説明

飲食品用の油溶性物質乳化組成物およびそれを含有する飲食品

【課題】 飲食品に乳化剤由来の異味異臭を与えることが無く、透明性に優れ、且つ乳化状態の安定性にも優れた、飲食品用の油溶性物質乳化組成物を提供することである。
【解決手段】 平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数10〜14の飽和脂肪酸のモノエステルから選ばれる少なくとも2種のポリグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ0.1〜10.0重量%、油溶性物質を0.1〜10.0重量%を含有し、残余部が水および糖類からなることを特徴とする、飲食品用の油溶性物質乳化組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化された油溶性物質が水中に透明に分散し、かつ乳化剤に由来する異味異臭が無い、油溶性物質乳化組成物、及びこの乳化組成物を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品、特に飲料では、植物精油等の油溶性物質を飲料に添加配合する場合、様々な添加物を配合し熱殺菌処理をするため、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ、長期間保存してもクリーミングを生じたり、油脂が分離することなく、均一な乳化もしくは可溶化状態を保つことが望まれている。
また、飲料やゼリー等の高い透明性が望まれる飲食品に油溶性物質を配合する場合、油溶性物質を乳化するため、通常白濁して外観に影響を及ぼし、このような飲食品への油溶性物質の添加量は必然的に制限されていた。
【0003】
油溶性物質を多く含む飲食品を開発するために、従来から種々の技術が検討されてきた。例えば、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルと水、食品添加物(界面活性剤、安定剤、調味料、酸および塩等)を用いて油溶性物質を水に可溶化する方法(特許文献1)や、ポリグリセリン飽和ないし不飽和脂肪酸エステルと水、多価アルコールを用いて油溶性物質を水に可溶化する方法(特許文献2)等が提案されてきている。
【0004】
しかしながら、上記提案は耐酸性、耐塩性、耐熱性などといった安定な状態を保つことに関しては、広く提案されてきてはいるが、風味に関しては、乳化剤由来の異味異臭があるといった課題が残っており、飲食品に使用する乳化物としては充分に満足し得るものではなかった。
【0005】
したがって、油溶性物質の乳化状態が安定であり、かつ飲食品の風味に悪影響を及ぼさない油溶性物質乳化組成物の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−168369号公報
【特許文献2】特開平10−84887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、飲食品に乳化剤由来の異味異臭を与えることが無く、透明性に優れ、且つ乳化状態の安定性にも優れた、飲食品用の油溶性物質乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため鋭意研究した結果、特定のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの2種以上の組み合わせを乳化剤として油溶性物質を乳化させた場合に、乳化剤に由来する異味異臭が無いため飲食品本来の好ましい風味が保持され、飲料に添加した場合に透明に分散し、且つ、安定性に優れた油溶性物質乳化組成物が得られる事実を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数10〜14の飽和脂肪酸のモノエステルから選ばれる少なくとも2種のポリグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ0.1〜10.0重量%、油溶性物質を0.1〜10.0重量%を含有し、残余部が水および糖類からなることを特徴とする、飲食品用の油溶性物質乳化組成物であり、更にこの乳化組成物を含有する飲食品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの組み合わせを乳化剤として油溶性物質を乳化させており、安定な乳化状態で油溶性物質が水中に微細粒子状に分散する乳化組成物が得られ、該組成物は、飲食品に乳化剤由来の異味異臭を与えることが無く、色調を透明に賦与するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の油溶性物質乳化組成物は、油溶性物質、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、糖類及び水を含有する組成物であり、油溶性物質の平均粒子径が0.1ミクロン以下で、光を透過させるのに充分な微細粒子となっており、飲食品に長期間にわたって透明感を賦与することのできる特徴を有するものである。すなわち、乳化組成物中の粒子が非常に微細であるため、乳化組成物を水(透明飲料)に添加したときに、水(透明飲料)の透明性を保持できる。
【0012】
(1)ポリグリセリン脂肪酸モノエステル
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数10〜14の飽和脂肪酸を原料とするモノエステル群から選ばれる少なくとも2種のポリグリセリン脂肪酸エステルである。当該エステルは、均一に溶解しない油溶性物質と水を安定なエマルションとするための乳化剤として作用する。
ポリグリセリンの平均重合度が7未満であると透明な油溶性物質乳化組成物が得られにくく、10より大きいものは入手困難である。
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの原料のポリグリセリンは、天然のグリセリンを脱水縮合(重縮合)して得られる。なお、デカグリセリンは平均重合度10個のグリセリンが結合しているが、重合度は平均なので10個を挟んで分布を持っており、その前後(・・・8、9、10、11、12・・・)の多種の重合度のポリグリセリンの混合物である。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの原料の脂肪酸は、カルボキシル基1つをもつ直鎖状または分岐鎖状のモノカルボン酸であり、本発明では炭素鎖中に二重結合や三重結合を含まない飽和脂肪酸を使用する。炭素数10〜14の飽和脂肪酸として、カプリン酸(デカン酸:C9H19COOH)、ウンデシル酸(C10H21COOH)、ラウリン酸(ドデカン酸:C11H23COOH)、トリデシル酸(C12H25COOH)、ミリスチン酸(テトラデカン酸:C13H27COOH)が例示される。
前記以外の脂肪酸を用いた場合は、乳化剤に由来する異味異臭が強く風味面で劣る、飲料に透明に分散しない、或いは、安定な油溶性物質乳化組成物が得られにくい。
【0014】
グリセリンを平均10個縮重合したデカグリセリンに脂肪酸をエステル結合したデカグリセリン脂肪酸モノエステルのモデル構造式を以下に示す。
脂肪酸のエステル結合する場所(グリセリンのOHと結合)も様々であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、多くの種類の構造式を持ったエステルの混合物である。
【化1】

【0015】
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルの組合せとしては、(1) 平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数12の飽和脂肪酸のモノエステルおよび(2) 平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数14の飽和脂肪酸のモノエステル、が好ましく、特に、(1) 平均重合度10のポリグリセリンと炭素数12の飽和脂肪酸のモノエステルおよび(2) 平均重合度10のポリグリセリンと炭素数14の飽和脂肪酸のモノエステル、が好ましい。
【0016】
本発明における乳化組成物中の2種以上のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの配合量は、それぞれ0.1〜10.0重量%であり、好ましくは0.5〜8.0重量%、より好ましくは1.0〜6.0重量%となるように配合するのが適当である。
【0017】
(2)油溶性物質
本発明に用いる油溶性物質とは、水相に不溶または難溶であるが油相に可溶または易溶の物質であり、具体的に例えば、(a) 着香料、(b) 着色料、(c) 栄養強化剤、(d) 酸化防止剤、(e) 保存料、(f) 殺菌剤、(g) 動植物油脂類、(h) 植物性樹脂類等、の油溶性物質が挙げられる。
【0018】
(a) 着香料としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油、花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油、コーラナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、ワニラエキストラクト、ココアエキストラクト、紅茶エキストラクト、スパイス類エキストラクトなどの油性のエキストラクト及びこれらのオレオレンジ類、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、アントラニル酸メチル、イオノン、イソオイゲノール、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、インドール及びその誘導体、γ−ウンデカラクトン、エステル類、エチルバニリン、エーテル類、オイゲノール、オクタノール、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、
【0019】
ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケトン類、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l−メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級炭化水素類、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、チオエーテル類、チオール類、デカノール、デカン酸エチル、テルピネオール、リモネン、ピネン、ミルセン、タピノーレン、テルペン系炭化水素類、γ−ノナラクトン、
【0020】
バニリン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピペロナール、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラール及びその誘導体、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、l−ペリラアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、芳香族アルコール類、d−ボルネオール、マルトール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、ラクトン類、リナロオール等の合成香料化合物、油性調合香料組成物等が挙げられる。
【0021】
(b) 着色料としては、例えば、β−カロチン、アナトー色素、ウコン色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、クロロフィリン、クロロフィル、コーン色素、ササ色素、イモカロチン、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素、パブリカ色素、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、ベニコウジ色素、マリーゴールド色素等が挙げられる。
【0022】
(c) 栄養強化剤としては、例えば、ビタミンA、カルシフェロール、ビタミンE等が挙げられる。
(d) 酸化防止剤としては、例えばミックストコフェロール、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、γ−オリザノール、天然抽出抗酸化剤等が挙げられる。
(e) 保存料、及び
(f) 殺菌料としては、例えば、デヒドロ酢酸が挙げられる。
【0023】
(g) 動植物油脂類としては、例えば、豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ脂、落花生油、ヤシ油、月見草油、ボラージ油、さらに、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成トリグリセリドも使用できる。
(h) 植物性樹脂類としては、例えば、オリバナム、ロジン、コーパル、ダンマル、エレミ、エステルガムなどが挙げられる。これらは単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
乳化組成物中の油溶性物質の配合量は、0.1〜10.0重量%、好ましくは0.5〜8.0重量%、より好ましくは1.0〜6.0重量%となるように配合するのが適当である。
油溶性物質の配合量が0.1重量%未満では、飲食品に充分な効果を与える事が出来なくなり、一方、10.0重量%を超えると、乳化組成物としての安定性に問題が生じる。
【0025】
(3)糖類、水
本発明に用いる糖類としては、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、マンノース、トレハロース、ラクトース、スクロース、マルトース、カップリングシュガー、マルトシルトレハロース、異性化糖、転化糖、水あめ、蜂蜜、オリゴ糖であって、具体的に例えば、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖が挙げられ、これらを単独或いは2種以上混合して用いることができる。
本発明で用いる水としては、飲食品に配合できる水であれば特に制限を受けない。
【0026】
(4)乳化組成物の製法
本発明の油溶性物質乳化組成物の製法は、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルを溶解した水相と油溶性物質を、プロペラ式撹拌機やホモミキサー等の撹拌機を用いてよく混合することで、透明で均一な液状の油溶性物質乳化組成物を得ることができる。
より均質化処理を行いたい場合には、超高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等の乳化機により均質化処理を行うこともできる。
【0027】
(5)飲食品
更に本発明は、油溶性物質を乳化した組成物を配合した飲食品でもあり、各種飲食品を製造する際に本発明の油溶性物質乳化組成物を配合することにより製造される。
これらの飲食品としては、例えば、スポーツ飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料等の飲料や、加工乳、豆乳等の乳飲料、栄養補給のための濃厚流動食、パン、ビスケット、キャンディ、ゼリーなどのパンや菓子、ヨーグルト、ハムなどの乳肉加工食品、味噌、ソース、たれ、ドレッシングなどの調味料、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品、粉末飲料、粉末スープなどの粉末食品、カプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品、豆腐、麺類などを挙げることができ、その範囲は特に制限がなくあらゆる種類の飲食品に適用することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に使用したポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、下記の表1のとおりである。
【0029】
【表1】

【0030】
[実施例1]
1000ml容ステンレス製ビーカーに、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとしてデカグリセリンモノラウレート25g、及びデカグリセリンモノミリステート25g、糖類として果糖ぶとう糖液糖750g及び水150gをとり、完全に溶解した。
その溶解液にレモンコールドプレスオイル50gを混合し、次いでホモミキサー〔型式:T.K.ROBOMICS、プライミクス(株)製〕により12000rpm、40〜50℃で乳化処理を行い、均質で透明な油溶性物質乳化組成物を得た。
この組成物の平均粒子径をレーザードップラー法(動的・電気泳動光散乱法)によるゼータ電位・粒子測定システム〔型式:ELS−Z、大塚電子(株)製〕で測定したところ60〜80nmであった。
【0031】
[実施例2]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノカプレート25g、及びデカグリセリンモノラウレート25gを用いた以外は実施例1と同様に行うことにより、実施例2の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0032】
[実施例3]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノカプレート25g、及びデカグリセリンモノミリステート25gを用いた以外は実施例1と同様に行うことにより、実施例3の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0033】
[比較例1]
1000ml容ステンレス製ビーカーに、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとしてテトラグリセリンモノラウレート50g、糖類として果糖ぶとう糖液糖750g及び水150gをとり、完全に溶解した。
その溶解液にレモンコールドプレスオイル50gを混合し、次いでホモミキサー〔型式:T.K.ROBOMICS、プライミクス(株)製〕により12000rpm、40〜50℃で乳化処理を行い、油溶性物質乳化組成物を得た。
【0034】
[比較例2]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、ヘキサグリセリンモノラウレートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例2の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0035】
[比較例3]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノカプリレートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例3の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0036】
[比較例4]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノカプレートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例4の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0037】
[比較例5]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノラウレートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例5の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0038】
[比較例6]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノミリステートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例6の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0039】
[比較例7]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノステアレートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例7の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0040】
[比較例8]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノオレエートを用いた以外は比較例1と同様に行うことにより、比較例8の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0041】
[比較例9]
1000ml容ステンレス製ビーカーに、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとしてデカグリセリンモノラウレート25g、及びデカグリセリンモノカプリレート25g、糖類として果糖ぶとう糖液糖750g及び水150gをとり、完全に溶解した。
その溶解液にレモンコールドプレスオイル50gを混合し、次いでホモミキサー〔型式:T.K.ROBOMICS、プライミクス(株)製〕により12000rpm、40〜50℃で乳化処理を行い、油溶性物質乳化組成物を得た。
【0042】
[比較例10]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノラウレート25g、及びデカグリセリンモノステアレート25gを用いた以外は比較例9と同様に行うことにより、比較例10の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0043】
[比較例11]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノラウレート25g、及びデカグリセリンモノオレエート25gを用いた以外は比較例9と同様に行うことにより、比較例11の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0044】
[比較例12]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノミリステート25g、及びデカグリセリンモノカプリレート25gを用いた以外は比較例9と同様に行うことにより、比較例12の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0045】
[比較例13]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノミリステート25g、及びデカグリセリンモノステアレート25gを用いた以外は比較例9と同様に行うことにより、比較例13の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0046】
[比較例14]
ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとして、デカグリセリンモノミリステート25g、及びデカグリセリンモノオレエート25gを用いた以外は比較例9と同様に行うことにより、比較例14の油溶性物質乳化組成物を得た。
【0047】
[比較例15]
1000ml容ステンレス製ビーカーに、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとしてデカグリセリンモノラウレート110g、及びデカグリセリンモノミリステート110g、糖類として果糖ぶとう糖液糖610g及び水120gをとり、完全に溶解した。
その溶解液にレモンコールドプレスオイル50gを混合し、次いでホモミキサー〔型式:T.K.ROBOMICS、プライミクス(株)製〕により12000rpm、40〜50℃で乳化処理を行い、油溶性物質乳化組成物を得た。
【0048】
[比較例16]
1000ml容ステンレス製ビーカーに、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとしてデカグリセリンモノラウレート55g、及びデカグリセリンモノミリステート55g、糖類として果糖ぶとう糖液糖650g及び水130gをとり、完全に溶解した。
その溶解液にレモンコールドプレスオイル110gを混合し、次いでホモミキサー〔型式:T.K.ROBOMICS、プライミクス(株)製〕により12000rpm、40〜50℃で乳化処理を行い、油溶性物質乳化組成物を得た。
【0049】
[試験例1]
実施例1〜3および比較例1〜16の油溶性物質乳化組成物について、表2に示す組成の各材料で飲料を調製し、官能評価により風味を評価した。
評価の基準を表3に示す。また、水に対する透明度を目視および比濁計〔型式:2100AN、HACH製〕により測定し評価した。さらに、熱虐待試験により組成物の安定性を評価した。表4にそれらの結果を示した。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表4から明らかな通り、本発明品の油溶性物質乳化組成物(実施例1〜3)は、乳化剤由来の異味異臭がなく、飲料に対しても透明で、安定性も優れていたが、比較品の油溶性物質乳化組成物(比較例1〜16)は、乳化剤由来の異味異臭があったり、飲料での透明度が充分でなかったり、安定性に優れていないものがあった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、安定な油溶性物質乳化組成物が得られ、当該組成物は飲食品に乳化剤由来の異味異臭を与えることが無く、透明性に優れる飲食品用の乳化組成物であることから、新規な食品添加剤として食品分野での需要が見込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数10〜14の飽和脂肪酸のモノエステルから選ばれる少なくとも2種のポリグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ0.1〜10.0重量%、油溶性物質を0.1〜10.0重量%を含有し、残余部が水及び糖類からなることを特徴とする、飲食品用の油溶性物質乳化組成物。
【請求項2】
平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数12の飽和脂肪酸のモノエステルを0.1〜10.0重量%、平均重合度7〜10のポリグリセリンと炭素数14の飽和脂肪酸のモノエステルを0.1〜10.0重量%、油溶性物質を0.1〜10.0重量%を含有し、残余部が水および糖類からなることを特徴とする、飲食品用の油溶性物質乳化組成物。
【請求項3】
平均重合度10のポリグリセリンと炭素数12の飽和脂肪酸のモノエステルを0.5〜5.0重量%、平均重合度10のポリグリセリンと炭素数14の飽和脂肪酸のモノエステルを0.5〜5.0重量%、油溶性物質を0.1〜10.0重量%を含有し、残余部が水および糖類からなることを特徴とする、飲食品用の油溶性物質乳化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の油溶性物質乳化組成物を含有する飲食品。

【公開番号】特開2012−152121(P2012−152121A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12524(P2011−12524)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】