷却しながらも、容易に素早く攪拌できる新たなマドラー機能を備えるので、使用者や飲食店の趣向にあった飲み物の多様性を豊かにすることができる。更に図6(A)に示す様に、果実やお茶のティーバッグ等、飲料に香味を抽出する香味物(29)を、コップ(20)の内底面(21)上で蓄熱部(23)の下に挟み、ホルダー部(24)を押し下げることにより、コップ(20)内で直搾りできる梃子式スクイザー機能も備えるので、香味物(29)を容易に余すことなく抽出して適温でいただくことができる。また、香味物(29)を搾り終えたり、ほのかに香味を抽出し続けたい場合は、蓄熱部(23)の下に敷き置いたまま、ホルダー部(24)の湾曲部をコップ(20)の上端に掛け置くこともできるので、香味物(29)用トレイは不要で、手を汚すことも無く、衛生的に冷えた飲料を最後まで味わうことができる。また、飲料の量と色によって溝(25)部に流動形成される飲料の造形変化とグラデーション変化を視覚的にも楽しむことができ、例えば、溝(25)部に何も入れずに冷却された白磁製の本発明品を入れたコップ(20)にオレンジジュースを注ぎ始めると、溝(25)にオレンジジュースが流動し出して淡い橙色の小さな花となり、次に溝(25)一杯の濃い橙色の花が白地の山頂に現れ、やがて蓄熱部(23)が飲料(22)の水位に沈んで白波の様なホルダー部(24)の下に花が霞むと、飲料冷却効果が最大になったことを認識できる。逆に飲料(22)が飲まれて減っていくと蓄熱部(23)の山頂が飲料(22)上面から頭を出して、溝(25)に残った飲料(22)が再び橙色の花を描くので、本発明品の造形構成と演出が飲食のプロセスを豊かにし、使用者に癒しのあるライフスタイルを提供することができる。更に、コップ(20)を傾けて飲料(22)を飲み干す際は、図6(B)に示す様に、ホルダー部(24)を指(27)や顔で押さえられるので、蓄熱部(23)のばたつきも無く、溝(25)に残った飲料(22)も流れ落ちて一滴残らずスマートに飲み干すことができる。ここで、ストローを用いる際は、溝(25)一杯に残った飲料(22)を鮮明に楽しんでストロー吸引した後、コップ(20)と蓄熱部(23)の間にストローを注し込んで、最後の一滴まで美味しく冷えた飲料(22)を容易に飲み干すことができる。
【0016】
(実施の形態3)図7〜図8は、本発明の実施の形態3による飲料冷却攪拌食器の一実施例を示し、図7は組立て断面図、図8(A)は図7の平面図、図8(B)は図7の底面図である。尚、図7にのみ飲料とグラスを2点鎖線で、氷を破線で示し、斜線は図8(A)の外周円の中心軸上断面である。以下に前記実施の形態1と2に対し相違のある点を中心に説明する。
実施の形態3の飲料冷却攪拌食器は、先ず、蓄熱部(33)の上端平面に魚をモチーフにした溝(35)を2つ設け、次に、蓄熱部(33)の下端をワイングラス(30)形の飲食用容器の略半球状内底面(31)に倣って略半球形状にした上に、テーパー状のホルダー部(34)軸体の延長上にあたる蓄熱部(33)にテーパー状の貫通孔(37)を設け、ホルダー部(34)軸体を貫通孔(37)の下方大径側から着脱自在にテーパー嵌合したものである。
【0017】
(実施の形態3の作用)以下に前記実施の形態3の作用を前記実施の形態1と2に対し相違のある点を中心に説明する。先ず、図7〜図8に示すように、本発明品は、大きめの溝(35)に清潔な水や飲料などを製氷して飲料(32)を冷却することにより、氷の融解熱冷却並の飲料冷却効果を発揮する上に、やがて飲料(32)に浮上して漂う2匹の魚形の氷(36)も楽しむことができる。魚形の氷(36)は、簡易的に水から作っても融解水による飲料希釈は最低限であるので、ジュースや炭酸飲料、アイスティー、アイスコーヒーなど、通常氷まみれで提供されることの多い飲み物も充分に冷やして本来の香味豊かな味わいを安心して楽しめる。更に、蓄熱部(33)の下端を略半球形状に形成しているので底の丸いワイングラス(30)などの飲食用容器の内底面(31)に倣う様に省スペースで収まって、効率的な飲料冷却と攪拌とを内底面(31)に損傷を与えることなく行なうことができる。また、テーパー状のホルダー部(34)軸体を蓄熱部(33)のテーパー状の貫通孔(37)から下方に抜き取って、ホルダー部(34)と蓄熱部(33)を容易に分割および組み立てできるので、収納と冷却装置内冷却時のスペース効率は勿論、部材としての生産性と製品の物流と販売パッケージなどにおいても有利になり、比較的廉価に製作できる。
【0018】
(実施の形態4)図9は、本発明の実施の形態4による飲料冷却攪拌食器の一実施例を示す正面図であり、飲料とグラスを2点鎖線で示した。以下に前記実施の形態1〜3に対し相違のある点を中心に説明する。
実施の形態4の飲料冷却攪拌食器は、蓄熱部(43)を雪だるまをモチーフにした略ヒョウタン形立体造形で縦長に構成することにより、比較的細長いフルートグラス(40)やコリンズグラスなどの飲食用容器を用いてスマートに提供される飲料に対応したものである。ここで、蓄熱部(43)の上端は、フルートグラス(40)に8割程度の飲料(42)が入った水位の近傍にあり、その分ホルダー部(44)は短くなる。
【0019】
(実施の形態4の作用)以下に前記実施の形態4の作用を前記実施の形態1〜3に対し相違のある点を中心に説明する。図9に示すように、本発明品は、2つの球を融合した様な造形で蓄熱部(43)を縦長に構成して、ホルダー部(44)と反対側の蓄熱部(43)底端の曲率を高くしているので、楕円や流線形などのシャープな縦長造形が多いシャンパングラスや、背の高いグラス形状に合わせて棒状のスティックアイスが多用されるコリンズグラスなどの飲食用容器にフィットする様に収まって、効率的で美味しい飲料冷却と攪拌を内底面(41)に損傷を与えることなく行なうことができる。また、蜂蜜、シロップ、ジャム、コンデンスミルクなどの比較的高粘性の液体食品に、本発明品の蓄熱部(43)の一部を直接浸けるだけで、それらの液体食品を必要量だけ容易に絡め取れるので、そのまま飲食用容器に移し入れて冷却攪拌する一連の作業を、本発明品ホルダー部(44)の片手操作だけで容易に行なうことができる。更に、造形的にもボール形やスティック形などの清涼感のある氷塊細工を施した氷が好まれる飲料需要に対して、雪だるまの他にも、ペンギン、氷山、シロクマなど、クールかエコをアピールできるデザインの蓄熱部(43)を用意することにより、家庭用は勿論、飲食店においては氷塊の製作と管理に毎回の高コストをかけること無く、現代のエコスタイルを満たす高品質な飲料冷却をファッショナブルに提供することができる。
以上の実施の形態1〜4に示した通り、本発明による飲料冷却攪拌食器は、実証を得た磁器材料の特性と所定寸法による優れた蓄熱性能が、主流の氷の問題点である融解水による飲料希釈と衛生面および飲料希釈による香味悪化を解決するので、飲み物本来の香味を美味しく安全に楽しむことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、従来の飲料冷却に対して下記の効果を得ることが出来る。
1.氷の融解水による飲料稀釈が無くなる為、飲料本来の香味を衛生的に味わえる、美味しい飲料冷却を安心して楽しめる。
2.蓄熱部に設けた溝により、飲料の造形とグラデーションや、浮上して漂う氷を楽しめる上に、冷却効率も調整できる。
3.上記1、2に加え、回転擦り潰し機能、上昇流攪拌機能、スクイザー機能も備えるので、飲料の多様性と楽しみ方を豊かにできる。
4.上記1〜3の飲料冷却を、氷冷却のおよそ10分の1の時間とエネルギーで半永久的に繰返しエコロジカルに提供できる。
5.上記1により、氷が敬遠される飲料である、ワイン、カクテル、日本酒、日本茶なども冷やし過ぎずに美味しく冷却できる。
6.上記1により、氷の融解を早める炭酸飲料である、ビール、シャンパンなども適温で美味しく冷却できる。
7.氷の使用で困難な氷の品質管理が不要になり、飲食店においては飲み物や飲食用容器専用の氷塊の製作管理コスト等も削減できる。
8.融解水の温度分離と飲料との分離が無くなる為、氷の負荷抵抗で攪拌自体が困難だったマドラーやストロー等による飲料の攪拌作業が不要になる。
9.氷が、飲料正味量をごまかしたり、飲料を飲み干す弊害になったり、無くなって生温くなったり、誤って口に入ったりする、煩わしさが無くなる。
10.世界的に干ばつ、水不足、不衛生な氷水による食中毒が顕在化する中、ロングライフ・セーフティな冷却が現代のエコライフを豊かにする。
11.保冷材利用冷却の問題点である、有害成分流出、雑菌繁殖、臭気付着、耐食性、誤飲、の全てを解決できる。
12.天然石利用冷却の問題点である、有害元素含有、高熱伝導率、雑菌繁殖、臭気付着、欠損剥離、耐食性、高価、容器欠損、誤飲、の全てを解決できる。
以上、本発明による飲料冷却攪拌食器は、従来の飲料冷却の問題点を本質的に改善すると共に、蓄熱部溝の使い方と攪拌機能により、様々な飲み物にも対応可能な飲料冷却の新たな楽しみ方を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による(実施の形態1)を示す図で、図1は正面図である。
【図2】本発明による(実施の形態1)を示す図で、図2(A)は図1の平面図、図2(B)は図1の底面図である。
【図3】本発明による(実施の形態2)を示す図で、図3は正面図である。
【図4】本発明による(実施の形態2)を示す図で、図4(A)は図3の平面図、図4(B)は図3の使用例説明図である。
【図5】本発明による(実施の形態2)を示す図で、図5は図3の使用例説明図である。
【図6】本発明による(実施の形態2)を示す図で、図6(A)は図3の使用例説明図、図6(B)は図3の使用例説明図である。
【図7】本発明による(実施の形態3)を示す図で、図7は組立て断面図である。
【図8】本発明による(実施の形態3)を示す図で、図8(A)は図7の平面図、図8(B)は図7の底面図である。
【図9】本発明による(実施の形態4)を示す図で、図9は正面図である。
【符号の説明】
10、20 コップ
30、40 グラス
11、21、31、41 内底面
12、22、32、42 飲料
13、23、33、43 蓄熱部
14、24、34、44 ホルダー部
25、35 溝
26、36 氷
27 指
28 回転
28a 上下
28b 上昇流攪拌
29 香味物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コップなどの飲食用容器内で飲料を冷却する食器であって、該飲食用容器に収まる体積の熱容量を備える蓄熱部と、該蓄熱部から突設するホルダー部とからなり、材料がセラミックスである飲料冷却攪拌食器。
【請求項2】
前記蓄熱部が、溝または孔、もしくはその双方の造形を備える、請求項1に記載の飲料冷却攪拌食器。
【請求項3】
前記蓄熱部の一端が、前記飲食用容器の内底面に倣って略内底面近接形状をなす、請求項1または請求項2に記載の飲料冷却攪拌食器。
【請求項4】
前記セラミックスの材料が常温域で、密度2g/cm以上、且つ比熱700J/kg℃以上、且つ熱伝導率2W/mK以下の物性値を備える、磁器、陶器、ガラス、ファインセラミックスのいずれかである、請求項1から請求項3のいずれかに記載の飲料冷却攪拌食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−22784(P2010−22784A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209330(P2008−209330)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(502332832)
【Fターム(参考)】