説明

飲料用容器

【課題】飲料用容器において飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を収容するだけで酸化を防げるとともに、酸化還元電位を下げることができること。
【解決手段】飲料用容器1は、アルミニウム容器2の内部にPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル3が所定容量の空間4を形成するように間隙を空けて固定され、空間4には石英閃緑ひん岩の微粉末をゲル化して蒸留水に分散させたスラリー5が充填されている。この飲料用容器1の中(PETボトル3の中)に水道水、スポーツドリンク、オレンジジュース、炭酸飲料、アルコール飲料、牛乳を入れて酸化還元電位(ORP)の経時変化をORP測定器で測定したところ、いずれの飲料についてもORP値が大きな負の値となり、炭酸飲料、牛乳を除いて、ORPの負の値は長期間に亘って持続することが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容された飲料水、清涼飲料、アルコール飲料を始めとする飲料の酸化を防止するとともに酸化還元電位を下げることができる飲料用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載されているように、食品、飼料、化粧品等の品質を保持するために、これらに抗酸化剤を添加することが有効なことが知られている。また、同じく特許文献1に記載されているように、生体内における酸化を防止または低減させる目的で、抗酸化剤を生体に投与することによって、生体内酸化によって発生する活性酸素・フリーラジカル・過酸化脂質等を消滅または低減させることができることが知られている。
【0003】
このような目的で用いられる抗酸化系物質としては、他にも特許文献2に記載されている腐植土抽出物質含有水溶液や、本発明者らの発明にかかる特許文献3に記載されている生体機能活性化物質等が知られている。これらの抗酸化系物質は、化粧品、発毛剤、石鹸、入浴剤等に応用され、また水溶液を濾過して食品・飲料水・ドリンク剤に添加することによって抗酸化作用を示し、更には直接または希釈して飲用しても効果があると言われている。
【特許文献1】特開2001−200250号公報
【特許文献2】特許第3507347号
【特許文献3】特開2001−151682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献3に記載された抗酸化系物質においては、食品、飲料、化粧品等に添加することによって顕著な抗酸化性を示すものの、直接飲用に供するためには濾過したりカラムクロマトグラフィーで処理したりしなければならない。また、天然物に由来するこれらの抗酸化系物質は、生体にとっての安全性は高いが、物質自身の有する味や香りによって、飲料水や既存の飲料に添加した場合には飲料の味や風味を損ねる可能性があるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の技術と全く観点を変えて、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を容器に収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にかかる飲料用容器は、飲料水、清涼飲料、アルコール飲料を始めとする飲料の酸化を防止するとともに酸化還元電位を下げる飲料用容器であって、金属製容器と該金属製容器の内部に固定された合成樹脂製容器とを具備し、前記金属製容器の内面と前記合成樹脂製容器の外面との間に所定容量の空間が形成され、該空間に酸化還元電位が負であるスラリーを収容したものである。
【0007】
請求項2の発明にかかる飲料用容器に収容した請求項1のスラリーは、ケイ酸(SiO2 )、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、炭素(C)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)を含有する石英斑岩の微粉末をゲル化してなる酸化還元電位が負である石英斑岩ゲル化物としたものである。
【0008】
請求項3の発明にかかる飲料用容器は、請求項1または請求項2の構成において、前記石英斑岩は石英閃緑ひん岩であるものである。
【0009】
請求項4の発明にかかる飲料用容器は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記合成樹脂製容器の内容量は前記所定容量の空間の容量の0.5倍〜3.0倍の範囲内であるものである。
【0010】
請求項5の発明にかかる飲料用容器は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記合成樹脂製容器はPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルであるものである。
【0011】
請求項6の発明にかかる飲料用容器は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記金属製容器はアルミニウム製容器またはアルミニウム合金製容器であるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にかかる飲料用容器は、飲料水、清涼飲料、アルコール飲料を始めとする飲料の酸化を防止するとともに酸化還元電位を下げる飲料用容器であって、金属製容器と該金属製容器の内部に固定された合成樹脂製容器とを具備し、前記金属製容器の内面と前記合成樹脂製容器の外面との間に所定容量の空間が形成され、該空間に酸化還元電位が負であるスラリーを収容したものである。
本発明者らは、石英閃緑ひん岩、麦飯石を始めとする石英斑岩の微粉末をゲル化してなる石英斑岩ゲル化物の抗酸化作用(還元作用)について、鋭意実験研究を重ねた結果、石英斑岩ゲル化物のスラリーを金属製容器に入れ、その中に合成樹脂製容器に入れた水道水を漬けることによって、合成樹脂製容器に入れた水道水の酸化還元電位(ORP)が時間とともに負の値が大きくなっていくことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0013】
本発明者らの実験結果について説明すると、石英斑岩の一種である石英閃緑ひん岩の微粉末に蒸留水を加えてボールミルで混合して得られたゲル状のスラリーを、蓋付きの金属製容器に入れ、その中に合成樹脂製容器に入れた水道水を入れて蓋をして、酸化還元電位(ORP)測定器で水道水のORP値の経時変化を測定した。同時に、ORP測定器でスラリーのORP値の経時変化をも測定した。
【0014】
その結果、スラリーは一週間以上大きな負のORP値を示し続け、水道水のORP値は最初は正の値を示したが、約半日で負の値に変化し、以後日にちが経過するにつれて負の値が大きくなっていった。また、本発明者らが負のORP値を示した水道水を飲んでみたところ、水道臭が消えて爽やかな風味を示した。
【0015】
このように、大きな負のORP値を示すスラリーに合成樹脂製容器に入れた水道水を漬けるだけで水道水のORP値が下がる科学的な根拠は未詳であるが、同一のスラリーに金属製容器に入れた水道水を漬けた場合には、このような作用効果は全く得られなかった。従って、電磁気学的に考えると、絶縁体である合成樹脂製容器を挟んで外部のスラリーと内部の飲料との間で静電誘導が起こり、大きな負のORP値を示すスラリーを入れた金属製容器はより大きな負の電位となり、この金属製容器と導電体である飲料との間で電気が流れているものと推測される。
【0016】
従って、大きな負のORP値を示すスラリーを金属製容器に入れ、その中に合成樹脂製容器に入れた飲料を漬けることによって、このように飲料のORP値が下がり酸化を防止するとともに風味を改善する作用効果が得られるものと考えられる。
このようにして、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器となる。
【0017】
請求項2の発明にかかる飲料用容器に収容した請求項1のスラリーは、ケイ酸(SiO2 )、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、炭素(C)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)を含有する石英斑岩の微粉末をゲル化してなる酸化還元電位が負である石英斑岩ゲル化物としたものであり、発明者の実験では、最も飲料用容器の中に入れた飲料のORP値を下げる作用効果が大きいことが判明した。
【0018】
請求項3の発明にかかる飲料用容器においては、石英斑岩が石英閃緑ひん岩である。本発明者らが鋭意実験研究を重ねた結果、種々の石英斑岩の中でも石英閃緑ひん岩の微粉末からなるスラリーを用いた場合が、最も飲料用容器の中に入れた飲料のORP値を下げる作用効果が大きいことが分かった。
【0019】
このようにして、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器となる。
【0020】
請求項4の発明にかかる飲料用容器は、合成樹脂製容器の内容量が所定容量の空間の容量の0.5倍〜3.0倍の範囲内、より好ましくは1.5倍〜2.5倍の範囲内である。
【0021】
合成樹脂製容器に入れた飲料の量に対して合成樹脂製容器を囲むスラリーの量が多いほど、飲料のORP値を下げる効果が大きいが、合成樹脂製容器に飲料を一杯に充填し、所定容量の空間にスラリーを充填した場合を考えると、飲料の量がスラリーの量の0.5倍未満になると、飲料のORP値を下げる効果は大きくなるが飲料を少ししか収容することができないため、不経済である。また、飲料の量がスラリーの量の3.0倍を超えると、飲料のORP値を下げる効果が小さくなってしまい、十分な還元効果が得られなくなる。従って、合成樹脂製容器の内容量は所定容量の空間の容量の0.5倍〜3.0倍の範囲内であることが好ましい。
【0022】
更に、飲料の量がスラリーの量の1.5倍以上である方が、飲料を多く収容できるためより経済的であり、飲料の量がスラリーの量の2.5倍以下である方が、飲料のORP値を下げる効果が大きく発揮されるため、合成樹脂製容器の内容量は所定容量の空間の容量の1.5倍〜2.5倍の範囲内であることが、より好ましい。
【0023】
このようにして、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器となる。
【0024】
請求項5の発明にかかる飲料用容器は、合成樹脂製容器がPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルである。PETボトルは、種々多様な飲料等の容器として、今日流通過程及び販売店において大規模に使用されており、好みの容量のものが非常に低価格で入手できるため、本発明にかかる飲料用容器における合成樹脂製容器として、極めて適している。即ち、本発明にかかる飲料用容器のコストを下げることができ、また種々の容量の飲料用容器を容易に製造することができる。
【0025】
このようにして、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を容器に収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器となる。
【0026】
請求項6の発明にかかる飲料用容器は、金属製容器がアルミニウム製容器またはアルミニウム合金製容器である。アルミニウム製容器またはアルミニウム合金製容器は軽量であるため、取扱い及び持ち運びに便利であり、また水性のスラリーを入れても錆びないため、本発明にかかる飲料用容器における金属製容器として、極めて適している。
【0027】
このようにして、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を容器に収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる飲料用容器となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態にかかる飲料用容器について、図1を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる飲料用容器の全体構造を示す縦断面図である。
【0029】
図1に示されるように、本実施の形態にかかる飲料用容器1は、金属製容器としてのアルミニウム容器2の内部に有機合成樹脂製容器としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル3が、所定容量の空間4を形成するように間隙を空けて固定されている。所定容量の空間4には、石英斑岩の一種としての石英閃緑ひん岩の微粉末をゲル化して蒸留水に分散させたスラリー5が充填されている。
【0030】
ここで、石英閃緑ひん岩の微粉末をゲル化して蒸留水に分散させたスラリー5の製造方法について説明する。石英閃緑ひん岩の微粉末に対して蒸留水を添加し、これを湿式ボールミルに入れて回転混合することによって、ゲル化したスラリー5が得られる。本実施の形態においては、蒸留水80重量%重量に対して石英閃緑ひん岩の微粉末を20重量%加えてスラリー5を製造した。本実施の形態にかかるスラリー5の製造に用いた石英閃緑ひん岩の微粉末の成分を蛍光X線分析で分析した結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示されるように、本実施の形態において用いた石英閃緑ひん岩の微粉末は、ケイ酸(SiO2 )を最も多く含み、次いでアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、炭素(C)を含有している。その他に、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、りん(P)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)をそれぞれ微量含有している。
【0033】
次に、本実施の形態にかかる飲料用容器1の製造方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、アルミニウム容器2は、キャップ2A,上部2B,胴部2C,底部2Dから形成されており、上部2Bの内壁にはPETボトル3の雄ねじ3aに対応する雌ねじ2bが設けられている。また、図1に示されるように、アルミニウム容器2の各部分キャップ2A,上部2B,胴部2C,底部2Dもそれぞれ雄ねじと雌ねじの組み合わせによって、着脱可能に組み立てることができる。
【0034】
飲料用容器1の製造の手順は、以下の通りである。まず、アルミニウム容器2の上部2Bの内壁の雌ねじ2b全体に圧縮硬化性の接着剤を塗布し、PETボトル3の雄ねじ3aを一杯まで強くねじ込むことによって、圧縮硬化性の接着剤を硬化させてPETボトル3をアルミニウム容器2の上部2Bに固定する。同様に、アルミニウム容器2の上部2Bの雌ねじ全体に圧縮硬化性の接着剤を塗布し、アルミニウム容器2の胴部2Cの雄ねじを一杯まで強くねじ込むことによって、圧縮硬化性の接着剤を硬化させてアルミニウム容器2の上部2Bと胴部2Cとを一体化させる。
【0035】
これによって、PETボトル3の外面とアルミニウム容器2の上部2B及び胴部2Cの内面との間に所定容量の空間4が形成されるので、PETボトル3の底面を真上に向けた状態で、この空間4に上述の手順で製造したスラリー5を流し込み、充填する。そして、アルミニウム容器2の胴部2Cの雄ねじに底部2Dの雌ねじをねじ込んで、スラリー5を密封状態とする。ここで、底部2Dは胴部2Cに対して圧縮硬化性の接着剤によって接着固定しても良いし、接着剤を用いずに着脱可能としても良い。
【0036】
このようにして、図1に示される本実施の形態にかかる飲料用容器1が製造される。ここで、飲料用容器1の容量即ちPETボトル3の容量は500mlであり、アルミニウム容器2の容量は800mlである。従って、所定容量の空間4の容量は(800ml−(500ml+PETボトル3の厚み分)=300ml−α)となる。これによって、有機合成樹脂製容器としてのPETボトル3の内容量は、所定容量の空間4の容量の約1.7倍となって、飲料を十分な量入れられるとともに、所定容量の空間4に収容されるスラリー5の量も十分な量となる。
【0037】
この飲料用容器1の中(PETボトル3の中)に供試体として種々の飲料を入れて、酸化還元電位(ORP)の経時変化を酸化還元電位(ORP)測定器によって測定した。ORP測定器としては、ホリバF53とタケムラOM−68の二種類のORP測定器を使用した。なお、タケムラOM−68は、測定範囲(測定限界)が±600mVである。
【0038】
まず、水道水について、単に通常の容量が500mlのPETボトルに水道水を入れた供試体Aと、水道水を本実施の形態にかかる飲料用容器1に入れた供試体Bとについて、ORPの経時変化をORP測定器としてタケムラOM−68を用いて測定した。なお、参考のため、スラリー5のORPの経時変化をも測定した。測定結果を、表2に示す(単位はmV)。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示されるように、供試体Aの水道水は一貫してORP値が正の値であり、殆ど経時変化がない。これに対して、本実施の形態にかかる飲料用容器1に入れた供試体Bの水道水は、半日後に既にORP値が負の値になっており、日が経つに従って負の値が大きくなっている。なお、スラリー5のORP値は一貫してORP測定器のタケムラOM−68の測定限界である−600mVを示している。
【0041】
次に、水道水と、それ以外の清涼飲料とを供試体として、ORPの経時変化をORP測定器としてホリバF53とタケムラOM−68の二種類を用いて測定した。
【0042】
供試体1乃至供試体4としては、水道水を用いた。供試体1は、飲料用容器1の中に入れた場合のORPの経時変化を、原則として1日ごとに測定した。供試体2及び供試体3は、300mlのアルミボトルに水道水を入れ、その中にスラリー5(供試体2についてはスラリー50g、供試体3についてはスラリー150g)を透明ナイロンフィルムに包んで密封したフィルムパックを入れて測定した。また、供試体4は、ガラス製水筒に水道水900mlを入れ、その中にスラリー5を300g透明ナイロンフィルムに包んで密封したフィルムパックを入れて、ORPの経時変化を原則として1日ごとに測定した。
【0043】
更に、供試体5としてはスポーツドリンクのポカリスエット(登録商標)を用いて測定し、供試体6としてはオレンジジュースを用いてORPの経時変化を原則として1日ごとに測定を行った。供試体1〜供試体6についてのORPの経時変化の測定結果を、表3に示す(単位はmV)。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に示されるように、全体的にホリバF53とタケムラOM−68の測定値を比較すると、ホリバF53の方がORP値が高めに出る傾向があるが、それでも供試体1〜供試体6の全てについて、スラリー5による酸化還元電位を下げる効果が顕著に現れている。それも、水道水のみではなく、供試体5及び供試体6の測定結果に示されるように、清涼飲料についても、酸化還元電位を下げる効果が顕著に現れている。また、供試体1乃至供試体4を比較すると、水道水の量に対してスラリー5の量が多いほど酸化還元電位を下げる効果が大きいことが分かる。
【0046】
更に、炭酸飲料及びアルコール飲料についても、スラリー5による酸化還元電位を下げる効果について測定試験を行った。供試体7としてはコカコーラ(登録商標)を用い、供試体8としてはジンジャーエールを用い、供試体9としてはアルコール分5.5%の発泡酒を用い、供試体10としてはアルコール分25%の焼酎を用いた。供試体7〜供試体10のいずれについても、300mlのアルミボトルに入れて、その中にスラリー5を100g透明ナイロンフィルムに包んで密封したフィルムパックを入れて、ORPの経時変化を原則として1日ごとに測定した。測定結果を、表4に示す(単位はmV)。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示されるように、炭酸飲料である供試体7及び供試体8は、測定開始時にはいずれもORP値が正の値を示しているが、1日経過後にはORP値が負の値になっている。但し、供試体7及び供試体8については、スラリー5がORP値を下げる効果は長続きせず、一週間後にはまたORP値が正の値に戻っている。これに対して、アルコール飲料である供試体9及び供試体10は、測定開始時にはやはりいずれもORP値が正の値を示しているが、供試体9は1日経過後にはORP値が大きな負の値になっており、供試体10も2日経過後にはORP値が負の値になっており、供試体9及び供試体10のいずれについてもスラリー5がORP値を下げる効果は持続している。
【0049】
更に、牛乳についても、スラリー5による酸化還元電位を下げる効果について測定試験を行った。供試体11として市販の牛乳を用い、300mlのアルミボトルに230mlの牛乳を入れて、その中にスラリー5を100g透明ナイロンフィルムに包んで密封したフィルムパックを入れて、ORPの経時変化を測定した。測定結果を、表5に示す(単位はmV)。
【0050】
【表5】

【0051】
表5に示されるように、牛乳である供試体11は、測定開始時にはホリバF53とタケムラOM−68のいずれもORP値が正の値を示しているが、1日経過後にはORP値が大きな負の値になっている。更に、供試体11を約40℃に加熱した直後と30分経過後のORP値を測定したところ、表5に示されるように、やはり負の値を示すことが分かった。従って、スラリー5は、牛乳についても酸化還元電位(ORP)を大きく下げる効果があることが判明した。
【0052】
更に、本実施の形態にかかる飲料用容器1に水道水を入れて、ORP値が−120mV(タケムラOM−68で測定)となったものを、通常のアルミボトルに入れ替えて、16時間経過後にORP値を測定したところ、水道水はアルミボトル中でずっと空気に曝されていたにも関わらず、ORP値がタケムラOM−68で−50mV、ホリバF53で−19mVと負の値を示した。これによって、本実施の形態にかかる飲料用容器1に収容することによってORP値が負の値を示した飲料は、他の容器に移し替えても一定の時間はORP値が負の値を保つことが判明した。
【0053】
以上説明したように、石英閃緑ひん岩の微粉末をゲル化して蒸留水に分散させたスラリー5を、有機合成樹脂の容器または透明ナイロンフィルムを介して各種の飲料に接触させることによって、各種の飲料の酸化還元電位(ORP)を大きく下げる効果があり、多くの飲料についてはその効果は長期間持続する。従って、図1に示されるような構造を有する本実施の形態にかかる飲料用容器1に好みの飲料を入れておくだけで、飲料の酸化を防ぐことができるとともに、飲料の酸化還元電位を下げることができ、飲料の風味を改善することができる。
【0054】
また、キャップ2Aを締めておくことによって、保存にも便利であるし、飲料用容器1の携帯にも便利である。なお、飲料の酸化還元電位を下げる効果は、キャップ2Aを締めずに、飲み口を開放しておいても得ることができる。また、底部2Dを胴部2Cに対して接着固定せずに着脱可能とした場合には、長年にわたる使用によってスラリー5のORPの負の値が小さくなってきたと思われた場合には、底部2Dを外して古いスラリー5を空間4から排出して、新しいスラリー5を空間4に充填することも可能である。
【0055】
このようにして、本実施の形態にかかる飲料用容器1においては、スラリー5が飲料に直接接触しないため、飲料の味や風味を損ねる可能性が全くなく、飲料水や既存の飲料を容器に収容するだけで酸化を防ぐことができるとともに、酸化還元電位を下げることができて飲料の風味を向上させることができる。
【0056】
なお、上述の如く、スラリー5を透明ナイロンフィルムに包んで密封したフィルムパックをアルミボトルまたはガラス製水筒に入れた各種飲料に入れた場合にも、飲料の酸化還元電位(ORP)を大きく下げることができる。この効果は、透明ナイロンフィルム以外の各種有機合成樹脂フィルムにスラリー5を包んで密封したフィルムパックを飲料中に入れた場合にも、同様に得ることができる。
【0057】
従って、本明細書中には、「飲料の酸化を遅らせるとともに酸化還元電位を下げる飲料用フィルムパックであって、有機合成樹脂製フィルム中に、ケイ酸(SiO2 )、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、炭素(C)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、を含有する石英斑岩の微粉末をゲル化してなる酸化還元電位が負である石英斑岩ゲル化物のスラリーを収容して密封したことを特徴とする飲料用フィルムパック」についての発明も開示されている。
【0058】
ここで、飲料用フィルムパックに用いられる石英斑岩の微粉末としては、石英閃緑ひん岩の微粉末が好ましい。また、飲料用フィルムパックに充填されるスラリーの量は、飲料の10分の1〜2分の1の範囲内であることが好ましい。
【0059】
本実施の形態においては、酸化還元電位が負である石英斑岩ゲル化物のスラリーとして、石英斑岩の一種である石英閃緑ひん岩の微粉末をゲル化してなる酸化還元電位が負であるゲル化物のスラリー5を使用した場合について説明したが、他の石英斑岩のゲル化物のスラリーを使用しても良い。
また、本実施の形態においては、金属製容器としてアルミニウム製容器2を使用した場合について説明したが、ステンレス製容器を始めとして他の金属性容器を使用することもできる。
【0060】
さらに、本実施の形態においては、有機合成樹脂製容器としてPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルを使用した場合について説明したが、他の有機合成樹脂からなる容器を使用しても良い。
また、本実施の形態においては、有機合成樹脂製容器としてのPETボトル3の内容量を所定容量の空間4の容量の約1.7倍とした場合について説明したが、有機合成樹脂製容器の内容量は所定容量の空間の容量の0.5倍〜3.0倍の範囲内であれば良く、より好ましくは1.5倍〜2.5倍の範囲内であれば良い。
【0061】
本発明を実施するに際しては、飲料用容器のその他の部分の構成、材質、形状、成分、材料、大きさ、接続関係等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる飲料用容器の全体構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 飲料用容器
2 金属製容器
3 有機合成樹脂製容器
4 所定容量の空間
5 スラリー
DR 飲料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水、清涼飲料、アルコール飲料を始めとする飲料の酸化を防止するとともに酸化還元電位を下げる飲料用容器であって、
金属製容器と該金属製容器の内部に固定された合成樹脂製容器とを具備し、
前記金属製容器の内面と前記合成樹脂製容器の外面との間に所定容量の空間が形成され、該空間に酸化還元電位が負であるスラリーを収容したことを特徴とする飲料用容器。
【請求項2】
前記空間に収容したスラリーは、ケイ酸(SiO2 )、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、炭素(C)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)を含有する石英斑岩の微粉末をゲル化してなる酸化還元電位が負である石英斑岩ゲル化物としたことを特徴とする請求項1に記載の飲料用容器。
【請求項3】
前記石英斑岩は石英閃緑ひん岩であることを特徴とする請求項2に記載の飲料用容器。
【請求項4】
前記合成樹脂製容器の内容量は前記所定容量の空間の容量の0.5倍〜3.0倍の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の飲料用容器。
【請求項5】
前記合成樹脂製容器は、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の飲料用容器。
【請求項6】
前記金属製容器は、アルミニウム製容器またはアルミニウム合金製容器であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の飲料用容器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−297087(P2007−297087A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125880(P2006−125880)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000248233)有限会社桂鉱社 (1)
【Fターム(参考)】