説明

飼料用添加物

【課題】産業廃棄物を利用して、栄養価が高く、各種薬効も有していて、かつ安価で、従来の高価な飼料原料ないし飼料用添加物を代替することができ、飼料のコストの低減を図ることができる飼料用添加物を提供すること。
【解決手段】貝殻及び梅酢、採卵後の鮭を乾燥させ粉末にした魚介類の残渣を含有しており、さらには海藻類、茶殻、梅炭、オキアミ、大豆油粕から選ばれた少なくとも1種を含有している飼料用添加物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏、七面鳥、うずら等の家禽、或いは、牛、豚、羊等の家畜の飼料に用いる飼料用添加物に関する。
【背景技術】
【0002】
家禽用飼料としては、従来、例えば、トウモロコシ、マイロなどの穀類、大豆油粕などの食用油粕、フスマ、米糠、大麦ジスチラーズソリュブルなどの糟糠類、コーングルテンミール、澱粉粕、醤油粕などの製造粕類、肉骨粉、魚粉、血粉、フェザーミール、動物性油脂などの動物質類等の飼料原料を混合したもの、あるいは、これに更にミネラル、ビタミン、アミノ酸、抗菌剤等の飼料用添加物を添加して調製されたもの等が多用されている。
【0003】
一般に、家禽用飼料の飼料原料の中には高価なものがあったり、また、飼料原料のみでは不足する栄養素があって、多くの場合、それを補うための、更には薬効を付与するための飼料用添加物も用いられているが、この飼料用添加物にもコストがかかったりして、結局、飼料が高価なものとなっている。したがって、飼料のコストの低減を図るために、飼料原料の低コスト化、飼料原料の栄養価ないし薬効の向上が求められている。そして、この求めを、産業廃棄物を利用して達成できれば、産業廃棄物の有効利用という問題も解決することができ、一石二鳥である。
【0004】
上記産業廃棄物として、例えば、魚介類の残渣が挙げられる。魚介類の残渣は、例えば、魚介類を干物、缶詰などに加工する水産加工場にて生じるものであり、例えば、サンマ、イワシ等の魚のアラ、採卵後の鮭、ウニ、カキ等の殻が挙げられる。特に採卵後の鮭の廃棄について、近年問題になっている。このような採卵後の鮭はイクラを生産する過程で生じるものであり、一般的にはホッチャレとも呼ばれる。イクラは、河川に遡上した鮭を採捕して、その腹部をナイフにより裂いて採取される。イクラは商品用として出荷されるが、採卵後の鮭は、体内の脂肪分が非常に少なく、魚肉としての商品価値が低いため、その大部分は産業廃棄物として廃棄処分されている。近年、鮭の養殖事業が軌道に乗り、イクラを生産する際に生じる採卵後の鮭の量も多くなってきた。したがって、採卵後の鮭の有効利用が望まれていた。
【0005】
なお、採卵後の鮭に関する従来技術としては、(特許文献1)のような例がある。(特許文献1)には、鮭を主材料とする食用エマルジョンが提案されている。また詳細な説明中には、「河川に遡上し産卵する鮭は・・・ホッチャレと呼ばれ、・・・肥料、飼料などに使用されるか、一部は摺り身にして、蒲鉾の補助剤として用いられ・・・」(2ページ左欄、28〜32行目)と記載されているが、その利用量は廃棄量に対してごく一部に過ぎない。また、肥料、飼料への利用については、利用可能性について触れているだけであり、その具体的な成分、作成手段についての提案は一切なされていない。したがって、採卵後の鮭を有効利用し、かつ、その採卵後の鮭を飼料用添加物に利用するための具体的手段を開発することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−161476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、採卵後の鮭等の産業廃棄物を利用して、栄養価が高く、各種薬効も有していて、かつ安価で、従来の高価な飼料原料ないし飼料用添加物に代替し得て、飼料のコストの低減を図ることができる飼料用添加物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、次の飼料用添加物を提供する。
(1)貝殻及び梅酢を含有することを特徴とする飼料用添加物。
(2)上記(1)記載の飼料用添加物において、貝殻及び梅酢に加えて、茶殻を含有することを特徴とする飼料用添加物。
(3)上記(1)または(2)に記載の飼料用添加物において、さらに海藻類を含有することを特徴とする飼料用添加物。
(4)上記(3)記載の飼料用添加物において、海藻類が、海藻類を加工する過程で生ずる不使用部分であることを特徴とする飼料用添加物。
(5)上記(4)記載の飼料用添加物において、海藻類が、昆布を加工する過程で不要とされる葉状部の先端部分であることを特徴とする飼料用添加物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか記載の飼料用添加物に加えて、梅炭、オキアミ及び大豆油粕から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする飼料用添加物。
【0009】
本発明の飼料用添加物に用いる昆布の仮根、茶殻、梅酢及び梅炭は、従来飼料に利用された例はなく、本発明の飼料用添加物は、これらを飼料に利用する点においてユニークなものである。しかして、これら昆布の仮根、茶殻、梅酢及び梅炭はいずれも、後に詳記するとおり、それぞれ特異な優れた栄養価ないし薬効を有すると共に、所謂産業廃棄物であって安価なものである。また、本発明で用いる貝殻も産業廃棄物であって安価なものである。さらに、本発明で用いる昆布等の海藻類も、ミネラル、ビタミン等が豊富で栄養価が優れるとともに、加工する過程において、従来、一部が産業廃棄物として処分されている。さらに、本発明で用いる採卵後の鮭も、栄養価の高いタンパク質を含むとともに、従来、大部分が産業廃棄物として処分されている。そのため、安価に利用することができる。したがって、本発明の飼料用添加物を用いることによって、飼料に優れた栄養価ないし薬効を付与できると共に、従来の高価な飼料原料ないし飼料用添加物の使用量を低減することができ、飼料のコストの低減を図ることができる。また、それと同時に、産業廃棄物の有効利用の問題も解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、産業廃棄物を利用して、栄養価が高く、各種薬効も有していて、かつ安価で、従来の高価な飼料原料ないし飼料用添加物に代替し得て、飼料のコストの低減を図ることができる飼料用添加物が提供される。本発明の飼料用添加物は、家禽或いは家畜のいずれにも適用できるが、家禽、就中鶏に好ましく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】昆布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる昆布の仮根は、昆布の次の部分である。すなわち、図1に示すように、昆布1は、通常食される葉状部10と、茎状部(葉柄)11、及び昆布の仮根(根部)12の3つの部分から構成されている。そして、この昆布の仮根12は昆布1全体を岩などに固定する役割を果たす部分であり、陸上の植物の根のように栄養分の吸収は行われない。昆布の仮根12には、葉状部10の約2倍のミネラルが含まれており、中でもカリウムが豊富に含まれている。また、アルギン酸、フコイダン、セルロースなどの多糖類、食物繊維が葉状部10の約1.7倍含まれており、栄養的に非常に優れた部位である。また、動物実験によれば、抗腫瘍性で、ガン細胞の増殖を抑制する作用があり、特に乳ガン細胞の抑制に効果があることが明らかになっている。そして、この昆布の仮根12は、その大部分が食用昆布生産の際の産業廃棄物として廃棄処分されている。
【0013】
この昆布の仮根12を飼料に添加すれば、その豊富な栄養素により飼料の栄養価が向上すると共に、その抗腫瘍性等の特性を有効利用できる。すなわち、一般に、従来の飼料には、家禽、家畜の健康維持のため抗生物質が添加されているが、その飼料で生育した家禽、家畜を人間が食した場合、その抗生物質が人間のアレルギーの原因になるという可能性が指摘されている。この飼料に添加する抗生物質に代えて昆布の仮根12を添加すれば、家禽、家畜の健康維持もできるし、家禽、家畜を食した人間のアレルギー問題も解決できる可能性がある。しかも、この昆布の仮根12は、上記のとおり産業廃棄物であって、安価であり、それを用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。
【0014】
昆布の仮根12は、その全部を利用することができるが、その中でも茎状部11に近い枝分かれ部121を除いた部分122を用いることが好ましい。昆布の養殖においては、漁場にロープを流し、そのロープに芽胞体を着生させて昆布がロープから垂れ下がるように成長させるが、その際に、枝分かれ部121が古い根であり図1に示すようにロープ2に着生して絡みつくために最も腐り易いことがわかった。そのため、この枝分かれ部121を除くことにより、昆布の仮根の利用をさらに促進することができる。なお、取り除くべき枝分かれ部121は、その他の部分に比較して黒ずんでいる傾向があるため区別することができる。
【0015】
昆布の仮根12は、それ単独で飼料用添加物として用いることもできるし、あるいは他の配合成分と混合して飼料用添加物として用いることもできる。この他の配合成分としては、茶殻、貝殻及び梅酢から選ばれた少なくとも1種や、上記昆布の仮根以外の各種の海藻類等が挙げられる。さらには、梅炭、オキアミ及び大豆油粕から選ばれた少なくとも1種等も好適に用いられる。また、ここに挙げた配合成分以外の配合成分を用いることも可能である。昆布の仮根12と他の配合成分を混合して用いる場合、その混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0016】
なお、上述の昆布の仮根12が採取される昆布1としては、コンブ属、トロロコンブ属、ネコアシコンブ属等の、一般的に食用とされている昆布であれば適用可能である。具体的な種名として、マコンブ、リシリコンブ、ヒダカコンブ、ラウスコンブ、オニコンブ、ホソメコンブ、ミツイシコンブ、ナガコンブ等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の飼料添加物には、上述の昆布の仮根に加えて、あるいは後述する貝殻及び梅酢、茶殻等とともに、海藻類を適宜配合することができる。海藻類としては、上記の各種昆布の他、アオノリ類(ウスバアオノリ、ボウアオノリ、スジアオノリ、ヒラアオノリ)、アオサ類(アナアオサ、リボンアオサ)、ヒトエグサ類、ミル、イワヅタ類、クロレラ、ドゥナリエラ類等の緑藻類、モヅク類、ヒジキ、マツモ、ハバノリ、ワカメ、メカブ、アラメ、カジメ、ホンダワラ類等の褐藻類、アマノリ類(スサビノリ、アサクサノリ、マルバアマノリ、ウルップイノリ、オニアマノリなど)、オゴノリ、トサカノリ、キリンサイフ、フノリ類、カモガラシノリ、コメノリ、エゴノリ、ウシケノリ、テングサ類、オゴノリ類、ツノマタ、フノリ類、マクリ、ハナヤギ、スギノリ類、オゴノリ類等の紅藻類、スイゼンジノリ、アシツキ、イシクラゲ、ハッサイ(髪菜)、アイミドリ(海雹菜)、スビルリナ等の藍藻類等を挙げることができる。
【0018】
海藻類を配合する際には、その全部分を使用することができるが、特に、海藻類を加工する過程で生ずる切り屑等の不使用部分が好ましく用いられる。従来は昆布やワカメ等の海藻類を加工する際に、収穫した海藻類を商品に応じて適宜切断するため、その切り屑が多量に発生しているという問題があった。例えば、昆布の場合には、昆布巻き等の各種製品に加工する際に、多量の切り屑を生じている。さらに、養殖ワカメについても、出荷する際に茎と葉先が除去されているが、その除去分は、収穫したワカメ全体の約2割を占め、総重量は年間数千トンに及んでいた。これらの切り屑は、製品にする部分に比べ栄養価などの点で同等以上であるにもかかわらず、そのまま廃棄されているのが現状であった。本発明により、これら切り屑からなる不使用の部分を有効に利用することができる。
【0019】
上記不使用部分の好適な例として、図1に示すように、昆布1の葉状部10の先端部分101を挙げることができる。先端部分101は、収穫した昆布を加工する際に、商品価値がなく不要な部分としてしばしば切り取られ、そのまま廃棄処分されている。本発明により、不要な先端部分101を低コストで有効に利用することができる。なお、不要とされる先端部分101の長さは、昆布の加工の態様によって異なるが、一般には葉状部10全体の数%〜40%程度である。
【0020】
続いて、本発明で用いる茶殻としては、種々の茶殻が適用可能であるが、緑茶の茶殻が好ましく用いられる。緑茶には、玉露、煎茶、番茶等各種があるが、これらの種類は問うことなく用いることができ、所謂日本茶といわれるもの全て用いることができる。なお、茶殻とは、飲料等として茶の成分を抽出した後の残渣のことである。
【0021】
近年、各種清涼飲料がコンビニエンスストアーやスーパーマーケット、あるいは自動販売機等で多数販売されているが、その中には緑茶飲料がかなりの割合で含まれている。販売用緑茶飲料の生産に際しては、多量の茶殻が発生し、それは産業廃棄物として廃棄処分されている。
【0022】
茶殻には、カテキン類、カフェイン、ビタミンC、テアニン等の緑茶の成分が残存しており、また抗ガン作用、抗酸化作用、抗ウイルス作用、血中のコレステロール低減作用、免疫反応増強作用等がある。したがって、茶殻を飼料に添加すれば、飼料にその含有成分が付加され、その有する作用が付与されることになる。しかも、この茶殻は、上記のとおり産業廃棄物であって、安価であり、それを用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。
【0023】
茶殻は、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは、貝殻及び梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、その他の海藻類、貝殻及び梅酢以外の配合成分が混合されても差し支えない。飼料用添加物中の茶殻の混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0024】
次に、本発明で用いる貝殻としては、種々の貝殻を用いることができるが、その中でも帆立貝の貝殻は特に好ましく用いられる。貝殻は主成分が炭酸カルシウムであって、家禽、家畜のカルシウム源として用いられる。貝殻は、水産加工業における産業廃棄物であって、その一部は路盤材、コンクリート材等として利用されているものの、その多くは廃棄処分されている。したがって、貝殻は、安価なものであり、それを用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。
【0025】
貝殻は、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、その他の海藻類、及び梅酢以外の配合成分が混合されても差し支えない。貝殻は、梅酢と組み合わせて使用すると、後記するように特異な効果が得られる。飼料用添加物中の貝殻の混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0026】
また、本発明で用いる梅酢は、梅干の生産に際して副生されるものである。すなわち、梅干は、一般に、生梅を、生梅に対して15〜20重量%程度の塩で塩漬けして生産されるが、その際に多量の梅酢が副生する。この梅酢は、その一部は生姜漬、しそ漬、酢漬、梅酢からイオン交換膜電気透析法で脱塩して得られる梅果汁の生産等に利用されているものの、その多くは産業廃棄物として廃棄処理されている。
【0027】
梅酢には、塩分、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸、グルコース、フラクトース、ショ糖等の糖質、セリン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸等が含まれており、また殺菌作用、防腐作用等がある。したがって、梅酢を飼料に添加すれば、飼料にその含有成分が付加され、その殺菌作用、防腐作用等が付与されることになる。梅酢の有する殺菌作用、防腐作用により飼料の保存性が向上する。特に、上述の昆布の仮根やその他の海藻類は腐り易い(昆布の仮根の場合は、常温、2時間程度で腐り始める)ため、従来はその利用が困難であったが、梅酢と組み合わせることによって防腐され、豊富な栄養素を有効に利用することが可能となる。また、一般に、牛などの家畜には、ミネラル不足を補うため岩塩等の塩分を舐めさせることが従来行われていたが、梅酢には、もともと塩分が含まれているので、ミネラル補給に効果的である。しかも、この梅酢は、上記のとおり産業廃棄物であって、安価であり、それを用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。なお、梅酢は、必要に応じて希釈したり、濃縮した上で添加しても良い。
【0028】
この梅酢を上記貝殻と組み合わせて用いることにより、梅酢のクエン酸と、貝殻のカルシウムとが反応してクエン酸カルシウムを生成することができる。クエン酸カルシウムは体内に吸収され易いので、家禽、家畜のカルシウム補給に一層効果的となる。
【0029】
梅酢は、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは貝殻などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、その他の海藻類、及び貝殻以外の配合成分が混合されても差し支えない。飼料用添加物中の梅酢の混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0030】
本発明で用いる梅炭は、梅に起因する原材料を炭化させて製造されたものである。この梅に起因する原材料としては、剪定した梅枝、梅の実の加工の際に排出される梅の種、梅干の加工の際に排出される梅干の種、梅の木を伐採した際に出る枝、幹、根等の梅の木の各部位等が挙げられる。これらの梅に起因する原材料は、現在のところ、いずれもほとんど有効利用されておらず、産業廃棄物として廃棄処理されている。梅に起因する原材料の炭化は、公知の木炭の製造に準じて容易に行なうことができる。
【0031】
梅炭は、吸着力が優れており、また家禽、家畜の胃腸を整える作用がある。また、梅干の加工の際に排出される梅干の種を炭化した梅炭は、当初から塩分が含まれており、この梅炭を飼料に添加すれば、家禽、家畜のミネラル補給に効果がある。しかも、この梅炭の原材料は、上記のとおり産業廃棄物であって、安価であり、梅炭を用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。
【0032】
梅炭は、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは貝殻及び梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、その他の海藻類、貝殻及び梅酢以外の配合成分が混合されても差し支えない。飼料用添加物中の梅炭の混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0033】
本発明で用いるオキアミとしては、その種類を問うことなく各種のオキアミを広く用いることができる。オキアミは、資源が豊富で大量に取れるため安価である。オキアミは、ビタミン類、EPA、DHA等の栄養素を豊富に含むものである。また、オキアミは、卵の黄身を黄色くして市場価値を高める効果もある。オキアミを飼料に添加すれば、飼料にその豊富な栄養素が付加される。
【0034】
オキアミは、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは貝殻及び梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、貝殻及び梅酢以外の配合成分が混合されても差し支えない。飼料用添加物中のオキアミの混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数に応じて適宜設定することができる。
【0035】
本発明で用いる大豆油粕は、大豆から油を搾った後の残渣であり、高蛋白質のものであって、従来から飼料に用いられている。本発明で大豆油粕を用いるのは、その高蛋白質の栄養価を利用することもさることながら、本発明の飼料用添加物の形態を粉末状態で安定させるため、あるいは各成分を混合させやすくするためのバインダーとして機能させる目的もある。
【0036】
大豆油粕は、上述の昆布の仮根、その他の海藻類、あるいは貝殻及び梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。昆布の仮根、その他の海藻類、貝殻及び梅酢以外の配合成分が混合されても差し支えない。飼料用添加物中の大豆油粕の混合割合は、混合使用する配合成分の種類と数、さらには大豆油粕をバインダーとして機能させる観点から適宜設定することができる。
【0037】
さらに本発明の飼料用添加物には、魚介類の残渣を配合することもできる。ここでいう魚介類の残渣とは、サンマ、イワシ等のアラの部分、ウニ、カキ等の殻等のことをいう。また配合する場合、サンマ、イワシ等のアラの部分は、乾燥した後に粉末にして配合する。また、ウニ、カキ等の殻についても、粉末にして配合する。このような魚介類の残渣は、水産加工の際に、その大部分が産業廃棄物として廃棄処分されており、本発明によって、魚介類の残渣を有効に利用することができる。
【0038】
上述のサンマ、イワシ等のアラの部分は、種々の栄養分を含む。例えば、頭や皮等の部分は脂質、アミノ酸、DHA等を含み、また骨の部分はカルシウムを含む。このように、種々の栄養素を豊富に含む魚のアラを、飼料に添加すれば、飼料にその豊富な栄養素が付加される。
【0039】
またカキ、ウニ等の殻は、主成分が炭酸カルシウムであるので、家禽、家畜のカルシウム源として利用することができる。これらの殻は、特に梅酢と組み合わせて用いることにより、梅酢のクエン酸と、貝殻のカルシウムとが反応してクエン酸カルシウムを生成する。このクエン酸カルシウムは体内に吸収されやすいので、家禽、家畜のカルシウム補給に一層効果的となる。
【0040】
以上のような、魚介類の残渣は、上述の昆布の仮根、その他の、海藻類、あるいは梅酢などと混合して飼料用添加物に用いられる。飼料用添加物中に含まれる魚介類の残渣の混合割合は、家畜の種類や時期などに応じて設定できる。
【0041】
さらに本発明では、上記魚介類残渣として、採卵後の鮭を好適に採用することができる。配合する場合、採卵後の鮭を、乾燥した後に粉末にして配合する。このような採卵後の鮭は、その大部分が産業廃棄物として廃棄処分されている。したがって、安価であり、それを用いることは産業廃棄物の有効利用に他ならない。
【0042】
採卵後の鮭の乾燥粉末には、コラーゲン、DHA、EPA、ビタミンD等の成分が含まれており、細胞の活性化作用、カルシウム、リンの腸内吸収促進作用等がある。また栄養価の高いタンパク質を含んでおり、良質なタンパク質供給源となる。この採卵後の鮭の乾燥粉末を飼料に添加すれば、飼料にその含有成分が付加され、その有する作用が牛などの家畜に付与されることになる。
【0043】
また一般に、牛などの家畜には、ミネラル不足の問題がある。ミネラル不足を補うため、岩塩等の塩分をなめさせることが、従来行われていたが、岩塩を別途用意する必要があった。採卵後の鮭の乾燥粉末は、海由来であるため、塩分を含む。そのため、採卵後の鮭の乾燥粉末を含んだ飼料用添加物は、上記のような各種栄養分を付与すると同時に、ミネラルを補給できるので、効果的、かつ便利である。
【0044】
なお、採卵後の鮭は腐り易い傾向があるため、従来はその利用が困難な場合があった。これについて、本発明では、特に梅酢と組み合わせることによって、防腐することができる。梅酢には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸等が含まれているため、殺菌作用、防腐作用等がある。これにより、採卵後の鮭の劣化を防ぎ、鮭の本来持つ豊富な栄養素を有効に利用することが可能となる。また、梅酢のクエン酸と採卵後の鮭のカルシウムとが反応してクエン酸カルシウムを生成する。このクエン酸カルシウムは体内に吸収されやすいので、家禽、家畜のカルシウム補給にいっそう効果的となる。
【0045】
また、採卵後の鮭を炭化させたものも飼料用添加物に混合することができる。鮭を炭化したものは、乳酸菌などの腸内の善玉菌が増殖するのを助け、働きを活性化する。これにより、家禽、家畜の胃腸の消化吸収が促進される。
【0046】
本発明で用いる採卵後の鮭の乾燥方法は、温風乾燥する方法や脱水シートを用いた方法など、種々の方法がある。例えば、好ましい乾燥方法のひとつとして、次のようなジュール熱を利用するものがある。まず、絶縁性の網に包んだ採卵後の鮭を電極間に挟んで固定する。次に採卵後の鮭に定電流装置を用いて、電流を流す。初めは採卵後の鮭に含まれる、水分及び塩化ナトリウムにより、電流が流れやすい。電流を流すことで発生するジュール熱により、水分が蒸発し、乾燥される。水分が少なくなるにつれ、電流が流れにくくなるが、電圧を上げることで定電流を流すことができる。また、乾燥がすすむにつれ、鮭の体積が減少するが、電極を動かす、あるいは支持台を移動させる等、種々の方法により鮭を電極間に固定することができる。本方法では、電流が流れることでジュール熱が鮭の体内において生じ、そのジュール熱は、直接、水分の蒸発に使われる。そのため、温風乾燥する方法と比較して、採卵後の鮭を効率的に乾燥することができる。また、鮭の炭化は、上記と同様な装置を用いて行なうことができる。電極間に炭素粉末を鮭と一緒につめ、電極に電流を流すことで、電極間の温度は1500℃近くまで上昇し、鮭を炭化することが可能となる。
【0047】
前記に示した乾燥方法により乾燥させた採卵後の鮭は、次に粉末化する。採卵後の鮭の乾燥物を粉末化する方法は、粗砕機と粉砕機を用いて粉砕する方法など、種々の方法がある。
【0048】
以上のような採卵後の鮭の乾燥粉末は、上述の昆布の仮根、あるいは、貝殻及び梅酢などと混合して、飼料用添加物に用いられる。飼料用添加物中に含まれる採卵後の鮭の乾燥粉末の混合割合は家畜の種類や時期などに応じて設定できる。
【0049】
本発明の飼料用添加物の組成の例を示せば、下記のとおりであるが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、下記において、百分率は重量基準である。
例1 昆布の仮根100%。
例2 昆布の仮根1〜20%;茶殻70〜98%;貝殻1〜10%。
例3 昆布の仮根1〜20%;茶殻65〜94%;梅酢5〜15%。
例4 昆布の仮根1〜15%;昆布の葉状部の先端部分1〜5%;茶殻65〜93%;梅酢5〜15%
例5 昆布の仮根1〜20%;茶殻40〜94%;貝殻1〜10%;オキアミ1〜20%;大豆油粕1〜10%。
例6 昆布の仮根1〜20%;茶殻45〜96%;梅炭1〜5%;オキアミ1〜20%;大豆油粕1〜10%。
例7 昆布の仮根1〜20%;茶殻25〜91%;梅酢5〜15%;梅炭1〜10%;オキアミ1〜20%;大豆油粕1〜10%。
例8 昆布の仮根1〜20%;茶殻30〜90%;貝殻1〜5%;梅酢5〜15%;梅炭1〜10%;オキアミ1〜10%;大豆油粕1〜10%。
例9 貝殻1〜10%;梅酢90〜99%。
例10 貝殻1〜10%;昆布の葉状部の先端部分1〜20%;梅酢70〜98%
例11 貝殻5〜20%;梅酢5〜20%;茶殻60〜90%。
例12 貝殻5〜20%;梅酢5〜20%;昆布の葉状部の先端部分1〜15%;茶殻45〜89%
例13 貝殻5〜10%;梅酢5〜20%;茶殻55〜85%;梅炭5〜15%。
例14 貝殻5〜10%;梅酢5〜20%;茶殻5〜60%;梅炭5〜20%;オキアミ5〜10%;大豆油粕20〜35%。
例15 昆布の仮根1〜20%;茶殻40〜94%;貝殻1〜10%;オキアミ1〜20%;大豆油粕1〜10%;採卵後の鮭;1〜10%。
例16 貝殻5〜10%;梅酢5〜20%;茶殻5〜60%;梅炭5〜20%;オキアミ5〜10%;大豆油粕20〜35%;採卵後の鮭;1〜10%。
【0050】
本発明の飼料用添加物の形態は、粉末状、あるいは粒状、ペレット状等任意の形状の成形体など、いずれの形態であっても良い。
また、本発明の飼料用添加物を、家禽、家畜の飼料へ添加する場合の添加量は、本発明の飼料用添加物の組成、添加対象の家禽、家畜の飼料の組成等に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例、比較例によりさらに具体的に本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1〜4、比較例1)
まず、(表1)に示すような各組成の粉体の飼料用添加物を調製した。
得られた各飼料用添加物を基準飼料にそれぞれ添加し、飼料を調製した。
【0053】
基準飼料及び得られた各飼料を用いて鶏の飼育試験を行なった。すなわち、500羽の鶏を用い、100羽づつ5区に分け、その一つの区は比較区として基準試料のみを与え、他の四つの区は試験区として、得られた各飼料をそれぞれ与え、5週間飼育した。
その結果、試験区の鶏は、平均体重増加率が比較区のそれを上回っており、一羽当たりの飼料量及び飼料コストでも比較区より優れていた。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例5、6、比較例2)
まず、採卵後の鮭1kgを絶縁性の網に包んで、平行に設置した電極間に挟んで固定した。次に定電流装置を用いて、電流100Aを20分間電極間に流した。その結果、ジュール熱により水分が蒸発し、鮭は乾燥された。なお、上部の電極は、乾燥に伴う鮭の体積減少に応じて、おもりにより下がるようにした。これにより、鮭は乾燥されるまで、両電極間と接触した状態となる。次に、乾燥させた採卵後の鮭を、粗砕機と粉砕機を用いて粉末化した。得られた採卵後の鮭の乾燥粉末を(表2)に示すような組成となるように添加し、粉体の飼料用添加物を調製した。得られた各飼料用添加物を基準飼料にそれぞれ添加し、飼料を調製した。
【0056】
【表2】

【0057】
基準飼料及び得られた飼料を用いてラットの飼育試験を行なった。すなわち、21匹のラットを用い、7匹づつ3区に分け、その一つの区は比較区(比較例2)として基準試料のみを与え、他の2つの区は試験区として、実施例5、6で得られた各飼料をそれぞれ与え、5週間飼育した。その結果、各試験区のラットは、平均体重増加率が比較区のそれを共に上回っていた。また、実施例6の試験区のラットは、(表3)に示すように、大腿骨中のカルシウムおよびマグネシウム数値が実施例5のそれを上回っていた。これは採卵後の鮭の乾燥粉末と梅酢とを組み合わせて添加した効果と考えられる。
【0058】
【表3】

【符号の説明】
【0059】
1 昆布
2 ロープ
10 葉状部
11 茎状部
12 昆布の仮根
101 先端部分
121 枝分かれ部
122 枝分かれ部を除いた部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻及び梅酢、採卵後の鮭を乾燥させ粉末にした魚介類の残渣を含有することを特徴とする飼料用添加物。
【請求項2】
請求項1記載の飼料用添加物において、貝殻及び梅酢に加えて、茶殻を含有することを特徴とする飼料用添加物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飼料用添加物において、さらに海藻類を含有することを特徴とする飼料用添加物。
【請求項4】
請求項3記載の飼料用添加物において、海藻類が、海藻類を加工する過程で生ずる不使用部分であることを特徴とする飼料用添加物。
【請求項5】
請求項4記載の飼料用添加物において、海藻類が、昆布を加工する過程で不要とされる葉状部の先端部分であることを特徴とする飼料用添加物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の飼料用添加物に加えて、梅炭、オキアミ及び大豆油粕から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする飼料用添加物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−165495(P2009−165495A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112200(P2009−112200)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【分割の表示】特願2003−110665(P2003−110665)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(501195670)株式会社事業創造研究所 (12)
【Fターム(参考)】