説明

飲料容器用栓体

【課題】飲料容器用栓体の外付けカバーに設けられた飲み口に唇を付けて飲料を摂取するとき、外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋で視界を邪魔され難くする。
【解決手段】上面視で考えて飲料流路2の出口5のうち回転中心CL1に沿った方向の一端P1側から飲料を摂取可能とし、飲料流路2を上面視で考えて出口5の一端側に飲料を導く形態に設け、外付けカバー3にハンドル17を設ける等により、出口5の一端P1側から外側に飲み口6に唇を付けるように使用方向を制限し、飲料を摂取するときに視界の左右中央で蓋4と面することをなくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内と外部間に通じる飲料流路を設けられた外付けカバーと、この外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋とを備えた飲料容器用栓体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯式の飲料容器では、コップを用意せずとも飲料を摂取することができるよう、飲み口を設けられた栓体が採用されている。この種の飲料容器用栓体の外付けカバーは、上面に開放された飲料流路の出口から外側に連続する飲み口を設けられている。飲料流路は、容器内と外部間に通じる流路となり、その流路の中間、出口といった適宜の箇所で密封されるようになっている。蓋は、外付けカバーに設けられた蓋係止部により前記出口及び飲み口を覆った閉位置に留められ、外付けカバーに設けられた回り止めにより前記出口及び飲み口の上方から外れた開放位置に留められるようになっている。
【0003】
この種の栓体の一例を図13に示すように、外付けカバー100は、容器110の側周上部に着脱されるカバー体101を構成部材に含む。飲料流路102は、カバー体101に対して上下方向に抜き差し可能に設けられている。蓋120は、カバー体101に装着されている。カバー体101は、蓋120に上方から重なる蓋係止部103と、この蓋係止部103を蓋120の上方から退避させる係止解除操作を行うための操作部104とを設けられている。上面視で考えて蓋120の回転中心CLと直交する方向が前後方向となり、前方向は、飲料流路102の出口105から蓋係止部103に接近する方向となる。飲料流路102は、蓋係止部103よりも高く突出しており、特に出口105の前端Pf側で高くなっている。すなわち、飲料流路102は、上面視で考えて出口105の前端Pf側に飲料を導く形態になっている。飲み口106は、出口105の前端Pf側から外側に連続するように設けられている。このため、使用者は、前方から飲み口106へ唇を付ける。一般に、飲み口106の水平断面形状は、唇を沿わせ易くするため、円、楕円、円弧、半楕円等の曲率をもった曲面状になっている。容器110の下部を持ち上げるようにして容器110を上部側から前方に傾けると、容器110内の飲料が飲料流路102に流れ込み、出口105から流出させられる。蓋係止部103は、上面視で考えて蓋120に上方から重なるようになっている。蓋係止時、蓋120が片側に傾くのを避けるため、蓋係止部103は、回転中心CLに直交する鉛直面上で蓋120に重なるように配置されている。通常、蓋係止部103は、出口105を間に置いて回転中心CLの反対側に配置されている。蓋係止部103を回転中心CL側に配置することもあるが、蓋120の反回転中心CL側(すなわち、前方側)の端が浮き易いためである。蓋係止部103及び操作部104は、両部103、104を接近配置又は同一部材に設けるため、出口105よりも前後一方側に配置されている。これにより、機構の複雑化が避けられている。飲み口106は、飲料流路102の外側壁面と一体に設けられている。カバー体101を容器110から外すと、飲料流路102とカバー体101を分離し、飲料流路102や飲み口106を容易に洗浄することができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
図12に示した例は、出口105が口内に含むことのできない大きさであるが、口内に含める大きさとした飲料容器用栓体もある。この種の飲料流路では、出口を形成する末端路の側周全周が飲み口になる。その末端路は、前方側に傾斜する形態になっている。このため、使用者は、自ずと、前方から飲み口部分を口に含む。この種の飲料流路の一例として、ストロー管が挙げられる。図14に例示するように、ストロー管131のうち、容器140内に挿入する部分は、可撓性チューブ132からなる。可撓性チューブ132は、容器140の底まで確実に届く長さをもつため、底に付いた状態で適宜の方向に曲がるようになっている。操作部133により蓋係止部134の係止が解除され、蓋150が開放位置に停止させられると、ストロー管131は、外付けカバー130の上方に突出する。この突出部分は、口に含む飲み口部135となっている。飲み口部135は、前方側に傾斜した突出形態を保つ硬質管路になっている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−212259号公報
【特許文献2】特開2004−154494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように、飲料流路の出口の後方にヒンジを配置し、飲み口に前方から唇を付けて飲料を摂取する飲料容器用栓体は、飲料を摂取するときに蓋で視界が邪魔されることがある。すなわち、図13から明らかなように、容器110を前方側に傾けて飲料を飲料流路102から流出させる構造の場合、容器110の残量が少なくなると、底側を大きく持ち上げることになり、開放位置に停止させられた蓋120と視界の左右中央で面することになり、蓋120が目障りになる。ストロー管の場合、通常、容器を前方側に大きく傾けることはないが、使用者が首を前傾させて飲み口部分を口に含む場合、図14から明らかなように、やはり視界の左右中央で蓋150と面することになり、蓋150が目障りになる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、飲料容器用栓体の外付けカバーに設けられた飲み口に唇を付けて飲料を摂取するとき、外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋で視界を邪魔され難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、容器内と外部間に通じる飲料流路を設けられた外付けカバーと、前記外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋とを備え、前記外付けカバーは、上面に開放された前記飲料流路の出口から外側に連続する飲み口を設けられており、前記蓋は、前記外付けカバーに設けられた蓋係止部により前記出口及び前記飲み口を覆った閉位置に留められ、前記外付けカバーに設けられた回り止めにより前記出口及び前記飲み口の上方から外れた開放位置に留められる飲料容器用栓体において、上面視で考えて前記出口のうち前記蓋の回転中心に沿った方向の端側から飲料を摂取可能であり、かつ前記出口の端側から前記飲み口に唇を付けるように使用方向を制限する構造に設けられていることを特徴とする構成を採用したものである。ここで、上下方向の概念は、飲料容器用栓体が水平の状態における鉛直方向をいう。
【0009】
この発明の構成によれば、上面視で考えて飲料流路の出口のうち蓋の回転中心に沿った方向の端側から飲料を摂取可能であり、かつ前記出口の端側から前記飲み口に唇を付けるように使用方向を制限する構造に設けられているため、使用者は、自ずと、蓋の回転中心に沿った方向の出口の端側から飲み口に唇を付けて飲料を摂取するようになる。蓋の回転中心に沿った方向の出口の端側から飲み口に唇を付けた状態のとき、蓋は、出口及び飲み口の上方から外れた開放位置に停止させられているため、視界の左右片側に寄った位置にある。したがって、視界の左右中央で蓋と面することはなく、蓋で視界を邪魔され難い。
【0010】
具体的には、前記飲料流路は、上面視で考えて前記出口の前記回転中心に沿った方向の一端側に飲料を導く形態に設けられていることが好ましい。
【0011】
飲料流路の形態によって上述のように使用方向を制限することができる。なお、出口の一端側から飲料を摂取可能にするため、前記飲み口を出口の一端側から外側に連続するように設けることは勿論である。
【0012】
特に、前記外付けカバーは、前記容器の側周上部に着脱されるカバー体を構成部材に含み、前記蓋は、前記カバー体に装着されており、前記カバー体は、上面視で考えて前記回転中心に直交する鉛直面上で該蓋に上方から重なる蓋係止部と、前記蓋係止部を前記蓋の上方から退避させる係止解除操作を行うための操作部とを設けられており、前記蓋係止部及び前記操作部は、前記出口よりも前記鉛直面に沿った方向の一方側に配置されており、前記飲料流路の外側壁面と一体に前記飲み口が設けられており、前記飲料流路は、前記カバー体に対して上下方向に抜き差し可能に設けられ、かつ上面視で考えて前記出口の一端側を前記回転中心に沿った一方向側に向ける差込向きと、前記回転中心に沿った他方向側に向ける差込向きとを選択可能に設けられていることが好ましい。
【0013】
上述のように蓋係止時の傾き防止、機構の複雑化を回避、洗浄の容易化を図ることができる。この場合、使用者は、左右いずれか一方側から操作部を操作することになる。出口の一端側に飲料を導く飲料流路の向きが固定だと、使用方向の制限に従って出口の一端側を手前に向けたとき、利き手と逆側での操作を強いられる使用者も生じ得る。飲料流路をカバー体に対して上下方向に抜き差し可能に設ける場合、飲料流路の向きを適宜に選択可能に設けることが可能である。これを利用し、予め、上面視で考えて出口の一端側を回転中心に沿った一方向側に向ける第1の差込向きと、回転中心に沿った他方向側に向ける第2の差込向きとを選択可能に設けておけば、使用者は、出口の一端側を手前に向けたときに利き手で操作し易くなるように飲料流路の差込向きを選択することができる。このため、量産品としての汎用性に優れる。
【0014】
前記飲料流路は、上面視で考えて前記出口の一端側を前記回転中心に直交する方向に向ける第3の差込向きを選択可能に設けられていることがより好ましい。ここで、第3の差込向きは、出口の一端側を蓋側と反対側に向ける方向である。
【0015】
係る第3の差込向きを選択可能にしておけば、量産品として従来の使用態様を好む使用者にも対応することができる。
【0016】
前記外付けカバーは、上面視で考えて前記出口と前記回転中心に直交する向きに並ぶ位置にハンドルを備え、前記ハンドルは、前記回転中心に沿った方向に開放した指差し孔を形成するように設けられていることが好ましい。
【0017】
飲料流路の出口とハンドルの位置関係、及び指差し孔の開放方向は、一般的なマグカップやビールジョッキにおける容器口とハンドルの位置関係、及び指差し孔の開放方向に類する。したがって、使用者が飲料を摂取するとき、自ずと、前記出口の端側を手前に向けることを理解する。このため、ハンドルによって上述のように使用方向を制限することができる。
【0018】
前記飲料流路は、前記容器を傾けて飲料を流出させるようになっているもの、又はストロー管のいずれでもよい。
【0019】
この発明は、容器を傾けて飲料を流出させる飲料流路を備えたものに好適である。すなわち、飲料残量が少なくなると、前記出口の端側に容器を大きく傾けることになる。このとき、容器を首に対して大きく傾けても、従来例のようにヒンジの軸受部が鼻先に触れることはない。また、特許文献2のようにヒンジの軸受部と出口の間に突出する蓋係止部を採用しても、その蓋係止部が鼻先に触れることはない。
【0020】
また、この発明は、前記外付けカバーは、上面視で考えて前記回転中心に直交する鉛直面上で該蓋に上方から重なる蓋係止部を設けられており、前記蓋係止部は、上面視で考えて前記出口を間に置いた前記回転中心の反対側に配置されているものに好適である。
【0021】
上述のように蓋の反回転中心側を浮き難くすることができる。また、上述の使用方向に従うと、蓋係止部に唇が触れ難くなるため、蓋係止部の汚れを防止することができる。ひいては、出口の蓋係止部側で突出高さを大きくして蓋係止部と唇の接触を防止する必要がなく、飲料容器用栓体の全高の嵩張りを避けることができる。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、この発明は、飲料容器用栓体の外付けカバーに設けられた飲み口に唇を付けて飲料を摂取するとき、外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋が視界の左右片側に寄った位置に停止し、視界の左右中央で蓋下面全体と面することがないため、蓋で視界を邪魔され難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)はこの発明に係る第1実施形態の正面図、(b)は第1実施形態の右側面図
【図2】第1実施形態を蓋が開放停止位置に留められた状態で示す全体斜視図
【図3】第1実施形態の縦断正面を蓋が開放位置に留められた状態で示す断面図
【図4】第1実施形態の縦断正面を蓋が閉位置に留められた状態で示す断面図
【図5】第1実施形態の上面視を蓋が開放位置に留められた状態で示す平面図
【図6】この発明に係る第2実施形態を蓋が開放位置に留められた状態で示す平面図
【図7】(a)はこの発明に係る第3実施形態を飲料流路が第1の差込向きの状態で示す平面図、(b)は第3実施形態を飲料流路が第2の差込向きの状態で示す平面図
【図8】第3実施形態を飲料流路が第1の差込向きの状態で示す平面図
【図9】第3実施形態を外付けカバーから飲料流路を分離した状態で示す分解斜視図
【図10】第3実施形態の縦断側面を示す要部断面図
【図11】第3実施形態を蓋が開放停止位置に留められた状態で示す全体斜視図
【図12】この発明に係る第4実施形態を蓋が開放停止位置に留められた状態で示す全体斜視図
【図13】従来例を示す全体斜視図
【図14】別の従来例を示す全体斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の第1実施形態を添付図面に基いて説明する。第1実施形態に係る飲料容器用栓体(以下、単に「第1実施形態」と称する)は、図1〜図4に示すように、上面に開放口を設けられた容器1用のものである。第1実施形態は、容器1内と外部間に通じる飲料流路2を設けられた外付けカバー3と、外付けカバー3にヒンジを介して装着された蓋4とを備える。外付けカバー3は、上面に開放された飲料流路2の出口5から外側に連続する飲み口6を設けられている。蓋4は外付けカバー3に設けられた蓋係止部7により出口5及び飲み口6を覆った閉位置に留められ、外付けカバー3に設けられた回り止め8により出口5及び飲み口6の上方から外れた開放位置に留められるようになっている。
【0025】
具体的には、外付けカバー3は、容器1の側周上部に着脱されるカバー体9を構成部材に含む。飲料流路2は、カバー体9に対して上下に抜き差し可能に設けられている。蓋4は、カバー体9に装着されている。飲料流路2の外側壁面と一体に飲み口6が設けられている。
【0026】
蓋4及びカバー体9には、ヒンジの軸部材10を水平に支持する軸受部11,12が設けられている。軸部材10は、蓋4の回転中心CL1となる。回り止め8は、軸受部12の外側に設けられている。蓋4を開回転させられると、蓋4の回転中心CL1側の端辺部が回り止め8を弾性的に乗り越える。その結果、蓋4の自重に抗して蓋4の閉回転が回り止め8により阻止された状態になる。
【0027】
図1、図5に示すように、カバー体9は、上面視で考えて蓋4の回転中心CL1に直交する鉛直面VP上で蓋4に上方から重なる蓋係止部7と、蓋係止部7を蓋4の上方から退避させる係止解除操作を行うための操作部13とを設けられている。蓋係止部7は、閉位置の蓋4に上方から重なる部分である。蓋係止部7は、上面視で考えて出口5を間に置いた回転中心CL1の反対側に配置されている。
【0028】
蓋係止部7は、開放位置から閉回転させられた蓋4が閉位置を過ぎると自動的に閉位置を超える開回転を規制する状態になり、操作部13に解除操作を与えられると、前記規制を解除するようになっている。操作部13は、上面視で考えてカバー体9に対して回転中心CL1に直交する方向に往復スライドする押し操作部材に設けられている。蓋係止部7は、押し操作部材の上面に設けられている。このため、蓋係止部7及び操作部13は、出口5よりも鉛直面VPに沿った方向の一方側に配置される。図3中に実線で示すように、押し操作部材が待機位置にある状態で蓋4が開放位置から閉回転させられると、蓋4の係合部14が蓋係止部7の上端に接触する。この接触で生じた分力で押し操作部材が復帰ばね15に抗して押し込まれる。やがて、蓋4が閉位置を過ぎ、かつ係合部14が蓋係止部7の上端を通過すると、図4に示すように、押し操作部材が復帰ばね15の反発で待機位置に向かって復帰させられ、蓋係止部7が係合部14の上方に重なる。これにより、蓋4が閉位置に留められる。この状態で復帰ばね15に抗して操作部13を押し込めば、蓋係止部7を係合部14の上方から外し、蓋4を開回転させることができる。
【0029】
なお、特許文献2のように、蓋係止部及び操作部を出口よりも鉛直面に沿った方向の他方側に配置することもできる。蓋係止部や操作部は、蓋係止部材と操作部材との連動により蓋係止部材が蓋を規制する機構にすることもできる。蓋係止部は手動で蓋に掛ける機構にすることもできる。押し操作部材は、特許文献1のようなシーソー式に設けることもできる。
【0030】
カバー体9の外殻は、復帰ばね15等を内側に組み込むため、内カバー部材と外カバー部材とに分割されている。両カバー部材を結合一体化した状態で、カバー体9の側周内側を容器1の側周上部に螺着脱することが可能になっている。
【0031】
図1、図2、図5に示すように、飲料流路2は、上面視で考えて出口5の回転中心CL1に沿った方向の一端P1側に飲料を導く形態に設けられている。出口5の一端P1は、最も回転中心CL1に沿った方向の端である。
【0032】
より具体的には、図4、図5に示すように、飲料流路2の中間管路に絞り口が設けられている。蓋4が閉位置に停止させられた状態で、蓋4の下面に設けられたパッキン16が飲料流路2の絞り口の周縁に押し付けられる。これにより、飲料流路2が密封される。また、塵埃が出口5へ侵入することを防止するため、パッキン16は、飲料流路2の末端全周にも押し付けられるようになっている。
【0033】
飲料流路2は、蓋4が開放位置にある状態で容器1と外部間を連通させる単純な流路からなる。このため、容器1を傾けると、飲料を流出させることができる。なお、飲料流路2は、蓋4が開放位置にある状態で容器1と外部間を連通させる流路であればよく、例えば、蓋4の開閉に連動又は別途の手動操作で開閉する栓部材を組み込むことができる。
【0034】
図1、図2、図5に示すように、出口5を形成する飲料流路2の末端は、カバー体9から上下方向に沿って突出している。この末端は、一端P1のところで最も高く突出し、一端P1から反対側の他端P2に向かって回転中心CL1に沿った方向に近づくに連れて次第に低くなっている。飲み口6は、出口5の一端P1側から外側に連続するように設けられている。
【0035】
出口5を形成する末端の突出高さが一端P1側で高く、他端P2側に唇を付けることが困難な飲料流路2の形態から、出口5の一端P1側から飲み口6に唇を付けるように使用方向を制限することができる。
【0036】
なお、出口5は、上面視で上下方向に中心軸をもつ円環状になっている。出口5は、ストロー管のように使用者の口内に含まず、下唇を付けることを前提とした大きさになっている。飲み口6の水平断面形状は、前記の円環状に沿った円弧状になっている。飲料流路2の肉厚が無駄に厚くなるのを避けつつ、唇を沿わせ易くするためである。
【0037】
飲み口6は、飲料流路2の外側壁面の一端P1側で末端に沿って凹む形態になっている。その結果、飲み口6は、容器1を傾けて飲料を流出させたときの水切りになる。このため、出口5の一端P1側へ飲料を導くことを使用者に理解させ易い。
【0038】
また、外付けカバー3は、上面視で考えて回転中心CL1に直交する向きに並ぶ位置にハンドル17を備えている。ハンドル17は、回転中心CL1に沿った方向に開放した指差し孔18を形成するように設けられている。使用者が飲料を摂取するとき、ハンドル17を左手又は右手で把持し、自ずと、出口5の一端P1側又は他端P2側を手前に向けることを理解する。操作部13は、ハンドル17を握った状態で操作し易いよう、ハンドル17の上方にあることが好ましい。
【0039】
飲料流路2とカバー体9は、上下方向及びカバー体9の螺着脱時の位置関係を決める凹凸係合構造を有する。この凹凸係合構造による仮組み状態においては、出口5の両端P1,P2を結ぶ方向が回転中心CL1に沿った方向になっている。飲料流路2は、カバー体9を螺着する間も凹凸係合構造により仮組み時の向きに維持される。
【0040】
カバー体9を螺着すると、外付けカバー3が容器1に装着された組立状態になる。この組立状態では、飲料流路2と容器1との間は、飲料流路2に装着されたゴムパッキンで密封される。また、飲料流路2は、容器1内と外部間に通じる流路となる。出口5の一端P1側は、回転中心CL1に沿った方向の一方側を向く。したがって、上面視で考えて出口5のうち回転中心CL1に沿った方向の一端P1側から飲料を摂取可能である。この組立状態が得られる限り、凹凸係合構造や、飲料流路の抜き差し構造、カバー体の装着構造を適宜に採用すればよい。
【0041】
飲料を摂取しようとする使用者は、飲料流路2の形態から出口5の一端P1側から飲み口6に唇を付けることを理解する。また、使用者は、出口5の一端P1側から飲み口6に唇を付ける正規の使用方向をハンドル17、指差し孔18の向きから判別し易い。また、容器1を傾けて飲料を摂取する使用方法を承知した使用者は、水切りとなる飲み口6の凹み形態から正規の使用方向を理解する。これら使用方向を制限する構造に従い、使用者が出口5の一端P1側から飲み口6に唇を付けて飲料を摂取するとき、視界の正面は鉛直面VPとなる。このとき、出口5及び飲み口6の上方から外れた開放位置に停止させられた蓋4は、視界の左右片側に寄った位置にあり、視界の左右中央で蓋と面することはない。したがって、第1実施形態は、飲料を摂取するとき、蓋4で視界を邪魔され難い。
【0042】
また、容器1内の飲料残量が少なくなり、容器1を出口5の一端P1側に大きく傾けて飲料を流出させても、ヒンジの軸受部11,12が鼻先に触れることはない。したがって、第1実施形態は、ヒンジの軸受部11,12が汚れ難い。
【0043】
また、蓋係止部7は、上面視で考えて出口5を間に置いた回転中心CL1の反対側に配置されている。このため、飲料を摂取するとき、蓋係止部7の上方を経て飲み口6に唇を付けることがない。したがって、第1実施形態は、蓋係止部7に唇が触れ難く、蓋係止部7の汚れを防止することができる。ひいては、出口5の蓋係止部7側で突出高さを大きくして蓋係止部7と唇の接触を防止する必要がない。したがって、第1実施形態は、出口5を上方から覆う蓋4を高くする必要もなく、飲料容器用栓体の全高の嵩張りを避けることができる。
【0044】
なお、飲料流路の突出部分からなる末端流路の水平断面形態から使用方向を制限することもできる。図2、図5を参照して一例を挙げると、飲料流路の末端流路のうち、上面視で考えて出口の他端P2を含んだ流路壁部は、曲率をもたない平坦な形状とすることができる。これにより、飲料流路の末端流路に対して出口の他端P2側から唇を付け難くなる。このため、使用者は、下唇を沿わせ易い出口の一端側から唇を付けることを理解する。また、別例として、飲料流路2の末端流路は、上面視で考えて、出口の一端P1側で回転中心CL1に沿った方向に短軸をもつ半楕円環状とし、出口の他端P2を含んだ流路壁部を前記半楕円環状よりも曲率の緩い扁平又は曲率のない平坦な形状とし、飲み口の水平断面形状は前記半楕円環状に沿うように形成することができる。この別例では、出口の一端P1側で飲料を流出させ易くなるため、使用者は、出口の一端側から唇を付けることを理解する。
【0045】
次に、第2実施形態を図6に基いて説明する。以下、第1実施形態との相違点を述べる。第2実施形態は、蓋4の回転中心CL1の位置を上面視で考えて図示のように変更したものとなっている。蓋係止部7は、回転中心CL1に直交する鉛直面VP´上で蓋4に上方から重なる位置にある。この配置の結果、出口5の一端P1側が水平に広く開放されており、唇を付け易くなっている。このため、使用者は、出口の一端側から唇を付けることを理解する。この一例のように、蓋係止部7と回転中心CL1の上面視における位置関係によって正規の使用方向に制限することができる。
【0046】
第3実施形態を図7〜図11に基いて説明する。図7、図8に示すように、第3実施形態の飲料流路21は、上面視で考えて出口22の一端P1側を回転中心CL1に沿った一方向側に向ける第1の差込向きD1と、回転中心CL1に沿った他方向側に向ける第2の差込向きD2と、回転中心CL1に直交する方向に向ける第3の差込向きD3とを選択可能に設けられている。
【0047】
具体的には、図7〜図10に示すように、飲料流路21とカバー体23を仮組みするための凹凸係合構造は、飲料流路21の側周に設けられた凹部24,25,26と、カバー体23の側周内側に設けられた凸部27と、カバー体23の側周内側に設けられた溝状の凹係合部28と、飲料流路21の側周に設けられた鍔状の凸係合部29とで構成されている。
【0048】
飲料流路21をカバー体23の下方から上下方向に差し込むことにより、凸係合部29が凹係合部28に嵌り込んで仮組み状態となる。この仮組み状態では、凸係合部29と凹係合部28の内壁面の係合により、飲料流路21がカバー体23に水平に保持され、飲料流路21とカバー体23の上下方向の位置関係、及びカバー体23の螺進回転中心である上下方向軸CL2回りの位置関係が決まる。
【0049】
3ヶ所の凹部24,25,26は、同一高さで上下方向軸CL2回りの90度間隔に設けられている。使用者が飲料流路21を下方から上下方向に差し込むときに、凹部24,25,26のいずれか1つを選択し、下方から凸部27を嵌めることが可能になっている。第1の凹部24を凸部27に嵌めると、出口22の一端P1側を回転中心CL1に沿った一方向側に向ける第1の差込向きD1にすることができる。第2の凹部25を凸部27に嵌めると、出口22の一端P1側を回転中心CL1に沿った他方向側に向ける第2の差込向きD2にすることができる。第3の凹部26を凸部27に嵌めると、出口22の一端P1側を回転中心CL1に直交する方向に向ける第3の差込向きD3にすることができる。なお、差込向きを選択可能な仮組みが得られる限り、適宜の凹凸係合構造を採用すればよい。
【0050】
図8、図11に示すように、外付けカバー30の上面及び蓋31は、上下方向軸CL2を含む鉛直面VPを境として対称形になっている。この対称形は、図7に示すように、差込向きD1,D2のいずれを選択しても同じように蓋31で視界を邪魔され難くするためである。対称形にする必要はなく、差込向きD1,D2のいずれを選択しても出口22の一端P1側から唇を付けることが可能であればよい。
【0051】
図7、図8、図10に示すように、飲料流路21の絞り口の周縁に形成されたシール面32と、蓋31に設けられたパッキン33は、いずれの差込向きD1〜D3を選択してもシール面32の全周にパッキン33を押し付けることが可能な関係に設けられている。これにより、差込向きD1〜D3に応じてパッキン33の装着方向を変更する蓋仕様を避けることができる。単純な設計とするには、シール面32と、蓋31が閉位置にあるときのパッキン33の中心軸CL3を一致させればよい。
【0052】
パッキン33と飲料流路21の末端全周は、いずれの差込向きD1〜D3を選択しても飲料流路21の末端全周にパッキン33を押し付けることが可能な関係に設けられている。これにより、差込向きD1〜D3に応じてパッキン33の装着方向を変更する蓋仕様を避けることができる。
【0053】
例えば、飲料流路21の末端全周は、蓋31が閉位置にあるときの中心軸CL3を中心とした円環状であって、中心軸CL3方向に同一高さに突出していることが好ましい。これにより、いずれの差込向きD1〜D3を選択してもパッキン33と飲料流路21の末端全周との接触関係を同じにすることができる。
【0054】
第1実施形態のように飲料流路21の末端の突出高さを変化させる場合、差込向きD1〜D3に応じてパッキン33の装着方向の変更を可能にすれば、末端全周にパッキン33を押し付けることができる。装着方向の変更を避けるため、パッキン33の末端全周との対向部分である鍔部34と蓋31の外殻部材35との間に全周に亘って同じ間隔の空隙36を設定し、鍔部34の径方向幅を差込向きD1〜D3によって異なる接触関係の差を吸収可能なように冗長に設けることもできる。
【0055】
蓋31が閉位置にあるときの中心軸CL3は、上下方向軸CL2とが一致するようになっている。上述の外付けカバー30の対称性を実現すると共にカバー体23の上面中央に出口22を配置するためである。図7、図8、図11から明らかなように、上述の飲料流路21の末端全周の円環状化と相俟って、結果的に、飲み口37の凹み範囲を無視し、出口22の他端P2側や回転中心CL1に直交する端側から飲料流路21の突出部分の外側壁面に下唇を付けることが可能になっている。
【0056】
そこで、図7、図8に示すように、飲料流路21は、下方から上方に向かって末端に近づくほどに出口22の一端P1側に管路の水平断面積を広くした末端流路38を設けられている。この一例のように、出口22の一端P1側に飲料を流れ易くされた末端流路38の形態から、容器1を傾けて飲料を摂取する使用方法を承知した使用者は、出口22の一端P1側に飲料を導くことを理解する。したがって、末端流路38の形態によって正規の使用方向に制限することができる。係る末端流路38の形態は、飲み口37を外付けカバー30の上面に突出させない場合にも好適である。
【0057】
ハンドル17による使用方向の制限を併用すると、差込向きD1,D2のいずれを選択しても、誤って回転中心CL1に直交する端側から飲料流路2の外側壁面に唇を付けることは生じ難くなる。差込向きD1又は差込向きD2の場合、出口22の他端P2側から下唇を付けて飲料を摂取したとしても、蓋31で視界を邪魔され難いことに変わりはない。したがって、差込向きD1又は差込向きD2を選択可能にする場合、ハンドル17を設けることが特に好ましい。
【0058】
上述のような第3実施形態において、飲料が流出し易い正規の使用方向を前提としたとき、右利きの使用者の場合、図7(a)に示すように差込向きD1を選択すれば、操作部13を右側から操作することができるので、操作性がよい。左利きの使用者の場合、図7(b)に示すように差込向きD2を選択すれば、操作部13を左側から操作することができるので、操作性がよい。
【0059】
なお、押し操作部材の解除側への誤動作を防止するためのロック機構が外付けカバー30に設けられている。図8、図11から明らかなように、そのロック解除操作を行うためのロック操作部39は、操作部13と同じく出口22よりも鉛直面VPに沿った方向の一方側に配置されている。このため、使用者の利き手に応じて差込向きを選択すれば、ロック操作部39の操作性もよくすることができる。
【0060】
従来どおりの使用態様を好む使用者は、図8、図11に示すように、差込向きD3を選択することができる。なお、差込向きD3を選択時にハンドル17が邪魔にならないようにすることを使用方向の制限の確実性よりも優先する場合、ハンドル17を省略したり、ハンドル17を着脱式にすればよい。
【0061】
第1〜第3実施形態は、飲料流路の出口を形成する末端を上面視で考えて上下方向の中心軸をもつように設けたが、係る中心軸を傾けた飲料流路の形態とすることにより、正規の使用方向に制限することもできる。その一例として第4実施形態を図12に基いて説明する。
【0062】
第4実施形態は、飲料流路の出口41を形成する末端全周が外付けカバー42の上面に突出している。飲料流路の突出部分からなる末端流路43の中心軸CL4は、外付けカバー42の上下方向軸CL2に対して出口41の一端P1に向かって交差角θを有する。このため、使用者は、出口41の一端P1側に飲料を導くことを理解する。したがって、末端流路43の形態から正規の使用方向に制限することができる。なお、押し操作部材44を外部取付が可能なシーソー式としたため、外付けカバー42の内部に組み込む部材がない。このため、外付けカバー42の外殻が一部材からなり、飲料流路全体が外付けカバー42の外殻と一体に射出成形されている。
【0063】
ストロー管式のように出口を口に含んで飲料を摂取するようになった飲料流路は、飲み口の凹み形態や末端流路の水平断面変化を与え難い。したがって、この種の飲料流路では、末端流路43のように、専ら飲料流路の突出部分の傾きで正規の使用方向に制限することが好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1 容器
2,21 飲料流路
3,30,42 外付けカバー
4,31 蓋
5,22,41 出口
6,37 飲み口
7 蓋係止部
8 回り止め
9,23 カバー体
10 軸部材
11,12 軸受部
13 操作部
14 係合部
15 復帰ばね
16,33 パッキン
17 ハンドル
18 指差し孔
24,25,26 凹部
27 凸部
28 凹係合部
29 凸係合部
32 シール面
34 鍔部
35 外殻部材
36 空隙
38,43 末端流路
39 ロック操作部
44 押し操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内と外部間に通じる飲料流路を設けられた外付けカバーと、前記外付けカバーにヒンジを介して装着された蓋とを備え、
前記外付けカバーは、上面に開放された前記飲料流路の出口から外側に連続する飲み口を設けられており、
前記蓋は、前記外付けカバーに設けられた蓋係止部により前記出口及び前記飲み口を覆った閉位置に留められ、前記外付けカバーに設けられた回り止めにより前記出口及び前記飲み口の上方から外れた開放位置に留められる飲料容器用栓体において、
上面視で考えて前記出口のうち前記蓋の回転中心に沿った方向の端側から飲料を摂取可能であり、かつ前記出口の端側から前記飲み口に唇を付けるように使用方向を制限する構造に設けられていることを特徴とする飲料容器用栓体。
【請求項2】
前記飲料流路は、上面視で考えて前記出口の前記回転中心に沿った方向の一端側に飲料を導く形態に設けられている請求項1に記載の飲料容器用栓体。
【請求項3】
前記外付けカバーは、前記容器の側周上部に着脱されるカバー体を構成部材に含み、
前記蓋は、前記カバー体に装着されており、
前記カバー体は、上面視で考えて前記回転中心に直交する鉛直面上で該蓋に上方から重なる蓋係止部と、前記蓋係止部を前記蓋の上方から退避させる係止解除操作を行うための操作部とを設けられており、
前記蓋係止部及び前記操作部は、前記出口よりも前記鉛直面に沿った方向の一方側に配置されており、
前記飲料流路の外側壁面と一体に前記飲み口が設けられており、
前記飲料流路は、前記カバー体に対して上下方向に抜き差し可能に設けられ、かつ上面視で考えて前記出口の一端側を前記回転中心に沿った一方向側に向ける第1の差込向きと、前記回転中心に沿った他方向側に向ける第2の差込向きとを選択可能に設けられている請求項2に記載の飲料容器用栓体。
【請求項4】
前記飲料流路は、上面視で考えて前記出口の一端側を前記回転中心に直交する方向に向ける第3の差込向きを選択可能に設けられている請求項3に記載の飲料容器用栓体。
【請求項5】
前記外付けカバーは、上面視で考えて前記出口と前記回転中心に直交する向きに並ぶ位置にハンドルを備え、前記ハンドルは、前記回転中心に沿った方向に開放した指差し孔を形成するように設けられている請求項1から4のいずれか1つに記載の飲料容器用栓体。
【請求項6】
前記飲料流路は、前記容器を傾けて飲料を流出させるようになっている請求項1から5のいずれか1つに記載の飲料容器用栓体。
【請求項7】
前記外付けカバーは、上面視で考えて前記回転中心に直交する鉛直面上で該蓋に上方から重なる蓋係止部を設けられており、前記蓋係止部は、上面視で考えて前記出口を間に置いた前記回転中心の反対側に配置されている請求項1から6のいずれか1つに記載の飲料容器用栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−168059(P2010−168059A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10970(P2009−10970)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】