説明

飲料用容器の栓体

【課題】流路全体の洗浄性のみならず液溜まりしやすい栓体本体側の係合部の洗浄性を向上する
【解決手段】蓋体4は、略水平前後方向に進退自在に設けられたロック部材29と、該ロック部材29を係止方向へ付勢する付勢手段39を備え、前記ロック部材29は前記係止解除操作ボタン40の押動時に係止解除傾斜面に当接して、前方に摺動するための前方から後方にかけて斜め下側に傾斜する当接傾斜面を後部に設け、前部には、内側方向に突出した係止凹部28に係止される係止部5を備える。昇降係止解除操作ボタン40が上部に配置され視認性が高い上、蓋体4がフルオープンし洗浄性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栓体の注ぎ口又は飲み口を覆う蓋体が栓体本体に軸支され、蓋体が閉状態に係止される飲料用容器の栓体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、飲み口を設けた栓本体に片開き蓋体を開閉自在に設けたものが知られており(例えば特許文献1)、そして、蓋体に設けられるロック部材は、係合部と係脱する係脱部材と、この係脱部材を片開き蓋と外面同士が面一であることを常態として覆い外面からの押圧操作で係脱部材を退避動作させるロック解除操作部材を備えたものが知られている(例えば特許文献2)。
【0003】
また、栓本体に係止受け部を外向きに設け、蓋体に移動部を前後方向に移動可能に設け、そして係止片部に設けた係止爪を係止受け部に係脱自在に設けたものが知られている(例えば特許文献3)。
【0004】
さらに、容器本体の上端口部内に肩体を介して中栓を着脱可能に取り付け、肩体にコップ兼用の蓋体を着脱可能に取り付け、そして中栓に液通路を設けると共に、液通路に弁本体を着脱自在に設けたものが知られている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137657号公報
【特許文献2】特開2008−222238号公報
【特許文献3】特開2011−11175号公報
【特許文献4】特開2000−116542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容器の中栓の係合解除方法として、各所からさまざまな方法が提案されている。前記特許文献1の従来技術においては、係合爪向きが外向きのため、内向きの係合部が必要である。内向き係合部の場合流路を避けるため必ず左右に係合部が二箇所以上必要であり、片側の係合部のみが係る“片係かり”の危険性があり漏れに繋がる恐れがある。また、解除に際して引っ張る行為が必要であり、押す行為に比べて操作性、視認性が悪い。
前記特許文献2の従来技術においては、係合部を動作させるのが押しスライド方式で更に面一外観となっているため、どのようにあけたら良いか分かりにくく、視認性が悪い。
【0007】
また、前記特許文献3の従来技術においては、移動部が蓋体天面に大きくあらわれており、蓋体を閉める際に移動体を誤って操作してしまうおそれがあり、操作性が悪い。
【0008】
さらに、前記特許文献4の従来技術においては、操作部が昇降式で目視しやすく視認性が高いが、液通路のみ開閉するため、流路から脇に飛び散った液体の洗浄が困難で洗浄性が悪いおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、流路全体や栓本体、蓋体の洗浄性を向上し、さらに蓋体に設けられる解除用操作部の誤操作を少なくでき、かつ確実な動作を実現するようにすることを目的とする。また、コップを締め付けた際に外部から衝撃が加わっても、係止解除されることを防止できたり、係止解除ボタンを押動したとき、その状態で係止解除ボタンから手を離しても誤作動が生じにくく、さらに、係止解除ボタンを過度に押し込んだ場合にも、蓋下体と蓋上体が分解されることがなく、全高を低く抑えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の飲料用容器の中栓は、飲料用容器本体の上部開口部に着脱自在に取り付けられる栓体本体と、
該栓体本体内部に形成された液流路と、
該液流路の上部かつ前記栓体本体の前側に設けた注ぎ口又は飲み口と、
前記栓体本体の後側で該栓体本体に回動自在に軸支部を介して前記液流路を開閉する蓋体と、
該蓋体に設けられ前記液流路を密閉する止水部材と、
前記蓋体を閉状態に係止する係止部と、
前記蓋体上部に昇降自在に設けられた係止解除操作部とを備え、
前記栓体本体は、前記注ぎ口又は飲み口の外側に開放した係止凹部を備え、
前記係止解除操作部は、下部に前方から後方にかけて斜め下方向に傾斜した係止解除傾斜面を備え、
前記蓋体は、略水平前後方向に進退自在に設けられたロック部材と、該ロック部材を係止方向へ付勢する付勢手段を備え、
前記ロック部材は前記係止解除操作部の押動時に前記係止解除傾斜面に当接して、前方に摺動するための前方から後方にかけて斜め下側に傾斜する当接傾斜面を後部に設け、前部には、内側方向に突出した前記係止凹部に係止される前記係止部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明の飲料用容器の中栓は、請求項1において、前記飲料用容器本体に前記蓋体を覆うようにコップを着脱自在に設け、前記蓋体を閉状態に係止したときにロック部材の前方外面が前記蓋体外周面よりも外側にあり、前記ロック部材前方外面と前記コップ内壁面との間の距離が、前記係止凹部と係止片の係止距離よりも少なく形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明の飲料用容器の中栓は、請求項1又は2において、前記蓋体は、前記止水部材を着脱自在に取り付けられる蓋下体と、前記係止解除操作部を配置する蓋上体とで構成され、蓋下体と蓋上体の中間部に前記ロック部材と前記第一の付勢手段を設け、前記蓋下体は、前記ロック部材の略水平方向への進退時に、当接し合って誘導する前方から後方にかけて斜め上方に傾斜する誘導傾斜面を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明の飲料用容器の中栓は、請求項1〜3において、前記蓋下体と前記蓋上体が、強制嵌合、且つ前記軸支部を形成するヒンジ軸と略平行に挿入される固定ピンで固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明の飲料用容器の中栓は、請求項4において、前記ロック部材は、前記当接傾斜面から左右対称に前記ヒンジ軸と略並行に伸びる翼部と、該翼部から前記ロック部材前方外面に左右対称に伸びるアーム部で構成され、前記注ぎ口又は飲み口が前記アーム部内部に納まることを特徴とする
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、係止解除操作部が上部に昇降自在に設けられているため視認性が高い上、上方から操作し易い。稼動部は蓋体内部で動作するため、誤って触れることがなく、動作が確実で操作性に優れている。さらに蓋体がフルオープンするため洗浄性も良い。
【0016】
請求項2の発明によれば、コップを締め付けた際に外部から衝撃が加わっても、係止解除されることを防止できる。また、稼動部分を目視確認し易く、係止解除操作時に使用者が意識的にその部分の動作を妨げないようになる。このため、動作確実性に優れる。また、容器本体が減圧となった時に係止解除操作部を押しても開かなくなった場合、係止解除操作部を押しながらロック部材に指を引っ掛けて蓋を開けやすい。
【0017】
請求項3の発明によれば、係止解除ボタンから手を離しても、係止部が係止凹部の上面に乗り上げるため、係止解除ボタンを押動したとき、その状態で係止解除ボタンから手を離しても再度係止されて蓋体が開かなくなる誤作動が生じにくい。
【0018】
請求項4の発明によれば、係止解除ボタンを過度に押し込んだ場合にも、蓋下体と蓋上体が分解されることがない。
【0019】
請求項5の発明によれば、全高を低く抑えるつつ飲み口または注ぎ口の高さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1を示す縦断面図である。
【図2】同蓋体が係止状態の栓体の斜視図である。
【図3】同蓋体が係止解除状態の栓体の斜視図である。
【図4】同蓋体が開いた状態の栓体の斜視図である。
【図5】同蓋体が係止状態の栓体の断面図である。
【図6】同蓋体が解除状態の栓体の断面図である。
【図7】同蓋体が開いた状態の栓体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明する。魔法瓶等の液体容器の栓体1は、容器本体2の上部開口部に着脱自在に取り付けられる外栓等と称する栓体本体3と、該栓体本体3の上部に上下方向に回動可能に設けられて栓体本体3の上部開口を開閉する内栓等と称する蓋体4と、該蓋体4を前記栓体本体3に閉状態に係止する係止部5とを有している。容器本体2は外容器6と内容器7の間に真空等の断熱層8を介在している。さらに、蓋体4の上方を覆うように液体容器に取手(図示せず)を外側に備えたコップ9を着脱自在に設ける。このコップ9は底部9Dを上向きとして、容器本体2の首部外周の雄ネジ部10にコップ9の周面部9Sに形成した雌ネジ部11を容器本体2の首部外周の雄ネジ部11に螺合できるようになっている。尚、栓体1の中心線Xは、容器本体2の中心線Xと一致するように配置されている。
【0023】
前記栓体本体3は、上部前側に注ぎ口12を上方へ突設して有底筒状に形成された栓体部13と、該栓体部13の下部に設けられて容器本体2への取付部14とからなり、栓体部13を容器本体2の開口部内に挿入して、その下部に設けられた取付部14の外周に形成された雄ネジ部15を容器本体2の首部内周の雌ネジ部16に螺合することにより容器本体2の開口部に取り付けられる。前記栓体部13の上部後側に、前記蓋体4が水平方向の支軸たるヒンジ軸4Aにて上下方向にヒンジ回動可能に取り付けられている。これにより、栓体1は、ヒンジ軸4Aと径方向に対向する側、すなわち前側が注ぎ口12になる。
【0024】
前記栓体部13は、上面のほぼ中央に、底壁17Uをヒンジ軸4A側から注ぎ口12側へ低くなるよう傾斜して前後方向がやや長い凹部17が形成されている。そして底壁17の低い方に液通孔18を、高い方に空気孔19をそれぞれ穿設して、該底壁17から上部開口、すなわち注ぎ口12の間を液流路20としている。また、取付部14の下部外周には、栓体本体3を容器本体2に取り付けたときに、首部内周の雌ネジ部16の下部に内側に突設する段部21に、密着するリング状のシール部材22が備えられている。
【0025】
前記蓋体4は、凹部17に遊挿する有底筒状に形成された蓋下体23と、該蓋下体23の上部開口を、中間部24を介して覆う蓋上体25とからなり、蓋下体23の外周、底面には止水部材たるシール部材26が装着しており、蓋閉時にはシール部材26は液通孔18、空気孔19を閉塞できるようになっている。尚、蓋下体23と蓋上体25が、強制嵌合、且つ軸支部を形成するヒンジ軸4Aと略平行に、蓋下体23と蓋上体25を左右方向に貫通する固定ピン27で固定されている。
【0026】
前記蓋上体25の外周面の前方下部には、係止部5が設けられていると共に、栓体本体3の外周面の前方上部には係止部5が係止可能な係止受け部としての係止凹部28が設けられている。そして、係止部5は蓋体4を前後方向に摺動自在なロック部材29の前部に設けられおり、このロック部材29は後述する、第一の連結部材であるアーム部31、第二の連結部材である翼部32、第三の連結部材である中間連結部材33などにより形成される。
【0027】
蓋上体25は中心線Xを中心とした平面が円形なほぼ筒状であって、その外周面の前方下縁に上向きに正面が門型をなした内外を連通する連通部たる切り欠き部34が形成されている。この切り欠き部34は平面が外周面下縁の周囲の、1/3以下、実施例では略1/4の長さを有する円弧状に形成されている。そして、切り欠き部34に嵌合するように前後方向にスライド可能なロック部材29の前面下縁に下向きに係止部5が設けられているものであって、係止部5は外周面下縁の正面、すなわち外周面の前方下縁の中央に下向き小突起部35を設けると共に、この下向きの下部43に内向き、すなわち上下方向の蓋体4の中心線Xの方向に向いた内向き小突起部36を設けている。この内向き小突起部36の下面36Uは内側に向かうに従い上向きになるように傾斜している。ロック部材29の前方の外周面30S下部の中心線Xからの平面視の第一の半径Lは、蓋上体25の外周面25Sの中心線Xからの平面視の第二の半径Mと同じに形成されており、係止部5が係止凹部28に係止している状態では、ロック部材29の前方の外周面外周面30S下部と蓋上体25の外周面25Sとは同一曲面状に配置されている。ロック部材29の前方の外周面30S上部は、上方に向かうに従い径大となるようにテーパ状に形成されており、外周面30S上部の中心線Xからの平面視の第三の半径Nは、第二の半径Mより大きく形成されており、係止部5が係止凹部28に係止している状態では、ロック部材29の前面の周面30S上部は蓋上体25の外周面25Sより前方に配置されており、このため、ロック部材29の前方の外周面30S上部、特にロック部材29の上面30Uにおける外周面25Sからの突出箇所に指掛け或いは爪掛けができるようになっている。また、ロック部材29の前後方向移動を案内するために、切り欠き部34の左右端とロック部材29の左右端には、段状部37を介して上下左右方向を位置決めしてスライドできるように係合している。
【0028】
一方、係止凹部28は蓋上体25の外周面25Sの前方に上方及び外方を開口した凹状であって、係止凹部28の内側面の上部に係止受け用小突起38が左右方向に沿って設けられる。この係止受け用小突起38はその上面38Uが外側に向かうほど低くなる傾斜面によって形成されている。
【0029】
ロック部材29は常時は係止部5が係止凹部28に係止維持できるように中空な中間部24に内蔵されたばね等第一の付勢手段39により内側に付勢されている。このため、ロック部材29の左右端には後方へ向けて左右一対の棒状のアーム部31が連結され、このアーム部31の後部42に内側に向けた翼部32がそれぞれ連結されており、これら左右一対の翼部32の内側端の相互間に後ろ向きに突設する平面視コ字形状の中間連結部材33が連結しており、この中間連結部材33と中間部24を形成する前壁24Fとの間に第一の付勢手段39が介在して、中間連結部材33を常時後方へ押圧して、閉蓋時に係止部5を係止凹部28に係止維持できるようにしている。尚、注ぎ口12が左右一対のアーム部31の内部に納まるようになっている。さらに、蓋下体23は、ロック部材29の略水平方向への進退時に、翼部32の下面が当接し合って誘導する前方から後方にかけて斜め上方に傾斜する誘導傾斜面45を設けている。
【0030】
前記蓋上体25の上面のほぼ中心線X上、実施例では中心線Xよりやや後方に、前記係止材5と係止凹部28との係止維持を解除する係止解除ボタン40が昇降自在に貫挿している。この係止解除ボタン40は中心線Xと平行な円筒形であって、その上面40Uは、前記係止維持状態では、蓋上体25の上面と、蓋上体25の上面に配置された凹部25Aの底部との中間に配置されており、上面40Uが上方に突出しないようになっている。
【0031】
そして、係止解除ボタン40の下部の後向き面状の前部41と、中間連結部材33の後ろ向き面状の後部42とは摺動可能に係止している。また、係止解除ボタン40の下部43と中間部24の底壁24Uとの間にはばね等の第二の付勢手段44が介在しており、この第二の付勢手段44は係止解除ボタン40を上述の高さ位置に常時は位置するようにするように上方へ付勢している。係止解除ボタン40の前部41はその前方から後方にかけて次第に低くなるようにテーパ状に形成されている。中間連結部材33の後部42はその前方から後方へかけて次第に低く同じ傾斜角度となってテーパ状に形成されている。したがって、係止解除操作部である係止解除ボタン40の上面40Uを下方に押圧して、下部43が下降すると、後部42、ひいては係止部5が第一の付勢手段39に抗して前進することで、係止部5が係止凹部28との係止状態を解除することができる。
【0032】
また、コップ9を定位置に螺合した状態では、ロック部材29における外周面30Sの上端からコップ9の周面部9Sにおける内壁面までの距離Oが、係止状態における係止部5と係止凹部28との前後方向の係止距離Pよりも少なく形成されている。
【0033】
さらに、蓋下体23の中間部24の左右壁24Sには、前記ロック部材29の略水平方向への進退時に、翼部32が当接し合って誘導する前方から後方にかけて斜め上方に傾斜する誘導傾斜路を形成する前記誘導傾斜面45を設けている。誘導傾斜面45は中間部24の左右壁24Sに形成された内外を連通する貫通孔の前後方向の下辺によって形成されている。
【0034】
ヒンジ軸4Aには、蓋体4を常時開方向(上方)に付勢するリング状弾性部材(図示せず)が設けられる。弾性部材は一端を栓体本体3、他端を蓋体4にそれぞれ接続すると共に、これらの中間をヒンジ軸4Aに巻装したものであり、栓体本体3に設けたヒンジ軸4Aの軸受け47とその近傍にある蓋体4には、開蓋時に係止可能な係止小突起48、係止受け小突起49が設けられている。
【0035】
尚、図中50は栓体部13の外周面に形成した滑り止め用突起である。
【0036】
次に前記構成についてその作用を説明する。係止部5が係止凹部28に係止することで、蓋体4は閉状態を維持する。この状態では第一の付勢手段39の付勢力にしたがって係止部5は後ろ向きに付勢され続ける。そして、シール部材26により液通孔18、空気孔19を封ずるようにしている。
【0037】
一方、閉蓋状態の蓋体4を蓋開するときは、係止解除ボタン40を第二の付勢手段44の付勢力に抗して押圧せしめて下降して、前部41が下部43、ひいては係止部5を前方に押圧することで、係止部5が係止凹部28より離脱して係止状態が解除される。この後、蓋体4は第二の付勢手段44によって開方向に付勢されて開き、そして係止小突起48、係止受け小突起49が係止することで、蓋体4は斜め上向きに維持される。この状態で容器本体2を傾斜して収納液を液通孔18より排出することができる。
【0038】
このような蓋開時において、係止解除ボタン40を押圧したにもかかわらず、万一係止部5が前方へ移動しなくなったときは、ロック部材29の上面における周面からの突出箇所に指掛け或いは爪掛けして強制的に引き出すことができる。
【0039】
また、蓋閉時において、ロック部材29が後退しない状態であっても、コップ9を容器本体2に螺合すると、コップ9の周面の内側が定位置よりも前方に突出していたロック部材29スライド部材30の周面上部を後方に押圧することで、ロック部材29を強制的に押し込んで係止部5を係止凹部28に係止することができる。
【0040】
以上のように、前記実施例では飲料用容器本体2の上部開口部に着脱自在に取り付けられる栓体本体3と、該栓体本体3内部に形成された液流路20と、該液流路20の上部かつ前記栓体本体3の前側に設けた注ぎ口12と、前記栓体本体3の後側で該栓体本体3に回動自在に軸支部を介して前記液流路20を開閉する蓋体4と、該蓋体4に設けられ前記液流路20を密閉する止水部材たるシール部材26と、前記蓋体4を閉状態に係止する係止部5と、前記蓋体4上部に昇降自在に設けられた係止解除操作部とを備え、前記栓体本体3は、前記注ぎ口12の外側に開放した係止凹部28を備え、前記係止解除操作部は、下部に前方から後方にかけて斜め下方向に傾斜した係止解除傾斜面を備え、前記蓋体4は、略水平前後方向に進退自在に設けられたロック部材29と、該ロック部材29を係止方向へ付勢する第一の付勢手段39を備え、前記ロック部材29は前記係止解除ボタン40の押動時にそれぞれテーパ状の前部41と後部42に当接したことにより、蓋体4がヒンジ軸支され回動自在に開閉するので、液流路20の洗浄性が良く、栓体本体3の係止部5が外側に開放した係止凹部28であるため、係止部5に溜まった汚れも洗浄しやすい。しかも、係止部5が1箇所であるため、蓋体4閉操作時に邪魔にならない。因って、閉操作の確実性が向上する。
【0041】
特に、係止解除操作部40が蓋体4の上部に昇降自在に設けられているため視認性が高い上、上方から操作し易い。また、後部42などの稼動部は蓋体4内部で動作するため、誤って触れることがなく、動作が確実で操作性に優れている。さらに蓋体4がフルオープンするため洗浄性も良い。
【0042】
また、ロック前方外面が蓋体4外周面よりも外側にあり、ロック部材29前方外面からコップ9内壁面までの距離Oが、係止距離Pよりも少ないため、コップ9を締め付けた際に外部から衝撃が加わっても、優先的にロック前方外面がコップ9内壁に当接し、係止解除されることを防止できる。さらに、容器本体2の内部が密閉したままの長期保存による飲料の温度降下で減圧になった時でも、係止解除操作部40を押しながらロック部材29に指を当てやすく蓋体4を持上げることが容易である。
【0043】
さらに、前記蓋体4は、前記止水部材を着脱自在に取り付けられる蓋下体23と、前記係止解除操作部を配置する蓋上体25とで構成され、蓋下体23と蓋上体25の中間部に前記ロック部材29と前記第一の付勢手段39を設け、前記蓋下体23は、前記ロック部材29の略水平方向への進退時に、当接し合って誘導する前方から後方にかけて斜め上方に傾斜する誘導傾斜面45を設けたことで、係止解除ボタン40を押動し、ロック部材29が連動して係止部5が外れる際に、蓋下体23の誘導傾斜面45に当接してロック部材29が摺動するため、係止部5がやや斜め前方に向かって動き、その状態で係止解除ボタン40から手を離しても、係止部5が係止凹部28の上面に乗り上げるため、再度係止されて蓋体4が開かなくなる誤作動が生じにくい。
【0044】
また、蓋下体23と蓋上体25が、強制嵌合、且つ軸支部を形成するヒンジ軸4Aと略平行に挿入される固定ピン27で固定されているので、係止解除ボタン40を過度に押し込んだ場合にも、蓋下体23と蓋上体25が分解されることがない。
【0045】
さらに、ロック部材29は、前記当接傾斜面から左右対称に前記ヒンジ軸と略並行に伸びる翼部32と、該翼部32から前記ロック部材29前方外面に左右対称に伸びるアーム部31で構成され、前記注ぎ口12が前記左右一対のアーム部31内部に納まるようにしたことで、ロック部材29が注ぎ口12の左右両脇を通過するため、注ぎ口12の上部にロック部材29を配置する場合よりも全高を低く抑えることができ、この結果注ぎ口12の高さを確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように本発明に係る飲料用容器の中栓は、各種の用途に適用できる。例えば、栓体には飲み口が設けられるものでもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 容器本体
3 栓体本体
4 蓋体
4A ヒンジ軸
5 係止部
9 コップ
12 注ぎ口
20 液流路
23 蓋下体
25 蓋上体
26 シール部材(止水部材)
27 固定ピン
28 係止凹部
29 ロック部材
39 第一の付勢手段
31 アーム部
40 係止解除ボタン(係止解除操作部)
41 前部(係止解除傾斜面)
42 後部(係止解除傾斜面)
45 誘導傾斜面
O 距離
P 係止距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用容器本体の上部開口部に着脱自在に取り付けられる栓体本体と、
該栓体本体内部に形成された液流路と、
該液流路の上部かつ前記栓体本体の前側に設けた注ぎ口又は飲み口と、
前記栓体本体の後側で該栓体本体に回動自在に軸支部を介して前記液流路を開閉する蓋体と、
該蓋体に設けられ前記液流路を密閉する止水部材と、
前記蓋体を閉状態に係止する係止部と、
前記蓋体上部に昇降自在に設けられた係止解除操作部とを備え、
前記栓体本体は、前記注ぎ口又は飲み口の外側に開放した係止凹部を備え、
前記係止解除操作部は、下部に前方から後方にかけて斜め下方向に傾斜した係止解除傾斜面を備え、
前記蓋体は、略水平前後方向に進退自在に設けられたロック部材と、該ロック部材を係止方向へ付勢する付勢手段を備え、
前記ロック部材は前記係止解除操作部の押動時に前記係止解除傾斜面に当接して、前方に摺動するための前方から後方にかけて斜め下側に傾斜する当接傾斜面を後部に設け、前部には、内側方向に突出した前記係止凹部に係止される前記係止部を備えたことを特徴とする飲料用容器の中栓。
【請求項2】
前記飲料用容器本体に前記蓋体を覆うようにコップを着脱自在に設け、前記蓋体を閉状態に係止したときにロック部材の前方外面が前記蓋体外周面よりも外側にあり、前記ロック部材前方外面と前記コップ内壁面との間の距離が、前記係止凹部と係止片の係止距離よりも少なく形成されていることを特徴とする請求項1記載の飲料用容器の中栓。
【請求項3】
前記蓋体は、前記止水部材を着脱自在に取り付けられる蓋下体と、前記係止解除操作部を配置する蓋上体とで構成され、蓋下体と蓋上体の中間部に前記ロック部材と前記第一の付勢手段を設け、前記蓋下体は、前記ロック部材の略水平方向への進退時に、当接し合って誘導する前方から後方にかけて斜め上方に傾斜する誘導傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の飲料用容器の中栓。
【請求項4】
前記蓋下体と前記蓋上体が、強制嵌合、且つ前記軸支部を形成するヒンジ軸と略平行に挿入される固定ピンで固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料用容器の中栓。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記当接傾斜面から左右対称に前記ヒンジ軸と略並行に伸びる翼部と、該翼部から前記ロック部材前方外面に左右対称に伸びるアーム部で構成され、前記注ぎ口又は飲み口が前記アーム部内部に納まることを特徴とする請求項4記載の飲料用容器の中栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75719(P2013−75719A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218148(P2011−218148)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】