説明

飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システム

【課題】給食システムに要する設備投資コストやランニングコストを低減すること。
【解決手段】本発明では、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムにおいて、各飲食物運搬用保温カートを、電力の供給を受けてカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に所定温度に保温するように構成するとともに、複数台の飲食物運搬用保温カートを複数のグループに分け、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するように構成することにした。また、前記各グループの飲食物運搬用保温カートは、カート内部を複数回に分けて加熱又は冷却した後に所定温度で保温するように構成することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、学校や病院や施設などにおいて多数の人に同時に飲食物を提供する場合に、各学校等において飲食物を製造するのではなく、飲食物を大量に製造できる製造拠点を設け、製造拠点でまとめて飲食物を製造し、製造拠点から各学校等に運搬して、各学校等に供給するように構成した給食システムが利用されるようになっている。
【0003】
この給食システムでは、飲食物の製造拠点と飲食物の提供場所とが異なるために、飲食物を適温に保持することが必要となる。そのため、給食システムでは、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートが利用されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、従来の給食システムでは、飲食物運搬用保温カートを複数台用い、全ての飲食物運搬用保温カートに同時に電力を供給して空のカート内部を所定温度に加熱又は冷却し、その後、飲食物を収容した全ての飲食物運搬用保温カートに同時に電力を供給し続けてカート内部を所定温度に保温することによって飲食物を適温に保持ようにしている(図5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−177059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムでは、図5に模式的に示すように、複数台全ての飲食物運搬用保温カートに同時に電力を供給してカート内部の加熱又は冷却を行っていたために、一時的に多大な電力を消費しなければならないようになっていた。
【0007】
そのため、多大な電力を供給することができる設備が必要となり、そのための設備投資コストが多大なものとなり、しかも、多大な電力消費に要する電気料金も恒常的にかかることとなり、給食システムの運用に要するランニングコストも多大なものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムにおいて、各飲食物運搬用保温カートを、電力の供給を受けてカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に所定温度に保温するように構成するとともに、複数台の飲食物運搬用保温カートを複数のグループに分け、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するように構成することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記各グループの飲食物運搬用保温カートは、カート内部を複数回に分けて加熱又は冷却した後に所定温度で保温するように構成することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムにおいて、各飲食物運搬用保温カートを、電力の供給を受けてカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に所定温度に保温するように構成するとともに、複数台の飲食物運搬用保温カートを複数のグループに分け、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するように構成することにしているために、一時的な電力消費を低減することができ、給食システムに要する設備投資コストやランニングコストを低減することができる。
【0012】
特に、各グループの飲食物運搬用保温カートを、カート内部を複数回に分けて加熱又は冷却した後に所定温度で保温するように構成することにした場合には、保温に要する電力消費を低減することができ、給食システム全体に要するランニングコストを一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】飲食物運搬用保温カートを示す模式図。
【図2】給食システムにおける電力消費を示す模式図。
【図3】給食システムにおける電力消費を示す模式図。
【図4】給食システムにおける電力消費を示す模式図。
【図5】従来の給食システムにおける電力消費を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明に係る給食システムでは、製造拠点でまとめて飲食物を製造し、製造拠点から各学校等に運搬して、各学校等に飲食物を供給するように構成しており、製造拠点で製造した飲食物を適温状態で提供することができるようにするために、電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いている。なお、本発明は、飲食物を適温で提供するものであり、飲食物の種類によっては加熱する場合も冷却する場合もあるが、以下の説明では、加熱する場合について説明する。
【0016】
図1に示すように、飲食物運搬用保温カート1は、矩形箱型状の収容庫2にキャスター3を取付けて走行可能に形成している。
【0017】
この飲食物運搬用保温カート1は、収容庫2の前部に開閉扉4を設けるとともに、収容庫2の内部に複数段のトレー5を設け、各トレー5に弁当等の飲食物6を載置して収容できるようにしている。
【0018】
また、飲食物運搬用保温カート1は、収容庫2の上部にコントローラ7を設け、コントローラ7にヒーター8と温度センサー9を接続しており、コントローラ7によって内部の温度を温度センサー9で検出しながらヒーター8を駆動制御して、収容庫2(カート内部)を所定温度に加熱した後に所定温度で保温するようにしている。なお、コントローラ7には外部に温度計10を接続して、外部から収容庫2の内部の温度を確認することができるようにしている。
【0019】
給食システムでは、この飲食物運搬用保温カート1を複数台用いており、各飲食物運搬用保温カート1を制御部11に電源コード12と信号コード13を介して接続している。これにより、給食システムでは、制御部11から各飲食物運搬用保温カート1に電源コード12を介して電力を供給するようにしている。また、給食システムでは、各飲食物運搬用保温カート1から制御部11に信号コード13を介して内部の温度等の信号を送信できるようにしている。
【0020】
そして、給食システムでは、制御部11において各飲食物運搬用保温カート1に電力を供給し、各飲食物運搬用保温カート1において供給された電力を用いてヒーター8で収容庫2を加熱し保温するようにしている。
【0021】
その際に、従来においては、図5に模式的に示すように、複数台(たとえば、150台)の飲食物運搬用保温カート全てに同時に電力を供給して空の収容庫2を加熱し、その後、収容庫2に飲食物を収容し全ての飲食物運搬用保温カートで飲食物を保温するようにしていた。
【0022】
そのため、図5に示すように、空の収容庫2の加熱時に全ての台数分の電力が同時に消費されることになり、一時的に多大な電力消費が行われていた。
【0023】
そこで、本給食システムでは、複数台(たとえば、150台)の飲食物運搬用保温カート1を複数のグループ(たとえば、3グループ)に分けて、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するようにした。
【0024】
すなわち、図2に示すように、たとえば150台の飲食物運搬用保温カート1を50台毎の3グループに分けて、各グループをA,B,Cとし、まず、Aグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に1時間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、Aグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に続けて1時間電力を供給して保温を行うとともに、新たにBグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に1時間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、A及びBグループに属する計100台の飲食物運搬用保温カート1に続けて1時間電力を供給して保温を行うとともに、新たにCグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に1時間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、A〜Cグループに属する計150台の飲食物運搬用保温カート1に続けて1時間電力を供給して保温を行うようにしている。
【0025】
なお、各グループの加熱や保温に要する消費電力は、各グループに属する飲食物運搬用保温カート1の台数を均等に3分割したことで、従来のまとめて加熱又は保温した場合に比べて1/3に低減する。
【0026】
このように、複数台の飲食物運搬用保温カート1を複数のグループに分けて、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するようにした場合には、最大でも1グループ分の加熱と残りのグループ(ここでは、2グループ)分の保温に要する消費電力となり、従来よりも一時的に消費されるピーク電力を低減することができる。
【0027】
そのため、従来のような多大な電力を供給することができる設備を容易する必要がなくなり、そのための設備投資コストを削減することができるとともに、ピーク電力の低減により電気料金も低減することができ、給食システムの運用に要するランニングコストも低減することができる。
【0028】
なお、複数台の飲食物運搬用保温カート1のグループ分けは、全ての台数を均等に分けるようにしてもよく、また、各グループ毎に異なる台数で分けるようにしてもよい。
【0029】
たとえば、図3に模式的に示すように、Aグループに属する飲食物運搬用保温カート1の加熱に要する消費電力と、Bグループに属する飲食物運搬用保温カート1の加熱及びAグループに属する飲食物運搬用保温カート1の保温に要する消費電力と、Cグループに属する飲食物運搬用保温カート1の加熱及びA,Bグループに属する飲食物運搬用保温カート1の保温に要する消費電力とが同じになるように、各グループ毎の飲食物運搬用保温カート1の台数を算出してグループ分けするようにしてもよい。
【0030】
また、本給食システムでは、図2に示すように、各グループ毎の加熱を1回だけ行い、1回の加熱によって収容庫2を所定温度にまで加熱するようにしてもよいが、各グループ毎に飲食物6を複数回に分けて加熱した後に所定温度で保温するようにしてもよい。
【0031】
すなわち、図4に示すように、たとえば150台の飲食物運搬用保温カート1を50台毎の3グループに分けて、各グループをA,B,Cとし、まず、Aグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に40分間電力を供給して加熱を行い、その後、Aグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に続けて40分間電力を供給して保温を行うとともに、新たにBグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に40分間電力を供給して加熱を行い、その後、A及びBグループに属する計100台の飲食物運搬用保温カート1に続けて40分間電力を供給して保温を行うとともに、新たにCグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に40分間電力を供給して加熱を行う。
【0032】
このときに、各グループ毎の加熱を収容庫2が所定温度に達するよりも短い時間だけ行うことにして、所定温度よりも低い温度で保温するようにしている。これにより、各グループ毎の途中での保温に要する消費電力が低減される。
【0033】
その後、B及びCグループに属する計100台の飲食物運搬用保温カート1に続けて20分間電力を供給して保温を行うとともに、再びAグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に20分間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、A及びCグループに属する計100台の飲食物運搬用保温カート1に続けて20分間電力を供給して保温を行うとともに、再びBグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に20分間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、A及びBグループに属する計100台の飲食物運搬用保温カート1に続けて20分間電力を供給して保温を行うとともに、再びCグループに属する50台の飲食物運搬用保温カート1に20分間電力を供給して収容庫2が所定温度になるように加熱を行い、その後、A〜Cグループに属する計150台の飲食物運搬用保温カート1に続けて1時間電力を供給して保温を行うようにしている。
【0034】
このように、各グループ毎の加熱を複数回に分けて行うことで、各グループ毎の途中の保温に要する消費電力を低減することができるので、全体の消費電力を低減することができる。
【0035】
なお、上記給食システムでは、加熱や保温を時間で制御するようにしているが、制御部11で各飲食物運搬用保温カート1の内部の温度に基づいて制御するようにしてもよい。
【0036】
以上に説明したように、上記給食システムにおいては、各飲食物運搬用保温カート1を、電力の供給を受けて収容庫2を所定温度に加熱又は冷却した後に所定温度に保温するように構成するとともに、複数台の飲食物運搬用保温カート1を複数のグループに分け、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するように構成している。
【0037】
そのため、上記構成の給食システムでは、一時的な電力消費を低減することができ、給食システムに要する設備投資コストやランニングコストを低減することができる。
【0038】
しかも、上記給食システムでは、各グループの飲食物運搬用保温カート1を、複数回に分けて収容庫2を加熱又は冷却した後に所定温度で保温するように構成している。
【0039】
そのため、上記構成の給食システムでは、保温に要する電力消費を低減することができ、給食システム全体に要するランニングコストを一層低減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 飲食物運搬用保温カート
2 収容庫
3 キャスター
4 開閉扉
5 トレー
6 飲食物
7 コントローラ
8 ヒーター
9 温度センサー
10 温度計
11 制御部
12 電源コード
13 信号コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力によりカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に保温することができる飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システムにおいて、
各飲食物運搬用保温カートを、電力の供給を受けてカート内部を所定温度に加熱又は冷却した後に所定温度に保温するように構成するとともに、複数台の飲食物運搬用保温カートを複数のグループに分け、各グループ毎に順番に分割して電力を供給するように構成したことを特徴とする飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システム。
【請求項2】
前記各グループの飲食物運搬用保温カートは、カート内部を複数回に分けて加熱又は冷却した後に所定温度で保温するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の飲食物運搬用保温カートを複数台用いた給食システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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