説明

飽和移転からのコントラスト強調を用いた試料特性の定量化

【課題】飽和移転からのコントラスト強調を用いて試料特性を定量化する方法を提供する。
【解決手段】MRI撮像過程と連係し、CEST薬剤がその内部に投与された対象に対するRF照射の操作を利用して生物学的パラメータをインビボで決定する。このCEST薬剤の交換速度は、標準的な較正技法を通じた生物学的パラメータの決定を可能とさせるRF操作を介して決定される。CEST薬剤の交換速度は、pHなどの多くの生物学的パラメータの関数とした変調を受ける。さらに、CEST薬剤の交換速度をインビボで決定するように構成したMRI装置及びコンピュータ・プログラム成果物についても開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
飽和移転からのコントラスト強調を用いた試料特性の定量化に関する
【背景技術】
【0002】
Ward及びBalaban(1)は新たなタイプの造影剤(彼らはこれを化学交換依存型飽和移転のCESTと呼んでいる)を発表している。CEST薬剤は大部分の試料に存在する支配的な水ラインの周波数から十分に移動させた共鳴周波数を有する陽子を包含しており、これによって水に対しては直接的にほとんど影響を及ぼさないRF磁場によって薬剤共鳴を飽和させることができる。共鳴陽子が大量の水とで化学的な交換を起こすと、水の磁化は低下する。好適な状態では、交換の反復によって、薬剤が任意の一時点で有する総磁化と比べてかなり多くの量だけ水磁化を低下させることが可能である。この倍率だけ感度が大幅に増大される。
【0003】
Ward及びBalaban(2)はさらに、CESTによる試料特性の定量化を可能にさせることを提唱すると共に、pH決定について発表している。同様の定量化は緩和ベースの薬剤では極めて困難である。この困難さを確認するために、その緩和能がpHに伴って既知の仕方で変わるような薬剤について考察してみる。緩和速度はpHだけでなく濃度にも依存するため、試料信号の(またさらには試料緩和速度の)計測値によってそのpHを得ることはできない。一般に、造影剤濃度は事前に予測することが不可能であるか、あるいはこれを得ることは意味がない。既知の緩和能を有する通常の緩和薬剤では、緩和速度から濃度を決定することは可能である。しかし、pHに感応性が高い造影剤を仮定しても、pHが既知でなければ緩和能が分からず、このケースでは薬剤は不要である。
【0004】
Ward及びBalaban(2)はこの問題を、2種類の共鳴周波数をもつ交換可能陽子を有する「デュアル薬剤」を用いて解決した。一方のタイプの陽子はpH依存性の交換寿命を有し、またもう一方のタイプはpH非依存性の寿命を有している。共鳴のうちの一方に対する照射効果をもう一方に対する照射効果で割り算することによって未知の濃度の効果が相殺される。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0059881号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0191243号
【非特許文献1】Shanrong Zhang、「A Paramagnetic CEST Agent for Imaging Glucose with MRI」(JACS communications、ウェッブ出版11/03/03)
【非特許文献2】Ward及びBalaban、「Magnetic Resonance in Medicine」(44:799〜802 (2000))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デュアル薬剤法をWard及びBalabanが発表したように機能させるためには、そのRF照射が薬剤結合の陽子の磁化を完全に飽和させるだけ十分に強力であることが必要となる。この大きなRFは人間の検査や大型動物に対して安全でないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
任意の代謝産物や溶質に関するpH、温度、濃度など試料の特性を計測することは望ましい目標の1つである。その緩和能がこうした特性に依存する造影剤では一般に、計測可能な試料の緩和速度が関心対象の特性だけでなく造影剤の濃度にも依存するため、この特性の定量化を可能にすることができない。こうした濃度は既知でないことがあり、インビボで既知となることは稀である。Ward及びBalabanは関心対象の特性の影響を受けるものと受けないものという2つの共鳴を有する飽和移転薬剤を用いることによって濃度が未知であるという困難を解消している。米国特許第2005/0059881号を参照されたい。本発明は、共鳴を1つだけ有する薬剤を用いたとしても、あるいは薬剤のうちの1つの共鳴だけを観測することによってもこの困難を解消できることを示す。本発明は、別の無線周波数パルス、別の強度または別の変調に対する曝露から得られる複数の計測値を比較することによって、化学交換の速度を決定する。次いでこの交換速度は、校正曲線を介して、関心対象の組織特性(例えば、pH、温度、グルコース濃度)と関連させることが可能である。
【0007】
複数のRF強度(少なくとも、2つの強度)で計測を実施すると、薬剤共鳴を完全に飽和させるだけの十分に強力なRFの場合に生じるような効果まで外挿でき、これによってWard及びBalabanの計算方法の適用が可能となる。さらに別法として、極めて強力なRFまで外挿するのに使用される複数のRF強度における計測値を得ることによって、陽子の交換寿命(すなわち、造影剤の交換速度)を推定することが可能となる。pHの決定(例えば、グルコース濃度(3)などの環境の別の様相に対して感受性が高い薬剤に関する別の特性の決定)に必要となるのはこれですべてである。複数のRF強度計測値があれば、デュアル薬剤は必ずしも必要とせず、またRFパルスを強力とする必要もない。
【0008】
pH、グルコース濃度、あるいは代謝産物濃度や温度などの別の環境係数(ただし、これらに限らない)といった生物学的パラメータは、関心対象の環境係数の関数で変化する効果を有するCEST造影剤を用いて計測される。本明細書の教示に照応して使用できるCEST薬剤の例としては、Shanrong Zhangらによる「A Paramagnetic CEST Agent for Imaging Glucose with MRI」(JACS communications、ウェッブ出版11/03/03)で検討されている薬剤(ただし、これに限らない)が含まれる。CEST薬剤に関する追加的な情報を得るためには米国特許第2005/0191243号を引用することができる。当業者であれば、ある種の実施形態での使用に適した利用可能なCEST薬剤を容易に決定するであろう。単に例証を目的として本出願の全体を通じて、こうした生物学的パラメータの一例としてpHを使用することにする。その交換可能な陽子の交換速度がpHに依存するためにpHに対する感受性が高いCEST薬剤を使用することを前提とする。当業者であれば、化学シフト(ただし、これに限らない)などのCEST薬剤の別の特性のモニタリングによって生物学的パラメータを決定できることを理解されよう。この交換速度は、交換速度の決定によってpHが決定されるように較正を受けている。例えば、Ward及びBalabanによる「Magnetic Resonance in Medicine」(44:799〜802 (2000))を参照されたい。CESTの効果は、MRI画像においてあるいはNMRスペクトルにおいて計測することが可能である。薬剤の効果は、pH、組織緩和速度及び薬剤濃度という試料の3つの未知特性に依存する。したがって、pHを決定するためには、複数の独立した計測を実施しなければならない。本明細書の教示を身に付けることによって、この外挿の方法が複数存在すること、並びにこれらを互いに結合させたあるいはWard及びBalabanのデュアル薬剤法と結合させた混成の解決法が存在することを当業者は理解するであろう。交換速度を外挿する例示的な方法について、以下に提示する例で説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(例1:ロングCESTパルスを利用した交換速度の外挿)
CEST薬剤の共鳴照射を用いた画像(または、スペクトル)と無照射あるいは薬剤や水と共鳴しないコントロール照射を用いた画像(または、スペクトル)とを作成することによってCESTの効果が計測される。簡単な例として、定常状態を達成できる(すなわち、磁化がもはや変化しない)ような十分な長さをもつCESTパルスの直後における信号の計測について検討する。簡略とするためにさらに、ロングTRと無CEST照射による計測を利用することによって信号を正規化させることがある。TRは反復時間を意味することは当業者であれば理解されよう。(式1)では、薬剤を含まない組織における磁化移転コントラストの可能性については無視していることに留意されたい。定常状態では、緩和による磁化の増大はCESTによるその低下と同じ速度となる。
【0010】
0=(1−m)r−mcf(w1,k) (式1)
上式において、mは磁化、rは放射のない組織の1/T1、cは薬剤結合の陽子プールのサイズを水ライン陽子プール(希釈を前提とする)で除した値として表現される当該薬剤に関する交換可能陽子の濃度、w1は角周波数を単位とするRF照射の強度、またkは交換速度(当該薬剤に関する陽子の平均寿命の逆数)である。関数fはその薬剤が照射を受けたときに磁化をどの程度容易に破壊するかを記述している。これを整理すると次式となる。
【0011】
f(w1,k)=(1/m−1)roc (式2)
上式においてrocはr/cである。2つのRF強度で計測を実施することによって2つの未知数(kとroc)を有する次の2つの式が得られる。オペレータによって、これらの磁化が計測される共にRF強度が制御される。
【0012】
f(w1a,k)=(1/ma−1)roc (式3)
f(w1b,k)=(1/mb−1)roc
完全な飽和を未照射またはコントロール照射のみと比較する実験では、w1a=0及びw1b=無限大としてmaとmbを計測している。これによってf(w1,k)をそれぞれ0及びkとした式が得られる。
【0013】
f(w1a,k)=(1/ma−1)roc=0 (式4)
f(w1b,k)=(1/mb−1)roc=k
このケースでは、これら2つの式をkについて解くことができない。第1の式は単に、無照射においてmが1であることを示しているに過ぎない。第2の単一の式には2つの未知数rocとkが含まれている。
【0014】
RF強度に関する別の選択及び関数fに関する知見によって(式3)をk及びrocについて、例えば以下のようにして解くことができる。薬剤共鳴周波数での照射を仮定すると共に、薬剤と結合されている間の陽子の緩和は無視することにする。水から薬剤への陽子の移転によって水の磁化は速度ckmで除去される。薬剤から水への陽子移転によってこの磁化の一部が復帰する。時間tの間結合されていた陽子では、その復帰速度はckmcos(w1 t)である。その相対確率exp(−k t)によって重み付けした可能な結合寿命すべてにわたる平均化によって関数fが決定される。これは次式のようにまとめられる。
【0015】
【数1】

【0016】
(式5)
これを(式3)に代入することにより次式が得られる。
【0017】
【数2】

【0018】
(式6)
この式はk及びrocについて解くことができる。kの2乗は(まとめると)次式となる。
【0019】
【数3】

【0020】
(式7)
したがって、(式7)及び以下に記載する別の式は、様々な取得値または既知値を利用することによってkを外挿し交換速度を提供することができる。(式7)の左辺はk(2乗値)を提供している。この式の右辺に含まれるのはすべてが既知量または計測量である。maとmbは計測した磁化である(これらの値はロングTR(RF無し)に対して正規化され、これによりこれらの値は本質的に2つの計測した磁化の比となる)。w1aとw1bは機械設定値である。
【0021】
(式5)で規定したfよりさらに複雑な関数も同様に(式1)並びにこれに従属する式に代入しkについて解くことが可能である。より高度化した関数の例には、薬剤に結合されている間の陽子の緩和、オフレゾナンス照射を考慮している関数、あるいは水磁化がCEST照射の間は正確には軸方向に向いていないが回転座標系においては水磁化は実効的磁場の方向に見えるという事実を勘案している関数がある。
(例2:変調RFパルスを介した交換の外挿)
上述の実施形態は、未変調のロング共鳴パルスに関する相互の及び無パルスとの結果比較、あるいはオフレゾナンスのコントロールパルスとの結果比較であった。パルスを変調すると、CESTの効果を予測可能で潜在的に有用な方式で修正することが可能である。例えば(図1)、薬剤に結合された陽子の化学交換寿命と比べてかなり短い180度パルスを生成させ、かつこの寿命と比べて長い遅延量だけこれらを分離させると、kがパルス持続時間δ及び介在パルスの遅延持続時間Δによって設定される限界範囲内のままであるという条件で、CESTの効果がkと比較的独立となる(δ<<1/kかつΔ>>1/kである限り、kはCESTの効果にほとんど影響を及ぼすことがないが、CEST効果は薬剤濃度と比例することになる)。組織緩和速度が既知または計測されていれば、この「kに独立の」CEST実験によって薬剤濃度が分かることになる。濃度及び緩和速度が分かると、標準的な未変調CESTの実験結果によってkについて(式1)を解くことができる。したがって、これが交換速度の決定に関する別の実施形態となる。
【0022】
(式1)のコンテキストでは、変調式パルスは単に別の関数fを与えるものと見なすことができる。一般に、関数fはRFに関して単なるw1と比べてより多くの記述を必要とすることになる。この関数は、(式5)の場合と比べてそのkに対する依存度が異なる可能性がある。例えば薬剤結合された陽子の交換寿命に近い間隔でパルス位相を180度切り換えると、上のパラグラフで説明したものよりも依存度がより弱くなるか、あるいはより依存性が強くなる。
【0023】
造影剤の交換速度を決定する具体的な実施形態では、その第1の工程は、CESTパルスを用いずに磁化を計測する工程を含む(本実施形態や別の任意の実施形態に関して特に記載がない限り、「第1の」、「第2の」その他の用語の使用は、必ずしもその工程がある特定の順序に従わねばならないことを意味するものではないことに留意されたい。また当業者であれば、同じ情報を取得するために各工程を代替的なシーケンスで実施できることを理解されよう)。磁化の計測は例えば、試料内で多数のボクセルから成る画像を作成すること、あるいは当技術分野で周知の別の方法に従うことによって実現することが可能である。当業者であれば、磁化の計測は観測パルス(複数のこともある)を利用することを理解されよう。この磁化は、任意の単位で提供することができる。その第2の工程は、幾つかのT1にわたる一連のCESTパルスを用いて磁化を計測することである(定常状態に達していると共にパルス持続時間が薬剤上の陽子の平均寿命と比べて極めて小さい状態にある一方、そのパルス間隔はこの寿命と比べて極めて長い状態にある)。第3に、CESTパルスをオンにした各画素の画像強度は、CESTパルスをオフにした(あるいは、オフレゾナンス・コントロール周波数を受けた)強度で割り算されることがある。この正規化磁化は無次元であり、0から1の域内に来るはずである。したがって以下において、正規化磁化のことをmと呼んでいる。
【0024】
定常状態では、次式が当てはまる。
【0025】
0=(1−m)r−cm(1−cos(flip))/DELTA (式8)
上式において、flipは一連のパルス内のCESTパルスの各々のフリップ角であり、またDELTAはあるCESTパルスの開始から次のパルスの開始までの時間である。右辺の第1項は、mが平衡値1に向かって緩和する際の速度である。右辺の第2項は、CEST薬剤との交換によってmが失われる(0に至る)際の速度である。この喪失速度は、存在するCEST薬剤の量並びにmそれ自体に比例する。(mが0であれば、薬剤との交換による喪失を無くすことができる。)大量プールから薬剤に移動する陽子はこれと一緒に磁化を運ぶ。薬剤から大量プールに至る陽子によってその一部が戻されるため、この式の1−cos(flip)がある。flipが90度であれば、薬剤に関する磁化のすべてがパルスによって破壊されると共にこれが次のパルスの前に交換され、これによりこの係数はちょうど1になる。flipが180度であれば、薬剤はその効果が2倍になり、薬剤結合の陽子磁化の方向が反転してからこれが大量の水プールに戻されるため1−cos(flip)が2倍になる。
【0026】
(式8)を整理することによって(式9)が得られる。
【0027】
roc=r/c=m(1−cos(flip))/(1−m) (式9)
便宜上、rocは2つの変数rとcの商という単一の変数を意味している。
【0028】
第4の工程では、上述の工程により計測されたmを用いてrocを決定することができ、またflipはオペレータにより制御されているため既知である。この時点において、rocが既知となり、ロングの連続RF CESTパルス(例1参照)を用いて取得した計測の利用が可能となる。(式5)を(式2)に代入することによって次式が得られる。
【0029】
【数4】

【0030】
(繰り返しになるがここで使用したmは正規化された値である。規格化に関してCESTの照射を使用しない場合、一連のショートパルスによるmの正規化に用いたのと同じ画像をこの値の正規化で使用することが可能である。パルス列結果を正規化するために一連のオフレゾナンス・ダミーCESTパルスを使用する場合、ロングのオフレゾナンスCESTダミーパルスを用いて別の画像を作成しロングCESTパルス結果を正規化することがより実用的である。したがって、あるボクセルに関する2つの正規化磁化値は3枚または4枚の画像から得られる。)全体をcで割り算することによって次式が得られる。
【0031】
【数5】

【0032】
ここでも、これらの任意の実施形態の場合と同様に、(式5)がRFオンのときの薬剤の効果を記述するための唯一可能な関数ではない。当業者であれば別の関数も規定できることを理解されよう。別の関数が有用となり得るケースに関して、若干重なりあった周波数A及びBに共鳴を有する2つの標的CEST薬剤を用いた対象の撮像について検討してみる。Aを若干オフレゾナンスで照射するとB共鳴からの望ましくない効果を回避することが可能である。RFが若干オフレゾナンスに移動するにつれて、A共鳴は有する効果がより小さくなるが、(式5)はこれを考慮に入れていない。より精緻な関数とすることが望ましい。
【0033】
rocが既知でない場合、上記の条件を満たす可能なkの数は無限大になる。rocが既知であるため、上記の2次方程式を解いて、kに関する可能な2つの解を得ることができる。
【0034】
【数6】

【0035】
及び
【0036】
【数7】

【0037】
事前の知見によってこの選択が決められることがある。例えばその決定がある連続組の一部であり、かつその第1の解が時間の経過と共にpHが増加することを示唆している場合、第2の解はpHが低下することを示唆することになる。こうした選択肢の1つが不合理であり、もう一方が正しいとされることがある。もっと簡単に言うと、一方の解が期待レンジ内に来ており、もう一方はレンジ内にないことがある。
(例3:多重ショートパルスを介した交換速度の外挿)
TRまたはCESTパルス持続時間は、必ずしもT1と比較して長くする必要はない。別のパルスシーケンスがCESTと共に使用されることがある。例えば(恐らく、時間の節約のために)、ショートTR、低フリップ角、傾斜エコーシーケンス内で各観測パルスの前にCEST照射パルスを追加することができる。反復される観測パルスによって(式1)に別の項が追加され、またCEST照射は観測工程中はオン状態のままではないため、CEST照射のデューティサイクルによってCEST効果をスケールダウンさせなければならない。(式5)で規定した関数を用いると、(式1)は次式となる。
【0038】
【数8】

【0039】
(式10)
各観測パルスによって縦磁化が元の値の1−cos(flip)分の1(ここで、flipは観測パルスを意味する)に低下される。flipが小さくかつTR<<T1であるならば、これをTRで割り算すること(これを扱う際の妥当な方法)によって速度が得られる。上述のこの速度のことをrtrfと呼ぶ。
【0040】
2種類のRF強度を用いて(式10)に基づいて2つの連立式を解くことによって次式が得られる。
【0041】
【数9】

【0042】
(式11)
flipが十分に小さくかつTRが十分に短ければ、(式10)は妥当であり、またrtrf<<rであればrtrfを無視することができかつその解はロングパルスの実施形態の場合と同じとなり、組織緩和速度が相殺されて既知である必要がなくなる。rtrfが緩和と比較して小さくない場合には、k及びpHを知るために緩和が既知でなければならない。この第3の実施形態は、幾つかの有益な点を提供する。これによれば、より高速な撮像が可能となる以外に、複数のスライスの同時撮像を可能にする一方法の一例が提供される。当業者であれば、複数のスライスを同時に撮像するための別の方法も存在することを理解されよう。
【0043】
具体的な一実施形態では、2種類のRF強度(w1aとw1b)を利用した信号がそれぞれの薬剤共鳴周波数に関して計測される。この2つのRF強度のうちの少なくとも一方は薬剤の飽和を生じるのに十分な量未満とさせることが重要である。RF強度w1aとw1bを用いるが薬剤共鳴周波数はオフとして信号を計測することによってコントロールが得られる。オンレゾナンスで取得した信号がオフレゾナンスの結果で割り算されて正規化されたma及びmbが得られる。rの値が決定される。この値は当技術分野で周知の任意の手段によって取得することができ、あるいはある程度の確度リスクの下で文献値を前提とすることがある。(式10)によって規定されるrtrfが決定される。このためには、観測パルスのflip及びパルスシーケンスのTRが必要である。この係数を計測するために較正実験を計画することも可能である。(式11)に入れるma、mb、w1a、w1b、r及びrtrfの取得値を利用することによって、kを取得することができる。上で検討したように、kが決定されると、基本的較正方法によってpHなどの生物学的パラメータが決定される。
【0044】
別の具体的な実施形態によっても交換速度は決定可能である。(式9)の右辺の3つの項のうちの2つはrに比例し、またもう1つはr+rtrfに比例する。r>>rtrfであることが確認されれば、これらの項はすべてrで割り算することができる。これによってrを有しない2つの項と、係数1+rtrf/r(1に極めて近い)を有する1つの項が残る。rが結果に及ぼす影響はわずかであるため、このケースではrの計測を要しない可能性が高く、粗い推定で十分となる。rtrf/rが0であると仮定すると、(式11)は、例1で記載したロングパルス法の実施形態の場合の結果と同様に(式7)まで簡略化できる。
【0045】
従来の特許請求の構成に従い、特に記載しない限り「第1の」、「第2の」、「第3の」その他の用語の使用は必ずしもある序列や時間的順序を意味するものではなく、単にある限定内容を別の限定内容と区画するために使用したものであることに留意すべきである。
(例4:生物学的パラメータを決定するためのMRIシステム、並びにこれを用いるためのコンピュータ・プログラム成果物)
本発明の実施形態は処理モジュールを含んだデバイスまたはシステム、及び/または少なくとも1つのプログラムコード・モジュールを含んだコンピュータ・プログラム成果物として具現化し得ることは当業者であれば理解されよう。したがって本発明は、全体がハードウェアの実施形態やソフトウェア面とハードウェア面を組み合わせた実施形態の形式を取ることがある。さらに本発明は、その内部にコンピュータ使用可能なプログラムコード手段を有するコンピュータ使用可能記憶媒体上にコンピュータ・プログラム成果物を含むことがある。ハードディスク、CD−ROM、DVD、光学式記憶デバイス、または磁気式記憶デバイスを含む適当な任意のコンピュータ読み取り可能媒体が利用されることがある。
【0046】
「処理モジュール」という用語は、単一の処理デバイスを含むことや複数の処理デバイスを含むことがある。こうした処理デバイスは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央演算処理装置、現場プログラム可能なゲートアレイ、プログラム可能論理デバイス、状態遷移機械、論理回路、アナログ回路、ディジタル回路、及び/または動作命令に基づいて信号(アナログ及び/またはディジタルの信号)を取り扱う任意のデバイスとすることがある。この処理モジュールは、メモリデバイスに対して動作可能に結合させることや、メモリデバイスと一体化させることがある。このメモリデバイスは、単一のメモリデバイスとすることや、複数のメモリデバイスとすることがある。こうしたメモリデバイスは、読み取り専用メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、揮発性メモリ、不揮発メモリ、スタティック・メモリ、ダイナミック・メモリ、フラッシュ・メモリ、及び/またはディジタル情報を保存する任意のデバイスとすることがある。本明細書で使用する場合にコンピュータとは、少なくとも1つの処理モジュールを含んだデバイスである。
【0047】
コンピュータ使用可能あるいはコンピュータ読み取り可能な媒体は、例えば電子式、磁気式、光学式、電磁気式、赤外線式または半導体のシステム、装置、デバイスまたは伝播媒体(ただし、これらに限らない)とすること、あるいはこれらを含むことがある。コンピュータ読み取り可能な媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)には、1つまたは複数の配線を有する電気接続、可搬式のコンピュータ・ディスケット、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能でプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、光ファイバ、可搬式コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、CD ROM、DVD(ディジタル・ビデオ・ディスク)、あるいは電子式記憶媒体を含むことになる。コンピュータ使用可能あるいはコンピュータ読み取り可能な媒体はさらには、そのプログラムが例えば紙媒体や別の媒体の光学的スキャンを介して電子式に取り込まれ、次いで必要に応じた適当な方法でコンパイル、解釈実行さもなければ処理され、さらにコンピュータメモリ内に保存され得るならば、プログラムをその上にプリントした紙媒体や適当な別の媒体とすることも可能である。
【0048】
本発明のある種の実施形態の動作を実行するためのコンピュータ・プログラムコードは、Java(商標)、Smalltalk(商標)、Perl、Python、Ruby、Lisp、PHP、「C」、フォートランまたはC++(ただし、これらに限らない)を含むオブジェクト指向及び/または従来式の手続き型プログラミング言語の形で記述されることがある。このプログラムコードは、その全体をユーザのコンピュータ上で実行すること、その一部をユーザのコンピュータ上で実行すること、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして実行すること、その一部をユーザのコンピュータ上で実行しかつその一部を遠隔コンピュータ上で実行すること、あるいはその全体を遠隔コンピュータ上で実行すること、があり得る。後者のケースにおける遠隔コンピュータはローカル・エリア・ネットワーク(LAN)やワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を介してユーザのコンピュータに接続されることがあり、あるいはこの接続を(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いたインターネットを介して)外部のコンピュータに対する接続とすることがある。
【0049】
本発明のある種の実施形態について、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータ・プログラム成果物の流れ図及び/またはブロック図を参照しながら本明細書に記載している。流れ図及び/またはブロック図の各ブロック、並びに流れ図及び/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータ読み取り可能プログラムコード・モジュールによって実現できることが理解されよう。これらのプログラムコード・モジュールは、1つのマシンを生み出すように汎用のコンピュータ、特殊目的のコンピュータ、埋込み型プロセッサあるいは別のプログラム可能なデータ処理装置の処理モジュールに提供されることがあり、これによりこのプログラムコード・モジュールをコンピュータや別のプログラム可能データ処理装置の処理モジュールを介して実行すると、流れ図及び/またはブロック図の各ブロックで指定された機能を実現するための手段を生成させることができる。
【0050】
これらのコンピュータ・プログラムコード・モジュールはさらに、コンピュータや別のプログラム可能データ処理装置に対してある具体的な方式で機能するように指令することが可能なコンピュータ読み取り可能メモリ内に保存されることがあり、これによってコンピュータ読み取り可能メモリ内の保存されたプログラムコード・モジュールは1つの製造物を生み出すことができる。
【0051】
コンピュータ・プログラムコード・モジュールはさらに、コンピュータまたは別のプログラム可能装置上で一連の動作工程を実行させてコンピュータ実現の処理法を生み出させるようにコンピュータまたは別のプログラム可能データ処理装置上にロードされ、コンピュータまたは別のプログラム可能装置上で実行した命令が流れ図及び/またはブロック図の各ブロックで指定された機能を実現するための工程を提供することができる。
【0052】
図3は、本発明のNMR装置の実施形態を表している。簡単に述べると、本装置は、検査領域2内に強力、連続かつ均一な磁場Bを生成させるための手段1を備える。身体3(例えば、テーブル4によって支持される)は領域2の近傍にもってくる。実験の全体を通じて、この身体は磁場Bを受けた状態のままとする。アンテナ5を発生装置6に接続した状態において、検査領域2内に配置させた身体3の粒子の磁気モーメントの励起を生じさせることが可能である。アンテナ5及び発生装置6は、水分子(または、別の何らかの内在分子)の水陽子、及び対象に投与したCEST薬剤の陽子を励起するために照射を生成及び伝達するように構成されている。当業者であれば本明細書の教示に照らして、照射の誘導及び信号の受信を単独の発生装置及びアンテナの構成要素によって実行することができる(これらが水や別の何らかの内在分子の陽子であるか、CEST薬剤の陽子であるかによらない)ことを理解されよう。一例ではそのアンテナ5は、その各々の位相シフト励起によって回転励起磁場を発生させることが可能なバーアンテナである。
【0053】
これらの励起は一時的なものである。これらの励起の終わりに、アンテナ5は脱励起信号を受信してこれを、送受切換器7を介して受信器8に伝える役割をすることがある。受信器8は従来では、増幅/復調回路9と少なくとも1つの処理モジュール10とを備える。この処理は、ディスプレイ11上に表出するための信号に対する成形を含むことがある。次いで、身体3のスライス12の画像を作成し、ディスプレイ11の画面上に表出させることができる。画像を取得するように設計した撮像シーケンスは複数の励起計測シーケンスを含んでおり、これらのそれぞれの期間に磁気モーメントの自由歳差運動信号に対してエンコードを付与するために傾斜コイル13が使用されることがある。これらのエンコード、並びに発生装置6、送受切換器7、受信器8及びディスプレイ11の機能は、プログラムコード・モジュールによってその作用が統括されている制御装置14による管理を受けている。これらの要素のすべては本来的に周知である。具体的には、制御装置14はそのシーケンスがプログラム可能であるという特性をもつ。
【0054】
したがってこのプログラムでは、その実行動作に対して単純な修正を行って実施シーケンスの性格を変更することが可能である。図2は、コンピュータ・プログラムコード・モジュールの指令に従って制御装置によって実行される得るシーケンスの流れ図を表しており、2種類以上のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたってその対象を照射する工程205と、個々の各共鳴RF強度による該対象の照射と同時に該対象の磁化を計測しそれぞれの磁化値を取得する工程210と、該RF強度及びそれぞれの磁化値を利用して該CEST薬剤の交換速度を把握する工程215と、からなる。
【0055】
図4は、コンピュータ・プログラムコード・モジュールの指令に従って制御装置によって実行される得るシーケンスの流れ図を表しており、第1のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたってその対象を照射する工程405と、第1の共鳴RF強度での該対象の照射と同時に該対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程410と、該第1の磁化値を正規化して第1の正規化磁化値を取得する工程415と、該対象を該第1のCEST共鳴RF強度より大きい第2のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたって照射する工程420と、該対象を第2のCEST共鳴RF強度で照射すると同時に該対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程425と、該第2の磁化値を正規化して第2の正規化磁化値を取得する工程430と、該第1のCEST共鳴RF強度、該第2のCEST共鳴RF強度、該第1の正規化磁化値及び該第2の正規化磁化値を利用することによって該CEST薬剤の交換速度を把握する工程435と、からなる。
【0056】
図5は、コンピュータ・プログラムコード・モジュールの指令に従って制御装置によって実行される得るシーケンスの流れ図を表しており、その対象を幾つかのT1にわたるCEST共鳴パルス系列で照射する工程であって、CEST共鳴パルス持続時間は該CEST薬剤に関する陽子の平均寿命より短く、かつCEST共鳴パルス間隔は該平均寿命より長いがT1よりは短い照射工程505と、該対象をCEST共鳴パルス系列で照射すると同時に該対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程510と、該第1の磁化値を正規化して第1の正規化磁化値を取得する工程515と、該第1の磁化値を利用してrocを把握しroc値を取得する工程520と、その持続時間がT1に等しいかこれより大きいCEST共鳴パルスで該対象を照射する工程525と、該対象をCEST共鳴パルスで照射すると同時に該対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程530と、該第2の磁化値を正規化して第2の正規化磁化値を取得する工程535と、該roc値及び該第2の正規化磁化値を利用することによって交換速度を把握する工程540と、からなる。
【0057】
図6は、コンピュータ・プログラムコード・モジュールの指令に従って制御装置によって実行される得るシーケンスの別の流れ図の別の一例を表しており、第1のCESTパルス系列によって第1のCEST共鳴RF強度でその対象を照射する工程であって、各パルス持続時間がT1未満である照射工程605と、該対象を第1のCESTパルス系列によって照射すると同時に該対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程610と、該第1の磁化値を正規化して第1の正規化磁化値を取得する工程615と、該対象を第2のCESTパルス系列によって第2のCEST共鳴RF強度で照射する工程であって、各パルス持続時間がT1未満でありかつ該第2のCEST共鳴RF強度が該第1のCEST共鳴RF強度より大きい照射工程620と、該対象を第2のCEST共鳴RF強度で照射すると同時に該対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程625と、該第2の磁化値を正規化して第2の正規化磁化値を取得する工程630と、該対象の緩和速度を把握しr値を取得する工程635と、rtrfを把握してrtrf値を取得する工程640と、該第1のCEST共鳴RF強度、該第2のCEST共鳴RF強度、該第1の正規化磁化値、該第2の正規化磁化値、該r値及び該rtrf値を利用することによって該CEST薬剤の交換速度を把握する工程645と、からなる。
【0058】
本明細書で検討または引用した特許、特許出願、公開、テキスト及び参考文献はすべて、本明細書の教示と矛盾しない範囲において参照によりこれに組み入れるものとする。さらに、特に定義していない用語はすべて、先ずこの開示での利用を通じて付与された意味を有するものと解釈すべきであり、またこうした意味が推察可能でない場合はその通常の意味とする。限定を記述しているが具体的な用語を与えていない場合は、この限定に対応する用語は本明細書で引用した任意の文献、特許、出願、及びその他の文書から取られることがある。
【0059】
本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態によってその範囲が限定されるものではない。実際に、以上の説明から当業者にとっては、本明細書に記載した以外の本発明に対する様々な修正が明らかとなろう。こうした修正は、添付の特許請求の範囲の域内に属するように意図している。したがって上述の変形形態に関してまた別の点において、本明細書に記載した例及び実施形態が単に例証を目的としたものであること、並びにこれらに照らして様々な修正や変更が当業者に対して示唆されると共に、これらは本出願及び添付の特許請求の範囲の精神及び趣旨の域内に含めるべきであること、を理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】一実施形態の1つの工程の例証を支援するグラフである。
【図2】CEST薬剤の交換速度をインビボで決定するための工程を表した流れ図である。
【図3】MRIシステムの実施形態の構成要素を表した図である。
【図4】CEST薬剤の交換速度をインビボで決定するための工程を表した流れ図である。
【図5】CEST薬剤の交換速度をインビボで決定するための工程を表した流れ図である。
【図6】CEST薬剤の交換速度を決定するための工程を表した流れ図である。
【符号の説明】
【0061】
1 マグネット手段
2 検査領域
3 身体
4 テーブル
5 アンテナ
6 発生装置
7 送受切換器
8 受信器
9 増幅/復調回路
10 処理モジュール
11 ディスプレイ
12 スライス
13 傾斜コイル
14 制御装置
205 T1
210 磁化値
215 磁化値
405 T1
410 第1の磁化値
415 第1の正規化磁化値
420 RF強度
425 第2の磁化値
430 正規化磁化値
435 第2の正規化磁化値
510 第1の磁化値
515 第1の正規化磁化値
520 roc値
530 第2の磁化値
535 第2の正規化磁化値
540 第2の正規化磁化値
610 第1の磁化値
615 第1の正規化磁化値
620 RF強度
625 第2の磁化値
630 第2の正規化磁化値
635 r値
640 rtrf値
645 rtrf値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRIまたはNMRスペクトロスコピーあるいはスペクトロスコピー撮像を利用することによって生理学的組織の物理的または化学的パラメータをインビボで決定する方法であって、
CEST造影剤を対象に投与する工程と、
ある特定の位置における前記CEST薬剤の交換速度をインビボで決定する工程と、
前記交換速度を標準曲線と比較し前記特定の位置における物理的または化学的パラメータを決定する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
ある特定位置におけるCEST薬剤の交換速度をインビボで決定する前記工程は、
前記対象を磁場内に置いたままで第1のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたって照射する工程と、
前記対象を第1のCEST共鳴RF強度で照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程と、
前記対象を磁場内に置いたままで前記第1のCEST共鳴RF強度より大きい第2のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたって照射する工程と、
前記対象を第2のCEST共鳴RF強度で照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程と、
前記第1のCEST共鳴RF強度、前記第2のCEST共鳴RF強度、前記第1の磁化値及び前記第2の磁化値を利用して前記CEST薬剤の交換速度を把握する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の磁化値を正規化して第1の正規化磁化値を取得する工程と、前記第2の磁化値を正規化して第2の正規化磁化値を取得する工程と、をさらに含むと共に、前記交換速度の把握工程は前記第1及び第2の磁化値の代わりに前記第1及び第2の正規化磁化値を利用している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CEST薬剤の交換速度を決定する前記工程は、
前記対象を静磁場にかける工程と、
前記対象を2種類以上のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたって照射する工程と、
個々の各共鳴RF強度による前記対象の照射と同時に前記対象の磁化を計測しそれぞれの磁化値を取得する工程と、
前記RF強度及びそれぞれの磁化値を利用して前記CEST薬剤の交換速度を把握する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CEST薬剤の交換速度を決定する前記工程は、
前記対象を磁場内に置いたままで幾つかのT1にわたるCEST共鳴パルス系列で照射する工程であって、CEST共鳴パルス持続時間は前記CEST薬剤に関する陽子の平均寿命より短く、かつCEST共鳴パルス間隔は前記平均寿命より長いがT1よりは短い照射工程と、
前記対象をCEST共鳴パルス系列で照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程と、
前記第1の磁化値を利用してrocを把握しroc値を取得する工程と、
前記対象を磁場内に置いたままでその持続時間がT1に等しいかこれより大きいCEST共鳴パルスで照射する工程と、
前記対象をCEST共鳴パルスで照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程と、
前記roc値及び前記第2の磁化値を利用することによって交換速度を把握する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CEST薬剤の交換速度を決定する前記工程は、
前記対象を磁場内に置いたままで第1のCESTパルス系列によって第1のCEST共鳴RF強度で照射する工程であって、各パルス持続時間がT1未満である照射工程と、
前記対象を第1のCESTパルス系列によって照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第1の磁化値を取得する工程と、
前記対象を第2のCESTパルス系列によって第2のCEST共鳴RF強度で照射する工程であって、各パルス持続時間がT1未満であり、かつ前記第2のCEST共鳴RF強度が前記第1のCEST共鳴RF強度より大きい照射工程と、
前記対象を第2のCEST共鳴RF強度で照射すると同時に前記対象の磁化を計測し第2の磁化値を取得する工程と、
rtrfを把握してrtrf値を取得する工程と、
前記第1のCEST共鳴RF強度、前記第2のCEST共鳴RF強度、前記第1の磁化値、前記第2の磁化値、及び前記rtrf値を利用することによって前記CEST薬剤の交換速度を把握する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の撮像がより迅速に達成されるように前記試料を連続するCESTパルスの間にある観測パルスにかける工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
検査対象を配置させる空間内に静磁場を発生させるためのマグネット1と、
RFパルスを反復して印加し対象内にNMRを生成させるためのRFパルス発生装置6と、
スライス方向、位相エンコード方向または読み出し方向、あるいはこれらの組み合わせで傾斜磁場を印加するための発生装置6と、
対象から放出された信号を検出するための受信器8と、
前記マグネット、RFパルス発生装置、傾斜磁場発生装置及び受信器を制御するための制御装置14であって、該制御装置は少なくとも1つの処理モジュールとコンピュータ読み取り可能プログラムコード・モジュールを備えたコンピュータ使用可能媒体とを含んでおり、該コンピュータ読み取り可能プログラムコード・モジュールは前記対象に投与された所定のCEST薬剤の交換速度を決定するために該制御装置に対してCEST共鳴RFパルスを発生させ前記対象からの信号を処理させるように構成されている制御装置と、
を備える磁気共鳴撮像装置。
【請求項9】
前記コンピュータ・プログラムコード・モジュールは、
前記制御装置に対して2種類以上のCEST共鳴RF強度でT1に等しいかこれより大きい時間期間にわたって前記対象を照射させているコンピュータ読み取り可能な第1のプログラムコード・モジュールと、
前記制御装置に対して個々の各共鳴RF強度による前記対象の照射と同時に前記対象の磁化を計測しそれぞれの磁化値を取得させているコンピュータ読み取り可能な第2のプログラムコード・モジュールと、
前記制御装置に対して前記RF強度及びそれぞれの磁化値を利用することによって前記CEST薬剤の交換速度を計算させているコンピュータ読み取り可能な第3のプログラムコード・モジュールと、
を備えている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
MRI装置の制御装置14で利用するように構成されると共にコンピュータ読み取り可能プログラムコード・モジュールを含んでいる、コンピュータ読み取り可能媒体上に記憶されたコンピュータ・プログラム成果物であって、該コンピュータ読み取り可能プログラムコード・モジュールは、前記制御装置に対して対象に投与された所定のCEST薬剤の交換速度を決定するために前記対象に与えるCEST共鳴RFパルスを生成させかつ前記対象からの信号を処理させるように構成されている、コンピュータ・プログラム成果物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−152128(P2007−152128A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−332426(P2006−332426)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】