説明

養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法

【課題】単純配合飼料で高価な魚粉を使用しない安価な飼料原料を用いることで、肉質の向上を図ることができ、しかも、肉中の脂肪酸組成において不飽和脂肪酸を多く含有させることのできる養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る養豚用飼料では、1.0〜2.0重量%の焼酎粕乾燥物と、0.1〜0.2重量%のワカメ乾燥物と、0.1〜0.3重量%のミネラル剤と、97.5〜98.8重量%の基礎飼料とを含有することとした。また、本発明に係る養豚用飼料を用いた養豚方法では、105〜115日齢から、180〜200日齢に至るまで、前記養豚用飼料を施餌しながら飼育することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養豚は、発育性を追求した育種改良や飼料栄養学が主流であったが、近年ではおいしさなどヒトの味覚で判断される部分なども含めた肉質が重視されている。
【0003】
なかでも、美味しい豚肉とするための要素の一つとして、豚肉に含まれる脂肪の量や質が大きく関わるといわれている。
【0004】
この豚肉中の脂肪は、飼育中に使用する飼料の組成に左右されることが知られており、たとえば、養豚用飼料中のビタミンA含量を減少させて、肉中の脂肪量を増加させることのできる飼料が提供されている。(例えば、特許文献1参照)
この養豚用飼料によれば、豚肉中の脂肪量を増加させることができるため、豚肉をより美味しくすることができるとしている。
【0005】
また、一方、近年の健康志向の高まりにより、毎日の食生活の中で摂取する脂質の質が着目されるようになりつつある。
【0006】
すなわち、一般消費者が脂質を摂取する際には、ヒトの血中脂質の改善効果があるといわれる不飽和脂肪酸をできるだけ多く摂取したいと希望する傾向がある。
【0007】
不飽和脂肪酸を多く摂取する人は、不飽和脂肪酸の摂取量が少ない人に比して、虚血性心疾患等のリスクが減少することが知られている。
【特許文献1】特開2006-191822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来のビタミンA含量を減少させた養豚用飼料では、養豚後の豚肉中に含まれる脂質の脂肪酸組成については着目されていない。
【0009】
すなわち、従来の養豚用飼料で飼育した豚から得られる豚肉は、その脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸が占める量が少なく、さらなる改善の余地があった。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、比較的安価な飼料原料を用いることで、肉質の向上を図ることができ、しかも、肉中の脂肪酸組成において不飽和脂肪酸を多く含有させることのできる養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る養豚用飼料では、1.0〜2.0重量%の焼酎粕乾燥物と、0.1〜0.2重量%のワカメ乾燥物と、0.1〜0.3重量%のミネラル剤と、97.5〜98.8重量%の基礎飼料とを含有することとした。
【0012】
また、本発明に係る養豚用飼料では、前記焼酎粕乾燥物は、40〜80℃に加熱した米焼酎粕を発酵し、減圧条件下で脱水して生成したものであることにも特徴を有する。
【0013】
さらに、本発明に係る養豚用飼料を用いた養豚方法では、105〜115日齢から、180〜200日齢に至るまで、請求項1または請求項2に記載の養豚用飼料を施餌しながら飼育することとした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の養豚用飼料では、1.0〜2.0重量%の焼酎粕乾燥物と、0.1〜0.2重量%のワカメ乾燥物と、0.1〜0.3重量%のミネラル剤と、97.5〜98.8重量%の基礎飼料とを含有したため、安価な飼料原料を用いながらも、不飽和脂肪酸を多く含有する肉質を有する豚を生産することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の養豚用飼料では、焼酎粕乾燥物は、40〜80℃に加熱した米焼酎粕を発酵し、減圧条件下で脱水して生成したものであるため、米焼酎粕に含有される抗酸化活性物質を崩壊させることなく焼酎粕乾燥物を生成することができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載の養豚方法では、105〜115日齢から、180〜200日齢に至るまで、請求項1または請求項2に記載の養豚用飼料を施餌しながら飼育することとしているため、従来の養豚方法で得られる豚肉に比して肉中に不飽和脂肪酸を多く含む状態とすることができ、肉質の改善を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、1.0〜2.0重量%の焼酎粕乾燥物と、0.1〜0.2重量%のワカメ乾燥物と、0.1〜0.3重量%のミネラル剤と、97.5〜98.8重量%の基礎飼料とを含有した養豚用飼料を提供するものである。
【0018】
ここで、焼酎粕乾燥物を生成するための焼酎粕の種類は特に限定されるものではなく、米、麦、蕎麦、芋等の焼酎を製造する際に副産する焼酎粕を使用することができるが、抗酸化活性物質の含有量が最も高い米焼酎の焼酎粕が好ましい。
【0019】
また、焼酎粕乾燥物が飼料全体中に占める重量割合は、0.5〜3.0重量%が好ましく、1.0〜2.0重量%が更に好ましい。焼酎粕乾燥物の割合が0.5重量%を下回ると、焼酎粕に含まれる抗酸化活性物質の効果を享受することができなくなるとともに、焼酎粕中に含まれる酵母の摂取量も減少することとなる。
【0020】
また、焼酎粕乾燥物の重量割合が3.0重量%を上回っても、肉中の脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸の増量効果は見られず、コストアップを招く原因となるため好ましくない。
【0021】
特に、焼酎粕乾燥物の重量割合を、1.0〜2.0重量%の範囲内とすることにより、できるだけ少ない焼酎粕乾燥物の量で、肉中に不飽和脂肪酸の増量効果を生起させることができる。
【0022】
併せて、焼酎粕乾燥物は、40〜80℃に加熱した米焼酎粕を減圧下で脱水しながら発酵させ、その後、さらに減圧脱水して生成したものであることが好ましい。常圧で水の沸点(100℃)以上に加熱して焼酎粕に含まれる水分の蒸発を促した場合、米焼酎粕に含まれる抗酸化活性物質が熱によって破壊され、焼酎粕乾燥物中に含まれる抗酸化活性物質の量が少なくなるおそれがある。
【0023】
そこで、米焼酎粕を40〜80℃、好ましくは40〜50℃に加熱して、減圧しながら発酵し、次いで減圧乾燥することにより、速やかな乾燥を行いながらも、米焼酎粕に発酵による微生物産生物を含有させることができ、しかも、焼酎粕乾燥物中に含まれる抗酸化活性物質含量の減少を防止することができる。
【0024】
さらに具体的には、耐圧容器の周囲に配設したジャケットに、約120℃の蒸気を通気するとともに、耐圧容器内の空気を吸引して減圧することにより、耐圧容器内の温度を40〜80℃、好ましくは40〜50℃となるように調整する。
【0025】
次いで、予め発酵用種菌を接種した米焼酎粕を、減圧した耐圧容器内に収納し、3時間程度に亘って米焼酎粕に含まれる水分を蒸発させながら発酵を行う。この際、米焼酎粕の温度は、微生物が死滅しない程度の温度、例えば40〜50℃に調整する。
【0026】
約3時間を経過すると、米焼酎粕に含まれる水分が減少し、微生物が要求する水分が少なくなるため発酵が減衰することとなり、やがて停止する。すなわち、減圧脱水して水分量を調整すると同時に、発酵の制御も可能としている。
【0027】
また、減圧脱水しながら発酵することにより、悪臭などの不要な臭気成分(揮発性の発酵臭)を除去することができ、豚の嗜好に合わせた焼酎粕乾燥物を製造することができ、食いつきの良い養豚用飼料を調製することができる。
【0028】
引き続き約4時間に亘り脱水を行い、焼酎粕乾燥物を調製する。このような焼酎粕の乾燥方法によれば、同時に発酵を行うことができ、短時間で飼料に対し微生物による効果を付与することができる。
【0029】
発酵用種菌は、好気性微生物であるのが好ましい。ここで好気性微生物とは、病原性がなく、豚が摂取可能な好気性微生物であれば特に限定されるものではなく、一般に養豚用に給餌される好気性の微生物群であっても良い。
【0030】
ただし、より好ましい発酵用種菌を調製するためには、市販や自然より得られた好気性微生物を、予め米焼酎粕に接種して微生物叢を米焼酎粕に順応させ、微生物活性を高めておくと良い。そして、この微生物活性を高めた米焼酎粕を発酵用種菌として使用すると、減圧下においてもより効果的な発酵を行うことができる。
【0031】
特に、焼酎乾燥物を米焼酎粕由来のものとした場合には、芋由来の焼酎粕に比して臭気が少なく、米澱粉由来の糖類が豊富に含有されているため、良好な発酵が可能である。
【0032】
なお、焼酎粕乾燥物に含まれる抗酸化活性物質は、後述するワカメに含まれるフコキサンチンの酸化を抑制する働きをして、未酸化のフコキサンチンが豚の体内に取り込まれるのを助ける役割を担うものと考えられる。
【0033】
ワカメの乾燥物は、40〜80℃、好ましくは40〜50℃に加熱したワカメを減圧下で脱水しながら発酵させ、その後、さらに減圧脱水して生成したものを用いるのが好ましい。
【0034】
すなわち、前述の焼酎粕乾燥物と同様の工程を経て発酵させたものが良い。この場合、ワカメには微生物が資化可能な糖類があまり含まれていないため、糖蜜や精製糖などの糖類を添加して発酵させるようにしても良い。また、ワカメの発酵に供する好気性微生物もまた、ワカメの発酵に適するよう微生物叢のスクリーニングを行うことが好ましい。
【0035】
なお、焼酎粕とワカメとは混合した状態で発酵及び乾燥を行っても良く、また、各々単独で発酵及び乾燥を行うようにしても良い。
【0036】
また、ワカメは、ヒトが食するためのワカメを製造する際に副生する、いわゆるワカメ屑を用いるのが良い。一般にヒトが食するワカメは、比較的肉薄で、しかも細かく裁断されているため、豚がワカメを摂取しやすくなるとともに、豚の体内で吸収される食物繊維やフコキサンチンの摂取効率を向上させることができる。
【0037】
また、ワカメ屑は食用ワカメの製造現場において、大量に副生しており、その有効利用方法が模索されている。それゆえ、ワカメ屑を本発明に係る養豚用飼料に供することで、ワカメ屑の有効利用方法を提供することもできる。
【0038】
乾燥ワカメが飼料全体中に占める重量割合は、0.1〜0.2重量%が好ましい。乾燥ワカメの割合が0.1重量%を下回ると、ワカメに含まれる食物繊維やフコキサンチンの効果を享受することができなくなる可能性がある。
【0039】
ワカメに含まれるフコキサンチンは、正確な作用機序は不明であるが、豚の脂肪細胞に関与して、豚肉中の脂肪酸組成における不飽和脂肪酸の含量を増加させるものと考えられる。
【0040】
なお、本発明に係る養豚用飼料では、乾燥したワカメを使用することとしているが、水分を含ませて湿潤したワカメや、乾燥前のワカメを使用しても良い。しかし、多量の水分を含有したワカメは腐敗が早く、養豚用飼料の保存性の観点から乾燥ワカメを用いるのが好ましい。
【0041】
ミネラル剤は、一般に養豚飼料用に配合されたいわゆるミネラルプレミックス等を用いることができる。このミネラルプレミックスを、ワカメ及び焼酎粕と同時に給餌することにより、ワカメと焼酎粕とが有する食物繊維の腸内浄化作用によって、ミネラルの吸収が良好となるため、金属要求性の酵素類の活性が向上し、肉質のさらなる改善に寄与するものと考えられる。
【0042】
このミネラル剤が飼料全体中に占める重量割合は、0.1〜0.3重量%が好ましい。0.1重量%よりも少ないと、ミネラルの効果を享受することができず、0.3重量%を上回ると、更なる肉質の改善効果が望めないばかりでなく、養豚用飼料のコストアップや、ミネラル供給過多となるおそれがある。
【0043】
特に、本発明に係る養豚用飼料には、ワカメや焼酎粕由来の食物繊維が含まれており、この食物繊維が豚の腸内においてミネラルの吸収を促進するため、ミネラル剤が飼料全体中に占める重量割合は、0.1〜0.3重量%が好ましいのである。
【0044】
併せて、この食物繊維の腸内浄化作用により、豚の腸管内でミネラルの吸収が促進され、豚が摂取したミネラル剤が、そのまま排泄されて無駄になるのを防止することができるため、ミネラル剤の使用量を減少させることができ、飼料を製造するコストを安価にすることができる。
【0045】
そして、上述してきた焼酎粕乾燥物と、乾燥ワカメと、ミネラル剤とを97.5〜98.8重量%の基礎飼料に混合して、養豚用飼料とすることができる。
【0046】
この基礎飼料は、養豚用飼料として配合されたものであれば、市販の配合飼料や自家飼料のいずれかまたは混合物であっても良く、特に限定されるものではない。
【0047】
また、後述するが、特に図1に記載した配合からなる基礎飼料によれば、魚粉を含まないため、生臭さがなく、しかも、変動の大きい魚粉の価格に左右されにくい安価な基礎飼料とすることができる。したがって、養豚の飼養や飼養管理において、経済的な負担を軽減することができる。
【0048】
このように調製した養豚用飼料は、生後105〜115日齢から、180〜200日齢に至るまで、施餌しながら飼育すると良い。
【0049】
たとえば、豚の生後0〜110日齢の期間は、その生育度合いに応じた、一般の肥育用飼料を与え、その後、180日齢〜200日齢に至るまで本発明に係る養豚用飼料を与えるようにすることで、不飽和脂肪酸をバランス良く配合した肉質を有する豚を飼育することができる。
【0050】
なお、本発明に係る養豚方法を適用可能な豚の品種は特に限定されるものではなく、デュロック種、バークシャー種、ハンプシャー種、ヨークシャー種、ランドレース種のいずれであっても良い。
【0051】
以下、本発明に係る養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法について更に詳説する。
【0052】
〔一般的な飼料及び養豚方法について〕
まず、一般的な飼料の配合割合及び一般的な養豚方法について述べる。表1は、従来より使用されている一般的な養豚用飼料の配合割合を示している。この飼料は、豚の肥育を目的としたものであり、後述する通常の飼料給与体系において、生後110〜180日齢の間に給与する市販肥育用飼料に該当するものである。下記に示す表1は、一般的な飼料の配合割合を示している。
【0053】
【表1】

表1にも示すように、この市販肥育用飼料は、ライ麦、トウモロコシ、マイロ、大麦等の穀類(74%)と、大豆油粕、菜種油粕、亜麻仁油粕等の植物性油粕類(21%)と、米ぬか等の糟糠類(1%)と、動物性油脂、炭酸カルシウム、食塩、ユッカ抽出物、バーミキュライト、植物性油脂、ケイ酸、リン酸カルシウム等のその他原料(4%)から構成されている。
【0054】
このように調製された市販肥育用飼料を、表2に示す一般的な養豚方法により肥育させる。
【0055】
【表2】

すなわち、生後0日齢から12日齢に至るまでは、親豚の母乳で育てた後、13日齢から25日齢に至るまでは前記給餌用人工乳、26日齢から50日齢に至るまでは後期給餌用人工乳(A配合)、51日齢から70日齢に至るまでは後期給餌用人工乳(B配合)、71日齢から110日齢に至るまでは市販子豚用飼料を与え、そして、111日齢から180日齢(出荷時)までは前述の市販肥育用飼料を与えて肥育する。
【0056】
このような従来の養豚方法では、生後から出荷時に至るまで、豚を効率的に肥育させることを目的としているため、養豚期間の全てが肥育工程であるといえる。
【0057】
〔本発明に係る飼料及び同飼料を用いた養豚方法〕
次に、表3に本発明に係る養豚用飼料の配合割合を示す。本発明に係る養豚用飼料は、大別すると基礎飼料と、肉質改善飼料とより構成している。すなわち、肉質改善飼料は、前述の焼酎粕乾燥物とワカメ乾燥物とミネラル剤とを含有しており、本発明に係る養豚用飼料中に占める割合は、1.2〜2.5%が好適である。
【0058】
【表3】

基礎飼料は、養豚に対し基礎的な栄養成分を補給するのを目的としたものであり、トウモロコシ、大豆かす、塩酸リジン、第二リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、食塩及びゆめプレミックス肉豚用(市販飼料)をそれぞれ配合して調製したものである。
【0059】
また、肉質改善飼料は、豚用微量ミネラルプレミックスと、ワカメ乾燥物と、米焼酎粕乾燥物とで構成しており、本発明に係る養豚用飼料中に占める割合は、それぞれ0.2%、約0.13%、約1.72%である。
【0060】
そして、表4に示すように、豚の生後111日齢から180〜200日齢に至るまで、この養豚用飼料を給餌して豚肉の脂肪酸組成中の不飽和脂肪酸量を増加させる。
【0061】
【表4】

すなわち、本発明に係る養豚用飼料を用いた養豚方法では、豚の生後0日齢から110日齢に至るまでは肥育工程を行っており、前述の一般的な養豚方法と基本的に同様であるが、111日齢から180〜200日齢に至るまでの期間に肉質改善工程を設け、同肉質改善工程で前記肉質改善飼料を含む養豚用飼料を給与する点で異なっている。
【0062】
この肉質改善工程を行う期間は、特に限定されるものではないが、出荷前や体重が約110kg前後となる2〜3ヶ月前より給餌するのが好ましい。
【0063】
このように給餌することにより、不飽和脂肪酸を多く含む豚肉を提供することができる。
【0064】
〔脂肪酸組成比較試験〕
次に、本発明に係る養豚方法で飼育した豚から得られる豚肉の脂肪酸組成と、一般的な養豚方法で飼育した豚から得られる豚肉の脂肪酸組成とを比較した試験結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

まず、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸の定量結果に着目する。
【0066】
この定量結果によれば、飽和脂肪酸の合計量が、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉は9060mgであるのに対し、一般的な養豚方法で得られた豚肉では10298mgであることから、本発明に係る養豚方法で飼育した豚肉には、一般的な養豚方法で得られた豚肉に比して飽和脂肪酸量が少ないことが分かる。
【0067】
一般に飽和脂肪酸は、ヒトが過剰に摂取すると、肝臓でコレステロールの合成が促進され、血中コレステロール値を上げてしまうことから、虚血性心疾患等のリスクを高めるおそれがあるといわれている。
【0068】
それゆえ、豚肉中の飽和脂肪酸量が減少したということは、脂肪酸組成が改善されたといえる。
【0069】
次に、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オレイン酸、イコセン酸等の一価不飽和脂肪酸に着目する。
【0070】
定量結果によれば、一価不飽和脂肪酸の合計量が、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉は18957mgであるのに対し、一般的な養豚方法で得られた豚肉では11565mgであることから、本発明に係る養豚方法で飼育した豚肉には、一般的な養豚方法で得られた豚肉に比して一価不飽和脂肪酸の量が約1.64倍に増加していることが分かる。
【0071】
この一価不飽和脂肪酸は、血中の低比重リポタンパクを減少させる効果があるといわれており、血中脂質バランスの改善に寄与するものである。
【0072】
それゆえ、豚肉中の一価不飽和脂肪酸が増加したということは、脂肪酸組成が改善されたといえる。
【0073】
また、リノール酸、イコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、イコサトリエン酸、アラキドン酸等の多価不飽和脂肪酸についても、同多価不飽和脂肪酸の合計量が、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉は3850mgであるのに対し、一般的な養豚方法で得られた豚肉では2537mgであることから、本発明に係る養豚方法で飼育した豚肉には、一般的な養豚方法で得られた豚肉に比して多価不飽和脂肪酸の量が約1.52倍に増加していることが分かる。
【0074】
多価不飽和脂肪酸は、ヒトの体内で合成することができず、食事によって摂取が必要な必須脂肪酸である。
【0075】
それゆえ、豚肉中の多価不飽和脂肪酸が増加したということは、脂肪酸組成が改善されたといえる。
【0076】
これらの結果を踏まえると、一般的な養豚方法で得られた豚肉中に含まれる不飽和脂肪酸の量が約57.80%であったのに対して、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉に含まれる不飽和脂肪酸の量は約71.57%であったことから、本発明に係る養豚方法によれば、従来の養豚方法で得られた豚肉に比して豚肉中の不飽和脂肪酸量を増やすことができることが示された。
【0077】
さらに、脂肪酸の総計に着目すると、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉は31867mgであるのに対し、一般的な養豚方法で得られた豚肉では24400mgであった。
【0078】
このことより、一般的な養豚方法で得られた豚肉に比して、本発明に係る養豚方法で得られた豚肉は、脂肪量が豊富でジューシーな豚肉であることが示された。
【0079】
上述してきたように、本発明に係る養豚用飼料及び同養豚用飼料を用いた養豚方法によれば、一般的な養豚用飼料を用いて、一般的な養豚方法により飼育して得られた豚肉に比して不飽和脂肪酸量が多く、しかも、脂肪量が豊富で美味しい豚肉を提供することができる。
【0080】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。例えば、本発明に係る養豚方法では、生後110日齢から、生後180〜200日齢に至るまで、本発明に係る養豚用飼料を給餌することとしているが、これに限定されるものではなく、豚の各個体差や、品種に応じて期間変更するようにしても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0〜2.0重量%の焼酎粕乾燥物と、0.1〜0.2重量%のワカメ乾燥物と、0.1〜0.3重量%のミネラル剤と、97.5〜98.8重量%の基礎飼料とを含有した養豚用飼料。
【請求項2】
前記焼酎粕乾燥物は、40〜80℃に加熱した米焼酎粕を発酵し、減圧条件下で脱水して生成したものであることを特徴とする請求項1に記載の養豚用飼料。
【請求項3】
105〜115日齢から、180〜200日齢に至るまで、請求項1または請求項2に記載の豚用飼料を施餌しながら飼育することを特徴とする養豚方法。

【公開番号】特開2008−125369(P2008−125369A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310730(P2006−310730)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506384855)
【出願人】(506384707)有限会社長崎アグリランド (1)
【Fターム(参考)】